残業代ゼロ問題-厚労省審議始まる

 残業代ゼロ問題が、いよいよ審議の本舞台に挙げられた。
 朝日新聞は、2014年7月8日の朝刊で「政府の成長戦略の目玉である労働時間の規制緩和について話し合う厚生労働省の審議会が7日、始まった」と報じた。
 以下、朝日新聞引用。

「残業代ゼロ」対象めぐり応酬 厚労省審議会

 政府の成長戦略の目玉である労働時間の規制緩和について話し合う厚生労働省の審議会が7日、始まった。労働時間ではなく成果で賃金を決める「残業代ゼロ」になる新制度や、あらかじめ決めた時間に応じて賃金を払う裁量労働制の対象を広げることも議論された。いずれも働き過ぎを助長する恐れがあり、その防止策も焦点だ。

 ■経営「1000万円以上は狭い」/労組「長時間労働を助長」

 「1千万円以上では中小企業が活用できない」「長時間労働が合法的に助長される」。7日の労働政策審議会の労働条件分科会。成果で賃金を決める新制度の対象拡大を求める中小企業の代表者と、働き過ぎの助長を懸念する労働組合代表が、真っ向から対立した。

 残業代ゼロの働き方を巡っては、経済界は当初年収条件をつけない案を示したが、世論の反発を受け、成長戦略では対象者を「年収1千万円以上」「高度な職業能力を持つ」などに絞り込んだ。だが、この年収制限では給与所得者の4%しか対象にならない。労働者の7割は中小企業で働いており、経済界からは対象拡大を求める声がくすぶる。

 年収制限がなく、より多くの働き手に影響するのが裁量労働制の拡大だ。はじめに労使で働く時間を想定し、残業代込みの賃金を払う。働いた時間が想定を超えても、企業は追加の残業代は出さなくていい。いまは企画や調査、研究職といった一部の職種に限って認められている。7日の会合では「ニーズはあるが、十分に活用されていない」との意見が経営側から出た。

 こうした緩和策は、効率アップを望む経営側が強く求めてきた。一方、働き過ぎを防ぐ仕組みがないまま、働き手の健康を守る労働時間の規制を緩めれば、働き手が損をかぶることになりかねない。

 2013年度に、うつ病など「心の病」で労災認定された人は436人と過去2番目の多さだった。くも膜下出血や心筋梗塞(こうそく)の労災認定も306人と3年連続で300人を超えた。多くは長時間労働が原因だ。

 分科会の顔ぶれは経営側、労組、学者など有識者の計21人。残業代ゼロの新制度の議論にこれまで労働者代表は参加しておらず、働き手の意見をどこまで反映できるかが注目される。

 分科会では他に、出退勤時間を自由に決められるフレックスタイムの改善策も議論する。子育てや介護を抱える人が働きやすいよう、有給休暇と組み合わせて賃金が減らないような仕組みも検討する。議論は年内続く見通しで、政府は年明けの通常国会で労働基準法の改正をめざす。(山本知弘)

 ■労働時間の規制緩和で議論されるポイント
 ◆労働時間と賃金を切り離す「残業代ゼロ」の働き方を新設
 賃金は成果で決まり、どれだけ長く働いたかは関係なくなる制度をつくる。対象者には「年収1千万円以上」などの条件をつける
 ◆裁量労働制の拡大
 あらかじめ労使で労働時間を想定しておき、残業代込みの賃金を支払う働き方の対象者を、いまの研究者や調査業務以外に拡大する
 ◆働き過ぎ防止の取り組み強化
 長時間労働を防ぐ歯止めをつくったり、有給休暇をとりやすくしたりして、労働時間が増えるのを防ぐ
 ◆フレックスタイム制の拡大
 出退勤時間を自由にできる制度の使い勝手をよくするため、働いた時間が短くても有給休暇を使えば、賃金が減らないようにする

 この日(7月8日)に、二つの社説が出た。意外と興味深いものだ。
 朝日新聞は、「過労死―立法契機に防止図れ」で、「この法律には、長時間労働を直接規制する条文はない。だから『過労死を防ぐ力は弱い』という受け止め方もある。しかし『過労死』という言葉が初めて法律に書き込まれた意味は大きい。11月を、過労死等防止啓発月間にすることも決まった。長時間労働をなくすためには、私たち一人一人の意識改革が欠かせない。『長時間労働があって当たり前』。そんな意識が職場に残っていないか、点検するきっかけにもできるだろう。小さな一歩かも知れない。しかし、この一歩を生かして過労死のない社会につなげたい。」と論調を展開している。
日本経済新聞は、「正社員の雇用増も大事な成長戦略だ」で、「だが、雇用情勢が好転しているとは言い切れない。正社員に比べ賃金の安い非正規労働者に需要が偏っているからだ。・・・雇用の不安定な非正規労働者が4割に迫っている現状を放置はできない。働く人の収入を増やして消費を刺激し、それが企業の生産活動を活発にして新たな雇用を生むという好循環をつくるためにも、非正規で働く人が正規雇用に就きやすくする必要がある。・・・ 成長戦略として雇用分野では、労働時間制度の改革や外国人労働者の活用などが注目されている。だが非正規雇用対策も重要だ。必要な取り組みを着実に進めたい。」としている。


  このように問題点は、明確になっている。成長戦略ではない、労働者に軸足を置いた新しい視点が必要である。


# by asyagi-df-2014 | 2014-07-11 05:45 | 書くことから-労働 | Comments(0)

ヘイトクライムに抗して-ヘイトスピーチ「街宣差し止め」一審支持

【ヘイトクライム(Hate crime)は、人種、民族、宗教、性的思考などにかかる特定の属性を有する個人や集団に対する偏見や憎悪が元で引き起こされる暴行等の犯罪行為を指す。-ウイッキペディアより】


 朝日新聞は、2014年7月8日、「都朝鮮第一初級学校(京都市、現・京都朝鮮初級学校)周辺で「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の会員らがヘイトスピーチ(差別的憎悪表現)をしたことが名誉毀損(きそん)にあたるかが争われた訴訟の判決が8日、大阪高裁であった。森宏司裁判長は在特会側の控訴を棄却。「学校の児童が人種差別という不条理な行為で多大な精神的被害を被った」と述べ、約1226万円の異例の高額賠償と新たな街宣活動の差し止めを命じた一審・京都地裁判決を維持した。」と、報じた。

 2013年10月7日の京都地裁判決の判決の要点は、下記のものであった。
以下、C.R.A.C(対レイシスト行動集団)より引用。


在特会・京都朝鮮学校襲撃事件、民事判決概要
2009年12月に起こった京都朝鮮学校襲撃事件について、京都地裁での民事訴訟の判決が出た。

判決:1226万円の損害賠償と学校周辺での街宣禁止
原告:学校法人京都朝鮮学園
被告:在特会(在日特権を許さない会)

判決文は、この事件について、差別意識を世間に訴える意図の下、在日朝鮮人が日本社会で日本人や他の外国人と平等の立場で生活することを妨害しようとする差別的発言を織り交ぜてされた人種差別に該当する行為

我が国の裁判所に対し、人種差別撤廃条約2条1項及び6条から、同条約の定めに適合する法の解釈適用が義務づけられる名誉毀損等の不法行為が同時に人種差別にも該当する場合、あるいは不法行為が人種差別を動機としている場合も、人種差別撤廃条約が民事法の解釈適用に直接的に影響し、無形損害の認定を加重させる要因となるとし、これが単に名誉毀損を構成する不法行為であるだけでなく、差別を意図としたヘイト・スピーチであり、人種差別撤廃条約にしたがって法を適用すると明言している。

 京都地裁の判決の意義を、「今回の民事判決が重要なのは、人種差別撤廃条約を直接の根拠として被告らの不法行為を『人種差別』と認定したことである。つまりこれは、刑事立法なしに、現状でヘイト・スピーチに対して、ヘイト・スピーチとして法的措置をとりうるということを示した画期的な判決だ」(C.R.A.C)としている。

 「ルポ京都朝鮮学校襲撃事件 ヘイトクライムに抗して」(中村一成著)を通して、犯罪を受けた側の、裁判闘争に至るまで、また裁判闘争の中での、克復へ向けての葛藤などを知ることができた。
 これまでのヘイトクライムへの闘いを何ら支えることのできなかった反省から、ヘイトクライムの問題を追い続ける。

 以下、朝日新聞(2014年7月8日)記事を引用。

ヘイトスピーチ「街宣差し止め」一審支持 朝鮮学校妨害

 京都朝鮮第一初級学校(京都市、現・京都朝鮮初級学校)周辺で「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の会員らがヘイトスピーチ(差別的憎悪表現)をしたことが名誉毀損(きそん)にあたるかが争われた訴訟の判決が8日、大阪高裁であった。森宏司裁判長は在特会側の控訴を棄却。「学校の児童が人種差別という不条理な行為で多大な精神的被害を被った」と述べ、約1226万円の異例の高額賠償と新たな街宣活動の差し止めを命じた一審・京都地裁判決を維持した。

 原告代理人によると、ヘイトスピーチに対する損害賠償が高裁段階で認められたのは初めて。在特会側は上告する方針だ。

 一審判決によると、在特会の会員らは2009年12月~10年3月、当時京都市南区にあった同校周辺で、「キムチ臭いで」「保健所で処分しろ、犬の方が賢い」「朝鮮半島へ帰れ」などと3回にわたり演説した。この演説内容が名誉毀損や業務妨害にあたるとして、同校を運営する学校法人「京都朝鮮学園」が計3千万円の損害賠償や学校周辺での街宣活動の禁止を求めていた。

 一審判決は演説内容が日本も加盟する人種差別撤廃条約に照らして「人種差別」にあたると判断。そのうえで「条約の責務に基づき、人種差別行為に対する効果的な救済措置となるような額にすべきだ」として高額の賠償を命じた。

 在特会側は控訴審で、学校側が児童公園を占拠していたことに抗議する公益目的があったとして「表現の自由で保護される」と主張。「人種差別撤廃条約が禁じる人種差別の対象はあまりにも広く、表現の自由に抵触する」として、同条約を根拠にした名誉毀損の認定や損害額の算定は誤りだと訴えていた。(太田航)
     ◇
 〈京都朝鮮第一初級学校前のヘイトスピーチ問題〉在特会の会員らが2009年12月、同校が近接の児童公園を校庭代わりに占拠したなどとして街宣を始め、インターネットで動画を公開した。参加者のうち4人は威力業務妨害や侮辱の罪で有罪判決が確定。当時の同校長も、公園に無許可で朝礼台などを設置したとして、都市公園法違反罪で罰金刑が確定した。

2014年7月9日、京都新聞は、「授業を妨害し、子どもたちに差別的な言葉を浴びせる行為が許されるはずはない。極めて妥当な判決だ。」とするとともに、「安倍晋三首相は言葉の暴力や差別を許さぬ姿勢を一貫して示さねばならない。ネット上では歴史認識や領土問題で強硬姿勢をみせる政権を賛美する声もある。中韓との関係に修復の糸口が見えないことも偏狭な排外主義を増幅させている面があることを、政権は真剣に受け止めるべきだろう。」と、現政権への戒めも示した。
以下、京都新聞社説引用。

ヘイトスピーチ  差別許さぬ態度貫こう

 京都市内の朝鮮学校前で「在日特権を許さない市民の会」(在特会)が行った街頭宣伝「ヘイトスピーチ」の違法性が問われた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は在特会の控訴を棄却した。授業を妨害し、子どもたちに差別的な言葉を浴びせる行為が許されるはずはない。極めて妥当な判決だ。
 在特会は、学校周辺で「朝鮮人を処分しろ」「スパイの子ども」などと拡声器で連呼した。昨秋京都地裁判決は「著しく侮辱的、差別的」で国連の人種差別撤廃条約に抵触するとし、学校周辺での街宣活動を禁じ、約1200万円の賠償金を支払うよう命じた。
 高裁判決は一審を支持するとともに、インターネットで映像が公開されて拡散、児童への被害が継続することの悪質性を指弾した。ネット時代への警鐘といえよう。
 在特会側は一貫して「表現の自由」を主張した。憲法は表現の自由を保障するが、個人の尊厳など侵してはならない領域があるのは当然だ。子どもを威嚇して自尊心を傷つけ、民族を理由に汚い言葉で攻撃することに保護すべき公益性があろうはずはない。
 在特会は控訴審で、日本が条約を批准しながらもヘイトスピーチ処罰条項を留保している点を挙げ「司法の先取り」と批判した。
 権力の恣意(しい)的な運用を防ぐため、表現の自由の侵害につながる法整備に慎重であるべきなのは言うまでもない。一方で、政府が言う「国内に法規制するほどの民族・人種差別はない」との説明も現実を直視しているとはいえない。
 外国人への嫌悪をあらわにする街宣は今も散発する。野放しにすれば日本の人権意識が問われる。現行法の枠内での対処を徹底するとともに、ヘイトスピーチの定義を明確にした上で、諸外国も参考に法制化の在り方を議論したい。
 同時に自らの差別意識と向き合い、憂さ晴らしに誰かを標的にする行為が身近にないかを点検したい。サッカーJリーグでの差別的な横断幕や四国遍路の休憩所での張り紙問題も記憶に新しい。憎悪や罵声の応酬でなく異文化を認める対話型の活動を広げ、卑劣な差別を容認しない社会を目指したい。
 安倍晋三首相は言葉の暴力や差別を許さぬ姿勢を一貫して示さねばならない。ネット上では歴史認識や領土問題で強硬姿勢をみせる政権を賛美する声もある。中韓との関係に修復の糸口が見えないことも偏狭な排外主義を増幅させている面があることを、政権は真剣に受け止めるべきだろう。


# by asyagi-df-2014 | 2014-07-10 05:40 | 書くことから-ヘイトクライム | Comments(0)

集団的自衛権18- 法案を一括して来年の通常国会に提出する方針へ

 安部晋三尾政権は、従来のスケジュールの方針を変更し、「向こう約1年かけて国民の皆さんの前でしっかり議論を進めていきたい」として、来年の通常国会で法整備する意向を示した。
 何が原因かは、安部晋三政権だけに読みにくいところである。また、それでは、日米ガイドラインだけが本決まりになり、国民はその本質を知らないままに進むという倒錯の関係が残されることにもなる。
 以下、朝日新聞の記事を引用。

 安倍政権は、他国への攻撃に自衛隊が武力で反撃する集団的自衛権など、安全保障にかかわる法案を一括して来年の通常国会に提出する方針を固めた。政権は秋の臨時国会に一部を提出することも検討していた。しかし、秋の沖縄県知事選や、来年春の統一地方選などの重要な選挙に悪影響を及ぼすことを懸念し、先送りする考えに転じた。

 安倍晋三首相は6日、「グレーゾーンから集団的自衛権にかかわるものまで、幅広い法整備を一括して行っていきたい」と記者団に語った。菅義偉官房長官も7日の記者会見で「向こう約1年かけて国民の皆さんの前でしっかり議論を進めていきたい」として、来年の通常国会で法整備する意向を示した。

 政権が通常国会への先送りに転じた理由として、自公による与党協議で「グレーゾーン(の法整備)は運用で対応が可能になった」(官邸幹部)ことがある。

 さらに、今秋に控える福島、沖縄両県知事選がある。特に沖縄は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設問題が争点。安全保障にかかわる法案の審議が、選挙とぶつかるのを避ける狙いがある。また、政権は実際の法案審議を春の統一地方選後に行う意向。自民、公明両党の選挙協力が必要な統一地方選で、公明党の協力が得にくくなる事情があるからだ。

 集団的自衛権の行使を認める閣議決定後に行った朝日新聞の世論調査では、50%が行使容認は「よくなかった」と答えるなど、強い反発が残る。政権内にはこの状況で臨時国会に法案審議を強行すれば、世論のさらなる反発を招く、という警戒感もありそうだ。

 一方、首相は6日、「大きな改正になるので担当の大臣を置きたいと考えている」とも表明。安全保障法制を担当する閣僚を新たに置き、準備作業にあたらせる考えを示した。(星野典久)

■今後の主な政治日程

7月13日 滋賀県知事選投開票
  14日 衆院予算委で集団的自衛権についての集中審議
  15日 参院予算委で集団的自衛権についての集中審議
夏ごろ  内閣改造と党役員人事
秋    臨時国会召集
     福島県知事選
11月16日 沖縄県知事選投開票
年内   消費税率10%への引き上げ判断
年末   日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の改定
<2015年>
1月   通常国会召集
春    統一地方選


# by asyagi-df-2014 | 2014-07-09 05:40 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

集団的自衛権17-閣議決定を批判するために(「憲法介錯」にほかならないこと)

7.1閣議決定を批判するために、以下、「平和憲法のメッセージ」より引用。

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「7.1事件」――閣議決定で「憲法介錯」            2014年7月7日
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将来、大学入試「日本史」の問題で、戦後の歴史的転換点として、2014年7月1日に起きた出来事が出題されるだろう。安倍晋三首相が安保法制懇報告書を受けて記者会見した日を、私は「平成の5.15」と呼んだが、それからわずか1カ月半で、60年にわたる政府の解釈を閣議決定で覆すに至った。連立与党・公明党の「抵抗」、自民党総務会内の反対意見、自公の地方組織の部分的抵抗にもかかわらず、短期間でここまできたのは、ひとえに安倍首相の、「祖父を越えたい」という強烈な思いのなせる技である。この思いは思い入れとなり、いつしか歪んだ思い込みとなって、「もうどうにもとまらない♪」強烈な思い違いに進化。今回、日本のみならず、アジア地域の平和にも害悪をもたらす壮大なる勘違いにまで発展してしまったのである。彼が7月1日に閣議決定でやったことは、憲法の大原則である平和主義の根幹(首)を斬り落とす「憲法介錯」にほかならない。内閣は、憲法に違反する内容の閣議決定を行ったのである。これは「平成の7.1事件」として記憶されるべきだろう。

冒頭の写真のように、7月2日付各紙の評価は分かれた。写真左側の『産経』『読売』『日経』は、それぞれの立場からこの転換を歓迎している。『産経』に至っては、「『積極的平和』への大転換」、これで「今後50年 日本は安全だ」と、手放しの礼賛である。記事下にある写真(リムパックに初参加した陸自隊員の上陸訓練)この「大転換」の方向と内容を象徴するものと言えよう。

『読売』は集団的自衛権の「限定行使」にこだわり、『産経』よりは抑制的に政府の行為をフォローしようと懸命である。それに比べて、『日経』は見出しが地味なのに加えて、一面コラム「春秋」は、安倍首相の手法が「論」より「情」に傾き、与党協議も「字句修正に終始してことの本質を曖昧にした」と一部批判的なトーンが感じられる。

写真右側の3紙(そして大半のブロック紙、地方紙)は厳しい見出しと記事が満載である。『朝日』は一面トップに初めて「解釈改憲」という言葉をもってきた。学問的概念ではないが、明文の改正手続きを経ないで改正と同様の効果を発生させる禁じ手という意味で使われている。2、3面の横大見だしは「危険はらむ軍事優先」「ねじ曲げられた憲法解釈」である。この日の『朝日』は、片山杜秀慶応大学教授が、「時務の論理」という昭和10年代に流布した言葉を使って、安倍内閣の閣議決定を読み解く8段コメント(2面トップ)が秀逸である。『毎日』は両社会面の横大見だし「自衛隊60年岐路」「戦い死ぬリアル」。「国民の支持がほしい」「殺され方だよなあ」という現役自衛官の声を拾う署名記事、「『軍隊』への変容始まる」がまとまっている。

『東京』は1面署名記事「秘密保護法下で武力行使 根拠示さず決定も」で、今年12月に施行される特定秘密保護法との関連で、米国からの要請などは「安全保障に著しい支障」が生じると判断されて、特定秘密に指定されるのは確実だとして、国民は派遣決定の理由を見られないと危惧する。特定秘密保護法施行との関係を指摘したのは重要である。また、『東京』は1面肩に論説主幹名で「戦後69年 憲法9条の危機――闘いはこれからだ」を配し、「法が成立しても訴訟提起、違憲・違法判決が予想され、闘いはむしろこれからだ。憲法を空文化させない国民の努力と平和への希求が権力の暴走を止めることになるだろう」と、今後の展望を示す。

一方、外国のメディアの反応はかなり厳しい。例えば、ドイツの高級紙は「平和主義からの安倍の離反」というタイトルで、集団的自衛権行使に反対する演説をして、新宿駅南口で焼身自殺をはかった男性のことも特電で伝えている(Frankfurter Allgemeine vom 1.7.2014)。また、週刊誌『シュピーゲル』のオンライン版も、政府の憲法解釈変更(Umdeutung)に対する市民の反対運動を紹介しつつ、新宿駅南口での「抵抗からの焼身」に言及している。この事件のことは国内のメディアが抑制的な分、海外メディアが詳しく伝えている。


安倍首相は、1日の閣議決定後の記者会見で、「朝鮮半島有事」を念頭に置いた、日本海を航行する「お母さんと子どもたちを乗せた米艦」パネルを懲りずに使い回した。安倍首相は歴史問題で徹底的に対韓関係を冷却させ、集団的自衛権の行使が最も「必要」な場面である「朝鮮半島有事」では、早速韓国政府からその行使を牽制されている。

韓国・聯合ニュースは、「集団的自衛権行使決定を強く批判=韓国与野党」として報道した。与党セヌリ党の報道官は「戦犯国の日本が軍備拡大や軍事再武装を正当化する動きをみせることについて、朝鮮半島をはじめとする北東アジアに軍事的な緊張が高まるのではないか懸念される」、「日本の集団的自衛権行使容認の方針にわが政府があまく対応してはならない」と述べ、「北東アジアと国際社会の平和が侵害されれば、国際社会とも連携し、日本の独善的な動きを阻止すべきだ」と強調した。最大野党の新政治民主連合の報道官も、「戦犯国として過去を清算せず、戦争参加への可能性を示した日本政府を強力に糾弾する」と批判した。

韓国外交通商部は1日、「集団的自衛権行使等に関する日本の閣議決定関連外交部報道官声明」で、「我が政府は、日本が集団的自衛権の行使において朝鮮半島の安保及び我々の国益に影響を及ぼす事案は、我々の要請または同意がない限り決して容認できないということをもう一度明確にする」、「日本政府は、防衛安保と関連した問題において、歴史に起因する疑問と憂慮を払拭させて、周辺国から信頼を得ることができるように歴史修正主義を捨てて正しい行動を見せなければならない」とした。

韓国を「我が国と密接な関係にある他国」であるとは言わない安倍首相。ネット上では「助けてくれと言われても韓国なんか誰が助けてやるか」という韓国に対する蔑視・憎悪の感情を吐き出した言説があふれている。日韓関係のこの異様な関係の改善こそ、政府が取り組むべき最大の課題ではないのか。

閣議決定は「パワーバランスの変化や技術革新の急速な進展、大量破壊兵器などの脅威等により我が国を取り巻く安全保障環境が根本的に変容し、変化し続けている状況」という。だが、安倍首相が集団的自衛権の行使を叫べば叫ぶほど、周辺国を刺激し、「我が国を取り巻く安全保障環境」が悪化している。上記に引用した文章中の「脅威等」の「等」には、「安倍政権による閣議決定」も含まれることに、米国一辺倒の安倍首相や外務官僚は気づいていない。

さて、今回の閣議決定の主な論点については、この「直言」でも折に触れて批判してきた。総論でも各論でもたびたび登場する「積極的平和主義」のまやかしについてはすでに論じた。武力行使「新3要件」のごまかしは『世界』7月号の拙稿で徹底的に批判している。また、各論の事例、例えば米輸送艦による邦人輸送防護というあり得ない想定や、ホルムズ海峡における機雷掃海のインチキ性についても、『世界』拙稿や「直言」でその嘘を明らかにしておいた。


今回、改めて閣議決定の全文を通読してみて、全6900字強のなかで印象に残った言葉がある。それは「切れ目のない」である。「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」というタイトルと、本文4箇所の計5箇所に出てくる。興味深いことに、安倍首相に屈した山口那津男公明党代表の記者会見(7月1日)の冒頭の言葉も、「切れ目ない安全保障に関する立法措置を検討してもらいたいという安倍首相の要請に応じ、結論を出した」というものだった。安倍首相の記者会見でも複数回出てきたこの言葉の意味するところは何か。

現行の安全保障法制には「切れ目」が随所にあり、それにより種々の不都合を生じているという認識のもと、武力行使を含む対応が迅速にとれるようにするため、現行法制にある事前手続きの簡略化をはかるということで、「切れ目のない」状態をつくるということではないだろうか。

実際、「切れ目のない」が使われた前後の文章を見ると、タイトルや総論を除けば、「武力攻撃に至らない侵害〔グレーゾン事態〕への対処」の項で2箇所ある。一つは警察・海保との密接な関係をはかる上で、手続きの迅速化と、状況に応じた早期の下令ができるようにするという文脈であり、もう一つは米軍との連携に際して、武器等防護(自衛隊法95条)を「参考にしつつ」法整備をはかるという文脈である。米軍の「武器等」を守るために、自衛隊が武器を使用できる。仰天の発想である。

自衛隊法95条は、「自衛隊の武器、弾薬、火薬、船舶、航空機、車両、有線電気通信設備、無線設備又は液体燃料」の警護の際に、その防護に必要な限度内で武器が使用できるという規定である。本来、地上にある弾薬庫や武器庫などが襲われたときの防護を想定している。自ら地球の裏側まで行って、そこで自分の武器(艦艇も含む)を守るために武器が使えるというのは、かなりの拡張解釈である。閣議決定はさらに「米軍の武器」までも守れるように95条の法改正をするという趣旨だろう。武器使用の範囲は際限なく広がっていく。このように、「切れ目のない」法整備とは従来のハードルをことごとく下げたり、外したりすることの言い換えではないだろうか。

今回の閣議決定を読んで改めて問題と感じた点をさらに挙げると、従来の政府解釈の「武力の行使と一体化」論を前提にすると言いながら、その実質的な放棄が行われていることである。これまでの解釈では「後方地域」にせよ「非戦闘地域」にせよ、地理的概念ではないことは強調されてはいた。しかし、今回それすら、「自衛隊が活動する範囲をおよそ一体化の問題が生じない地域に一律に区切る枠組みではなく…」として相対化し、その上で、「現に戦闘行為を行っている現場」のみを外して、活動範囲を一気に拡大した。従来は、「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる一定の地域」というのが「非戦闘地域」の定義だった(旧イラク特措法2条3項)。今回、それを、数時間前まで戦闘が行われ、死体がゴロゴロ転がっている地域でも、「現に」戦闘が行われていなければ活動できることになる。米軍の戦闘部隊に随伴して行動することが可能となる。「武力の行使の一体化」論は「歯止め」としての賞味期限を終えたことになる。

集団的自衛権の行使の問題と言いながら、閣議決定では「駆け付け警護」に伴う武器使用、「任務遂行のための武器使用」、邦人救出のための武器使用など、これまで日本が抑制してきた軍事的機能を解き放とうとしている。その意味では、従来のハードルを次々と撤去していく「切れ目のない」法制化が狙われている。「切れ目のない」とは、「歯止めのない」と同義語なのである。

この閣議決定のコアは、「新3要件」なるものを、内閣の全員一致の意思としてオーソライズしたことにある。「新3要件」は自衛権の3要件の実質的な否定の上にたっている。「我が国に対する急迫不正の侵害(武力攻撃)」がないのに、「我が国と密接な関係にある他国」に対するものまで「我が国」と同じ扱いで「自衛の措置」が憲法上認められるとするのは、従来の政府解釈が自衛力合憲論の決定的理由としてきた「自衛のための必要最小限の実力」という根幹部分を否定することと同義である。「自衛」は「他衛」であると強弁することで、「新3要件」は政府の自衛隊合憲解釈を「根底から覆して」しまったのである。閣議決定の最後の一文が、新3要件が「憲法の規範性を何ら変更するものではなく…」としているのは、「戦争は平和である」(ジョージ・オーウェル『1984』)と同じようなダブルスピークに聞こえる。

閣議決定については突っ込みどころ満載である。4日の授業で、予定を変更して、閣議決定の全文を読んだ上で感想を聞いてみた。すでに触れた論点のほかには、国際法と憲法の効力関係で二元説ともとれる扱いをしている箇所があること(3(4))、前文の法規範性を否定する立場をとっている内閣が、前文の平和的生存権を根拠に使ってしまうおかしさ等々、さまざまな意見が出たが、ここでは解説は省略したい。私からは、この問題の背後には、外務官僚・OBのなかにある「湾岸トラウマ」が言われるが、それはまやかしであることを説明した。また、『東京新聞』7月2日付社説「9条破棄に等しい暴挙」に触発されて、カール・シュミットの「憲法破毀(破棄)」の議論についても解説した。これらについては、すべてリンクした「直言」をお読みいただきたい。


# by asyagi-df-2014 | 2014-07-08 05:35 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

集団的自衛権16-閣議決定批判のために

 7.1の閣議決定を批判するために、以下、立憲デモクラシーの会声明を引用する。

安倍内閣の解釈改憲への抗議声明 

                                2014年7月2日
                              立憲デモクラシーの会

 安倍内閣が7月1日、閣議決定によって憲法9条の政府解釈を変更し、集団的自衛権の行使を可能にする方針を示したことは、憲法の枠内における政治という立憲主義を根底から否定する行為である。これは、一内閣が独断で事実上の憲法改正を行おうとするに等しく、国民主権と民主政治に対する根本的な挑戦でもある。

 私たちは先に、以下のような論点を示した(6月9日)。

1 解釈改憲は憲法に基づく政治という近代国家の立憲主義を否定する。

2 首相が示した集団的自衛権を必要とする事例等は、軍事常識上ありえない「机上の空論」であり、強硬策がかえって危険を高めることを無視している。

3 「必要最小限度」の集団的自衛権の行使は不可能である。

4 東アジアで求められているのは、緊張の緩和である。

このたびの閣議決定は、以上の論点に照らし、とうてい容認できず、ここに強く抗議する。

A 暴走する政府は民主政治を破壊する

 与党間の協議過程は、不誠実を極め、国民の生命を守る政府としての責任感が欠如したものであった。安保法制懇の報告を受けた記者会見(5月15日)で安倍首相は、現実性のない事例を示しつつ、「私たちの命を守り、私たちの平和な暮らしを守る」ために集団的自衛権の行使が不可欠であると訴えたが、その際に彼は、イラク戦争のような戦闘に参加することは今後も決してなく、国連決議による集団安全保障への参加もないと明言した。しかし、その後の与党協議の中では、機雷掃海等をめぐって、集団的自衛権に加えて集団安全保障への参加も求めるなど、幾度も前言が翻された。

 この場当たり的な解釈変更の強行過程そのものが、不幸な戦争の経過を思い起こさせる。国民の生命を守る名目で始められた戦闘は、泥沼に引き込まれるように全面的な戦争に移行したが、与党協議は、こうした際限のない拡大を再現しているかのようである。機雷除去であれ、ひとたび武力行使に加わった後に、自衛隊が「必要最小限」の範囲で引き返せるとは机上の空論に過ぎない。しかも、武力行使の範囲をなし崩しに拡大していく意図を政権が抱いていることは、このほど示された「想定問答」からも明らかである。

 国家のあり方や国民の権利・安全の根幹に関わるような重要な事項について、時の政府の暴走に「歯止め」をかけるのが立憲主義の要諦であるが、安倍政権はこの原理を破壊し、その時々の政府が武力行使の範囲を自在に決定できる体制に変えようとしている。戦後日本が憲法と共に追求してきた安全保障の大原則を転換するのであれば、国民的な議論を経た憲法の条文改正が不可欠である。

B 集団的自衛権行使は違憲であり、安全保障にも寄与しない

 我が国の平和と安全を維持しその存立を全うするため、(1)日本に対する急迫不正の侵害があったとき、(2)これを排除するために他に適切な手段がない状況では、(3)必要最小限度の実力を行使する、という限度で個別的自衛権を認めることは憲法9条と矛盾しないというのが、これまでの政府解釈であった。この解釈は、日本への侵略に抗する抑止力を確保すると共に、自衛権の行使に明確な歯止めを設け、しかも日本が他国を侵略しないと明示することで、東アジアの緊張緩和に寄与してきた。

 これに対し、日本が直接攻撃されていないのに、日本と密接な関係にある外国が攻撃を受けたとき、それに対処するために集団的自衛権として武力を行使することは、憲法9条2項に照らして違憲である。そして、従来、集団的自衛権の名の下に数々の不当な武力行使が正当化されてきたことを考えれば、行使容認は、日本が無用な国際紛争に巻き込まれるようになるという点で、中長期的に見て、安全保障に寄与しない。

C 政府解釈による自衛権の拡大は立憲主義を破壊する

 今回の閣議決定では、上述の個別的自衛権発動の3要件の(1)に代わって、「わが国と密接な関係にある他国に対する攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」を挙げて、憲法上「自衛の措置」として武力の行使をすることを認め、これについて「国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合がある」という。

 こうして政権側は、国内向けには集団的自衛権を否定した1972年の政府見解の論理との表面的な整合性を装いつつ、結局のところ、国際法上の集団的自衛権が行使できるという真逆の結論を導いており、これは憲法9条を正規の改正手続きを経ずして無効化する欺瞞に満ちた解釈である。

 さらに、自国の侵略への反撃という明確な基準を捨てることは多くの問題をもたらす。第一に、かつての「満蒙は日本の生命線」といった調子のスローガンと同様、自衛権の適用範囲が無限に広がりうる。それは、憲法9条の存在意義をほとんど無に帰してしまうであろう。第二に、その時々の政府が憲法解釈を自在に変更できるという先例を残すことは、憲法の運用をきわめて不安定なものとし、立憲主義の根幹を破壊する。

 立憲デモクラシーの会は、憲法改正によらず政府解釈の恣意的な変更をもって集団的自衛権の行使を可能とする今回の閣議決定に反対し、今秋の臨時国会における関連法案の審議過程など、あらゆる機会をとらえて立憲主義に基づいた民主政治への速やかな復帰を求めていく。


# by asyagi-df-2014 | 2014-07-07 20:59 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

集団的自衛権-今後の運動についての一つの示唆

 今後の運動のあり方について、井上正信弁護士が、一つの示唆を示してくれています。
「【NPJ通信・連載記事】憲法9条と日本の安全を考える」(井上 正信弁護士)を、以下必要項目を抜粋し引用。

・閣議決定は公明党が妥協してしまった以上、阻止することは不可能です。他方で閣議決定だけではほとんど意味はありません。確かにこれまでの政府解釈を根本的に変更するのですから、大きな一歩を踏み出したことは間違いありません。しかしそれだけで物事が変わるというものではないという点も、抑えておく必要があります。

・7月1日の閣議決定により、二つのことに途を開こうとしています。一つは12月に予定されている新しい日米防衛協力の指針に集団的自衛権行使や国際平和協力活動での武力行使、グレーゾーンで自衛隊が行動することを前提にした内容を盛り込むこと。もう一つは9月から始まるはずの臨時国会で、集団的自衛権行使や国際平和協力活動で武力行使をすることを前提にした防衛法制の改正法案を閣法として提出するということです。

・日米防衛協力の指針策定は阻止できないでしょう。しかし、臨時国会へ提出される法案に対する反対運動をこれから強めて行けば、それを阻止できる展望はあります。臨時国会で防衛法制の改正が安倍内閣の思うようにならなければ、防衛協力の指針の内容にも影響を与えるでしょう。

・私は、閣議決定はこれから始まろうとする本格的なせめぎ合いの「号砲」という位置づけと理解しています。閣議決定に対する市民の怒りは今頂点に達しています。6月30日の官邸前の抗議行動では4万人が声を上げたとのことです。安倍内閣がいくら憲法破壊の閣議決定をしても、憲法9条は無傷で残っています。

閣議決定やこれから提出される法案が憲法違反であることは動かせません。今こそ憲法9条の意義を私達が確かめ確信し、安倍内閣には思い知らせるチャンスです。

5 今後の法整備の進め方

閣議決定には、立法措置をとると明確に記述している箇所が3カ所ある。グレーゾーン事態での米艦防護のための自衛隊法第95条の改正、国際平和協力活動での「駆け付け警護」と「任務遂行のための武器使用権限」のための法改正(PKO協力法と思われる)、集団的自衛権行使である。それ以外にも、グレ-ゾーン事態での自衛隊の出動規定についても法改正の可能性を示唆している。

現在の有事法制を含む防衛法制はすべて個別的自衛権行使とそれ以外での海外での武力行使禁止原則に基づいて組み立てられている。今回の閣議決定が国内防衛法制に及ぼす影響はすべての防衛法制にわたるものになる。

・集団的自衛権行使、国連安保理による軍事的措置に関しては、武力攻撃事態法と自衛隊法、防衛省設置法、周辺事態法、周辺事態船舶検査法の改正が必要になる。
・武力攻撃事態法では、集団的自衛事態や国連安保理の軍事的措置の事態での自衛隊の出動手続き、自衛隊法では、第3条自衛隊の任務、第6章自衛隊の行動、第7章自衛隊の権限のいくつかの条文の改正が必要となる。
・防衛省設置法は防衛省の任務、所掌事務の改正が必要になる。
・周辺事態法では、後方地域支援概念を取り払うこと、第3条別表を大幅に改正が必要になる。
・周辺事態船舶検査法は全面改正になるであろう。同法は戦時臨検とは異なり、対象船舶の国籍国の同意、乗船検査は船長の同意、進路変更や寄港地変更については強制措置は出来ない、船舶への危害射撃は出来ないなど、軍事的強制は不可能な法律だ。

・グレーゾーン事態では、領海警備法(仮称)のような新規立法が企てられているが、現在のところ公明党との合意がないので、今後の動きを注目する必要がある。グレーゾーン事態で米艦防護のための自衛隊法第95条(武器防護のための武器使用)改正が必要だ。

・PKO協力法改正は、既に民主党内閣時代に法案化作業は終了し、内閣法制局との意見調整が残されるだけとなっている。内容は不明であるが、それが出発点となろう。

・在外邦人救出では、自衛隊法第84条の3、同法第94条の5の全面改正が必要になる.現行法は在外邦人の輸送に関する規定であるから、在外邦人救出活動が加わるであろう。

・有事法制の改正では、集団的自衛事態での国民保護法の改正、米軍支援法、特定公共施設利用法などの個別事態法制の改正も不可欠になる。

・政府は閣議決定と同時に各省庁で防衛法制改正に関する検討を開始している。新しい日米防衛協力の指針の内容をにらみながら、防衛法制の改正作業が進められるであろう。しかし、検討される防衛法制の改正は、閣議決定が憲法第9条に違反する内容であるから、いずれも憲法9条との矛盾抵触は避けられないであろう。
・どのような法案を何時提出するかは、今後政府内での法案作成作業の進捗と、国民世論の動向を見据えて判断されるであろう。例えばグレーゾーン事態での自衛隊の行動・権限の強化は、警察庁や海上保安庁が強く抵抗するであろう。臨時国会へ提出される法案がどのくらいの本数になるかわからないが、最低限度、自衛隊法、防衛省設置法、周辺事態法、同船舶検査法、PKO協力法くらいは予想される。


# by asyagi-df-2014 | 2014-07-06 16:14 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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