集団的自衛権-12-20140627・28の社説から考える

6月27日と28日に出された各社の社説に、7月1日にも閣議決定されようとする集団的自衛権を考える。

 南日本新聞は、次のように出張する。
「集団的自衛権は他国への武力攻撃を、自国に対する攻撃と見なして反撃できる権利だ。
閣議決定されれば、憲法9条に照らし、戦後日本の安全保障政策の根幹をなしていた『専守防衛』の縛りを解くことになる。」
「多くの国民が納得するとは思えない。本来なら解散して、国民に信を問うべき重大な政策転換である。国会審議だけでなく、幅広く慎重な議論が必要だ。振り返ると、これまでの与党協議は驚くほど性急だった。」
 この社説の結論である「いくら修正して限定的容認と強調しても専守防衛からの逸脱に変わりはない。論議なしのなし崩しの容認は許されまい。」ということについては、誰が考えても理解できる今回の欠陥である。

 続いて、東京新聞はその社説で、次のように主張した。
「武力で他国を守る集団的自衛権の行使容認をめぐり、政府は二十七日午前の与党協議で、憲法解釈変更を盛り込んだ閣議決定の最終案を提示した。」
「新たな武力行使の三要件として「密接な関係国への武力攻撃で、国民の生命や権利が根底から覆される明白な危険がある」などを規定。こうした武力行使が「国際法上は集団的自衛権が根拠となる場合がある」と、安倍晋三首相がこだわる集団的自衛権の文言も盛り込んでいる。しかし、「明白な危険」は政府の判断に委ねられており、拡大解釈の懸念がある。」
「与党は七月一日に次回の協議を行う。政府は与党合意が得られれば、同日中にも閣議決定したい考えだ。」
 特に、武力行使の要件が、「明白な危険」の判断が政府にゆだねられていることの矛盾を指摘している。一方的かつ強行に憲法解釈を行うやり方を現政府の手段が、その危険性を証明している。結局、一度解釈変更を認めさせてしまえば、今後はどうにでもできる権限を無制限に与えたことになる。

 また、琉球新報も次のように続ける。
「9回を数えた与党協議の大半は、集団的自衛権行使容認を前提とした事例の検討や閣議決定案の文言をめぐる調整に費やされている。法解釈の議論というよりは、公明党が合意できる表現を探すための「言葉遊び」の側面が強い。」
「最終案は集団的自衛権行使容認だけでなく、『集団安全保障』の武力行使への自衛隊参加にも含みを残している。戦後、長らく日本の安全保障政策の根幹をなしていた『専守防衛』という方針の破棄を意味する。『他国に軍事力を行使しない国』としての国際的信用もかなぐり捨てることになる。」
 ここでは、「他国に軍事力を行使しない国」という痛切な反省の上に立った崇高な理念を今こんなに簡単に捨てていいのかと問うている。
 特に、沖縄県の二紙に特有な「沖縄は住民を巻き込んだ国内唯一の地上戦を経験した。日本が再び戦争ができる国になる動きを許すことはできない。」との新聞社としての決意を表明している。

 同様に、沖縄タイムスも問題点を指摘する。
「集団的自衛権の行使にあたる「強制的な停船検査」など与党に示した八つの事例は、閣議決定後に関連法整備を進めれば、いずれも自衛隊による活動が可能となる。その分、自衛隊の国外での活動が急速に拡大するのは確実だ。政府の想定問答集によると、戦時のシーレーン(海上交通路)での機雷掃海など、国連の集団安全保障に基づく武力行使についても限定的に容認する考えである。」
「集団的自衛権の行使にあたるとして禁じられてきた米艦防護が可能になれば、朝鮮有事において自衛隊が参戦する可能性も高まる。中台危機の場合、どうなるのか。現行憲法の下では集団的自衛権の行使はできない、という憲法解釈を維持している間は、そのことを理由に米軍の要請を断ることができた。だが、いったん行使容認に踏み切れば米軍との一蓮托生(いちれんたくしょう)の度合いは一気に高まるだろう。」
 これまでも、立憲主義の否定につながるということは多くのものが主張してきた。「憲法解釈の変更によって集団的自衛権が使えるようになれば、9条の条文はいじっていないのに、9条でしばりをかけることができなくなる。憲法によって政府をしばるという立憲主義もまた、危機的な状況にある。」ということである。

 さらに、毎日新聞社も指摘する。
「憲法解釈変更の根拠は、1972年の政府見解だ。見解の一部をつまみ食いして、集団的自衛権の行使についての結論だけを『許されない』から『許される』に逆転させた。政府の想定問答は『見解の基本的論理の枠内で導いた論理的帰結。解釈改憲ではない』としている。」
「強引な理屈でも、いったん閣議決定してしまえば、あとはあいまいな基準のもと時の政権の判断次第で何でもできる。政府のそんな狙いが透けて見えるようだ。憲法と国民をあまりに軽んじている。」
 このように流布されてきた憲法解釈変更の考え方とされた1972年の政府見解の流用は、ここで指摘されているように欺瞞に過ぎない。

 ここでは、5社の社説を見たが、こうした論点をまとめると、今回の集団的自衛権に反対する理由が明確となる。


# by asyagi-df-2014 | 2014-06-29 05:50 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

原発コストを考える

 原発を再稼働を推進する側は、二酸化炭素にからめた環境問題や原発コストの優位性を
その理由としてきた。もちろんこの場合、安全神話で回りを塗り固めているが。
 その原発コストに関連して、朝日新聞は2014年6月27日、「原発コスト、国民に転嫁 火力より割高、専門家試算 賠償金、料金原価に組み込み」と報じた。
具体的には、「停止中の原発のうち40年の『寿命』を迎える5基を除く43基が15年に再稼働し、40年で廃炉になる条件を加えたところ、11・4円になった。これだと、同委員会が出した石炭火力の10・3円、LNG(液化天然ガス)火力の10・9円と比べて、原発は割高となる」ということで、原発コストの優位性も崩れている。
 以下、朝日新聞引用。

【原発コスト、火力より割高 専門家試算、福島第一の対策費増加】

 運転を止めている全国の原子力発電所が2015年に再稼働し、稼働40年で廃炉にする場合、原発の発電コストは11・4円(1キロワット時あたり)となり、10円台の火力発電より割高となることが、専門家の分析でわかった。東京電力福島第一原発の事故対策費が膨らんでいるためだ。政府は原発を再稼働する方針だが、「コストが安い」という理屈は崩れつつある。

 電力会社の経営分析で著名な立命館大学の大島堅一教授と、賠償や除染の調査で知られる大阪市立大学の除本理史(よけもとまさふみ)教授が分析した。近く専門誌に発表する。

 両教授が、政府や東電などの最新資料を分析したところ、福島第一原発の事故対策費は約11兆1千億円に達した。政府が昨年12月に示した「11兆円超」という見積もりを裏付けた。

 発電コストは、発電所の建設費や燃料などの総額を総発電量で割って計算する。民主党政権がつくったコスト等検証委員会は11年12月、原発の発電コストを実態に近づけるため、実際にかかる事故対策費や政策経費も総額に加えることを決め、試算した。

 このときの事故対策費は約5兆8千億円とされ、原発の発電コストは8・9円と試算された。04年の経済産業省の試算は5・9円だった。大島教授が今回、この計算式に約11兆1千億円の対策費を当てはめたところ、9・4円になった。

 原発の再稼働手続きが進む実際の状況に近づけようと、停止中の原発のうち40年の「寿命」を迎える5基を除く43基が15年に再稼働し、40年で廃炉になる条件を加えたところ、11・4円になった。これだと、同委員会が出した石炭火力の10・3円、LNG(液化天然ガス)火力の10・9円と比べて、原発は割高となる。(編集委員・小森敦司)


 東京電力福島第一原発事故で原発の発電コストは膨らみ、その負担は国民に押しつけられている――立命館大学の大島堅一教授と大阪市立大学の除本理史(よけもとまさふみ)教授は、原発のコストとその負担が厳しく問われるべきだと主張している。

 両教授の分析で出た東電の原発事故対策費約11兆1千億円は、民主党政権のコスト等検証委員会が原発の発電コストの計算で使った約5兆8千億円の約2倍だ。

 原発は放射性物質をまき散らす大事故をいったん起こすと、火力などとはけた違いの甚大な経済被害をもたらすことを示す。原発はコストが安いと言われたのは、こうした事故対策費などをコストに含めてこなかったからだ。

 大島教授が試算した1キロワット時あたり11・4円という原発の発電コストは、停止中の原発が2015年に運転を再開し、「寿命」の40年で廃炉にするという条件も加えたものだ。

 安倍政権は4月に決めたエネルギー基本計画で、原発を「重要なベースロード電源」として、再稼働する方針を明記したが、各電源の発電コストは数字で示していない。事故対策費なども含めると、原発のコスト面での優位性が小さくなることを恐れたのではないか。原発比率など電源構成のあり方を決める際には、こうした実態に近いコストを考慮する必要がある。

 約11兆円もの事故対策費の負担が国民に転嫁されつつある状況も、両教授は明らかにした。

 例えば損害賠償の費用は、国が必要な資金を東電に用意し、この大部分を業界全体が「一般負担金」として返す仕組み。すでに原発を持つ9電力会社のうち7社が、電気料金の値上げの際に料金の原価に算入している。

 除染費用も、本来国庫に戻すべき政府の東電株の売却益が充てられる。事故炉の廃止費用も会計規則の変更などで電気料金に上乗せされることになった。一方で、東電をつぶさなかったことで株主や社債権者、金融機関が守られる、というゆがんだ構図が続く。

 両教授は「事実上、東電を救済する動きが強まっている。これでは電力会社が原発事故のリスクを軽視することになる」とみる。国費を使うにしても、「事故に対する国の責任を認め、それに基づく負担ということをはっきりさせるべきだ」と指摘している。(編集委員・小森敦司)


 ■東京電力福島第一原発事故の費用と負担の状況

  費用はどれだけか(単位・億円)  誰が負担するのか

損害賠償・賠償対応  49,865 電気利用者(主に電気料金)

除染         24,800 国民(東電株の売却益)

中間貯蔵施設     10,600 国民(電源開発促進税)

事故収束・事故炉廃止 21,675 電気利用者(電気料金)

原子力災害関係経費   3,878 国民(国の予算)

計         110,819


# by asyagi-df-2014 | 2014-06-28 05:30 | 書くことから-原発 | Comments(0)

沖縄から-名護市議会決議-2014年6月25日

 辺野古を巡る状況は、厳しくなりつつある。
 その中で、地元の名護市議会は、懸命な、しかし当たり前の意思を示している。
 このことを、まずは知るべきである。

 琉球新報は、「名護市議会、制限水域拡大『撤回を』日米に要求決議」と、2014年6月26日に報じる。
 以下、琉球新報引用。


 【名護】名護市議会(比嘉祐一議長)は25日の本会議で、米軍普天間飛行場の辺野古移設に向けた立ち入り禁止水域や漁業制限水域の拡大に反対する意見書と決議、集団的自衛権行使を可能にする憲法解釈変更に反対する意見書を賛成多数で可決した。「道の駅許田」を運営する市出資の第3セクター、やんばる物産の売上金紛失問題の真相解明を求める決議は全会一致(退席2)で可決した。
 「日米両政府による辺野古沖立ち入り制限水域拡大合意の撤回を求める意見書」は、日米両政府が合意したキャンプ・シュワブ沖の米軍提供水域内の常時立ち入り禁止区域となる「臨時制限区域」の設定や、漁船操業制限法に基づく操業禁止水域の拡大について「市民県民の反対を押し切って埋め立てを強行する政治的狙いがある」と批判。市民の生命・財産を守るべきとして拡大の撤回を求めた。
 集団的自衛権に関する意見書は、米軍基地を過度に負担する県民は他国の戦争に巻き込まれる不安を抱いていると指摘。国民的な議論もなく「一内閣の政治的判断による憲法解釈の変更は容易に行うべきではない」と安倍政権を批判した。
 水域拡大や集団的自衛権に関する意見書や決議の計3案は賛成16、反対9、欠席1で可決した。
 道の駅許田の決議は1903万円の不明金がありながら被害届を取り下げた対応が極めて不透
明として、真相解明へ筆頭株主である市の積極的関与を求めた。採決では2人が退席した。


以下、名護市議会決議引用。


決議案第2号


日米両政府による辺野古沖立入り制限水域拡大合意の撤回を求める決議

日米両政府は6月20日の日米合同委員会で、米軍普天間飛行場移設先となる名護市辺野古沖で、常時立ち入り禁止となる臨時制限区域の設定と、日米地位協定に基づき代替施設建設のため日本政府が同区域を共同使用することを合意した。
制限区域は、埋立て予定地を取り囲むように沿岸から最大で沖合約2.3キロまで広がる561.8ヘクタールで、工事完了日まで常時立ち入りを禁止することになっている。これまでは「5・15メモ」で設定された陸から50メートル以内の第一水域が常時立ち入り禁止であったが合意によってその範囲は大幅に広がることになる。
合意では制限拡大区域の用途を①陸上施設の保安②代替施設建設のための区域の保安③水陸両用訓練と設定した。
防衛省は制限区域の境界沿いにブイ(浮標)を設置する方針だと言われ、制限水域内で日本政府・防衛局の建設作業が進められる。また、これによって従来まで行われていた同海域での漁業が全面的に禁止される。このことについて小野寺防衛大臣は「作業を安全にしっかりと確保していくための対応が重要だと思う」と述べ安全確保の側面を強調した。
また、合意に関して県幹部は政府からの具体的説明はなかったとして「寝耳に水だ」と驚いたという。このことについて県の関係者は、日米合同委員会は非公開で、県民に不利益な内容か、どうかすら確認できないと、県が関与できない状況を強調したという。
さらに、水域を拡大する理由の一つとして挙げられている水陸両用訓練については、米軍による水陸両用戦車の訓練に必要な区域拡大とは思えない。今回の区域拡大には軍事的な必要性や合理性はない。市民、県民の反対を押し切って埋め立てを強行するための政治的な狙いがあることは間違いない。私たち名護市民は辺野古新基地建設のための埋め立て強行は認めることはできない。漁業の一方的な禁止も断じて許せない。
よって名護市議会は、市民の生命・財産、生活を守る立場から、日米両政府に対し普天間飛行場の辺野古移設のための常時漁業・立ち入り禁止区域の拡大に反対し、臨時制限区域の拡大と同海域の日米共同使用の合意を撤回するよう強く求めるものである。
以上、決議する。
                       平成26年6月25日
                                     沖縄県名護市議会
宛先:駐日米国大使、在沖米国総領事


# by asyagi-df-2014 | 2014-06-27 05:50 | 沖縄から | Comments(0)

安倍晋三政権の「成長戦略」に強く反対する 2

 この「成長戦略」については、以前にも書いているが、「現政権が行おうとしている『成長戦略』は、実は、あるべき『規制緩和』という重しをはずし、一握りの収奪者だけに利潤を集中させる構造変換政策に過ぎないものであり、新自由主義の悪しき政策に過ぎない」ということをまず指摘する必要がある。
 これまでの新自由主義がもたらしたものは、富の過度な一部集積と労働者・国民の窮乏化であり、地方の疲弊という姿しか作り出してはいない。
 この新自由主義ということについては、 例えば、琉球新報は2014年6月18日の社説で「 成長戦略、市場原理主義でいいのか」と新自由主義に基づく成長戦略への疑問を投げかけた。
 以下、琉球新報社説、引用。


 日本企業の国際競争力を高めるとの大義名分の下、大企業を優遇する半面、生活者への配慮に欠けるという印象は否めない。
 政府は、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の「第3の矢」となる新たな成長戦略の素案を示した。安倍晋三首相が「岩盤」と呼ぶ農業、雇用、医療分野の規制の改革を打ち出した。法人税減税や労働時間規制の緩和など、経済界や投資家の要望をほぼ全面的に受け入れたのが最大の特徴だ。
 昨年6月に公表された成長戦略は、めぼしい政策に乏しく、アベノミクスの生命線である株価の急落を招くなど市場を失望させた。新たな成長戦略が「株価重視」と指摘されるゆえんだ。
 ただ、市場を意識するあまり、議論が生煮えとの批判も根強い。新成長戦略の具体的な制度設計はこれからで、スケジュールや数値が明確でないためだ。目玉とする法人税減税の財源の裏付けがないのが象徴的だ。
 一方、法人税減税の穴埋めとして、赤字企業でも対象となる外形標準課税の強化が取り沙汰され、中小零細企業へのしわ寄せが懸念される。雇用の規制緩和でも人件費の抑制や長時間労働を助長するとの批判もある。成長戦略の行方は不透明と指摘せざるを得ない。
 安倍政権が中小零細や家計に冷ややかと映るのは、「トリクルダウン理論」が見え隠れするからだ。滴が上から下にしたたり落ちるように、大企業が潤えば中小零細企業も栄え、やがて賃金上昇など社会全体に恩恵が及ぶとの考え方だ。
 ただ、この理論はあくまでも仮説で実証されたわけではない。しかも、この理論は、中央と地方の格差や貧困の拡大を招いた「小泉構造改革」にも通底する。
 過去、十数年の日本経済の停滞は、市場原理主義が、消費性向の高い若年・子育て世代の貧困を招いたからという指摘もある。だとすれば、安倍政権の生活者軽視の成長戦略は、効果が薄いどころか、むしろ経済の縮小を招かないか。
 さらにアベノミクスは、国家の繁栄のためには国民の痛みもいとわないという、国家至上主義的な考え方も見え隠れする。集団的自衛権の行使容認など安全保障政策とも重なるが、極めて危うい。
 成長戦略は、主役である国民の不安や不満を置き去りにしてはならない。理念から見直すべきだ。

 ただ、小泉政権を引き継いだ第1次安倍政権以来、この内閣は、「成長戦略は、主役である国民の不安や不満を置き去りにしてはならない」ことを基本理念とするような叡智は持ち合わせていない。
 
 今回の「成長戦略」を考える上で最も重要な観点は、「3.11をどう捉えるか」ということから、一連の政策について考えてみることの重要性である。
 「3.11をどう捉えるか」という発想を出発点にすることでしか、実は持続可能な社会を築くことはできないことを肝に銘じなければならない。
 例えば、2014年5月21日の大飯原発運転祭止め判決で、樋口英明裁判長は、次の判決を下した。
 
「原子力発電所は、電気の生産という社会的には重要な機能を営むものではあるが、原子力の利用は平和目的に限られているから(原子力基本法2条)、原子力発電所の稼動は法的には電気を生み出すための一手段たる経済活動の自由(憲法22条1項)に属するものであって、憲法上は人格権の中核部分よりも劣位に置かれるべきものである。しかるところ、大きな自然災害や戦争以外で、この根源的な権利が極めて広汎に奪われるという事態を招く可能性があるのは原子力発電所の事故のほかは想定し難い。かような危険を抽象的にでもはらむ経済活動は、その存在自体が憲法上容認できないというのが極論にすぎるとしても、少なくともかような事態を招く具体的危険性が万が一でもあれば、その差止めが認められるのは当然である。」

 この判決は、「原子力発電所の稼動は法的には電気を生み出すための一手段たる経済活動の自由(憲法22条1項)に属するものであって、憲法上は人格権の中核部分よりも劣位に置かれるべきものである」と人格権の立場から最優先されるべきは命の問題だと位置づけている。

 「3.11」との関連で、「3.11をどう捉えるか」という発想を出発点にすることに関して、次のように断定している。

「原子力発電技術の危険性の本質及びそのもたらす被害の大きさは、福島原発事故を通じて十分に明らかになったといえる。本件訴訟においては、本件原発において、かような事態を招く具体的危険性が万が一でもあるのかが判断の対象とされるべきであり、福島原発事故の後において、この判断を避けることは裁判所に課された最も重要な責務を放棄するに等しいものと考えられる。」

 つまり、「3.11をどう捉えるか」という発想を出発点にするということは、「3.11]以後の政府の政策に最も必要なものは、「福島原発事故の後において、この判断を避けることは裁判所に課された最も重要な責務を放棄するに等しいものと考えられる。」という視点から、まずは命の問題に立ち返ることから、日本のあり方そのものについて考え直すということである。

 結論的に言うと、今回の「成長戦略」には、この視点が全くない。
 だとしたら、今回の安部晋三内閣の「成長戦略」には、反対するしかない。


# by asyagi-df-2014 | 2014-06-26 06:30 | 書くことから-労働 | Comments(0)

安倍晋三政権の「成長戦略」に強く反対する。

 朝日新聞は、2014年6月24日、「成長戦略と骨太方針を閣議決定」と報じた。
以下、朝日新聞引用。


 安倍内閣は24日、経済政策の指針となる新たな成長戦略と「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)を閣議決定した。国と地方を合わせた法人実効税率を来年度から数年かけて20%台に下げるほか、働いた時間より「成果」を重視する雇用制度を導入するなど、経済界が求めてきた政策を多く盛り込んだ。

 この日夕、骨太の方針をまとめる経済財政諮問会議と、成長戦略をまとめる産業競争力会議を合同で開き、終了後の臨時閣議で正式に決めた。安倍晋三首相は記者会見で「日本経済が持つ可能性を開花させるため、いかなる壁も打ち破っていく」と説明した。

 骨太の方針では、「50年後に1億人を維持する」という人口目標を政府として初めて掲げた。いまの人手不足を解消し、将来の働き手を確保するため、子育て支援などを柱とした女性の就労支援策や、外国人に日本で働いて技術を学んでもらう「技能実習制度」の拡充なども打ち出した。来年度の予算編成に反映したり、今後の国会で関連の法改正案を提出したりする。

 ■新成長戦略の要旨

 【総論】
・日本経済は、実質GDP成長率、雇用情勢、設備投資などの指標をみても力強さを取り戻しつつある。デフレ脱却に向け着実に前進し始めている。
・この1年間の変化を一過性のものに終わらせず、経済の好循環を引き続き回転させるため、日本経済全体としての生産性を向上させ、「稼ぐ力(=収益力)」の強化が不可欠。
 【日本産業再興プラン】
・企業が透明・公正で迅速な意思決定を行う上での諸原則を記載した「コーポレートガバナンスコード」を策定する。
・長時間労働を是正するため、監督体制を強化する。
・時間ではなく成果で評価する新たな労働時間制度を創設。
・19年度末までに「放課後児童クラブ」の定員を約30万人分拡大する。
・育児経験豊かな主婦らを「子育て支援員(仮称)」として認定する仕組みを創設する。
・有価証券報告書に女性役員比率の記載を義務づける。
・女性の活躍を促すため、働き方に中立的な税制・社会保障制度に見直す。
・優秀な外国人材の受け入れ拡大のため環境を整備する。
・外国人技能実習制度を抜本的に見直す。対象職種や受け入れ枠を拡大し、実習期間は最大3年を5年に延長する。
・ロボット技術の活用を広げ、ロボット市場を製造分野で現在の2倍、サービスなど非製造分野で20倍に拡大する。
・数年間で法人実効税率を20%台まで引き下げる。
・国家戦略特区で、外国人家事支援人材に新たな在留資格を与え、創業人材らの受け入れ要件も緩和する。
・年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用方法を見直す。
・地域の活力維持と東京一極集中に歯止めをかけるため、少子化と人口減少克服を目指した総合的な政策推進のため司令塔となる本部を設置する。
 【戦略市場創造プラン】
・医療・介護などを一体的に提供する非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)を創設する。
・保険診療と自由診療を組み合わせた混合診療を拡充するため、新たに「患者申し出療養(仮称)」を創設する。
・農地が所有できる農業生産法人の要件を緩和する。地域の農協が創意工夫できる農協改革を推進する。
・訪日外国人旅行者へのビザ発給要件を緩和する。
・富裕層を対象に、最長1年の長期滞在を可能とする制度を来年度から創設する。
 【国際展開戦略】
・国益を最大化する形でのTPP交渉の早期妥結をめざす。
・日本食や放送コンテンツなどを海外に売り込むクールジャパン推進体制を構築する。
 ■骨太の方針の要旨
【アベノミクスの成果と今後の日本経済の課題】
・日本経済は力強さを取り戻しつつある。もはやデフレ状況ではなく、デフレ脱却へ着実に前進している。
・経常黒字の急減は輸入物価上昇の影響が大きい。資源・エネルギーを安定的に確保する必要がある。
・経済成長を通じた税収増とともに、聖域なき歳出削減で、財政健全化が経済再生に寄与する好循環を目指す。
・復興を原状復帰にとどめず、未来社会としての「新しい東北」をつくる。
・50年後に1億人程度の安定した人口構造を目指す。人口減少を克服する司令塔となる本部をつくる。
【中長期の重点課題】
・税制や社会保障制度が女性の働き方に中立なものにするよう検討する。
・働いた成果が適正に評価されるような仕組みを支援。
・国立大学法人への運営費交付金を抜本的に見直す。
・法人実効税率を数年で20%台まで引き下げることを目指す。引き下げは来年度から開始。財源は、アベノミクス効果で日本経済が改善しつつあることを含め、恒久財源を確保し、年末に決める。
・独立社外取締役の導入などで企業の稼ぐ力を上げ、賃金や配当を通じ還元されることが重要。
・人口急減・超高齢化に対応し、インフラ整備や教育など行政サービスの大胆な見直しに着手する。
・府省横断的な国土強靱(きょうじん)化を推進する。
【経済再生と財政健全化】
・国・地方をあわせた基礎的財政収支の赤字(国内総生産に対する割合)を2015年度までに10年度比で半減、20年度までに黒字化を目指す。
・経済財政諮問会議で、半年ごとに財政健全化の進み具合を確認する。
・社会保障給付費は自然増も含め聖域なく見直す。
・都道府県ごとに医療費の目標が設定されるよう、15年通常国会への関連法案提出に向けて検討を進める。
・医療情報を有効活用するため、医療費請求書の社会保障・税番号(マイナンバー)への導入を検討する。
・薬価改定のあり方について、診療報酬への影響にも留意しつつ、その頻度を含めて検討する。
・防災・減災、インフラ老朽化対策を一層重点化する。



安倍晋三政権の「成長戦略」に強く反対する 2。へ続く。









# by asyagi-df-2014 | 2014-06-26 05:46 | 書くことから-労働 | Comments(0)

沖縄から-慰霊の日、知事平和宣言を考える2

 何年か前まで、沖縄県の平和宣言、広島市の平和宣言、長崎市の平和宣言を比べてみていた時期がありました。
 ある時期から、二つの市に比べると、沖縄県の平和宣言の内容が物足りないものになっていました。何となくそれは、保守県政への批判のようなものになっていました。でも確かに、そこからは、悲惨な戦争を超えようとする人々の叡智と思いのすごみを感じ取ることはできなくなっていました。
 また、慰霊の日をどう受け取るのか。それは、沖縄が発信していることを、今の集団的自衛権論議の中心に据えることが大事なのではないかということに尽きる。
 小学生詩人の『空はつながっている』の朗読から受け取ることができる広がりは、追悼式での政府や県の代表者の声では到底届かない。

 以下、各社の社説引用。


(1)琉球新報社説2014年6月24日:平和宣言 「沖縄の心」を反映させよ

 これは県民が心から共有すべき不戦の誓いとは到底言い難い。沖縄全戦没者追悼式で仲井真弘多知事が発した平和宣言のことだ。
 平和宣言は例年(1)沖縄戦の悲惨さに触れ、不戦を誓う(2)米軍基地の集中による過重負担など沖縄の現状に言及(3)恒久平和の実現に向けた決意-を柱に構成されている。
 今年も従来の考え方を踏襲しているが、米軍普天間飛行場の返還問題では読み手によって解釈が異なってしまう曖昧さが際立った。
 知事は「普天間飛行場の機能を削減し、県外への移設をはじめとするあらゆる方策を講じて喫緊の課題を解決する」とし、そのために「普天間飛行場の5年以内の運用停止を求めている」と述べた。
 あたかも普天間そのものの県外移設を推進するかのように聞こえるが、疑問がある。「県外への移設」は基地自体ではなく「機能」にかかると読めるのだ。そうであれば、オスプレイの訓練の分散など機能の移転を意味する。
 その証拠に知事は当初、宣言から普天間の県外移設要求の文言を削除していた。与党から再考を促されて復活させたものの、昨年まで3年連続で盛り込んだ表現を避けようとしたことは隠しようのない事実だ。「県外移設」の意味が、単なる一部機能の移転であるなら、それは偽装、詐術に等しい。
 「5年内の運用停止」も米政府関係者は明確に否定しており、知事の説明には説得力がない。
 県民が沖縄戦から導き出した最大の教訓は「軍隊は住民を守らなかった」という事実である。
 教訓を直視しているのなら、知事の使命は戦争につながるあらゆる不穏な動きに反対することだと分かるはずだ。県民の命と人権、安全を守り、郷土の自然、文化を保全して沖縄の持続的発展に全身全霊を尽くすことであるはずだ。
 知事は民意が拒否する辺野古移設、解釈改憲による集団的自衛権行使容認などに異議を申し立てることこそが、戦没者の犠牲に報いる自らの責務だと銘記すべきだ。
 辺野古移設で協調する安倍政権の歓心を買うために、平和宣言を空疎なものにしてはならない。知事の個人的な政治信条によって宣言の内容が左右されてもならない。
 来年からは有識者による平和宣言起草委員会を設け、恒久平和を願う「沖縄の心」を名実ともに反映する内容に改めてほしい。

(2)沖縄タイムス社説2014年6月24日:[平和宣言]これほんとに平和宣言?

 慰霊の日の23日、糸満市摩文仁の平和祈念公園をはじめ各地で、おごそかに慰霊祭が行われた。

 沖縄戦の体験者にとって「戦没者の追悼」と「平和への願い」は、切り離すことのできない一対のものである。

 33回忌が終わっても、戦争で亡くなった肉親への追慕の情は、何年たっても薄れることがない。孫を連れて平和の礎を訪れたお年寄りは、花やお茶をたむけ、石碑に刻まれた名前をさすって手を合わせ、「この子たちには戦争の悲惨な体験をさせたくない」と語った。

 戦争で亡くなった肉親への「追慕の情」と、二度とこの地に戦争をあらしめてはならないという「平和への願い」は、ウチナーンチュの根っこにあるもので、県民感情の核ともいえるものだ。

 沖縄戦から69年。体験者の高齢化が進み、戦場での経験を語れる人が急速に減っている。それと並行して、戦争を経験したことのない政治家による「戦争のできる国」への国家改造をめざす動きが後を絶たない。

 「いつか来た道を逆戻りしているのではないか」-平和祈念公園では、戦争への不安を訴える高齢者が例年にも増して多い、という印象を受けた。今年の慰霊の日の大きな特徴だ。

 だが、沖縄全戦没者追悼式での仲井真弘多知事の平和宣言は、戦争への不安や平和を求める切実な声を代弁し、世界に向かって沖縄ならではのメッセージを発信するものではなかった。平和が泣くような「平和宣言」だった。

    ■    ■

 昨年の平和宣言で仲井真知事は次のように指摘した。

 「沖縄は、今もなお、米軍基地の過重な負担を強いられています。日米両政府に対して、一日も早い普天間飛行場の県外移設、そして、日米地位協定の抜本的な見直しなどを強く求めます」

 知事は昨年までの3年間、県民世論を代弁する形で「県外移設」を訴えていた。ところが、今年の平和宣言は、名護市辺野古の埋め立てを承認した自らの一連の行為を弁解するような内容に変わった。

 「沖縄の基地負担を大幅に軽減し、県民の生命や財産を脅かすような事態を、早急に、確実に改善しなければなりません。普天間飛行場の機能を削減し、県外への移設をはじめとするあらゆる方策を講じて、喫緊の課題を解決するために、全力を注がなければなりません。そのために、私は普天間飛行場の5年以内の運用停止を求めているのです」

    ■    ■

 名護市の反対を押し切って辺野古で着々と進む新基地建設の動きと「県外への移設をはじめとするあらゆる方策」を講じることとは、一体、どのようにつながるのか。

 県外移設の公約を破棄したわけではないと主張してきた手前、無理に「県外」という言葉を挿入した印象である。

 外部に向けて発信するからには強いメッセージ性がなければならないが、平和宣言からは平和を希求する沖縄の切実な思いが伝わってこない。

 広島、長崎を含めこんな平和宣言、聞いたことがない。

(3)東京新聞社説2014年6月23日:沖縄慰霊の日に考える アーニーが見た戦場

 きょうは沖縄慰霊の日です。先の大戦では本土防衛の捨て石とされ、戦後も過重な米軍基地負担を強いられる。沖縄県民を犠牲にする変わらぬ構図です。

 日本国内で唯一、住民を巻き込んだ大規模な地上戦の戦場となった沖縄県。激戦は一九四五年四月一日、米軍の沖縄本島上陸で始まり、日本軍が組織的戦闘を終える六月二十三日まで続きました。

 この戦闘に従軍して沖縄の地を踏んだ米国人ジャーナリストがいました。第二次世界大戦の戦場から新聞にコラムを送り続けたアーニー・パイルです。

◆仏から太平洋戦線へ
 この人の名を聞いて戦後の一時期、東京・有楽町にあった占領軍専用の「アーニー・パイル劇場」を思い出す方がいるかもしれません。まさにその人です。占領軍が接収した東京宝塚劇場をアーニーにちなんで改名したのです。

 アーニーは沖縄戦の前、欧州戦線にいました。四四年には、その戦争報道によって、米ジャーナリズム界で最も権威のあるピュリツァー賞を受賞しています。

 アーニーはこの年、ノルマンディー上陸作戦にも従軍します。今年七十周年の記念式典が行われ、ドイツ敗北の転機となった「史上最大の作戦」です。米軍とともに上陸し、激戦の舞台となったフランス大西洋岸の様子を、次のようなコラムに書きました。

 「私は上陸第一日にぬれた砂浜を歩き回っていたところ、流木のような物が二本突き出しているのをよけた。だが流木ではなかった。それらは兵隊の両足だった。両足を除いて完全に砂をかぶっていたのだ。爪先が向いていた方向は、彼がはるばる見に来て、つかの間しか見なかった土地だった」(デービッド・ニコルズ編著、関元訳「アーニーの戦争」、JICC出版局)

◆戦争への冷徹な視点
 彼の文章からは戦争に対する冷徹な視点がうかがえます。戦争を称賛するわけでもなく、時には厭戦(えんせん)気分も書き記します。伝えようとしたのは戦争の現実、兵士の素顔でした。戦闘と向き合う一人の人間としての恐怖や苦悩。それが読者の共感を呼んだのです。

 欧州戦線から太平洋戦線に転じたアーニーは、沖縄の上陸作戦でも、ノルマンディーと同じような凄惨(せいさん)な戦闘が繰り返されると恐れていました。それは杞憂(きゆう)に終わります。兵力温存を図った日本軍が水際作戦を放棄したからです。

 しかし、その後の地上戦は激烈を極めました。生活の場で行われた戦闘で当時六十万県民の四分の一が亡くなったといわれます。

 ただ、アーニーは沖縄戦の様子を多く書き残すことはありませんでした。本島上陸から十七日後の四月十八日、転戦した本島近くの伊江島で狙撃され、亡くなったからです。四十四歳でした。

 アーニーなら、凄惨な地上戦をどのような記事にして送ったのでしょうか。苦難を強いられた沖縄県民の様子も米国本土に伝わっていたら、その後の米軍による沖縄統治も、違っていたかもしれません。アーニーの記事には、それほど影響力があったのです。

 亡くなったアーニーのポケットからはドイツ降伏に備えて事前に書いた原稿が見つかりました。

 「大量生産される死者-この国で、あの国で、毎月、毎年、冬にも夏にも。どこを向いても見慣れた死者だらけで、退屈になる。どこまで行っても、退屈な死者だらけで、いやになる。こんなことを故国の皆さんは理解しようと試みる必要すらない。彼らは故国の皆さんにとっては数字の羅列、ないしは近所のだれかが、遠くへ行ったまま帰って来ないだけ、にすぎない」(同)

 アーニーが感じていたのは、戦争という現実に向き合わざるを得ない戦場と、戦場から遠く離れ、戦争への想像力を欠く本国との落差かもしれません。

 ドイツ降伏はアーニー戦死のわずか二十日後、その一カ月半後には沖縄での戦闘も終わります。

 激戦地跡に造られた糸満市摩文仁(まぶに)の平和祈念公園ではきょう、沖縄全戦没者追悼式が行われ、安倍晋三首相らも参列します。

◆集団的自衛権に異議
 慰霊の日を前に、県都那覇市や米軍基地を抱える読谷(よみたん)、北中城(きたなかぐすく)両村の議会では「集団的自衛権の行使」容認に反対したり、慎重審議を求める意見書を可決しました。

 かつて戦場となり、いざ戦争になれば攻撃対象となる米軍基地を多く抱える沖縄だからこそ、集団的自衛権の行使がもたらす危うさにも敏感なのでしょう。

 戦場に対する想像力を欠いた安全保障論議は空疎です。現実離れした事例を持ち出して、一内閣の判断で憲法の平和理念を骨抜きにする愚を犯してはなりません。首相は、沖縄という現実からも目を背けてはならないのです。

(4)西日本新聞社説2014年06月23日:慰霊の日 今こそ聞きたい沖縄の声

 きょう23日は、沖縄の「慰霊の日」である。

 太平洋戦争末期の沖縄戦で、組織的戦闘が終結したこの日にちなみ、糸満市の平和祈念公園で沖縄全戦没者追悼式が行われる。

 国内で唯一、住民を巻き込んだ大規模な地上戦が行われた沖縄では、「鉄の暴風」と呼ばれた米軍の激しい攻撃により、おびただしい数の人々が犠牲になった。

 戦後は占領軍によって土地を奪われ、その上に基地が築かれた。現在でも国内の米軍専用施設の約74%が沖縄に集中したままだ。

 安倍晋三政権が集団的自衛権の行使容認を目指し、戦後の安全保障政策の大転換を図ろうとする今、沖縄の人々の戦中、戦後の体験は、ひときわ重い意味を持つ。

 国会で集団的自衛権の行使容認を主張する議員も、反対する議員も、ほとんど戦争体験がない。戦争を知るベテラン議員たちが引退し、安全保障論議はどこか現実感を欠く「軽さ」が付きまとう。

 しかし、沖縄では「戦場」を生き延びたお年寄りたちが、自らの悲惨な体験を語る。戦後生まれの住民たちも、基地に囲まれて暮らし、日米地位協定の不合理を肌で感じながら生活している。

 その沖縄の那覇市議会で20日、集団的自衛権行使容認を目指す安倍政権に抗議する意見書が可決された。意見書作りを主導したのは自民党系会派の市議たちだ。

 意見書は「基地と隣り合わせの生活を送っている現実から、多くの県民が、集団的自衛権が行使されることで、他国の戦争に巻き込まれる恐れはないのかとの不安を抱いている」と訴えている。同趣旨の意見書は、読谷村の議会でも可決された。

 また沖縄では、安倍政権が集団的自衛権の行使容認に向けて突き進む一方で、米軍基地負担の抜本的な軽減には消極的なことに対し、住民の不満は根強い。

 沖縄には安全保障の「リアリズム」がある。沖縄戦の犠牲者を悼むとともに、今こそ、沖縄の人々の声に耳を澄まし、「戦争と平和」について考える糧としたい。

 あえて以下掲載する。


・読売新聞社説2014年06月24日:首相沖縄訪問 米軍基地負担を着実に減らせ


 沖縄の米軍基地負担を着実に軽減するため、政府は全力で取り組まなければならない。

 太平洋戦争末期の沖縄戦の終結に合わせた「慰霊の日」の23日、安倍首相は、沖縄全戦没者追悼式に出席した。

 あいさつで、沖縄県内の基地負担軽減について「沖縄の方々の気持ちに寄り添いながら、『できることは全て行う』との姿勢で全力を尽くす」と強調した。

 仲井真弘多知事は昨年末、米軍普天間飛行場の辺野古移設に伴う埋め立てを承認した。式典の平和宣言では、3年連続で「県外移設」を訴えてきたが、今年は県外に固執しない表現に変えた。

 沖縄県では依然、県外移設を求める声が根強い中、苦渋の判断をした仲井真知事を支えるためにも政府は、様々な基地負担軽減策をきちんと実行する必要がある。

 仲井真知事の任期満了に伴う11月の知事選では、普天間問題が大きな争点となろう。辺野古移設に反対する保守系市長が出馬の構えを見せる一方、知事は3選出馬に関して態度を保留している。

 知事選結果が辺野古移設に与える影響を最小限にするため、可能な手を打つことが重要である。

 政府は、埋め立て予定地のボーリング調査を7月にも開始し、代替施設の工事をできる限り前倒しする方針という。設計・工事期間の短縮を図り、「2022年度以降」とされる普天間飛行場の返還を早めるべきだ。

 日米両政府は先週、埋め立て予定地を含む周辺水域を常時立ち入り禁止とすることで合意した。

 反対派による妨害を排除し、不測の事態を避けるにはやむを得ない。作業を円滑に進めるため、防衛省だけでなく、警察、海上保安庁など関係機関が連携し、万全の体制をとることが求められる。

 政府は、「24~25年度以降」とされる牧港補給地区の返還の大幅繰り上げも検討している。

 返還予定の米軍基地内の環境調査を事前に行えるようにする新たな協定の締結に向けた日米交渉も行っている。事実上の日米地位協定の改定に当たるもので、実現すれば、その意義は大きい。

 普天間飛行場に配備されている米軍輸送機MV22オスプレイの訓練についても、県外への分散移転をさらに拡大したい。沖縄の過重な負担を日本全体で引き受けることが大切である。

 在沖縄米軍の抑止力を維持しつつ、地域振興とも連動した基地再編を進めることが、安倍政権と地元の信頼関係を強化しよう。


# by asyagi-df-2014 | 2014-06-25 05:50 | 沖縄から | Comments(0)

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