「過疎地域対策緊急措置法」が2021年3月末で終了。
2020年 10月 06日
徳島県庁コールセンターの「すだちくんコール」では、「過疎法とは何ですか。また、どのような特別措置がなされているのですか。」、との質問に次のように回答しています。
(1)過疎地域については、昭和45年に最初の過疎法である「過疎地域対策緊急措置法」が10年の時限立法として制定されて以来、これまで4次にわたり、いわゆる「過疎法」が制定され、各種の対策が講じられてきましたが、平成22年4月1日、平成27年度までの6年間の時限立法として、現行の「過疎地域自立促進特別措置法の一部を改正する法律」が施行されました。平成24年6月には、法期限をさらに5年間延長する一部改正が行われ、現在の法期限は平成32年度までとなっています。
(2)この法律は、人口の著しい減少に伴って地域社会における活力が低下し、生産機能及び生活環境の整備等が他の地域に比較して低位にある地域について、総合的かつ計画的な対策を実施するために必要な特別措置を講ずることにより、これらの地域の自立促進を図り、もって住民福祉の向上、雇用の増大、地域格差の是正及び美しく風格ある国土の形成に寄与することを目的としています。
(3)過疎地域自立促進特別措置法で講じられている特別措置について、主なものは次のとおりです。
1.財政措置
○国の負担又は補助の割合の特例
・教育施設(公立小中学校の統合に伴うもの):通常1/2→特例5.5/10
・児童福祉施設(保育所):通常1/2→特例5.5/10
・消防施設(防火水槽等):通常1/3→特例5.5/10など
○過疎地域自立促進のための地方債(過疎対策事業債)
・過疎地域における施設整備や地域医療の確保、集落の維持・活性化等に必要な経費については、地方財政法に定める場合以外の経費についても「過疎対策事業債」をもってその財源とすることができます。
・また、将来の財政負担を軽減するため、元利償還金の7割が後年度に交付税措置されることになっており、市町村は残りの3割を負担すればよいことになっております。
2.行政措置(都道府県代行制度)
・過疎地域市町村は、財政力が弱く、技術的能力も十分でない場合が多いことから、過疎法では、本来、市町村が事業主体となって整備するべき「基幹的な市町村道等」及び「公共下水道」について、都道府県が市町村に代わって事業を行うことができることとされております。
3.税制措置
過疎地域内に企業を誘致育成することによる所得水準の向上と雇用機会の拡大や、過疎地域内の産業の振興を図ることを目的に、次のような税制上の措置が講じられております。
○所得税・法人税に係る事業用資産の買換えの場合の課税の特例
・個人又は法人が非過疎地域内にある土地、建物等の事業用資産を譲渡して、過疎地域内にある土地、建物等の事業用資産を取得した場合に、税負担の軽減を図っています。
○所得税・法人税に係る減価償却の特例
・過疎地域内において製造の事業、情報通信技術利用事業又は旅館業(下宿営業を除く)の用に供する設備を新設又は増設した個人又は法人に対して、当該新増設に係る機械及び装置(製造の事業又は情報通信技術利用事業の用に供するものに限る)並びに建物及びその附属施設について、特別償却を認め、所得税又は法人税の優遇措置を講じております。
○地方税の課税免除又は不均一課税に伴う地方交付税の減収補てん措置
・地方公共団体が条例により、製造の事業、旅館業(下宿営業を除く)又は情報通信技術利用事業の用に供する設備を新増設した者について、その事業に対する事業税、その事業に係る建物若しくはその敷地である土地の取得に対する不動産取得税若しくはその事業に係る機械及び装置(製造の事業又は情報通信技術利用事業の用に供するものに限る)若しくはその事業に係る建物若しくはその敷地である土地に対する固定資産税を課税免除等した場合、又は畜産業又は水産業者に対する個人事業税を課税免除等した場合、その減収額を基準財政収入額から控除することで普通交付税により補填することとしております。
実は、この「過疎地域対策緊急措置法」が2021年3月末で期限切れとなります。
このことに関して、福島民友新聞は2020年9月25日、「新過疎法/地域担う人材育成に注力を」、と次のように論評しました。
まず、福島民友新聞(以下、「福島」)は、この法の今後の動向を押さえます。
(1)自民党が来年3月末に期限切れとなる、過疎地域自立促進特別措置法(過疎法)に代わる新法案の概要をまとめた。新型コロナウイルスの感染拡大で、東京一極集中のリスクが顕在化したことを踏まえ、移住や企業移転など地方への分散につながる取り組みに対し、財政支援を強化する方針だ。
(2)今後、公明党や野党などと協議を重ね、超党派の議員立法として来年の通常国会に法案を提出し、同年4月の施行を目指す。
また、「福島」は、「コロナ禍により在宅や遠隔勤務などのリモートワークを導入する企業が増え、地方への関心は高まっている。『地方回帰』の機運を逃さず、過疎地域の自治体が実効性の高い施策を展開できる体制を整えてもらいたい。」、と次のように指摘します。
(1)新法案概要は、豊かな自然環境や安らぎのあるライフスタイルを持つ過疎地の「持続的発展」を理念に掲げた。東京一極集中の是正と地方分権の受け皿となる過疎地の役割を重視し、都市からの人の流れを加速させるため、オンラインの医療や教育、テレワークの推進、企業移転による雇用創出などを重点分野に位置付ける。
(2)地方に人を呼び込むと同時に、若者が就職、進学を機に東京へ流出することを抑える必要がある。新法案には、若者が魅力を感じる産業や学びの場を地方につくり、地域を担う人材を育成するための支援強化を盛り込んでほしい。
(3)過疎法は1970年に10年間の時限付きの議員立法で制定され、10年ごとに新法に衣替えしてきた。2000年施行の現行法は法改正で延長され、県内では人口減少率などの要件に該当する31市町村が過疎地域に指定されている。
(4)過疎地域の市町村は、返済時に国が7割を肩代わりする過疎債を発行し、道路、下水処理施設などのインフラ整備、医師確保や地場産品のブランド化、地域文化の保存・継承などのソフト事業に活用できる。県内では昨年度、29市町村が87億4100万円の過疎債を起債した。自主財源に乏しく、財政状況が厳しい過疎自治体にとって、過疎債などの手厚い支援は不可欠だ。県や市町村は各団体と連携し、新法が現行法より拡充した内容で制定されるよう、国会や政府に強く働き掛けることが求められる。
(5)半世紀にわたる過疎対策の事業で、道路整備は進み、生活環境は改善されてきたが、15年国勢調査で県内の過疎地域の高齢化率は35.3%と、県全体の28.7%を上回る。国や市町村はこれまでの過疎対策を検証し、今後の取り組みに知恵を絞ってほしい。
さらに、例えば、広島県議会は、2020年6月301日、新たな過疎対策法の制定に関する意見書を採択しています。
この「新たな過疎対策法の制定に関する意見書」では、広島県の状況を次のようにまとめています。
(1) 我が国の過疎対策については、昭和45年に制定された「過疎地域対策緊急措置法」以来、4次にわたる特別措置法の制定により、総合的な過疎対策事業が実施され、過疎地域における生活環境の整備や産業の振興などに一定の成果を上げてきた。
(2)本県においても、平成25年に「広島県中山間地域振興条例」を制定の上、また、平成26年に「広島県中山間地域振興計画」を策定し、持続可能な中山間地域の実現に向けて取り組んでいる。
(3)しかしながら、過疎地域における人口は、県全体を大きく上回るスピードで減少傾向が続いており、また、暮らしの基盤と言える集落単位では全国と比べて高齢化率が高いことから、地域の基幹産業である農林水産業の衰退、農地の荒廃等による県土の保全への影響、地域コミュニティー機能の脆弱化などの課題が深刻化しており、過疎対策の重要性が増している。
、こうした状況分析の上に、「よって、国におかれては、令和3年3月末に終期を迎える『過疎地域自立促進特別措置法』に代わる新法の制定において、次の事項について措置を講じられるよう強く要望する」、と示しています。
1 新過疎対策法においても、現行の過疎地域を引き続き指定対象とすることを基本としつつ、指定要件及び指定単位については過疎地域の状況を的確に反映したものであること。また、「みなし過疎」の特例を新法においても引き続き設けること。
2 過疎対策事業債の拡充など、市町が必要とする財源を確実に措置すること。
3 過疎地域における高度情報通信基盤の整備を促進すること。
なお、ここでの「みなし過疎」とは、過疎地域の要件(法第2条1項)に該当しない市町村で、「法33条1項適用」または「法33条2項適用」がされる市町村を指している。
こうしてみてみると、確かに、次の状況があることを真摯に受けとめなけねばならない。
1. コロナ禍がもたらした「東京一極集中のリスクが顕在化したことを踏まえ、移住や企業移転など地方への分散につながる取り組み」(「福島」)、といった『地方回帰』の流れが生まれてきているとの積極的意味づけの施策が必要であること。
2.一方、地域社会を覆う深刻さは、「暮らしの基盤と言える集落単位では、地域の基幹産業である農林水産業の衰退、農地の荒廃等による県土の保全への影響、地域コミュニティー機能の脆弱化などの課題が深刻化しており、過疎対策の重要性が増している。」(広島県議会意見書)、という背景として全国の地域社会が共通に抱えさせられている状況の存在の正確に認識すること。
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by asyagi-df-2014
| 2020-10-06 06:26
| 持続可能な社会
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