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「過疎地域対策緊急措置法」が2021年3月末で終了。

 徳島県庁コールセンターの「すだちくんコール」では、「過疎法とは何ですか。また、どのような特別措置がなされているのですか。」、との質問に次のように回答しています。

(1)過疎地域については、昭和45年に最初の過疎法である「過疎地域対策緊急措置法」が10年の時限立法として制定されて以来、これまで4次にわたり、いわゆる「過疎法」が制定され、各種の対策が講じられてきましたが、平成22年4月1日、平成27年度までの6年間の時限立法として、現行の「過疎地域自立促進特別措置法の一部を改正する法律」が施行されました。平成24年6月には、法期限をさらに5年間延長する一部改正が行われ、現在の法期限は平成32年度までとなっています。
(2)この法律は、人口の著しい減少に伴って地域社会における活力が低下し、生産機能及び生活環境の整備等が他の地域に比較して低位にある地域について、総合的かつ計画的な対策を実施するために必要な特別措置を講ずることにより、これらの地域の自立促進を図り、もって住民福祉の向上、雇用の増大、地域格差の是正及び美しく風格ある国土の形成に寄与することを目的としています。
(3)過疎地域自立促進特別措置法で講じられている特別措置について、主なものは次のとおりです。
1.財政措置
○国の負担又は補助の割合の特例
・教育施設(公立小中学校の統合に伴うもの):通常1/2→特例5.5/10
・児童福祉施設(保育所):通常1/2→特例5.5/10
・消防施設(防火水槽等):通常1/3→特例5.5/10など
○過疎地域自立促進のための地方債(過疎対策事業債)
・過疎地域における施設整備や地域医療の確保、集落の維持・活性化等に必要な経費については、地方財政法に定める場合以外の経費についても「過疎対策事業債」をもってその財源とすることができます。
・また、将来の財政負担を軽減するため、元利償還金の7割が後年度に交付税措置されることになっており、市町村は残りの3割を負担すればよいことになっております。
2.行政措置(都道府県代行制度)
・過疎地域市町村は、財政力が弱く、技術的能力も十分でない場合が多いことから、過疎法では、本来、市町村が事業主体となって整備するべき「基幹的な市町村道等」及び「公共下水道」について、都道府県が市町村に代わって事業を行うことができることとされております。
3.税制措置
過疎地域内に企業を誘致育成することによる所得水準の向上と雇用機会の拡大や、過疎地域内の産業の振興を図ることを目的に、次のような税制上の措置が講じられております。
○所得税・法人税に係る事業用資産の買換えの場合の課税の特例
・個人又は法人が非過疎地域内にある土地、建物等の事業用資産を譲渡して、過疎地域内にある土地、建物等の事業用資産を取得した場合に、税負担の軽減を図っています。
○所得税・法人税に係る減価償却の特例
・過疎地域内において製造の事業、情報通信技術利用事業又は旅館業(下宿営業を除く)の用に供する設備を新設又は増設した個人又は法人に対して、当該新増設に係る機械及び装置(製造の事業又は情報通信技術利用事業の用に供するものに限る)並びに建物及びその附属施設について、特別償却を認め、所得税又は法人税の優遇措置を講じております。
○地方税の課税免除又は不均一課税に伴う地方交付税の減収補てん措置
・地方公共団体が条例により、製造の事業、旅館業(下宿営業を除く)又は情報通信技術利用事業の用に供する設備を新増設した者について、その事業に対する事業税、その事業に係る建物若しくはその敷地である土地の取得に対する不動産取得税若しくはその事業に係る機械及び装置(製造の事業又は情報通信技術利用事業の用に供するものに限る)若しくはその事業に係る建物若しくはその敷地である土地に対する固定資産税を課税免除等した場合、又は畜産業又は水産業者に対する個人事業税を課税免除等した場合、その減収額を基準財政収入額から控除することで普通交付税により補填することとしております。

 実は、この「過疎地域対策緊急措置法」が2021年3月末で期限切れとなります。
このことに関して、福島民友新聞は2020年9月25日、「新過疎法/地域担う人材育成に注力を」、と次のように論評しました。
 まず、福島民友新聞(以下、「福島」)は、この法の今後の動向を押さえます。
(1)自民党が来年3月末に期限切れとなる、過疎地域自立促進特別措置法(過疎法)に代わる新法案の概要をまとめた。新型コロナウイルスの感染拡大で、東京一極集中のリスクが顕在化したことを踏まえ、移住や企業移転など地方への分散につながる取り組みに対し、財政支援を強化する方針だ。
(2)今後、公明党や野党などと協議を重ね、超党派の議員立法として来年の通常国会に法案を提出し、同年4月の施行を目指す。
 また、「福島」は、「コロナ禍により在宅や遠隔勤務などのリモートワークを導入する企業が増え、地方への関心は高まっている。『地方回帰』の機運を逃さず、過疎地域の自治体が実効性の高い施策を展開できる体制を整えてもらいたい。」、と次のように指摘します。
(1)新法案概要は、豊かな自然環境や安らぎのあるライフスタイルを持つ過疎地の「持続的発展」を理念に掲げた。東京一極集中の是正と地方分権の受け皿となる過疎地の役割を重視し、都市からの人の流れを加速させるため、オンラインの医療や教育、テレワークの推進、企業移転による雇用創出などを重点分野に位置付ける。
(2)地方に人を呼び込むと同時に、若者が就職、進学を機に東京へ流出することを抑える必要がある。新法案には、若者が魅力を感じる産業や学びの場を地方につくり、地域を担う人材を育成するための支援強化を盛り込んでほしい。
(3)過疎法は1970年に10年間の時限付きの議員立法で制定され、10年ごとに新法に衣替えしてきた。2000年施行の現行法は法改正で延長され、県内では人口減少率などの要件に該当する31市町村が過疎地域に指定されている。
(4)過疎地域の市町村は、返済時に国が7割を肩代わりする過疎債を発行し、道路、下水処理施設などのインフラ整備、医師確保や地場産品のブランド化、地域文化の保存・継承などのソフト事業に活用できる。県内では昨年度、29市町村が87億4100万円の過疎債を起債した。自主財源に乏しく、財政状況が厳しい過疎自治体にとって、過疎債などの手厚い支援は不可欠だ。県や市町村は各団体と連携し、新法が現行法より拡充した内容で制定されるよう、国会や政府に強く働き掛けることが求められる。
(5)半世紀にわたる過疎対策の事業で、道路整備は進み、生活環境は改善されてきたが、15年国勢調査で県内の過疎地域の高齢化率は35.3%と、県全体の28.7%を上回る。国や市町村はこれまでの過疎対策を検証し、今後の取り組みに知恵を絞ってほしい。


 さらに、例えば、広島県議会は、2020年6月301日、新たな過疎対策法の制定に関する意見書を採択しています。
 この「新たな過疎対策法の制定に関する意見書」では、広島県の状況を次のようにまとめています。
(1) 我が国の過疎対策については、昭和45年に制定された「過疎地域対策緊急措置法」以来、4次にわたる特別措置法の制定により、総合的な過疎対策事業が実施され、過疎地域における生活環境の整備や産業の振興などに一定の成果を上げてきた。
(2)本県においても、平成25年に「広島県中山間地域振興条例」を制定の上、また、平成26年に「広島県中山間地域振興計画」を策定し、持続可能な中山間地域の実現に向けて取り組んでいる。
(3)しかしながら、過疎地域における人口は、県全体を大きく上回るスピードで減少傾向が続いており、また、暮らしの基盤と言える集落単位では全国と比べて高齢化率が高いことから、地域の基幹産業である農林水産業の衰退、農地の荒廃等による県土の保全への影響、地域コミュニティー機能の脆弱化などの課題が深刻化しており、過疎対策の重要性が増している。
、こうした状況分析の上に、「よって、国におかれては、令和3年3月末に終期を迎える『過疎地域自立促進特別措置法』に代わる新法の制定において、次の事項について措置を講じられるよう強く要望する」、と示しています。
1 新過疎対策法においても、現行の過疎地域を引き続き指定対象とすることを基本としつつ、指定要件及び指定単位については過疎地域の状況を的確に反映したものであること。また、「みなし過疎」の特例を新法においても引き続き設けること。
2 過疎対策事業債の拡充など、市町が必要とする財源を確実に措置すること。
3 過疎地域における高度情報通信基盤の整備を促進すること。

 なお、ここでの「みなし過疎」とは、過疎地域の要件(法第2条1項)に該当しない市町村で、「法33条1項適用」または「法33条2項適用」がされる市町村を指している。



 こうしてみてみると、確かに、次の状況があることを真摯に受けとめなけねばならない。

1. コロナ禍がもたらした「東京一極集中のリスクが顕在化したことを踏まえ、移住や企業移転など地方への分散につながる取り組み」(「福島」)、といった『地方回帰』の流れが生まれてきているとの積極的意味づけの施策が必要であること。
2.一方、地域社会を覆う深刻さは、「暮らしの基盤と言える集落単位では、地域の基幹産業である農林水産業の衰退、農地の荒廃等による県土の保全への影響、地域コミュニティー機能の脆弱化などの課題が深刻化しており、過疎対策の重要性が増している。」(広島県議会意見書)、という背景として全国の地域社会が共通に抱えさせられている状況の存在の正確に認識すること。


# by asyagi-df-2014 | 2020-10-06 06:26 | 持続可能な社会 | Comments(0)

沖縄-辺野古-高江から-2020年10月5日

 コロナ禍が焙り出す日本の劣悪な労働環境。
 「沖縄労働局(福味恵局長)は2日、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて今年2月以降、県内で解雇や雇い止めが見込まれる労働者は1313人に上ったと発表した。7月後半から8月後半以降、減少傾向にあるという。一方、失業手当支給件数は今年1月以降は増加傾向にあり、8月が最も多く前年同月比49.1%増の7652件だった。今後も感染拡大が与える雇用への影響が懸念される。雇用形態が判明した1155人の内訳は正規が444人、非正規が711人で、不安定な雇用へのしわ寄せが浮き彫りになった。」、と琉球新報。
こうした状況に「構造的沖縄差別」がどの余蘊影響を与えているのか。


 沖縄で起こっていること、その現場の事実をきちんと確認すること。
 何よりも、自らが沖縄から受け取るものを明確にするために。
 2020年も、琉球新報と沖縄タイムスの記事を、「沖縄-辺野古-高江-から」を、報告します。
 2020年10月5日、沖縄-辺野古-高江の今を、沖縄タイムス、琉球新報は次のように表した。


(1)琉球新報-沖縄県内のコロナ解雇・雇い止め1313人 2月以降 非正規は711人 観光関連で影響大きく-2020年10月5日 05:40


 琉球新報は、表題について次のように報じた。


①「沖縄労働局(福味恵局長)は2日、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて今年2月以降、県内で解雇や雇い止めが見込まれる労働者は1313人に上ったと発表した。7月後半から8月後半以降、減少傾向にあるという。一方、失業手当支給件数は今年1月以降は増加傾向にあり、8月が最も多く前年同月比49.1%増の7652件だった。今後も感染拡大が与える雇用への影響が懸念される。」
②「雇用形態が判明した1155人の内訳は正規が444人、非正規が711人で、不安定な雇用へのしわ寄せが浮き彫りになった。」
③「新型コロナの第1波の影響があった2月1日~5月29日は408人だった。4週間ごとに見ると、感染拡大が落ち着いていた5月30日~6月26日は218人。再び感染が拡大し始めた6月27日~7月22日は248人と増加傾向にあり、感染拡大が本格化し、緊急事態宣言が発出された7月23日~8月21日は315人と4週間ごとの統計では最多となった。8月22日~9月18日は57人と大幅に減少した。一方、9月19~30日の直近12日間は67人で、8月22日~9月18日の4週間の人数を上回った。」
④「福味局長は『まだまだ終息には遠い。今後も数字の変動に注意が必要だ』と述べ、油断を許さない姿勢を示した。」
⑤「産業別では人材派遣業を含む『その他サービス業』が304人、卸・小売業が293人、宿泊・飲食サービス業が257人と、観光関連で影響が著しかった。件数は労働局がハローワークなどで確認できたもので、実際はもっと多い可能性がある。」


(2)琉球新報-日韓市民が文学語り交流 オンラインでイベント開催-2020年10月3日 20:21


 琉球新報は、表題について次のように報じた。


①「文学を通じて日韓の相互理解を深めようと、小説家や翻訳家らが韓国文学の魅力を語るトークイベントが3日、東京とソウルをオンラインでつないで開催された。」
②「東京・神保町の韓国関連書籍の専門店『チェッコリ』には、在日韓国人3世の作家姜信子さんや言語学者の辻野裕紀さんが集まり、ソウルの会場では小説家の李真さん、現地在住の翻訳家岡裕美さんが登壇した。」
③「姜さんは『植民地支配や軍事政権などによって社会の底へ沈められてしまった人たちの声を、詩人や文学者が紡いできた』と韓国文学の特色を紹介。岡さんは、近年は日本社会にも通ずるテーマを扱う韓国文学が増えたと指摘した。」


(3)沖縄タイムス-オスプレイの離着陸数、4~8月で過去最多 普天間配備から8年
-2020年10月5日 15:00


 沖縄タイムスは、表題について次のように報じた。


①「【宜野湾】米軍普天間飛行場に海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが配備されてから、10月1日で8年。沖縄防衛局の目視調査によると、普天間飛行場でのオスプレイの離着陸回数(タッチ・アンド・ゴーや通過、旋回を含む)は、2020年度(8月時点)計1958回。4~8月で見ると、調査が始まった17年度からの過去4年で最多となった。米軍機の飛行が制限されている深夜早朝(午後10時~翌午前6時)に離着陸した全ての米軍機のうち、オスプレイが占めた割合も過去最大で、20年度64・6%だった。」
②「オスプレイが4~8月に普天間飛行場に離着陸した回数は、17年度1039回、18年度1224回、19年度1098回。20年度は1958回で、17年度と比べると約1・9倍に増えた。」
③「4~8月の深夜早朝の離着陸を見ると、17年度は全機種のうち40・7%がオスプレイ。18年度28・6%、19年度48・7%。20年度は64・6%に達した。」
④「日米の騒音防止協定(航空機騒音規制措置)は『夜間訓練飛行は在日米軍に与えられた任務を達成し、または飛行要員の練度を維持するために必要な最小限に制限される。部隊司令官は、できる限り早く夜間の飛行を終了させるよう最大限努力を払う』と定めるが、順守されるかは米軍頼み。宜野湾市の『基地被害110番』には『この時間でもまだ飛んでます』『うるさくて眠れません』などと市民からの苦情が絶えない。」
⑤「普天間所属のオスプレイは現在、計24機。12年10月1日に12機が配備された。事故率の高さなどが問題視される中、県内41市町村と県議会の代表らが配備撤回などを求めて銀座をパレードしたり、安倍晋三首相(当時)に『建白書』で訴えたりしたが、13年9月に12機が追加配備された。」
⑥「宜野湾市の松川正則市長は、オスプレイ24機のうち半数程度を移設することや訓練を県外へ移転することを国に求めている。」                    (中部報道部・平島夏実)


(4)琉球新報-自衛隊が新設する「電子戦部隊」とは? 離島防衛狙い沖縄が前線に-2020年10月5日 14:00


 琉球新報は、表題について次のように報じた。


①「【東京】防衛省は2021年度末までに、陸上自衛隊の那覇駐屯地と知念分屯基地(南城市)に電子戦部隊を発足させる方針だ。基本的には情報収集を主な任務とするが、有事には強力な電波で敵の通信機器を妨害するなどして対処する。近年、軍事上の重要性が高まっている電子戦。宇宙・サイバーに並ぶ電磁波という新領域への対応を強化する狙いがある。自衛隊基地の機能強化が進んでいる。」(東京報道部・嘉良謙太朗)
②「『電子領域の戦いは世界のいろんな紛争を見ても、間違いなく使われるという認識で対応する』。電子戦分野で優位に立とうと各国がしのぎを削る中、湯浅悟郎陸上幕僚長は1日の記者会見で、日本も電子戦分野に対応するための防衛力を整備する必要性を説いた。中国やロシアの電子戦分野での能力向上が念頭にある。」
③「防衛省は来年春、80人規模の電子戦部隊を健軍駐屯地(熊本県)に発足させる。来年度には本部機能を担う朝霞駐屯地(東京都練馬区など)に『電子作戦隊』(仮称)を新設し、那覇と知念を含めた全国5施設にも電子戦部隊を設置する方針だ。」
④「平時は車載型ネットワーク電子戦システム(NEWS)を用いた情報収集活動が主な任務となる。陸自関係者は『普段から情報収集しておかないと、万一のときに対処できない』として、相手が発する電波を分析することは不可欠と話す。」
⑤「有事にはNEWSから強力な電波を出し、敵の通信機器やレーダーを妨害。離島侵攻を想定した場合、敵の上陸部隊や艦艇は相互に連絡を取り合いながら作戦遂行に当たるため、離島防衛にとって通信の傍受と妨害は有効な対抗策となる。」
⑥「離島奪還の専門部隊『水陸機動団』」との連携も想定しており、同省関係者は南西諸島の防衛強化を念頭に『将来的には宮古島、石垣島にも配備されるだろう』と見通した。」
⑦「一方、与那国沿岸監視隊を配備する際、監視レーダーの電磁波が健康に与える影響を不安視する声が上がった。電子戦部隊の配備に当たっても、こうした懸念が広がる可能性がある。」


(5)沖縄タイムス-「『駄目だ』と声上げやすい雰囲気作りたい」 反ヘイトに立ち上がった住民たち ラジオで“友好”を発信-2020年10月5日 07:17-[反ヘイト 高まる機運](5)


 沖縄タイムスは、表題について次のように報じた。


①「那覇市役所前の街宣がまき散らすヘイトスピーチに抗して、始まったラジオ番組がある。FM那覇で毎週火曜日午後7時から放送される『アジLOVEあがりっ』」。外国から沖縄に来た人、逆に沖縄から外国に行ったことがある人をゲストに招き、国境を越えた共通点と違いとを語り合う。」
②「きっかけは、河原弥生さん(43)が5年ほど前にヘイト街宣を目撃したことだった。当時暮らしていたタイから一時帰省中。『もし私がタイで外国人として同じ目に遭ったら』と考えた。」
③「故郷に帰ってからつてをたどってスポンサーを集め、2017年に番組を始めた。『仲良くしようというメッセージに嫌な顔をする人はいない。これが私にとってのカウンターです』と河原さんは言う。」
④「パーソナリティーの一人、小橋川共仁さん(43)もヘイト街宣に出くわしたことがある。中国で8年半暮らした経験からみると、内容はめちゃくちゃだった。『何しているの、でたらめじゃないの』。街宣主催者に声を掛けたが、にらみ返された。『通行人が誰も注意しないのもショックだった。これでは沖縄の人が容認しているように受け取られる』。警察や行政に『何とかならないのか』と相談した人はたくさんいる。一緒にパーソナリティーを務める大山盛嗣さん(43)もその一人。『みんな居たたまれない思いだったはずだ』と推測する。」
⑤「『いじめと同じで、傍観者もいじめの一部。差別についておしゃべりすることで、【駄目だ】と声を上げやすい雰囲気をつくりたい』。番組と市役所前カウンターで、おしゃべりを実践している。
⑥「50代の女性は差し入れの飲み物や食べ物を抱えてカウンターに参加する。『中国人への差別を6年ものさばらせてきた後悔がある。ウチナーンチュは自分たちが標的でなければよかったのか』と自問する。生きるため、18歳からスナックなどで働いてきた。『飲み屋の女だから』『沖縄の人間だから』。客に何度悔しい思いをさせられたかしれない。」
⑦「『構造的差別を経験してきた私たちだからこそ、誰に対する差別にも目をつぶらない。その第一歩としてここにいる』。第一歩として、カウンターに集まってくれる人に『カメー攻撃、飲めー攻撃』を繰り広げている。」(編集委員・阿部岳)=おわり


(6)琉球新報-那覇軍港移設 反対決議案を否決 浦添市議会 野党提出「無条件返還求めるべきだ」-2020年10月5日 11:45


 琉球新報は、表題について次のように報じた。


①「【浦添】浦添市議会(護得久朝文議長)は9月定例会本会議最終日の10月1日、米軍那覇港湾施設(那覇軍港)の浦添市移設に反対し、即時無条件返還を求める決議を賛成少数(賛成6、反対17、退席1、欠席1)で否決した。」
②「決議案は共産など野党市議の一部が提出。那覇軍港について『遊休化している』と指摘し『無条件に返還させることを市長は求めるべきだ』としていた。」
③「浦添市議会は9月10日に那覇軍港移設に関連し、同市西海岸開発の早期実現を求める意見書を賛成多数で可決していた。」


# by asyagi-df-2014 | 2020-10-05 16:17 | 沖縄から | Comments(0)

「東京五輪招致 疑惑の闇いっそう深く」、信濃毎日新聞の社説を読み直す。

 東京五輪の問題をいつの間にか、置いてきてしまった気がする。
 こうした指摘が、ことの本質を確認させることになる。
 
信濃毎日新聞は2020年9月24日、「東京五輪招致 疑惑の闇いっそう深く」、と社説で論評した。
この信濃毎日新聞(以下、「信毎」)の社説で改めて押さえる。
「信毎」の指摘は次のもの。
(1)東京五輪の招致をめぐる疑惑の闇は深まるばかりだ。大会開催の正当性が問われ、五輪への信頼をも根幹から揺るがしかねない。日本オリンピック委員会(JOC)は自ら真相を明らかにし、明確な説明をすべきだ。
(2)国際オリンピック委員会(IOC)の委員だったディアク氏側に、シンガポールのコンサルタント会社を経由して招致委員会から多額の資金が渡った贈収賄疑惑である。不透明な資金の流れの一端がここへ来て見えてきた。
(3)一つは、招致委が計2億円余を振り込んだコンサル会社の口座から、およそ3700万円がディアク氏の息子やその会社に送金されていたことだ。ほかに、息子が購入した宝飾品や自動車の代金もこの口座から支払われ、財布代わりになっていた実態が浮かぶ。
「信毎」は、問題点を突く。
(1)送金は、東京での開催が決まった2013年のIOC総会の前後に集中している。招致委の資金が票集めの賄賂として使われた裏づけになる可能性がある。
(2)さらに、招致委が海外に送金した総額が11億円を超すことも今回新たに明らかになった。シンガポールのコンサル会社を除いて送金先や内訳は分かっていない。招致委の関係者は、守秘義務を理由に説明を避けている。
(3)招致疑惑は16年に明るみに出た。招致委の理事長でJOCの会長だった竹田恒和氏が贈賄容疑で、フランスの司法当局による捜査の対象になっている。竹田氏は自身の関与を否定し、潔白を主張しているが、一方的な言い逃れに終始し、疑惑が晴れたとは言いがたい。JOCの会長を退いたからといって責任を免れるわけではない。
(4)JOCが設けた調査チームは、コンサル会社との契約に違法性はないと結論づけたものの、おざなりで説得力に乏しい。会社の実体さえ定かでないままだ。見え隠れする広告代理店の電通との関係を含め、再度調査を尽くさなければ信頼回復はおぼつかない。

 最後に、「信毎」は、「五輪招致をめぐっては、1998年にソルトレーク五輪の招致委によるIOC委員の買収が発覚。長野五輪の招致でも過剰な接待が明らかになり、IOCは再発防止策として、立候補都市への委員の訪問を全面禁止した。それは一方で、不透明な資金の流れを生み、コンサル契約を隠れみのにするのは常識と言われる事態を招くまでになった。五輪の存在意義にも関わる。不正の土壌をなくすため、IOCが自ら果たすべき責任も重い。」、と括る。


# by asyagi-df-2014 | 2020-10-05 06:37 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

沖縄-辺野古-高江から-2020年10月4日

 希望の風を、力強い意思とともに、日本中に吹き渡らせる。
「【辺野古問題取材班】米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設に反対する市民らは3日、新型コロナ感染拡大の影響で3月から中止していた毎月第1土曜恒例の集会「県民大行動」を開いた。約700人(主催者発表)が同市辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前に集まり、新基地建設反対への決意を新たにした。」、と琉球新報。
 「集会の最後には、沖縄平和運動センターの山城博治議長が『県民の勇気、決意は揺るがないことを発信しよう。新内閣が強権を振るおうとも沖縄は不屈だ』とあいさつした。」(琉球新報)、と。


 沖縄で起こっていること、その現場の事実をきちんと確認すること。
 何よりも、自らが沖縄から受け取るものを明確にするために。
 2020年も、琉球新報と沖縄タイムスの記事を、「沖縄-辺野古-高江-から」を、報告します。
 2020年10月4日、沖縄-辺野古-高江の今を、沖縄タイムス、琉球新報は次のように表した。


(1)琉球新報-辺野古阻止「決意揺るがない」7カ月ぶり県民大行動 主催者発表で700人-2020年10月4日 10:44


 琉球新報は、表題について次のように報じた。


①「【辺野古問題取材班】米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設に反対する市民らは3日、新型コロナ感染拡大の影響で3月から中止していた毎月第1土曜恒例の集会「県民大行動」を開いた。約700人(主催者発表)が同市辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前に集まり、新基地建設反対への決意を新たにした。」
②「新型コロナ対策として、時間を短縮するなど通常より規模を縮小して開催された。県選出の国会議員らも参加した。」
③「集会では、新基地建設への抗議にとどまらず、日本学術会議が推薦した新会員候補6人の任命を菅義偉首相が見送ったことを厳しく批判する声も相次いだ。前名護市長の稲嶺進さんは「学者や研究者までも意のままに動かそうとするこの国に未来はない。沖縄から変えていくという強い決意を示そう」と力強く呼び掛けた。」
④「また、玉城デニー知事がメッセージを寄せ「民意を顧みず、工事を強行する政府の姿は断じて容認できるものではない」と工事の現状を批判。その上で『辺野古に新基地は造らせないという公約の実現に向けて全身全霊で取り組んでいく』とした。集会の最後には、沖縄平和運動センターの山城博治議長が『県民の勇気、決意は揺るがないことを発信しよう。新内閣が強権を振るおうとも沖縄は不屈だ』とあいさつした。」


(2)沖縄タイムス-「沖縄・基地白書」記者たちが一人称で米軍基地問題をつづる本-2020年10月4日 10:26


 沖縄タイムスは、表題について次のように報じた。


①「『白書』とは、官公庁の年次報告書に用いられる行政用語だが、【沖縄・基地白書】というタイトルのついた本書は、沖縄タイムス記者による米軍基地報道の現状報告である。沖縄米軍基地問題のいまを知るのには手ごろな1冊だが、いわゆる官公庁の『白書』のように、平易なことをあえて分かり難く記述するわけではない。むしろその逆だ。」
②「新聞記事が一人称を避けたがるのは、記者個人の主観をできるだけ排除することで、事実を読者に伝えることができるとする客観報道主義に基づくからだが、本書は、その記者たちが一人称で米軍基地問題を語っている。それゆえに、記者たちの基地取材に向き合う心象風景も記述されている。新聞紙面では語りきれない記者たちの基地問題への怒り、憎しみ、やるせなさなどといった思いが、ない交ぜとなって溢(あふ)れ出ている。」
③「『沖縄ジャーナリズム』という言葉は、私の恩師でもある故・大田昌秀先生の造語とする説を唱えるメディア研究者もいる。そばで学んだ者からすれば、やや後付けの説という気もするが、沖縄戦、米軍支配、そして、復帰後の基地負担を強いられた沖縄において、米軍基地問題をどう報ずるかは、沖縄のジャーナリズムにとって、その存在意義を問われるものであることは言うまでもない。それゆえに、米軍基地に関連する記事がない日はないほど、沖縄の新聞にとって避けることができないのが米軍基地問題である。沖縄のジャーナリズムが、米軍基地報道の現状を定時報告した本書が『白書』を名乗るのは、当然と言えよう。」
④「近年、沖縄の新聞に対しては、一部の右派論壇から、政権与党の基地政策と歩調を合わせたような攻撃が続いている。そのような言説が飛び交う状況にあるからこそ、沖縄の記者に求められているのは、沖縄の民意に誠実に向きあい、丁寧に可視化していくこと、そして、ジャーナリズムの原理に基づいた正確な報道である。本書を読みながら、30年以上前に、大田研究室で、『真摯(しんし)に事実を追い続ければ、自(おの)ずと最良の結論が導き出せる』と聞かされたことを思い出した。」
(音好宏・上智大学教授・同メディア・ジャーナリズム研究所所長)


(3)沖縄タイムス-「沖縄旅行に来てなぜ悪く言われるのか」 突き刺さる差別の刃 憤慨する観光客-2020年10月4日 15:13-[反ヘイト 高まる機運](4)


 沖縄タイムスは、表題について次のように報じた。


①「ヘイトスピーチ街宣が繰り返される那覇市役所前のすぐ隣、県庁前は観光バスの乗り降り場所になっている。沖縄の中枢で約6年間、主に中国人観光客に差別と憎悪の刃(やいば)が突き立てられてきた。」
②「数年前、日本語が分かる若い男性客はこう憤慨した。『リゾートに遊びに来て、どうしてあんなに悪く言われないといけないのか。何か根拠があるのか』。案内していた張世險峰(はりせけんほう)さん(51)は中国から沖縄に移り住み、旅行会社を経営している。男性客に聞くと、街宣の主催者が中国人が疫病を広げる趣旨の差別発言をしていたという。」
③「日本語が分からない人にも、のぼりに染められた漢字で中国を敵視していることは伝わる。客に『なぜ』と聞かれても、張世さんは『近づかない方がいいです』と答えている。自身が街宣を聞いた時は、怒るよりもあきれてしまった。『あまりにも実態と違う。まずは中国を見てみたらどうか。良ければ一緒に行ってもいい』と語る。」
④「街宣主催者は天安門事件を批判する。対して、張世さんは1989年のあの時、北京の天安門広場に、国の改革を求める学生の一人として立っていた。『中国は完璧ではないし、政治を批判するのは自由。だけど、中国の人を攻撃するのは違う。知らないからヘイトスピーチが生まれる』と考える。」
⑤「もっとも、知らない点では中国側も同じ。帰省して沖縄のいい点を話すと、『日本で洗脳されたな』と言う友人がいる。『日本はいずれまた中国を侵略する』『危険な国だから行かない方がいい』と信じている人もいる。」
⑥「93年に来沖し、中城村出身の妻と出会った張世さんは2004年に日本国籍を取得した。地元中城を愛し、自治会役員を務め、PTA活動に参加し、村議選にも2回挑戦した。選挙中、1度だけ高齢の男性に『中城が乗っ取られる。家族を連れて帰れ』とののしられたことがある。しかし、『帰る国』はどこにもない。観光を通じて沖縄と中国の懸け橋になりたいと考える。」
⑦「出入国在留管理庁の統計によると19年末現在、沖縄には中国籍の人が2852人いる。韓国籍は1497人、朝鮮籍は25人。ヘイトスピーチは観光客だけでなく、こうした外国籍の人々や出身者の暮らしを脅かし続けている。」              (編集委員・阿部岳)


(4)琉球新報-米軍宇宙部隊、沖縄に9月配置 衛星監視し駐留部隊の作戦支援-2020年10月4日 11:16


 琉球新報は、表題について次のように報じた。


①「在沖米軍に米宇宙軍の部隊が創設されたことが3日までに分かった。米国と同盟国のための衛星通信の監視のほか、沖縄に駐留する米海兵隊の第31海兵遠征部隊や陸軍部隊の作戦などを支援する。県内に米宇宙軍の部隊が配置されるのは初めて。」
②「嘉手納基地のホームページによると、県内初の米宇宙軍部隊は空軍から移転した兵員で構成される『第16宇宙管制隊』で、9月に配置された。キャンプ・キンザー(牧港補給地区)での発足式典の様子が紹介されている。」
③「米宇宙軍は陸軍、海軍、空軍、海兵隊などと並ぶ新たな軍種として、トランプ大統領の指示により2019年12月に創設された。陸海空軍の宇宙分野の機能を統合し、1万6千人規模で宇宙空間の監視やミサイル早期探知といった宇宙領域の作戦を担う。中国やロシアが開発している衛星攻撃兵器(ASAT)に備えた衛星網の強化を掲げている。」
④「今年8月下旬には米宇宙軍制服組トップのレイモンド作戦部長が来日し、安倍晋三首相(当時)や河野太郎防衛相(同)と会談。デブリ(宇宙ごみ)や他国衛星の監視を含む宇宙状況監視(SSA)など宇宙分野での連携強化を確認した。防衛省も今年5月に、航空自衛隊にこうした役割を担う宇宙作戦隊を発足させている。」
 (當山幸都)


(5)琉球新報-米軍降下訓練、津堅沖で6日と8日に 今年は既に7回実施-2020年10月4日 11:41


 琉球新報は、「【うるま】米軍は6、8の両日午前9時から午後4時まで、うるま市の津堅島訓練場水域でパラシュート降下訓練を計画している。米連邦航空局が航空情報(ノータム)を出した。同水域では今年既に7度の降下訓練が実施されている。うるま市はノータムが出るたび、市民の安心安全の観点から訓練をしないよう沖縄防衛局を通じ米軍に申し入れている。」、と報じた。


# by asyagi-df-2014 | 2020-10-04 16:12 | 沖縄から | Comments(0)

まさしく強権政治。-歴史学者ら6人の任命について、菅義偉首相が拒否-(2)

 東京新聞は2020年10月1日、「学者の立場から政策提言する国の特別機関『日本学術会議』が推薦した新会員候補6人の任命を、菅義偉首相が拒否したことが分かった。推薦候補の任命拒否は、現制度になった2004年度以降で初めて。6人には、安全保障関連法や特定秘密保護法など政府方針に批判的だった。加藤勝信官房長官は1日の記者会見で『首相の下の行政機関である学術会議において、政府側が責任を持って(人事を)行うのは当然』と述べたが、理由は説明しなかった。」、と報じた。

 このことに関しての各紙の社説・論説の見出しは次のとおりである。なお、2020年10月付で、47NEWSで拾えたたものに限る。

(1)琉球新報社説-学術会議に政治介入 学問の自由否定する暴挙
(2)沖縄タイムス社説-[学術会議任命拒否]学問の自由脅かす圧力
(3)南日本新聞社説-[学術会議新会員] 任命拒否 撤回すべきだ
(4)佐賀新聞論説-学術会議会員任命拒否 民主主義揺るがす暴挙だ
(5)中国新聞社説-学術会議への人事介入 学問の自由、侵す暴挙だ
(6)神戸新聞社説-学術会議任命拒否/学問の自由を侵す暴挙だ
(7)福井新聞論説-学術会議会員、任命拒否-「学問の自由」が侵される
(8)信濃毎日新聞社説-学術会議人事 学問の自由侵す強権介入
(9)河北新報社説-学術会議に人事介入/あなたも強権か 即撤回を

 いずれもが、学問の自由及び民主主義を揺るがす暴挙という批判である。
ここでは、「撤回」を掲げた南日本新聞と河北新報で、この問題を押さえる。

1.経過の把握
(南日本新聞)
(1)菅義偉首相は、学術の立場から政策を提言する政府機関「日本学術会議」が推薦した新会員候補のうち、法律学者ら6人の任命を見送った。会議の推薦に基づいて首相が任命する現行の選考制度になった2004年度以降、推薦候補が任命されなかったのは初めてで、極めて異例だ。いずれも安倍前政権の政策に反対していたことから、政府方針に批判的な学者を排除したとの見方が広がっている。それが理由だとしたらあまりにも不可解な判断である。
(河北新報)
(1)日本人初のノーベル賞受賞者である湯川秀樹氏は、核廃絶運動に身を投じ、反戦平和を進めたことで知られる。博士は戦時中、国の原爆開発に関心を寄せていたとされる。そうした過去への反省から、科学者組織「パグウォッシュ会議」の創立に尽力することになった。学問とは、国家のレベルを超えて、世界の学者と価値観を共有し、切磋琢磨(せっさたくま)することで国際社会に貢献するものなのだろう。
(2)日本学術会議の推薦した新会員候補のうち、政府に批判の立場だった6人について菅義偉首相が任命しなかったことが衝撃を広げている。

2.問題点の把握
(南日本新聞)
(1)学術会議の存在意義が失われかねない事態である。
(2)政府は国民が納得できるよう説明するとともに、任命の見送りを撤回すべきだ。
(3)政府は1983年11月の参院委で推薦候補者は拒否しないと答弁していた。しかし、今回は加藤勝信官房長官が「義務的に任命しなければならないというわけではない」と述べ、行政機関の人事にすぎないとの立場を崩さない。政府答弁との整合性も問われよう。
(4)学術会議は日本の科学者を代表する国の特別機関だ。会員210人、連携会員約2000人で構成する。今回は新会員候補として105人を推薦し、任命されたのは松宮孝明立命館大教授(刑事法)ら6人を除く99人だけだった。
(5)松宮教授は2017年、国会で共謀罪の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法を「戦後最悪の治安立法」と批判した。任命されなかった他の候補者も安全保障関連法などに反対した。「学問の自由に対する不当な政治介入」との声が上がるのは当然であろう。
(6)学術会議は普通の政府機関ではない。敗戦後の1949年、「わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業および国民生活に科学を反映浸透させること」を目的に設置された。政府の諮問に答えるだけでなく、政府から独立して、人文・社会科学を含む科学に関する重要事項を審議し、その実現を図り、科学研究の能率を向上させる役割を担う。中立的立場から政府、社会に助言することも重要な仕事の一つである。
(7)度々、政権と対抗してきた学術会議へのけん制という見立てもある。2015年には政府と電力会社による高レベル放射性廃棄物対策の明確化を原発再稼働の条件にすべきだと提言した。17年には防衛省の軍事研究助成制度を「政府介入が著しく、問題が多い」と痛烈に批判する声明を発表していた。
(河北新報)
(1)不可侵であるべき学問領域に対する政権の人事介入であることは明らかだ。   (2)学術会議は「独立を揺るがす」として、あらためて6人を加えるよう求めていく。研究活動の自由を脅かす振る舞いに対して、まっとうな対応と思われる。
(3)推薦されながら任命されなかったのは、政治学や憲法、行政法、歴史学の大学教授だった。2017年に共謀罪の趣旨を盛り込んだ「組織犯罪処罰法改正案」に反対した法学者を含んでいる。集団的自衛権の行使を認める「安全保障関連法案」(15年)に対し、廃案を求めた憲法学者も入っている。
(4)政府はそうした過去と今回の人事との関連について、はっきりと理由を示していない。任命権は首相にあるとはいえ、「推薦に基づいて」行うもので、裁量権を大きく逸脱する。
(5)就任間もない菅首相は、意に沿わない人物を遠ざけた前政権の強権運営を継承すると見られている。最近も「政府の方針に反対する官僚は異動してもらう」と強気な発言をしている。排除を辞さない手法が、早くも任命拒否の形で顔を出したのではないか。
(6)国による学問への干渉は、これにとどまらない。国立大学は2004年に法人化したものの、実態は国のコントロール下にある。研究費の獲得競争が奨励され、すぐに役立つ成果と効率を求められる。お家芸であるこつこつ型の基礎研究はおろそかにされる。
(7)研究教育を軽んじる態度は、資源に乏しく、科学技術に頼るほかない日本の存立基盤を揺るがす。学術会議への介入も根っこは同じで、許されるものではない。

3.「撤回」を掲げる主張
(南日本新聞)
(1)任命見送りが政権にとって耳の痛い批判を封じ込める強権発動だとすれば看過できない。首相は官房長官時代から人事権を振りかざし官僚組織を掌握してきた。従わない者を排除する手法を学術の世界に持ち込めば、萎縮を招き、学問の発展を阻みかねないことを自覚すべきだ。
(河北新報)
(1)政府は直ちに方針を撤回するとともに、政権内でどのような検討を行い、排除の人選に至ったのかをつまびらかにすべきだ。
(2)週明けから、ノーベル賞各賞の発表が始まる。このところ、日本人の連続受賞に沸いているだけに、残念な出来事となった。世界の研究者に対しても恥ずかしい思いである。一般市民と政権の感覚のずれが、ここにも現れている。


# by asyagi-df-2014 | 2020-10-04 06:34 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人