嘘のようで本当の鯛
2014年 06月 19日
嘘のようで本当の鯛
こんなメールが届きました。画像付きで。
「鯛は74cmありました。二日かけて食べました。(注;ここは絵文字))」

中年というよりは、初老という風情の二人、もはやぎらぎらしたものからは逃れ、楽しみのためにと、互いに頷き合いながら、瀬渡し船のM丸に、身を任せる。
そうだ、今日もこれでいいのだと。釣れたら釣れた時の時間そのものに身をゆだねようと。
M丸は、大分県は鶴見のとある岩場に二人を下ろす。「それじゃあねっ」と船長は気をつかわせない配慮をそっと残していく。
時は、午後3時。二人は、がまかつとダイワの竿に、ちょっと高価なレバーブレーキのリールを時間をかけて用意する。
明日の朝までには余るぐらいの時間が待っている。6月の太陽は、すでに真夏であり、体力を実直に奪って行くに違いない。
今日はこれまでの実釣の続きでいいのだと、竿を出す。
そうだったのです。ここまでは、いつも通りだったのです。
「おいあれ見ろや。魚やぞ。鯛じゃねーか」と相棒。
右流れの潮に乗って確かに魚が浮いて流れている。本当に鯛だ。
ここまでは、もしかしたら万が一にはあることかもしれない。
互いに、思わず自分の立ち位置を確認してしまう。
「おい。生きてるぞ」
「うん。生きちょるなあ」
嘘のようで本当の話の始まり。
潮は、右流れから、どうしてか、磯に当たる潮に変わっている。
鯛は流れに正直にその体を任せている。
二人は、目を合わせ、これまでの人生経験の中でのお互いの立ち位置と、潮の流れの中の鯛の位置を瞬時に、スクロールして計算して見せた。
鯛は、見事に足下で、たゆたっている。
意を決した後輩の方の男は、5Mのタモで見事に一発ですくってみせた。70cmを超える鯛を。
笑顔は、何故か忘れていた。ただ黙って、血抜きをした。
次の日の迎えの船の中でも、パカパカとクーラを開ける音は、一度もさせなかった。
どうしてか、秘密の臭いがした。
嘘のようで本当の鯛の話。食べて美味しかった鯛の話。




