カテゴリ:教育( 4 )

教育労働者の働き方改革とは。

 教育労働者の働き方改革について、琉球新報(以下、「新報」)の社説で考える。
 「新報」は2020年1月12日、「教員の長時間労働 働き方改革の道筋付けよ」、と論評した。
 なお、「新報」は、なぜ、「教職員」ではなく「教員」との表現を使用するのかとの問題はこの場では置く。
「新報」は、「長時間労働などで学校現場が疲弊し、教員にゆとりや将来への希望が見えなくなっている現状が改めて浮き彫りになった。県教職員組合(沖教組)が40歳未満の若手教職員に行ったアンケートで、定年まで現在のような働き方を続けられないとする人が55%に上った。月平均の時間外労働は平均55・7時間となり、持ち帰りの仕事も10・6時間あった。働き方改革関連法の施行によって、民間企業では時間外労働は原則月45時間と定められたが、それを大きく超える実態だ。」、と問題についての認識を、まず示す。
この上で、「新報」は次のように指摘する。
(1)教育現場はいじめや不登校などの課題が山積している。「モンスターペアレント」の対応に神経をすり減らす例があるのも事実だ。教員が多忙故に疲れ切っていては適切な対処ができない恐れがある。教員の残業を減らし、ゆとりある教育現場にするための具体的な対策が求められる。
(2)本紙が昨年12月に市町村の教育委員会へ聞いたアンケートでも、公立小中学校で月100時間を超える残業をした教員が延べ810人、「過労死ライン」とされる80時間超は少なくとも延べ2329人だった。学校現場の長時間労働は常態化している。
(3)文部科学省は昨年1月、働き方関連法に沿う形で公立校の教員の残業が月45時間を超えないようにする指針を出した。しかし、指針に罰則規定はなく、「臨時的な特別の事情」の場合は月100時間を超えない範囲で延長できるとしている。
(4)そもそも県内の公立小中学校でタイムカードやICカードなどで客観的に勤務時間を把握していたのはおよそ半数の21市町村だった。その他は教員自身がエクセルデータに記入したり、出勤簿に押印したりする方法で勤怠を管理していた。労働時間が正確に管理されず、月45時間の指針を守らなくても罰則もない状況では、指針が形骸化しているのも無理はない。
(5)沖教組のアンケートによれば、教員が本来時間をかけたいのは教材研究や補習指導、学年学級運営など子どもたちを指導する業務だが、時間外勤務が発生する理由は報告書作成や校務分掌などが上位となり、生徒と向き合う時間が取れていない実態も見えた。


 「新報」は、この論評の最後を次のようにまとめる。

「経済協力開発機構(OECD)の国際教員指導環境調査で日本の中学校教員の週当たりの仕事時間は56時間と世界最長だ。にもかかわらず、生徒が自ら考える力を育む授業を実践する教員は各国平均に比べて低い水準にある。多忙さが子どもの指導に向けられていないのだ。いま、学習指導は暗記中心の授業から表現力や深い思考を養う方向へ転換している。教員の指導法がより高度になるよう、授業の準備を充実させる時間が必要だ。教員の仕事の在り方を抜本的に見直し、働き方改革の道筋を付けたい。」


 やはり、押さえておかねばならない。教育労働者の働き方の改革とは、教育のあり方の根本的な見直しがあって初めて可能であることを。




by asyagi-df-2014 | 2020-01-20 14:02 | 教育 | Comments(0)

大学入学共通テストの国語と数学の記述式問題の導入。

 琉球新報は、表題について、「大学共通テスト 「記述式」の課題再検討を」、と社説で、2019年12月8日次のように論評した。


(1)2020年度開始予定だった大学入学共通テストの国語と数学の記述式問題導入が見送られる見通しとなった。記述式問題については採点の公平さが保たれるか、受験生の自己採点と実際の成績に大きなずれが生じないか―など、これまでにも課題が指摘されてきた。
(2)先に英語の民間検定試験利用も見送られた。来年1月には本番の試験まであと1年となる。結論を早く出さなければ受験生が混乱するだけだ。
(3)今回の大学入試改革は2020年度の導入日程ありきで、課題を明示することなく議論が進んだ拙速さが問題だった。まずは白紙に戻し、課題点を洗い出して検討し直すべきである。
(4)大学入試については暗記型の知識ではなく、「自分の力で考えをまとめたり、相手が理解できるよう根拠に基づいて論述したり」する思考力や判断力、表現力を問うことが重要とされた。その方向は間違っていない。だが記述式を導入する際の課題が十分に検討されていなかった。
(5)高い公平性が求められる入試の約50万人分の採点を2次試験までの20日以内でミスなく終えることができるとは思えない。
(6)4月に公表された共通テストの試行調査では国語の記述式で0・3%の採点にミスがあった。受験生千人中3人に採点ミスが生じる計算だ。
(7)記述式は採点者によって評価がぶれる側面はある。そのために二重のチェックなどが必要になる。採点はベネッセグループが請け負うが、国会論議の中で採点者は7700人に上り、学生やアルバイトを含むスタッフが行う可能性が明らかになった。質の確保が難しいのではないか。
(8)受験生の自己採点と実際の成績のずれについても懸念は消えない。受験生は一次試験を自己採点して出願先を決める。試行調査では自己採点と実際の成績がずれた割合が国語で最大33%、数学でも14%に上った。このままでは受験生が自分の試験結果を正確に把握できずに出願先を決めなくてはならなくなる。


 この上で、琉球新報は、このように断じる。


「そもそも今回の大学入試改革は民間の事業者が負う部分が大きい。英語では民間の検定試験を導入することになったが、受験会場が地方に少ないことや高額な受験料が問題になった。国語、数学の記述式問題の採点を担うベネッセは受注を高校側に伝えて自らの模試の営業活動に利用したとして文科省から再発防止を求められた。採点の担当者は採点マニュアル作成のため共通テスト本番前に問題や回答例を知ることができる。情報漏れの対策は万全だろうか。言うまでもなく、受験はその人の人生をも左右する大きな関門だ。それだけに、公正公平な試験で、受験生が自己の力を最大限発揮できる環境が必要だ。採点ミスや自己採点とのずれ、受験機会の不平等などは論外だ。」



by asyagi-df-2014 | 2019-12-12 06:46 | 教育 | Comments(0)

共通テスト「国語」における記述問題の導入中止を求める緊急声明

 国語教育に関わる教員・研究者等有志一同として、2019年12月6日 文部科学大臣萩生田光一あてに、「共通テスト『国語』における記述問題の導入中止を求める緊急声明」(以下、「声明」)を提出した。
 なお、発起人は、木村小夜(福井県立大学教授)・紅野謙介(日本大学教授)・五味渕典嗣(早稲田大学教授)・島村輝(フェリス女学院大学教授)・竹内栄美子(明治大学教授)。


 「声明」の内容は次のもの。



2020年度より実施予定の大学入学共通テストの「国語」では、依然として記述問題が導入される計画になっています。国語教育に関わり、入学試験にも携わってきた私たちは、もとよりマークシート式の問題に限界があり、記述問題にはマークシート式にない柔軟性や、思考力・表現力を問う可能性があることは理解しています。しかし、現行案のまま導入することに対しては、断固として反対します。制度的な不備とともに、記述問題の長所を損なう悪しきモデルを掲げることで、若い世代の自由な発想力や思考力、表現力をむしろ規制してしまうと考えるからです。以下に現行案の致命的な欠陥を指摘します。

1 採点における公正さを担保できません。
記述問題の作成や採点に携わった経験のあるものは、この試験方式には物理的な限界があることを知っています。50万人以上が受験する大学入学共通テストで、採点基準を公正に維持することは不可能です。
2 採点の体制に信頼が置けません。
受託業者は、適切な資格のある者を選抜すると主張していますが、検証ができません。また1月後半に約7千人もの採点要員を確保することも難しく、集めえたとしても、経験的に見て、採点基準の一致や精確な共有、見直し作業ができるとは思えません。
3 自己採点に混乱が生じます。
受験生は自己採点によって二次試験への出願を決定していました。採点基準の曖昧な記述問題では、その出願に不安を抱えます。また文科省が国公立大学に対して記述部分の点数をいわゆる二段階選抜に使用しないよう要請するという報道がありましたが、それが事実であれば、記述問題を導入する意義も必要もないと考えます。
4 今後、質の悪い試験問題を記述問題の手本とすることになります。
採点の揺らぎを減らそうとすれば、問題作成に制約を加えることになります。結果的にいくつもの条件をつけて解答を誘導することは、記述問題の長所を殺してしまいます。また、こうした試験問題をモデルとすることにより、思考や発想の定型化を推し進め、教育に悪影響を及ぼします。

 以上のように、共通テストへの記述問題の導入は、それによって得られるメリットがまったく存在しません。公平・公正な採点を期待できず、さらに問題漏洩、情報漏洩や受託業者による利益相反の危険性が高まります。これを強行すれば、多くの受験生から試験結果の開示請求を受け、混乱を避けることができないでしょう。記述問題の意義や可能性を認めるからこそ、私たちは共通テストへのこのような形での記述問題の導入に反対し、中止を強く要求します。




by asyagi-df-2014 | 2019-12-09 07:32 | 教育 | Comments(0)

不登校児童生徒の増加。

 西日本新聞(以下、「西日本」)は2019年12月22日の社説を、「不登校の増加が止まらない。文部科学省の2018年度調査によると、病気や経済的な理由を除いて30日以上欠席した小中学生は、前年度から約2万人も増え約16万5千人に及んだ。6年連続の増加だ。」、と始めた。
あらためて、「西日本」の指摘する実態に驚く。
確かに、「17年に施行された教育機会確保法で、民間のフリースクールなど学校以外の『学びの場』の重要性も広く認められるようになった。とはいえ、義務教育の場は基本的には学校である。」(「西日本」)、とのことを確認しながらも、その深刻さを想う。
 「西日本」の「小学校から中学校へ、学年が上がるほど多くなり、中学生は27人に1人という割合だ。学習カリキュラムが過重になっているのではないのか。教室が居心地の悪い空間になってはいないか。いま一度、学校教育の現状を検証する必要があろう」、との指摘は次のもの。


(1)千人当たりの不登校の児童生徒数は全国平均で16・9人だった。九州7県では、ともに17・8人の福岡と大分を除く5県が全国平均を下回った。ただし、7県とも前年度から上昇している点には留意すべきだろう。
(2)文科省の調査は、学校に複数回答で原因を尋ねている。家庭内不和など家族の状況が約4割と最も多いが、いじめ以外の友人関係が約3割、学業不振が約2割など、学校の中で悩みに直面する子どもの姿も浮き彫りになっている。教職員が適切に対応することで防げる不登校も少なくないはずだ。
(3)いったん不登校の状態に陥った場合、強引に学校に引き戻そうとすれば、子どもを窮地に追い込みかねない。周囲の大人が子どもに寄り添い、その声に耳を傾けることが大切だ。休養が必要なケースもあるだろう。長く休むほど学校に戻ることが難しくなる場合も考えられる。そんなとき、行政が支援する教育支援センターやフリースクールの活用も検討してほしい。
(4)こうした学校外の学習活動を「出席扱い」にできる制度もあるが、本人に学校復帰の意思がないと判断されると適用されないこともある。文科省が、適用条件を「学校復帰が前提」と解釈できる通知を過去に出していたためだ。この秋、文科省はこの通知を廃止し、「出席扱い」にしやすくする新たな通知を地方の教育関係機関に出した。教育機会確保法の理念に沿った妥当な措置だと言える。


 「西日本」は、最後に、こうした現状に対して、次のことを求める。


(1)進級するとともに学校から離れていく児童生徒が増えるのはなぜか‐多角的に原因を探り、改善策を練るべきだ。併せて、フリースクールなど学校以外の選択肢をもっと増やし、十分な学習指導を提供できるような支援も拡充する必要がある。
(2)教育現場には「復帰ありき」に固執しない、児童生徒それぞれの個性と状況に応じた、柔軟な不登校対策が求められる。



by asyagi-df-2014 | 2019-12-05 05:57 | 教育 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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