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過去の歴史に向き合わない日本。

 ハンギョレは2019年9月2日、日本の今の姿を映し出す。
「朝鮮人大虐殺を無視する日本とポーランド侵攻を謝罪したドイツ」、との社説で。
 ハンギョレは、次のように日本とドイツの過去に向き合う力を比させる。


(1)過去の歴史に向き合う日本とドイツの態度が改めてはっきりと対比された。1日に東京で開かれた関東大震災朝鮮人虐殺犠牲者96年追悼式典で、東京都知事は果たして追悼文を送らなかった。1923年9月の関東大震災時に日本の自警団と軍警が「朝鮮人が井戸に毒を放った」などと流言をまき散らして数千名を虐殺した事件を無視したのだ。一方、同日にポーランドのピエルンで開かれた第2次世界大戦勃発80年の行事にはドイツのヴァルター・シュタインマイアー大統領が参加して「ドイツの圧制で犠牲になったポーランド人に頭を下げて許しを請う」と謝った。
(2)小池百合子東京都知事は、これまで歴代の大半の知事が送ってきた追悼文を2017年から3年続けて送らなかった。彼女は追悼文拒否の理由として「すべての犠牲者を共に追悼する」としたが、これは地震の死亡者と虐殺の犠牲者を区別しない方法で、虐殺の責任を糊塗しようとする意図と見られる。実際彼女は朝鮮人虐殺について「様々な見方がある」とごまかしている。
(3)これと対照的にシュタインマイアー大統領は「犯罪を犯したのはドイツ人」と認めて「私たちは絶対忘れずに記憶していく」と念を押した。ポーランドは第2次大戦で約600万人の生命を失った。多くのドイツ指導者は機会あるたびにこのような加害事実を認めて許しを請うてきた。
(4)文在寅(ムン・ジェイン)大統領が最近「ドイツが過去を率直に反省して信頼を受ける国になったことを日本は深く胸に刻まなければならない」と述べたが、日本が相変らず過去と正直に向き合うドイツから何の教訓も得られていないようで遺憾だ。単に小池知事だけの問題ではない。安倍首相は日帝強制徴用被害者の苦痛は見ずに、韓国の最高裁(大法院)の賠償判決に貿易報復で対応している。シュタインマイアー大統領は過去を忘れることができない理由について「誤ちを繰り返さないために」と述べた。日本が覚醒することを改めて促したい。


 確かに、無残なのは、この国の首相が「安倍首相は日帝強制徴用被害者の苦痛は見ずに、韓国の最高裁(大法院)の賠償判決に貿易報復で対応している。」(ハンギョレ)、との姿を国民に直接曝し続けていることである。



by asyagi-df-2014 | 2019-09-15 09:04 | 侵略戦争・戦後処理 | Comments(0)

信濃毎日新聞。-あすへのとびら 日韓と強制動員 果たすべき責任はなお-

 深く思わさせられる。
 信濃毎日新聞(以下、「信毎」)の叡智はどこから来るのか。
 沖縄県の二紙は、沖縄戦、『構造的沖縄差別が』がもたらす基地問題や経済格差等々の現実が目の前にある。こうした問題に誠実であるということは、住民にきちんと向き合うことでしかない。だから、その二紙が、当たり前の見解を出してくることは、納得できる。
 では、「信毎」は。


 「信毎」は2019年9月1日、「あすへのとびら 日韓と強制動員 果たすべき責任はなお」、と社説で論評した。
「信毎」は、何が問題になっているかを明らかにする。


(1)韓国との溝が戦後最悪と言われるまでに深まっている。
(2)発端となった元徴用工訴訟を巡り、安倍晋三政権は「日韓請求権協定で問題は解決済みだ」と主張する。事態収拾の責任は韓国にあるとして譲らない。
(3)呼応するように、いままた「強制連行はなかった」との言説がまことしやかに飛び交う。日韓のどちらかが譲歩して今回の対立が収まるとしても、このままでは、解決をみない確執としてこの問題は両国の間に横たわり続けてしまうだろう。
(4)日本の炭鉱や土木現場、工場などに動員された朝鮮人の正確な人数は分かっていない。過去に大蔵省が72万人余、厚生省が66万人余との調査結果を示している。韓国側は78万人以上とする。これとは別に、軍人軍属に20万〜30万人超が動員されたとの統計が残る。
(5)1910年の韓国併合後、職を求める朝鮮の人々の渡日が相次いだ。「自主的移住」には、帝国政府が土地を接収し、本土に米を送るための農地改良費の負担を押し付け、半島の農民を追い詰めたことも大きく影響した。

 次に、「信毎」は、日本政府の主張は、「制度のうわべに依拠した詭弁(きべん)にすぎない。」、と指摘する。


(1)日中戦争開始から2年後の39年、政府は労働力不足を補うため「労務動員計画」を策定する。朝鮮半島では、日本企業の募集員が、朝鮮総督府に割り当てられた集落で労働者を集める「募集」として動員が始まった。42年には「官斡旋(あっせん)」に改まる。文字通り行政の関与を強め、企業の手続きを簡略化した。労働者を確保する地域は半島北方に広がった。
(2)募集と官斡旋には日本の警官が随行した。断ると脅迫を受けた、無理に連行された、と証言録にある。いずれも強制力を伴ったことに変わりはない。
(3)募集当初は、就労のため自ら応じる人も少なくなかった。が、過酷な労働環境に置かれ、契約期間の延長も強いられる実情が間もなく知れわたる。
(4)半島の帝国事業でも動員は行われており、農業生産が危ぶまれるほど朝鮮自体の人手が不足していく。逃亡する人たちもいて、44年9月に国民徴用令が適用されるころには、動員計画の維持が困難な状況に陥っていた。朝鮮人の動員先は、北は樺太(サハリン)、南は南洋諸島にまで及び、その大半が10代、20代だったという。
(5)日本政府は戦後、半島での徴用令適用期間が短かったことを理由に、「徴用労務者の数はごく少部分」で、ほかの数十万に上る朝鮮人は「自から内地に職を求めてきた」「募集に応じて自由契約にもとづき内地に渡来した」との見解を示している。制度のうわべに依拠した詭弁(きべん)にすぎない。
(6)安倍政権が盾に取る1965年の請求権協定には、強制動員された人々を含め「請求権に関する問題が、完全かつ最終的に解決された」と記されている。韓国政府も日本が供与した5億ドルに個人補償が含まれ、請求権は消滅したとの立場を取ってきた。だから昨年秋、韓国の最高裁が元徴用工の個人請求権を認め、日本の企業に慰謝料の支払いを命じたことは「戦後の国際秩序への重大な挑戦」と反発する。個人の請求権の有無については、いまなお議論がある。
(7)国内では「韓国とは論理的な話し合いができない」と非難する向きが強い。相手国の国民性をあげつらうほどの不毛はない。あくまで両国の歴史の上に具体的なあつれきの原因を見いだすことが、外交の基本のはずだ。


 最後に、「信毎」は、「加害国から提起を」、とその考え方を明記する。


(1)帝国は、植民地支配からの解放を求める朝鮮人をねじ伏せ、民族教育や氏名を奪った。日本人と平等とする「内鮮一体」をうたいながら、関東大震災では朝鮮の人々が虐殺された。その後も監視・警戒を解くことはなかった。
(2)戦後も、さまざまな事情から日本に残った在日朝鮮・韓国人を外国人としてひとくくりにし、差別を続けてきた。
(3)いま韓国で反日デモや日本製品の不買運動が起きている。国家主義の高揚に、安倍政権が「法的道理」を振りかざして応じたところで、民族の尊厳回復を訴える人々には通じないだろう。
(4)占領した国々に対し主に経済協力で戦後処理に臨み、個々人の痛みに目を配らなかった補償のあり方が問い返されている。日本政府は、強制動員に関する資料を全て開示すべきだ。早くから地域の動員調査に取り組んできた各地の市民団体、研究者らの力も借り、実態の解明に努めなくてはならない。
(5)その上で、積み残された問題群について、いまからでも果たし得る責任を加害国の側から提起したい。過去の問題で解決済みだ―との声は、被害を受けた国から聞こえて初めて確かなものになる。


 「信毎」のこの社説を読みながら、やはり、問題の克服は、「『植民者』が植民地主義を克服できるかにかかってる。」、ということにあると痛感している。




by asyagi-df-2014 | 2019-09-12 05:48 | 侵略戦争・戦後処理 | Comments(0)

長崎新聞。-朝鮮人徴用工 「終わった話」ではない-

 長崎新聞は2019年5月13日、「朝鮮人徴用工 『終わった話』ではない」、と山口響さんの記事を記載している。
山口響さんは、「次のような話が仮にあったとする。あなたは、日本人として、どう感じるだろうか。」と始める。


(1)次のような話が仮にあったとする。あなたは、日本人として、どう感じるだろうか。(2)-19XX年、韓国は武力を背景に日本を併合した。韓国は、日本の内政外交の全ての権限を握った。それから30年ほどたって、韓国はA国との戦争を始めた。A国の圧倒的な戦力の前に劣勢となった韓国は、労働力不足の埋め合わせのため、日本人を強制的に徴用し、韓国内の工場などで働かせた。しかし、韓国は結局A国に敗北した。それまで日本人は国籍上は「韓国人」とされていたが、ある日突然、韓国籍を放棄するよう迫られた。韓国企業に徴用されていた日本人は、未払い賃金を支給されることなく、放逐された。
(3)韓国の敗戦から20年たって、かつての植民地宗主国であった韓国は日本と新たな協定を結ぶことになった。韓国の過去の行為が違法であったかどうかについては問わないまま、韓国が日本に対して一定の経済協力を行う玉虫色の解決だった。日本人が過去の韓国の行いに対する損害賠償の請求権を持つかどうかは、あいまいなままだった。当時の日本は民主主義国ではなかったため、被害を受けた日本人が政府間交渉への意見を述べることは一切できなかった。
(4)さらに数十年がたち、存命中の元日本人徴用工のほとんどは90歳を超えた。彼らは、最後の力を振り絞り、かつて勤めた韓国企業に対する損害賠償請求の裁判を日本国内で始めた。幸い、裁判に勝つことは勝ったが、韓国企業は「問題は過去の協定で解決済み」との立場を取り、賠償金支払いに応じようとしない。韓国政府も同じ立場だ。これに業を煮やした日本人の原告側は、日本国内にあるそれら韓国企業の資産差し押さえを日本の裁判所に請求した。
(5)これに対する韓国内の世論のほとんどは、「もう終わった話を蒸し返すな」「日本人はまともに話ができる相手ではない」「日本とは断交だ」といった空気である-。


 続けて、山口響さんは、「あらためて聞く。あなたは、日本人として、この韓国人の態度をどう感じるだろうか。」、と。
そして、このように問いかける。


(1)言うまでもなく、現実に起きているのは、この架空の話の「日本」と「韓国」を丸ごと入れ替えた事態である。もしあなたが、この作り話の中の「韓国人」の手前勝手さに憤りを感じるとしたら、それがまともな感覚だと思う。
(2)「確かにわれわれはあなた方の国をかつて植民地化した。しかし、それは合意の上でなしたことで、合法だ。国どうしの決着もすでに見ており、何十年もたってから被害者個人が文句を言うことは許されない」と拒絶されたら、あなたは納得できるだろうか。


 そうなのだ。
 じっくり考えればわかることではないか。
その気さへあれば。



by asyagi-df-2014 | 2019-09-11 06:10 | 侵略戦争・戦後処理 | Comments(0)

「日本は植民地主義を乗り越えるチャンス」、と。

 Yahooニュ-スは2019年8月14日-「『日本は植民地主義を乗り越えるチャンス』…'日韓通'の韓国市民運動家が見る日韓の葛藤」、と報じた。
 これを、掲載する。


日本の韓国「ホワイト国」除外決定により一層深まった日韓の葛藤。その発端となった昨年10月の韓国大法院判決の経緯と意味をよく知る「日韓通」の市民運動家に、現状と解決策、日韓市民連帯などについて聞いた。

●「市民の連帯があれば解決できる」

「私が日韓関係に摩擦をもたらしていると言う人もいる」と複雑な表情で明かした金英丸(キム・ヨンファン)さんは1972年生まれ。ソウル市内にあるNGO『民族問題研究所』で対外協力室長を務める。

1997年から北海道の強制徴用者の遺骨発掘運動で日本との関わりを持ち、2002年から06年まで高知県の平和資料館・草の家の事務局長を務めた。日本語が堪能な上に温和な人柄で、日韓市民の交流の橋渡しを長い間続けてきた。日韓の市民社会で広く知られた人物だ。
徴用工裁判には14年から本格的に関わり始めた。今は市民団体の連帯組織である「強制動員問題解決と対日過去清算のための市民社会共同行動(以下、共同行動)」で政策委員長を務めている。

金英丸(左端)さんは、8月15日の「光復節」を控え最近とみに忙しい日々を送っている。14日には外信記者クラブでの強制徴用被害者や支援者の記者会見をセッティングした。

12日、民族問題研究所で筆者とのインタビューに応じた金室長は、2018年10月の大法院判決について「日本の市民運動が無ければここまでできなかった」と、日韓の市民の成果であると何度も強調した。

さらに「判決は『65年体制』による日韓の政治的な結託、言い換えれば朝鮮半島の分断体制、冷戦体制を維持する日米間の軍事同盟が崩れてきた決定的な結果」と位置付け、理解を求めた。

その上で今を「当事者が生きている間に日本政府がこの問題を解決できる最後のチャンス」と見なし、「被告企業と原告側が判決にしたがい、賠償についての協議を始めることが重要」と訴えた。

そして「市民たちの連帯があれば、この問題を解決することができる。今本当に必要なのはその部分」としつつ、「日本では8月15日前後になると、原爆被害者や戦争被害についての番組で物語が多く語られる。その痛みを分け合う気持ちを持ってほしい。同じ場所で苦労した韓国の人がいる」と、政府の問題ではなく人間の、そしてヒューマニズムの問題であることを強く主張した。

以下は詳細なインタビュー。

(1) 2018年10月の韓国大法院判決をどう受け止めたか。

基本は1997年から日本で裁判をやって、日本の最高裁で負けて2003年から韓国に舞台を移して続けてきた。90年代以降の、日本の市民社会と韓国の市民社会が戦ってきた結果だ。1991年の金学順さんのカミングアウト(※1)から始まった戦後補償の運動、つまり民主化した韓国で、それまで話すことができなかった韓国の被害者がみずから声をあげたのが始まりだった。

裁判の過程で(1965年の)請求権協定が壁になったから、当時の日韓会談で何があったのか話をしましょうと情報公開を求める流れになった。そして裁判の結果、韓国政府の資料が公開され、そこから「慰安婦」、サハリン残留韓国人、原爆被害者の補償問題が明らかになり、韓国の憲法裁判所から「韓国政府が日本政府に対しはたらきかけるべきだ」という違憲判決(2011年)を引き出した。

その間、日韓の政府がやったことは一つもない。すべてが被害者、あるいは日韓の市民社会が闘って勝ち取ってきたもので、そうした結果が、2018年の10月31日の韓国の大法院の判決といえる。

※1:金学順(キム・ハクスン、1924~1997)。韓国の女性運動家。1991年に韓国で初めて自身の日本軍「慰安婦」としての経験を証言し、日本政府を相手に訴訟を起こした。これにより、同様の被害にあった人々が韓国以外の国からも名乗り出、問題が表面化した。証言をした8月14日は2018年に韓国政府により「慰安婦被害者を悼む」国家記念日に指定された。

(2) 大法院の判決について、日本政府は今なお「65年協定でこの問題は完全かつ最終的に解決済み」という立場を崩していない。

知っての通り今、日本政府が強硬な態度に出ている。こうした状態で韓国政府が代わりにお金を出す場合、「日本政府の脅かしに屈服した」と受け止められる。このため日本側が強く出るほど、韓国政府の動ける範囲を狭めているという部分がある。

さらに日本側が一方的に請求権協定の3条に基づいて対話を求めているが、今回の判決は請求権協定の外にあるため、韓国側ではそれに当たらないという解釈だ。だが、何らかの形で政府としても話し合いをする必要がある。

強制動員について日本政府の責任もある。政府の許可がないと、日本の企業も人を使えないのは歴然としている。日本政府がやるのは資料を提供すること。歴史問題の解決に求められるのは「正義」に対する気持ち。被害者が何を求めているのか考えることなどだ。

(3) 河野外相は解決策を提案する駐日韓国大使に「極めて無礼」と声を荒げるなど、日本側は非常にドライな印象だ。

これまで日本で行ってきたほとんどの裁判で負けている。その際、韓国政府は日本の大使に対して文句を言ったり抗議するなどは一切していない。司法主権というものがある。これは尊重されるべきもので民主主義の基本だ。先にも述べたように、被害者たちが裁判をずっと戦ってきた結果、ここまで来ている。

一方、企業側も20年以上裁判所で戦ってきている。和解したこともある。それなのに、判決が出たら連絡もすべて無視し、交渉にも応じない。被害者が訪問しても門前払いにする。私人の関係でもこうはしないだろうと思う。

被害者が過去に自分の会社で働いた人であるという強制動員の事実は、日本の裁判所も認めている。個人の請求権は生きていると。国の立場で駆け引きをするものではなく、被害者の人権に向き合ってはどうか。明らかな人権問題であると理解する必要がある。今がある意味で最後のチャンスだ。

ソウル市龍山区に位置する民族問題研究所と付属の植民地歴史博物館。1991年に設立された同団体は、1万3000余人の会員を持つ大型NGOだ。

(4) 「最後のチャンス」とはどういう意味か。

当事者が生きている間に日本政府がこの問題を解決できる最後のチャンスということだ。慰安婦問題もそう。歴史問題すべてがそうではないが。この問題にフタをして生きるのかという分かれ道だ。フタをする場合は、真の意味での関係改善ができないという本質的な問題にぶつかる。

例えば今、日韓の自治体が多く交流しているが、その中で歴史問題を避けてきた。日の丸と太極旗(韓国の国旗)を掲げて、お互いに未来志向という交流をしてきたが、心の奥の歴史問題を語れなかった。そういう交流は基盤が弱く、すぐに切れてしまう。

私の周囲でも歴史問題を扱う交流は今も途切れず続いている。日中韓の歴史教科書を作るキャンプ、高知の高校生の平和ゼミナールも釜山との間で10年続いている。北海道で強制徴用者の遺骨を発掘する東アジア共同ワークショップもそう。

こうした脈絡で、日本社会にとって歴史問題にしっかり向き合うチャンスであるにもかかわらず、まるで「金をやりたくない金持ちによる、蔑んだ感じ」の対応は、日本社会にとって損なことである。

(5) 韓国の反応も強い。

韓国社会の反応は「反日デモ」でなく、「反安倍デモ」であることがはっきりしている。政治家たちに利用されるナショナリズムには絶対にのっかりたくない。それくらい成熟している。

韓国の人がなぜこれほど怒っているのかを考えてみると、やっぱり昔とは違うというものがある。特に昔は日本が経済的に上だったが、今の韓国の若者にはそんな意識がまったく無い。その代わり過去の歴史による日本に対する偏見もない。日本が好きで旅行に行く人がたくさんいる。

そんな彼らがなぜ怒っているのか。それは日本に無視されていると思うからだ。若者世代は正義感や公正公平に敏感だ。世代間の待遇の差、非正規雇用の問題などは彼らにとって正義に反する問題だ。今回の一連の騒動をきっかけに若者が歴史問題に向き合うことになったという点がある。

歴史認識に根ざした日韓の真の連帯は、20年以上も途切れず続いてきた。8月15日前後には日本から韓国にたくさんの人が来る。安倍政権に一緒に反対するというのは、東アジアの平和を考える上で重要だ。

(6) 文政権の対応はどう評価するか。「(昨年10月末から)8か月間、何をしてきたのか」という声も韓国内にはある。

政府は公式に被害者の声を聞いていない。政府側と接触はあったがそれは非公式なものに過ぎない。「共同行動」でも6月20日に声明を出し、政府を批判した。政府に言いたいことはたくさんある。もう少し見守って、それでも変わらないようならば会見を行うつもりだ。

韓国政府にも責任がある。朴槿恵時代に外交部が徴用工裁判の判決に介入している。1965年に被害者を救済することができなかった点もそうだ。だから本当に被害者を中心において、「外交的惨事」だった2015年の慰安婦合意から学ばないといけない。被害者が求めるものはなんなのか。

政府は被害者に対しずっと何もしてこなかった。その被害者がここまでやっているのだから、政府が正義をもって被害者のことを考えるべきだ。判決がすでに出ているにもかかわらず、日本側と中途半端に妥協してしまう場合、本格的にこんがらがることになる。

※編注:当時、韓国政府は日韓の企業がお金を出し合う「1プラス1」の財団案を発表し、日本政府に提案したが、日本政府は即座にこれを拒絶した。「共同行動」は声明文で、「政府は各界の人士の意見および議論を聴取したとするが、被害者の意見をまったく反映していない」、「2015年の慰安婦合意の失敗をふたたび繰り返す政府に大きな失望を隠せない」、「今からでも強制動員被害者の声に耳を傾け、被害者中心主義に基づくべきだ」とした。(連合ニュースより)

(7) 文在寅政権に望むことは。

今こそ日本政府との対話に全面的に出るべき。また、この問題を解決する平和の同伴者として、市民たちの交流を活発にできるようにしてほしい。対決に進んではいけない。

対話を通して被害者たちの声を生かしていく。朴正煕(パク・チョンヒ、1965年)、朴槿恵(2015年)親子のように下手に政治的決着として妥協しないで、苦難の道でも乗り越えていくべきだ。

また、韓国では歴史問題に関して「慰安婦」、強制連行、在日コリアンの未解決の課題などがたくさんある。これに対し、その都度、臨機応変に対応するのではなく、総括的に解決できる大きな研究調査支援アーカイブを備えた責任ある機関を作るべきだと考える。後の世代のためにも、総合的に歴史問題をあつかう必要がある。国家の品格に関わる問題だ。
(8) 日本側は具体的に今後、どんな解決策を考えることができるか。

11日に東京であった、今回の訴訟に関わる日韓の弁護士が開いた会見でも話をしたが、被告企業と原告側が判決にしたがい、賠償についての協議を始めることが重要だ。この協議によっては、差し押さえている韓国内の被告企業の資産の売却(現金化)を停止することも考えている。日韓両政府はこの協議を支持するべきだ。

(9) 日本の世論では、2015年の慰安婦合意により、まるで日韓のすべての歴史認識問題が「最終的かつ不可逆的な解決」をしたかのような反応だ。2015年の「子どもたちに謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」という安倍談話もある。

慰安婦合意で安倍首相が朴槿恵大統領に電話で謝罪したというのは、謝罪にならない。謝罪というのは受け入れる方の気持ちが大切だ。例えば争いになって手を出してしまったが、当事者でもない人に謝罪しておいて「解決した」という感覚は有り得ないと思う。

安倍首相は被害者に謝罪しないといけない。なぜそれができないのか。そのひと言がなぜ難しいのか。被害者に対しての配慮や人権の感覚が無いと言う他にない。

「慰安婦」の被害者に10億円を出したというが、お金で決着させようとする感覚自体がおかしい。歴史認識問題であるにもかかわらず「不可逆的、完全な解決」という言葉が当然のように使われるというのは、この問題を自分のこととして考えていない証拠だ。

民族問題研究所が2009年に発刊した『親日人名辞典』。日本軍将校出身の朴正煕元大統領などが含まれ、「大日本帝国時代の親日派とは何なのか」という論争を呼んだ。

(10) それでも日本政府や世論の態度を変えるのは難しいと思う。

私も難しいと思う。少し違った視点から見てみたい。日本の場合、国交を結んでいるロシアと中国と韓国、すべての国と国境問題がある。こうした問題はすべて歴史問題から来ている。先の戦争のことを今も解決していないという歴史的な証拠だ。

なぜ沖縄の人々が政府に抵抗しているのか。(基地問題は)戦争の遺産ということだ。毎年、沖縄を訪れる安倍首相がやじを受けるのも、沖縄の基地問題にきちんと対処していないからだ。重く受け止める必要がある。

(11) 韓国は「反安倍」と言い、日本の市民への信頼を寄せるが、日本の世論は想像以上に悪い。

この問題は「65年体制」が何かという問題だ。日本社会の根本にある戦後体制というのが、戦前の、例えば朝鮮人に対する蔑視意識や植民地主義から脱却しているのか自問してみるべきだ。安倍首相はこれが思想的にできていない。

2002年から06年まで日本にいた当時、小泉首相と金正日委員長の日朝平壌宣言から第二次核危機が報じられる様子を見てきた。北朝鮮に対するバッシングは戦前の朝鮮人蔑視、植民地主義のあらわれだと思っていた。それがずっと続いている。北朝鮮の拉致問題、核問題を安倍政権が利用してきている。

それが今は韓国にまで拡大した。以前は、日韓は良い関係に見えたのだが、今はあからさまにヘイトスピーチがなされ、朝鮮学校無償化は止まり、平和の少女像も置けない。愛知(トリエンナーレ)の事件は特に危ないと思う。政治家が過激な発言をし、右翼がそれに乗っかって脅迫をする。

日韓の葛藤を煽る悪意に満ちた報道が流れている。韓国の保守メディアとのつながりも感じる。韓国のデモも「反日デモ」や「親北朝鮮勢力がやっている」と簡単に片付けてしまってはいけない。日本メディアの罪は大きい。

最近では日本の保守派と近い韓国の保守団体も「反安倍デモ」に乗り出している。

(12) 「謝罪」とはどういうものか。

ある自民党議員が「日本政府は世界で『平和の少女像』拡散を防いでいる」と述べたが、そこに使うお金で、それこそ日本の国会内に少女像を作ることも考えられる。

ドイツ・ベルリンの中心にホロコーストの碑などの過去を振り返るモニュメントがたくさんある。あそこまでやっても、ネオナチみたいなのが出てくる。それを踏まえて、ドイツでは『まだ足りない』としている。

日本社会自身のために必要なことだ。日本人の立場では「一生懸命やっているのにいつも足りないと言われる」という気持ちは嫌かもしれない。だが本当の謝罪というのは謝罪してからがスタートだ。

豪州でアボリジニの「盗まれた世代(編注:1910年代から1970年代までアボリジニへの同化政策として子供を親元から強制的にひきはがし、白人家庭の養子にした。被害者は数万人にのぼる。08年政府が謝罪した)」について、首相が国会の前に被害者アボリジニの代表を呼んで、「謝罪は第一歩」と語った。

謝罪をしてその後どうするのかというのが、謝罪の中身を問うものなので、本気かどうか測るものだ。それなのに「不可逆的」などと言うのは日本社会にとっても良くないと思う。逆の立場で考えてほしい。いくら「村山談話を踏襲する」と何百回言っても、安倍首相の行動を見て信じるのか、と。

(13) 韓国では16年末から17年にかけて、朴槿恵政権を倒した「キャンドルデモ(キャンドル革命)」があった。日韓の市民意識の温度差もあるようだ。

その影響はあるだろう。特に、韓国で「司法ろう断」があった。「65年体制」つまり朴正煕(パク・チョンヒ)から始まる日韓の政治権力の「野合の体制」の姿があからさまになった。韓国の司法に政府や外交部が直接介入していた。これこそが「キャンドル革命」の結果、明らかになったものだ。当時の大法院長(最高裁判所長官)の梁承泰(ヤン・スンテ)もこの疑惑で逮捕されている。

だから、去年の大法院判決は「65年体制」による日韓の政治的な結託、言い換えれば朝鮮半島の分断体制、冷戦体制を維持する日米間の軍事同盟が崩れてきた決定的な結果といえる。だから安倍首相があれほどまでに反発するのではないか。

ある日本の知識人は「有り得ない判決」という安倍首相の反応を「怖いからではないか」と説明した。この判決の破壊力はそれほど大きい。危機感があると思う。今さら韓国の方に、韓国が裁判所になんとかしろというのは民主主義、三権分立の問題から難しい。

韓国は市民の力によって三権分立を無視してきた李明博・朴槿恵の勢力をひっくり返した。日本で話題になった「モリカケ」の構造は、「キャンドルデモ」のきっかけとなった崔順実=朴槿恵ゲートとまったく同じと感じる。日本の民主主義が問われているのではないか。

(14) 金さんは長く、市民の目線で国家の問題に相対してきた。日韓の市民は一連の日韓葛藤の中で、どう受け止めればよいのか。

日韓で合わせて1000万人が交流する時代だ。今、観光キャンセルで自治体が打撃を受けているが、日本社会が批判する先は韓国ではなく安倍政権ではないか。被告企業が判決を履行していれば、日本政府が絶対に正しいという立場がなければ、事態はここまでひどくなっていない。

それくらい、日韓の溝が深くなっている。だがこれは、取り戻すことができる。日韓ともにナショナリズムを国内政治に利用すると、いつか問題になる。それほど市民の認識はバカではないということを見せようと、日本の社会に訴えたい。あと今、韓国に来ても危ないというのは一切ない(笑)。

(15) 日韓市民の連帯の未来は。

平和を願う新しい市民の連帯というのがこれから芽生えると思う。日本の若者、市民におおいに期待している。安倍政権が続いて日本は幸せなのか、日本人自身が考えるべき。

また、平和憲法は日本人だけのものではない。朝鮮半島やアジアの人々がどれほど犠牲を払ってできたものかを考えてほしい。結局、植民地主義を乗り越えるというのは、日本の市民一人ひとりが歴史問題と向き合うときに可能になる。それを今、日本社会でも韓国社会でも考えるチャンスが来た。

また、南北がなぜ分断されたのか、そこに日本の責任がないのかも考えてほしい。「関係ない」という歴史修正主義が浸透しているのに危機感を感じる。

(16) 民族問題研究所は、植民地歴史博物館も運営している。日本からはどの程度、観覧客が訪れるのか。

けっこう来ている。全観覧客の10%が日本人だ。毎月100人近くは来ていると思う。述べ1000人を超えている。日本の市民の応援の電話も少なからず来る。「日本に植民地歴史博物館を建てるべき」という話も多い。なお、植民地歴史博物館を建てる際に、日本から1000万円以上の寄付があった。

(17) 最後に、日本の市民にひと言。

繰り返しになるが、東アジアの人権の問題に政治的決着でフタをしてきた歴史が、被害者たちの戦いによってようやくここまで来た。国際人権問題の観点から言っても、国家権力が勝手に個人の権力を消滅させることはできない。

1965年は国に自由にものが言えなかった時代だから、それが可能だったかもしれないが、世界の民主主義の発展の流れとして受け止めたい。だからこそ一方的な力関係でおどかしては絶対に解決できない問題だと思う。

この問題は、日本の市民運動が無ければここまでできなかった。市民たちの連帯があれば、この問題を解決することができる。今本当に必要なのはそこだ。

日本で8月15日前後になると、原爆被害者や戦争被害についての番組で物語が多く語られる。その痛みを交換する気持ちを持ってほしい。同じ場所で苦労した韓国朝鮮の人がいると。

そういう人たちが自分のお爺ちゃん、お婆ちゃんだったら、どう思うのか。

政府間の話し合いではなく、被害者の声に耳を傾けてほしい。映像でも映画でもいいから、直接、被害者に会ってほしい。韓国の水曜デモに行ったり、歴史博物館に行ったり、今だからこそ日本と韓国が親密に交流を深めてほしい。その機会をぜひ作ってほしい。(了)


徐台教-ソウル在住ジャーナリスト。「コリアン・ポリティクス」編集長

群馬県生まれの元在日コリアン3世。韓国・高麗大学東洋史学科卒。1999年から延べ15年以上ソウルに住みながら、人権NGO代表や日本メディアの記者として朝鮮半島問題に関わる。2015年、韓国に「永住帰国」すると同時に独立。2016年10月から半年以上「ろうそくデモ」と朴槿恵大統領弾劾に伴う大統領選挙を密着取材。その過程をまとめた「韓国大統領選2017」が多くのアクセスを集める。2017年5月からは韓国政治、南北関係を扱う日本語オンラインニュース「The Korean Politics(コリアン・ポリティクス)」を創刊し、現在は編集長。ソウル外国人特派員協会(SFCC)正会員。




by asyagi-df-2014 | 2019-08-24 09:45 | 侵略戦争・戦後処理 | Comments(0)

長崎地裁は、戦時中に長崎市の三菱重工長崎造船所に徴用されて被爆した原告3人全員について市に手帳交付を命じる判決を言い渡した。

 毎日新聞は2019年1月8日、表題について次のように報じた。


(1)戦時中に長崎市の三菱重工長崎造船所に徴用されて被爆したとして、90代の韓国人男性3人が、長崎市と国に被爆者健康手帳交付申請の却下処分取り消しなどを求めた訴訟で、長崎地裁(武田瑞佳裁判長)は8日、原告3人全員について市に手帳交付を命じる判決を言い渡した。原告の支援団体によると、朝鮮半島出身の元徴用工への被爆者手帳交付を命じた判決は初めてとみられる。
(2)訴状などによると、3人は1943、44年から同造船所に徴用され、米軍が長崎に原爆を投下した45年8月9日、造船所内や収容された長崎市内の寮で被爆したとして2015、16年に手帳交付を申請。しかし、既に原爆投下から70年が経過する中、3人は国側が求める被爆の証拠や証人を見つけることができず、市は「被爆したことを確認できる資料がない」などとしていずれの申請も却下した。
(3)原告は16年、却下処分は違法として取り消しを求めて提訴。昨年6月にあった証人尋問で「突然、空が真っ赤になり、ドカンという音がしてガラスが割れた」と証言するなど、被爆時の様子を語っていた。
(4)朝鮮半島出身の元徴用工を巡っては、同造船所が終戦時に帰国した約3400人分の未払い退職金などを48年に長崎地方法務局に供託した際に名簿が作成されたが、同法務局が70年に国の通達に反して廃棄した疑いが強いことが判明。名簿が残っていれば、手帳申請者が被爆した事実を証明するための有力な証拠になるため、原告らは「国が自ら名簿を廃棄しておきながら、証拠がないといって手帳申請を却下したのはおかしい」と訴えていた。
【樋口岳大、今野悠貴】




by asyagi-df-2014 | 2019-01-08 20:01 | 侵略戦争・戦後処理 | Comments(0)

琉球新報は、「韓国元徴用工判決 加害の歴史に向き合って」、と社説で説く。

 最近の韓国大法院の判決に対する日本のマスコミのあり方は、あまりにも稚拙で愚かである。
 こした中で、琉球新報(以下、「新報」)は2018年11月30日、「韓国元徴用工判決 加害の歴史に向き合って」、と社説で論評した。
「新報」は、次のように押さえている。


(1)太平洋戦争中に三菱重工業に動員された韓国人元徴用工5人の遺族と元朝鮮女子勤労挺身(ていしん)隊員5人が損害賠償を求めた2件の裁判で、韓国最高裁は同社の上告を棄却した。10月の新日鉄住金に続き日本企業の敗訴が確定した。
(2)日本政府は強く反発している。河野太郎外相は韓国政府に適切な措置を求め「国際裁判や対抗措置も含め、あらゆる選択肢を視野に入れ、毅然(きぜん)とした対応を講ずる考えだ」と述べた。これに対し韓国政府も「日本政府が韓国の司法の判決に過度に反応していることは非常に遺憾で、自制を求める」と厳しくコメントした。両国関係は険悪になっている。
(3)10月の判決の際も日本政府は駐日韓国大使を呼んで抗議した。政府として他国の裁判所の判決を批判することはあり得るだろう。しかし、三権分立を取っている国の政府に対し、司法判断を理由として抗議することには違和感を覚える。「日本だったら最高裁も思い通りになる」とでも言いたいのだろうか。


 また、「新報」は、このことの問題点を次のように指摘する。


(1)日本政府の批判は1965年の日韓請求権協定を根拠としている。確かに協定には「両締約国およびその国民(法人を含む)の請求権に関する問題が(中略)完全かつ最終的に解決されたことになることを確認する」とある。だが、韓国最高裁は、植民地支配が原因で生じた韓国人の賠償請求権は消滅しておらず、日本企業に支払い責任があると判示した。
(2)日本でも、請求権は消滅していないと政府自身が認めた事実がある。1991年8月27日の参院予算委員会で柳井俊二外務省条約局長は「日韓両国が国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。従いまして、いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません」と答弁している。今回の判決は、個人の請求権を韓国の裁判所が国内法的に認めたことにほかならない。
(3)元徴用工の訴訟は2000年に提訴され一、二審で敗訴。12年に最高裁が個人の請求権は請求権協定では消滅していないとして高裁に審理を差し戻した。この時点で今回の判決は予想できたはずである。和解を含めた解決が模索されるべきではなかったか。


 さらに、「新報」の指摘は続く。


(1)1965年の日韓協定を結んだのは軍事独裁の朴正煕政権であり、韓国国内には協定に強い批判があった。
(2)根本には、この間、日本が加害の歴史、責任に十分に向き合ってこなかったことがある。政府は判決を冷静に受け止め、被告企業とともに被害者が受けた痛みについて真剣に考えるべきである。
(3)安倍晋三首相は「徴用工」を「労働者」と言い換えた。通常の雇用関係にあったように見せる印象操作にほかならず、謙虚な態度とは程遠い。政府は植民地支配の歴史に真摯(しんし)に向き合うべきである。


 「新報」の「しかし、三権分立を取っている国の政府に対し、司法判断を理由として抗議することには違和感を覚える。『日本だったら最高裁も思い通りになる』とでも言いたいのだろうか。」との論点は正しい。また、「政府は植民地支配の歴史に真摯に向き合うべきである。」、との主張こそ根本的な問題である。




by asyagi-df-2014 | 2018-12-05 07:17 | 侵略戦争・戦後処理 | Comments(0)

三菱重工業の軍需工場で働かされた韓国人の元徴用工や元女子勤労挺身隊員らの訴訟の上告審で、韓国大法院は三菱重工業上告を棄却。

 朝日新聞は2018年11月29日、表題について次のように報じた。


(1)第2次世界大戦中に、広島と名古屋の三菱重工業の軍需工場で働かされた韓国人の元徴用工や元女子勤労挺身(ていしん)隊員らが、同社に損害賠償を求めた2件の訴訟の上告審判決が29日、韓国大法院(最高裁)であった。大法院はいずれも同社の上告を棄却し、原告10人(うち5人が死亡)にそれぞれ8千万~1億5千万ウォン(約800万~1500万円)を支払うよう命じた。
(2)大法院は10月30日、元徴用工の賠償請求訴訟で、新日鉄住金に賠償を命じる判決を確定させている。今回の2件の判決とあわせて計3件の判決が確定した。
(3)日本政府は、請求権問題は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的」に解決したとの立場から、判決を「日韓関係の法的基盤を覆す」として批判。これに韓国世論が反発する悪循環に陥っている。賠償命令確定の流れができたことで、原告側は被告企業の財産差し押さえに動く可能性もあり、韓国に進出したり取引したりする日本企業には不安感も広がっている。
(4)原告の弁護団は29日、「三菱重工業と和解による解決を模索するが、状況によっては強制執行も視野に入れる」との方針を明らかにした。今回の訴訟のうち1件の原告は、戦争末期の44年、国民徴用令に基づいて三菱重工業の広島機械製作所や広島造船所に動員され、被爆した元徴用工5人(いずれも故人)で、遺族23人が訴訟を継承。もう1件は、同年に「女子勤労挺身隊員」として10代前半で動員され、名古屋市の同社の航空機製作工場などで働かされた女性4人と親族1人。
(5)今回の判決も、新日鉄住金への判決と同様に、一連の動員は「日本政府の朝鮮半島への不法な植民地支配や、侵略戦争の遂行と結びついた日本企業の反人道的な不法行為だった」と認定。元徴用工や元女子勤労挺身隊員の日本企業への慰謝料請求権は請求権協定に含まれないとして、原告らが三菱重工業に賠償を求める権利は消滅していないと判断した。
(6)判決後、14歳の時に女子勤労挺身隊員として動員された金性珠(キムソンジュ)さん(89)は記者会見で「日本は私たちに謝罪と賠償をしてほしい」と語った。
(7)韓国の裁判所では、元徴用工らが原告になった訴訟が他に12件争われており、被告になった日本企業は70社以上にのぼる。今回の判決で韓国の司法判断はさらに明確になり、同様の判決が相次ぎそうだ。
(8)司法判断に対して韓国政府は行政の立場として、判決を「尊重する」との姿勢を取る一方、日韓関係を維持する必要から、知日派の李洛淵(イナギョン)首相を中心に年内にも対応策をつくる方針だ。韓国外交省は29日、「政府は強制徴用被害者に関する司法判断を尊重し、被害者の苦痛と傷を癒やすため努力する。これと別に韓日関係の未来志向的な発展のためにも続けて努力する」との立場を発表した。
(9)日韓は慰安婦合意に基づいて設立された財団の解散をめぐってもあつれきを強めており、関係をどう維持していくのかが今後の焦点となる。
(ソウル=武田肇)


 また、朝日新聞は同日、関連記事を次のように伝えた。


(1)三菱重工業への損害賠償訴訟で勝訴した元女子勤労挺身(ていしん)隊員の原告、金性珠(キムソンジュ)さん(89)と遺族3人ら関係者は29日午前、ソウル市瑞草区の大法院(最高裁)で判決を聞いた。金さんらは判決後、記者団に複雑な心情を吐露した。金さんは14歳の時、担任教師から「日本に行けば進学できるし、金も稼げる」と言われ、勤労挺身隊に志願した。1944年5月末ごろから、名古屋で飛行機の翼を製作する作業に携わったという。作業の事故で左手の人さし指の先を失ったという。
(2)金さんは勝訴について、「日本は教育をしてくれると言ったのに、そんな教育はなかった」と語った。判決前には、「日本政府からは、自分の国で抗議しろと言われた。普段から恨(ハン)を抱えて生きてきた」と語り、日本政府が謝罪するべきだとの考えを示した。
(3)広島で働いた徴用工の遺族、朴在勲(パクジェフン)さんは勝訴判決を受け、記者団に「複雑な気持ちだ。(父親が)生きてこの結果を聞けたらよかったのに」と語った。
(4)原告団は、元徴用工の遺影や「三菱重工業は強制動員被害者たちに謝罪し、補償せよ」と書かれた横断幕を掲げた。原告団の李尚甲(イサンガプ)弁護士は判決後の記者会見で「日本の政府・企業は判決を受け入れない立場だ。韓国政府、外交省が問題を解決すべきだ」と訴えた。提訴から長い時間が経過し、多くの原告が死亡したとし、韓国大法院が、判決とは別に自らの考えを表明すべきだとも主張した。また、李弁護士は「合意や和解のやり方で解決できる道を模索する提案をしたい。状況に応じて(企業財産を差し押さえる)強制執行もできるし、第三国で(強制執行を)やれば、状況も変わりうる」と語った。
(5)李弁護士は会見後、朝日新聞に対して、今後、同様の訴訟が続く可能性について「現在、数十件の問い合わせが来ている。個別に対応するか、包括的な解決策を考えるべきか検討している」と述べた。
(6)20年以上、徴用工裁判を支援してきた崔鳳泰(チェボンテ)弁護士も29日、朝日新聞に「今回の裁判は、小さな子どもまで強制労役させた問題に対する常識の勝利だ」と語った。記者会見では「集団的和解が重要なので、(差し押さえを急がずに)待っている状態だ」と述べた。
(7)一方、長嶺安政駐韓大使は29日午前、ソウルで行われた日韓財界人の集まりであいさつし、「最近、未来志向の日韓関係に逆行する動きがあり、関係が困難になっている」と語り、徴用工裁判をめぐる動きなどに懸念を示した。この集まりに参加した中西宏明・経団連会長は記者団に対し、徴用工判決の影響について「日本側から見て驚く内容なので、何とか悪影響が出ないようにお願いするしかない」と語った。日韓の首脳会談や相互訪問が低調になることへの懸念を示し、「経済はメリットがあれば話が進む雰囲気はまだあるが、政治や文化交流が停滞すると、長い目で見て経済にも良くない」と語った。双方の政治指導者に対し、「不安定な国際環境で、日韓は重要な間柄。未来志向に逆行しない形で管理してほしい」とも述べた。
(ソウル=牧野愛博)
(8)〈女子勤労挺身(ていしん)隊〉:戦時下の日本や植民地で、主に若い未婚女性を労働力として軍需工場などに動員するためにつくられた組織。「女子挺身隊」とも呼ぶ。目的は労働力の利用であり、将兵の性の相手をさせられた慰安婦とは別。外務省の「終戦史録」によると、日本内地では終戦時に約47万人が挺身隊として動員されていた。



by asyagi-df-2014 | 2018-11-29 20:22 | 侵略戦争・戦後処理 | Comments(0)

韓国大法院判決を弁護士有志声明で考える。

 ハンギョレは2018年10月31日、「日帝強制徴用被害者に日本企業が賠償しなければならないという最高裁(大法院)の最終判決が下された。最高裁の全体合議体(裁判長、キム・ミョンス最高裁長官)は30日、イ・チュンシクさんら強制徴用の被害者が日本企業の新日鉄住金(旧新日本製鉄)を相手取って訴えた損害賠償請求訴訟の再上告審で、新日鉄住金の再上告を棄却し、原告に1億ウォン(約1千万円)ずつ賠償せよとの原審判決を確定した。被害者が訴訟を提起して13年8カ月めであり、再上告審に上がってからは5年余りがたってのことだ。」、と伝えた。
 このことについては、朝日新聞の「韓国併合の合法性を含め、日韓は国交正常化の際、詰め切れなかった問題がいくつかある。だが、互いに知恵をしぼって歩み寄り、今や年間1千万人近くが行き来する関係になった。判決を受けて韓国政府は有識者の意見も聞き、総合的に対応を検討すると表明したが、今後に暗雲をもたらすような判断は何としても避けるべきだ。」といった評価に類似したものが、日本では多く見られる。

一方、この判決に向けて、「元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明」(以下、「声明」)が弁護士有志から出された。
 この「声明」を基に、日本の多くのマスコミに見られる誤謬を克服するために、韓国大法院の最終判決を考える。
まず、「声明」は、判決内容を次のように捉える。


(1)韓国大法院(最高裁判所)は、本年10月30日、元徴用工4人が新日鉄住金株式会社(以下「新日鉄住金」という。)を相手に損害賠償を求めた裁判で、元徴用工の請求を容認した差し戻し審に対する新日鉄住金の上告を棄却した。これにより、元徴用工の一人あたり1億ウォン(約1千万円)を支払うよう命じた判決が確定した。
(2)本判決は、元徴用工の損害賠償請求権は、日本政府の朝鮮半島に対する不法な植民地支配及び侵略戦争の遂行と直結した日本企業の反人道的な不法行為を前提とする強制動員被害者の日本企業に対する慰謝料請求権であるとした。その上で、このような請求権は、1965年に締結された「日本国と大韓民国との間の財産及び請求権に関する問題の解決と経済協力に関する協定」(以下「日韓請求権協定」という。)の対象外であるとして、韓国政府の外交保護権と元徴用工個人の損害賠償請求権のいずれも消滅していないと判示した。


 次に、「声明」は、「本判決に対し、安倍首相は、本年10月30日の衆議院本会議において、元徴用工の個人賠償請求権は日韓請求権協定により『完全かつ最終的に解決している』とした上で、本判決は『国際法に照らしてあり得ない判断』であり、『毅然(きぜん)として対応していく』と答弁した。」、といった日本側の対応について、「しかし、安倍首相の答弁は、下記のとおり、日韓請求権協定と国際法への正確な理解を欠いたものであるし、『毅然として対応』するだけでは元徴用工問題の真の解決を実現することはできない。」、と指摘する。
この上で「声明」は、「私たちは、次のとおり、元徴用工問題の本質と日韓請求権協定の正確な理解を明らかにし、元徴用工問題の真の解決に向けた道筋を提案するものである。」、と次の四点を指摘する。


Ⅰ.元徴用工問題の本質は人権問題である
Ⅱ.日韓請求権協定により個人請求権は消滅していない
Ⅲ.被害者個人の救済を重視する国際人権法の進展に沿った判決である
Ⅳ.日韓両国が相互に非難しあうのではなく、本判決を機に根本的な解決を行うべきである

 「声明」は、この考えの基に、その根拠をそれぞれ示す。


Ⅰ.元徴用工問題の本質は人権問題である

(1)本訴訟の原告である元徴用工は、賃金が支払われずに、感電死する危険があるなかで溶鉱炉にコークスを投入するなどの過酷で危険な労働を強いられていた。提供される食事もわずかで粗末なものであり、外出も許されず、逃亡を企てたとして体罰を加えられるなど極めて劣悪な環境に置かれていた。これは強制労働(ILO第29号条約)や奴隷制(1926年奴隷条約参照)に当たるものであり、重大な人権侵害であった。
(2)本件は、重大な人権侵害を受けた被害者が救済を求めて提訴した事案であり、社会的にも解決が求められている問題である。したがって、この問題の真の解決のためには、被害者が納得し、社会的にも容認される解決内容であることが必要である。被害者や社会が受け入れることができない国家間合意は、いかなるものであれ真の解決とはなり得ない。


Ⅱ.日韓請求権協定により個人請求権は消滅していない

(1)元徴用工に過酷で危険な労働を強い、劣悪な環境に置いたのは新日鉄住金(旧日本製鐵)であるから、新日鉄住金には賠償責任が発生する。
(2)また、本件は、1910年の日韓併合後朝鮮半島を日本の植民地とし、その下で戦時体制下における労働力確保のため、1942年に日本政府が制定した「朝鮮人内地移入斡旋要綱」による官斡旋方式による斡旋や、1944年に日本政府が植民地朝鮮に全面的に発動した「国民徴用令」による徴用が実施される中で起きたものであるから、日本国の損害責任も問題となり得る。
(3)本件では新日鉄住金のみを相手としていることから、元徴用工個人の新日鉄住金に対する賠償請求権が、日韓請求権協定2条1項の「完全かつ最終的に解決された」という条項により消滅したのかが重要な争点となった。この問題について、韓国大法院は、元徴用工の慰謝料請求権は日韓請求権協定の対象に含まれていないとして、その権利に関しては、韓国政府の外交保護権も被害者個人の賠償請求権もいずれも消滅していないと判示した。
(4)他方、日本の最高裁判所は、日本と中国との間の賠償関係等について、外交保護権は放棄されたが、被害者個人の賠償請求権については、「請求権を実体的に消滅させることまでを意味するものではなく、当該請求権に基づいて訴求する権能を失わせるにとどまる」と判示している(最高裁判所2007年4月27日判決)。この理は日韓請求権協定の「完全かつ最終的に解決」という文言についてもあてはまるとするのが最高裁判所及び日本政府の解釈である。この解釈によれば、実体的な個人の賠償請求権は消滅していないのであるから、新日鉄住金が任意かつ自発的に賠償金を支払うことは法的に可能であり、その際に、日韓請求権協定は法的障害にならない。
(5)安倍首相は、個人賠償請求権について日韓請求権協定により「完全かつ最終的に解決した」と述べたが、それが被害者個人の賠償請求権も完全に消滅したという意味であれば、日本の最高裁判所の判決への理解を欠いた説明であり誤っている。他方、日本の最高裁判所が示した内容と同じであるならば、被害者個人の賠償請求権は実体的には消滅しておらず、その扱いは解決されていないのであるから、全ての請求権が消滅したかのように「完全かつ最終的に解決」とのみ説明するのは、ミスリーディング(誤導的)である。
(6)そもそも日本政府は、従来から日韓請求権協定により放棄されたのは外交保護権であり、個人の賠償請求権は消滅していないとの見解を表明しているが、安倍首相の上記答弁は、日本政府自らの見解とも整合するのか疑問であると言わざるを得ない。


Ⅲ.被害者個人の救済を重視する国際人権法の進展に沿った判決である

(1)本件のような重大な人権侵害に起因する被害者個人の損害賠償請求権について、国家間の合意により被害者の同意なく一方的に消滅させることはできないという考え方を示した例は国際的に他にもある(例えば、イタリアのチビテッラ村におけるナチス・ドイツの住民虐殺事件に関するイタリア最高裁判所〈破棄院〉など)。
(2)このように、重大な人権侵害に起因する個人の損害賠償請求権を国家が一方的に消滅させることはできないという考え方は、国際的には特異なものではなく、個人の人権侵害に対する効果的な救済を図ろうとしている国際人権法の進展に沿うものといえるのであり(世界人権宣言8条参照)、「国際法に照らしてあり得ない判断」であるということもできない。


Ⅳ.日韓両国が相互に非難しあうのではなく、本判決を機に根本的な解決を行うべきである

(1)本件の問題の本質が人権侵害である以上、なによりも被害者個人の人権が救済されなければならない。それはすなわち、本件においては、新日鉄住金が本件判決を受け入れるとともに、自発的に人権侵害の事実と責任を認め、その証として謝罪と賠償を含めて被害者及び社会が受け入れることができるような行動をとることである。
(2)例えば中国人強制連行事件である花岡事件、西松事件、三菱マテリアル事件など、訴訟を契機に、日本企業が事実と責任を認めて謝罪し、その証として企業が資金を拠出して基金を設立し、被害者全体の救済を図ることで問題を解決した例がある。そこでは、被害者個人への金員の支払いのみならず、受難の碑ないしは慰霊碑を建立し、毎年中国人被害者等を招いて慰霊祭等を催すなどの取り組みを行ってきた。
(3)新日鉄住金もまた、元徴用工の被害者全体の解決に向けて踏み出すべきである。それは、企業としても国際的信頼を勝ち得て、長期的に企業価値を高めることにもつながる。韓国において訴訟の被告とされている日本企業においても、本判決を機に、真の解決に向けた取り組みを始めるべきであり、経済界全体としてもその取り組みを支援することが期待される。


 最後に、「声明」は、次のように主張する。


(1)日本政府は、新日鉄住金をはじめとする企業の任意かつ自発的な解決に向けての取り組みに対して、日韓請求権協定を持ち出してそれを抑制するのではなく、むしろ自らの責任をも自覚したうえで、真の解決に向けた取り組みを支援すべきである。
(2)私たちは、新日鉄住金及び日韓両政府に対して、改めて本件問題の本質が人権問題であることを確認し、根本的な解決に向けて取り組むよう求めるとともに、解決のために最大限の努力を尽くす私たち自身の決意を表明する。


 この「声明」から、次のことを受け取る。


Ⅰ.本件は、重大な人権侵害を受けた被害者が救済を求めて提訴した事案であり、社会的にも解決が求められている問題である。したがって、この問題の真の解決のためには、被害者が納得し、社会的にも容認される解決内容であることが必要である。被害者や社会が受け入れることができない国家間合意は、いかなるものであれ真の解決とはなり得ない。
Ⅱ.本件は、1910年の日韓併合後朝鮮半島を日本の植民地とし、その下で戦時体制下における労働力確保のため、1942年に日本政府が制定した「朝鮮人内地移入斡旋要綱」による官斡旋方式による斡旋や、1944年に日本政府が植民地朝鮮に全面的に発動した「国民徴用令」による徴用が実施される中で起きたものであるから、日本国の損害責任も問題となり得る。
Ⅲ.日本の最高裁判所は、日本と中国との間の賠償関係等について、外交保護権は放棄されたが、被害者個人の賠償請求権については、「請求権を実体的に消滅させることまでを意味するものではなく、当該請求権に基づいて訴求する権能を失わせるにとどまる」と判示している(最高裁判所2007年4月27日判決)。この理は日韓請求権協定の「完全かつ最終的に解決」という文言についてもあてはまるとするのが最高裁判所及び日本政府の解釈である。この解釈によれば、実体的な個人の賠償請求権は消滅していないのであるから、新日鉄住金が任意かつ自発的に賠償金を支払うことは法的に可能であり、その際に、日韓請求権協定は法的障害にならない。
Ⅳ.重大な人権侵害に起因する個人の損害賠償請求権を国家が一方的に消滅させることはできないという考え方は、国際的には特異なものではなく、個人の人権侵害に対する効果的な救済を図ろうとしている国際人権法の進展に沿うものといえるのであり(世界人権宣言8条参照)、「国際法に照らしてあり得ない判断」であるということもできない。
Ⅴ.本件の問題の本質が人権侵害である以上、なによりも被害者個人の人権が救済されなければならない。それはすなわち、本件においては、新日鉄住金が本件判決を受け入れるとともに、自発的に人権侵害の事実と責任を認め、その証として謝罪と賠償を含めて被害者及び社会が受け入れることができるような行動をとることである。
6.あわせて、日本政府は、新日鉄住金をはじめとする企業の任意かつ自発的な解決に向けての取り組みに対して、日韓請求権協定を持ち出してそれを抑制するのではなく、むしろ自らの責任をも自覚したうえで、真の解決に向けた取り組みを支援すべきである。



by asyagi-df-2014 | 2018-11-16 07:08 | 侵略戦争・戦後処理 | Comments(0)

韓国大法院(最高裁)が出した「強制徴用判決」を、ハンギョレと朝日新聞で考える。

 ハンギョレは、「あまりに遅かった13年目の強制徴用判決」、と論じる。
 一方、朝日新聞は、「徴用工裁判 蓄積を無にせぬ対応を」、と。
韓国大法院(最高裁)が出した判決を、この二社の社説で考える。
まずは、ハンギョレの主張を見てみる。


Ⅰ.判決内容


(1)日帝強制徴用被害者に日本企業が賠償しなければならないという最高裁(大法院)の最終判決が下された。最高裁の全体合議体(裁判長、キム・ミョンス最高裁長官)は30日、イ・チュンシクさんら強制徴用の被害者が日本企業の新日鉄住金(旧新日本製鉄)を相手取って訴えた損害賠償請求訴訟の再上告審で、新日鉄住金の再上告を棄却し、原告に1億ウォン(約1千万円)ずつ賠償せよとの原審判決を確定した。被害者が訴訟を提起して13年8カ月めであり、再上告審に上がってからは5年余りがたってのことだ。
(2)今回の判決は司法壟断による長い間の訴訟遅滞を解消し、日帝強制占領期(日本の植民地時代)の被害者を遅まきながら救済したという点で意味が大きい。韓日請求権協定の解釈を巡る韓日間の外交的紛争の可能性も高いだけに、政府は適切な対処をしなければならない。
(3)最高裁の合議体はこの日、原告の損害賠償請求権が1965年に韓日政府が結んだ請求権協定の適用対象に含まれないと判断した。
①「日本政府の不法な植民支配および侵略戦争の実行に直結した日本企業の反人道的不法行為」によってもたらされた慰謝料請求権という理由からだ。
②すなわち、請求権協定文や付属書のどこにも日本の植民支配の不法性に言及する内容がなく、韓日間交渉の過程でも日本政府が植民支配の不法性を認めないまま強制動員被害の法的賠償を基本的に否認した以上、不法行為に対する被害は韓日協定対象ではないという趣旨だ。                                    ③交渉の過程で12億2千万ドルを要求したのに3億ドル(無償分)しか受けられず、強制動員の慰謝料まで含まれたと見るのは難しいという判断も付け加えた。         日帝の植民支配と強制動員自体を不法に見る韓国の憲法の価値体系に照らしてみれば当然の判決だ。

Ⅱ.判決が示した課題


(1)その間に他の原告は亡くなり、94歳のイさんしか生存していない。あまりに遅かった。しかも徴用被害者の強制労働の代価を裁判官の海外派遣のポストと交換して「裁判取引」の対象としたせいで遅れたというからこの上なく恥ずかしい話だ。司法壟断の当事者らが、故人の霊の前に土下座して謝罪しても足りないだろう。
(2)「朴槿恵(パク・クネ)大統領府」が韓日関係に及ぼす影響を云々して、2012年当時の最高裁の裁判結果を覆そうとし、外交部・法務部などの政府の省庁はもちろん、最高裁の首脳部までこれに付和雷同して確定判決を引き延ばした事実は、すでに検察の捜査で天下にさらされている。この事件が司法壟断の象徴的事例になっただけに、ヤン・スンテ前最高裁長官らが主導した取引の全貌が明らかになってこそ、今回の判決の意味も生きるだろう。
(3)「朴槿恵(パク・クネ)大統領府」が韓日関係に及ぼす影響を云々して、2012年当時の最高裁の裁判結果を覆そうとし、外交部・法務部などの政府の省庁はもちろん、最高裁の首脳部までこれに付和雷同して確定判決を引き延ばした事実は、すでに検察の捜査で天下にさらされている。この事件が司法壟断の象徴的事例になっただけに、ヤン・スンテ前最高裁長官らが主導した取引の全貌が明らかになってこそ、今回の判決の意味も生きるだろう。


Ⅲ.主張


(1)2015年の韓日慰安婦合意が事実上廃棄の手続きを進んでいる状況で、今回の判決で当分は韓日関係が悪化する可能性がある。実際、日本の河野太郎外相は「韓日友好関係の法的基盤を根底からひっくり返すものだ。決して受け入れることはできない」と反発した。政府の賢明な対処が必要な局面だ。イ・ナギョン首相は「司法府の判断を尊重して政府の対応策を講じていく」と表明し、「韓日関係を未来指向的に発展させていくことを希望する」として慎重な態度を見せている。
(2)一部では「ヤン・スンテ最高裁」の裁判遅延の存在を際立たせ、国際司法裁判所提訴などの日本の強硬対応の可能性を強調する見解がある。しかし、当事国である韓国の同意なしには法廷自体が成立しない。3権分立の民主国家で司法府の独立的な判断が尊重されることは常識だ。日本もまた民主政権なら自重するのが当然だ。


 この区分にそって、朝日新聞の主張をまとめる。


Ⅰ.判決内容


(1)植民地支配の過去を抱えながらも、日本と韓国は経済協力を含め多くの友好を育んできた。だが、そんな関係の根幹を揺るがしかねない判決を、韓国大法院(最高裁)が出した。
(2)戦時中、日本に動員された元徴用工4人が新日鉄住金に損害賠償を求めた訴訟で、1人あたり約1千万円を支払うよう命じた控訴審判決が確定した。


Ⅱ.判決が示した課題


(1)同様の訴訟はほかにもあり、日本企業約80社を相手取り、韓国各地の裁判所で進行中だ。日本政府や企業側は、1965年の国交正常化に伴う請求権協定で元徴用工への補償問題は解決済みとし、日本の司法判断もその考えを踏襲してきた。原告側は、賠償に応じなければ資産の差し押さえを検討するという。一方の日本政府は、協定に基づいて韓国政府が補償などの手当てをしない場合、国際司法裁判所への提訴を含む対抗策も辞さない構えだ。
(2)そんなことになれば政府間の関係悪化にとどまらず、今日まで築き上げてきた隣国関係が台無しになりかねない。韓国政府は、事態の悪化を食い止めるよう適切な行動をとるべきだ。
(3)元徴用工らへの補償問題は長年の懸案であり、これまでも韓国政府が一定の見解と対応をとってきた。盧武鉉(ノムヒョン)政権は05年、請求権協定当時の経済協力金に、補償が含まれるとの見解をまとめた。文在寅(ムンジェイン)・現大統領はこの時、大統領府高官として深くかかわった当事者だ。その見解を受けて韓国政府は国内法を整え、元徴用工らに補償をした。国内の事情によって国際協定をめぐる見解を変転させれば、国の整合性が問われ、信頼性も傷つきかねない。


Ⅲ.主張


(1)韓国併合の合法性を含め、日韓は国交正常化の際、詰め切れなかった問題がいくつかある。だが、互いに知恵をしぼって歩み寄り、今や年間1千万人近くが行き来する関係になった。判決を受けて韓国政府は有識者の意見も聞き、総合的に対応を検討すると表明したが、今後に暗雲をもたらすような判断は何としても避けるべきだ。
(2)日本政府は小泉純一郎政権のとき、元徴用工らに「耐え難い苦しみと悲しみを与えた」と認め、その後も引き継がれた。
(3)政府が協定をめぐる見解を維持するのは当然としても、多くの人々に暴力的な動員や過酷な労働を強いた史実を認めることに及び腰であってはならない。負の歴史に由来する試練をどう乗り切り、未来志向の流れをつくりだすか。政治の力量が問われている。


 この判決に関して、河野太郎外務大臣の「韓日友好関係の法的基盤を根底からひっくり返すものだ。決して受け入れることはできない。」等の発言が日本中を覆い尽くしている。 しかし、やはり違和感を感じる。
 その違和感の正体は、ハンギョレの「3権分立の民主国家で司法府の独立的な判断が尊重されることは常識だ。日本もまた民主政権なら自重するのが当然だ。」との主張が示すものである。
 やはり、司法が独立している以上、こうした「請求権協定文や付属書のどこにも日本の植民支配の不法性に言及する内容がなく、韓日間交渉の過程でも日本政府が植民支配の不法性を認めないまま強制動員被害の法的賠償を基本的に否認した以上、不法行為に対する被害は韓日協定対象ではない」、との判断を、司法が政治の桎梏から独立して行うことはあり得ることではないか。      
 例えばそれは、朝日新聞の「韓国併合の合法性を含め、日韓は国交正常化の際、詰め切れなかった問題がいくつかある。だが、互いに知恵をしぼって歩み寄り、今や年間1千万人近くが行き来する関係になった。」「負の歴史に由来する試練をどう乗り切り、未来志向の流れをつくりだすか。政治の力量が問われている。」と、ハンギョレの「日帝の植民支配と強制動員自体を不法に見る韓国の憲法の価値体系に照らしてみれば当然の判決だ。」、との受け止め方の「差異」から生じる。
 逆に、この「差異」を問わざるを得ない状況を生み出してきた日本政府の政治の力量が、背景に問題として横たわっているのではないか。
 そう意味において、朝日新聞の「負の歴史に由来する試練をどう乗り切り、未来志向の流れをつくりだすか。政治の力量が問われている。」、との指摘を根本から真摯に考える必要がある。

 例えば、日本軍慰安婦問題の日韓合意(2015年12月28日)の時、次のように押さえをした。


①日本側で出版されている大日本帝国軍従軍慰安婦制度を史実否定や歴史修正や韓国ヘイトや女性蔑視の立場から扱っている歴史修正出版物について、「それらは日本政府の立場とは相いれず、日本政府はそれらの出版物を史実として認めない」と公式に表明すること。
②日本の政治家、政府高官、政府関係者から、大日本帝国軍従軍慰安婦制度について、史実否定や歴史修正や韓国ヘイトや女性蔑視の立場から蒸し返す発言が出たら、「それは日本政府の立場とは相いれない」と首相自らコメントし、そのような発言をした者の政府内での職を解くこと。
③名誉と尊厳の回復、心の傷を癒やすための事業には、被害者が何よりも求めている日本政府保有資料の全面公開、国内外でのさらなる資料調査、国内外の被害者および関係者へのヒヤリングを含む真相究明、および義務教育課程の教科書への記述を含む学校及び一般での教育を含めること。
④アジア・太平洋各地の被害者に対しても、国家の責任を認めて同様の措置をとること。


 こうしたことが、この徴用工問題でも、政治主導でどれくらい行われてきているのかという疑問がある。
 それは、朝日新聞の「徴用工裁判 蓄積を無にせぬ対応を」との主張の「蓄積」の質を問うことでもあるはずだ。




by asyagi-df-2014 | 2018-11-09 07:05 | 侵略戦争・戦後処理 | Comments(0)

韓国大法院(最高裁)は30日、個人の請求権を認めた控訴審判決を支持し、新日鉄住金同社の上告を退けた。

 朝日新聞は2018年10月30日、表題について次のように報じた。


(1)朝鮮半島が日本統治下にあった戦時中に日本本土の工場に動員された韓国人の元徴用工4人が、新日鉄住金に損害賠償を求めた訴訟の上告審で、韓国大法院(最高裁)は30日、個人の請求権を認めた控訴審判決を支持し、同社の上告を退けた。これにより、同社に1人あたり1億ウォン(約1千万円)を支払うよう命じた判決が確定した。
(2)韓国の裁判所で、日本企業に元徴用工への賠償を命じる判決が確定したのは初めて。
(3)日本政府は、元徴用工の補償問題は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決済み」との立場を取る。今後の両国の対応次第では、外交や経済関係に打撃を与える可能性があり、日韓は新たな火種を抱えることになった。
(4)原告は同社が賠償に応じない場合、資産差し押さえなどの強制執行手続きができる。弁護団は、同社の資産は韓国にないとして、第三国での手続きを視野に入れる。同様の訴訟は、新日鉄住金に加えて不二越(富山市)など約70社を相手にした計15件があり、今回の最高裁の決定は他の訴訟の判決にも影響しそうだ。また、同様の訴訟が新たに相次いで起こされる可能性も高い。              
(ソウル=武田肇)



by asyagi-df-2014 | 2018-10-30 19:56 | 侵略戦争・戦後処理 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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