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琉球新報は、「韓国元徴用工判決 加害の歴史に向き合って」、と社説で説く。

 最近の韓国大法院の判決に対する日本のマスコミのあり方は、あまりにも稚拙で愚かである。
 こした中で、琉球新報(以下、「新報」)は2018年11月30日、「韓国元徴用工判決 加害の歴史に向き合って」、と社説で論評した。
「新報」は、次のように押さえている。


(1)太平洋戦争中に三菱重工業に動員された韓国人元徴用工5人の遺族と元朝鮮女子勤労挺身(ていしん)隊員5人が損害賠償を求めた2件の裁判で、韓国最高裁は同社の上告を棄却した。10月の新日鉄住金に続き日本企業の敗訴が確定した。
(2)日本政府は強く反発している。河野太郎外相は韓国政府に適切な措置を求め「国際裁判や対抗措置も含め、あらゆる選択肢を視野に入れ、毅然(きぜん)とした対応を講ずる考えだ」と述べた。これに対し韓国政府も「日本政府が韓国の司法の判決に過度に反応していることは非常に遺憾で、自制を求める」と厳しくコメントした。両国関係は険悪になっている。
(3)10月の判決の際も日本政府は駐日韓国大使を呼んで抗議した。政府として他国の裁判所の判決を批判することはあり得るだろう。しかし、三権分立を取っている国の政府に対し、司法判断を理由として抗議することには違和感を覚える。「日本だったら最高裁も思い通りになる」とでも言いたいのだろうか。


 また、「新報」は、このことの問題点を次のように指摘する。


(1)日本政府の批判は1965年の日韓請求権協定を根拠としている。確かに協定には「両締約国およびその国民(法人を含む)の請求権に関する問題が(中略)完全かつ最終的に解決されたことになることを確認する」とある。だが、韓国最高裁は、植民地支配が原因で生じた韓国人の賠償請求権は消滅しておらず、日本企業に支払い責任があると判示した。
(2)日本でも、請求権は消滅していないと政府自身が認めた事実がある。1991年8月27日の参院予算委員会で柳井俊二外務省条約局長は「日韓両国が国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。従いまして、いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません」と答弁している。今回の判決は、個人の請求権を韓国の裁判所が国内法的に認めたことにほかならない。
(3)元徴用工の訴訟は2000年に提訴され一、二審で敗訴。12年に最高裁が個人の請求権は請求権協定では消滅していないとして高裁に審理を差し戻した。この時点で今回の判決は予想できたはずである。和解を含めた解決が模索されるべきではなかったか。


 さらに、「新報」の指摘は続く。


(1)1965年の日韓協定を結んだのは軍事独裁の朴正煕政権であり、韓国国内には協定に強い批判があった。
(2)根本には、この間、日本が加害の歴史、責任に十分に向き合ってこなかったことがある。政府は判決を冷静に受け止め、被告企業とともに被害者が受けた痛みについて真剣に考えるべきである。
(3)安倍晋三首相は「徴用工」を「労働者」と言い換えた。通常の雇用関係にあったように見せる印象操作にほかならず、謙虚な態度とは程遠い。政府は植民地支配の歴史に真摯(しんし)に向き合うべきである。


 「新報」の「しかし、三権分立を取っている国の政府に対し、司法判断を理由として抗議することには違和感を覚える。『日本だったら最高裁も思い通りになる』とでも言いたいのだろうか。」との論点は正しい。また、「政府は植民地支配の歴史に真摯に向き合うべきである。」、との主張こそ根本的な問題である。




by asyagi-df-2014 | 2018-12-05 07:17 | 侵略戦争・戦後処理 | Comments(0)

三菱重工業の軍需工場で働かされた韓国人の元徴用工や元女子勤労挺身隊員らの訴訟の上告審で、韓国大法院は三菱重工業上告を棄却。

 朝日新聞は2018年11月29日、表題について次のように報じた。


(1)第2次世界大戦中に、広島と名古屋の三菱重工業の軍需工場で働かされた韓国人の元徴用工や元女子勤労挺身(ていしん)隊員らが、同社に損害賠償を求めた2件の訴訟の上告審判決が29日、韓国大法院(最高裁)であった。大法院はいずれも同社の上告を棄却し、原告10人(うち5人が死亡)にそれぞれ8千万~1億5千万ウォン(約800万~1500万円)を支払うよう命じた。
(2)大法院は10月30日、元徴用工の賠償請求訴訟で、新日鉄住金に賠償を命じる判決を確定させている。今回の2件の判決とあわせて計3件の判決が確定した。
(3)日本政府は、請求権問題は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的」に解決したとの立場から、判決を「日韓関係の法的基盤を覆す」として批判。これに韓国世論が反発する悪循環に陥っている。賠償命令確定の流れができたことで、原告側は被告企業の財産差し押さえに動く可能性もあり、韓国に進出したり取引したりする日本企業には不安感も広がっている。
(4)原告の弁護団は29日、「三菱重工業と和解による解決を模索するが、状況によっては強制執行も視野に入れる」との方針を明らかにした。今回の訴訟のうち1件の原告は、戦争末期の44年、国民徴用令に基づいて三菱重工業の広島機械製作所や広島造船所に動員され、被爆した元徴用工5人(いずれも故人)で、遺族23人が訴訟を継承。もう1件は、同年に「女子勤労挺身隊員」として10代前半で動員され、名古屋市の同社の航空機製作工場などで働かされた女性4人と親族1人。
(5)今回の判決も、新日鉄住金への判決と同様に、一連の動員は「日本政府の朝鮮半島への不法な植民地支配や、侵略戦争の遂行と結びついた日本企業の反人道的な不法行為だった」と認定。元徴用工や元女子勤労挺身隊員の日本企業への慰謝料請求権は請求権協定に含まれないとして、原告らが三菱重工業に賠償を求める権利は消滅していないと判断した。
(6)判決後、14歳の時に女子勤労挺身隊員として動員された金性珠(キムソンジュ)さん(89)は記者会見で「日本は私たちに謝罪と賠償をしてほしい」と語った。
(7)韓国の裁判所では、元徴用工らが原告になった訴訟が他に12件争われており、被告になった日本企業は70社以上にのぼる。今回の判決で韓国の司法判断はさらに明確になり、同様の判決が相次ぎそうだ。
(8)司法判断に対して韓国政府は行政の立場として、判決を「尊重する」との姿勢を取る一方、日韓関係を維持する必要から、知日派の李洛淵(イナギョン)首相を中心に年内にも対応策をつくる方針だ。韓国外交省は29日、「政府は強制徴用被害者に関する司法判断を尊重し、被害者の苦痛と傷を癒やすため努力する。これと別に韓日関係の未来志向的な発展のためにも続けて努力する」との立場を発表した。
(9)日韓は慰安婦合意に基づいて設立された財団の解散をめぐってもあつれきを強めており、関係をどう維持していくのかが今後の焦点となる。
(ソウル=武田肇)


 また、朝日新聞は同日、関連記事を次のように伝えた。


(1)三菱重工業への損害賠償訴訟で勝訴した元女子勤労挺身(ていしん)隊員の原告、金性珠(キムソンジュ)さん(89)と遺族3人ら関係者は29日午前、ソウル市瑞草区の大法院(最高裁)で判決を聞いた。金さんらは判決後、記者団に複雑な心情を吐露した。金さんは14歳の時、担任教師から「日本に行けば進学できるし、金も稼げる」と言われ、勤労挺身隊に志願した。1944年5月末ごろから、名古屋で飛行機の翼を製作する作業に携わったという。作業の事故で左手の人さし指の先を失ったという。
(2)金さんは勝訴について、「日本は教育をしてくれると言ったのに、そんな教育はなかった」と語った。判決前には、「日本政府からは、自分の国で抗議しろと言われた。普段から恨(ハン)を抱えて生きてきた」と語り、日本政府が謝罪するべきだとの考えを示した。
(3)広島で働いた徴用工の遺族、朴在勲(パクジェフン)さんは勝訴判決を受け、記者団に「複雑な気持ちだ。(父親が)生きてこの結果を聞けたらよかったのに」と語った。
(4)原告団は、元徴用工の遺影や「三菱重工業は強制動員被害者たちに謝罪し、補償せよ」と書かれた横断幕を掲げた。原告団の李尚甲(イサンガプ)弁護士は判決後の記者会見で「日本の政府・企業は判決を受け入れない立場だ。韓国政府、外交省が問題を解決すべきだ」と訴えた。提訴から長い時間が経過し、多くの原告が死亡したとし、韓国大法院が、判決とは別に自らの考えを表明すべきだとも主張した。また、李弁護士は「合意や和解のやり方で解決できる道を模索する提案をしたい。状況に応じて(企業財産を差し押さえる)強制執行もできるし、第三国で(強制執行を)やれば、状況も変わりうる」と語った。
(5)李弁護士は会見後、朝日新聞に対して、今後、同様の訴訟が続く可能性について「現在、数十件の問い合わせが来ている。個別に対応するか、包括的な解決策を考えるべきか検討している」と述べた。
(6)20年以上、徴用工裁判を支援してきた崔鳳泰(チェボンテ)弁護士も29日、朝日新聞に「今回の裁判は、小さな子どもまで強制労役させた問題に対する常識の勝利だ」と語った。記者会見では「集団的和解が重要なので、(差し押さえを急がずに)待っている状態だ」と述べた。
(7)一方、長嶺安政駐韓大使は29日午前、ソウルで行われた日韓財界人の集まりであいさつし、「最近、未来志向の日韓関係に逆行する動きがあり、関係が困難になっている」と語り、徴用工裁判をめぐる動きなどに懸念を示した。この集まりに参加した中西宏明・経団連会長は記者団に対し、徴用工判決の影響について「日本側から見て驚く内容なので、何とか悪影響が出ないようにお願いするしかない」と語った。日韓の首脳会談や相互訪問が低調になることへの懸念を示し、「経済はメリットがあれば話が進む雰囲気はまだあるが、政治や文化交流が停滞すると、長い目で見て経済にも良くない」と語った。双方の政治指導者に対し、「不安定な国際環境で、日韓は重要な間柄。未来志向に逆行しない形で管理してほしい」とも述べた。
(ソウル=牧野愛博)
(8)〈女子勤労挺身(ていしん)隊〉:戦時下の日本や植民地で、主に若い未婚女性を労働力として軍需工場などに動員するためにつくられた組織。「女子挺身隊」とも呼ぶ。目的は労働力の利用であり、将兵の性の相手をさせられた慰安婦とは別。外務省の「終戦史録」によると、日本内地では終戦時に約47万人が挺身隊として動員されていた。



by asyagi-df-2014 | 2018-11-29 20:22 | 侵略戦争・戦後処理 | Comments(0)

韓国大法院判決を弁護士有志声明で考える。

 ハンギョレは2018年10月31日、「日帝強制徴用被害者に日本企業が賠償しなければならないという最高裁(大法院)の最終判決が下された。最高裁の全体合議体(裁判長、キム・ミョンス最高裁長官)は30日、イ・チュンシクさんら強制徴用の被害者が日本企業の新日鉄住金(旧新日本製鉄)を相手取って訴えた損害賠償請求訴訟の再上告審で、新日鉄住金の再上告を棄却し、原告に1億ウォン(約1千万円)ずつ賠償せよとの原審判決を確定した。被害者が訴訟を提起して13年8カ月めであり、再上告審に上がってからは5年余りがたってのことだ。」、と伝えた。
 このことについては、朝日新聞の「韓国併合の合法性を含め、日韓は国交正常化の際、詰め切れなかった問題がいくつかある。だが、互いに知恵をしぼって歩み寄り、今や年間1千万人近くが行き来する関係になった。判決を受けて韓国政府は有識者の意見も聞き、総合的に対応を検討すると表明したが、今後に暗雲をもたらすような判断は何としても避けるべきだ。」といった評価に類似したものが、日本では多く見られる。

一方、この判決に向けて、「元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明」(以下、「声明」)が弁護士有志から出された。
 この「声明」を基に、日本の多くのマスコミに見られる誤謬を克服するために、韓国大法院の最終判決を考える。
まず、「声明」は、判決内容を次のように捉える。


(1)韓国大法院(最高裁判所)は、本年10月30日、元徴用工4人が新日鉄住金株式会社(以下「新日鉄住金」という。)を相手に損害賠償を求めた裁判で、元徴用工の請求を容認した差し戻し審に対する新日鉄住金の上告を棄却した。これにより、元徴用工の一人あたり1億ウォン(約1千万円)を支払うよう命じた判決が確定した。
(2)本判決は、元徴用工の損害賠償請求権は、日本政府の朝鮮半島に対する不法な植民地支配及び侵略戦争の遂行と直結した日本企業の反人道的な不法行為を前提とする強制動員被害者の日本企業に対する慰謝料請求権であるとした。その上で、このような請求権は、1965年に締結された「日本国と大韓民国との間の財産及び請求権に関する問題の解決と経済協力に関する協定」(以下「日韓請求権協定」という。)の対象外であるとして、韓国政府の外交保護権と元徴用工個人の損害賠償請求権のいずれも消滅していないと判示した。


 次に、「声明」は、「本判決に対し、安倍首相は、本年10月30日の衆議院本会議において、元徴用工の個人賠償請求権は日韓請求権協定により『完全かつ最終的に解決している』とした上で、本判決は『国際法に照らしてあり得ない判断』であり、『毅然(きぜん)として対応していく』と答弁した。」、といった日本側の対応について、「しかし、安倍首相の答弁は、下記のとおり、日韓請求権協定と国際法への正確な理解を欠いたものであるし、『毅然として対応』するだけでは元徴用工問題の真の解決を実現することはできない。」、と指摘する。
この上で「声明」は、「私たちは、次のとおり、元徴用工問題の本質と日韓請求権協定の正確な理解を明らかにし、元徴用工問題の真の解決に向けた道筋を提案するものである。」、と次の四点を指摘する。


Ⅰ.元徴用工問題の本質は人権問題である
Ⅱ.日韓請求権協定により個人請求権は消滅していない
Ⅲ.被害者個人の救済を重視する国際人権法の進展に沿った判決である
Ⅳ.日韓両国が相互に非難しあうのではなく、本判決を機に根本的な解決を行うべきである

 「声明」は、この考えの基に、その根拠をそれぞれ示す。


Ⅰ.元徴用工問題の本質は人権問題である

(1)本訴訟の原告である元徴用工は、賃金が支払われずに、感電死する危険があるなかで溶鉱炉にコークスを投入するなどの過酷で危険な労働を強いられていた。提供される食事もわずかで粗末なものであり、外出も許されず、逃亡を企てたとして体罰を加えられるなど極めて劣悪な環境に置かれていた。これは強制労働(ILO第29号条約)や奴隷制(1926年奴隷条約参照)に当たるものであり、重大な人権侵害であった。
(2)本件は、重大な人権侵害を受けた被害者が救済を求めて提訴した事案であり、社会的にも解決が求められている問題である。したがって、この問題の真の解決のためには、被害者が納得し、社会的にも容認される解決内容であることが必要である。被害者や社会が受け入れることができない国家間合意は、いかなるものであれ真の解決とはなり得ない。


Ⅱ.日韓請求権協定により個人請求権は消滅していない

(1)元徴用工に過酷で危険な労働を強い、劣悪な環境に置いたのは新日鉄住金(旧日本製鐵)であるから、新日鉄住金には賠償責任が発生する。
(2)また、本件は、1910年の日韓併合後朝鮮半島を日本の植民地とし、その下で戦時体制下における労働力確保のため、1942年に日本政府が制定した「朝鮮人内地移入斡旋要綱」による官斡旋方式による斡旋や、1944年に日本政府が植民地朝鮮に全面的に発動した「国民徴用令」による徴用が実施される中で起きたものであるから、日本国の損害責任も問題となり得る。
(3)本件では新日鉄住金のみを相手としていることから、元徴用工個人の新日鉄住金に対する賠償請求権が、日韓請求権協定2条1項の「完全かつ最終的に解決された」という条項により消滅したのかが重要な争点となった。この問題について、韓国大法院は、元徴用工の慰謝料請求権は日韓請求権協定の対象に含まれていないとして、その権利に関しては、韓国政府の外交保護権も被害者個人の賠償請求権もいずれも消滅していないと判示した。
(4)他方、日本の最高裁判所は、日本と中国との間の賠償関係等について、外交保護権は放棄されたが、被害者個人の賠償請求権については、「請求権を実体的に消滅させることまでを意味するものではなく、当該請求権に基づいて訴求する権能を失わせるにとどまる」と判示している(最高裁判所2007年4月27日判決)。この理は日韓請求権協定の「完全かつ最終的に解決」という文言についてもあてはまるとするのが最高裁判所及び日本政府の解釈である。この解釈によれば、実体的な個人の賠償請求権は消滅していないのであるから、新日鉄住金が任意かつ自発的に賠償金を支払うことは法的に可能であり、その際に、日韓請求権協定は法的障害にならない。
(5)安倍首相は、個人賠償請求権について日韓請求権協定により「完全かつ最終的に解決した」と述べたが、それが被害者個人の賠償請求権も完全に消滅したという意味であれば、日本の最高裁判所の判決への理解を欠いた説明であり誤っている。他方、日本の最高裁判所が示した内容と同じであるならば、被害者個人の賠償請求権は実体的には消滅しておらず、その扱いは解決されていないのであるから、全ての請求権が消滅したかのように「完全かつ最終的に解決」とのみ説明するのは、ミスリーディング(誤導的)である。
(6)そもそも日本政府は、従来から日韓請求権協定により放棄されたのは外交保護権であり、個人の賠償請求権は消滅していないとの見解を表明しているが、安倍首相の上記答弁は、日本政府自らの見解とも整合するのか疑問であると言わざるを得ない。


Ⅲ.被害者個人の救済を重視する国際人権法の進展に沿った判決である

(1)本件のような重大な人権侵害に起因する被害者個人の損害賠償請求権について、国家間の合意により被害者の同意なく一方的に消滅させることはできないという考え方を示した例は国際的に他にもある(例えば、イタリアのチビテッラ村におけるナチス・ドイツの住民虐殺事件に関するイタリア最高裁判所〈破棄院〉など)。
(2)このように、重大な人権侵害に起因する個人の損害賠償請求権を国家が一方的に消滅させることはできないという考え方は、国際的には特異なものではなく、個人の人権侵害に対する効果的な救済を図ろうとしている国際人権法の進展に沿うものといえるのであり(世界人権宣言8条参照)、「国際法に照らしてあり得ない判断」であるということもできない。


Ⅳ.日韓両国が相互に非難しあうのではなく、本判決を機に根本的な解決を行うべきである

(1)本件の問題の本質が人権侵害である以上、なによりも被害者個人の人権が救済されなければならない。それはすなわち、本件においては、新日鉄住金が本件判決を受け入れるとともに、自発的に人権侵害の事実と責任を認め、その証として謝罪と賠償を含めて被害者及び社会が受け入れることができるような行動をとることである。
(2)例えば中国人強制連行事件である花岡事件、西松事件、三菱マテリアル事件など、訴訟を契機に、日本企業が事実と責任を認めて謝罪し、その証として企業が資金を拠出して基金を設立し、被害者全体の救済を図ることで問題を解決した例がある。そこでは、被害者個人への金員の支払いのみならず、受難の碑ないしは慰霊碑を建立し、毎年中国人被害者等を招いて慰霊祭等を催すなどの取り組みを行ってきた。
(3)新日鉄住金もまた、元徴用工の被害者全体の解決に向けて踏み出すべきである。それは、企業としても国際的信頼を勝ち得て、長期的に企業価値を高めることにもつながる。韓国において訴訟の被告とされている日本企業においても、本判決を機に、真の解決に向けた取り組みを始めるべきであり、経済界全体としてもその取り組みを支援することが期待される。


 最後に、「声明」は、次のように主張する。


(1)日本政府は、新日鉄住金をはじめとする企業の任意かつ自発的な解決に向けての取り組みに対して、日韓請求権協定を持ち出してそれを抑制するのではなく、むしろ自らの責任をも自覚したうえで、真の解決に向けた取り組みを支援すべきである。
(2)私たちは、新日鉄住金及び日韓両政府に対して、改めて本件問題の本質が人権問題であることを確認し、根本的な解決に向けて取り組むよう求めるとともに、解決のために最大限の努力を尽くす私たち自身の決意を表明する。


 この「声明」から、次のことを受け取る。


Ⅰ.本件は、重大な人権侵害を受けた被害者が救済を求めて提訴した事案であり、社会的にも解決が求められている問題である。したがって、この問題の真の解決のためには、被害者が納得し、社会的にも容認される解決内容であることが必要である。被害者や社会が受け入れることができない国家間合意は、いかなるものであれ真の解決とはなり得ない。
Ⅱ.本件は、1910年の日韓併合後朝鮮半島を日本の植民地とし、その下で戦時体制下における労働力確保のため、1942年に日本政府が制定した「朝鮮人内地移入斡旋要綱」による官斡旋方式による斡旋や、1944年に日本政府が植民地朝鮮に全面的に発動した「国民徴用令」による徴用が実施される中で起きたものであるから、日本国の損害責任も問題となり得る。
Ⅲ.日本の最高裁判所は、日本と中国との間の賠償関係等について、外交保護権は放棄されたが、被害者個人の賠償請求権については、「請求権を実体的に消滅させることまでを意味するものではなく、当該請求権に基づいて訴求する権能を失わせるにとどまる」と判示している(最高裁判所2007年4月27日判決)。この理は日韓請求権協定の「完全かつ最終的に解決」という文言についてもあてはまるとするのが最高裁判所及び日本政府の解釈である。この解釈によれば、実体的な個人の賠償請求権は消滅していないのであるから、新日鉄住金が任意かつ自発的に賠償金を支払うことは法的に可能であり、その際に、日韓請求権協定は法的障害にならない。
Ⅳ.重大な人権侵害に起因する個人の損害賠償請求権を国家が一方的に消滅させることはできないという考え方は、国際的には特異なものではなく、個人の人権侵害に対する効果的な救済を図ろうとしている国際人権法の進展に沿うものといえるのであり(世界人権宣言8条参照)、「国際法に照らしてあり得ない判断」であるということもできない。
Ⅴ.本件の問題の本質が人権侵害である以上、なによりも被害者個人の人権が救済されなければならない。それはすなわち、本件においては、新日鉄住金が本件判決を受け入れるとともに、自発的に人権侵害の事実と責任を認め、その証として謝罪と賠償を含めて被害者及び社会が受け入れることができるような行動をとることである。
6.あわせて、日本政府は、新日鉄住金をはじめとする企業の任意かつ自発的な解決に向けての取り組みに対して、日韓請求権協定を持ち出してそれを抑制するのではなく、むしろ自らの責任をも自覚したうえで、真の解決に向けた取り組みを支援すべきである。



by asyagi-df-2014 | 2018-11-16 07:08 | 侵略戦争・戦後処理 | Comments(0)

韓国大法院(最高裁)が出した「強制徴用判決」を、ハンギョレと朝日新聞で考える。

 ハンギョレは、「あまりに遅かった13年目の強制徴用判決」、と論じる。
 一方、朝日新聞は、「徴用工裁判 蓄積を無にせぬ対応を」、と。
韓国大法院(最高裁)が出した判決を、この二社の社説で考える。
まずは、ハンギョレの主張を見てみる。


Ⅰ.判決内容


(1)日帝強制徴用被害者に日本企業が賠償しなければならないという最高裁(大法院)の最終判決が下された。最高裁の全体合議体(裁判長、キム・ミョンス最高裁長官)は30日、イ・チュンシクさんら強制徴用の被害者が日本企業の新日鉄住金(旧新日本製鉄)を相手取って訴えた損害賠償請求訴訟の再上告審で、新日鉄住金の再上告を棄却し、原告に1億ウォン(約1千万円)ずつ賠償せよとの原審判決を確定した。被害者が訴訟を提起して13年8カ月めであり、再上告審に上がってからは5年余りがたってのことだ。
(2)今回の判決は司法壟断による長い間の訴訟遅滞を解消し、日帝強制占領期(日本の植民地時代)の被害者を遅まきながら救済したという点で意味が大きい。韓日請求権協定の解釈を巡る韓日間の外交的紛争の可能性も高いだけに、政府は適切な対処をしなければならない。
(3)最高裁の合議体はこの日、原告の損害賠償請求権が1965年に韓日政府が結んだ請求権協定の適用対象に含まれないと判断した。
①「日本政府の不法な植民支配および侵略戦争の実行に直結した日本企業の反人道的不法行為」によってもたらされた慰謝料請求権という理由からだ。
②すなわち、請求権協定文や付属書のどこにも日本の植民支配の不法性に言及する内容がなく、韓日間交渉の過程でも日本政府が植民支配の不法性を認めないまま強制動員被害の法的賠償を基本的に否認した以上、不法行為に対する被害は韓日協定対象ではないという趣旨だ。                                    ③交渉の過程で12億2千万ドルを要求したのに3億ドル(無償分)しか受けられず、強制動員の慰謝料まで含まれたと見るのは難しいという判断も付け加えた。         日帝の植民支配と強制動員自体を不法に見る韓国の憲法の価値体系に照らしてみれば当然の判決だ。

Ⅱ.判決が示した課題


(1)その間に他の原告は亡くなり、94歳のイさんしか生存していない。あまりに遅かった。しかも徴用被害者の強制労働の代価を裁判官の海外派遣のポストと交換して「裁判取引」の対象としたせいで遅れたというからこの上なく恥ずかしい話だ。司法壟断の当事者らが、故人の霊の前に土下座して謝罪しても足りないだろう。
(2)「朴槿恵(パク・クネ)大統領府」が韓日関係に及ぼす影響を云々して、2012年当時の最高裁の裁判結果を覆そうとし、外交部・法務部などの政府の省庁はもちろん、最高裁の首脳部までこれに付和雷同して確定判決を引き延ばした事実は、すでに検察の捜査で天下にさらされている。この事件が司法壟断の象徴的事例になっただけに、ヤン・スンテ前最高裁長官らが主導した取引の全貌が明らかになってこそ、今回の判決の意味も生きるだろう。
(3)「朴槿恵(パク・クネ)大統領府」が韓日関係に及ぼす影響を云々して、2012年当時の最高裁の裁判結果を覆そうとし、外交部・法務部などの政府の省庁はもちろん、最高裁の首脳部までこれに付和雷同して確定判決を引き延ばした事実は、すでに検察の捜査で天下にさらされている。この事件が司法壟断の象徴的事例になっただけに、ヤン・スンテ前最高裁長官らが主導した取引の全貌が明らかになってこそ、今回の判決の意味も生きるだろう。


Ⅲ.主張


(1)2015年の韓日慰安婦合意が事実上廃棄の手続きを進んでいる状況で、今回の判決で当分は韓日関係が悪化する可能性がある。実際、日本の河野太郎外相は「韓日友好関係の法的基盤を根底からひっくり返すものだ。決して受け入れることはできない」と反発した。政府の賢明な対処が必要な局面だ。イ・ナギョン首相は「司法府の判断を尊重して政府の対応策を講じていく」と表明し、「韓日関係を未来指向的に発展させていくことを希望する」として慎重な態度を見せている。
(2)一部では「ヤン・スンテ最高裁」の裁判遅延の存在を際立たせ、国際司法裁判所提訴などの日本の強硬対応の可能性を強調する見解がある。しかし、当事国である韓国の同意なしには法廷自体が成立しない。3権分立の民主国家で司法府の独立的な判断が尊重されることは常識だ。日本もまた民主政権なら自重するのが当然だ。


 この区分にそって、朝日新聞の主張をまとめる。


Ⅰ.判決内容


(1)植民地支配の過去を抱えながらも、日本と韓国は経済協力を含め多くの友好を育んできた。だが、そんな関係の根幹を揺るがしかねない判決を、韓国大法院(最高裁)が出した。
(2)戦時中、日本に動員された元徴用工4人が新日鉄住金に損害賠償を求めた訴訟で、1人あたり約1千万円を支払うよう命じた控訴審判決が確定した。


Ⅱ.判決が示した課題


(1)同様の訴訟はほかにもあり、日本企業約80社を相手取り、韓国各地の裁判所で進行中だ。日本政府や企業側は、1965年の国交正常化に伴う請求権協定で元徴用工への補償問題は解決済みとし、日本の司法判断もその考えを踏襲してきた。原告側は、賠償に応じなければ資産の差し押さえを検討するという。一方の日本政府は、協定に基づいて韓国政府が補償などの手当てをしない場合、国際司法裁判所への提訴を含む対抗策も辞さない構えだ。
(2)そんなことになれば政府間の関係悪化にとどまらず、今日まで築き上げてきた隣国関係が台無しになりかねない。韓国政府は、事態の悪化を食い止めるよう適切な行動をとるべきだ。
(3)元徴用工らへの補償問題は長年の懸案であり、これまでも韓国政府が一定の見解と対応をとってきた。盧武鉉(ノムヒョン)政権は05年、請求権協定当時の経済協力金に、補償が含まれるとの見解をまとめた。文在寅(ムンジェイン)・現大統領はこの時、大統領府高官として深くかかわった当事者だ。その見解を受けて韓国政府は国内法を整え、元徴用工らに補償をした。国内の事情によって国際協定をめぐる見解を変転させれば、国の整合性が問われ、信頼性も傷つきかねない。


Ⅲ.主張


(1)韓国併合の合法性を含め、日韓は国交正常化の際、詰め切れなかった問題がいくつかある。だが、互いに知恵をしぼって歩み寄り、今や年間1千万人近くが行き来する関係になった。判決を受けて韓国政府は有識者の意見も聞き、総合的に対応を検討すると表明したが、今後に暗雲をもたらすような判断は何としても避けるべきだ。
(2)日本政府は小泉純一郎政権のとき、元徴用工らに「耐え難い苦しみと悲しみを与えた」と認め、その後も引き継がれた。
(3)政府が協定をめぐる見解を維持するのは当然としても、多くの人々に暴力的な動員や過酷な労働を強いた史実を認めることに及び腰であってはならない。負の歴史に由来する試練をどう乗り切り、未来志向の流れをつくりだすか。政治の力量が問われている。


 この判決に関して、河野太郎外務大臣の「韓日友好関係の法的基盤を根底からひっくり返すものだ。決して受け入れることはできない。」等の発言が日本中を覆い尽くしている。 しかし、やはり違和感を感じる。
 その違和感の正体は、ハンギョレの「3権分立の民主国家で司法府の独立的な判断が尊重されることは常識だ。日本もまた民主政権なら自重するのが当然だ。」との主張が示すものである。
 やはり、司法が独立している以上、こうした「請求権協定文や付属書のどこにも日本の植民支配の不法性に言及する内容がなく、韓日間交渉の過程でも日本政府が植民支配の不法性を認めないまま強制動員被害の法的賠償を基本的に否認した以上、不法行為に対する被害は韓日協定対象ではない」、との判断を、司法が政治の桎梏から独立して行うことはあり得ることではないか。      
 例えばそれは、朝日新聞の「韓国併合の合法性を含め、日韓は国交正常化の際、詰め切れなかった問題がいくつかある。だが、互いに知恵をしぼって歩み寄り、今や年間1千万人近くが行き来する関係になった。」「負の歴史に由来する試練をどう乗り切り、未来志向の流れをつくりだすか。政治の力量が問われている。」と、ハンギョレの「日帝の植民支配と強制動員自体を不法に見る韓国の憲法の価値体系に照らしてみれば当然の判決だ。」、との受け止め方の「差異」から生じる。
 逆に、この「差異」を問わざるを得ない状況を生み出してきた日本政府の政治の力量が、背景に問題として横たわっているのではないか。
 そう意味において、朝日新聞の「負の歴史に由来する試練をどう乗り切り、未来志向の流れをつくりだすか。政治の力量が問われている。」、との指摘を根本から真摯に考える必要がある。

 例えば、日本軍慰安婦問題の日韓合意(2015年12月28日)の時、次のように押さえをした。


①日本側で出版されている大日本帝国軍従軍慰安婦制度を史実否定や歴史修正や韓国ヘイトや女性蔑視の立場から扱っている歴史修正出版物について、「それらは日本政府の立場とは相いれず、日本政府はそれらの出版物を史実として認めない」と公式に表明すること。
②日本の政治家、政府高官、政府関係者から、大日本帝国軍従軍慰安婦制度について、史実否定や歴史修正や韓国ヘイトや女性蔑視の立場から蒸し返す発言が出たら、「それは日本政府の立場とは相いれない」と首相自らコメントし、そのような発言をした者の政府内での職を解くこと。
③名誉と尊厳の回復、心の傷を癒やすための事業には、被害者が何よりも求めている日本政府保有資料の全面公開、国内外でのさらなる資料調査、国内外の被害者および関係者へのヒヤリングを含む真相究明、および義務教育課程の教科書への記述を含む学校及び一般での教育を含めること。
④アジア・太平洋各地の被害者に対しても、国家の責任を認めて同様の措置をとること。


 こうしたことが、この徴用工問題でも、政治主導でどれくらい行われてきているのかという疑問がある。
 それは、朝日新聞の「徴用工裁判 蓄積を無にせぬ対応を」との主張の「蓄積」の質を問うことでもあるはずだ。




by asyagi-df-2014 | 2018-11-09 07:05 | 侵略戦争・戦後処理 | Comments(0)

韓国大法院(最高裁)は30日、個人の請求権を認めた控訴審判決を支持し、新日鉄住金同社の上告を退けた。

 朝日新聞は2018年10月30日、表題について次のように報じた。


(1)朝鮮半島が日本統治下にあった戦時中に日本本土の工場に動員された韓国人の元徴用工4人が、新日鉄住金に損害賠償を求めた訴訟の上告審で、韓国大法院(最高裁)は30日、個人の請求権を認めた控訴審判決を支持し、同社の上告を退けた。これにより、同社に1人あたり1億ウォン(約1千万円)を支払うよう命じた判決が確定した。
(2)韓国の裁判所で、日本企業に元徴用工への賠償を命じる判決が確定したのは初めて。
(3)日本政府は、元徴用工の補償問題は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決済み」との立場を取る。今後の両国の対応次第では、外交や経済関係に打撃を与える可能性があり、日韓は新たな火種を抱えることになった。
(4)原告は同社が賠償に応じない場合、資産差し押さえなどの強制執行手続きができる。弁護団は、同社の資産は韓国にないとして、第三国での手続きを視野に入れる。同様の訴訟は、新日鉄住金に加えて不二越(富山市)など約70社を相手にした計15件があり、今回の最高裁の決定は他の訴訟の判決にも影響しそうだ。また、同様の訴訟が新たに相次いで起こされる可能性も高い。              
(ソウル=武田肇)



by asyagi-df-2014 | 2018-10-30 19:56 | 侵略戦争・戦後処理 | Comments(0)

「生き証人がいなくなったときに歴史の捏造(ねつぞう)に抵抗し、承継していくためのスタートラインにしたい」、と乗り越えよう。

 どういうことなのか。
 「一九二三年の関東大震災の直後に朝鮮人らが多く虐殺された問題をテーマにした劇の上演や企画展示が今夏、相次いでいる。背景にあるのは、小池百合子東京都知事が昨秋、犠牲者追悼式への追悼文送付を取りやめたことへの危機感。史実に向き合い、伝えていこうとの思いを込めている。(辻渕智之)」、と東京新聞は報じる。
 東京新聞は2018年7月18日、次のように報じた。


(1)「『一般の(震災での)犠牲者と、人の手で殺された被害者は違う。(小池知事が追悼文を送らなければ)民族差別の事実が否定されることになる』『ひょっとしてあんた朝鮮人? 中国人?』。こんなセリフも行き交う。劇『九月、東京の路上で』は二十一日~八月五日に東京都世田谷区の劇場『下北沢ザ・スズナリ』で上演される。今もある差別や排外主義とも重ね合わせ、デマや虐殺が広がる九十五年前の現場を追体験できる。」
(2)「劇団「燐光群(りんこうぐん)」の公演で、主宰する劇作家の坂手洋二(さかてようじ)さん(56)は話す。『生き証人がいなくなったときに歴史の捏造(ねつぞう)に抵抗し、承継していくためのスタートラインにしたい』」
(3)「昨年、小池知事は記者会見で歴史認識を問われたが『虐殺』『殺された』という言葉を避けた。虐殺の史実は戦前の公文書にも記されているが、こうした事実を認めようとしなかった。」
(4)「劇は作家加藤直樹さん(51)の同名の本が原作。戒厳令下でデマの拡散や殺害に警察や軍が加担したことも明らかにされる。劇中では、自衛官が野党議員を『国民の敵』とののしり、虐殺はなかったと主張する。坂手さんは問う。『日本人は、弱い人間が死んでいくことへの感受性がとても弱いのではないか。そして、軍隊が軍隊の秩序で動くという怖さも忘れている』。
(5)「一方、新宿区大久保の認定NPO法人高麗博物館では企画展示『描かれた朝鮮人虐殺と社会的弱者』が開かれている。虐殺を実際に見た画家や当時の小学生らが描いた絵などのパネル約三十点と関連書籍が並ぶ。流血して横たわり、恐怖におののく朝鮮人、周りに警察、軍隊、自警団、群衆が描かれ、殺気と悲しみが伝わる。日本人と見分けるため、朝鮮人が発音しにくい語句を言わせ、答えられなかった日本人の聴覚障害者ら社会的弱者が殺されたことも紹介している。『虐殺にリアルに迫るような展示が公的な施設では困難になっている。でも、その現場を描き、書いた人はいた』と新井勝紘(かつひろ)館長(73)は話す。」
(6)「東日本大震災でも外国人窃盗団のデマが流れ、各地でヘイトスピーチのデモが横行した。『負の歴史にフタをせず、ちゃんと直視し、乗り越えられるかが問われている』。
展示は十二月二日まで。劇、展示の問い合わせはそれぞれ燐光群=電03(3426)6294、高麗博物館(月火休み)=電03(5272)3510=へ。」


 確かに、「生き証人がいなくなったときに歴史の捏造(ねつぞう)に抵抗し、承継していくためのスタートラインにしたい」との行動の背景には、「虐殺にリアルに迫るような展示が公的な施設では困難になっている。でも、その現場を描き、書いた人はいた」との歴史の事実があった。
問題は、「負の歴史にフタをせず、ちゃんと直視し、乗り越えられるかが問われている」(東京新聞)、ということに尽きる。



by asyagi-df-2014 | 2018-07-22 11:50 | 侵略戦争・戦後処理 | Comments(0)

沖縄タイムスの【教科書のいま】を読む。(4)

 宜野湾海浜公園で、2007年9月29日、復帰後、最大規模の大会になった「教科書検定意見撤回を求める県民大会」が、11万6千人(主催者発表)が参加し開催された。
 この日から、10年がたった。
 沖縄タイムスは、「2006年度の教科書検定で、高校日本史の沖縄戦『集団自決(強制集団死)』を巡り、日本軍の加害性の記述が大幅に薄められた。11万6千人(主催者発表)が参加した07年9月29日の県民大会を経て、記述はある程度回復したものの、『軍の強制』は認められていない。国の歴史観と、県民の『記憶』とのせめぎ合いが続く『教科書のいま』に焦点を当てる。」、と特集の連載を始めた。
 この沖縄タイムスの特集を読む。
第4回は2017年9月29日、「教科書のいま・4】石垣市の副読本問題 「慰安婦」触れ出版難航 市側、本年度は見送り」(社会部・鈴木実)。
 沖縄タイムスは、今の「教育をゆがめる圧力」の様子を伝える。


(1)市議「慰安婦を強制連行したという証拠は全くなかったというのが政府見解。訂正すべきだ」
 市長「政府見解とは多少異なる記述で副読本が作られている。しっかり検証しながら、新たな形で発行すべきだろうと考えている」
 昨年6月の石垣市議会の定例会。市議と中山義隆市長との間で、こんなやりとりがあった。
(2)問題になったのは、石垣市教育委員会が市内の中学生向けに作成した副読本『八重山の歴史と文化・自然』。一括交付金を使い、郷土の専門家ら約30人が2年かけて執筆や編集を担った。全編オールカラー、220ページを超える力作で、2014年度末に会見した当時の市教育長は「中学生が島を学ぶ入門書として活用してほしい」と呼び掛けた。
(3)しかし、副読本は船出から難航する。
(4)翌15年度に入っても配布されず、しびれを切らした執筆者らが文書で問い合わせたが「教科書採択への影響を避けるため」「誤字脱字などがあり、市教委の責任で訂正する」などといった理由で延び延びになった。
(5)「教科書に『慰安婦』のことは載っていない。副読本からおろせないか」。会見から8カ月ほどたった15年11月、執筆者の一人である三木健さん(77)は、市教委からの電話に「ついに本音が出たか」と直感した。
 三木さんは副読本の中で、「慰安婦」や「南京事件」について触れていた。八重山で10カ所ほどの慰安所が置かれていたことや、南京占領の際にはちょうちん行列がまちを練り歩いた事実を盛り込むことで、「郷土の戦争」を知ってもらうためだった。一方で南京事件の犠牲者数は明記しないなど、表現には配慮したつもりだった。
(6)再三の交渉を経て、最終的には同年12月に生徒たちに配られたものの、翌16年度の議会でやり玉に。執筆者は17年度も発行を希望していたが、市教委は「見解が分かれる事案」「公金支出は市長や市議会、市民の理解が得られにくい」として刊行を見送った。
(7)近隣諸国との緊張関係が増し、自衛隊配備計画も控える「国境の島」。三木さんには、「加害」の歴史を見直そうという動きが力を伸ばしつつあるように見える。「歴史教育の出発点は、郷土で何があったかを知ること。座標軸が『右』へ『右』へと流れる中で、都合の悪いことから目を背けようとしていないか」と問う。(社会部・鈴木実)


 「歴史教育の出発点は、郷土で何があったかを知ること。座標軸が『右』へ『右』へと流れる中で、都合の悪いことから目を背けようとしていないか」、との三木健さんの指摘は、教科書問題だけでくくるものではなく、学問・研究のあり方の基本でもある。
まさしくこうした『閉塞』社会を変えることこそ、「大人」の責任である。



by asyagi-df-2014 | 2018-04-13 12:33 | 侵略戦争・戦後処理 | Comments(0)

沖縄タイムスの【教科書のいま】を読む。(3)

 宜野湾海浜公園で、2007年9月29日、復帰後、最大規模の大会になった「教科書検定意見撤回を求める県民大会」が、11万6千人(主催者発表)が参加し開催された。
 この日から、10年がたった。
 沖縄タイムスは、「2006年度の教科書検定で、高校日本史の沖縄戦『集団自決(強制集団死)』を巡り、日本軍の加害性の記述が大幅に薄められた。11万6千人(主催者発表)が参加した07年9月29日の県民大会を経て、記述はある程度回復したものの、『軍の強制』は認められていない。国の歴史観と、県民の『記憶』とのせめぎ合いが続く『教科書のいま』に焦点を当てる。」、と特集の連載を始めた。
 この沖縄タイムスの特集を読む。
第3回は2017年9月27日、「【教科書のいま・3】「慰安婦」記述に強まる圧力 学校に抗議続々、教科書会社倒産も」(社会部・鈴木実)。
 沖縄タイムスは、今の「現場」の様子を伝える。


(1)今年夏。昨年度から使われている歴史教科書を巡り、関西の名門中学校に組織的とみられる大量の抗議はがきが送りつけられていることが発覚した。「『反日極左』の教科書」「なぜ採択したのか」などと書かれ、採択の理由を問いただす政治家からの電話も同校にあったとされる。
(2)標的となったのは、新規参入の「学び舎(しゃ)」の教科書。沖縄戦や沖縄の基地問題に関する記述が手厚く、中学校の教科書としては唯一「慰安婦」について取り上げたことでも話題になった。執筆者の一人は「教科書そのものに対する批判や提言は受け止めるが、採択した学校への『圧力』は見過ごせない。教育の自由がゆがめられる」と懸念する。
(3)「慰安婦」を巡っては、金学順(キム・ハクスン)さんが1991年に名乗り出たのをきっかけに、90年代の一時期には全ての中学校歴史教科書が取り上げた。一方、90年代半ばに発足した自由主義史観研究会や「新しい歴史教科書をつくる会」は、こうした記述を「自虐的」として矛先を向ける。教科書会社は、次第に及び腰になった。
(4)中学の歴史分野の大手だった日本書籍はこの年、深刻な経営危機に襲われる。ほかの教科書が「慰安婦」記述を控える中、従来通り掲載した同社は集中砲火を浴び、採択を控える教育委員会が相次いだためだ。結局、同社は数年後に倒産。中学校教科書から「慰安婦」の記述が途絶えた。
(5)10年以上の時を経て、再び「慰安婦」に触れたのが学び舎の教科書だった。「河野談話」を紹介する文脈であり、「強制連行を直接示すような資料は発見されていない」という政府見解も載せていたが、「反日」と決め付けられた。
(6)高嶋伸欣琉球大学名誉教授は「国内有数の進学校にも選ばれたため、『つくる会』系の勢力が焦りを感じたのだろう。不当なレッテルを貼ることで『慰安婦』を削除させ、ほかの教科書会社にも記述が広がらないよう牽制(けんせい)する意図があるのでは」とみる。
(7)インターネット上に掲載された文章で、抗議はがきを受けた校長は「多様性を否定し、一つの考え方しか許されないような閉塞(へいそく)感の強い社会」に強い憂慮を示した。国の歴史観に従わせようとする「圧力」が、教育現場や教科書会社を覆っている。


 教育現場の実態は、実は日本の言論の自由や基本的人権の実態である。、
それは、「多様性を否定し、一つの考え方しか許されないような閉塞(へいそく)感の強い社会」、ということである。
この『閉塞』社会を変えることこそ、「大人」の責任である。





by asyagi-df-2014 | 2018-04-12 12:21 | 侵略戦争・戦後処理 | Comments(0)

沖縄タイムスの【教科書のいま】を読む。(2)

 宜野湾海浜公園で、2007年9月29日、復帰後、最大規模の大会になった「教科書検定意見撤回を求める県民大会」が、11万6千人(主催者発表)が参加し開催された。
 この日から、10年がたった。
 沖縄タイムスは、「2006年度の教科書検定で、高校日本史の沖縄戦『集団自決(強制集団死)』を巡り、日本軍の加害性の記述が大幅に薄められた。11万6千人(主催者発表)が参加した07年9月29日の県民大会を経て、記述はある程度回復したものの、『軍の強制』は認められていない。国の歴史観と、県民の『記憶』とのせめぎ合いが続く『教科書のいま』に焦点を当てる。」、と特集の連載を始めた。
 この沖縄タイムスの特集を読む。
第2回は2017年9月26日、「【教科書のいま・2】「集団自決」修正の標的 政治介入に警鐘」(社会部・湧田ちひろ)。
沖縄タイムスは、教育への政治介入という問題を、こう伝える。



(1)1991年10月、東京高裁。沖縄国際大教授(当時)の石原昌家さん(76)は、沖縄戦の研究者として法廷に立っていた。「住民が自主的に死んだのではなく、日本軍のために必然的に死に追い込まれました」。これまで聞き取った数千人の証言者と戦没者の思いを胸に、「集団自決(強制集団死)」の実相を語った。石原さんが出廷したのは、高校日本史教科書の執筆者である家永三郎さんが84年に起こした第3次家永訴訟。家永さんが日本軍による「住民殺害」を教科書に記述したことに対し、当時の文部省は「集団自決」も併記するよう求めた。
(2)文部省は「集団自決」を、国のために自ら命を絶った「殉国死」として書かせようとしている-。そう国の意図を感じ取った家永さんは反発し、検定の違法性を訴えて提訴した。石原さんも裁判で「日本軍の強制という意味での『集団自決』」と、枕ことばを付けて国の歴史観にあらがった。
(3)沖縄戦の記述が最初に変更させられたのは、さらに81年度検定にさかのぼる。日本史の教科書で江口圭一さんが執筆した「日本軍による住民殺害」の記述が全面削除された。県民の怒りとともに戦争体験者による新しい証言が相次ぎ、県議会も意見書を可決した。
(4)これらを受け、文部省は83年度検定からは「住民殺害」の記述を認めるよう軌道修正する。しかし同時に美談としての「集団自決」も書かせようとし、家永訴訟につながっていく。
(5)石原さんらの証言や裁判を巡る議論は、沖縄戦の実相がより深く理解される契機となった。教科書会社の抵抗もあり、80年代には「軍の強制」の記述が定着する。
(6)状況が一変したのは、2006年度の教科書検定。歴史修正主義の台頭を背景に、「集団自決」を巡る従来の記述に軒並み検定意見がついた。県民の猛反発で「軍の関与」は復活したものの、軍の「強制」や「命令」を明記することは今も認められていない。
(7)80年代に国の思惑で書かされ、そして20数年後に再び国の思惑で修正させられた「集団自決」。翻弄(ほんろう)され続ける「史実」に、石原さんは「国民を軍民一体で戦争へと駆り立てていくために、戦前から教科書を通じて思想教育や洗脳が行われてきた。教科書への政治の介入を許してはいけない」と警鐘を鳴らす。(社会部・湧田ちひろ)


 確認しなければならないのは、集団自決(集団強制死)の記述は、80年代に国の思惑で美談として書かされ、そして20数年後に再び国の思惑で修正させられた、という事実。
「国民を軍民一体で戦争へと駆り立てていくために、戦前から教科書を通じて思想教育や洗脳が行われてきた。教科書への政治の介入を許してはいけない」、との石原昌家さんの警鐘は、今を撃つ。




by asyagi-df-2014 | 2018-04-11 12:10 | 侵略戦争・戦後処理 | Comments(0)

沖縄タイムスの【教科書のいま】を読む。(1)

 宜野湾海浜公園で、2007年9月29日、復帰後、最大規模の大会になった「教科書検定意見撤回を求める県民大会」が、11万6千人(主催者発表)が参加し開催された。
 この日から、10年がたった。
 沖縄タイムスは、「2006年度の教科書検定で、高校日本史の沖縄戦『集団自決(強制集団死)』を巡り、日本軍の加害性の記述が大幅に薄められた。11万6千人(主催者発表)が参加した07年9月29日の県民大会を経て、記述はある程度回復したものの、『軍の強制』は認められていない。国の歴史観と、県民の『記憶』とのせめぎ合いが続く『教科書のいま』に焦点を当てる。」、と特集の連載を始めた。
 この沖縄タイムスの特集を読む。
第1回は2017年9月25日、「【教科書のいま・1】私は「集団自決」の生き残り 慶良間の教訓、伝える決意」(社会部・新崎哲史)。
沖縄タイムスはこう伝える。


(1)11万人が静かに聞き入る宜野湾海浜公園で、吉川嘉勝さん(78)は意を決して語り始めた。「私は渡嘉敷島北山(にしやま)の『集団自決』の生き残りです」。日本軍に渡された手榴弾(しゅりゅうだん)や持参したカマ、カミソリで家族の命を絶たされた島の人々のこと。被害と加害の記憶に苦しんできたこと。長年口を閉ざしてきたが、日本軍の「罪」を消そうとする動きに怒りがあふれた。2007年9月29日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」。復帰後、最大規模の大会に発展した。
(2)県民大会のきっかけとなったのは、文部科学省による06年度の教科書検定。渡嘉敷島や座間味島などで起きた「集団自決(強制集団死)」で日本軍の「強制」記述が消された。「軍の責任逃れは許せない」。それまで数度しか証言したことがなかった吉川さんは県民大会の壇上に立った。沖縄戦当時6歳。家族で手榴弾を囲んだが爆発せず「死ぬのはいつでもできる。逃げよう」との母の叫びで命をつないだ。
(3)慶良間諸島では、日本兵は「いざとなれば自決しろ」と多くの住民に伝えていた。軍命による住民の招集、軍管理の手榴弾が家庭に配られ「隊長命令があった」と確信している。
(4)吉川さんは、ある防衛隊員の妹から証言を聞いた。軍人経験者だった防衛隊員は「集団自決」の直前、知り合いから「手榴弾の扱いに慣れているだろ。私の旧式と換えてくれ」と頼まれ、新式手榴弾を手渡した。その知り合いの家族は爆発で死亡。しかし、交換した旧式手榴弾は不発で防衛隊員の家族は生き残った。「生存者は相手を犠牲にした傷を負う。被害と加害が複雑に絡み合い、小さな島社会では『語らず』が生きるすべだった。そこが狙われた」
(5)県民大会と前後して、住民たちは「あの日」について語り始め、軍命を裏付ける証言が相次いだ。吉川さんも平和ガイドを始め、10年間で350組以上に戦争の実態を伝えてきた。「教科書検定問題で慶良間の戦争の実態は広く知られるようになった」と感じる一方、近年のインターネットなどによる史実を歪曲(わいきょく)する言説に神経をとがらす。「真実が隠され、追い込まれた先に『集団自決』が起きた。史実を曲げる目的の先には戦争が見える。悲劇を繰り返さないために慶良間の教訓を伝えたい」と力を込める。(社会部・新崎哲史)


 確かに、10年前のあの感動を覚えている。
 今、必要なことは、まずは、「私は渡嘉敷島北山(にしやま)の『集団自決』の生き残りです」と証言者となった、吉川嘉勝さんの「真実が隠され、追い込まれた先に『集団自決』が起きた。史実を曲げる目的の先には戦争が見える。悲劇を繰り返さないために慶良間の教訓を伝えたい」、との声にじっくり耳を傾けることではないか。





by asyagi-df-2014 | 2018-03-23 08:15 | 侵略戦争・戦後処理 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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