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ハンセン病家族補償法が成立した。(4)

ハンセン病元患者の家族に対し、1人あたり最大180万円の補償金を支給する補償法と、名誉回復のための改正ハンセン病問題基本法が15日午後の参院本会議で全会一致で可決され、成立した。
ハンセン病家族訴訟弁護団(以下、「弁護団」)は2019年11月15日、「ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律等の成立を受けて」、と見解を表明しました。 「弁護団」の表明は、次のものです。


(1)本日、「ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律」が成立しました。この法律は、前文に明記されているように、国会及び政府が、長年にわたり、ハンセン病元患者家族の被害を放置してきたことの責任を認め、「反省とお詫び」を明らかにした上で、その被害を慰謝し名誉の回復等を図るために補償金を支払うというものです。
(2)去る6月28日に言い渡された熊本地裁判決は、ハンセン病元患者家族が偏見差別による被害及び家族関係の形成を阻害される被害を被ったことについての国会及び政府の責任を認める画期的なものでしたが、20名の原告の請求を棄却し、沖縄原告の認容額を減額する等の限界を持つものでした。今回の法律は、そうした限界の多くを補うものであり、同判決と一体となって、家族被害の全面解決に向けての大きな前進をもたらすものとして、原告ら弁護団としても、これを高く評価するものです。
(3)また、同じく本日成立した「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」の改正は、家族被害の解決に向けて、国が総力を挙げて取り組むことを明らかにするとともに、ハンセン病療養所における医師確保に向けての方策を具体化したものであり、今後のハンセン病問題の解決に向けての重要な指針となることが期待されます。
(4)ここに、両法律の成立に向けて御尽力頂いた関係各位のご努力に対して、改めて感謝するものです。


 また、「弁護団」は、今後について、次のように決意表明しています。


(1)私たち弁護団としては、今回の補償法が真に実のある結果をもたらすには、家族訴訟に加わった原告のみならず、これまで声をあげることなく苦難の人生を歩んでこられた多くの未提訴の家族の方々が、安心して法律の適用を受けられる状況を作り、そして少しでも多くの家族の関係修復に資するようにする必要があると痛切に認識しており、そのために全力を尽くしていく決意です。
(2)ハンセン病に関する偏見差別は、国の長年にわたる啓発活動にもかかわらず、なお、私たちの社会に深刻な形で根付いています。ハンセン病問題の最終的な解決のためには、こうした偏見差別を一掃することが何よりも切実に求められています。今回成立した補償法の前文において、「ハンセン病元患者家族等に対するいわれのない偏見と差別を国民と共に根絶する決意を新たにする」と表明されているとおり、今後、国はその総力を挙げて、これまでの啓発活動の見直しを行い、偏見差別の根絶に向けて最大限の努力を行うべきことは言うまでもありません。
(3)私たち原告団、弁護団も、今回の法律の制定を機に、ハンセン病問題の全面解決に向け、またハンセン病問題の解決を通じてよりよい日本社会の実現を図るべく、国民の皆さまとともに、全力で取り組んでいく決意であることをここに改めて表明するものです。


 まさしく、「ハンセン病元患者家族等に対するいわれのない偏見と差別を国民と共に根絶する決意を新たにする」。




by asyagi-df-2014 | 2019-11-22 07:13 | ハンセン病 | Comments(1)

ハンセン病家族補償法が成立した。(3)

ハンセン病元患者の家族に対し、1人あたり最大180万円の補償金を支給する補償法と、名誉回復のための改正ハンセン病問題基本法が15日午後の参院本会議で全会一致で可決され、成立した。
 東京新聞(以下、「東京」)は2019年11月16日、「ハンセン病 家族補償法成立 被害回復へ周知課題」、とこのことについて報じた。
 「東京」は、次のように伝える。


(1)ハンセン病元患者家族への補償法と、名誉回復を図る改正ハンセン病問題基本法が十五日、成立した。元患者への謝罪、補償から十八年遅れで、家族の被害回復が前進した。二万四千人とみられる補償対象者への制度の周知が課題。政府はホームページやポスターなどで申請を呼び掛け、来年一月末にも支給を開始する。家族関係の修復や偏見差別の解消にも力を入れ、当事者らの意見を踏まえ具体的施策を策定する。
(2)法成立を受け、加藤勝信厚生労働相は「私自身先頭に立ち、補償実施や偏見差別解消、家族関係回復に取り組む」と強調。家族訴訟弁護団は「被害の全面解決に向けて大きな前進をもたらす」とのコメントを発表した。
(3)両法は議員立法。今月二十二日からの施行を目指しており施行日から補償金の受け付けを始める。補償法は国の強制隔離政策で家族が受けた苦痛や苦難に対し国会と政府による反省とおわびを前文に明記。精神的苦痛への補償金として元患者の親子や配偶者らに百八十万円、きょうだいらに百三十万円を支給する。六月の熊本地裁判決より、補償額と補償の対象とする「家族」の範囲が拡大された。
(4)厚労省によると、補償金を受けるには、元患者の家族と証明する資料とともに国への申請が必要だ。資料で確認ができない場合は、外部有識者による認定審査会の審査を経て厚労相が認定する。委員には国立ハンセン病療養所長や裁判官の経験者らを想定している。
(5)請求期限は法施行後五年以内で、早ければ来年一月末から支給開始。死亡した原告は補償対象に含めず、省令で同額の特別一時金を支払う。同省は必要経費を約四百億円と見込んでいる。改正基本法では、差別禁止や名誉回復、福祉増進の対象に、元患者だけでなく家族も追加した。国立療養所の医療や介護の体制充実を努力義務とする。また高齢化が進む元患者の医療・介護環境を整備し、国立ハンセン病療養所に勤める医師の兼業規制を緩和する。


 また、「東京」は、「『国が正しい知識広めて』 迫害の歴史、なお残る差別」、と続けて報じる。

(1)ハンセン病の元患者が身内にいることを理由に、差別に苦しんできた。法廷闘争の末補償を勝ち取った家族は安堵できるのだろうか。「これが救済を求める運動の終わりになってほしい」と願う一方、なお残る差別の深刻さに、心から喜べない人もいる。
(2)補償法は訴訟の原告以外も対象となる。福岡市在住の林力原告団長(95)は「これまで存在を隠して生きるしかなかった人も運動の成果を受けられる」と話し、差別被害を恐れて訴訟に参加できなかった元患者家族をおもんぱかった。
(3)原告に加わらなかった宮崎県のある男性(70)は、補償を申請するかどうか決めていない。父と姉が元患者。子どものころ、家の前を通る近所の住民は鼻をつまみ、自身の就職でも差別された。刻まれた苦い記憶は拭い切れない。
(3)「長い迫害の歴史があり、今も家族が元患者だと打ち明けられる環境ではない。社会の在り方が変わらなければ意味がない」。周囲の目を気にし、息子たちには家に来ないよう伝えていたが、今度の正月、五年ぶりに会って補償を受けるかどうか話し合うという。
(4)林原告団長は「隔離政策で苦しめた国の罪が、これ(家族補償法の成立)であがなわれたわけではない」とも強調。「無知は差別の始まりだ。国はこれから、ハンセン病の歴史と正しい知識を国民に広めるよう、力を尽くしてほしい」と求めた。


 肝に銘なければならないのは、林原告団長の次の「声」である。
「隔離政策で苦しめた国の罪が、これ(家族補償法の成立)であがなわれたわけではない」
無知は差別の始まりだ。国はこれから、ハンセン病の歴史と正しい知識を国民に広めるよう、力を尽くしてほしい」




by asyagi-df-2014 | 2019-11-20 06:32 | ハンセン病 | Comments(0)

ハンセン病家族補償法が成立した。(2)

ハンセン病元患者の家族に対し、1人あたり最大180万円の補償金を支給する補償法と、名誉回復のための改正ハンセン病問題基本法が15日午後の参院本会議で全会一致で可決され、成立した。
 朝日新聞は2019年11月15日、このことについて次のように報じた。


(1)ハンセン病元患者の家族に対し、1人あたり最大180万円の補償金を支給する補償法と、名誉回復のための改正ハンセン病問題基本法が15日午後の参院本会議で全会一致で可決され、成立した。早ければ来年1月末にも補償金の支給が始まるとみられる。
(2)補償法は前文で、国による患者の隔離政策で家族も偏見と差別を受け、多大な苦痛と苦難を強いられてきたと指摘。そのうえで、国会と政府の反省とおわびを明記した。
(3)補償金は、元患者の親子、配偶者に1人あたり180万円、きょうだいや元患者と同居していたおい、めい、孫、ひ孫らに130万円を支給する。内縁の配偶者や連れ子のほか、戦前の台湾、朝鮮半島に住んでいた人なども対象とする。
(4)厚生労働省によると、対象者は約2万4千人、費用は約400億円と推計されている。
(5)改正法は、名誉回復の対象に元患者の家族を新たに加えるなどする。


 また、沖縄タイムス(以下、「タイムス」)は2019年11月16日、「[ハンセン病家族補償]差別なくす決意 今こそ」、と社説で論評した。
 「タイムス」は、この中で、「私たち一人一人が差別に加担してきた責任に向き合い、今度こそ社会に残る偏見をなくす取り組みを前に進めなければならない。」、と表明した。
この「タイムス」によるこの補償法についての指摘は次のもの。


(1)ハンセン病元患者の家族に対する補償法が成立した。前文に国会や政府の「反省」と「おわび」を明記する法律は、国の誤った隔離政策が家族にまで及んだ被害を救済しようというものだ。元患者への補償から18年遅れて、積み残されていた家族への補償がようやく動きだす。
(2)法案づくりは、6月に熊本地裁が家族への差別被害を認め、国敗訴の判決を言い渡したことから本格化した。
(3)成立した補償法は、熊本地裁が認めていなかった米軍統治下の沖縄の被害を含めるなど裁判への参加・不参加を問わず広く救済する内容だ。元患者の親子や配偶者らに180万円、きょうだいらに130万円を支給する。対象者は2万4千人に上るとみられている。支給には請求が必要で、家族と証明する資料の確認や有識者による審査を経なければならない。


 また、「タイムス」は、非常に大事な指摘を付け加える。


(1)家族訴訟の原告561人のうち実名で裁判に臨んだのが数人だったことを考えれば、家族であると分かることを恐れて請求をためらう人がいるのではないか。元患者の中には病歴を隠している人も少なくない。既に家族関係が崩壊し連絡する手段がない人もいる。
(2)声を上げられない人が不利益を被らないよう、プライバシーを守りつつ補償が受けられる特別な配慮を求めたい。


 さて、「タイムス」は、「『人生被害」と形容される苦しみは想像を絶するものがあった。』、とこの補償法の意味を押さえる。


(1)裁判で原告側が「共通損害」として訴えたのは、「差別偏見を受ける地位に置かれたこと」と「家族関係を妨げられたこと」だった。この問題特有といっていいのが家族の離散や分断である。
(2)恐ろしい病気とのイメージを植え付けた隔離政策によってすさまじい差別に遭った女性は、最後まで「20センチの壁」が超えられなかったと証言している。「布団の中でも、必ず母との間に、20センチの距離をつくりました。たった一人の娘に、そんな態度をとられた母は、どんな思いがしたことでしょうか」(ハンセン病家族訴訟弁護団編「家族がハンセン病だった」)。
(3)時間を戻すことはできないが、それでも家族との絆を結び直し、傷ついた心を癒やしていくことが真の救済につながる。関係回復に向けての施策にも力を入れるべきだ。


 さらに、「タイムス」は沖縄の現状(家族訴訟の原告の約4割が沖縄県内在住者だった)ことから、社会の差別構造の克服に向けて、「差別をなくす確かな決意」を、明確に表明する。


(1)家族訴訟の原告の約4割が県内在住者だったことは、沖縄戦や米軍統治の歴史の中で差別が深刻化してきた実態も浮き彫りにした。国の責任とともにあぶりだされたのは、社会の加担構造である。
(2)補償法には「偏見と差別を国民と共に根絶する決意」も記されている。
(3)原告が裁判所に提出した意見陳述書に目を通してほしい。ハンセン病の歴史を伝える資料を展示した愛楽園交流会館に足を運んでほしい。県内に二つある国立療養所の入所者と交流を図ってほしい。
(3)差別をなくす確かな決意を胸に刻みたい。


 確かに、今度は。
差別をなくす確かな決意を胸に刻む。

 




by asyagi-df-2014 | 2019-11-19 08:09 | ハンセン病 | Comments(0)

ハンセン病家族補償法が成立した。

 朝日新聞は2019年11月15日、表題について次のように報じた。


(1)ハンセン病元患者の家族に対し、1人あたり最大180万円の補償金を支給する補償法と、名誉回復のための改正ハンセン病問題基本法が15日午後の参院本会議で全会一致で可決され、成立した。早ければ来年1月末にも補償金の支給が始まるとみられる。
(2)補償法は前文で、国による患者の隔離政策で家族も偏見と差別を受け、多大な苦痛と苦難を強いられてきたと指摘。そのうえで、国会と政府の反省とおわびを明記した。
(3)補償金は、元患者の親子、配偶者に1人あたり180万円、きょうだいや元患者と同居していたおい、めい、孫、ひ孫らに130万円を支給する。内縁の配偶者や連れ子のほか、戦前の台湾、朝鮮半島に住んでいた人なども対象とする。
(4)厚生労働省によると、対象者は約2万4千人、費用は約400億円と推計されている。
(5)改正法は、名誉回復の対象に元患者の家族を新たに加えるなどする。



by asyagi-df-2014 | 2019-11-15 19:07 | ハンセン病 | Comments(0)

ハンセン病問題基本法改正案が、12日の衆院本会議で全会一致で可決。

 時事ドットコムニュースは2019年11月12日、表題について次のように報じた。


(1)ハンセン病隔離政策で差別を受けた元患者家族に対し、最大180万円を支給する補償法案と名誉回復を図るハンセン病問題基本法改正案が、12日の衆院本会議で全会一致で可決された。参院に送付され、近く成立する。
(2)補償法案は前文で、偏見と差別の中で家族が負った苦痛に対し、国会と政府による「悔悟と反省」「深くおわび」と明記。支給額は元患者の親子や配偶者に180万円、きょうだいや同居のおいやめい、孫、ひ孫らに130万円。戦前の台湾や朝鮮半島の居住者や、判決で認められなかった米軍統治時代の沖縄にいた人も対象に含める。
(3)請求期限は法施行から5年で、厚生労働相が認定する。厚労省は対象を約2万4000人、支給総額は約400億円と試算している。




by asyagi-df-2014 | 2019-11-12 20:08 | ハンセン病 | Comments(0)

ハンセン病の家族補償法案の骨子案が了承される。

 朝日新聞は2019年10月25日、表題について次のように報じた。


(1)ハンセン病元患者の家族の補償の仕組み作りを進めている、二つの超党派の議員懇談会の合同総会が24日開かれ、補償額を1人あたり最大180万円などとする補償法案の骨子案を了承した。6月の熊本地裁判決で請求を棄却された人や裁判に参加していない人も補償する。今後、法案化の作業を進め、開会中の臨時国会での成立を目指す。
(2)骨子案によると、補償額は元患者の親子、配偶者が1人あたり180万円、きょうだいや元患者と同居していたおい、めい、孫、ひ孫らは130万円とする。元患者のハンセン病療養所の入所歴の有無は問わず広く補償する。判決で棄却された2002年以降に家族に元患者がいると認識した人や、療養所の入所時期によって家族の関係づくりが妨げられた被害を認められなかった人も等しく補償する。厚生労働省によると、対象者は推定2万~3万人になるという。
(3)提訴後に亡くなった約20人の原告に対しては、訴訟を通してハンセン病家族の問題解決を促したとして、補償金と同様の一時金を支払うことを省令で定める。
(4)補償金の請求期限は法施行から5年間。対象者は療養所の患者台帳や戸籍などの資料で確認。確認できない場合は、外部有識者による審査会が認定する。
(5)また、元患者の名誉回復のためのハンセン病問題基本法の改正案の骨子案も了承された。元患者の家族を新たに対象に加える。
(6)会見した、林力・原告団長(95)は「元患者の家族それぞれの人生があり、これで合点する人はいない。ただ、補償金が出ることは大変ありがたい。これを契機にハンセン病問題の社会啓発、教育内容の充実に全力を注ぎたい」と話した。
(7)弁護団共同代表の徳田靖之弁護士は「今回の成果は闘ってきた原告、支えてくれた市民のおかげ。ハンセン病問題の最終解決に向けての大きな一歩になった。これからは最大の目的である差別、偏見の解消のために国に総力を挙げた取り組みをさせていくという、最も困難な仕事に取り組んでいきたい」と述べた。(富田洸平、土肥修一)
(7)「国には、隔離政策を徹底したのと同じくらいの力を啓発に入れてほしい」。沖縄県に住む60代の女性原告は、そう願う。療養所に隔離された両親と1歳で離ればなれになった。6月の熊本地裁判決は、国の隔離政策で離散した親子らについて「家族関係の形成が阻害された」と認定した。だが、賠償の対象期間は沖縄以外が1960年以降なのに対し、沖縄は本土復帰の72年以降。女性は復帰前に両親と同居したため、離散についての慰謝料は認められなかった。「沖縄」を理由に区別されたことに不満が残った。「被害がなかったと言われたような気がしていて、ずっともやもやしていた。日本人として教育を受けてきたのに、なぜ今さら別に扱うのか」。それでも控訴せず、国と弁護団との議論を見守った。了承された骨子案で沖縄と他地域の区別がなくなったことに「良かった。国側にも真摯(しんし)に受け止めてもらえた」と喜んだ。
(8)元患者や家族への差別や偏見の解消は残る課題だ。「今後は元患者やその家族が住みやすい社会を作ってほしい。裁判で終わりという話ではない」。骨子案では、判決で訴えが退けられた原告や裁判に参加しなかった家族も補償の対象に。棄却された沖縄県の30代男性は「裁判に参加できなかった人も喜んでいると思う」と評価した。
(9)一方、補償額は最大180万円で、訴訟で求めた500万円とは開きがある。東北地方に住む50代の男性原告は「(受けた被害を考えれば)500万円でも足りないくらい。納得しろと言われても、すぐに『分かりました』とはならない」と複雑な胸の内を明かした。男性が1歳の頃、ハンセン病が再発した父は療養所に入り、家族ばらばらの生活を余儀なくされた。だが、判決では賠償額は抑えられた。父が療養所に近い自宅に週末だけ戻っていたためだ。「週末に帰ってきたら家族関係ができるのか」。受け入れられなかった。骨子案ではこうした区分もなくなった。額に不満は残るが、「首相が約束したとおり、国は本腰を入れて啓発に取り組んでほしい」と語った。(一條優太)


 確かに、大事なことは、「国には、隔離政策を徹底したのと同じくらいの力を啓発に入れてほしい」(朝日新聞)ということへの注視である。
 ともにすべき大事なことは、弁護団共同代表の徳田靖之弁護士は「今回の成果は闘ってきた原告、支えてくれた市民のおかげ。ハンセン病問題の最終解決に向けての大きな一歩になった。これからは最大の目的である差別、偏見の解消のために国に総力を挙げた取り組みをさせていくという、最も困難な仕事に取り組んでいきたい」(朝日新聞)、ということだ。




by asyagi-df-2014 | 2019-10-25 12:49 | ハンセン病 | Comments(0)

目をこらし、耳をすませること。

 目をこらし、耳をすませること。

朝日新聞(以下、「朝日」)はハンセン病家族訴訟がもたらしたものについて、このように説く。
「朝日」の社説、「ハンセン病と差別 理解と克服への道を探る」を考える。
「朝日」は、次のように示す。


(1)ハンセン病の元患者を隔離した国策をめぐり、政府はその家族も差別と偏見にさらされてきたことを認め、補償と名誉の回復に取り組むことになった。隔離政策の開始から110年余。2001年に過ちを認め、元患者への補償に乗り出してからも18年が過ぎた。なぜこんなにも長い年月を要したのか。
(2)愚かな政策の転換と償いが遅れた国を責めるだけでは、十分な解はみつかるまい。それを受け入れてきた社会のありようも問われている。


 だから、「元患者らが、そしてその声を受け止めた人たちが、さまざまに発信を続けている。目をこらし、耳をすませたい。」、と。
一つには、「芸術家とともに」。


(1)一周7キロ、高松市沖の大島は、療養所がある「隔離の島」として知られる。いまは3年に1度の現代アートの祭典、瀬戸内国際芸術祭のまっただ中だ。
(2)かつて元患者がつかっていた家屋に、11の作品が点在する。
(3)『Nさんの人生・大島七十年』は、絵本作家の田島征三さんの作。16歳での離郷、療養所で重症者の看護を命じられた強制労働、同じ病の女性との結婚と妊娠、中絶……。廊下を進むと、部屋ごとにNさんの苦難の歩みが絵巻物風に示される。
(4)美術家の山川冬樹さんが出品したのは「海峡の歌」だ。島外に出ることを禁じられた人々は、自由を求めて対岸へ泳いで渡ろうとした。山川さんは同じ海を泳ぎ、その姿を撮った映像を見せながら、子どもたちが朗読する短歌を流す。「飼い殺しなどと言はれて枠の中に生きて死にたる者ら甦(よみがえ)れ」
(5)社会から排除されてきた島に転機が訪れたのは、10年ほど前のことだった。瀬戸内一帯の島々で芸術祭が催されることになり、大島も参加を打診された。「人間を棄(す)ててきた島に価値はない。誰も来ない」。そんな声が強かったが、療養所自治会の森和男さんは「何があったか知ってもらうためにも、できるだけ多くの人に来てほしい」と考え、島の「開放」を進めた。
(6)芸術祭の作品には、隔離政策の告発のほか、人間としての誇りやつながりの再生を願う思いなどが様々に込められている。孤絶の世界で何を希望に生きてきたのか――。そう考えさせるような展示は、元患者との交流と対話を重ねた結晶だ。


  一つには、「『共感』促す試み」。


(1)次々と訪れる観光客には、隔離の記憶を刻む島だと知らない人も多い。だが元患者の人生を映した作品に触れ、故郷を失った人の納骨堂や強制中絶で命を奪われた胎児を悼む碑をガイドと歩き、共感が生まれる。「選択肢のない人生ってどういうものか考えた」(東京都の32歳男性)。「支え合い、生き抜いた人を尊敬する」(兵庫県の31歳男性)。何度も足を運ぶ大阪市の女性(41)は自宅近くで「語る会」を開き、岡山市の男性(49)はボランティアでガイドを務めるようになった。
(2)大島以外でも、垣根を越えていく、さまざまな試みがある。
(3)岡山県では、療養所がある長島などの島々をめぐるクルージングツアーが催されている。高齢化が進む元患者らが、問題を風化させまいと主催する。長島に残る収容施設や監房跡などを学芸員とまわる。構えずに参加してもらおうと牡蠣(かき)で知られる人気の港を発着場所にした。9月までに7回あるツアーは、すでに予約でいっぱいだ。
(4)全国に13ある国立療養所の大半には資料館がある。その中心が、東京都東村山市の国立ハンセン病資料館だ。関連する映画や絵画、小説、音楽などがつくられてきたことを意識し、それぞれの分野の愛好家を呼び込む企画展やワークショップを開く。今春には元患者らの話を動画投稿サイトで配信し始めた。


 一つには、「一人ひとりが動く」。


(1)ハンセン病をめぐっては、特効薬の開発と普及などで1960年ごろには隔離は不要とされていたのに、打ち切りは96年まで遅れた。元患者への補償へと舵(かじ)を切った01年以降、人権に関する学習活動や啓発事業が行われてきたが、家族は置き去りにされた。
(2)6月末の熊本地裁判決が元患者の家族への賠償を命じた後、安倍首相は控訴を断念し、家族に謝罪した。今後、元患者への補償金支給と名誉回復を掲げる二つの法律が改正され、家族も被害者だと位置づけられる見通しだ。
(3)ただ、それだけで差別と偏見がなくなるわけではない。元患者は隔離によって個人の尊厳を著しく傷つけられた。その家族は就学や就職、結婚などを妨げられた。そうした「人生被害」は想像を絶する。
(4)隔離政策を推進した国が厳しく批判されるのは当然だが、元患者と家族を追い込んだのは地域の住民だったことを忘れてはならない。


 「朝日」は、最後に、「目をこらし、耳をすませること。」とは、「ハンセン病にまつわる歴史を知ろうと、一歩を踏み出す。差別や偏見について考え、自らに問う。一人ひとりのそうした取り組みが、過ちを繰り返さないための礎となる。」、ということだよと。



by asyagi-df-2014 | 2019-08-22 09:51 | ハンセン病 | Comments(0)

内閣総理大臣談話と政府声明を受けての声明。

2019年7月12日、安倍晋三政権は、「ハンセン病家族国家賠償請求訴訟の判決受入れに当たっての内閣総理大臣談話」(以下、「談話」)と「政府声明」(以下、「声明」)を公表した。
ハンセン病家族訴訟原告団とハンセン病家族訴訟弁護団(以下、「原告団弁護団)は同日、「談話」及び「声明」に対して、「原告団弁護団」としてそれぞれ声明を明らかにした。
安倍晋三政権からの「談話」と「声明」を通して、まず最初に感じさせられるのは、「何とまあ、この国の権力者達の姑息さはどうにかならないのか。」、ということである。
 何が姑息なのか。
原因は、「談話」で止めておけばいいものを、「声明」で「国家賠償法、民法の解釈の根幹に関わる法律上の問題点があることを当事者である政府の立場として明らかにする」、と言わないではおれない思想の貧しさにある。
「談話」及び「声明」と、そのことに対しての「原告団弁護団」の声明で、このことを整理する。


1.「談話」と声明


 内閣総理大臣談話を要約すると次のようになる。


(1)今回の判決では、いくつかの重大な法律上の問題点がありますが、極めて異例の判断で、敢えて控訴を行わない旨の決定、政府としては、本判決の法律上の問題点について政府の立場を明らかにする政府声明を発表し、本判決についての控訴は行わない。
(2)どのように責任を果たしていくべきか、どのような対応をとっていくべきか、真剣に検討を進めてきた。                              (3)ハンセン病対策については、かつて採られた施設入所政策の下で、患者・元患者の皆様のみならず、家族の方々に対しても、社会において極めて厳しい偏見、差別が存在したことは厳然たる事実であり、この事実を深刻に受け止める。
(4)患者・元患者とその家族の方々が強いられてきた苦痛と苦難に対し、政府として改めて深く反省し、心からお詫びする。
(5)確定判決に基づく賠償を速やかに履行するとともに、訴訟への参加・不参加を問わず、家族を対象とした新たな補償の措置を講ずることとし、このための検討を早急に開始する。
(6)関係省庁が連携・協力し、患者・元患者やその家族がおかれていた境遇を踏まえた人権啓発、人権教育などの普及啓発活動の強化に取り組む。
(7)家族の方々が地域で安心して暮らすことができる社会を実現していく。


 これを受けて、声明は、次のように評価している。



本日,内閣総理大臣は,ハンセン病問題について早期かつ全面的な解決を図 るべく,去る
(1)6月28日言い渡された熊本地方裁判所のハンセン病歴者の家族 に対する国の責任を認める判決に対し控訴せず、訴訟への参加不参加を問わず、ハンセン病患者家族を対象とする新たな補償措置を講じることとしている。
(2)このための検討を早急に開始するとの談話を公表した。            (3)この談話によって、内閣総理大臣による心から のお詫びのもと、国がハンセン病患者家族について全員一律救済を目指すこと が明らかにされ、ハンセン病患者家族が受けた被害を償うに足りる賠償が行な われるための道筋が示されたものとして高く評価する。
(4)今後は、謝罪広告等による名誉回復措置とハンセン病患者家族全員を対象とする立法措置等による全員一律救済の実現はもとより、国の責任を踏まえたハ ンセン病問題の全面解決を図るために、厚生労働省、法務省および文部科学省による横断的かつ重層的な差別・偏見解消に向けた施策の実施等が実現される必要がある。
(5)これらの施策ないし措置は、ハンセン病患者家族の「人生被害」を回復することを目的とするものでなければならないし、何より原告団・弁護団との協議に基づき、その意向を十分に踏まえたものでなければならない。そのために、内閣総理大臣による原告団との面会を速やかに実現するとともに、原告団・弁護団との継続的な協議の場を早急に設定すべきである。
(6)政府は、本判決の法律上の問題点として、消滅時効の起算点の認定が判例違反であるなどとする声明を公表しているが、こうした見解は、本判決の論旨を正しく理解しないものであり、本判決の法律的な判断は何ら揺らぐものではないし、本判決には政府の懸念するような国民の権利義務関係に影響を及ぼす内容は含まれていないものと考える。


2.「声明」と声明


 政府は、あえて、「本判決には、次のような国家賠償法、民法の解釈の根幹に関わる法律上の問題点があることを当事者である政府の立場として明らかにする」として、政府声明を公表した。
この「声明」の指摘は、次のものである。


1 厚生大臣(厚生労働大臣)、法務大臣及び文部大臣(文部科学大臣)の責任について(1) 熊本地方裁判所平成13年5月11日判決は、厚生大臣の偏見差別を除去する措置を講じる等の義務違反の違法は、平成8年のらい予防法廃止時をもって終了すると判示しており、本判決の各大臣に偏見差別を除去する措置を講じる義務があるとした時期は、これと齟齬しているため、受け入れることができません。
(2) 偏見差別除去のためにいかなる方策を採るかについては、患者・元患者やその家族の実情に応じて柔軟に対応すべきものであることから、行政庁に政策的裁量が認められていますが、それを極端に狭く捉えており、適切な行政の執行に支障を来すことになります。また、人権啓発及び教育については、公益上の見地に立って行われるものであり、個々人との関係で国家賠償法の法的義務を負うものではありません。

2 国会議員の責任について
 国会議員の立法不作為が国家賠償法上違法となるのは、法律の規定又は立法不作為が、憲法上保障され又は保護されている権利利益を合理的な理由なく制限するものとして憲法の規定に違反するものであることが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠る場合などに限られます(最高裁判所平成27年12月16日大法廷判決等)。本判決は、前記判例に該当するとまではいえないにもかかわらず、らい予防法の隔離規定を廃止しなかった国会議員の立法不作為を違法としております。このような判断は、前記判例に反し、司法が法令の違憲審査権を超えて国会議員の活動を過度に制約することとなり、国家賠償法の解釈として認めることができません。

3 消滅時効について
 民法第724条前段は、損害賠償請求権の消滅時効の起算点を、被害者が損害及び加害者を知った時としていますが、本判決では、特定の判決があった後に弁護士から指摘を受けて初めて、消滅時効の進行が開始するとしております。かかる解釈は、民法の消滅時効制度の趣旨及び判例(最高裁判所昭和57年10月15日第二小法廷判決等)に反するものであり、国民の権利・義務関係への影響が余りに大きく、法律論としてはこれをゆるがせにすることができません。


 この政府声明による指摘を受けて、「原告弁護団」は、①らい予防法廃止後の国の責任を認めたこと、②国会議員の立法不作為に関する最高裁判例に違反すること、③消滅時効に関する最高裁判例に違反することの三つについて、次のように反論した。


1.らい予防法廃止後の国の責任を認めたこと

「長きにわたって違憲の隔離政策を継続してきた国が、らい予防法廃止後も、ハンセン病患者家族を隔離政策の被害者として位置付けることなくその「人生被害」を放置してきたことは争いようのない事実であり、本判決がハンセン病に対する偏見差別を除去するためには国の総力をあげての取り組みが必要であることを明らかにしたものであるにも関わらず政府がこれを否定することは、偏見差別を除去するために啓発活動に取り組んできた国のこれまでの基本姿勢に反すると言わざるを得ない。そもそも、平成13年熊本地裁判決は、厚生大臣の偏見差別を除去する措置を講じる等の義務違反の違法が平成8年のらい予防法廃止時をもって終了するとは判示しておらず、本判決は平成13年熊本地裁判決と何ら齟齬するものではない。

2.国会議員の立法不作為に関する最高裁判例に違反すること            

「本判決は、国会議員の立法不作為に関する最高裁判例の判断枠組に従い、らい予防法の隔離規定を廃止しなかったことについて国会議員の不作為の国家賠償法上の違法性を認める結論を導いているものであり、何ら最高裁判例に違反する点のない正当な判断である。声明は、最高裁判例の判断枠組を十分に理解していないものというほかない。」

3.消滅時効に関する最高裁判例に違反すること

「本判決は、消滅時効の起算点に関する最高裁判例に従い、行政 機関の長や国会議員の不法行為について損害賠償請求を行なうという本件訴訟の特殊性を踏まえ、損害および加害行為を認識することが著しく困難であったと判断したうえで、原告らが訴訟を提起しうる状態になったのは平成27年9月9日の鳥取訴訟判決以降に弁護 士から指摘があった後であったと判断したものであり、最高裁判例に違反しない正当な判断である。政府声明は、本判決の論旨を曲解するものであると言わざるを得ない。そもそも、本判決の指摘するハンセン病患者家族が差別・偏見を受けるような一種の社会構造の存在を前提とすれば、いかなる理由によっても消滅時効は成立し得ないはずであって、本判決の消滅時効に関する判断はむしろ当然の帰結である。」


 声明は、最後に次のように断じている。


「政府声明は、最高裁判例や本判決の論旨を正しく理解しない不当なものであると言わざるを得ず、本判決の法律的な判断は何ら揺らぐものではないし、本判決には政府の懸念するような国民の権利義務関係に影響を及ぼす内容は含まれていないものと考える。」



by asyagi-df-2014 | 2019-07-20 06:42 | ハンセン病 | Comments(0)

原告の思いよとどけ!-ハンセン病家族訴訟で、国の責任認める初の判決。(7)

 毎日新聞は2019年7月9日、「国は控訴を断念する方針を表明」、と次のように報じた。


(1)安倍晋三首相は9日午前、ハンセン病元患者家族への差別に対する国の責任を認めた熊本地裁判決を受け入れ、控訴を断念する方針を表明した。首相官邸で根本匠厚生労働相、山下貴司法相らと協議後、記者団に「筆舌に尽くしがたい経験をされたご家族のご苦労をこれ以上長引かせるわけにはいかない」と述べた。隔離政策が家族への差別も助長したと認定して初めて家族への賠償を命じた熊本地裁判決が確定する。
(2)熊本地裁判決は、世界保健機関(WHO)が隔離を否定した1960年以降も隔離政策を廃止しなかった厚労相らの義務違反などを認定。「隔離政策以前とは異質な家族への排除意識を生んだ」として、家族への偏見差別を除去する国の責任を認め、541人に1人当たり143万~33万円を支払うよう国に命じた。【杉直樹】


 このハンセン病家族訴訟を考えるために、ハンセン病家族訴訟原告団・ハンセン病家族訴訟弁護団によって出された「全面解決要求書」(2019年7月2日)と 「政府の控訴断念決定を受けての声明」(2019年7月9日)を取りあげる。
なお、「全面解決要求書」(以下「要求書」)は、7月2日に議員会館で開催された「ハンセン病問題の最終解決を進める国会議員懇談会」で提出されたものであり、「政府の控訴断念決定を受けての声明」(以下、「声明」)は政府の控訴断念決定を受けてのものです。
この「要求書」が突きつけているものは、1「責任の明確化と謝罪」、2「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律の改正」、3「恒久対策」、の要求です。
まず、第1の「責任の明確化と謝罪」については、「ハンセン病隔離政策が病歴者本人のみならずその家族らに対しても違法な 人権侵害であったこと、今日に至るまでなお、隔離政策による家族の被害を 認めず、その回復のための施策を講じなかったことにつき、責任を認め、真摯に謝罪すること。」、とされています。
第2の「名誉回復措置と損害賠償」については、「謝罪広告などにより、広く社会に対し、ハンセン病歴者家族らの名誉回復措置を採るとともに、家族らが受けた被害を償うに足りる賠償・補償をおこなうこと。」、とされています。
 第3の「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律の改正」みついては、「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律につき、①家族らも隔離政策の 被害者であったことを明確化する、②家族の被害回復をハンセン病問題に関 する施策の目的として位置付ける、③家族らに対する差別の禁止を明文化す る、④家族らのハンセン病問題に関する政策形成過程への参加を保障すると いった改正を行うこと。」、とされています。
 最後の第4の「恒久対策」については、差別・偏見の解消に向けた施策について、法務省、文部科学省も含め、国の行っているハンセン病問題の啓発活動全般につき、①国の加害責任を繰り返し明らかにする、②病歴者本人のみなら ず家族の被害を前提とする方向で、抜本的な見直しを行うこと。また、家族関係回復に向けての施策家族関係の回復に向けて、①それを目的とする社会福祉士や精神保健福祉士を、各療養所及び各都道府県に配置する等家族関係回復を促進するための仕組みを構築すること、②ハンセン病隔離政策による被害から立ち直ることを目的とする家族らのセルフヘルプグループの活動を援助する等の施策を講ずること。さらに、継続的な協議について、ハンセン病問題対策協議会に家族原告団代表の参加を認め、家族被害の解 消をこの協議会のテーマの一つとして位置付けること、とされています。
             

 さて、今回の国の控訴を断念する方針を表明を受けて、ハンセン病家族訴訟原告団・ハンセン病家族訴訟弁護団は、次のように声明を出しました。


(1)本日,安倍晋三総理大臣は、去る6月28日言い渡された、熊本地方裁判所のハンセン病歴者の家族に対する国の責任を認める判決に対し、政府として控訴をしない旨決定したことを表明した。
(2)同判決は、らい予防法及びハンセン病患者隔離政策により、ハンセン病家族が偏見差別を受ける地位におかれた被害及び家族関係形成が阻害される被害をこうむったことを認めるとともに、国会議員,厚生労働大臣(厚生大臣)、文部大臣(文部科学大臣)ならびに法務大臣の差別偏見解消義務等の作為義務違反を厳しく断罪したものである。
(3)安倍総理大臣は、かかる熊本地裁判決を深く受け止め,「筆舌に尽くしがたい家族のご苦労を長引かせるわけにはいかない」として控訴を断念したもので、われわれ原告団及び弁護団は、この決定によって、国のハンセン病家族に対する責任が確定したものと評価するところである。
(4)今後、われわれ原告団・弁護団は、確定した国の責任をふまえたハンセン病問題の全面解決をめざし、偏見差別の根本的解消に向けた国全体での取り組みを求めるとともに、その第一歩として、安倍総理が家族原告と面談し被害を直 接聴く場をもうけること、安倍総理が政府を代表して一人一人の心に響く謝罪を行うこと、ならびに被害者全員に対する一括一律の被害回復制度の創設を、早急に実現することを求めるものである。
(5)最後に、熊本地裁の勝訴判決から政府の控訴阻止にいたるまで絶大なる支援と協力をいただいた、市民、国会議員、ハンセン病回復者のみなさまに心より御礼を申し上げるとともに、ひきつづき、ハンセン病問題の全面解決のためのご理解とご協力をお願いする次第である。


 確かに、2019年6月28日の判決と7月19日の国の控訴を断念する方針の表を受けて、受け取るものは次のものである。
 『ハンセン病問題の全面解決』のために何ができるかのか、何をしなければならないのかを、一人一人がじっくり見つめ直し、一人一人が全面解決のために動く。




by asyagi-df-2014 | 2019-07-13 06:30 | ハンセン病 | Comments(0)

ハンセン病家族訴訟で、国の責任認める初の判決。(6)

 毎日新聞は2019年7月9日、「国は控訴を断念する方針を表明」、と次のように報じた。


(1)安倍晋三首相は9日午前、ハンセン病元患者家族への差別に対する国の責任を認めた熊本地裁判決を受け入れ、控訴を断念する方針を表明した。首相官邸で根本匠厚生労働相、山下貴司法相らと協議後、記者団に「筆舌に尽くしがたい経験をされたご家族のご苦労をこれ以上長引かせるわけにはいかない」と述べた。隔離政策が家族への差別も助長したと認定して初めて家族への賠償を命じた熊本地裁判決が確定する。
(2)熊本地裁判決は、世界保健機関(WHO)が隔離を否定した1960年以降も隔離政策を廃止しなかった厚労相らの義務違反などを認定。「隔離政策以前とは異質な家族への排除意識を生んだ」として、家族への偏見差別を除去する国の責任を認め、541人に1人当たり143万~33万円を支払うよう国に命じた。【杉直樹】


 また、2019年7月10日のこのことに関する各紙の主張は、次のものである。



(1)琉球新報社説-家族訴訟控訴せず 国は謝罪し被害者救済を
(2)朝日新聞社説-ハンセン病 差別との決別を誓う時
(3)毎日新聞社説-ハンセン病控訴せず 被害救済優先を評価する
(4)大分合同新聞論説-ハンセン病訴訟控訴せず 救済の道筋早急に示せ
(5)北海道新聞社説-ハンセン病訴訟控訴せず 救済の道筋早急に示せ
(6)河北新報社説-ハンセン病家族訴訟/国は救済と偏見解消を急げ
(7)岩手日報論説-ハンセン病訴訟 「人権重視」への転機に
(8)信濃毎日新聞社説-ハンセン病裁判 控訴見送りは当然として
(9)福井新聞論説-ハンセン病「控訴せず」 救済の道筋を早急に示せ
(10)神戸新聞社説-ハンセン病救済/首相は責任認めて謝罪を
(11)南日本新聞社説-[ハンセン病] 幅広く家族救済の道を
(12)東京新聞社説-ハンセン病救済 「人間回復」へ本腰を
(13)読売新聞社説-ハンセン病訴訟 控訴断念を差別解消の契機に
(14)佐賀新聞論説-ハンセン病訴訟控訴せず 救済の道筋早急に示せ


 この一連の主張の中で感じ取るものは、「ハンセン病家族の救済の道とはどういうものが必要なのか」ということであり、このことを日本という国の一人一人がきちんと把握することにあるということである。
 このことについて、社説・論説から見てみる。

(1)琉球新報社説
1.ハンセン病元患者の家族への人権侵害に政府がようやく目を向けた。国は誠意をもって被害者を救済すべきだ。
2.首相は「筆舌に尽くしがたい経験をされたご家族の苦労をこれ以上、長引かせるわけにはいかない」と述べた。その言葉が真実であれば、全ての被害者に対し、政策による幅広い救済措置を講じるのが筋であろう。まずは政府を代表し、全ての元患者とその家族に謝罪してほしい。
3.熊本地裁判決には問題もある。沖縄の米統治下の期間に家族が受けた損害については国の責任を認めていないのだ。立法措置を含めた解決策が不可欠だ。
4.偏見は今も残る。家族訴訟の原告の大半が匿名なのはそのためだ。首相が自ら先頭に立つなどして、ハンセン病は怖い病気ではないと広く啓発し、元患者らの名誉回復に全力を挙げるべきだ。旧優生保護法下の強制不妊手術を巡る国家賠償請求訴訟が全国の地裁、高裁で争われている。誤った国策のせいで人権が蹂躙された構図は同じだ。国はこれらの訴訟でも自らの責任を認め、被害者の救済に乗り出すべきだ。政権の人権感覚が問われている。


(2)朝日新聞社説
1.裁判の原告側は、首相との面会と謝罪を求めている。真摯(しんし)に対応すべきだ。そして、救済の具体策作りを急がねばならない。判決が確定すれば500人余りに総額3億7千万円が賠償されるが、それ以外の家族にも広く金銭で補償するための制度が必要になる。
2.今回の裁判の原告も、16年に提訴に踏み切るまで行動を起こせず、大半が匿名だった。その意味を一人ひとりが考えたい。ハンセン病だけではない。社会にはさまざまな差別や偏見がある。それらと決別し、根絶していくことを改めて誓う。控訴見送りを、その契機としなければならない


(3)毎日新聞社説
1.法治国家である以上、すべてが政治判断で乗り越えられるものではない。しかし、国が負うべき責任や被害者が受けた人権侵害の重大さに向き合う必要がある。
2.社会正義の実現という法の趣旨に照らせば、国は主張の一貫性を犠牲にしてでもこの問題に終止符を打ち、被害者救済を最優先にすべきだ。
3.救済策に向けてはハンセン病問題基本法を改正し、元患者の家族も対象に明記する必要がある。その際、どのような基準で範囲を定めるのか。高齢化が進む中、被害家族がどのくらいいるかもはっきりしない。


(4)大分合同新聞・北海道新聞社説・佐賀新聞論説・福井新聞論説
1.ハンセン病問題の全面解決に一歩近づいたのは間違いない。国策による重大な人権侵害に国は正面から向き合い、謝罪と補償はもちろん、生活再建支援など救済の道筋を早急に示すべきだ。
2.原告団などに心からの謝罪を行う必要がある。政府は「首相の政治決断」を強調するが、いまだ国の責任や謝罪には言及していない。そこをあいまいにしたまま形式的に救済を進めても、全面解決は望むべくもないだろう。


(5)河北新報社説
1.国は人権侵害の責任を重く受け止め、家族に謝罪し、訴訟に参加しなかった家族も含め、救済への道筋を速やかに示す必要がある。国会も、元患者の社会復帰支援などを定めたハンセン病問題基本法に家族も明記するなど改正が求められるだろう。
2.訴訟の弁護団は国に対し、患者や元患者と家族の関係回復に向けた協議を行うよう要請している。隔離政策で壊れた家族のつながりが編み直されるよう、今後の取り組みに期待したい。
3.国の隔離政策などが偏見差別を生む社会構造をつくったとはいえ、患者や家族を孤立させ、学校や地域から排除してきた社会全体の責任も問われよう。私たち一人一人が自らの問題として向き合うことが欠かせない。


(6)岩手日報論説
1.裁判で勝っても、偏見や差別が一挙に解消されるわけではない。あくまでスタートラインに立ったということだ。
2.ハンセン病を皮切りに、さまざまな病気や障害、偏見や差別の問題に目を向け、幅広く救済する政治を実現していく。控訴断念は、その転機になるか。政治判断の行く末を注視したい。


(7)信濃毎日新聞社説
1.矛盾を取り繕うのでなく、国の責任について明確な姿勢を示さなければならない。
2.控訴の見送りは出発点にすぎない。広く家族の被害への補償、救済を図る制度や施策をどう具体化していくか。政府、国会の今後の取り組みこそが問われる。元患者の生活保障などを国に義務づけたハンセン病問題基本法に家族を被害者として明記することを原告、弁護団は求めてきた。判決の確定を踏まえ、政府に協議の場を設けるよう訴える声が上がっている。何よりまず真摯(しんし)に当事者と向き合うことが欠かせない。


(8)神戸新聞社説
1.まず被害を招いた国の法的責任を明確に認め、謝罪する。それが、全面解決に向けて首相の果たすべき役割ではないか。
2.救済対象となる被害をどう認定するか。賠償額の算定基準をどうするか。早急に練り上げるべき課題は山積する。国会の責任も大きい。家族も含めた全面救済に向けて、議員立法で2009年に施行されたハンセン病問題基本法の改正なども検討を急ぐ必要がある。国を挙げて名誉回復や経済的支援の施策を急がねばならない。


(9)南日本新聞社説
1.国は、人権が著しく侵害された原告への補償と生活再建支援など救済策を早急に打ち出さなければならない。
2.ただ、差別被害を受けながら提訴していない家族も多いとみられる。こうした家族の支援も視野に入れた救済策が求められる。
3.元患者本人の訴訟では2001年に熊本地裁判決が確定し、他の地裁でも元患者との和解が順次成立した。判決内容と同じ基準で国が補償金を支払うハンセン病補償金支給法が施行され、隔離施設に入所した元患者には期間に応じて補償金が支払われた。また、非入所者や遺族は訴訟を起こして和解すれば和解一時金が支払われる仕組みがつくられた。こうした例を参考に、国は被害に遭った家族の掘り起こしに努めるとともに、幅広く救済できる基準を設けるなど道筋を付けることが欠かせまい。
4.安倍首相は原告らと直接向き会って謝罪し、決断の経緯などを丁寧に説明する必要がある。ハンセン病元患者の家族は、いわれなき差別に長年苦しめられてきた。正確な知識で問題への理解を深め、偏見と差別解消に社会全体で取り組んでいかなければ全面解決とは言えない。


(10)東京新聞社説
1.今回はさらに対策を加速させ救済と差別解消に本腰を入れねばならない。原告の家族らは首相との面会と謝罪を求めている。首相が本当に隔離政策は誤っていたと考えるのなら、まず面会して被害の訴えに耳を傾けるべきだ。今後は具体的な救済策を検討することになるが、被害者全員を救済の対象にする必要がある。
2.家族らは、救済策を話し合う協議の場の設置と一律の救済を求めている。被害者らが納得できる救済策をつくらねば意味がない。家族らも救済の対象に位置付ける法整備など実効性ある枠組みをつくることが大切である。
3.偏見や差別は社会が許してきた面もある。被害者の尊厳を取り戻す努力は社会全体に求められる。私たち自身の責任であるとの自覚を持ちたい。


(11)読売新聞社説
1.控訴の断念で、原告への総額3億7600万円の賠償義務が確定する。今後の課題は、裁判に参加しなかった家族の救済になる。原告以外の家族を救済する場合、元患者とどのような関係にあった人を対象にするのか。差別を受けたことをどう認定するか。救済の枠組みを作る必要がある。
2.2008年に成立したハンセン病問題解決促進法は、元患者の名誉回復や福祉の充実をうたった。原告らは、この法律を改正して家族も被害者だと明記し、被害回復を行うよう求めている。経済的な補償だけでなく、社会から差別をなくす施策を進めることも政府の責務となろう。
3.今回の訴訟を通じて明らかになったのは、家族への差別が、過去だけでなく、現在も続く実態だ。結婚での差別や、職場での嫌がらせに苦しむ人は少なくない。差別を社会が許してきたという現実に向き合わねばなるまい。関係省庁が正しい知識の普及や偏見の払拭ふっしょくに取り組むのはもちろん、人権を尊重する意識を一人ひとりが持つことが大切である。


 さて、まず最初に確認することは、「控訴の見送りは出発点にすぎない。広く家族の被害への補償、救済を図る制度や施策をどう具体化していくか。政府、国会の今後の取り組みこそが問われる。」(信濃毎日新聞)、ということである。それは、「国を挙げて名誉回復や経済的支援の施策を急がねばならない。」(神戸新聞)、との指摘に尽きる。
 今回の政府の控訴断念を生かしていくためには、大きな括りで言えば、「ハンセン病だけではない。社会にはさまざまな差別や偏見がある。それらと決別し、根絶していくことを改めて誓う。控訴見送りを、その契機としなければならない。」、という理念を持たなければならないこということである。
 そして、まずは、「社会正義の実現という法の趣旨に照らせば、国は主張の一貫性を犠牲にしてでもこの問題に終止符を打ち、被害者救済を最優先にすべきだ。」(毎日新聞)、ということに、政府及び国民は直ちに取り組まなければならない。
 具体的には、「原告団などに心からの謝罪を行う必要がある。政府は「首相の政治決断」を強調するが、いまだ国の責任や謝罪には言及していない。そこをあいまいにしたまま形式的に救済を進めても、全面解決は望むべくもないだろう。」(大分合同新聞等)との把握が重要になる。
もちろん、そのためには、「国は人権侵害の責任を重く受け止め、家族に謝罪し、訴訟に参加しなかった家族も含め、救済への道筋を速やかに示す必要がある。国会も、元患者の社会復帰支援などを定めたハンセン病問題基本法に家族も明記するなど改正が求められるだろう。」(河北新報)ということを行う必要がある。
また、「訴訟の弁護団は国に対し、患者や元患者と家族の関係回復に向けた協議を行うよう要請している。(河北新報)」との指摘のように「協議」の場が設定されなければならない。
 最後に、「ハンセン病家族の救済の道とはどういうものが必要なのか」を考え、実践していくためには、「国の隔離政策などが偏見差別を生む社会構造をつくったとはいえ、患者や家族を孤立させ、学校や地域から排除してきた社会全体の責任も問われよう。私たち一人一人が自らの問題として向き合うことが欠かせない。」(河北新報)、との日本国民の自覚が最も重要になる。




by asyagi-df-2014 | 2019-07-12 17:44 | ハンセン病 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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