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平成の大合併の検証が必要だ。

 改めて、平成の大合併の検証が必要だ、と感じている。
合併の嵐に大きく巻き込まれた大分の地で、吸収合併される側に居た身として、このことを強く感じる。
西日本新聞(以下、「西日本」)は、「合併自治体、特例切れ財政危機 大分・杵築は再生団体回避へ緊急策」(2019年12月7日)、「『平成の大合併』特例切れ財政苦慮…自治体の危機感」(2019年12月9日)、と続けて記事を掲載した。
この「西日本」の記事から、平成の大合併の意味を考える。
まず、「西日本」は次のように報告する。


(1)「平成の大合併」で誕生した九州の自治体は合併特例の期限切れを見越し、基金の積み立てや経費削減などに取り組む。ただ人口減や少子高齢化などで多くの自治体で税収アップは期待できず、予算編成は地方交付税に頼る構造は変わらない。将来の安定した財政運営へ自治体の危機感は大きい。
(2)「合併算定替えの終了で財政運営が厳しくなることは分かっていた。基金をしっかり積み上げてきた」。熊本県あさぎり町の財政担当者はそう話す。
(3)2003年に旧免田町など5町村が合併。福岡県宗像市とともに大合併の九州第1号。優遇措置は14年度から段階的に削減され、19年度に終了。削減前、56億円の交付税は44億円に減った。町は09年ごろから基金を積み立て、合併時14億円ほどだった財政調整基金は50億円台に。ただ交付税が減ったこともあり、基金を取り崩しながら予算編成せざるを得ないという。
(4)05年に1市5町が合併した長崎県諫早市。合併時約1100人いた職員を874人に削減し、旧町部の市立幼稚園の廃止や学校給食の民間委託、公共施設を自治会に無償で払い下げるなどして経費削減を進める。市財政課は「予算編成が厳しくなるのは間違いない。ただ、現時点で大規模なサービス見直しは検討していない」と話す。
(5)総務省は14年度から、合併自治体に当初想定していなかった財政支出がかさんでいるとして、旧市町村部の支所や消防署・出張所、保健センターなどの経費を交付税に反映している。
(6)九州大大学院の田中孝男教授(行政法)は「合併自治体は財政運営を含む新市建設計画をつくっている。その通りか、財政見通しが甘かったのかなど徹底した検証をすべきだ。自分たちの町を維持していくには何が必要で何を削減するかなど、住民も交えた議論が必要だろう」と指摘した。 
(郷達也、泉修平)
(7)「合併算定替え:合併後10年間は合併前の市町村ごとに算定した交付税の総額が配分される優遇策。合併の11年後から段階的に減額され、16年後には一つの自治体として算定された額となる。国が合併を促すための優遇策はほかに公共施設整備や旧地域間の格差是正を図る事業費の95%に充当でき、国が返済額の70%を負担する合併特例債がある。」


 特に、「西日本」は、財政危機に陥った大分県杵築市の実態を次のように報告する。


(1)大分県杵築市は6日、市の財政が著しく悪化しており、現状の歳出が続くと2023年度には国の財政再生団体に転落する恐れがあることを明らかにした。合併に伴う地方交付税の優遇措置(合併算定替え)の縮減による歳入の減少と歳出の増加が主な原因。20年度から人件費削減や組織のスリム化など緊急の財政対策に取り組み、年間10億円程度の歳出抑制を目指す。
(2)杵築市は05年に旧杵築市、山香町、大田村が合併し誕生。15年度をもって優遇措置は段階的に削減され、18年度の地方交付税は15年度比で3億7664万円減った。中学校や図書館の改築などの大型事業を短期間に集中したことも財政悪化に追い打ちをかけた。一般財源に占める義務的経費の割合を示す経常収支比率は18年度決算で100・9%と初めて100%を突破。適正水準とされる80%前後を大きく上回った。
(3)19年度当初予算は、市の貯金に当たる財政調整基金(18年度末残高31億7698万円)から13億7千万円を取り崩して対応したが、歳入の劇的な増加は見込めず、19年度当初予算と同程度の歳出が続くと年間約14億円の単年度赤字が蓄積し、基金は2年後に枯渇するという。
(4)市は22年度末に基金残高の10億円確保を目指す。20年1月から市長の給与を30%、副市長と教育長は20%カットし、職員給与の減額も市職員連合労働組合と交渉中。20年度からは現在の32課を25課に統廃合し、課長ポストを減らすことで役職手当を圧縮する。233人いる臨時・嘱託職員は34人減らす。市主催のイベントや啓発事業は原則、廃止・休止を前提に見直す方針で、今月中に緊急財政対策を策定するという。
(5)財政再生団体になると、予算編成や起債は国の管理下で行われる。公共料金引き上げや、自治体独自の事業や補助金の廃止などが迫られ、行政サービスが低下、住民生活に多大な影響が出る。現在は北海道夕張市のみ。
(稲田二郎)


 かって、財政再生団体に陥った大分県竹田市で勤務した経験がある身として、今回の平成の大合併の検証の必要性を強くする。



by asyagi-df-2014 | 2019-12-15 07:05 | 持続可能な社会 | Comments(0)

マイナンバーカード。

 朝日新聞(以下、「朝日」)社説の題目に、今さらながらも振り返る。
 「朝日」は2019年12月2日、「マイナンバー カード普及を焦る不毛」、とした。
この社説に目が行くのは、マイナンバーカードと「不毛」がすぐに結びつくから。
今回、「朝日」は、「マイナンバーカードは何のために持つのか。」、とまずは掲げる。
「朝日」の「必要性を多くの国民が実感できないなか、政府はカードを一気に広げようと、前のめりになっている。しかし、予算をばらまき、半ば強引に取得を迫るような手法は、看過できない。」、との二つの疑問を指摘する。


(1)一つは、1人最大5千円分のポイント還元策だ。いわゆるデジタル版の商品券で、Suica(スイカ)やPayPay(ペイペイ)などのキャッシュレス決済で使える。消費増税後の景気対策の一つと位置づけ、昨年から実施ありきで制度設計が進んできた。来年9月から7カ月間の期間限定で、カードを取得して専用サイトでIDなどを設定すれば、所得や年齢に関係なく、恩恵を受けられる。ただしキャッシュレスで決済することが条件だ。約4千万人分、2千億円以上もの予算が投じられる見込みだが、消費刺激策としての効果ははっきりしない。
(2)もう一つは、「公務員には今年度中にカードの取得を推進する」との閣議決定の方針のもと、国家公務員に行われている調査だ。公務員ではない被扶養者も対象に、記名式でカード取得の有無や、申請しない場合はその理由を尋ね、上司に提出させている。人権侵害に当たらないだろうか。


 また、「朝日」は、マイナンバーカードの実態を指摘する。


(1)12けたのマイナンバーはすでに国民全員に割り当てられている。顔写真つきのカードの交付は本人の申請に基づき、2016年1月に始まった。本人確認ができる電子証明書もついており、政府は「安全・安心で利便性の高いデジタル社会の基盤」と位置づけ、23年3月末には「ほとんどの住民が保有」すると想定する。
(2)しかしこれまでの発行枚数は1800万枚超と、普及は進まない。昨秋の内閣府の調査でも「必要性が感じられない」を選んだ人は多く、個人情報の漏洩(ろうえい)や盗難を心配する声も根強い。
(3)カードの裏面には、税や社会保障の手続きに使われ、「むやみに他人に見せるべきではない」とされてきた12けたの番号が書いてある。持ち歩くことに不安を感じる人は、少なくないだろう。
(4)住民票をコンビニで取れる、ポイント還元でお得だ、健康保険証として使えるようにもなると、いくら「利便性」を強調しても、結局は制度開始当初から指摘された国民の懸念を、ぬぐいきれていない。


 今回の「朝日」のまとめは、「必要性を感じないままでは、たとえカードが普及しても使われない。『デジタル社会の基盤』にしたいのなら、政府がやるべきは必要性を繰り返し説明し、国民の懸念を解消することだ。予算のばらまきや取得の強要ではない。」。


 限界集落を成長戦略のもとに作り続ける政策の片方で、さもありなんと薄ら笑いで宣伝する「デジタル社会」の未来が、明るいものになるはずがない。
 だからこそ、国民は拒否するのだ。




by asyagi-df-2014 | 2019-12-06 07:18 | 持続可能な社会 | Comments(0)

「自助」「共助」は、「公助」が大前提ではないか。(1)

 「公助」の削減のために、「自助」「共助」の拡大を隠れ蓑にする。
社会保障費の削減のために、成長戦略の欺瞞を強弁する中で、民営化路線を追求する。
もたらされてきたのは、貧困の拡大であり、個人や地域の格差の拡大である。
 生きることの価値が、切り売りされてしまっている。
 行われているのは、まさしく、棄民政策である。
 やはり、このことを問わなければ。


 琉球新報(以下、「新報」)は2019年11月29日、「75歳以上医療負担増 高齢者への配慮不可欠だ」、と社説で論評した。
 「新報」の指摘は、「75歳以上の後期高齢者が支払う医療費の窓口負担を現在の原則1割から原則2割へと引き上げる方向で政府が本格的な検討に入った。」、ということに関してである。
 「新報」の次のように批判する。


(1)74歳の人が75歳に到達した後、そのまま2割負担を維持してもらう案や、75歳以上全員を2割にする案があるという。どちらにしても、医療へのニーズが高い高齢者に対する厳しい仕打ちだ。
(2)本来、治療を必要とする人が経済的な理由で受診を控える事態を招きかねない。少なくとも経済的弱者に配慮する仕組みが不可欠だ。幅広く国民の意見を聞きながら、多角的に検討する必要がある。


 「新報」は、この批判の根拠を次のように示す。


(1)厚生労働省の発表によると、2018年度に病気やけがの治療で全国の医療機関に支払われた医療費(概算)は前年度を約3千億円上回る42兆6千億円に達した。団塊世代が後期高齢者に入り始める22年度以降、さらに膨張すると見込まれる。
(2)1人当たりの医療費は、75歳未満の22万2千円に対し、75歳以上は93万9千円で、4倍を超える。高齢になると、どうしても体に変調を来しやすくなる。医療機関を受診する機会が増えるのは避けられない。
(3)75歳以上の医療費の4割は現役世代が払う健康保険料からの支援金で賄われている。後期高齢者の負担を増やすのは世代間の公平性を確保するためだという。そうした政府の考え方を無批判に受け入れていいのだろうか。
(4)理由もなく好き好んで医療機関を受診する人はいないだろう。その必要があるから医師に診てもらうのである。後期高齢者の医療費が増えるので負担も増やす―というのは安易な解決策に映る。
(5)長い年月にわたって社会に貢献してきた人たちには敬意を払い、いたわりをもって対応しなければならない。現役世代が一定程度負担するのは当然だろう。


 しかし、政府の方針は、これだけに留まらない。「医療制度改革では、年齢に関係なく患者の窓口負担に一定額を上乗せする『ワンコイン負担』制度の導入も論点として上がっている。国民全体の外来受診は年間約21億回。徴収額が一律100円なら年2100億円、500円なら年1兆円規模の窓口負担増が予想される。財政的にはプラスになるが、日本医師会などが反対し、導入は厳しい情勢だという。」、と「新報」は指摘する。


 結局、「新報」は、「財務省は、12月中旬にまとまる全世代型社会保障検討会議の中間報告に、2割負担への引き上げを盛り込みたい意向というが、議論が尽くされているとは言い難い。連合は『年齢に関係なく、収入などに応じた負担割合にすべきだ』として、抜本的な制度改正を主張している。政府は実現の可能性を追求すべきだ。誰でも年を取れば高齢者になる。負担と給付の問題は国民一人一人に突き付けられた課題だ。一部の人たちの主張だけを聞いて判断するなら拙速のそしりを免れない。」、と断じる。


 はっきりしていることは、「高齢になると、どうしても体に変調を来しやすくなる。医療機関を受診する機会が増えるのは避けられない。」(「新報」)、との「新報」の指摘は、制度設計そのものがこのことを前提にしなけれなばらないことを言い当てているだけである。
 つまり、この国のあり方を変えるしかないのだ。




by asyagi-df-2014 | 2019-12-03 07:53 | 持続可能な社会 | Comments(0)

英語民間試験導入から見えてくるもの。

 「英語民間試験導入」について、改めて押さえる。
  手元に、沖縄タイムス、琉球新報、朝日新聞の三社の社説がある。
 それぞれの社説の見出しは、次のものである。

(1)沖縄タイムス社説-[英語民間試験見送り]混乱招いた責任は重い
(2)琉球新報社説-英語民間試験見送り 制度設計を見直すべきだ
(3)朝日新聞社説-英語民間試験見送り 制度設計を見直すべきだ

 この問題に不覚にも問題が大きくなってから気づかされた者として、この制度そのものについて、『どうしてこんなことが導入されることになったのか。』、もしくは『どうしてこんな制度の導入を許したのか。』、ということが大きな疑問としてあった。
 この答えを知るためにこの三社の社説を見てみる。
まず最初に、沖縄タイムス(以下、「タイムス」)から。
 「タイムス」は、英語民間試験見送りに係る問題点を、まず最初に指摘する。


(1)大学入学共通テストにおける英語民間検定試験について萩生田光一文部科学相は1日の記者会見で、2020年度の導入を見送ると発表した。萩生田氏は同日時点で「試験がいつ、どこの会場で、全体を通じて確定できない。運営上、足らざるところがあった」と不備を認めた。強行すれば混乱を招くのは必至で出直すべきだ。
(2)1年かけて抜本的な見直しを議論。今の中1が受験生となる24年度をめどに新たな制度の導入を検討するという。従来の「読む・聞く」に、「話す・書く」を加えた4技能を評価する方向性は間違っていない。民間試験でなければならないのかどうか。ゼロベースでの議論を求めたい。
(3)大学入試センターは1日、受験に必要な「共通ID」の受け付け開始を中止した。萩生田氏は10月30日の衆院文部科学委員会で実施に前向きな答弁をしており、直前になってからの見送りは遅すぎる。
(4)被害者は民間試験に振り回された受験生である。志望大学の準備をしながら、不安を募らせていたに違いない。
(5)萩生田氏は文科省のホームページで「経済的な状況や居住している地域にかかわらず、等しく安心して受けられるようにするためには、更なる時間が必要だと判断した」と説明した。教育現場に一番近い全国高等学校長協会(全高長)などがかねてへき地や離島で暮らしていたり、家計が苦しかったりする受験生への救済策が乏しいなどと指摘。導入延期を求めていた。文科省が真剣に受け止めておれば、ぎりぎりになってからの延期決定にはならなかったはずである。文科省の責任は大きい。


 また、「タイムス」は、英語民間試験制度の導入の問題点を次のように指摘する。


(1)民間試験は「英検」や「GTEC」など6団体の7種類で、現在の高2が20年4~12月に最大2回まで受験できる仕組みだった。大学の英語専門家からは複数の異なる試験結果を比較できるか疑問の声が上がった。
(2)利用しない大学もあれば、成績を出願資格にしたり、大学独自の試験に加点したりするなど利用は大学に委ねられた。四年制大学の3割が利用しないのは民間試験への不信の表れだろう。県内では琉球大など5大学が参加を予定していた。
(3)1回の受験料は、5千円台~2万5千円台と4倍以上の開きがあり、会場も大都市にしかなく沖縄では受験できない試験もある。経済的に苦しい家庭や、離島などの受験生は宿泊も想定しなければならず、都市部に比べ不利になるのは明らかだ。


 最後に、「タイムス」は、英語民間試験制度導入そのものについて、見解を明らかにする。


「萩生田氏は10月24日のテレビ番組で家計状況や居住地で不利が生じるとの指摘に、『自分の身の丈に合わせて頑張ってもらえれば』と発言。教育格差を容認する制度の矛盾を図らずも明るみに出した。萩生田氏は批判を浴び、謝罪と撤回に追い込まれた。大学受験に当たって経済格差、地域格差が横たわっているのは現実である。教育行政を預かる文科省のトップとして親の所得や住んでいる地域によって格差が生じないよう是正するのが責務であることを肝に銘じてもらいたい。」


 次に、琉球新報(以下、「新報」)は、「見送りは当然だ。むしろ遅きに失したと言える。」、と英語民間試験見送りに関して断じる。その上で、次のように批判する。


(1)萩生田光一文部科学相は、大学入学共通テストへの英語民間検定試験の導入について「自信を持って受験生に薦められるシステムになっていない」と述べ、2020年度は見送ると発表した。経済格差や地域格差を広げるという批判に対し、十分な対応策が間に合わないと判断したためだ。
(2)民間試験の会場は都市部が中心のため、住む地域によっては受験生に渡航費や宿泊費の負担を強いる。家庭に経済力があれば、高校3年になる前に検定試験を何度も受けて、慣れておくこともできる。
(3)家庭の経済力や居住地が成績を左右しかねない。受験生や教育現場、家庭からは不安や批判が噴出したが、それでも実施へ突き進む文科省に不信感が拡大していた。そんな中、萩生田文科相はテレビ番組で「身の丈に合わせて頑張って」と言い放った。格差を容認し、弱者切り捨てとも取れる発言が火に油を注いだ。これが引き金となり、政権批判を恐れた官邸が見切りを付けた形だ。
(3)公平・公正を確保できない制度の欠陥は以前から指摘されていた。全国の国公私立高校計約5200校でつくる全国高等学校長協会(全高長)は9月10日、制度の実施を延期した上で大幅な見直しを求める要望書を文科省に提出した。本来なら文科省はその段階で実施延期を決断すべきだった。現場の切実な声は非常に重いからだ。
(4)英語民間試験導入の背景には、グローバル化の進展に伴い、聞く・読む・話す・書くの実践力を総合的に評価する狙いがある。この趣旨は大事だが、だからといって制度の欠陥を放置することは許されない。


 結局、「新報」は、この制度そのものについて、「最大の問題は、受験生の立場を最優先に考えずに、試験を民間に丸投げしたことにある。公平・公正の確保は教育基本法で定める教育の機会均等に関わる。その実現への努力を国が放棄したに等しい。」、と安倍晋三政権の責任を明確にする。
この上で、「教育に対する基本姿勢をおろそかにし、混乱を招いた文科省の責任は重大だ。同じ過ちを二度と繰り返してはならない。文科省は猛省し、受験生や教育現場、家庭の声に謙虚に向き合うことが求められる。受験生の立場を最優先しなければならない。文科省は今後、民間試験の活用中止も選択肢に含め、関係者を集めた検討会議を立ち上げ、1年間かけて抜本的な見直しを議論するという。中途半端では、全国の関係者は決して納得しないだろう。ゼロベースで制度設計を見直す必要がある。この際、大学入学共通テストの原点に立ち返らなければならない。原点とは、生徒の立場を第一に考え、公平・公正を確保することである。その実現に向け、全ての受験生がそれぞれの生活圏の中で同一の試験を同一の日程で受けられる仕組みを文科省が主導して整えることが望ましい。」、と見解を明確にする。


 最後に、「見送りは当然だ。むしろ遅きに失したと言える。」、との朝日新聞(以下、「朝日」)の社説を見てみる。
 「朝日」も、この制度導入の見送りについて、次のように批判する。


(1)萩生田光一文部科学相は、大学入学共通テストへの英語民間検定試験の導入について「自信を持って受験生に薦められるシステムになっていない」と述べ、2020年度は見送ると発表した。経済格差や地域格差を広げるという批判に対し、十分な対応策が間に合わないと判断したためだ。
(2)民間試験の会場は都市部が中心のため、住む地域によっては受験生に渡航費や宿泊費の負担を強いる。家庭に経済力があれば、高校3年になる前に検定試験を何度も受けて、慣れておくこともできる。
(3)家庭の経済力や居住地が成績を左右しかねない。受験生や教育現場、家庭からは不安や批判が噴出したが、それでも実施へ突き進む文科省に不信感が拡大していた。そんな中、萩生田文科相はテレビ番組で「身の丈に合わせて頑張って」と言い放った。格差を容認し、弱者切り捨てとも取れる発言が火に油を注いだ。これが引き金となり、政権批判を恐れた官邸が見切りを付けた形だ。


 「朝日」は、この制度の疑問について、「公平・公正を確保できない制度の欠陥は以前から指摘されていた。全国の国公私立高校計約5200校でつくる全国高等学校長協会(全高長)は9月10日、制度の実施を延期した上で大幅な見直しを求める要望書を文科省に提出した。本来なら文科省はその段階で実施延期を決断すべきだった。現場の切実な声は非常に重いからだ。」、と指摘する。
 また、「英語民間試験導入の背景には、グローバル化の進展に伴い、聞く・読む・話す・書くの実践力を総合的に評価する狙いがある。この趣旨は大事だが、だからといって制度の欠陥を放置することは許されない。最大の問題は、受験生の立場を最優先に考えずに、試験を民間に丸投げしたことにある。公平・公正の確保は教育基本法で定める教育の機会均等に関わる。その実現への努力を国が放棄したに等しい。」、とも。


 「朝日」は、この制度の見送り問題の責任及び制度そのものについて切り込む。


(1)教育に対する基本姿勢をおろそかにし、混乱を招いた文科省の責任は重大だ。同じ過ちを二度と繰り返してはならない。文科省は猛省し、受験生や教育現場、家庭の声に謙虚に向き合うことが求められる。受験生の立場を最優先しなければならない。
(2)文科省は今後、民間試験の活用中止も選択肢に含め、関係者を集めた検討会議を立ち上げ、1年間かけて抜本的な見直しを議論するという。中途半端では、全国の関係者は決して納得しないだろう。ゼロベースで制度設計を見直す必要がある。この際、大学入学共通テストの原点に立ち返らなければならない。原点とは、生徒の立場を第一に考え、公平・公正を確保することである。その実現に向け、全ての受験生がそれぞれの生活圏の中で同一の試験を同一の日程で受けられる仕組みを文科省が主導して整えることが望ましい。


 こうした三社の社説からは、「英語民間試験見送りの問題」と「英語民間試験導入の問題点」は、ある程度理解できる。
 ただ、この制度が「公平・公正を確保できない制度の欠陥は以前から指摘されていた。」(「新報」)にもかかわらず、ここまで来てしまった理由がわからない。つまり、安倍晋三政権の策動を止められなかった理由がよくわからない。
それは、安倍晋三政権の権力がこうした悪い状況をもたらすほどに、日本という国を悪化させているということが答えであるということなのか。




by asyagi-df-2014 | 2019-11-09 07:14 | 持続可能な社会 | Comments(0)

改正水道法が2019年10月施行されたが。

 改正水道法が2019年10月施行された。
このことについて、私自身も含めて、あまり関心が持たれていない。
西日本新聞(以下、「西日本」)は2019年10月22日、施工以後の状況について、「水道民営化検討せず 九州10市 災害対応、高騰懸念」、と伝えた。
 「西日本」の改正水道法に関する解説は、「人口減に伴う水需要減少や水道施設の老朽化、深刻化する人手不足で経営が厳しい水道事業の基盤強化が目的。昨年12月の臨時国会で成立し、今月1日施行された。自治体が浄水施設など資産を保有したまま運営権を民間企業に売却できる『コンセッション方式』の促進を盛り込み、民営化しやすくした。自治体間の広域連携や官民連携の推進も掲げる。」、というもの。
「西日本」は次のように報じている。


(1)企業に委託する「コンセッション方式」の促進を盛り込んだ改正水道法が今月、施行された。水道事業の基盤強化が目的だが、西日本新聞が九州の政令市、県庁所在市、中核市の計10市に同方式の導入について尋ねたところ、全ての市が「導入予定はない」と回答した。最も身近なインフラで命に直結する水の「民営化」への懸念の大きさを裏付けている。
(2)10市の水道事業担当部局によると、導入しない理由として、長崎市は「コンセッションは官と民の役割やリスク分担の整理がいる。海外では再度公営化した事例もあり、安全安心な水を民間に委ねることには、市民の理解を見極める必要がある」と強調。佐賀市も「水道事業にまったく知識がない事業者が災害が起きたときに責任を果たせるのか」と懐疑的な見方だ。
(3)北九州市は「選択肢は広がったが、検討もしていない。現時点では広域連携を重視している」と回答。熊本市も「地下水で全ての水源を賄っており、効果的に運用する独自のノウハウが求められる」とした。
(4)給水人口約156万人(2017年度)を抱える福岡市は「市民に無理な負担を求めることなく安定的に黒字を確保できる」と説明。大分市も現行の直営での安定経営を理由に挙げた。一方で、鹿児島市は「当面検討もしないが、老朽化施設が増えるなどして経営状況が悪化するとなると、検討することもあり得る」と述べた。
(5)厚生労働省によると、上水道でコンセッションの導入例はこれまでなく、宮城県などが導入を検討中。ただ民営化による水道料金の高騰や水の安全性の確保、災害時の対応を民間企業ができるかといった点で市民にも不安の声は根強い。浜松市は導入の可能性を検討し、市民向け出前講座などで説明を重ねてきたが「市民、国民全体としても理解が進んでおらず、導入を進めるのは困難と判断した」として今年1月に検討も含めて導入を当面延期した。
(6)水道事業の民間委託の是非は、あくまで自治体の判断だ。民営化の動きが広がっていないことについて、厚労省水道課は「コンセッションは(官民連携の)選択肢の一つ。地域の状況に合わせて検討されるものと考えている」と話した。                                    (郷達也)



by asyagi-df-2014 | 2019-10-30 07:09 | 持続可能な社会 | Comments(0)

時には、じっくりと考えてみることを。-年金問題。私的年金制度-

 東京新聞(以下、「東京」)の2019年10月16日の社説は、「私的年金 自助の支えも拡充を」、と見解を表明した。それは、「公的年金に上乗せする給付を得られる私的年金制度の見直し議論が進んでいる。私的年金は企業や個人が加入する制度である。高齢化で働く期間が延びる時代、老後に備える見直しは欠かせない。」、と始められる。
 政府の2000万円不足のリークから、当然予想される内容ではある。
 しかし、「私的年金 自助の支えも拡充を」は一足飛びの結論と映る。
まず、「東京」の指摘の根拠は次のもの。


(1)公的年金に上乗せする給付を得られる私的年金制度の見直し議論が進んでいる。私的年金は企業や個人が加入する制度である。高齢化で働く期間が延びる時代、老後に備える見直しは欠かせない。金融庁報告書の「老後に二千万円不足」問題は、あらためて高齢期は公的年金だけでは不安は解消されない事実を明らかにした。政府はまずその事実を丁寧に説明する責任がある。
(2)その上で、自助の私的年金がある。より多くの人が利用できるよう見直しを進めるべきだ。


 この「金融庁報告書の『老後に二千万円不足』問題は、あらためて高齢期は公的年金だけでは不安は解消されない事実を明らかにした。」(「東京」)とは、明らかに政府からの「リーク」である。そこには、政府の失政のツケをきちんと精算しない土台の上に、姑息にも責任を転嫁しようとする強い意志がある。
したがって、「政府はまずその事実を丁寧に説明する責任がある。」との指摘は当然のものではあるが、その前に、その失政の責任を明確にさせる責任が、マスコミにはあるのではないか。

「東京」の具体的な考え方も示される。


(1)すべての国民を対象とする国民年金(基礎年金)と、会社員や公務員が加入する厚生年金が公的年金である。よく基礎年金を建物の土台として一階、厚生年金を二階に例える。私的年金は上乗せの三階部分にあたる。その中で企業が従業員向けに設ける制度が企業年金だ。原則、企業が掛け金を出し、運用で増やして退職後に受け取る。
(2)厚生労働省は、制度に加入できる年齢の上限を引き上げる見直し案を示した。来年の通常国会への関連法案の提出を目指す。
(3)案は企業年金のうち、企業が拠出額をあらかじめ決めて運用は従業員が行う企業型確定拠出年金について加入年齢の上限を今の六十四歳から六十九歳に引き上げる。勤務先に企業年金のない会社員や、公務員、自営業者、主婦などが加入できる個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」も五十九歳から六十四歳まで引き上げ、掛け金を払えるようにする。
(4)現在、六十~七十歳の間で選べる受給を始める時期は、七十歳以降も可能とする。公的年金もより長く加入できるよう見直しの議論が進む。上乗せの私的年金も働き方の変化に合わせた改善が望ましい。


 この上で、「東京」は、次のように見解をまとめる。


(1)少子高齢化で公的年金の目減りが避けられない。私的年金は高齢期を支える重要な制度になってきたが、改善の余地はある。転職しても加入記録を持ち歩ける制度や中小企業の加入促進などもっと使い勝手をよくしたい。
(2)私的年金は自身で運用をするため金融知識の周知も欠かせない。特に若い世代への知識普及にも政府と企業は取り組むべきだ。
(3)私的年金は、運用できる資産がない人との間で格差が広がる懸念がある。なにより政府は公的年金の給付を増やす改善に知恵を絞るべきだ。さらに生活保護、低廉な住宅の確保など年金制度を超えた支援も幅広く考えたい。   


 どうしても疑問が残る。
 そもそも、「上乗せの私的年金」の有効性を論ずる前に、これを必要としない社会保障制度の論議が必要ではないか。
「東京」の「私的年金」の主張には、必然的に、「私的年金は、運用できる資産がない人との間で格差が広がる懸念がある。」(「東京」)との限界を付帯事項として位置づけることになる。
 結局、「矛盾」の上に「矛盾」を乗せることになるしかない。



by asyagi-df-2014 | 2019-10-27 08:28 | 持続可能な社会 | Comments(0)

今こそ、大地からの警告の声を聞く時。-ジュゴン-

 台風19号からの被害を目にする時、人間の営みそのものを振り返る時ではないかと強く思わされる。
 「3.11」が、大きな警告であったように、大地から、この大地が育んできた地球の営みそのものが、『異』を唱えてきている気がする。
 
 例えば、沖縄タイムス(以下、「タイムス」)は2019年10月13日、「[ジュゴン絶滅か]工事を止め全県調査を」、と社説で論評した。
「タイムス」が次の危機感を著す。


「名護市辺野古の新基地建設を巡り、防衛省沖縄防衛局が専門家から助言を受ける環境監視等委員会の会合で、辺野古沖などで確認されていたジュゴンが行方不明になっていることについて、ある委員が『絶滅の可能性が高い』と発言した。別の委員は『他に行ったのでは』との見方を示したが、長期間確認されておらず絶滅への危機感が募る。」


 このことを巡って、「タイムス」は次の指摘する。


(1)今年9月9日開かれた環境監視等委員会の議事録などが防衛局のホームページで公開され、明らかになった。いずれも個人的な考えで、調査を周辺離島にまで拡大する必要性を訴えたが、防衛局は消極的だ。なぜか。
(2)防衛局は行方不明になったジュゴンは「工事による影響とは考えられない」との見解を示しているからだ。議事録によると、「水中音や振動を発するピークの期間でも嘉陽沖でジュゴンが確認された。海草藻場を利用しなくなった期間は水中音や振動を発する工事は実施していない」からという。海草藻場も十分残っていた。都合のいい解釈というほかなく、なぜ不明になったのかますます疑念が湧く。
(3)ジュゴンは音に敏感とされる。埋め立て着手前からブイやフロート設置、海底ボーリング調査などで長期間、生息環境の影響を受けている。防衛局は生息域と、作業船の航路や頻度を示す必要がある。
(4)県環境影響評価審査会も「工事による影響がない」ことは、明らかでないとしている。変化した要因が把握できるよう事後調査や追加の環境保全措置を要求している。工事の影響でないことが証明できない限り、影響があると判断すべきだ。その立証責任は防衛局にあるのは当然である。


 このように、「タイムス」の見解は、「工事の影響でないことが証明できない限り、影響があると判断すべきだ。その立証責任は防衛局にあるのは当然である。」、と明快である。だから、次のように批判する。


(1)辺野古沖などで3頭が確認されていたジュゴンのうち個体Bは今年3月、今帰仁村の漁港沖で、死んだ状態で漂着しているのが発見された。環境省などによる解剖ではエイのトゲが刺さり腸管を損傷したのが死因としている。
(2)嘉陽沖を主な生息域としていたジュゴン個体Aはヘリコプター監視で2018年9月まで、食跡は同年12月まで見られたが、それ以降は目撃されていない。個体Bの子とみられるジュゴン個体Cは15年7月以降、行方知れずだ。
(3)防衛局はヘリコプターによる調査を古宇利から辺戸・安田を通り嘉陽までの海域を4月から3カ月、月1、2回行った。現在は水中録音装置で鳴音調査を継続している。
(4)防衛局がジュゴンの行方不明は工事の影響ではないと一方的に言い、現状がどうなっているのか知らぬ存ぜずなのでは無責任極まりない。
(5)ジュゴンは国内では沖縄だけに生息し、世界の生息域の北限といわれる。国の天然記念物で絶滅危惧種である。ジュゴン保護は環境省の所管だ。同省の調べでは八重山諸島や多良間島で00年以降、個体や死骸などジュゴンとみられる計11件の目撃情報があるのがわかっている。環境相に小泉進次郎氏が就任した。行方不明は保護対策が不十分だった証拠で、環境省にも責任がある。小泉氏が存在感を発揮し、工事を止め全県調査を急ぐべきだ。


 確かに、「3.11」が、大きな警告であったように、大地から、この大地が育んできた地球の営みそのものが、『異』を唱えてきている声が聞こえる。
だとしたら、何をしなければならないは、明白である。




by asyagi-df-2014 | 2019-10-21 06:03 | 持続可能な社会 | Comments(0)

今を生きるために、「10・10空襲」を問い続けること。

 沖縄は、75年目の「10・10空襲」の日を迎えた。
琉球新報は、「1944年10月10日の『10・10空襲』から10日で75年を迎えた。延べ1396機の米軍機が投入され、沖縄本島や周辺離島、先島、奄美など南西諸島全域に爆弾の雨を降らせた。無差別な空襲によって668人が死亡、768人が負傷した。旧那覇市は家屋の約9割が焼失するなど、文字通り焼け野原となった。沖縄戦の前触れを県民が実感することになった『10・10空襲』。実際に体験した世代も高齢となり、その実相の継承が課題となる中、改めて体験談を語る人々もいる。27日には『那覇市戦没者追悼式(第24回なぐやけの碑慰霊祭)』が市若狭で行われる。」と伝え、「沖縄の『戦後75年』は『10・10空襲』から始まる。」、と報じる。
 また、琉球新報(以下、「新報」)は2019年10月10日、「「10・10空襲」きょう75年」、と社説で論評した。
まず、「新報」は、「10・10空襲」を振り返る。


(1)南西諸島の島々を延べ1400機の米艦載機が攻撃した「10・10空襲」から75年になる。668人が死亡し、768人が負傷した。那覇市の約9割が壊滅し、被災した市民約5万人が本島中南部に避難するという大惨事となった。空襲の被害は周辺離島、宮古・八重山、奄美にも及んだ。
(2)米軍上陸による激しい地上戦の前哨戦となった10・10空襲は、日本全国で76万人が犠牲となった無差別攻撃の始まりでもあった。
(3)早朝に始まった5次にわたる空襲は主に飛行場や港湾の軍事施設を標的としたが、攻撃対象は民間地域にも広がった。那覇市では大量の爆弾や焼夷(しょうい)弾を投下し、学校など公共施設や民家を焼き払った。それだけではない。商業、交易の街として栄えた那覇の歴史や文化が一日にして壊滅した。復興のために市民の多大な労力と長い年月を要した。戦争のすさまじい破壊力はこの街の歴史と将来を奪った。


 次に、「新報」は、「なぜ沖縄が米軍の標的となり、壊滅的な空襲被害を受けたのかを考えたい。」、とする。


(1)1944年3月に創設された第32軍は米軍の侵攻に備え、沖縄本島や周辺離島で飛行場や軍事施設の構築を推し進めた。その過程で多くの県民が動員された。米軍はこれらの飛行場や軍事施設を攻撃し、日本軍の弱体化を図った。
(2)日本軍は沖縄を日本本土防衛の防波堤とし、県民に対しては「軍官民共生共死」の方針を強いた。米軍は本土攻略に向けた戦略的な価値を沖縄に見いだした。太平洋を部隊とした日米両軍の戦闘が10・10空襲、翌年の沖縄戦へとつながり多大な県民の犠牲を生んだ。そのことから私たちは「戦争につながるものを許してはならない」という教訓を得たのである。


 だからこそ、「新報」は、この歴史的事実とともに、日本という国が沖縄に向けて発している 「戦争につながるもの」について告発するのである。


(1)今日、沖縄では日米双方による軍備増強が進められている。これは沖縄戦の悲劇から得た教訓に反するものであり、今日の県民の意思にも背くものだ。
(2)宮古島では陸上自衛隊ミサイル部隊の配備計画が進んでいる。既に宮古島駐屯地に、住民への説明がないまま中距離多目的誘発弾や迫撃砲は保管されていた。石垣島でも陸自駐屯地の工事が今年3月に始まった。いずれも地域住民の理解を得たとは言い難い。
(3)名護市辺野古では沖縄の民意に反し普天間飛行場の返還に伴う新基地建設が強行されている。さらに今月、核弾頭が搭載可能な中距離ミサイルを、沖縄をはじめとする日本に配備するという米計画が明らかになった


 「新報」は、最後に、「10・10空襲や沖縄戦体験に照らせば、日米による沖縄の軍備増強は住民を守るものではない。むしろ危機に陥れる可能性が大きい。これらの動きに異議を申し立てるためにも10・10空襲を語り継がなければならない。75年前の悲惨な体験を踏まえ、平和を築くことが沖縄の未来に対する私たちの使命だと自覚したい。」、と「10・10空襲」の日に日本の国に向けて訴える。


 では、「新報」が「沖縄の『戦後75年』は『10・10空襲』から始まる。」と伝える意味は何なのか。
 それは、「日本軍は沖縄を日本本土防衛の防波堤とし、県民に対しては『軍官民共生共死』の方針を強いた。米軍は本土攻略に向けた戦略的な価値を沖縄に見いだした。太平洋を部隊とした日米両軍の戦闘が10・10空襲、翌年の沖縄戦へとつながり多大な県民の犠牲を生んだ。そのことから私たちは『戦争につながるものを許してはならない』という教訓を得たのである。」(「新報」)、ということである。
また、それは、現在が、「戦争」をきちんと捉える必要があることの裏返しではないか。
 沖縄県と他の県との違いがあるとすれば、それは負わされた「体験」とその体験をどのように咀嚼してきたのかという「質」の違いである。
 しかし、「米軍上陸による激しい地上戦の前哨戦となった10・10空襲は、日本全国で76万人が犠牲となった無差別攻撃の始まりでもあった。」(「新報」)ということが歴史の教訓であるとするなら、今を生きるために、「戦争」を問い続ける必要があることは言うまでもない。




by asyagi-df-2014 | 2019-10-16 06:28 | 持続可能な社会 | Comments(0)

進む介護保険制度の見直しで、またもや利用者の負担が引き上げられること。

 政治がらみの策動に、本当は敏感でなけねばならないのに、この国の首相の薄ら笑いが耐えられなくて見ないで済ましていることが多い。
今回も、沖縄タイムスの社説で考えさせられた。
沖縄タイムス(以下、「タイムス」)は2019年10月7日、「[介護保険見直し]『利用控え』広げないか」、と社説で論評した。
「タイムス」の主張は、この見直しに対する「果たして、これまでのように支援を受けることができるのか。」、ということにある。
 「タイムス」の指摘は次のもの。


(1)来年の通常国会での法案改正を目指し、政府内で介護保険見直しに向けた議論が進んでいる。並ぶのは利用者の負担を引き上げるいくつもの項目だ。
(2)3年に1度実施している制度改正で、厚生労働相の諮問機関である社会保障審議会の部会は、自己負担2割の対象者拡大▽ケアプラン作成の有料化▽自己負担の月額上限引き上げ-などを論点に挙げている。社会保障費を抑制するため、年末までに結論を出すという。
(3)65歳以上の全ての高齢者を対象に2000年にスタートした介護保険は、年収に関係なく1割負担でサービスが受けられ、「介護の社会化」に貢献してきた。だが15年に年収280万円以上の人を対象に2割負担が導入され、18年に340万円以上の人は3割に引き上げられた。
(4)財務省などは2割負担を原則とするよう求めており、今度の改正で年収要件を引き下げ、2割負担の対象が広がる可能性がある。


 「タイムス」は、この負担増の結果がもたらすものは、「既に2割に引き上げられた人のうち、3・8%がサービス利用を減らしたり、中止したりしたことが同省の調査で分かっている。「利用控え」の割合は、1割に据え置かれた人の3倍に上った。例えば月2万円の負担が4万円に跳ね上がれば、サービスをためらう人が間違いなく増えるだろう。支援が受けられず重症化しないか心配だ。」、と懸念を示す。
 さらに、「タイムス」は指摘する。


(1)ケアプラン作成の有料化も焦点の一つである。
(2)ケアプランはサービスに詳しいケアマネジャーに依頼するのが一般的で、誰もが公平にサービスを受けられるよう現在は全て保険からの給付で賄われている。仮に1割負担となった場合、高い人で月に1400円ほど支払うことになる。毎月のことであり決して小さくない額だ。
(3)月ごとの自己負担額に上限を設ける「高額介護サービス費」の引き上げも検討されている。住民税課税世帯なら収入に関係なく4万4400円の現行から、年収約770万円以上の世帯は9万3千円、約1160万円以上は14万100円に増やす方針だ。比較的余裕がある層とはいえ、税金などを引かれた後、月5万円から10万円近い支出増は家計へ影響を及ぼす。十分な調査と説明を求めたい。


 最後に、「タイムス」は、次のように断じる。


「18年度の介護保険給付費は10・7兆円で制度開始時の3倍に増加した。団塊世代全員が75歳以上となる25年度は15兆円を超える見込みだ。高齢化の進展に伴う社会保障費の伸びを抑える狙いがあることは理解するものの、利用者の負担が限界に近づいているのも事実である。
 老後資金2千万円問題などで公的年金制度への不安が高まっている。消費税も10%にアップされたばかりだ。
 今は健康でも介護を必要とする時期は、多くの人にやってくる。制度が維持されても、生活が成り立たなければ本末転倒である。」


 私自身は、自らの問題として、介護保険制度を利用してきた。
 その中ではっきり理解できたのは、介護保険制度を有効に活用できる人は、恵まれている階層になるということだ。
 この上の、利用者負担の拡大という「見直し」は、高齢者だけでなく、これを支える人達への切り捨てに過ぎない。

政治よ。もっとやさしくあれ。



by asyagi-df-2014 | 2019-10-15 08:00 | 持続可能な社会 | Comments(0)

地方は、壊してもいいというのか。

 「再編病院名の公表」。
 実は、住んでいる市にある病院名もあった。
このことについて、信濃毎日新聞(以下、「信毎」)は2019年10月8日、「再編病院名公表 撤回ないと前に進まない」、と社説で論評した。
どうも、この公表について、自分自身が飼い慣らされ感が強く、怒りよりも不安感が大きかった。
しかし、「信毎」は、きちっと問題点を指摘してくれた。


(1)あまりに乱暴ではないか。全国で批判が高まるのは当然だ。
(2)厚生労働省が、再編や統合が必要と判断した公的病院名を公表した。全国424病院、県内は分院を含めて15病院に上る。2017年度の診療実績や、「車で20分以内」に競合病院があるかを判断基準にした。
(3)発表は唐突で、判断基準は地方の事情を全く考慮に入れていない。16項目を分析した診療実績も、救急車受け入れ件数以外は6月だけが対象だ。医療関係者は「納得できない」「狙い撃ちされた」と不信を募らせ、住民には病院がなくなるとの不安を広げた。責任は厚労省にある。


 その上で、厚労省の責任を明確にする。


(1)厚労省が病院の再編・統合を急ぐのは、団塊世代全員が75歳以上となる25年に医療費の急増が確実だからだ。分散している医療機能を集約し、病院ベッド数を減らして不必要な入院や長期医療を見直し、医療費抑制につなげる。全国で124万6千床(18年)ある病院のベッド数を119万1千床まで減らす目標を掲げ、地方に議論を促している。
(2)これに応じて、各都道府県は、「地域医療構想」を策定。長野県も、25年に必要となる病床数を15年時点より1680床少ない1万6839床と推計した。ただし、医療関係者から「地域の実情に合っていない」と声が上がり、県の病床削減目標ではなく参考値であることを明記している。
(3)地域医療構想を踏まえて、県内では2次医療圏ごとに病床数や医療機関の役割見直しの検討が始まっている。一方的な病院名の公表は、こうした地方の側の積み重ねを崩しかねない。


 今回の厚労省の公表に、何を地方が怒っているのか明らかにする。


(1)地方の病院は、地域住民が安心して暮らしていくための拠点だ。病気の治療や健康づくりだけではなく、地域の雇用を支えていたり、街づくりの核として活用されたりしている。過疎化する地域を支えている病院もある。実情を無視して再編が進めば、地方の崩壊につながりかねず、国が掲げる地方創生には逆行する。
(2)総務省が間に入って4日に急きょ開かれた地方3団体との協議の場で、平井伸治鳥取県知事は、地域に混乱を招いていると指摘し、「本当ならリストを返上してもらいたい」と訴えた。国側は反省の弁ととともに、病院名公表の経緯や目的について各地で説明する考えを示している。


 「信毎」の主張は、鋭い。
 「解決への糸口は見えていない。地方と協議を続けるなら、公表の撤回が必要だ。不信や不安の中で、議論は前に進まない。」、と断じる。


 確かに、私たちの不安の根源は、「地方の病院は、地域住民が安心して暮らしていくための拠点だ。病気の治療や健康づくりだけではなく、地域の雇用を支えていたり、街づくりの核として活用されたりしている。過疎化する地域を支えている病院もある。実情を無視して再編が進めば、地方の崩壊につながる。」(「信毎」)、ということなのだ。
 なにせ、すでに、地方は壊されているのだから。



by asyagi-df-2014 | 2019-10-12 10:47 | 持続可能な社会 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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