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今こそ、大地からの警告の声を聞く時。-ジュゴン-

 台風19号からの被害を目にする時、人間の営みそのものを振り返る時ではないかと強く思わされる。
 「3.11」が、大きな警告であったように、大地から、この大地が育んできた地球の営みそのものが、『異』を唱えてきている気がする。
 
 例えば、沖縄タイムス(以下、「タイムス」)は2019年10月13日、「[ジュゴン絶滅か]工事を止め全県調査を」、と社説で論評した。
「タイムス」が次の危機感を著す。


「名護市辺野古の新基地建設を巡り、防衛省沖縄防衛局が専門家から助言を受ける環境監視等委員会の会合で、辺野古沖などで確認されていたジュゴンが行方不明になっていることについて、ある委員が『絶滅の可能性が高い』と発言した。別の委員は『他に行ったのでは』との見方を示したが、長期間確認されておらず絶滅への危機感が募る。」


 このことを巡って、「タイムス」は次の指摘する。


(1)今年9月9日開かれた環境監視等委員会の議事録などが防衛局のホームページで公開され、明らかになった。いずれも個人的な考えで、調査を周辺離島にまで拡大する必要性を訴えたが、防衛局は消極的だ。なぜか。
(2)防衛局は行方不明になったジュゴンは「工事による影響とは考えられない」との見解を示しているからだ。議事録によると、「水中音や振動を発するピークの期間でも嘉陽沖でジュゴンが確認された。海草藻場を利用しなくなった期間は水中音や振動を発する工事は実施していない」からという。海草藻場も十分残っていた。都合のいい解釈というほかなく、なぜ不明になったのかますます疑念が湧く。
(3)ジュゴンは音に敏感とされる。埋め立て着手前からブイやフロート設置、海底ボーリング調査などで長期間、生息環境の影響を受けている。防衛局は生息域と、作業船の航路や頻度を示す必要がある。
(4)県環境影響評価審査会も「工事による影響がない」ことは、明らかでないとしている。変化した要因が把握できるよう事後調査や追加の環境保全措置を要求している。工事の影響でないことが証明できない限り、影響があると判断すべきだ。その立証責任は防衛局にあるのは当然である。


 このように、「タイムス」の見解は、「工事の影響でないことが証明できない限り、影響があると判断すべきだ。その立証責任は防衛局にあるのは当然である。」、と明快である。だから、次のように批判する。


(1)辺野古沖などで3頭が確認されていたジュゴンのうち個体Bは今年3月、今帰仁村の漁港沖で、死んだ状態で漂着しているのが発見された。環境省などによる解剖ではエイのトゲが刺さり腸管を損傷したのが死因としている。
(2)嘉陽沖を主な生息域としていたジュゴン個体Aはヘリコプター監視で2018年9月まで、食跡は同年12月まで見られたが、それ以降は目撃されていない。個体Bの子とみられるジュゴン個体Cは15年7月以降、行方知れずだ。
(3)防衛局はヘリコプターによる調査を古宇利から辺戸・安田を通り嘉陽までの海域を4月から3カ月、月1、2回行った。現在は水中録音装置で鳴音調査を継続している。
(4)防衛局がジュゴンの行方不明は工事の影響ではないと一方的に言い、現状がどうなっているのか知らぬ存ぜずなのでは無責任極まりない。
(5)ジュゴンは国内では沖縄だけに生息し、世界の生息域の北限といわれる。国の天然記念物で絶滅危惧種である。ジュゴン保護は環境省の所管だ。同省の調べでは八重山諸島や多良間島で00年以降、個体や死骸などジュゴンとみられる計11件の目撃情報があるのがわかっている。環境相に小泉進次郎氏が就任した。行方不明は保護対策が不十分だった証拠で、環境省にも責任がある。小泉氏が存在感を発揮し、工事を止め全県調査を急ぐべきだ。


 確かに、「3.11」が、大きな警告であったように、大地から、この大地が育んできた地球の営みそのものが、『異』を唱えてきている声が聞こえる。
だとしたら、何をしなければならないは、明白である。




by asyagi-df-2014 | 2019-10-21 06:03 | 持続可能な社会 | Comments(0)

今を生きるために、「10・10空襲」を問い続けること。

 沖縄は、75年目の「10・10空襲」の日を迎えた。
琉球新報は、「1944年10月10日の『10・10空襲』から10日で75年を迎えた。延べ1396機の米軍機が投入され、沖縄本島や周辺離島、先島、奄美など南西諸島全域に爆弾の雨を降らせた。無差別な空襲によって668人が死亡、768人が負傷した。旧那覇市は家屋の約9割が焼失するなど、文字通り焼け野原となった。沖縄戦の前触れを県民が実感することになった『10・10空襲』。実際に体験した世代も高齢となり、その実相の継承が課題となる中、改めて体験談を語る人々もいる。27日には『那覇市戦没者追悼式(第24回なぐやけの碑慰霊祭)』が市若狭で行われる。」と伝え、「沖縄の『戦後75年』は『10・10空襲』から始まる。」、と報じる。
 また、琉球新報(以下、「新報」)は2019年10月10日、「「10・10空襲」きょう75年」、と社説で論評した。
まず、「新報」は、「10・10空襲」を振り返る。


(1)南西諸島の島々を延べ1400機の米艦載機が攻撃した「10・10空襲」から75年になる。668人が死亡し、768人が負傷した。那覇市の約9割が壊滅し、被災した市民約5万人が本島中南部に避難するという大惨事となった。空襲の被害は周辺離島、宮古・八重山、奄美にも及んだ。
(2)米軍上陸による激しい地上戦の前哨戦となった10・10空襲は、日本全国で76万人が犠牲となった無差別攻撃の始まりでもあった。
(3)早朝に始まった5次にわたる空襲は主に飛行場や港湾の軍事施設を標的としたが、攻撃対象は民間地域にも広がった。那覇市では大量の爆弾や焼夷(しょうい)弾を投下し、学校など公共施設や民家を焼き払った。それだけではない。商業、交易の街として栄えた那覇の歴史や文化が一日にして壊滅した。復興のために市民の多大な労力と長い年月を要した。戦争のすさまじい破壊力はこの街の歴史と将来を奪った。


 次に、「新報」は、「なぜ沖縄が米軍の標的となり、壊滅的な空襲被害を受けたのかを考えたい。」、とする。


(1)1944年3月に創設された第32軍は米軍の侵攻に備え、沖縄本島や周辺離島で飛行場や軍事施設の構築を推し進めた。その過程で多くの県民が動員された。米軍はこれらの飛行場や軍事施設を攻撃し、日本軍の弱体化を図った。
(2)日本軍は沖縄を日本本土防衛の防波堤とし、県民に対しては「軍官民共生共死」の方針を強いた。米軍は本土攻略に向けた戦略的な価値を沖縄に見いだした。太平洋を部隊とした日米両軍の戦闘が10・10空襲、翌年の沖縄戦へとつながり多大な県民の犠牲を生んだ。そのことから私たちは「戦争につながるものを許してはならない」という教訓を得たのである。


 だからこそ、「新報」は、この歴史的事実とともに、日本という国が沖縄に向けて発している 「戦争につながるもの」について告発するのである。


(1)今日、沖縄では日米双方による軍備増強が進められている。これは沖縄戦の悲劇から得た教訓に反するものであり、今日の県民の意思にも背くものだ。
(2)宮古島では陸上自衛隊ミサイル部隊の配備計画が進んでいる。既に宮古島駐屯地に、住民への説明がないまま中距離多目的誘発弾や迫撃砲は保管されていた。石垣島でも陸自駐屯地の工事が今年3月に始まった。いずれも地域住民の理解を得たとは言い難い。
(3)名護市辺野古では沖縄の民意に反し普天間飛行場の返還に伴う新基地建設が強行されている。さらに今月、核弾頭が搭載可能な中距離ミサイルを、沖縄をはじめとする日本に配備するという米計画が明らかになった


 「新報」は、最後に、「10・10空襲や沖縄戦体験に照らせば、日米による沖縄の軍備増強は住民を守るものではない。むしろ危機に陥れる可能性が大きい。これらの動きに異議を申し立てるためにも10・10空襲を語り継がなければならない。75年前の悲惨な体験を踏まえ、平和を築くことが沖縄の未来に対する私たちの使命だと自覚したい。」、と「10・10空襲」の日に日本の国に向けて訴える。


 では、「新報」が「沖縄の『戦後75年』は『10・10空襲』から始まる。」と伝える意味は何なのか。
 それは、「日本軍は沖縄を日本本土防衛の防波堤とし、県民に対しては『軍官民共生共死』の方針を強いた。米軍は本土攻略に向けた戦略的な価値を沖縄に見いだした。太平洋を部隊とした日米両軍の戦闘が10・10空襲、翌年の沖縄戦へとつながり多大な県民の犠牲を生んだ。そのことから私たちは『戦争につながるものを許してはならない』という教訓を得たのである。」(「新報」)、ということである。
また、それは、現在が、「戦争」をきちんと捉える必要があることの裏返しではないか。
 沖縄県と他の県との違いがあるとすれば、それは負わされた「体験」とその体験をどのように咀嚼してきたのかという「質」の違いである。
 しかし、「米軍上陸による激しい地上戦の前哨戦となった10・10空襲は、日本全国で76万人が犠牲となった無差別攻撃の始まりでもあった。」(「新報」)ということが歴史の教訓であるとするなら、今を生きるために、「戦争」を問い続ける必要があることは言うまでもない。




by asyagi-df-2014 | 2019-10-16 06:28 | 持続可能な社会 | Comments(0)

進む介護保険制度の見直しで、またもや利用者の負担が引き上げられること。

 政治がらみの策動に、本当は敏感でなけねばならないのに、この国の首相の薄ら笑いが耐えられなくて見ないで済ましていることが多い。
今回も、沖縄タイムスの社説で考えさせられた。
沖縄タイムス(以下、「タイムス」)は2019年10月7日、「[介護保険見直し]『利用控え』広げないか」、と社説で論評した。
「タイムス」の主張は、この見直しに対する「果たして、これまでのように支援を受けることができるのか。」、ということにある。
 「タイムス」の指摘は次のもの。


(1)来年の通常国会での法案改正を目指し、政府内で介護保険見直しに向けた議論が進んでいる。並ぶのは利用者の負担を引き上げるいくつもの項目だ。
(2)3年に1度実施している制度改正で、厚生労働相の諮問機関である社会保障審議会の部会は、自己負担2割の対象者拡大▽ケアプラン作成の有料化▽自己負担の月額上限引き上げ-などを論点に挙げている。社会保障費を抑制するため、年末までに結論を出すという。
(3)65歳以上の全ての高齢者を対象に2000年にスタートした介護保険は、年収に関係なく1割負担でサービスが受けられ、「介護の社会化」に貢献してきた。だが15年に年収280万円以上の人を対象に2割負担が導入され、18年に340万円以上の人は3割に引き上げられた。
(4)財務省などは2割負担を原則とするよう求めており、今度の改正で年収要件を引き下げ、2割負担の対象が広がる可能性がある。


 「タイムス」は、この負担増の結果がもたらすものは、「既に2割に引き上げられた人のうち、3・8%がサービス利用を減らしたり、中止したりしたことが同省の調査で分かっている。「利用控え」の割合は、1割に据え置かれた人の3倍に上った。例えば月2万円の負担が4万円に跳ね上がれば、サービスをためらう人が間違いなく増えるだろう。支援が受けられず重症化しないか心配だ。」、と懸念を示す。
 さらに、「タイムス」は指摘する。


(1)ケアプラン作成の有料化も焦点の一つである。
(2)ケアプランはサービスに詳しいケアマネジャーに依頼するのが一般的で、誰もが公平にサービスを受けられるよう現在は全て保険からの給付で賄われている。仮に1割負担となった場合、高い人で月に1400円ほど支払うことになる。毎月のことであり決して小さくない額だ。
(3)月ごとの自己負担額に上限を設ける「高額介護サービス費」の引き上げも検討されている。住民税課税世帯なら収入に関係なく4万4400円の現行から、年収約770万円以上の世帯は9万3千円、約1160万円以上は14万100円に増やす方針だ。比較的余裕がある層とはいえ、税金などを引かれた後、月5万円から10万円近い支出増は家計へ影響を及ぼす。十分な調査と説明を求めたい。


 最後に、「タイムス」は、次のように断じる。


「18年度の介護保険給付費は10・7兆円で制度開始時の3倍に増加した。団塊世代全員が75歳以上となる25年度は15兆円を超える見込みだ。高齢化の進展に伴う社会保障費の伸びを抑える狙いがあることは理解するものの、利用者の負担が限界に近づいているのも事実である。
 老後資金2千万円問題などで公的年金制度への不安が高まっている。消費税も10%にアップされたばかりだ。
 今は健康でも介護を必要とする時期は、多くの人にやってくる。制度が維持されても、生活が成り立たなければ本末転倒である。」


 私自身は、自らの問題として、介護保険制度を利用してきた。
 その中ではっきり理解できたのは、介護保険制度を有効に活用できる人は、恵まれている階層になるということだ。
 この上の、利用者負担の拡大という「見直し」は、高齢者だけでなく、これを支える人達への切り捨てに過ぎない。

政治よ。もっとやさしくあれ。



by asyagi-df-2014 | 2019-10-15 08:00 | 持続可能な社会 | Comments(0)

地方は、壊してもいいというのか。

 「再編病院名の公表」。
 実は、住んでいる市にある病院名もあった。
このことについて、信濃毎日新聞(以下、「信毎」)は2019年10月8日、「再編病院名公表 撤回ないと前に進まない」、と社説で論評した。
どうも、この公表について、自分自身が飼い慣らされ感が強く、怒りよりも不安感が大きかった。
しかし、「信毎」は、きちっと問題点を指摘してくれた。


(1)あまりに乱暴ではないか。全国で批判が高まるのは当然だ。
(2)厚生労働省が、再編や統合が必要と判断した公的病院名を公表した。全国424病院、県内は分院を含めて15病院に上る。2017年度の診療実績や、「車で20分以内」に競合病院があるかを判断基準にした。
(3)発表は唐突で、判断基準は地方の事情を全く考慮に入れていない。16項目を分析した診療実績も、救急車受け入れ件数以外は6月だけが対象だ。医療関係者は「納得できない」「狙い撃ちされた」と不信を募らせ、住民には病院がなくなるとの不安を広げた。責任は厚労省にある。


 その上で、厚労省の責任を明確にする。


(1)厚労省が病院の再編・統合を急ぐのは、団塊世代全員が75歳以上となる25年に医療費の急増が確実だからだ。分散している医療機能を集約し、病院ベッド数を減らして不必要な入院や長期医療を見直し、医療費抑制につなげる。全国で124万6千床(18年)ある病院のベッド数を119万1千床まで減らす目標を掲げ、地方に議論を促している。
(2)これに応じて、各都道府県は、「地域医療構想」を策定。長野県も、25年に必要となる病床数を15年時点より1680床少ない1万6839床と推計した。ただし、医療関係者から「地域の実情に合っていない」と声が上がり、県の病床削減目標ではなく参考値であることを明記している。
(3)地域医療構想を踏まえて、県内では2次医療圏ごとに病床数や医療機関の役割見直しの検討が始まっている。一方的な病院名の公表は、こうした地方の側の積み重ねを崩しかねない。


 今回の厚労省の公表に、何を地方が怒っているのか明らかにする。


(1)地方の病院は、地域住民が安心して暮らしていくための拠点だ。病気の治療や健康づくりだけではなく、地域の雇用を支えていたり、街づくりの核として活用されたりしている。過疎化する地域を支えている病院もある。実情を無視して再編が進めば、地方の崩壊につながりかねず、国が掲げる地方創生には逆行する。
(2)総務省が間に入って4日に急きょ開かれた地方3団体との協議の場で、平井伸治鳥取県知事は、地域に混乱を招いていると指摘し、「本当ならリストを返上してもらいたい」と訴えた。国側は反省の弁ととともに、病院名公表の経緯や目的について各地で説明する考えを示している。


 「信毎」の主張は、鋭い。
 「解決への糸口は見えていない。地方と協議を続けるなら、公表の撤回が必要だ。不信や不安の中で、議論は前に進まない。」、と断じる。


 確かに、私たちの不安の根源は、「地方の病院は、地域住民が安心して暮らしていくための拠点だ。病気の治療や健康づくりだけではなく、地域の雇用を支えていたり、街づくりの核として活用されたりしている。過疎化する地域を支えている病院もある。実情を無視して再編が進めば、地方の崩壊につながる。」(「信毎」)、ということなのだ。
 なにせ、すでに、地方は壊されているのだから。



by asyagi-df-2014 | 2019-10-12 10:47 | 持続可能な社会 | Comments(0)

「安全保障技術研究推進制度」の応募が、2年連続減で大学の応募は過去最少の8件にとどまったこと。

 このことに関して、朝日新聞(以下、「朝日」)は2019年8月31日、次のように報じていた。


(1)防衛装備庁は30日、防衛分野の研究資金を大学や企業に提供する「安全保障技術研究推進制度」で、2019年度の研究課題に16件を採択したと発表した。代表研究機関は、「企業等」と公的研究機関がそれぞれ7件、大学が2件。応募は57件あり、うち大学からは8件で過去最少だった。
(2)制度は15年度に約3億円の予算でスタートし、17年度から約100億円に増えた。研究費配分は3種類で、最も高額な枠(最大20億円)に採択されたのは、今年度は3件。いずれも「企業等」からの応募だった。大学で採択されたのは大阪市立大と山口大の2件で、ともに少額の枠だった。
(3)制度をめぐっては、軍事研究になると問題視する声もあり、日本学術会議が各大学に慎重な対応を求めるなど、議論も起きている。こうした中、大学の応募件数は4年連続で減少。19年度は過去最少の8件となり、初年度(58件)の7分の1ほどだった。
(4)応募状況を踏まえ、装備庁は今年度、初めてとなる高額枠の2次募集を実施する方針だ。


 日本学術会議が2017年に、一定の見解を示した中で、各大学がどのようの動きを示すかが注目されていたが、大学の役割からいっても望ましい方向に向かっているのではないか。
また、このことについて、「朝日」は2019年9月19日、「軍事研究 『ノー』の意識広く深く」、と論評した。
この社説を見る。
「朝日」は、「兵器など防衛装備品の開発につながりそうな研究に、政府が資金を出す『安全保障技術研究推進制度』の今年度の実績が、先ごろ発表された。応募は2年連続減の57件、採択は16件で、防衛装備庁は制度開始5年目で初めて追加募集に踏み切った。大学の応募は過去最少の8件にとどまった。5年間で最大20億円が支給される好条件にもかかわらず、応募が少ない背景には、日本学術会議の働きかけなどを通じて、制度の問題点が広く共有されたことがあるだろう。科学者の倫理や社会的責任を踏まえた対応であり、評価したい。」、と切り出す。
「朝日」の指摘は、次のものである。


(1)学術会議は1950年と67年の2回、軍事研究を否定する見解を表明。これを継承した2年前の声明では、今回の制度を「政府による介入が著しく、問題が多い」と指摘した。装備開発につなげようという目的が明確なうえ、政府職員が研究の進み具合を管理する点などを、学問の自由の下、人権、平和、福祉などの価値の実現を図る学術界とは相いれないと判断した。
(2)装備庁は「研究内容に口を出すことはない」などと釈明に懸命だが、多くの大学が「軍事研究はしない」との方針を確認している。いったん応募して支給対象になったものの、その後に辞退した例もある。
(3)意識は確実に浸透してきている。だが懸念がないわけではない。昨年、学術会議が全国の大学や研究機関を調べたところ、この制度への応募について、大学・機関としての方針や内部審査手続きを定めていないとの回答が、ほぼ半数を占めた。
(4)研究成果が民生と軍事の両面で使われる「デュアルユース」は、科学技術の宿命だ。個々の研究者に判断をゆだね、最終責任を負わせるのは酷であり、大学や機関で考え方に乖離(かいり)があれば、交流や人材の移籍の妨げにもなりかねない。これまでの議論の深まりを受けて、学術会議が音頭をとってスタンダードづくりを進めてはどうか。
(5)研究現場、とりわけ若手の間には「とにかく資金がほしい」「組織で個人を縛るべきではない」との声もある。前者は、政府が研究環境の整備を怠ってきたことの裏返しだ。軍事研究への誘導ではなく、着実な改善こそが求められる。また科学コミュニティーによる自主規律は、自由の侵害ではなく、将来に向けて研究を守ることに通じるとの認識を持つべきだ。


 今回の「朝日」の結論は、「遠くない過去、国内外の科学者は国家に組み込まれ、戦争に協力して、甚大な被害をもたらした。その反省と教訓を若い世代に伝えていくという重い課題にも、科学界は引き続き真摯に向き合わなくてはならない。」、ということである。


 是非とも、「軍事研究はしない」との方針の定着に向かってほしい。




by asyagi-df-2014 | 2019-09-27 07:04 | 持続可能な社会 | Comments(0)

「IPCC報告書」からの警告。

 朝日新聞は2019年9月25日、表題について次のように報じた。


(1) このままのペースで温室効果ガスの排出が続けば、今世紀末に海面上昇が1メートルを超える可能性がある――。専門家でつくる国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は25日、こんな内容を含む「海洋・雪氷圏特別報告書」の政策立案者向けの要約版を公表した。
(2)100年に1度しか起きないような高潮などが、標高の低い大都市や島国では今世紀半ば、ほかの地域でも今世紀末までに、どこかで毎年起きるようになると警告している。
(3)特別報告書によると、人間活動によって世界の海の温度は1970年以降、ほぼ確実に上昇、海面上昇も加速している。世界の平均海面は1902~2015年に16センチ(12~21センチ)上昇した。06~15年は年3・6ミリ(3・1~4・1ミリ)で、1901~90年の年1・4ミリ(0・8~2ミリ)の約2・5倍だ。グリーンランドや南極の氷の消失が主な要因だ。07~16年の消失量は97~06年に比べて南極で3倍、グリーンランドで2倍以上になっている。
(3)温暖化対策をせずに世界平均気温が産業革命前から最大4・8度上昇する場合は、海面は2100年に1986~2005年に比べて84センチ(61~110センチ)上昇する可能性がある。この場合、上昇は2300年には数メートルに達する可能性がある。温暖化対策の国際ルール「パリ協定」で合意している、気温上昇を同2度未満とした場合は2100年に43センチ(29~59センチ)上昇するが、2300年でも1メートル程度に抑えられるという。
(4)また、世界全体の海洋動物の生物量は対策なしの場合、今世紀末に1986~2005年に比べて15%程度、漁獲量は最大で同20~25%程度減る可能性があるという。(編集委員・石井徹)




by asyagi-df-2014 | 2019-09-26 11:40 | 持続可能な社会 | Comments(0)

時には、じっくりと考えてみることを。-年金問題-

 朝日新聞記者による「経世彩民 浜田陽太郎の目」に気づかされた。
 もう少し、じっくり考える必要があると。
朝日新聞(以下、「朝日」)は2019年9月24日、「私は政府のポチなのか? 年金不安あおる報道に違和感」、とこのように伝えた。
 まずは、「自分はもう、マスコミの世界で決定的に感覚がずれてしまったのではないか……。」、とこのように始められる。


(1)8月末に発表された「年金の健康診断」、すなわち5年に1度の財政検証の報道にふれて、身の置きどころのないような感覚におそわれた。
(2)新聞には「見通し改善せず」「先細りの未来」といったクラ~イ見出しが躍り、ワイドショーではコメンテーターが「この試算は甘い」「日本はダメになっている」と追い打ちをかける。
(3)いやいや、自分も若いころには、さんざん同じようなトーンの記事を書いてきた。エラそうなことはいえない。額にシワを寄せて、制度の不備を指摘し、危機を訴えてきたじゃないか……。だが、社会保障を20年近く取材してきたいま、「政府の見通しは甘い。このままだと年金は破綻(はたん)する。何とかしろ」という大合唱に、加わる気が失せている。


 指摘は、「自分は政府のポチになったのか。もう『年金記者失格』なのか――。」、と綴られる。
 それは、「年金と生活保護、何が違う」、と続けられる。


(1)心変わりの理由の一つに、高齢者の生活実態に触れる機会を得たことがある。
(2)6年来のおつきあいになる取材先の男性(71)は、月額4万円弱の年金を受け取っている。非正規の仕事を転々とし、なるべく社会保険料の負担から逃れようと行動してきた。それでも、勤め先で厚生年金に加入していた期間が細切れであり、それを足し合わせると136カ月と、年金をもらえるのに最低必要な「10年分」に届いていた。
(3)もちろん、年金だけでは生活できないので、貯金を取り崩している。それでも、生きている限り、受け取る権利が保障されたお金の存在が、いかに「頼もしい」ことか。
(4)それを実感するのは、生活保護と比べたときだ。
(5)私は地元の社会福祉協議会の仕事として、一人暮らしのお年寄りの金銭管理をお手伝いしている。通帳を預かって現金を引き出し、生活に必要な支払いをする。
(6)なかには生活保護を受けている人もいる。支出が少ないと保護費を使い切らず、結果的に貯金が増えることがある。そうなると本人は、保護費を減らされる心配をしなければならない。「約束」のある年金に比べ、生活保護費の「頼りなさ」が皮膚感覚で理解できた。


 だから、次には「不安あおる報道より『年金増やす』報道を」、と。


(1)年金が「ある」ことの大切さが初めて「腹落ち」した感覚があった。私は心の底から、公的年金制度の安定と強化、信頼の回復を願うようになった。
(2)一方で、記者としての経験は私にこう告げる。〈おまえさんが記事を書く機会を与えられるのは、年金の信頼が揺らぎ、人々が不安を抱く出来事があった時だけじゃないのか?〉
(3)そう。今年6月に発表された金融庁の審議会報告書に端を発した「老後2000万円問題」がまさに典型例だった。私たちメディアは、人々の「恐怖」や「不安」を刺激する話題かどうかで、ニュース価値を判断することが多い。だから報道は、どうしても人々の不安をあおる方向に走りがちなのだ。
(4)メディアは年金制度の足らざるところ、問題点を指摘したのだから、政府が何とかするだろうし、何とかすべきだ――。これが報道する側の従来の感覚だった。だが、そんなスタンスで報道を続けていて、はたして問題は解決していくのだろうか。
(5)人口増と高度成長期ならそれでもよかったろう。いまは人口が減り、少子高齢化で放っておけば年金の給付水準は下がる。この部分だけ取り上げて財政検証の結果を報じれば、記事を読んだ人の不安は増すだけだ。


 最後に、「朝日」は、こうまとめる。


「これからの年金記者は、『年金を増やす』方策、すなわち、より多くの人がより長く働く社会をつくる解決策を徹底的に取材しなければ、読者から見放されるのではないか。いや、そうなるべきだと、まだ『年金記者失格』になりたくない私は思う。」


 確かに、私たちは、「私たちの運度が批判に留まることによって実は体制の維持をしている」ことに気づかされてきた。それは、「自らが『提言機能』を持ち得るか」、ということであった。
「朝日」の「メディアは年金制度の足らざるところ、問題点を指摘したのだから、政府が何とかするだろうし、何とかすべきだ――。これが報道する側の従来の感覚だった。だが、そんなスタンスで報道を続けていて、はたして問題は解決していくのだろうか。」、とはまさしくこのことである。ただ、そこでは私たちもそうであったが、組織全体の方針にすることができるかという問題が常に残されるのであるが。

 ひとつよく分かったことは、記者や新聞社が、決意を持って臨んでいることを、見逃さない必要があるということ。
より多くの人がより長く働く社会をつくるということに向けて。




by asyagi-df-2014 | 2019-09-24 19:46 | 持続可能な社会 | Comments(0)

年金の財政検証から考える。(3)

 年金制度は、人の命に関わる国作りの基本政策である。
 持続可能な社会の実現のために、非常に大きなインパクトを持つ。
 そんな中、安倍晋三政権は2019年8月27日、年金の財政検証を公表した。
今回は、年金の制度設計から、このことを東京新聞社説で考える。
 東京新聞(以下,「東京」)は、「年金制度の将来 安心の底上げを図れ」(2019年8月28日)、と論評した。
 「東京」は、「続く受給額の目減り」、と現行の問題点を指摘するが、「問題は別にある。」、と次のように示す。

(1)将来の公的年金の財政見通しを示す検証結果は、年金額の目減りをあらためて示した。少子高齢化を乗り越える知恵を集め、安心の底上げを図りたい。五年ごとに実施される財政検証は年金制度の健康診断に例えられる。今回の検証結果は政府に言わせると「とりあえず大丈夫」だろうか。だが、それは年金額の目減りと引き換えに制度を持続できるという見通しだ。
(2)年金制度は、現役男性の平均手取り収入の五割を給付額として最低保障することを国民と約束している。それが百年先まで可能かを見通すのが財政検証だ。経済成長が進むケースから進まないケースまでの六通りで試算した。まず、五年後の次の検証時には六割程度を保障できると試算。その上で経済成長が進む三ケースでは将来にわたり制度を維持できる結果となった。制度は現役世代の賃金が財源となるため経済動向の影響を受けるが、将来それがどうなるか分からないのも事実だ。実際、五年前の前回検証で想定した前提と比べると物価や賃金は伸び悩んだ。一方、高齢者など働く人は想定より増えて制度の支え手は増えた。積立金の運用利回りも上昇した。あくまで検証結果は将来を考える目安と理解したい。
 だから、「問題は別にある。」、と。
それは、「制度を維持する仕組みだ。」にあると。


(1)政府は二〇〇四年の制度改正で考え方を大きく変えた。それまでは必要な年金額を賄うために現役世代が払う保険料を決めていた。それでは増える高齢者の年金を支える現役世代の負担が大きくなるため、保険料に上限を設け、そこから得られる財源の枠内で給付を賄うことにした。
(2)そのため年金を受け取っている高齢者の給付を物価や賃金の伸びより抑える仕組みが導入されている。今回の検証でも今後三十年近く給付抑制を続けないと制度を持続できない結果となった。しかも想定通りに抑制できての試算だ。また、政府が約束する最低保障額自体も十分な額かどうかは議論がある。抑制の仕組みは将来世代の年金財源を確保するためには致し方ないが、受給者の生活はとても「百年安心」とは言い難い。
(3)政府は、制度の健全性だけを言うのではなく、制度が抱える課題も丁寧に説明すべきだ。課題解決への努力なくして制度への不安はなくならない。
(4)その課題とは年金額を今後、どう増やしていくのかだ。検証では将来の年金水準を底上げする改善策も試算した。現在二十~六十歳まで四十年間となっている基礎年金(国民年金)加入期間の四十五年への延長、働くと年金が減る在職老齢年金制度の見直し、厚生年金加入年齢の七十歳以上への引き上げ、厚生年金の加入対象者拡大などだ。
(5)いずれも将来の年金水準の引き上げ効果がある。制度改正を求める。特に厚生年金の対象拡大は非正規で働く人の無年金・低年金対策になる。大胆に進めるべきだ。
(6)職場の厚生年金に加入できない非正規の人は自ら国民年金に入るしかないが、年金額は不十分だ。厚生年金に加入できれば保険料負担は減るし年金額は増える。そのため政府は加入要件の緩和を順次進めている。だが、一六年の緩和で対象となった人は約四十万人程度だった。今回の検証では千五十万人に広げると一定の年金水準引き上げ効果が示された。
(7)対象拡大には保険料負担が増える企業の理解が不可欠だ。加入できる職場は人材確保につながるなど、企業側の利点も含め政府はその必要性を粘り強く説くべきだ。
(8)ただ、これらの改善策は将来年金を受け取る世代が対象だ。今、受給している高齢者の生活をどう支えるかも忘れてはならない。
(9)高齢化は長寿化も同時に進む。老後が長くなり年金受給期間は延びている。加えて現役世代の減少である。年金だけで長い老後を支えることは無理があるだろう。


 「東京」は、「支援に複眼の知恵を」、年金の制度設計における基本を,次のように指摘する。。


(1)やはり高齢でも働きたい人が働ける環境の整備は欠かせない。企業には高齢者が能力を発揮できる職場づくりに知恵を絞ってもらいたい。政府の後押しも当然だ。
(2)働けない人への支援策も考えねばならない。低年金の人には10%に引き上げる消費税の財源を使い、十月から最大月五千円を給付する制度が始まる。その拡充も検討に値するのではないか。
(3)安価な住宅供給や住宅手当の給付など支援策は複眼で考えたい。
(4)人口減社会では負担増や給付減など国民に痛みが伴う社会保障制度の改革は避けて通れない。
(5)政府は、負担を分かち合う社会の将来像を示す責任がある。



 「東京」の言う「負担を分かち合う社会の将来像」とがどういうものなのか。
日経新聞の「財源は天から降ってこない。増税なくして持続的に基礎年金の充実を図るのは不可能である。負担と給付に関する大枠の議論を政治が主導して始めるときだ。」にも感じたことだが、どうも、北欧型の社会保障モデルを参考にするという前提を日本という国の方針にするしかないのではないか。



by asyagi-df-2014 | 2019-09-08 08:55 | 持続可能な社会 | Comments(0)

年金の財政検証から考える。(2)

 年金制度は、人の命に関わる国作りの基本政策である。
 持続可能な社会の実現のために、非常に大きなインパクトを持つ。
 そんな中、安倍晋三政権は2019年8月27日、年金の財政検証を公表した。
前回は、日本経済新聞を見てみたが、今回は、今回の年金財政の検証から浮かび挙がる問題点を琉球新報と沖縄タイムス及び朝日新聞の社説から押さえる。


1.年金受給額の割合「所得代替率」の問題

(琉球新報)
(1)公的年金の長期見通しを5年に1度試算する財政検証の結果を厚生労働省が公表した。現役世代の平均手取り収入に対する年金受給額の割合「所得代替率」は2047年度以降、50・8%で下げ止まるとの見通しが示された。
(2)政府が掲げる「代替率50%維持」は達成される見込みというが、経済が順調に成長することを前提にしており、額面通りには受け取れない。「50%」の水準は65歳の受け取り開始時点であり、年齢を重ねるにつれて目減りする。将来的な給付水準は大きく低下することになる。
(3)国民年金(基礎年金)は20歳以上60歳未満の全国民が加入する。会社員や公務員などはこれに上乗せする形で厚生年金に加入する。現役世代が支払った保険料を高齢者への年金給付に充てる仕組みだ。検証によると、経済成長と就業が進む標準的なケースでも、約30年後にモデル世帯の年金の実質的な価値は2割近く減る。基礎年金部分に限れば約3割低下するという。
(4)経済成長が滞って不況に陥った場合は、さらに給付水準は下がる。自営業や短時間労働者など国民年金だけを受給する人は、特に深刻な事態に直面する。国民年金は保険料を40年納めていても満額月約6万5千円だ。納付期間が短いと受給額は下がる。蓄えがなければ生活は成り立たないだろう。
(5)今や働く人の4割が非正規労働者だ。専業主婦のパート層や若年・中年層の非正規労働者が厚生年金に加入すれば、給付水準の改善が見込まれる。保険料は労使折半で負担するため、企業側の理解が不可欠であろう。非正規労働者を正社員化する取り組みも極めて重要だ。

(沖縄タイムス)
(1)老後の生活の柱になる公的年金の長期的な見通しを試算する財政検証は、モデル世帯の年金水準で約30年後に2割近く目減りする結果になった。基礎年金(国民年金)部分に限ると約3割低下する。現役世代の平均手取り収入に比べ、月額でどれだけの年金を受け取ることができるかの割合を示す「所得代替率」は現在の61・7%から50・8%に下がる。政府は「代替率50%維持」を掲げ、制度は持続可能としている。だが、給付水準の目減りは老後生活に大きく影響する。とりわけ低年金で暮らす人の生活を直撃するのは必至、弱者保護の対策が欠かせない。
(2)財政検証は将来の若者と人口比率がどう変わるか、女性や労働参加の進み具合、経済成長の見通しなどを踏まえ、約100年間の公的年金の財政状況や給付水準がどうなるかを試算している。5年に1度検証し、少子高齢化問題などに直面する年金制度の「健康診断」とされる。公的年金は現役世代の納める保険料と税金が主な財源で、現役世代から高齢者へ「仕送り」する仕組みだ。このため支える側と支えられる側の人口比率や経済状況を受けた賃金水準の変化が年金の財政、給付に影響する。
(3)検証では他に(1)会社員らが入る厚生年金の適用対象の拡大(2)働いて一定収入がある人の年金を減額する「在職老齢年金制度」の廃止・縮小(3)受給開始の選択幅を75歳まで拡大-などを実施した場合の影響を見る「オプション試算」も出した。保険料を払う支え手を増やし、年金額を確保する狙いを示している。

(朝日新聞)
(1)年金の水準は、現役世代の平均手取り収入の何割か(所得代替率)で示される。今年度は61・7%だが、経済成長などを見込むケースでも約30年後には51・9~50・8%に低下する。
(2)特に基礎年金は給付を抑えるための調整期間が長く、約3割低下する見通しだ。
(3)いくら年金財政が安定しても、安心して老後を迎えられそうにない。そんな不安をどう解消するのか。政府は高齢者もできるだけ長く働ける環境を整え、年金の受給を遅らせると年金額が割り増しになる仕組みの拡大や、働く高齢者の年金を給料に応じて減額する仕組みの見直しを進める考えだ。基礎年金の保険料を払う期間を20歳から60歳までの原則40年から、65歳までの45年に延ばすことも底上げの効果が大きい。ただし、基礎年金の国庫負担分の財源を考える必要がある。今後の検討課題だろう。


2.少子高齢化や世代間の不公平を是正するための改革を始めとする年金問題

(琉球新報)
(1)少子高齢化によって、保険料を支払う現役世代は減り、年金を受け取る高齢者は増えている。若い世代ほど老後の生活は厳しくなる。試算では、現在20歳の世代が老後に現在と同じ水準の年金を受け取るには66歳9カ月まで働いて保険料を納め続けなければならない。年金の目減りを抑えるには、厚生年金の適用対象を拡大するなど、実効性のある対策を講じる必要がある。
(2)支払う人が減る一方で受け取る人が増え続ける以上、年金財政の悪化は避けられない。これ以上、現在の付けを将来の世代に先送りすることは許されない。世代間の不公平を是正するための改革が求められる。
(3)気になるのは政府の及び腰の姿勢だ。「財政検証」は5年前、6月に公表されていたが、今回は8月下旬までずれ込んだ。参院選で攻撃材料にされることを嫌ったからだと考えられる。「試算に時間を要した」という根本匠厚労相の釈明が本当なら、驚くべき怠慢である。国民生活に密接に関わる課題だけに、政府の勝手な都合で公表を遅らせることがあってはならない。

(沖縄タイムス)
(1)急速な少子高齢化の進行で現役世代は減り、年金を受け取る高齢者は増える。年金制度を維持するために政府が導入したのが「マクロ経済スライド」。賃金や物価の伸びより抑制するため、給付水準は目減りしていく。モデル世帯の夫婦2人の厚生年金は2019年度は22万円だが、検証結果では47年度に24万円となった。額面上は増えるが、物価や賃金の上昇で所得代替率は下がる。国民年金は、19年度は13万円だが、47年度は12万4千円に減る。自営業や短時間労働者など国民年金のみ受給する人は大きな影響が出る。
(2)政府は財政検証を基に9月から制度の安定化や低年金者の対策など改革論議を本格化させ、来年度の通常国会に改正法案を提出する予定だ。年金制度の維持と高齢者が安心して暮らせる給付額のバランスをどうとるか-が問われる。
(3)県内の高齢者の現状は厳しい。2017年度の月平均給付額は厚生年金で12万5338円。国民年金は月5万2134円で47都道府県の中で最低になっている。全国で最も所得が低く、貧困率も全国一高い。非正規労働者が多い労働環境を考えると、今後の目減りの影響は深刻だ。
(4)老後に2千万円の蓄えが必要とした「老後2千万円問題」で年金制度への不安が広がった。政治の出番である。年金制度をどう持続可能なものにするか、与野党とも知恵を出して議論すべきだ。

(朝日新聞)

(1)将来の年金はどうなるのか。人口推計や経済見通しをもとに5年ごとに点検する、年金の財政検証の結果が公表された。高齢化と人口減少が進み、受け取れる年金の水準低下は避けられない。厳しい現実を改めて突きつける内容だ。痛みを和らげるために何ができるのか。結果をもとに、改革の議論を深めなければならない。
(2)働き手を増やす取り組みは重要だ。だがそれだけでは、公的年金に対する安心感を高める効果は限られている。何より急ぐべきは、非正規雇用で働く人などが厚生年金に加入しやすくすることだろう。本人が手厚い年金を受けられるようになるだけでなく、基礎年金の水準低下を抑える効果があることが、財政検証のオプション試算でも示されている。保険料負担が増える中小企業への目配りは必要だが、最優先で取り組むべきだ。
(3)野党の中には、基礎年金には給付抑制をかけないで、一定程度の年金額を保障すべきだという主張もある。しかしそのためには、財源など検討すべき問題が少なくない。年金制度だけで全てを解決するのは難しい。生活が苦しい人への対応は、福祉政策での対応も含めて考えるのが現実的ではないか。
(4)こうした議論の前提となる財政検証はこれまで、作業に使う経済見通しなどを決めてから約3カ月後に公表されていた。今回は6月初旬とみられたが大幅に遅れ、7月の参院選への影響を避けたい政府・与党による先送りだと批判された。そんな疑念を持たれること自体、年金制度への信頼を傷つける。政治状況に左右されぬよう、公表日程のルール化も検討すべきだ。


 この国の将来の年金はどうなるのか。
この国の持続可能性は、このことによる。
「高齢化と人口減少が進み、受け取れる年金の水準低下は避けられない。厳しい現実を改めて突きつける内容だ。痛みを和らげるために何ができるのか。結果をもとに、改革の議論を深めなければならない。」、と朝日新聞は指摘する。また、 日本経済新聞は、「不安定な雇用に甘んじている就職氷河期の世代が高齢化する数十年後は、低年金者の割合がさらに上昇するのは避けがたい。」、とする。
 だが、果たして、この国に違う道はないのか。



by asyagi-df-2014 | 2019-09-06 07:20 | 持続可能な社会 | Comments(0)

年金の財政検証から考える。(1)

 年金制度は、人の命に関わる国作りの基本政策である。
 持続可能な社会の実現のために、非常に大きなインパクトを持つ。
 そんな中、安倍晋三政権は2019年8月27日、年金の財政検証を公表した。
 このことについて、朝日新聞は2019年8月28日、「鬼門の年金検証、3カ月遅れの公表 野党『選挙対策だ』」、と次のように報じた。


(1)政府は27日、前回より約3カ月遅れで年金の財政検証を公表した。参院選での争点化を意図的に避けたとみる野党は批判を強め、早期の国会審議を求める。年金問題は安倍晋三首相の「鬼門」とされているだけに、秋の臨時国会では大きなテーマとなりそうだ。
(2)財政検証の公表を受け、立憲民主党など野党は27日、財政検証に関する合同ヒアリングを国会内で開いた。立憲の長妻昭・元厚生労働相は出席後、「機械的にオプション試算なんてすぐできる。間違いなく選挙対策で遅らせたと認定できる」と指摘。「生身の人間がもらっているお金の話。(年金は)老後の命綱だ」として、閉会中審査や臨時国会の早期開会を求めた。国民民主党の玉木雄一郎代表も同日、訪問先の福岡市で「参院選の前に出せるものを3カ月も遅らせた。大事なことは隠そうという政権の体質が表れている」とし、財政検証をめぐる安倍政権の対応を批判。「国民の大きな関心事で、国会の中でしっかり議論したい」と述べた。野党が攻勢を強めるのは、年金問題を政権の弱点とみているからだ。
(3)第1次安倍政権下の2007年、年金記録のずさんな管理問題が国会の焦点となり、「ミスター年金」と呼ばれた長妻氏らが追及を強め、自民党は同年の参院選で大敗。首相退陣とその後の政権交代につながった。今年7月の参院選を前には老後の生活費が「2千万円不足する」と指摘した金融庁審議会の報告書の受け取りを麻生太郎金融相が拒み、年金に対する国民の不安が高まった。
(4)野党の求めに対し、自民党の国会対策委員会幹部は「議論するなら臨時国会が開いてからすればいい」と、早期の国会審議要求には応じない構えだ。別の自民党国対幹部も「『首相の外交日程が詰まっている』と言ってスルー(無視)すればいい」。政権の鬼門である年金問題の議論に時間を費やしたくないとの思いがにじむ。だが、年金問題は「全世代型社会保障改革」を掲げる安倍政権の優先課題の一つで、議論を避けることはできない。安倍首相は26日、訪問先の仏南西部ビアリッツでの記者会見で「(消費税は)社会保障を全世代型に転換していく上において必要な財源だ。国の信頼を守るためにも必要と考える」と強調し、10月に消費税率を10%に引き上げることを改めて明言した。政府は秋以降に社会保障制度改革の議論を本格化させる方針で、与野党の攻防は激しくなりそうだ。」                         (及川綾子、寺本大蔵)


 さて、今回の年金の財政検証について、8月27日から8月29日までの各新聞は、どのように評価しているのか、
 各新聞の社説・論説等の見出しは次のようになっている。


(1)琉球新報社説-年金財政検証 問題の先送り許されない-2019年8月29日
(2)京都新聞社説-年金財政検証  厳しい見通し直視せよ-2019年8月28日
(3)沖縄タイムス-[年金の財政検証]低給付世帯の対策急務-2019年8月28日
(4)朝日新聞社説-年金財政検証 不安に応える改革を-2019年8月28日
(5)毎日新聞社説-年金財政の検証 見通しに甘さはないのか-毎日新聞2019年8月28日
(6)東京新聞社説-年金制度の将来 安心の底上げを図れ-2019年8月28日
(7)日本経済新聞社説- 年金再改革を政治に迫る財政検証-2019年8月27日
(8)河北新報社説- 年金の財政検証/老後の不安解消には程遠い-2019年8月29日
(9)秋田魁新報社説-年金の財政検証 将来見据え議論加速を-2019年8月29日
(10)岩手日報論説-年金の財政検証 将来見据え議論加速を-2019年8月29日
(11)信濃毎日新聞社説-年金財政検証 厳しさ直視して改革を-2019年8月29日
(12)福井新聞論悦-老後の不安募るばかりだ-2019年8月29日
(13) 神戸新聞社説-年金財政検証/制度改革に踏み出さねば-2019年8月29日
(14)中国新聞社説-年金財政検証 多様化映すモデル示せ-2019年8月29日
(15)山陰中央新報論説-年金財政検証/少子高齢化の現実直視を-2019年8月29日
(16)高知新聞社説-【年金財政検証】不安解消する制度改革を-2019年8月29日
(17)南日本新聞社説- [年金財政検証] 低額受給者の対策急げ-2019年8月9日


 この17社だけでも、その論調の特徴は、問題点の指摘と制度改革の必要性を指摘、批判するものばかりである。
 「不安に応える改革を」「問題の先送り許されない」「厳しい見通し直視せよ」「低給付世帯の対策急務」「安心の底上げを図れ」「老後の不安解消には程遠い」「老後の不安募るばかりだ」「少子高齢化の現実直視を」と並べるだけで理解できるし、それは、「年金再改革を政治に迫る財政検証」「将来見据え議論加速を」「厳しさ直視して改革を」「制度改革に踏み出さねば」「不安解消する制度改革を」「多様化映すモデル示せ」、と制度改革そのものを要求したものになっている。
 つまり、安倍晋三政権の年金政策は、持続可能な名社会を担保するものにはなっていないということである。


 ここでは、日本経済新聞の社説「年金再改革を政治に迫る財政検証」(2019年8月27日)を取りあげる。
日本経済新聞は、「厚生労働省が年金財政の検証結果を、同相の諮問機関である社会保障審議会年金部会に提出した。厚生年金・国民年金の財政健全度を今後100年の超長期にわたって推計し、若い世代に将来像を示す重要な作業だ。結果からは、基礎年金の最低保障機能の強化や、低成長が続くなかでも年金の実質価値を毎年下げるルールへの改定など、一段の制度改革の必要性が読み取れる。」、と指摘している。
 ここでは、改めて、年金財政の検証とは、「厚生年金・国民年金の財政健全度を今後100年の超長期にわたって推計し、若い世代に将来像を示す重要な作業だ。」(日本経済新聞)、ということであることが確認できる。
 また、日本経済新聞は、破局のシナリオと政策の変換について、具体的に指摘する。


1.破局のシナリオ
(1)厚労省が年金の定期健診と呼ぶ財政検証は、2004年の年金改革法によって原則5年に1度の実施が義務づけられている。09年、14年に続く3度目の検証で浮かんだのは、若い世代にとって十分な年金が確保できない恐れだ。同省は「夫が会社員、妻が専業主婦だった高齢夫婦」をモデル世帯としている。年金の支給水準を表す指標は、男性会社員の平均手取り所得に対するモデル世帯の年金額の比率を示す所得代替率を用い、経済前提は6通り用意した。
(2)このなかで賃金・物価の上昇率が低い3つのケースは、将来の所得代替率が政府目標の50%を下回る。なかでも賃金・物価の上昇率を最も低く見積もったケースは、2050年代に国民年金の積立金が枯渇し、代替率は30%台後半に急落することを確認した。破局のシナリオといってよかろう。
(3)厚労省は社保審年金部会で、賃金・物価の上昇率が高いケースを挙げ、将来も代替率50%確保は可能だと強調した。また、非正規社員の厚生年金への加入促進などによって代替率の低下に歯止めをかけられるという試算をもとに、関連法の改正案を20年の通常国会に出す意向が示された。


2.政策の変換
(1)年金部会の委員の間でも成長戦略を求める声が出た。その重要性は論をまたない。しかし不本意にも低い成長が続く場合に備え、打っておくべき手を提案するのが審議会本来の役割ではないか。
(2)最大の問題は、年金の実質価値を毎年小刻みに切り下げるマクロ経済スライドには下限があり、賃金・物価の上昇率が低いときには作用せず、しわ寄せが若い世代に集中する仕組みにある。
(3)仮に日本経済がデフレから抜け出せなくても、賃金・物価の動向にかかわらず実質価値を下げるようにルールを改定すべきだ。マクロ経済スライドには基礎年金を著しく目減りさせる副作用がある。これは、低年金の単身女性などにとって深刻な問題だ。消費税収をうまく使って基礎年金の最低保障機能を強化するなど、財源論とセットで本格的な制度改革にカジを切るときである。
(4)所得代替率の低下を緩やかにするには、基礎年金の加入期間を40年から45年に延ばすのも有効だと厚労省は説明した。日本人の長寿化に伴って高齢者の就労率は高まっている。加入期間の延長は検討課題になりうるだろう。
(5)ただしそのぶん年金を増やすなら、必要になる税財源の確保が欠かせない。安倍晋三首相は参院選前の党首討論で、税率10%後の消費増税について「例えば、今後10年間くらいは上げる必要がないと思う」と述べている。
(6)財源は天から降ってこない。増税なくして持続的に基礎年金の充実を図るのは不可能である。負担と給付に関する大枠の議論を政治が主導して始めるときだ。


 さらに、日本経済新聞は、「モデル世帯の設定のあり方」と「検証結果の公表時期」について、次のように指摘する。


(1)不安定な雇用に甘んじている就職氷河期の世代が高齢化する数十年後は、低年金者の割合がさらに上昇するのは避けがたい。最低保障の強化をめざす方向性は、参院選でほとんどの政党が公約に取り入れた。与野党共同で改革案を練るのが理想であろう。
(2)また、50%の所得代替率を確保する対象として「夫が会社員を40年、妻は一度も働きに出たことがない主婦」という高度成長期に多数派だった夫婦像をモデル世帯にするやり方は、時代にそぐわなくなりつつある。
(3)これは、誰もが現役の収入の5割の年金がもらえるという虚構を振りまく一因にもなっている。過去との比較で、モデル世帯の代替率を指標に使うのはやむを得まいが、年金の実情を若い世代に明快に説くためにも、単身や共働きなど多様化する世帯像を前提にした見せ方を工夫してほしい。
(4)前回は6月初めだったが、今回は3カ月ほど遅れた。その間には参院選があった。選挙前の公表に待ったをかける政治の圧力はなかったのか。こうした疑念が若者の年金不信を高めていることを与党政治家は自覚してほしい。


 今回の日本経済新聞の社説から、次のことを受け取る。


Ⅰ.「年金部会の委員の間でも成長戦略を求める声が出た。その重要性は論をまたない。しかし不本意にも低い成長が続く場合に備え、打っておくべき手を提案するのが審議会本来の役割ではないか。」との日本経済新聞の指摘は、審議会だけでなく政府そのものの姿勢と捉えなければならない。
Ⅱ.「財源は天から降ってこない。増税なくして持続的に基礎年金の充実を図るのは不可能である。負担と給付に関する大枠の議論を政治が主導して始めるときだ。」、とは北欧型の社会保障モデルを参考にするという前提が必要であること。。
Ⅲ.持続可能な社会を実現するために重要な年金制度の財政検証公表は、政治的に利用されてはならない。





by asyagi-df-2014 | 2019-09-05 05:52 | 持続可能な社会 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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