カテゴリ:人権・自由権( 54 )

最高裁第一小法廷は、大崎事件の第三次再審請求審で、福岡高裁宮崎支部と鹿児島地裁の決定を取り消し、再審請求を棄却する決定。

 東京新聞は2019年6月27日、「大崎事件 再審取り消し 最高裁 鑑定の証明力否定」、と次のように報じた。


(1)鹿児島県大崎町で一九七九年に男性の遺体が見つかった「大崎事件」で、殺人罪などで服役した義姉の原口アヤ子さん(92)が裁判のやり直しを求めた第三次再審請求審で、最高裁第一小法廷(小池裕裁判長)は、再審開始を認めた福岡高裁宮崎支部と鹿児島地裁の決定を取り消し、再審請求を棄却する決定をした。再審を認めない判断が確定した。二十五日付。裁判官五人全員一致の意見。 
(2)最高裁は、一、二審が重視した弁護側が新証拠として提出した法医学鑑定を検討。鑑定は、確定判決が「窒息死と推定される」とした男性の死因について、「転落事故による出血性ショックの可能性が極めて高い」と指摘していた。
(3)最高裁は鑑定について、写真だけでしか遺体の情報を把握できていないことなどを挙げ、「死因または死亡時期の認定に、決定的な証明力を有するとまではいえない」と判断した。
(4)有罪の根拠となった「タオルで首を絞めた」などとする元夫ら親族三人の自白については、「三人の知的能力や供述の変遷に問題があることを考慮しても、信用性は強固だといえる」と評価。「法医学鑑定に問題があることを踏まえると、自白に疑義が生じたというには無理がある」とした。
(5)最高裁は「鑑定を『無罪を言い渡すべき明らかな証拠』とした高裁支部と地裁の決定を取り消さなければ著しく正義に反する」と結論づけた。
(6)弁護団は二十六日、東京都内で記者会見し、「許し難い決定だ」と批判。第四次再審請求を検討するとした。
(7)第三次再審請求審では、鹿児島地裁が二〇一七年六月、目撃証言の信用性を否定する心理学者の鑑定や法医学鑑定を基に、再審開始を認めた。一八年三月の福岡高裁宮崎支部決定は、心理鑑定の証拠価値は認めなかったが、「法医学鑑定と整合せず不自然」などとして親族らの自白の信用性を否定し、再審開始決定を維持した。


 この最高裁の判断について、朝日新聞(以下、「朝日」)は2019年6月28日、「大崎事件 再審の門を狭めるな」、と社説で論評した。
 「朝日」は、「冤罪はあってはならないという観点から事件を見直すことよりも、法的安定性を優先した決定と言わざるを得ない。」、との主張の根拠を次のように示す。


(1)40年前に鹿児島県大崎町で男性が遺体で見つかった事件で、最高裁が、裁判のやり直しを認めた地裁と高裁の判断をいずれも取り消し、再審を求めていた女性の訴えを退けた。極めて異例な事態である。
(2)もちろん確定した判決が簡単にひっくり返ってしまっては司法への信頼はゆらぎ、社会に悪影響を及ぼす。だが事件の経緯を振り返ると、最高裁の結論には釈然としない思いが残る。
(3)最大の争点は男性の死因だった。確定判決は「窒息死」としていたが、再審請求審で弁護側は、転倒事故による「出血性ショック死」の可能性が高いとする法医学者の新鑑定を提出。高裁は、これを踏まえると確定判決には様々な矛盾や不合理が生じるとして、裁判のやり直しを決めた。
(4)しかし最高裁は、遺体そのものではなく写真を基にしているなど、新鑑定がかかえる問題点を複数指摘し、「高裁の評価は間違っている」と述べた。
(5)この事件では、窒息死させる際に使ったというタオルが見つかっておらず、また、女性の共犯とされた関係者3人の供述は不自然に変遷していた。3人には知的障害があり、捜査員による誘導が生じやすいケースだ。そもそも窒息死という所見も、すでに腐敗していた遺体を解剖した医師が「消去法」で推定したものだと、当の医師が認め、後に見解を変えている。
(6)そんな脆弱(ぜいじゃく)な証拠構造の上にある判決であっても、いったん確定した以上は、よほど明白な事情がなければ覆すべきではない――。それが棄却決定を通して見える最高裁の考えだ。「疑わしきは被告人の利益に」という、再審にも適用される鉄則に照らし、妥当だろうか。
(7)女性が再審を請求したのは3回目で、1回目でも死因に疑問が呈され、地裁が開始決定を出している(後に取り消し)。つまり今回の最高裁決定以前に事件に関与した八つの裁判体のうち三つが、有罪としたことに疑問を抱いているのだ。


 最後に、「朝日」は、「近年、DNA型鑑定をはじめとする科学技術の進展や、検察の手持ち証拠の開示の拡大により、冤罪が晴れる例が続く。再審開始決定に従わず、上訴を繰り返す検察に疑問が寄せられ、そのあり方も含めて、再審に関する法制度を整備しようという機運が盛りあがっている。今回の決定で、こうした流れが逆行することは許されない。裁判に誤りがあった場合は速やかに正す。そのための最善の方策を追求し続けねばならない。」、と断じる。


 今回の最高裁の決定では、最高裁の考え方には、脆弱な証拠構造の上にある判決であるにもかかわらず、最高裁がいちど確定した以上、よほど明白な事情がなければ覆すべきではない、という強い意志が窺える。
 つまり、「冤罪はあってはならないという観点から事件を見直すことよりも、法的安定性を優先した決定と言わざるを得ない」(「朝日」)ということになる。
 また、「『疑わしきは被告人の利益に』という、再審にも適用される鉄則に照らし、妥当だろうか。」(「朝日」)という観点からすれば、この鉄則を大きく逸脱している。



by asyagi-df-2014 | 2019-07-14 07:00 | 人権・自由権 | Comments(0)

ハンセン病家族訴訟で、国の責任認める初の判決。(2)

 毎日新聞は2019年6月28日、ハンセン病家族訴訟について、「約90年に及んだハンセン病患者への隔離政策により家族も深刻な差別を受けたとして、元患者家族561人が、国に1人当たり550万円の損害賠償と謝罪を求めた集団訴訟の判決で、熊本地裁は28日、国の責任を認め、原告541人に対し、1人当たり33万~110万円(総額3億7675万円)を支払うよう命じた。元患者の家族による集団訴訟の判決は初めて。」、と報じた。


 「裁判官は初めて聞かれる話ばかりだったかもしれないが、懸命に聞いておられた。ぜひ素直に受け止めてほしい」(朝日新聞)との原告の声に、裁判所はどのように立ち向かうことができたのか。
ハンセン病家族訴訟弁護団(以下、「弁護団」)は2019年6月28日、「声明」を発表した。
 この「声明」からこの判決の意味を考える。
 「弁護団」は、「本日、熊本地方裁判所は、ハンセン病であった者の『家族』ら561名が原 告となり提起した訴訟において、ハンセン病隔離政策が病歴者本人のみならず その家族らに対しても違法な人権侵害であったことを認める判決を言い渡した。」、と判決の意味を押さえる。
また、判決内容そのもについて、次のように把握する。


(1)本判決は、らい予防法及びそれに基づく隔離政策が、病歴者の家族に対して も違法であったとして、厚生大臣及び国会議員の責任を認めたのみならず、らい予防法廃止後にも厚生及び厚生労働大臣、法務大臣、文部及び文部科学大臣に対し、家族に対する差別偏見を除去すべき義務に反した責任を認めた画期的判決である。
(2)その一方で、平成14年以降の国の違法行為を認めず、一部の原告の請求を 棄却した点は不当と評価せざるを得ない。
(3)しかし、違法行為の終期に関する法的評価にかかわらず、いまだ社会的に無視できない程度のハンセン病患者家族に対する差別被害が残っていることは裁判所も認めたとおりであり、その解消に国が責任を負うべきことに変わりはない。
(4)家族らは、誤った強制隔離政策が実行されていた当時はもちろんのこと、同政策が廃止された後も、その多くが病歴者と切り離され続け、誰にも打ち明けることができず、孤立させられていたために、被害の実態を自ら明らかにし難かった。しかし、国の隔離政策により作出され助長されたハンセン病に対する差別偏見は、患者本人だけでなく、家族らも確実にその渦中に陥れてきたのであり、家族らは、偏見差別をおそれるあまり秘密を抱えて生きることをも強いられ、まさに人生の有り様を変えられてしまう「人生被害」を受けてきた。


 「弁護団」は、「声明」の最後に、日本政府への要求と自らの決意を、次のように表明する。


(1)本訴訟は、当初59名の原告で始まった第1次提訴後、裁判の存在を知った多くの家族から声が上がり、わずか数カ月で500名を超える原告による第2次提訴となった。この原告数こそ、家族被害の深刻さと現在性、ひいては社会内におけるハンセン病問題が全面解決に至っていないことを如実に示すものである。 国は、本判決を真摯に受け止め、控訴することなく直ちに同判決の内容を履 行するとともに、差別・偏見の解消、家族関係の回復に向けて、直ちに我々と協議を開始すべきである。
(2)我々は、ハンセン病問題の真の解決に向けて、なお一層の力を尽くす所存である。本訴訟を支援していただいた市民の方々に、心から御礼を申し上げるとともに、真の全面解決まで、一層のご理解とご支援をお願いする次第である。  


 真の全面解決まで、ともにあることを誓う。




by asyagi-df-2014 | 2019-07-09 07:59 | 人権・自由権 | Comments(0)

「政府はどんな場合もジャーナリストへの非難をやめるべきだ」、との意味を噛みしめろ。(2)

 朝日新聞は2019年6月7日、ジュネーブからの「国連報告者の勧告 表現の自由侵害許されぬ」、と次のように報じている。


(1)言論と表現の自由に関する国連の特別報告者デービッド・ケイ氏が、日本のメディアは政府当局者の圧力にさらされ、独立性に懸念が残るとの報告書をまとめた。「政府はどんな場合もジャーナリストへの非難をやめるべきだ」とした。
(2)ケイ氏は2016年に日本を訪問し、翌年に報告書をまとめて勧告を行った。今回は続報として勧告の履行状況などを報告。政府に対する勧告11項目のうち、放送番組の「政治的公平」などを定めた放送法4条の撤廃、平和的な集会や抗議活動の保護など9項目が履行されていないとした。
(3)今回、ケイ氏からの問い合わせに日本政府は答えなかったとしている。報告書は国連人権理事会に提出され、審議されるが、勧告に法的拘束力はない。


 今回は、このことについて信濃毎日新聞(以下、「信毎」)の社説で考える。
「信毎」は、「言論・表現の自由 政府は批判を受け止めよ」、との主張の根拠を次のように指摘する。



(1)言論と表現の自由に関する国連の特別報告者デービッド・ケイ氏がまとめた新たな報告書は、日本でメディアの独立性に現在も懸念が残るとした。2017年の報告書に盛った勧告を日本政府がほとんど履行していないと批判している。政府は重く受け止めるべきだ。
(2)特別報告者は国連人権理事会の任命を受け、事実調査・監視を行う専門家だ。17年の報告書は特定秘密保護法などで報道が萎縮している可能性を指摘し、「政府による介入の根拠となる放送法4条の廃止」など11項目を勧告した。
(3)今回、9項目を「未履行」と評価している。他の2項目は「一部履行」と「評価できるだけの十分な情報がない」である。


 また、「信毎」は、日本政府の対応についても指摘する。


(1)政府は「不正確かつ根拠不明のものが多く含まれ、受け入れられない」と批判している。聞く耳を持たない姿勢が鮮明だ。
(2)前回の報告書をまとめる際、ケイ氏は放送関係の法令を所管する総務相に面会を申し入れた。しかし、総務省が「国会会期中」を理由に拒絶した経緯がある。敬意を欠く不誠実な対応だった。


 「信毎」は、デービッド・ケイ氏の報告書について、次のように評価する。


(1)11項目には、メディアの立場から賛同しにくいものもある。例えば、放送法4条だ。放送の在り方について▽公安、善良な風俗を害しない▽政治的に公平―などを挙げる。政治の介入に対する防波堤にもなり得る規定である。
(2)それでも、基本的な問題意識は適切で同意できる。
(3)新たな報告書は、政府に批判的なジャーナリストらへの当局者による非難は「新聞や雑誌の編集上の圧力」と言えるとした。沖縄の米軍基地建設などへの抗議活動に当局の圧力が続いているとし、集会と表現の自由を尊重するよう政府に要請している。
(4)現政権下、報道への政治介入が続いている。自民党は昨年の総裁選で「公平・公正な報道」を求める文書を送った。首相官邸が東京新聞記者の質問を「事実誤認」とし、質問制限と取れる要請文を記者クラブに出した問題もある。
(5)沖縄では抗議活動に絡み威力業務妨害などの罪に問われた山城博治沖縄平和運動センター議長の有罪が確定した。報告書は、表現の自由の権利行使を萎縮させる恐れがあると懸念を示している。
(6)いずれも憲法が保障する表現の自由に対する政権の無理解の表れだ。元々、政府は「不正確で不十分な内容」と報告書に反論していた。勧告に法的拘束力はない。だからといって無視し続ければ、国際社会の信頼を損ないかねない。


 確かに、デービッド・ケイ氏の「新たな報告書」の指摘の少なく「東京」の次のことは正しい。

(1)政府に批判的なジャーナリストらへの当局者による非難は、『新聞や雑誌の編集上の圧力』であること。
(2)沖縄の米軍基地建設などに向けた抗議活動への当局の圧力は、『集会と表現の自由の侵害』であること。




by asyagi-df-2014 | 2019-06-16 06:55 | 人権・自由権 | Comments(0)

「政府はどんな場合もジャーナリストへの非難をやめるべきだ」、との意味を噛みしめろ。

 朝日新聞は2019年6月7日、ジュネーブからの「国連報告者の勧告 表現の自由侵害許されぬ」、と次のように報じた。


(1)言論と表現の自由に関する国連の特別報告者デービッド・ケイ氏が、日本のメディアは政府当局者の圧力にさらされ、独立性に懸念が残るとの報告書をまとめた。「政府はどんな場合もジャーナリストへの非難をやめるべきだ」とした。
(2)ケイ氏は2016年に日本を訪問し、翌年に報告書をまとめて勧告を行った。今回は続報として勧告の履行状況などを報告。政府に対する勧告11項目のうち、放送番組の「政治的公平」などを定めた放送法4条の撤廃、平和的な集会や抗議活動の保護など9項目が履行されていないとした。
(3)今回、ケイ氏からの問い合わせに日本政府は答えなかったとしている。報告書は国連人権理事会に提出され、審議されるが、勧告に法的拘束力はない。

 この国連報告者報告書について、琉球新報(以下、「新報」)は2019年6月7日、「国連報告者の勧告 表現の自由侵害許されぬ」、と社説で論評した。
「新報」は、「日本の『表現の自由』が危機にひんしている。政府はケイ氏の批判を真摯に受け止め、集会の自由や表現の自由を脅かす一切の行為をやめるべきだ。」、と断じる根拠について、次のように指摘する。


(1)日本の「表現の自由」が危機にひんしている。
(2)言論と表現の自由に関する国連の特別報告者デービッド・ケイ氏が新たな報告書をまとめ、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設への抗議活動などに対し当局による圧力が続いているとして、集会と表現の自由を尊重するよう日本政府に求めたのである。政府はケイ氏の批判を真摯に受け止め、集会の自由や表現の自由を脅かす一切の行為をやめるべきだ。


 また、「新報」は、国連報告書の意味について、次のように示す。


(1)国連の特別報告者は、国連人権理事会から任命され、特定の国やテーマ別の人権状況について調査・監視する役割を担う。いかなる政府や組織からも独立した資格を持つ。ケイ氏は国際人権法や国際人道法の専門家だ。
(2)2017年の報告書は、日本の報道が特定秘密保護法などで萎縮している可能性に言及し、同法の改正と、政府が放送局に電波停止を命じる根拠となる放送法4条の廃止などを勧告した。
(3)沖縄の米軍基地建設の抗議活動への圧力に懸念を示し、公共政策への反対表明の自由は侵害されるべきでなく、抗議活動や取材を行えるよう政府に努力を促していた。
(4)新たな報告書は、勧告がほとんど履行されていないとして、改めて日本政府を批判している。
(5)世界的な視点に立つケイ氏の指摘は重い。表現の自由を巡る日本の現状が国際基準を大きく逸脱していることが、再び白日の下にさらされた。国民にとって極めて憂慮すべき事態である。人権がないがしろにされているからだ。

 「新報」は、最後に次のように結論づける。


(1)言うまでもなく、表現の自由は民主政治の基盤となる重要な基本的人権である。この権利が恣意(しい)的に制限されると、体制側に不都合な情報がことごとく隠蔽(いんぺい)される状況が容易に生み出される。
(2)選挙の際に公正な判断材料が得られず、体制を改めることもおぼつかなくなる。その結果、民主主義の根幹は大きく揺らいでしまう。
(3)名護市辺野古の新基地建設現場では、反対する市民らの抗議や取材を規制する動きが顕著だ。資材が搬入される米軍キャンプ・シュワブのゲート前では、座り込んで抗議する市民らの強制排除が警察によって続いている。独裁国家でしか見られないような光景が、沖縄では堂々と県民の眼前で繰り広げられている。国際基準に照らせば明らかに人権侵害だ。
(4)記者が取材妨害を受けて、現場から追い出されたり、撮影をやめさせられたりしたこともあった。
(5)ケイ氏の報告書について菅義偉官房長官は「不正確かつ根拠不明のものが多く含まれ、受け入れられない」と一蹴した。国連の特別報告者を軽んじる態度であり、国際社会の一員として不適切だ。国の信用にも関わる。
(6)集会や表現の自由をないがしろにすることは許されない。政府に猛省を促したい。


 確かに、「世界的な視点に立つケイ氏の指摘は重い。表現の自由を巡る日本の現状が国際基準を大きく逸脱していることが、再び白日の下にさらされた。国民にとって極めて憂慮すべき事態である。人権がないがしろにされているからだ。」、とは安倍晋三政権を糾弾する。




by asyagi-df-2014 | 2019-06-15 06:00 | 人権・自由権 | Comments(0)

仙台地裁、強制不妊訴訟で、旧優生保護法が違憲だったと判断したが手術を実施させた国の責任を認めず、原告側の請求を棄却。

 宮城県内の女性が国に損害賠償を求めた訴訟で仙台地裁は2019年5月28日、旧優生保護法が違憲だったと判断したが国の責任を認めず、原告側の請求を棄却した。
このことについて、朝日新聞は、同日、次のように報じた。


(1)旧優生保護法の下で知的障害を理由に不妊手術を強制されたのは違法だとして、宮城県内の60代と70代の女性が国に損害賠償を求めた訴訟の判決が28日、仙台地裁(中島基至裁判長)であった。判決は旧優生保護法が違憲だったと判断したうえで、手術を実施させた国の責任を認めず、原告側の請求を棄却した。
(2)判決は、「生殖の権利」(リプロダクティブ・ライツ)が憲法13条によって保障されており、旧優生保護法による強制不妊手術はこれを侵害すると判断。そのうえで、手術から20年の「除斥期間」が経過したため、損害賠償を請求する権利が消滅していると述べた。国会が原告を救済する法律を立法しなかったという責任も認めなかった。
(3)強制不妊手術をめぐっては全国7地裁に20人が提訴しており、判決は初めて。 (志村英司、山本逸生)


 「生殖の権利」(リプロダクティブ・ライツ)は、1994年にカイロで開かれた国際人口・開発会議で提唱され、95の世界女性会議で合意された概念。
 この概念の意味は、人々が生殖の過程で、身体的、精神的、社会的に良好な状態であること、また、それを享受する権利を持つこと。さらに、子どもを持つか持たないか、いつ持つか、何人持つかを決める権利、安全な避妊法についての情報やサービスを入手する権利も含まれるとされる。




by asyagi-df-2014 | 2019-05-28 19:15 | 人権・自由権 | Comments(0)

アイヌ民族を「先住民族」と位置付けたアイヌ民族に関する新法が成立。(1)

 北海道新聞(以下、「北海道」)は2019年4月19日、表題について次のように報じた。


(1)法律で初めてアイヌ民族を「先住民族」と位置付けたアイヌ民族に関する新法は19日の参院本会議で、日本維新の会・希望の党を除く与野党各会派の賛成多数で可決、成立した。交付金制度創設などを通じ、従来の福祉、文化施策から地域振興を含む総合施策に踏み出す転換点となる。菅義偉官房長官は成立後の記者会見で「アイヌ民族の意見を尊重しながら、実効性のあるアイヌ施策を実施できるようさらなる検討に努めていきたい」と述べた。
(2)新法はアイヌ民族の誇りを尊重し共生社会を目指すことを目的とし、差別を禁ずる基本理念を盛り込んだ。交付金制度は、アイヌ文化継承や観光振興などにつながる事業を含んだ地域計画を策定した市町村が対象。文化伝承を目的としたサケの捕獲、国有林内の樹木採取などにも特例措置が施される。すでに道内の約40市町村が交付金制度に関心を示しており、政府は法施行後、速やかに制度の基本方針を作る考えだ。


 このことについて、どのように捉えることができるのか、「北海道」の社説で考える。
 「北海道」は、「アイヌ新法成立 民族復権へ不断の改善を」、と論評した。
今回の新法成立に関して、まず、「法律に初めて、アイヌ民族を「先住民族」と明記した。その意義は大きい。」、と評価する。
一方、「アイヌ民族の誇りを尊重し、共生社会の実現を目指す新法がきのう、参院本会議で与野党の賛成多数で可決、成立した。しかし、新法成立はゴールではない。今なおアイヌ民族への差別は残り、肝心の先住民族の権利を巡っては、国際水準に大きく後れを取っているからだ。政府と国会は、新法を第一歩と位置づけ、今後も権利保障に向け不断の改善を図る必要がある。」、と指摘する。
また、「北海道」は、何故、評価に値するのかについて、次のように示す。


(1)新法は、従来の文化、福祉施策から、地域振興を含めた総合施策へと踏み出す根拠法となる。
(2)特例措置として、文化伝承を目的とした国有林の林産物採取やサケ捕獲、アイヌ文化関連の商品に関する商標登録の手数料軽減を盛り込んだ。また、アイヌ文化の保存や継承、観光や産業振興、交流促進を含む地域計画を市町村が作成し、国が認定すれば交付金が出る。
(3)重要なのは、新法がこうした計画について、「アイヌの人々の自発的意思の尊重に配慮しつつ行わなければならない」と定めていることだ。計画の内容に、アイヌ民族の主体的な意思が確実に反映されなければ、復権にはつながるまい。
(4)国や自治体はこの点を常に念頭に置き、計画づくりを後押しするべきだ。


 「北海道」は、次のような課題や懸念も、あわせて指摘する。


(1)胆振管内白老町に2020年4月開設予定の「民族共生象徴空間(ウポポイ)」は、アイヌ文化振興拠点と位置づけられている。ただ、政府の姿勢は観光に偏りすぎてはいないか。
(2)政府は、ウポポイ開設を20年の東京五輪前にこだわり、「年間来場者100万人」の目標を設定した。安倍晋三首相も1月の施政方針演説で、ウポポイを「観光立国」の項目の中で触れている。
(3)ウポポイは、アイヌ民族の権利と尊厳を発信し、息長く復権活動を支えていく場である。この基本を忘れてはならない。
(4)アイヌ民族が求めた生活・教育の支援策は明文化されなかった。
(5)道が道内に住むアイヌ民族を対象に17年度に行った生活実態調査によると、その地域平均と比べ、生活保護率は4ポイント高く、大学進学率は12・5ポイント低かった。「差別を受けたことがある」と答えた人も2割を超える。
(6)新法は、基本理念でアイヌ民族に対する差別や権利侵害を禁じたが、実効性を確保する具体策が欠かせない。支援策の明文化に向けた再検討も求められよう。
(7)明治以降、政府は狩猟漁労によるアイヌ民族の生業を奪い、同化政策を進め、土地や文化、言葉などを奪ってきた。格差や差別がなくならない背景には、こうした歴史的経緯があるのは明らかだ。ところが、新法には法制化を必要とした理由が記されなかった。このため、「アイヌ民族にだけ特権を与えている」といった偏見を生むとの懸念も出ている。
(8)アイヌの人々が虐げられてきた歴史を考えれば、「特権」批判などできないはずだ。政府は過去を直視して心から謝罪し、国民に丁寧に説明を尽くす責務がある。


 最後に、「北海道」は、「国際水準へ高めたい」、との新法成立後の課題を明確にする。


(1)権利保障に関し、衆参両院の国土交通委員会は、07年に国連総会で採択された「先住民族の権利に関する国連宣言」の趣旨を踏まえることを付帯決議に盛り込んだ。
(2)国連宣言には、自治権や教育権、土地やサケなど自然資源の利用権などが含まれており、日本も賛成票を投じている。これを受け、08年に衆参両院は「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」を採択し、新法を制定する流れができた。この過程を振り返れば、付帯決議を空文化させることがあってはならない。政府は国連宣言に沿って、施策の充実を図るべきだ。
(3)日本の先住民族政策の貧弱さは国連などで指摘されてきた。
(4)カナダは、儀式や文化伝承だけでなく、自家消費のためのサケの漁業権を認めている。
(5)米国は自治権や居留地での狩猟や漁業を認め、ノルウェーは先住民族の言語を公用語化し、独自の大学や議会を設けた。
(6)2000年のシドニー五輪では、オーストラリアの先住民族アボリジニが先住権などの問題を提起して復権が進んだ。
(7)これを参考に、オーストラリア国立大のテッサ・モーリス・スズキ名誉教授は、東京五輪をアイヌ民族による発信の機会とすることを提言している。


 この上で、「北海道」は、最後に、「アイヌ民族の声に真摯(しんし)に耳を傾け、国民一人一人が先住民族の権利に関する理解を深め、権利回復を前進させなければならない。」、と主張する。


 確かに、法律で初めてアイヌ民族を「先住民族」と位置付けたことは、評価に値する。
ただ、相も変わらず、日本政府は新法の実効性を確保する具体策を明文化していない。
 国際社会からの批判に対して、形を整えるまでの水準に留めるという逃げ場を作ることが、日本政府の常套手段になっているのではないか。



by asyagi-df-2014 | 2019-05-08 06:45 | 人権・自由権 | Comments(0)

アイヌ民族を「先住民族」と位置付けたアイヌ民族に関する新法が成立。(2)

 北海道新聞(以下、「北海道」)は2019年4月19日、表題について次のように報じた。


(1)法律で初めてアイヌ民族を「先住民族」と位置付けたアイヌ民族に関する新法は19日の参院本会議で、日本維新の会・希望の党を除く与野党各会派の賛成多数で可決、成立した。交付金制度創設などを通じ、従来の福祉、文化施策から地域振興を含む総合施策に踏み出す転換点となる。菅義偉官房長官は成立後の記者会見で「アイヌ民族の意見を尊重しながら、実効性のあるアイヌ施策を実施できるようさらなる検討に努めていきたい」と述べた。
(2)新法はアイヌ民族の誇りを尊重し共生社会を目指すことを目的とし、差別を禁ずる基本理念を盛り込んだ。交付金制度は、アイヌ文化継承や観光振興などにつながる事業を含んだ地域計画を策定した市町村が対象。文化伝承を目的としたサケの捕獲、国有林内の樹木採取などにも特例措置が施される。すでに道内の約40市町村が交付金制度に関心を示しており、政府は法施行後、速やかに制度の基本方針を作る考えだ。


「北海道」は、アイヌ民族が法律に初めて「先住民族」と明記されたことを受け、「アイヌ新法成立 民族復権へ不断の改善を」、と一定の評価した。
一方、国際機関からの再々の報告がなされているのにかかわらず、日本政府からは「先住民族」とは認められない沖縄は、このことをどのように把握しているのかについて、沖縄からの見解を基に考える。
沖縄タイムス(以下、「タイムス」)は2019年4月24日、[アイヌ新法成立]民族復権につなげたい」、と社説で論評した。
「タイムス」は、次のように押さえている。


(1)アイヌ民族を初めて「先住民族」と明記した新法「アイヌ民族支援法」が国会で成立した。北海道旧土人保護法が廃止され、アイヌ文化振興法ができたが、新法は振興法に代わるものである。新法は「アイヌの人々が民族としての誇りを持って生活することができ、その誇りが尊重される社会の実現を図る」ことをうたっている。
(2)アイヌであることを理由に差別や権利侵害をしてはならないことを明記し、アイヌ政策を国や自治体の責務と定めている。市町村が産業、観光などアイヌ文化を生かした地域振興策を作ると、国が交付金を支出するのが柱だ。
(3)1899年に制定され1997年まで続いた「北海道旧土人保護法」による同化政策で、アイヌ民族は土地を奪われ、狩猟や漁業が制限された。日本語を強制され、独自文化も衰退した。言葉が奪われる政策は沖縄を想起させる。


 また、「タイムス」は、この新法の問題点を、次のように指摘する。


(1)新法は先住民族への配慮を求める国際的な要請の高まりに応えたものである。2007年に国連で「先住民族の権利宣言」が採択され、08年には衆参両院で「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」が採択された。
(2)新法には国連宣言で民族の権利とされた自決権や教育権などが盛り込まれず、付帯決議で国連宣言を尊重するよう政府に求めるにとどまった。民族儀式に使う林産物の国有林での採取や河川での伝統的なサケ漁の許可を簡素化するが、本来はアイヌ民族が奪われた土地や資源である。新法には先住民族の権利は明記されておらず、国際水準からは程遠い。
(3)アイヌ民族に対するいわれのない差別や生活・教育格差は依然、存在する。新法に生活・教育支援は盛り込まれておらず、充実を求めたい。アイヌ民族が居住する道内63市町村を対象にした「アイヌ生活実態調査」(17年)によると、アイヌの人たちの生活保護率は居住市町村の平均を超えており、大学進学率は12・5ポイント低い。「差別を受けたことがある」「他人が受けたのを知っている」を合わせると、36・3%に上る。一方、内閣府が昨年8月に発表した「アイヌ政策に関する世論調査」によると、明治以降、アイヌの人たちが非常に貧しく、独自の文化を制限された生活を余儀なくされたことを知っている人は4割にすぎない。
(4)差別解消やアイヌ民族の苦難の歴史を国民に知らせるのは政府の責任においてなされなければならない。
(5)北海道白老町に「民族共生象徴空間」を建設し、復興・発展の拠点とすることも柱である。愛称はウポポイで大勢で歌うという意味だ。国立アイヌ民族博物館、アイヌ文化を体感できる国立民族共生公園、慰霊施設を整備する。政府は東京五輪・パラリンピックに先立つ20年4月にオープンする予定だ。初年度は100万人の来場を見込んでいる。観光重視の姿勢であることが気になる。


 「タイムス」は、アイヌ民族の問題を、「1899年に制定され1997年まで続いた「北海道旧土人保護法」による同化政策で、アイヌ民族は土地を奪われ、狩猟や漁業が制限された。日本語を強制され、独自文化も衰退した。言葉が奪われる政策は沖縄を想起させる。」、と沖縄の歴史と比較する中で整理する。
 その上で、「アイヌ民族の尊厳と民族復権につながる空間でなければならない。私たちもアイヌ民族について学びを深めたい。」とするとともに、「差別解消やアイヌ民族の苦難の歴史を国民に知らせるのは政府の責任においてなされなければならない。」、と主張する。



by asyagi-df-2014 | 2019-05-05 07:28 | 人権・自由権 | Comments(0)

「懲戒請求で『余命』読者6人に各33万円の支払い命令 嶋崎弁護士勝訴」

 この勝訴は、どのようなものであったのか。
弁護士ドットコムニュ-スは、「懲戒請求者に対し、複数の裁判」、と「『余命三年時事日記』を発端とする、弁護士への大量懲戒請求が問題視されている。同ブログは朝鮮学校への補助金を求めた各弁護士会に反発し、読者に懲戒請求を呼びかけていた。嶋崎弁護士は2017年9月19日、先に懲戒請求されていた佐々木亮弁護士がツイッターに『懲戒請求した人は、それ相応の責任を取ってもらいますよ』と投稿したのに対し、『何で懲戒請求されてるのか、ほんと謎です。酷い話だ。』と返信。これが『共謀による脅迫罪』に当たるとして、『余命』読者らから958件の懲戒請求がなされるとともに、東京地検で刑事告発もされていた。嶋崎弁護士のほか、佐々木弁護士ら複数の弁護士が、懲戒請求者を提訴している。」、と伝えている。
 弁護士ドットコムニュ-スは2019年4月11日、「懲戒請求で『余命』読者6人に各33万円の支払い命令 嶋崎弁護士勝訴」、と次のように報じた。


(1)ブログ「余命三年時事日記」を発端とした不当な懲戒請求をされたとして、嶋崎量弁護士が懲戒請求者らを訴えていた裁判の判決が4月11日、横浜地裁であった。石橋俊一裁判長は懲戒請求者6人に対し、請求満額となる各33万円の支払いを命じた。
(2)嶋崎弁護士は「余命」読者らから、テンプレートを利用した958件の懲戒請求をされ、東京地検に刑事告発もされていた。嶋崎弁護士は、懲戒請求した全員の提訴を表明しており、判決は今回が初めて。
(3)現在90人を相手に同様の訴訟が進行しているといい、今後も和解の申し出がない懲戒請求者の提訴を続けるという。なお、この懲戒請求については、嶋崎弁護士が所属する神奈川県弁護士会の綱紀委員会で「懲戒すべきでないことが一見して明らか」と判断されている。
(4)判決は、今回の懲戒請求について「事実上及び法律上の根拠を欠く」と指摘し、「違法な懲戒請求」だと認定。刑事告発をともなう単なる嫌がらせを超えた行為であることなどから、「相当の恐怖を覚えることは無理からぬ面がある」と判断している。また、弁護士は、利益相反が生じうる案件の受任が禁止・制限されていることから、懲戒請求を1件ずつ同僚弁護士らが受任する事件と突き合わせ、利益相反の有無を確認する負担が生じているとも指摘した。
(5)勝訴判決を受けて、嶋崎弁護士は「まとめてではなく、個別に損害が認められたこと、請求が全額認められたことを評価したい」とコメントした。
(6)「余命三年時事日記」を発端とする、弁護士への大量懲戒請求が問題視されている。同ブログは朝鮮学校への補助金を求めた各弁護士会に反発し、読者に懲戒請求を呼びかけていた。嶋崎弁護士は2017年9月19日、先に懲戒請求されていた佐々木亮弁護士がツイッターに「懲戒請求した人は、それ相応の責任を取ってもらいますよ」と投稿したのに対し、「何で懲戒請求されてるのか、ほんと謎です。酷い話だ。」と返信。これが「共謀による脅迫罪」に当たるとして、「余命」読者らから958件の懲戒請求がなされるとともに、東京地検で刑事告発もされていた。嶋崎弁護士のほか、佐々木弁護士ら複数の弁護士が、懲戒請求者を提訴している。



by asyagi-df-2014 | 2019-04-14 06:30 | 人権・自由権 | Comments(0)

大量の懲戒請求が寄せられた問題で、弁護士が、請求は業務妨害などにあたるとして請求者712人を相手取り横浜地裁に訴えを起こした。

 朝日新聞は表題について次のように報じた。


(1)朝鮮学校への補助金支出を批判するブログの呼びかけなどをきっかけに、全国の弁護士会に大量の懲戒請求が寄せられた問題で、対象とされた弁護士2人が、請求は業務妨害などにあたるとして請求者712人を相手取り横浜地裁(関口剛弘裁判長)に訴えを起こし、11日に記者会見した。「悪質な嫌がらせで、到底容認できない」と話した。
(2)訴えたのは、神奈川県弁護士会所属の神原元(はじめ)弁護士と在日コリアンの弁護士。懲戒請求者らは、弁護士から慰謝料などを求める通知が届いたことを「脅迫だ」として損害賠償を求める裁判を起こしており、今回はこれに反訴した。
(3)反訴状などによると、2人には、2017年以降に5千件超の懲戒請求が寄せられた。朝鮮学校への補助金支給を「推進するのは犯罪行為」などとする内容だった。2人は、弁護士としての社会的評価の低下や業務妨害にあたるとして、計3億6729万円の損害賠償を求めている。
(4)また、同様に懲戒請求を受けた県弁護士会の嶋崎量(ちから)弁護士が「違法な懲戒請求をされた」として損害賠償を求めた訴訟の判決が11日、横浜地裁であり、石橋俊一裁判長は被告6人に各33万円の支払いを命じた。嶋崎弁護士は、これまでに今回の被告6人を含め、懲戒請求を出した108人を提訴。うち、12人とは和解が成立するなどして訴えを取り下げており、残りの訴訟が順次進んでいる。(飯塚直人)


 また、朝日新聞は、こ提訴を受けて次のように続けた。報じた。


(1)懲戒請求したのは、どんな人たちなのか。請求は過ちだったと神原元(はじめ)弁護士らにわびた60代の男性が11日、横浜市で記者会見した。「退職で、取引先も仲間もなくなって疎外感がある中、正しい運動をしているという正義感や高揚感があった」と振り返った。
(2)男性は関東地方に在住。退職して時間ができた4年ほど前から、ネットを頻繁に見るようになった。「朝鮮人は日本をおとしめている」などと主張するブログに行き当たり、「裏で大きな力を持つ人」が書いていると思ったという。
(3)このブログは、朝鮮学校への適正な補助金交付を求める声明などを出した弁護士会を批判。弁護士名をあげたうえで懲戒請求を呼びかけた。男性が住所を登録したところ、ブログ筆者の名前も連絡先も知らされないまま書類が郵送されてきた。署名押印して指定のあて先に送り返すことを繰り返したという。
(4)しかし同様に呼びかけに応じた人たちが弁護士から訴えられ、ブログでは「何もしなくていい」とあったのに、実際に裁判所に呼び出されていると知り、不信感を抱いた。ネットで情報を集めるうち「ブログに書かれたことは、ただの差別ではないかと気づいた」という。
(5)妻にも内緒の活動だったが、懲戒請求問題を扱ったテレビ番組を一緒に見て「最近、朝鮮人がどうとか言わなくなったね」と言われ、打ち明けた。すると「バカだね」と一言。弁護士に謝罪の手紙などを送った。今回の訴訟の対象にはなっていない。「彼らに大変な驚きと悲しさを与えたとわかり、目が覚めた。ほかの人たちも早く目を覚ましてほしい」(編集委員・北野隆一)




by asyagi-df-2014 | 2019-04-13 12:09 | 人権・自由権 | Comments(0)

厚生労働省の「物価偽装」による生活保護基準引下げの撤回等を求める研究者共同声明

 2019年2月27日、五人の呼びかけ人と一六四人の研究者は、「厚生労働省の『物価偽装』による生活保護基準引下げの撤回等を求める研究者共同声明」(以下、「声明」)を公表しました。
 この「声明」を考えます。
「声明」は以下の三点を指摘しています。
1 毎月勤労統計問題以上に悪質な生活保護基準引き下げにおける「物価」の考慮
2 厚生労働省が用いた「生活扶助相当CPI (消費者物価指数)」の問題点 
3 「物価偽装」によって生じている多くの低所得世帯の被害の回復が必要
 「声明」では、まず最初に、厚労省に対して、次のように指摘します。


「毎月勤労統計問題に端を発し、厚生労働省の杜撰な作業が次々と明るみに出ていますが、同省は、生活保護の給付水準の決定に際して一段と悪質な意図的操作を行っています。そこには、公的統計は、科学的に確立された『適切かっ合理的な方法により、かっ、中立性及び信頼性が確保されるように作成されなければならない』(統計法3条2項) という大原則を疎かにする同省の共通した姿勢がうかがえます。」


 この上で、厚生労働省が用いた「生活扶助相当CPI (消費者物価指数)」の問題点について、次のように批判します。 


(1)生活保護制度の生活扶助基準は、2013年8月から2015年4月まで段階的に引き下げられましたが、削減率(最大10 % )も総削減額( 67 億円)も史上最大でした。
(2)削減額の約9割を占める580億円は、物価の考慮によるものでした。1984年から採用されている生活扶助基準の改定方式(水準均衡方式)は、民間最終消費支出の伸びを勘案するものであり、物価を考慮したことは一度もありません。にもかかわらず、厚生労働省は、総務省統計局や社会保障審議会生活保護基準部会等の意見を全く聞かずに独断で「生活扶助相当CPI」という独自の消費者物価指数を使用しました。
(3)総務省統計局は、ラスパイレス方式という多くの国々で採用されている計算方式を採用しています。しかし、「生活扶助相当CPI」は、2010年~2011年がラスパイレス方式、2008年~2010年がパーシェ方式という2つの異なる方式で算出され、計算方法がまったく異なる指数を比較し変化率を求めるという、統計処理としてありえない計算をしています。また、2010年を比較年としてパーシェ方式で計算すると下落率が大きくなります。
(4その結果、2008年~2011年の物価下落率は、ラスパイレス方式で計算されているCPI 総合指数では2.35%なのに、「生活扶助相当CPI」では2倍以上の4.78 %と異常な乖離となっています。厚生労働省は、下落率を大きくするために敢えて前例のない独自の計算方式を作出したとしか考えられないのです。「物価偽装」ともいうべき統計の濫用です。


 したがって、「声明」は、「『物価偽装』によって生じている多くの低所得世帯の被害の回復が必要」、と要求しているのです。
この被害の実態について、「声明」は、 「『物価偽装』によって、200万人を超える生活保護利用者だけでなく、多くの低所得者が被害を被りました。生活保護基準がナショナル・ ニマムとして、就学援助制度や各種減免制度など47以上の低所得者施策に連動していることからすれば、被害の規模は毎月勤労統計を上回ると推測されます。」、と指摘します。
 「声明」は最後に、「私たちは、『物価偽装』について第三者による検証に付すること、これを根拠とする生活扶助基準引下げを撤回すること、不利益を受けた低所得者の被害回復の措置をとることを強く求めるものです。」、と主張します。


 確かに、この国は、『物価偽装』と表現するだけの事態を迎えていることがわかる。
当然のことでるが、この「物価偽装」による被害者、特に低所得者に対して、国の責任において、被害を回復させなけねばならない。



by asyagi-df-2014 | 2019-04-06 07:07 | 人権・自由権 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
画像一覧
更新通知を受け取る