カテゴリ:人権・自由権( 34 )

日本の死刑制度を考える。

 日本弁護士連合会(以下、日弁連。)は2018年7月6日、「死刑執行に強く抗議し、直ちに死刑執行を停止し、2020年までに死刑制度の廃止を目指すことを求める会長声明」、との日弁連会長声明を出した。
 この期に、この声明で、日本の死刑制度を考える。
日弁連会長声明は、「本日、東京拘置所において3名、大阪拘置所において2名、広島拘置所において1名及び福岡拘置所において1名の合計7名に対して死刑が執行された。そのうち6名が再審請求中であり、心神喪失の疑いのあるものも含まれている。昨年8月就任以降、上川陽子法務大臣による2回目の執行であり、第2次安倍内閣以降、死刑が執行されたのは、13回目で、合わせて28名になる。」、との指摘で始まる。


 今回の死刑執行の法的問題点について、次の指摘を挙げる。


(1)「特に日本では、1980年代に4件の死刑事件について再審無罪が確定しており、袴田事件も、東京高等裁判所で静岡地方裁判所の再審開始決定が取り消されたものの、弁護側の特別抗告により最高裁判所における審理が続くことになる。これらの事件は、誤判・えん罪の危険性が具体的・現実的であることを、私たちに認識させるものであった。死刑に直面している者に対し、被疑者・被告人段階、再審請求段階、執行段階のいずれにおいても十分な弁護権、防御権が保障されるべきであり、再審請求中の死刑確定者に対する死刑の執行はこの観点からも問題の残るものである。」
(2)「また、今回執行された死刑確定者の中には、当連合会が、2018年6月18日付けで、心神喪失の状態にある疑いが強いので、死刑の執行を停止するよう、法務大臣に対し人権救済申立事件の勧告をしたものが含まれている。同勧告で述べたとおり、死刑確定者について、適正手続保障の観点から、法務省から独立した機関において、心神喪失の状態にあるか否かを判定する必要があるが、そうした法整備がなされないまま、法務大臣の命令により執行がなされた。」


 次に、日本国民世論の動向とOECD加盟国での死刑制度の現状について、指摘する。


(1)「内閣府が2014年11月に実施した世論調査で、『死刑もやむを得ない』とした80.3%の回答者への追加質問では、そのうち40.5%が『状況が変われば将来的には死刑を廃止してもよい』と回答している。また、終身刑を導入した場合の死刑制度の存廃について、終身刑が導入されるならば、『死刑を廃止する方がよい』という回答も全回答者の37.7%に上っている。死刑についての情報が十分に与えられ、死刑の代替刑も加味すれば、死刑廃止を容認する国民世論が形成可能であることを認識しておく必要がある。」
(2)「2017年12月現在、142か国が法律上あるいは10年以上死刑を執行していない事実上の廃止国であり、うち106か国が全ての犯罪について死刑を廃止している。OECD加盟国のうち、死刑を存置しているのは、日本・韓国・米国の3か国だけであるが、韓国は10年以上死刑執行をしていない事実上の死刑廃止国であり、米国は2017年10月時点で19州が死刑を廃止し、4州が死刑執行モラトリアム(停止)を宣言している。したがって、死刑を国家として統一して執行しているのは、OECD加盟国のうちでは日本だけという状況にある。」


 日弁連会長声明は、こした指摘の基に、「死刑執行に強く抗議し、直ちに死刑執行を停止し、2020年までに死刑制度の廃止を目指すことを求める」との声明の根拠を次のように示す。


(1)「このように、国際社会においては死刑廃止に向かう潮流が主流であり、日本を含め死刑制度を残し、現実的に死刑を執行している国は、世界の中では少数になってきている。国連の自由権規約委員会(1993年、1998年、2008年、2014年)、拷問禁止委員会(2007年、2013年)及び人権理事会(2008年、2012年)は、死刑の執行を繰り返している日本に対し、死刑執行を停止し、死刑廃止を前向きに検討するべきであるとの勧告を出し続けている。今回の執行に対しても国際的な批判や懸念が表明される可能性がある。」
(2)「2020年に開催されるオリンピック・パラリンピック及び国連犯罪防止刑事司法会議(コングレス)が近づくにつれ、多数の国家、国民の注目が日本に集まってきている。このような時期に死刑を執行することは、日本に対する国際評価に影響することも考慮する必要がある(この旨を含んだ2018年3月29日付けの「死刑執行停止を求める要請書」を法務大臣に提出している。)」


 最後に、日弁連会長声明は、「本日の死刑執行に対し強く抗議するとともに、改めて死刑を廃止するまで全ての死刑執行を直ちに停止した上で、2020年までに死刑制度を廃止するよう求める次第である。」、と次のように要求する。


「当連合会は、2016年10月7日、第59回人権擁護大会において、『死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言』を採択し、日本政府に対し、日本においてコングレスが開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであることなどを求めてきた。死刑が生命を剥奪するという刑罰であり、国家による重大かつ深刻な人権侵害であることに政府は目を向ける必要がある。当連合会は、本日の死刑執行に対し強く抗議するとともに、改めて死刑を廃止するまで全ての死刑執行を直ちに停止した上で、2020年までに死刑制度を廃止するよう求める次第である。」


 確かに、この声明で日本の死刑制度を考える時、次のことを確認する。


Ⅰ.日本の裁判制度のなかで、誤判・えん罪の危険性が具体的・現実的であること。
Ⅱ.死刑に直面している者に対し、被疑者・被告人段階、再審請求段階、執行段階のいずれにおいても十分な弁護権、防御権が保障されるべきであり、再審請求中の死刑確定者に対する死刑の執行は問題の残るものであること。
Ⅲ.死刑確定者について、適正手続保障の観点から、法務省から独立した機関において、心神喪失の状態にあるか否かを判定することができる法整備が必要である。しかし、その整備が行われないままに法務大臣の命令により今回の死刑執行が行われたこと。
Ⅳ.日本においても、「死刑についての情報が十分に与えられ、死刑の代替刑も加味すれば、死刑廃止を容認する国民世論が形成可能であること」(会長声明)ということを把握する必要があること。
Ⅴ.死刑を国家として統一して執行しているのは、OECD加盟国のうちでは日本だけという状況にあること。
Ⅵ.「国連の自由権規約委員会(1993年、1998年、2008年、2014年)、拷問禁止委員会(2007年、2013年)及び人権理事会(2008年、2012年)は、死刑の執行を繰り返している日本に対し、死刑執行を停止し、死刑廃止を前向きに検討するべきであるとの勧告を出し続けている」(会長声明)状況を理解する必要があること。
Ⅶ.「2020年に開催されるオリンピック・パラリンピック及び国連犯罪防止刑事司法会議(コングレス)が近づくにつれ、多数の国家、国民の注目が日本に集まってきている。このような時期に死刑を執行することは、日本に対する国際評価に影響することも考慮する必要がある」(会長声明)こと。
Ⅶ.死刑執行が生命を剥奪するという刑罰であり、国家による重大かつ深刻な人権侵害であること。


 さて、日本の死刑制度を考えるために、最も必要なことは、「死刑執行が生命を剥奪するという刑罰であり、国家による重大かつ深刻な人権侵害であること。」との視点である。




by asyagi-df-2014 | 2018-07-19 05:44 | 人権・自由権 | Comments(0)

学ぶ権利を保障するということは、どういうことなのか。~沖縄タイムス20180712~

 沖縄タイムス(以下、「タイムス」。)は2018年7月12日、「[女性自認学生受け入れ]権利保障へ重要な一歩」、と社説を掲げた。
 新聞記事で読んではいた。
 どういうことなのか。
 「タイムス」は、次のように説明する。


(1)「東京のお茶の水女子大が、戸籍上は男性でも性別を女性と認識しているトランスジェンダーの学生を2020年度から受け入れると発表した。これまで『女子』と規定してきた入試の出願資格を、『戸籍または性自認が女子』に改める。」
(2)「大学側が説明するように『多様性を包摂する社会の対応としては当然』だが、トランスジェンダーの学生の受験機会の確保を出願資格に書き込んだ意義は小さくない。多様な性への理解がまた一つ広がった。」
(3)「きっかけは数年前にあった当事者からの問い合わせという。学内にワーキンググループを立ち上げ、今年から施設整備などの準備に着手。新設する委員会では、受け入れに向けたガイドラインをつくる予定だ。共学の場合、受験に障害はなく、多くの大学に当事者がいるとみられる。しかし女子大では受験資格自体が壁となり、支援の検討が後手に回ってきた。」
(4)「日本学術会議は昨秋、性的マイノリティーの権利保障に関する提言で、トランスジェンダーの学生が望む大学に行けないのは『学ぶ権利の侵害になる』と指摘した。その上で『入学保障』などの課題に対応するためのガイドラインの策定を文部科学省に求めた。」
(5)「既に米国では著名な女子大が入学資格を与えており、お茶大の国内初という今回の決定は、やっとという気持ちもある。」
(6)「多様性を尊重する大きな流れが、慎重だった大学側の背中を押したのだろう。」


 また、「タイムス」は、次のように続ける。


(1)「04年の性同一性障害特例法施行後、性の多様性を認め、『個』を尊重する取り組みが少しずつ広がった。」
(2)「文科省は15年、性的少数者(LGBT)への学校でのきめ細かな対応を全国の教育委員会に通知。翌年には支援策をまとめた教職員向けパンフレットを配布している。学校では、自認する性別の制服着用を認めるなどの配慮が進み、さらに性別に関係なくズボンとスカートを選べるようにする選択制の動きも出てきている。」
(3)「お茶大の発表を受け、同大に通う学生から『いろんな人がキャンパスにいた方が面白い』など肯定的な意見が聞かれたのは、この間の取り組みの成果もあったのではないか。」
(4)「特に当事者が学校に出向いて体験や思いを語る授業で、偏見や誤解がなくなり、理解を深めたという人は多い。」


 「タイムス」は、「多様性を尊重する」ということについて、次のように押さえる。


(1)「欧米を中心に多様な生き方を容認する流れが加速する中、先進7カ国で同性婚やこれに準じた制度を法制化していないのは日本だけだ。」
(2)「那覇市をはじめ全国7自治体が導入する『パートナーシップ宣誓制度』は、慎重姿勢の政府に代わって住民に近い自治体が同性カップルなどを公認する制度である。」
(3)「電通の調査では、13人に1人がLGBTに該当していた。」
(4)「教育現場はもちろん、学校を巣立った後の職場や生活する地域にも、当事者を支援する仕組みを広げていく必要がある。」


 あらためて思う。
 世界では、多様性を尊重する大きな流れがあり、日本が遅れているということを。
「これまで『女子』と規定してきた入試の出願資格を、『戸籍または性自認が女子』に改める。」(「タイムス」)ということは当たり前のことである。
 でも、お茶の水女子大の「多様性を包摂する社会の対応としては当然」(「タイムス」)との一歩は、やはり、すごい。
私たちは、一つには、「学ぶ権利」をきちんと理解しよう。



by asyagi-df-2014 | 2018-07-18 05:50 | 人権・自由権 | Comments(0)

負わなけねばならない責任を明確に。~信濃毎日新聞20180703から~

 確かに、国だけの責任ではない。
 信濃毎日新聞(以下、「信濃」。)は2018年7月3日、「優生手術 都道府県の責任は重い」、と社説で論評した。
「信濃」は、次のように示す。


(1)「旧優生保護法の下、障害者らに不妊手術や中絶を強いた優生政策を都道府県が積極的に推し進めていた事実が相次いで明らかになっている。国だけでなく都道府県自ら実態解明を進め、幅広い被害者への補償に道を開いていく責任がある。」
(2)「千葉県は、手術の勧奨を児童相談所に要請した1963年の文書を開示した。児相はそれを踏まえ、障害児施設の子どもの保護者らに手術を促したという。要請からひと月と経ず、対象者を列記して県に報告した児相もあった。この年に限らず、県は同様の依頼をしていたとみられ、対象者の選別が組織的に行われていた可能性が指摘されている。形こそ『希望者の申し出』であっても、拒める状況だったとは考えにくい。」
(3)「ほかにも、北海道が50年代、障害児施設への通知で、積極的な手術の申請を求めたことが分かっている。行政からの圧力が集団での手術に結びついた恐れがある。北海道の手術件数はこの時期に急増し、全国最多になった。各保健所にも対象者の発見を促す通知を出し、年間申請件数の“ノルマ”まで課していた。」
(3)「旧厚生省は57年、各都道府県に手術件数を増やすよう求める通知を送った。都道府県別の実績を一覧で示し、『成績向上』を促す露骨な圧力が、競い合うように手術を推進する状況を生んでいく。
(4)「兵庫県が60年代半ばから始めた『不幸な子どもの生まれない運動』も各地に広がり、優生政策を後押しした。障害がある『不幸な子ども』が生まれないようにと、強制不妊手術や、胎児の出生前検査の費用を負担した。」
(5)「〈優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する〉。障害者への差別に根差した旧法は戦後の48年に制定され、半世紀近くにわたって存続した。問われるのは国の責任だけではない。尊厳と人権を踏みにじる優生政策を実質的に担ったのは都道府県だった。」


 「信濃」は、この問題について、次のように指摘する。


「被害者が補償を求める裁判を各地で起こす一方、国会では議員立法による救済を目指す動きがある。ただ、形だけの救済で終わらせることがあってはならない。法の運用の実態を徹底して検証し、過ちに向き合わなければ、障害者への差別や優生思想が根深く残る現状を克服できない。年月を経て、残る記録や資料は限られる。当事者や関係者の証言を集め、被害を丁寧に掘り起こすことが欠かせない。都道府県は、その取り組みを率先する役割を担わなくてはならない。」


 明らかなのは、次の構造である。
①「国(旧厚生省)は1957年、各都道府県に手術件数を増やすよう求める通知を送る。この中で、都道府県別の実績を一覧で示し、『成績向上』を促す露骨な圧力をかける。」
                ↓
②「都道府県は、競い合うように手術を推進する状況を自ら作っていく。」
 つまり、都道府県は、実行者としての責任を免れないということである。
 確かに、「法の運用の実態を徹底して検証し、過ちに向き合わなければ、障害者への差別や優生思想が根深く残る現状を克服できない。」(信濃)、ということが言える。



by asyagi-df-2014 | 2018-07-11 06:12 | 人権・自由権 | Comments(0)

トランプ政権は、「理念」ではなく「取引」」を優先。国連人権理から脱退。

 朝日新聞は2018年6月21日、表題について次のように報じた。


(1)「トランプ米政権は19日、国連人権理事会(本部スイス・ジュネーブ)からの脱退を表明した。背景にはパレスチナ問題でイスラエルを批判する人権理事会への不満があり、ポンペオ米国務長官は会見で『明らかな偏向は常識外れだ』と批判した。」
(2)「米政権は昨年10月に国連教育科学文化機関(ユネスコ)に脱退を通告。地球温暖化対策の国際枠組み『パリ協定』やイラン核合意からの離脱も表明しており、国際協調に背を向ける姿勢を改めて鮮明にした形だ。」
(3)「ポンペオ氏と共に会見したヘイリー米国連大使は『終わらないイスラエルへの敵意は、理事会が人権ではなく、政治的偏向によって突き動かされている証拠だ』と非難した。」
(4)「人権理事会はパレスチナへの攻撃でイスラエルへの非難決議を度々、採択。今年5月には、米大使館のエルサレム移転に抗議した市民へのイスラエル軍の銃撃などを巡り、理事会は独立した調査団を派遣する決議を可決した。議題の項目として『パレスチナなど占領地の人権状況』が常時、挙げられている。」
(5)「現在の人権高等弁務官はヨルダン王族出身のザイド氏で、イスラエルによるデモ鎮圧などでの過剰な武力行使を批判している。そのため、イスラエル寄りの姿勢を示すトランプ政権と対立してきた。ヘイリー氏は会見で、米国が人権状況を問題視する中国やベネズエラも理事国になっているとし、『(人権理事会の)名に値しない』と断じ、『人権をあざ笑う偽善で利己的な組織だ』と語った。人権理事会に改革を求めていたが、達成されなかったため、脱退を決定したとした。」
(6)「人権理事会はブッシュ(子)元政権下の2006年に発足。理事国は47カ国で、米国は発足時には理事国を選ぶ基準に反発して立候補をしなかった。国際協調や人権を重視したオバマ前政権下の09年に初めて立候補して当選した。人権理事会は18日に約3週間の会期が始まったばかりだった。ザイド人権高等弁務官は、ツイッターの声明で『驚きのニュースではないにしても、残念だ。今の世界の人権状況を鑑みれば、米国は取り組みを促進すべきで、後退すべきではない』と述べた。」
(ワシントン=杉山正、ウィーン=吉武祐)




by asyagi-df-2014 | 2018-06-21 22:09 | 人権・自由権 | Comments(0)

旧優生保護法の下で強制された不妊手術について国に損害賠償を求める訴訟で、国は口頭弁論で請求棄却を求める方針。

 毎日新聞は2018年3月23日、表題について次のように報じた。


(1)「旧優生保護法(1948~96年)下で強制的な不妊手術を受けさせられたとして宮城県内の女性が国家賠償を求めた訴訟について、政府は28日に仙台地裁で開かれる第1回口頭弁論で請求棄却を求める方針を決めた。ただし、国会で被害救済の動きが進んでいることなども踏まえて最小限の主張にとどめ、具体的な理由説明は5~6月ごろに開かれる第2回弁論以降に先送りする見通しだ。」
(2)「国側は強制手術に関し『当時は合法だった』との姿勢を取っている。裁判では、不法行為の損害賠償請求権が消滅する20年間の『除斥期間』を過ぎており、96年法改正以降の対応にも違法性はなかったとして争うとみられる。」
(3)「一方で、初弁論に先立つ27日には、自民、公明両党がワーキングチーム(WT)の初会合を開く。」
(4)「1審判決前に政治解決が図られる可能性もあり、行政としては政治解決の枠組みと食い違いが生じる恐れがある主張はしにくい事情がある。政府は訴訟と並行して、WTの求めに応じて実態調査に着手するなど救済に向けた課題の整理も進めることになる。厚生労働省幹部は『与党協議の推移を待ちたい』と話す。」
【阿部亮介】
.




by asyagi-df-2014 | 2018-03-24 12:00 | 人権・自由権 | Comments(0)

東京MXとDHCは、「変えることのできない私の出自を使って沖縄をたたいた。自分がストレートにたたかれるより何倍もこたえた」を真摯に捉えなければならない。-琉球新報20180310~

 2018年3月10日の琉球新報の社説は、「東京MX人権侵害認定 ヘイト拡散見過ごせない」、とこの問題の本質を言い当てる。
 どういうことなのか。
琉球新報は、「BPOの勧告を評価したい。」とした上で、このように指摘する。


(1)「東京メトロポリタンテレビジョン(東京MX)の番組『ニュース女子』について、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は東京MXに対し、ヘイトスピーチ(憎悪表現)反対団体「のりこえねっと」の辛淑玉(しんすご)共同代表への人権侵害を認定し、勧告内容の放送や再発防止策を提出することなど求める勧告を出した。」
(2)「BPOの勧告を評価したい。東京MXは再発防止に努めるとのコメントを発表したが、誠実な対応とは言えない。番組内容を訂正し、辛代表らに謝罪した上で、侵害された人権の回復に向けた措置を講ずるべきだ。」
(3)「2017年1月に放送された『ニュース女子』は、米軍北部訓練場のヘリパッド建設に反対する市民をテロリストに例え、辛さんを『黒幕』のように報じた。放送人権委員会は、番組で報じられた反対運動への『日当』や『黒幕』など真実性の証明がなく、辛さんへの名誉毀損(きそん)に当たるとし、最高裁の判例などを基に判断した。」
(4)「放送倫理上の問題については、辛さんに取材をしていないにもかかわらず、東京MXの考査で問題とされていないことや、反対運動に朝鮮人や中国人がいるなどと特定の国籍や民族的出自を出して、在日韓国人である辛さんと関連づけたことに『人種や民族を取り扱う際に必要な配慮がなされていない』などと指摘した。」
 辛さんは会見で「変えることのできない私の出自を使って沖縄をたたいた。自分がストレートにたたかれるより何倍もこたえた」と語った。心中を察するに余りある。


 あわせて、BPOの限界についても、指摘する。


(1)「一方、BPOの限界もある。『ニュース女子』は化粧品大手ディーエイチシーのグループ会社DHCテレビジョンが取材・制作する「持ち込み番組」だ。BPOは民放連と加盟各社、NHKが設置した第三者機関で、勧告はテレビ局に限られる。DHCのような制作会社は対象外だ。」
(2)「DHC側は、番組批判に対し『誹謗(ひぼう)中傷』と反論し『基地反対派の言い分を聞く必要はない』とまで言い切った。最初から『沖縄ヘイト』を助長する番組を制作する意図があったのではないかと疑わざるを得ない。」


 さらに、琉球新報は、ヘイトクライムに関する日本の現状を告発する。


(1)「辺野古新基地建設などが国内で伝えられる一方で、『沖縄は基地で食べている』『基地反対運動は県外の過激派がやっている』という虚偽が広がり一部で定着しつつあることを危惧する。「ニュース女子」は、基地の過重負担に苦しむ沖縄の実情に背を向け、公共の電波を使って虚偽のレッテル貼りを重ねた。」
(2)「東京MXは同番組の放送を3月末で打ち切るが、DHC側は一部地方局や衛星放送、インターネット媒体で放送を継続すると発表した。」
(3)「事実をねじ曲げた番組がこれ以上拡散するのは見過ごせない。放送倫理の破壊を許してはならない。」


 東京MXやDHCは、まずは、「変えることのできない私の出自を使って沖縄をたたいた。自分がストレートにたたかれるより何倍もこたえた」、辛淑玉さんのこの言葉を身にしみ込まさせる必要がある。




by asyagi-df-2014 | 2018-03-18 07:11 | 人権・自由権 | Comments(0)

BPOは、MXテレビの番組「ニュース女子」について、辛淑玉さんに対する名誉毀損の人権侵害があったと認定。

 朝日新聞は2018年3月8日、表題について、「放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は8日、昨年1月に沖縄の米軍基地反対運動について伝えた東京メトロポリタンテレビジョン(MXテレビ)の番組『ニュース女子』について、番組が名前を挙げた人権団体『のりこえねっと』共同代表の辛淑玉さんに対する名誉毀損の人権侵害があったと認定。考査を含めた放送のあり方を検討し、再発防止に努力するよう勧告した。」、と報じた。



by asyagi-df-2014 | 2018-03-08 15:45 | 人権・自由権 | Comments(0)

日本政府は、国連人権理事会における人権状況の対日審査で出された全217勧告について、145件を受け入れ、34件を受け入れ拒否、その他は留意などとした。

 朝日新聞は2018年3月6日、表題について次のように報じた。


(1)「国連人権理事会における人権状況の対日審査で出された勧告について、日本政府の見解が5日、公表された。各国から出された全217件の勧告に対して、145件を受け入れ、34件を受け入れ拒否、その他は留意などとした。」
(2)「日本政府が受け入れを拒否したのは、死刑制度の廃止や一時停止を求める勧告、核兵器禁止条約への署名を求める勧告などだった。死刑制度については、死刑制度を容認する国内世論を理由にした。また、核禁条約については『厳しい安全保障環境という現実を考慮していない』ことなどを拒否の理由に挙げた。また、複数の『先住民族』に対する差別防止対策の実行を求める勧告に対しては、『日本は、日本においてアイヌ民族のみを先住民族として認めている』との従来の見解を示した。」
(3)「この審査はUPR(普遍的・定期的レビュー)と呼ばれるもので、4年半に1回をめどに、193の国連全加盟国の人権状況全般を審査する。今回の日本政府の見解は、昨年11月の3回目の対日審査の勧告に対して出された。」(松尾一郎)


 なお、この2017年11月16日の国連人権理事会による勧告は、日本の人権状況の定期審査で各国から出た勧告をまとめたものであった。
朝日新聞は、この勧告について、次のよう伝えていた。


 国連人権理事会は16日、日本の人権状況の定期審査で各国から出た勧告をまとめた報告書案を公表した。

(1)「14日の審査では世界106カ国が意見表明をしたが、報告書には218の勧告が記載された。」
(2)「今回で3回目となる定期審査では、日本政府が前回からの成果として挙げた2015年12月の日韓慰安婦合意について、韓国政府から否定的な意見が出た。報告書では、『いわゆる慰安婦の問題を含む歴史の真実を将来の世代が学ぶことを確実にする努力をせよ』(韓国)、『慰安婦問題について心から謝罪し、被害者に補償せよ』(中国)、『性奴隷を含む過去の人道に対する罪の法的な国家責任を受け入れ、誠実に対処せよ』(北朝鮮)という三つの関連する勧告の記載があった。」
(3)「報告書で目立ったのが人種差別や性差別、外国人差別、性的少数者差別などをなくす取り組みに関する勧告だった。国連人権理で積極的に発言を続けているNGO『反差別国際運動』は、オランダなど多くの国が『反差別法』の制定を勧告した点を評価し、『定期審査の勧告に基づいて人種差別と戦うように求める』との声明を出した。」
(4)「報道関係では、当局側が行政指導の根拠として持ち出す可能性がある『政治的公平性』を求める放送法第4条について、米国の『廃止』を求める勧告が含まれた。」
(5)「死刑の廃止や一時停止、死刑囚の待遇改善を求める勧告も多く盛り込まれた。」
(6)「勧告内容は16日の会合で正式に採択されており、日本政府は来年3月までにこれら勧告の受け入れの可否について態度表明しなければならない。」(ジュネーブ=松尾一郎)




by asyagi-df-2014 | 2018-03-06 20:17 | 人権・自由権 | Comments(0)

優生思想を乗り越えるために。~信濃毎日新聞20180218から~

全国の新聞社の気になる社説、論説を不定期に取り上げて考える。
多くの内容は、「社説・論説-47NEWS」からの紹介となる。




 信濃毎日新聞は2018年2月18日、「あすへのとびら 強制不妊手術の提訴 優生思想 乗り越えるには」、と社説で論評した。
 優生保護法の中で、手術を強いられた人たちが、日本国憲法下で、尊厳と人権を持つ存在とは見なされていなかったことに、どのように誠実に対応していくのかが問われている。
信濃毎日新聞は、今問われていることについて、次のように指摘している。


(1)「へその下に8センチほどの傷痕が残る。卵管を縛る不妊手術を強制されたのは15歳のときだった。『遺伝性精神薄弱』が理由とされた。宮城県に住む60代の女性が先月末、国に謝罪と損害賠償を求める裁判を起こした。子どもを産み育てる基本的人権を奪われたと訴えている。不妊手術を強いた旧優生保護法の違憲性と、被害の救済を怠ってきた国の責任を問う初の訴訟である。」
(2)「〈不良な子孫〉の出生防止を掲げた優生保護法の下、戦後半世紀近く、多くの障害者らが手術を受けさせられた。本人の同意がない強制手術に限っても、統計に残るだけで1万6千件余に上る。長野県でも400件近くあった。」
(3)「裁判を起こした女性は、父母が他界し、手術当時の事情を知る人はいない。宮城県が昨年開示した『優生手術台帳』の記録が提訴に結びついた。一方で、同じ宮城の70代の女性は記録が見つからず、提訴を断念している。」
(4)「共同通信の調査で、個人を特定できる資料が残るのは21道県の2800人分ほどにとどまる。時とともに廃棄や散逸の恐れは増す。当事者の多くは高齢だ。実態をつかむには、徹底した調査と掘り起こしを急がなければならない。」


 また、優生保護法の果たしてきた役割とその問題点について、次のように押さえる。


(1)「優生保護法ができたのは1948年。現憲法が施行された翌年である。見過ごせないのは、戦時下の国民優生法よりも優生思想が色濃くなったことだ。命に優劣をつけ、選別する考え方である。」
(2)「当時の日本は、国外からの引き揚げや出産の増加によって急増した人口の抑制が大きな政策課題だった。産児制限とともに『人口資質の向上』の必要性が唱えられ、優生政策が強化された。」
(3)「政府が出した通知は、身体の拘束や麻酔のほか、だますことも認めていた。知的障害の女性に『病気の手術』と偽って子宮を摘出した事例をはじめ、法の規定に反する生殖器官の除去も横行した。」
(4)「憲法は個人の尊重を根幹に置き、基本的人権の保障と法の下の平等を定めている。にもかかわらず、手術を強いられた人たちは、等しく尊厳と人権を持つ存在とは見なされていなかった。」
(5)「羊水検査で胎児の診断が可能になった60年代後半以降、積極的な受診を呼びかける運動が兵庫を先駆けに各地に広がる。異常があれば中絶し、『不幸な子』が生まれないようにする―。“善意”の衣をまとった命の選別だった。」
(6)「胎児の障害を理由に中絶を認める条項を置く法改定の動きも起きた。脳性まひの当事者団体『青い芝の会』が抗議の声を上げ、優生保護法の差別性に社会の目が向くのは70年代半ばのことだ。」
(7)「さらに20年余を経た96年、優生保護法は『母体保護法』に改められ、優生思想に根差した条文は全て削除された。けれども、差別や人権侵害を放置した責任が問われたわけではない。政府は『当時は適法だった』と強弁し、補償や救済は一切なされていない。」


 信濃毎日進軍は、この裁判について、『自らの問題として』、と次のように指摘する。


(1)「裁判は『除斥(じょせき)期間』」が壁になる可能性がある。20年で損害賠償の請求権が消えるという民法上の考え方だ。母体保護法への改定から既に20年以上を経た。ただ、最高裁は過去に、著しく正義、公平に反する場合は除斥の適用を制限できるとの判断を示している。」
(2)「原告の女性は手術後、癒着した卵巣の摘出を余儀なくされ、縁談も破談にされた。人生を台無しにされた上に、泣き寝入りを強いる除斥を認めるべきではない。尊厳の回復と被害の救済に道を開くことは司法の責務だ。」
(3)「ドイツでは、ナチス政権下の断種法によって障害者らおよそ40万人が不妊手術を強要されたほか、「安楽死」計画の犠牲者は20万人に及ぶとされる。長く見過ごされていたが、80年代以降、補償金や年金が支給されている。」
(4)「福祉国家のスウェーデンにも優生思想に基づく断種法はあった。福祉の充実には選別が必要と考えられた。70年代まで、6万件を超す不妊手術が行われたという。90年代に政府が調査委員会を設け、補償制度をつくっている。」


 信濃毎日新聞は、最後に、「法が改められたからといって、優生思想が社会から消えるわけではない。差別、偏見は一人一人の意識の奥に潜んでいる。」、と指摘する。
 その上で、「産む産まないの判断が女性の自己決定権として尊重されるようになった。一方で、出生前診断の技術が進んでいる。国家が強制するのではなく『個人の選択』に基づくかたちで、新たな優生社会が姿を現す恐れも指摘されている。過去の過ちと向き合うことは、これからの社会を考える一歩だ。国は被害を検証し、補償、救済を進める責任がある。根深い優生思想を克服していくために、私たち自身が自らの問題として受けとめることが欠かせない。」、と結ぶ。


 確かに、二つのことを確認できる。
 一つには、「差別、偏見は一人一人の意識の奥に潜んでいる。」から、一人一人が差別・偏見を克服するためには、「自らの問題として受けとめることが欠かせない。」、ということ。
 二つ目は、差別、偏見は、国家が政策のなかで秩序維持として必要としたことから再生産されてきたのものである。だとしたら、国家は自らの責任で自らの政策が犯した罪がもたらした被害を補償しなければならないこと。




by asyagi-df-2014 | 2018-02-25 07:44 | 人権・自由権 | Comments(0)

旧優生保護法下での不妊手術が繰り返された問題で、大分県は、「101人に手術の決定を出していたことが明らかになった。」、と発表。

 大分合同新聞は2018年2月23日、表題について、「旧優生保護法(1948~96年)に基づいて知的障害などを理由に不妊手術が繰り返された問題で、大分県は22日、対象者の個人名を記した資料が県公文書館(大分市)から見つかったと発表した。手術の適否を判断する優生保護審査会の資料で、57年度と60年度の2年分。延べ110人に対する審査があり、101人に手術の決定を出していたことが明らかになった。」、と次のように報じた。
 


(1)「県によると、両年度で審査対象とされたのは12~49歳の男性44人、女性66人。うち女性5人については重複の可能性がある。手術決定の最年少は14歳の少女、最年長は49歳の男性だった。本人同意の有無は記載欄がなく不明だが、藤内課長は『ほぼ同意がないと考えられる』とした。実際に手術を受けたのかどうかは確認できていない。」
(2)「資料は規定で5年間の保存期間を過ぎると廃棄され、これまで大分合同新聞の取材に県は『残っていない』と答えていた。歴史的に価値がある文書は県公文書館(94年までは県立図書館)が保管するが、2年分だけ見つかった理由は不明という。」
(3)「県は審査会の資料と併せ、公衆衛生年鑑に記録があった強制不妊手術の件数も明らかにした。54~76年の23年間で、本人同意がなく手術を受けたのは計663人。最も多いのは56年の111人だった。」
(4)「国の資料などによると、大分は都道府県別で4番目に強制手術の件数が多かった。藤内課長は『当時の状況が不明で、大分県がなぜ多いのかは分からない』と話した。」


 また、大分合同新聞は、このことについて、次のように指摘した。


(1)「旧優生保護法による非人道的な審査の一端が明るみになった。大分県で見つかった資料には、14歳の少女が強制不妊手術の決定を受けていたことが記されていた。同法を巡っては宮城県内の60代女性が今年1月、国を相手に初めて提訴。大分でも追及の動きが出てくる可能性がある。」
(2)「資料によると、手術決定の対象者には未成年13人が含まれていた。既婚者も25人いた。保留は6人、却下・否決はわずか3人だった。手術を認める理由とされた疾患は『精神分裂病』が最も多く82人。次いで『遺伝性精神薄弱』10人、『てんかん』4人、『そう病』3人、『そううつ病』2人。」
(3)「医師でもある藤内修二県健康づくり支援課長は『今の医学では、遺伝があっても全て発病するものではないと考えられている』と説明する。」
(4)「県内の障害者や支援者らでつくる『だれもが安心して暮らせる大分県をつくる会』共同代表の徳田靖之弁護士(73)は『一人の人間としての尊厳を認めておらず、許し難い。県は第三者委員会を設け、犯した責任をどのように取るかを検討すべきだ』と批判した。」


 確かに、徳田靖之弁護士の「一人の人間としての尊厳を認めておらず、許し難い。」「大分県は第三者委員会を設け、犯した責任をどのように取るかを検討すべきだ」、との批判が、真摯に取りあげなければならない。




by asyagi-df-2014 | 2018-02-23 20:30 | 人権・自由権 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
画像一覧