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安倍晋三首相の施政方針演説で、2014年以降初めて、「辺野古」「普天間」の文言が使われなかったこと。

 2020年1月20日に行われた安倍晋三首相の施政方針演説で、2014年以降初めて、「辺野古」「普天間」の文言が使われなかった。
 このことに関して、沖縄タイムス(以下、「タイムス」)は、「今通常国会の施政方針演説で『普天間』や『辺野古』のワードを使わなかった。それは、方針で言うまでもなく、政府として辺野古移設は『当たり前』ということなのだろう。『自治体の意見は関係ない』という政府の強硬姿勢の延長線上にある演説だと感じた。日米安保改定60年の式典で、安倍首相は『日米安保条約は不滅の柱だ』と述べた。辺野古新基地建設は、日米両政府で決まったことで、日米安全保障体制の問題として、あくまでも押し通す、やり通すという無言の表明でもある。」、と識者の見解を伝えた。
 それは、あたかも、『目下の同盟』の力を見せるとでも言うもの。


これだけに留まらず、「タイムス」は2020年1月21日、「[施政方針と新基地] もはや破綻は明らかだ」、と社説で論評した。
「タイムス」の最初の指摘は次のもの。
(1)安倍首相は「2020年代前半の海兵隊のグアム移転に向け、施設整備などの取り組みを進める。抑止力を維持しながら、沖縄の基地負担軽減に、一つ一つ結果を出していく」と述べた。12年12月の第2次安倍政権発足後、通常国会の施政方針演説は8度目になるが、普天間飛行場の危険性、辺野古移設のいずれにも、触れないのは初めてである。
(2)昨年1月の施政方針演説は「辺野古移設を進め、世界で最も危険と言われる普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現していく」としていた。
(3)なぜ、「普天間」「辺野古」が消えたのだろうか。


 「タイムス」は、このことの意味を解き明かす。
(1)政府は昨年12月25日、新基地の完成までの工期を当初の8年から約12年へ大幅に延ばす計画見直し案を発表した。大浦湾側に広がる「マヨネーズ並み」といわれる軟弱地盤が水面下90メートル地点にもあり、改良工事は世界的にも例がない難工事になることが予想されている。
(2)政府は本年度内にも設計変更を県に申請する方針だが、玉城デニー知事は認めない構えだ。政府の工期は玉城知事の承認が起点であり、政府の計画通りにはいかない。仮に進んだとしても普天間返還は日米合意の「22年度またはその後」から30年代半ば以降にずれ込む公算だ。
(3)新基地建設で普天間の危険性除去という政府の論理が破綻しているのは明らかだ。普天間返還の後れに言及しないのは不誠実極まりなく、強行工事との整合性も取れない。


 また、「これまで取り上げたことがなかった海兵隊の米領グアムへの移転」を取り入れたことにも、次のように示す。
(1)施政方針演説では、これまで取り上げたことがなかった海兵隊の米領グアムへの移転を強調している。海兵隊の移転は民主党政権時代の12年に日米両政府が修正合意した米軍再編計画で沖縄に駐留する海兵隊約9千人をグアムやハワイなどへ移転させることが盛り込まれた。グアム移転を普天間移設とは切り離し、20年代前半に始めることを確認している。
(2)主力の第4海兵連隊を含む実戦部隊が移転し、沖縄に残るのは2千人規模の第31海兵遠征部隊(MEU)だけになる。同部隊を運ぶ強襲揚陸艦は長崎県佐世保に配備され、アジア太平洋地域で各国と共同訓練などを実施。1年の大半は沖縄にいないのが実態だ。海兵隊が沖縄に駐留する必要はないのである。
(3)海兵隊の主力部隊がグアムなどに移転するのに、海兵隊の新基地を造るのは常軌を逸しているというほかない。


 「タイムス」は最後に、辺野古新基地建設について、次のことを安倍晋三政権に突きつける。
(1)総工費も当初の3500億円以上から2・7倍の約9300億円に膨らむ。工期と総工費がそれだけにとどまる保証は何もない。国民の税金である。こんな野放図な公共工事は直ちにやめるべきだ。
(2)安倍首相は14年に約束した普天間の5年以内に運用停止することを守らず、その後も普天間の危険性除去に向けた対策をとっていない。不作為としかいいようがない。
(3)政府が辺野古にこだわればこだわるほど、普天間の危険性が固定化される。国会で徹底した議論を求めたい。




by asyagi-df-2014 | 2020-01-26 06:59 | 米軍再編 | Comments(0)

海上自衛隊のP3C哨戒機2機の中東海域への派遣を沖縄から考える。

 標題について、沖縄タイムス(以下、「タイムス」)は2020年1月12日、「自衛官『職責を果たすだけ』 中東へ自衛隊派遣 那覇から第1陣出発」、と次のように報じている。
(1)中東地域への自衛隊派遣で、第1陣となる海上自衛隊の部隊が11日、那覇基地を出発した。軍事的緊張が高まる地域での任務を前に、自衛隊員は張り詰めた表情を見せ、反対する市民は「憲法違反だ」と訴えた。
(2)ある自衛隊員は「命令されれば任地に赴く。それが自衛官としての役目だ」と話す。家族を沖縄に残し、危険のある地域に赴くことには不安もある。だが「同僚が派遣される中、自分だけが行かないわけにはいかない。職責を果たすだけだ」と言葉少なに語った。
(3)過去に海外派遣の経験がある別の自衛官は「海外派遣は今に始まったことではない。派遣命令があっても、淡々と業務をこなすだけだ」とし、「安全性は確保されていると信じている。命の不安は全くないと言えばうそになるが、自衛官としての使命を果たしたい」と努めて冷静に受け止めようとしていた。
(4)一方、市民からは派遣そのものに反対する意見が出た。那覇市の小禄九条の会代表世話人を務める平良亀之助さん(83)は「自衛隊が海外に派遣されること自体、憲法9条の武器放棄、戦争放棄に全く相反するものだ」と怒る。朝鮮戦争やベトナム戦争で、在沖基地から飛び立った米軍爆撃機が住民の命を奪ったことに触れ、「沖縄はベトナムから『悪魔の島』と呼ばれ、憎しみの対象になった。そういう状況が、また目の前にやってきてしまった」と嘆いた。
(5)那覇市の長嶺律雄さん(77)は「自衛隊が行く必要なんかない」と一蹴。「どこの国であれ、他国に軍隊を派遣することはいけない。もし沖縄に『平和のため』と言って中国の軍隊が来ても、誰も安心しないでしょ」と皮肉った。
(6)海上自衛隊の那覇航空基地で開かれた出発式には隊員60人や家族が出席した。河野太郎防衛相が現れると、カーキ色の服と帽子を着用した隊員約60人が敬礼し、訓示に直立不動で聞き入った。
(7)河野防衛相は「各国部隊や国際機関と連携し、勇気と誇りを持って過酷な任務を果たすことを期待する」と述べ、家族に対しても「隊員の安全、体調管理に万全を期すよう準備をしてきた。皆さんはしっかり留守を預かってほしい」と声を掛けた。
(8)式典後、P3C哨戒機に乗り込む前に家族の元に駆け寄った隊員が子どもを抱きかかえる場面も。別の隊員は見送りに来た女性が涙を流すと、肩を抱いて別れを惜しんだ。滑走路では離陸前のP3Cが地上を移動する際、家族らが日の丸や自衛艦旗を振り、隊員を見送った。


 今回の中東派遣は、日本国憲法違反である。
また、この記事には、「中東派遣を前にわが子を抱く海上自衛隊員」、との親子3人の写真が添えられている。結局、自衛隊員の犠牲も強いられているわけだ。
 この中東派遣が、米軍再編という理屈の中で、基地負担が増大させることを強制されている沖縄からどのように見えているのか、「[那覇基地から中東派遣]なし崩しは許されない」(2020年1月13日)とする「タイムス」の社説から見てみる。
 まず、「タイムス」は状況を次のように見つめている。
(1)海上自衛隊のP3C哨戒機2機が11日、中東海域での情報収集活動のため那覇航空基地を出発した。隊員約60人がアフリカ東部ジブチを拠点に今月20日から活動する。県出身者6人も含まれている。河野太郎防衛相の派遣命令に基づくもので、2月2日には横須賀基地(神奈川県)から護衛艦「たかなみ」が出航、同月下旬から現地活動を開始する。派遣規模は合わせて260人程度という。
(2)米国とイランの対立で中東は緊迫した情勢が続いている。河野防衛相も「緊張が高まっている状況」と認め、偶発的な衝突に巻き込まれるリスクは消えない。
 また、この派遣そのものの危うさを指摘する。
(1)これまで何度も指摘してきたが、海自の中東派遣には問題が多い。政府が中東派遣を閣議決定したのは昨年12月末だ。臨時国会の閉幕後で、国会での論議もほとんどないままである。
(2)哨戒機派遣も通常国会前で、既成事実づくりを急いでいるとしか思えない。なぜ国会論議を避けるのか。政治が軍事に優先する文民統制(シビリアンコントロール)の観点からもあってはならない。
(3)派遣の法的根拠は防衛省設置法の「調査・研究」である。防衛相の命令だけで、国会の事前承認を必要としない。「調査・研究」名目で海外派遣されればなし崩し的に拡大されるばかりだろう。
 この上で、「タイムス」は、「通常国会は今月20日に召集される。護衛艦の出発前である。閣議決定時と現在の中東情勢は一変している。国会論議を徹底し閣議決定の白紙撤回もためらうべきではない。」、と断じる。
 さらに、この結論の根拠を次のように示す。
(1)米国とイランの対立を巡ってはイランが8日未明、米軍駐留のイラクの空軍基地など2拠点を十数発の弾道ミサイルで攻撃した。米軍によるイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官殺害に対する報復だった。
(2)トランプ米大統領は反撃を否定。イランも米国に攻撃しないことを伝え、全面衝突の危機はひとまず回避された。しかし米国は新たな経済制裁を表明しており、不測の事態がいつ起きてもおかしくない状況に変わりはない。
(3)イラン政府がウクライナ機を誤って撃墜したことを認めたため、抗議デモが発生し国内も流動化している。
(4)政府が現地情勢やリスクをどのように分析して海自を派遣するのか、国民に対する具体的な説明はない。共同通信社が11、12両日に実施した世論調査では中東派遣に「反対」が58・4%で「賛成」の34・4%を上回った。国民の理解が得られているとはとてもいえないのである。
 最後に、「タイムス」は、「日本の役割は同盟国の米国と伝統的な友好国であるイランの間に立ち、国際社会と連携して緊張緩和に向け両国を対話の道に導くことである。」、と次のように安倍晋三政権に突きつける。
 もちろん、沖縄にある新聞社の使命として。


「安倍晋三首相はサウジアラビアなど中東3カ国を訪問している。海自の中東派遣に理解を求め、自制的な対応を促すためという。情報収集といっても軍事活動である。中東には親イラン武装勢力が各地に存在しており、海自が巻き込まれる恐れは拭えない。海自の派遣が中東情勢の不安定化の要因になるのを懸念する。日本の役割は同盟国の米国と伝統的な友好国であるイランの間に立ち、国際社会と連携して緊張緩和に向け両国を対話の道に導くことである。」



by asyagi-df-2014 | 2020-01-22 07:09 | 米軍再編 | Comments(0)

SOMLからのシェア。

 湯布院の浦田さんが、SOMLに大事なことを掲載してくれました。
 そのまま、掲載します。
継続の力を感じます。


 1999年から始まり、これまで13回、日出生台(大分県由布市、玖珠町、九重町にまたがる西日本最大の演習場)で行われている米軍の実弾砲撃演習の監視活動を住民運動として取り組んできた中で、今後のなし崩し的な拡大を防ぐために重要と思われる点をまとめました。
 来月12日からまた始まろうとしている日出生台では14回目となる米軍演習に備えてまとめたものですが、他の地域で同様の取り組みをする人たちにも何かの参考になればと思い、シェアします。

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【米軍演習を監視する上での具体的な注意点】
<演習の変化、拡大強化の兆しを見逃さない>
・これまでにない武器が使われてないか。
・白りん弾、照明弾を使うか(昨年、沖縄では燃える照明弾がそのまま場外落下、米軍は無視)
・小銃、機関銃などの「小火器」として使用されてる武器の内容にこれまでと変化はないか
・砲弾数は増加の傾向にあり、今年はどうなるか
※砲弾の種類を見分けるには現在の監視小屋位置より高い場所からの確認の必要あり。
<米軍指揮官の「日出生台での米軍使用協定」の認識>
・かつて、「地元の協定は知らない」と答えた指揮官がいて大問題に。
・新しい指揮官が来るたびに「覚書」の終了時刻規定は破られて来た。特に初日。
・前回の指揮官はどんなに問われても「8時以降砲撃をしない」とは明言せず。今年は?
<演習場外の県道使用など、訓練区域の拡大への警戒>
・米軍車列による演習場外の県道使用が密かに行われていないか
(かつて日出生台で、深夜に完全武装した米軍車列が県道に出てきたことも)
・場外を使用したジョギング訓練(宮城県王城寺原では、これを部隊として実施。地元から中止要望を受けながらも完全無視して最後まで強行。日出生台では指揮官の単独ジョギング)
<武器、軍事になれ親しませるための動きへの警戒>
・かつて、米軍が公開訓練で155ミリりゅう弾砲を発射させるひもを住民(地元議員)に引かせ、りゅう弾砲を撃たせる事件が起き、大問題となった。
・公開訓練において、大砲や武器、砲弾などに触らせるかどうか(参加した側の意識も問われる)
<米軍、防衛局の地元への対応、姿勢、情報開示状況の変化>
・情報開示の内容と対象の変化。(かつてマスコミを排除して説明会や公開訓練を実施)
・米事前説明会は維持されるか。(対象参加者の範囲)
・同じく、公開訓練は維持されるか(対象参加者の範囲)
※事前説明会、公開訓練は住民が米軍指揮官に思いを伝えられる唯一の場。これまでには米軍側がから省略されようとしたことも、
・表敬訪問の状況と変化。(前回は先に来た代理が実施したものの後から到着した大隊長は省略)
・県、地元自治体の情報開示姿勢の変化にも注意を。
<演習場周辺の環境への影響>
・白リン弾使用後に毎回、林野火災発生。(事前の野焼きは終えているか)
・水質、大気など環境への影響は? <米軍による住民懐柔策>
・演習終了後に地元住民の家にホームステイをしたり、交流会(餅つきなど)を持つことも。
・「ボランティア」と称する、地元の福祉施設への押しかけ的ボランティア。
<「テロの危険性」のレベル。警備状況の変化>
・これまでには集団外出の際、防衛局は自治体に対して、外出情報を「通知はするが口外するな」と情報統制的な動きも。
・集団外出に同伴する防衛局員は、不自然なほど「無関係」を装ってきた
<演習終了後の集団外出の状況、変化>
・米兵の集団外出については情報が出なくなり、また行き先が福岡など遠方になったために実態の把握が難しくなってきている。かつて、別府市、大分市への集団外出では泥酔米兵によるトラブル。街中での酔った米兵どうしのケンカ、女性への声かけ、酩酊して店の入り口をふさいだり、酔って公園の公衆トイレで動けなくなってるのを発見され、佐世保の犯罪捜査官に担ぎ出された。無銭飲食で警察出動(防衛局が立替払いをしてもみ消し)。
・米軍使用協定では「米軍の外出には防衛局職員が同行」となっているが、気をつけないと骨抜きにされていく可能性。
<地元民間、自治体、自衛隊の協力動員体制の変化 新ガイドラインとの関連>
・この「米軍訓練」は、米軍だけの訓練ではない。「新ガイドライン」の地元民間施設、業者、警察、自治体などを総動員しての米軍協力訓練。自衛隊の後方支援体制の変化も注意。
・空港や港湾の利用状況。米兵の移動や米軍車両や武器の搬入のあり方。その変化。
<移転補償措置による演習場周辺住民の生活の状況、地元への影響の推移>
・移転保障措置の実施状況 ・移転後の移転先での状況 ・残された人たちの地域コミュニティの状況
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<米軍監視の心得 20年の実感から>
・今までこうだったから、たぶん今年もこうだろうというような予見、予断を持たずに状況を見ていく。何が起きるかわからないので、とにかく、まずはカメラ、ビデオを持って、その場にいることが重要。
・カメラ、ビデオなどの記録の重要性。どんな問題も記録されなければ無視される可能性。どこでその必要性が出てくるかは予見できないので、常に十分に充電されたカメラ、ビデオを手元に用意しておくべき。
・米軍がこれまでにない訓練、約束違反の訓練を始めても自ら公表することは期待できない。こちらから発見され、指摘され、否定できなくなってようやく最後に認めることはあるが。
・目の前で起きていることを、それがどういう意味を持つのか、この先、あとにどうつながっていく可能性があるかを常に意識しながら見る。
・長年にわたって訓練が繰り返されてくると、米軍、防衛局、大分県、地元自治体、報道関係者などそれぞれ担当者が交代する。そこに乗じて、さも今までもそうだったかのように情報開示が減らされたり、演習の拡大が起きたりするので要注意。
・「日出生台での米軍使用協定」は、米軍が協定の締結当事者として入っていないという致命的欠陥 。それでも、もし協定を破ることがあれば、4者協議会(大分県、玖珠町、九重町)がすぐに反応し、抗議や説明を求めてきたために、米軍側も地元を完全に無視することはできない状況で今まではきている。ただし、沖縄や他の地域での状況を見ると、いざその時が来れば、米軍は地元など完全に無視して自分たちの訓練を優先する。これは日出生台でも所々で見られるので、私たち住民の存在を彼らに常に意識させる活動は重要。(監視活動、抗議、事前説明会、公開訓練などの場)
・米軍側は、自分たちのやりたい訓練を、情報を出さず、なんの制約もなく自由に訓練ができる場、訓練をやりやすい場にしていきたいと考えていると思われる。こちら側は、逆に米軍側に、情報を毎回きちんと出させ、彼らが自由に訓練できる場にさせないことが、今後の拡大を防ぎ、「将来的な縮小廃止」につなげていくために必要。



by asyagi-df-2014 | 2020-01-21 07:27 | 米軍再編 | Comments(0)

安倍晋三政権は、憲法9条の形骸化に、また一歩踏み出した。(3)

 朝日新聞は2019年12月27日、「政府は27日、中東海域で航行する日本関係船舶の安全確保のための情報収集を目的として、海上自衛隊の護衛艦と哨戒機を派遣することを閣議決定した。根拠法は防衛省設置法に定められた『調査・研究』で、不測の事態になれば自衛隊法に基づいて『海上警備行動』を発令する。活動期間は1年間とし、延長する場合は再度、閣議決定する。」、と報じた。


このことに関して、日本弁護士連合会(以下、日弁連)は2019年12月27日、「中東海域への自衛隊派遣に反対する会長声明」を公表した。
日弁連はまず最初に、その経過を抑える。
(1)2019年12月27日、日本政府は日本関係船舶の安全確保に必要な情報収集活動を目的として、護衛艦1隻及び海賊対策のためにソマリア沖に派遣中の固定翼哨戒機P-3C1機を、中東アデン湾等へ派遣することを閣議決定した。
(2)2018年5月に米国がイラン核合意を離脱後、ホルムズ海峡を通過するタンカーへの攻撃等が発生していることから、米国はホルムズ海峡の航行安全のため、日本を含む同盟国に対して有志連合方式による艦隊派遣を求めてきた。
(3)これに対し日本は、イランとの伝統的な友好関係に配慮し、米国の有志連合には参加せずに上記派遣を決定するに至った。
 この上で、今回の安倍晋三権の閣議決定という方法で、これまでのあり方を踏み越えたやり方について、次のように批判する。
(1)今般の自衛隊の中東海域への派遣は、防衛省設置法第4条第1項第18号の「調査及び研究」を根拠としている。しかし、同条は防衛省のつかさどる事務として定めている。(2)そもそも、自衛隊の任務、行動及び権限等は「自衛隊法の定めるところによる」とされている(防衛省設置法第5条)。自衛隊の調査研究に関しても、自衛隊法は個別規定により対象となる分野を限定的に定めている(第25条、第26条、第27条及び第27条の2など)。ところが、今般の自衛隊の中東海域への派遣は、自衛隊法に基づかずに実施されるものであり、防衛省設置法第5条に違反する疑いがある。
(3)日本国憲法は、平和的生存権保障(前文)、戦争放棄(第9条第1項)、戦力不保持・交戦権否認(第9条第2項)という徹底した恒久平和主義の下、自衛隊に認められる任務・権限を自衛隊法で定められているものに限定し、自衛隊法に定められていない任務・権限は認めないとすることで、自衛隊の活動を規制している。自衛隊法ではなく、防衛省設置法第4条第1項第18号の「調査及び研究」を自衛隊の活動の法的根拠とすることが許されるならば、自衛隊の活動に対する歯止めがなくなり、憲法で国家機関を縛るという立憲主義の趣旨に反する危険性がある。
(4)しかも、今般の自衛隊の中東海域への派遣に関しては、「諸外国等と必要な意思疎通や連携を行う」としていることから米国等有志連合諸国の軍隊との間で情報共有が行われる可能性は否定できず、武力行使を許容されている有志連合諸国の軍隊に対して自衛隊が情報提供を行った場合には、日本国憲法第9条が禁じている「武力の行使」と一体化するおそれがある。
(5)また、今般の閣議決定では、日本関係船舶の安全確保に必要な情報の収集について、中東海域で不測の事態の発生など状況が変化する場合における日本関係船舶防護のための海上警備行動(自衛隊法第82条及び第93条)に関し、その要否に係る判断や発令時の円滑な実施に必要であるとしているが、海上警備行動や武器等防護(自衛隊法第95条及び第95条の2)での武器使用が国又は国に準ずる組織に対して行われた場合には、日本国憲法第9条の「武力の行使」の禁止に抵触し、更に戦闘行為に発展するおそれもある。このようなおそれのある活動を自衛隊法に基づかずに自衛隊員に行わせることには、重大な問題があると言わざるを得ない。
(6)政府は、今回の措置について、活動期間を1年間とし、延長時には再び閣議決定を行い、閣議決定と活動終了時には国会報告を行うこととしている。しかし、今般の自衛隊の中東海域への派遣には憲法上重大な問題が含まれており、国会への事後報告等によりその問題が解消されるわけではない。中東海域における日本関係船舶の安全確保が日本政府として対処すべき課題であると認識するのであれば、政府は国会においてその対処の必要性や法的根拠について説明責任を果たし、十分に審議を行った上で、憲法上許容される対処措置が決められるべきである。
 この上で、日弁連は、「よって、当連合会は、今般の自衛隊の中東海域への派遣について、防衛省設置法第5条や、恒久平和主義、立憲主義の趣旨に反するおそれがあるにもかかわらず、国会における審議すら十分になされずに閣議決定のみで自衛隊の海外派遣が決められたことに対して反対する。」、と標題に関して明確な見解を示した。


 さて、この日弁連会長声明から受け取る『法的な疑義』及び『国会軽視』とは次のことである。


(1)今回の自衛隊の中東海域への派遣は、自衛隊法に基づかずに実施されるものであり、防衛省設置法第5条に違反する疑いがあること。
(2)このように自衛隊法ではなく、防衛省設置法第4条第1項第18号の「調査及び研究」を自衛隊の活動の法的根拠とすることが許されるならば、自衛隊の活動に対する歯止めがなくなり、憲法で国家機関を縛るという立憲主義の趣旨に反する危険性があること。
(3)今回の閣議決定によって、米国等有志連合諸国の軍隊との間で情報共有が行われる可能性は否定できず、武力行使を許容されている有志連合諸国の軍隊に対して自衛隊が情報提供を行った場合には、日本国憲法第9条が禁じている「武力の行使」と一体化するおそれがあること。
(4)海上警備行動や武器等防護(自衛隊法第95条及び第95条の2)での武器使用が国又は国に準ずる組織に対して行われた場合には、日本国憲法第9条の「武力の行使」の禁止に抵触すること。
(5)また、この行為は戦闘行為に発展するおそれがあること。
(6)日本国憲法第9条の「武力の行使」の禁止に抵触し、更に戦闘行為に発展するおそれがあるような活動を自衛隊法に基づかずに自衛隊員に行わせることには、重大な問題があること。
(7)今回の自衛隊の中東海域への派遣には憲法上重大な問題が含まれており、国会への事後報告等によりその問題が解消されるわけではない。中東海域における日本関係船舶の安全確保が日本政府として対処すべき課題であると認識するのであれば、政府は国会においてその対処の必要性や法的根拠について説明責任を果たし、十分に審議を行った上で、憲法上許容される対処措置が決められるべきであること。



by asyagi-df-2014 | 2020-01-06 07:47 | 米軍再編 | Comments(0)

安倍晋三政権は、憲法9条の形骸化に、また一歩踏み出した。(2)

 朝日新聞は2019年12月27日、「政府は27日、中東海域で航行する日本関係船舶の安全確保のための情報収集を目的として、海上自衛隊の護衛艦と哨戒機を派遣することを閣議決定した。根拠法は防衛省設置法に定められた『調査・研究』で、不測の事態になれば自衛隊法に基づいて『海上警備行動』を発令する。活動期間は1年間とし、延長する場合は再度、閣議決定する。」、と報じた。


このことに関して、読売新聞(以下、「読売」)-「海自の中東派遣 緻密な計画で万全の運用を」、朝日新聞(以下、「朝日」)-「中東海域へ自衛隊 海外派遣、なし崩しの危うさ」、東京新聞(以下、「東京」)-「自衛隊の中東派遣 国会の統制欠く危うさ」、毎日新聞(以下、「毎日」)-「自衛隊の中東派遣決定 結論ありきに疑問が残る」の四紙の社説で考える。
 結果的に、「読売」と「読売」への反論の三紙という形になる。


 まず第一に、読売の主張についてである。
「読売」の主張は、次のものである。
(1)中東の海上交通路の安全確保に自衛隊が貢献する意義は大きい。緻密ちみつな計画を立て、万全の態勢で臨まねばならない。
(2)中東は、米国やサウジアラビアがイランと対立し、緊張した状況が続く。年間数千隻の日本関連の船舶が周辺海域を通航している。日本が地域の安定に主体的にかかわるのは当然である。
 なお、「読売」の問題点の把握と閣議決定によって行われることの把握は、次のもの。
1.問題点の把握
(1)問題は、日本のタンカーなどが攻撃される事態だろう。政府は派遣計画に、現地で不測の事態が発生した場合、自衛隊に海上警備行動を発令する、と明記した。情報収集に特化した「調査・研究」では、海自は日本の船舶を護衛できず、仮に攻撃されても、武器を使って守ることができない。自衛隊員の負担は大きい。
(2)海上警備行動では、武器使用が認められる。政府は発令基準を事前に決めておくべきだ。民間船からの救難要請が想定されよう。
(3)哨戒機は1月下旬、海自艦は2月中に活動を開始する。自衛隊は、具体的な活動内容や、武器使用の範囲を定めた部隊行動基準をつくり、適切に任務を遂行することが求められる。自衛隊が襲撃された場合、装備を守る自衛隊法の武器等防護の規定に基づき、応戦することになろう。様々な状況を想定し、訓練を重ねることが大切だ。
(4)現地での円滑な活動のためには、護衛艦と哨戒機の補給・整備地の選定も進める必要がある。
(5)派遣計画には、更なる外交努力の重要性も盛り込んだ。日本は、長年友好関係にあるイランと、米国の橋渡し役を引き続き果たすべきである。来月には、安倍首相がサウジアラビアなどを訪問する予定だ。中東全域の緊張緩和に寄与したい。
2.閣議決定によって行われること
(1)政府は閣議で、防衛省設置法の「調査・研究」の規定に基づき、海上自衛隊の部隊の中東への派遣を決めた。情報収集活動を強化する。
(2)護衛艦1隻を派遣するほか、ソマリア沖で海賊対処にあたる哨戒機2機を活用する。部隊は260人規模で、期間は1年間だ。
(3)派遣部隊は、オマーン湾やアラビア海北部などの公海で、日本の船舶の航行状況を確認するほか、不審な船の情報収集にあたる。既に米国や英国、豪州などは、米主導の枠組みで艦艇などを派遣している。フランスなど欧州各国も独自の取り組みを検討中だ。
(4)防衛省は、情報交換のための連絡員を米軍に派遣する。関係国と緊密に連携し、危険な兆候の把握に努めなければならない。


 さて、これ以下は、「読売」の上記下線の主張が果たして正当性を持つかということに対しての3社の主張である。


1.朝日新聞
「朝日」は、①「対米配慮を優先した結論ありきの検討」、②「明らかな拡大解釈」、③「いったん派遣されれば、なし崩しに活動が広がる懸念」、と安倍晋三政権に対して、次のように批判する。
(1)派遣の必要性にも、法的根拠にも疑義がある。何より国会でまともに議論されていない。自衛隊の海外活動の歴史の中で、かくも軽々しい判断は、かつてなかったことだ。
(2)イランとの友好関係を損なわないよう、米主導の「有志連合」には加わらず、独自派遣の体裁こそとったが、対米配慮を優先した結論ありきの検討だったことは間違いない。
(3)派遣の根拠は、防衛省設置法4条にある「調査・研究」だ。日本関係船舶の護衛をするわけではなく、目的はあくまでも安全確保に必要な情報収集態勢の強化だという。これなら防衛相だけの判断で実施でき、国会の承認は必要ない。しかし、4条は防衛省の所掌事務を列挙した規定に過ぎない。「調査・研究」は主に、平時における日本周辺での警戒監視に適用されている。日本をはるか離れ、しかも緊張下にある中東への、長期的な部隊派遣の根拠とするのは、明らかな拡大解釈だ。
(4)一方、現地で日本関係船舶を守る必要が生じた場合は、自衛隊法に基づく海上警備行動を発令して対処する方針も決められた。限定的とはいえ、武器の使用も許される。政府は今のところ、防護が必要な状況にはないというが、いったん派遣されれば、なし崩しに活動が広がる懸念が拭えない。
(5)連立与党の公明党は当初、「調査・研究」名目に難色を示したが、閣議決定という手続きを踏むことや、派遣期間を1年と区切り、延長の際は再度閣議決定して国会に報告することなどが盛り込まれると、あっさり追認した。しかし、これらが活動の歯止めとして有効に機能するとはとても思えない。
また、「読売」は閣議決定という手法をそのまま是認するが、「朝日」は「国会論議を素通りし、既存の法律を無理やり当てはめた安倍政権の今回の手法は、乱暴と言わざるをえない。」、と次のように批判する。
(1)憲法9条の下、専守防衛を原則とする戦後日本にとって、自衛隊の海外派遣は常に重い政治テーマだった。「私は閣議決定にサインしない」。1987年、イラン・イラク戦争でペルシャ湾に敷設された機雷除去のため、海上自衛隊の掃海艇派遣をめざした中曽根康弘首相を、後藤田正晴官房長官はそう言って翻意させた。
(2)しかし、91年の湾岸戦争後のペルシャ湾への掃海艇派遣を転機に、自衛隊の海外での活動が繰り返されるように。そのつど9条との整合性が問われたが、時の政権は対米関係を優先し、自衛隊の活動領域をじわじわと拡大させてきた。
(3)米国が同時多発テロへの報復としてアフガニスタンを攻撃するとインド洋に海自を派遣し、米艦に給油した。イラク戦争の際は「非戦闘地域」と主張して復興支援活動を行った。ただ、これらは根拠となる特別措置法をつくっての対応であり、強引ではあったが、国会を舞台に国民の前で激しい議論を経ていた。既存の法律を無理やり当てはめた安倍政権の今回の手法は、それ以上に乱暴と言わざるをえない。
(4)政府は現地で米国と緊密に情報共有を進める方針で、この時期の派遣決定も、本格化する有志連合の活動と足並みをそろえる狙いがうかがえる。いくら、日本独自の取り組みであると強調しても、米国と一体の活動と受け止められる可能性は否定できない。
(5)安倍首相は先週、来日したイランのロハニ大統領に対し、自衛隊派遣の方針を直接説明し、「理解」を得たとされる。しかし、6月にホルムズ海峡近くで日本関係船舶など2隻が被害を受けた件も、いまだに誰が攻撃したのかはっきりしていない。軍事組織の派遣が現地の人々を刺激し、無用な敵を生み出す恐れもある。イラン国内にしても、革命防衛隊には強硬派もおり、一枚岩ではないと見られている。
 結局、「朝日」は、「外交努力の徹底を」-この問題に軍事的な解決はない。関係国とともに外交努力を徹底することこそ、日本が選ぶべき道である-と、次のように見解を示す。
(1)日本から遠く離れた中東海域には、国内の監視の目が届きにくいことも懸念材料だ。現地情勢の悪化を受け、陸上自衛隊の部隊を撤収させた南スーダンの国連平和維持活動(PKO)の教訓を忘れてはいけない。派遣後に内戦状態に陥ったが、防衛省はその事実を認めようとせず、部隊の「日報」は隠蔽(いんぺい)された。これでは情勢の変化に対応できない。そもそも今回の緊張の発端は、トランプ米政権が昨年、イランの核開発を制限する多国間の合意から一方的に離脱したことにある。事態の打開には、米国側の歩み寄りが不可欠だ。
(2)日本は原油の大半を中東地域から輸入している。緊張緩和のため一定の役割を果たす必要はあるだろう。だが、それが自衛隊の派遣なのか。米国の同盟国であり、イランとも友好関係を保つ日本には、仲介者としてできることがあるはずだ。この問題に軍事的な解決はない。関係国とともに外交努力を徹底することこそ、日本が選ぶべき道である。」


2.東京新聞
 「東京」は、「政府が中東地域への自衛隊派遣を閣議決定した。調査・研究が名目だが、国会の議決を経ない運用は、文民統制の観点から危ういと言わざるを得ない。」、渡結論づける。また、「米国とイランのはざまでひねり出した苦肉の策ではあるが、トランプ米政権に追随し、派遣ありきの決定であることは否めない。」ことから、「イランと友好関係を築く日本にとって、米国主導の有志連合への参加は、イランとの関係を損ないかねない。」、と。
さらに、「そもそも、必要性や法的根拠が乏しい自衛隊の中東派遣である。」との視点から、次のように批判を加える。
(1)中東地域で緊張が高まっていることは事実だ。日本はこの地域に原油輸入量の九割近くを依存しており、船舶航行の安全確保が欠かせないことも理解する。とはいえ、日本関係船舶の防護が直ちに必要な切迫した状況でないことは政府自身も認めている。そうした中、たとえ情報収集目的だとしても、実力組織である自衛隊を海外に派遣する差し迫った必要性があるのだろうか。
(2)戦争や武力の行使はもちろん、武力による威嚇も認めていない憲法九条の下では、自衛隊の海外派遣には慎重の上にも慎重を期すべきではないのか。
(3)調査・研究に基づく派遣は拡大解釈できる危うさを秘める。米中枢同時テロが発生した二〇〇一年当時の小泉純一郎内閣は、法律に定めのない米空母の護衛を、この規定を根拠に行った。今回の中東派遣でも、現地の情勢変化に応じて活動が拡大することがないと断言できるのか。
(4)日本人の人命や財産に関わる関係船舶が攻撃されるなど不測の事態が発生し、自衛隊による措置が必要な場合には、海上警備行動を新たに発令して対応するという。この場合、自衛隊は武器を使用することができるが、本格的な戦闘状態に発展することが絶対にないと言い切れるのだろうか。
 この上で、「東京」は、「最大の問題は、国権の最高機関であり、国民の代表で構成される国会の審議を経ていないことだ。国会による文民統制(シビリアンコントロール)の欠如である。」、と今回の閣議決定の問題点を言い当てる。
 この批判根拠を次のように指摘する。
(1)自衛隊の海外派遣は国家として極めて重い決断であり、そのたびに国会で審議や議決を経てきた。国連平和維持活動(PKO)協力法や、インド洋で米軍などに給油活動するテロ対策特別措置法、イラクでの人道支援や多国籍軍支援を行うイラク復興支援特措法、アデン湾で外国籍を含む船舶を警護する海賊対処法である。
(2)自衛隊の活動を国会による文民統制下に置くのは、軍部の独走を許し、泥沼の戦争に突入したかつての苦い経験に基づく。日本への武力攻撃に反撃する防衛出動も原則、事前の国会承認が必要だ。自衛隊を国会の統制下に置く意味はそれだけ重い。
(3)今回の中東派遣では、閣議決定時と活動の延長、終了時に国会に報告するとしているが、承認を必要としているわけではない。
 結局、「東京」は、「緊張緩和に外交資産を」と掲げ、「国会の関与を必要としない調査・研究での派遣には、国会での説明や審議、議決を避け、政府の判断だけで自衛隊を海外に派遣する狙いがあるのだろうが、国会で説明や審議を尽くした上で可否を判断すべきではなかったか。閣議決定にはさらなる外交努力を行うことも明記した。米イラン両国との良好な関係は日本の外交資産だ。軍事に頼ることなく緊張を緩和し、秩序が維持できる環境づくりにこそ、外交資産を投入すべきだ。それが平和国家、日本の果たすべき役割でもある。」、と見解を示す。


3.「毎日」
 「毎日」の主張は、次のものである。
(1)ホルムズ海峡付近で日本企業が運航するタンカーが攻撃されたのは6月だ。その後、情勢は落ち着いている。なぜ派遣が必要なのか。米国の顔を立てるため、結論ありきで検討が進んだ印象は拭えない。
(2)疑問が残るのは、防衛省設置法の「調査・研究」を派遣の根拠規定としたことだ。日本周辺の海域・空域で自衛隊が普段行う警戒監視活動などの根拠とされている。調査・研究名目の情報収集活動であれば、イランに軍事的圧力をかける意図はないと説明しやすい。だが、海外に軍事力を派遣する重い政治決断の法的な裏付けとしては軽すぎる。あまりにアンバランスだ。
(3)それでも広大な海域だ。日本関連の船舶が攻撃される事態になれば海上警備行動を発令するというが、護衛艦1隻では限度がある。
(4)護衛艦の到着は来年2月になる見通しだ。いくら中立の体裁をとっても、実態は米国の同盟国としての活動が中心になる。収集した情報は米海軍と共有し、事実上、有志連合と連携していくとみられる。アデン湾で海賊対処に当たってきたP3C哨戒機も新たな任務を兼ねる。安倍政権としては米国への「お付き合い」程度にとどめたつもりでも、敵対勢力からは「米軍と一体」とみなされ、日本が紛争当事者となりかねないリスクがある。 この上で、「毎日」は、「だからこそ、軍事力を動かすときには厳格な法治とシビリアンコントロール(文民統制)が求められる。国会でほとんど審議せずに閣議決定した政権の姿勢は問題だ。国会での継続的な検証を求めたい。そもそもホルムズ海峡の治安が悪化したのは、米国がイラン核合意から離脱したことに端を発している。緊張を緩和するための平和的な外交努力を継続すべきだ。」、と安倍晋三政権に向けて断じる。


 では、安倍晋三政権の海上自衛隊の護衛艦と哨戒機の派遣の閣議決定をどのように受け取るのか。
 やはり、「読売」の「日本が地域の安定に主体的にかかわるのは当然だから、中東の海上交通路の安全確保に自衛隊が貢献する意義は大きい」と把握するのではなく、やはり、①派遣の必要性に疑問があること、②法的根拠に疑義があること、③国会でまともに議論されていないこと、④対米配慮を優先した結論ありきの結論である、との問題点から日本のこれからを誤るものであると捉えなければならない。
 特に、「国権の最高機関であり、国民の代表で構成される国会の審議を経ていないことだ。国会による文民統制(シビリアンコントロール)の欠如である。」、との「東京」の指摘は重たい。いや、これは、むしろ、これまでの安倍晋三政権の誤った手法の結果でしかない。
私たちは、「朝日」の「この問題に軍事的な解決はない。関係国とともに外交努力を徹底することこそ、日本が選ぶべき道である。」及び「東京」の「軍事に頼ることなく緊張を緩和し、秩序が維持できる環境づくりにこそ、外交資産を投入すべきだ。それが平和国家、日本の果たすべき役割でもある。」、との見解こそがこれからの日本のあり方を示している、と受け止めなけねばならない。




by asyagi-df-2014 | 2020-01-05 11:22 | 米軍再編 | Comments(0)

安倍晋三政権は、憲法9条の形骸化に、また一歩踏み出した。(1)

 表題に関して、朝日新聞は2019年12月27日、相原亮記者名で次のように報じた。


(1)政府は27日、中東海域で航行する日本関係船舶の安全確保のための情報収集を目的として、海上自衛隊の護衛艦と哨戒機を派遣することを閣議決定した。根拠法は防衛省設置法に定められた『調査・研究』で、不測の事態になれば自衛隊法に基づいて『海上警備行動』を発令する。活動期間は1年間とし、延長する場合は再度、閣議決定する。」
(2)安倍晋三首相は27日、BSテレ東の番組収録で、原油輸入の9割は中東地域に頼っているとし、『原油が途絶えれば、日本経済、国民の生活も大変なことになる』と強調。『中東地域の平和と安定は日本にとっては死活的に重要な問題だ』と語った。その上で、『日本独自の取り組みとして自衛隊のアセット(護衛艦など)を派遣する決定をした』と述べた。」
(3)河野太郎防衛相は閣議決定を受け、自衛隊に準備指示を出した。派遣される艦艇部隊は護衛艦1隻で要員約200人。来年2月上旬に日本を出発し、2月中に活動を始める。航空機部隊は海賊対処のためアフリカ東部・ソマリア沖で活動中のP3C哨戒機2機を活用し、要員は約60人。来年1月中に活動を始める。活動範囲はオマーン湾、アラビア海北部、バブルマンデブ海峡東側のアデン湾の3海域の公海とした。護衛艦のレーダーや搭載ヘリ、哨戒機によって船舶の航行の安全に直接影響を及ぼす情報を収集。情報は米国主導の「有志連合」とも共有するため、バーレーンにある米中央海軍の司令部に連絡員を派遣する。
(4)中東への自衛隊派遣をめぐっては、6月に日本の海運会社が運航するタンカーなど2隻がホルムズ海峡付近で攻撃された。米国が7月、『有志連合』を提唱し、日本を含む各国へ参加を求めていた。日本はイランへの配慮や、法的根拠を見いだすことが難しいことから『有志連合』への参加は見送り、独自派遣とした。」
(5)自衛隊派遣の根拠とした「調査・研究」は防衛相の命令だけで実施可能で、国会承認も必要ない。公明党の求めで今回の派遣については閣議決定し、活動を延長したり、終了したりする場合は国会報告することも義務づけた。ただ、今回の派遣の必要性や問題点などについては与党の協議だけで終わっており、臨時国会では十分に議論されたとは言えない。
(6)閣議決定を受け、自民党の森山裕、立憲民主党の安住淳両国会対策委員長は国会内で会談し、来月17日に衆院安全保障委員会を開くことを決めた。参院でも同日に外交防衛委員会を開く方向で調整する。


 この「自衛隊派遣の根拠とした『調査・研究』は防衛相の命令だけで実施可能で、国会承認も必要ない。公明党の求めで今回の派遣については閣議決定し、活動を延長したり、終了したりする場合は国会報告することも義務づけた。ただ、今回の派遣の必要性や問題点などについては与党の協議だけで終わっており、臨時国会では十分に議論されたとは言えない。」、との朝日新聞の指摘は、まさしく、「安倍晋三政権が海外での武力行使を禁じた憲法9条の形骸化を進める政策に、また一歩踏み出した。」(北海道新聞社説-2019年12月28日)、との北海道新聞の社説の批判そのものである。
2019年12月28日、日本の新聞社はこのことにどのように対応したのか。
 共同通信の「47NEWS」と中央紙で拾い上げることができたのは、次のものである。


(1)北海道新聞社説-自衛隊中東派遣を決定 国会軽視の対米追従だ
(2)琉球新報社説-自衛隊の中東派遣 国の針路誤らせかねない
(3)沖縄タイムス社説-[自衛隊中東派遣]「国会抜き」は許されぬ
(4)新潟日報社説-自衛隊中東派遣 安易で拙速な決定を憂う茨城新聞論説-自衛隊中東派遣国会抜きの拡大は疑問だ
(5)中日新聞社説-国会の統制欠く危うさ 自衛隊の中東派遣
(6)高知新聞社説-【海自の中東派遣】「なし崩し」は許されない
(7)朝日新聞-中東海域へ自衛隊 海外派遣、なし崩しの危うさ
(8)東京新聞社説-自衛隊の中東派遣 国会の統制欠く危うさ
(9)毎日新聞社説-自衛隊の中東派遣決定 結論ありきに疑問が残
(10)読売新聞社説-海自の中東派遣 緻密な計画で万全の運用を


 どうやら、把握した新聞社の9社の見解は、「『国会抜き』で閣議決定された自衛隊の中東派遣は国の針路誤らせかねない。」や「安倍晋三政権のなし崩しの海外派遣は、危険である。」、ということに集約される。
「緻密な計画で万全の運用」、とする読売新聞だけが今回もまた『異質』で際立つ。


 ここでは、2019年12月28日付けの北海道新聞(以下、「北海道」)社説で、具体的にこの問題を捉えてみる。
 「北海道」は、今回、「自衛隊中東派遣を決定 国会軽視の対米追従だ」、と断じた。
 「北海道」の「安倍晋三政権が海外での武力行使を禁じた憲法9条の形骸化を進める政策に、また一歩踏み出した。」、との批判の根拠(1.国会軽視、2.対米追従、3.国際社会への日本政府のあり方)は次のもの。


1.国会軽視
(1)閉幕後に閣議決定することで、派遣の必要性や武器の使用基準などに関する国会の熟議を避けた。
(2)今回の閣議決定が、政権の都合のいいように法を解釈、運用していることも問題である。派遣は防衛省設置法の「調査・研究」に基づくとしている。政府が2001年の米中枢同時テロ後、海自艦船をインド洋に派遣する際にも適用した規定だ。ただこの条文は抽象的で、拡大解釈の余地が大きい。しかも防衛相の判断のみで実施できる。
(3)法の曖昧さを逆手に取って、海外派遣の既成事実を積む意図がのぞく。インド洋への派遣時は、テロ対策特別措置法を適用するまでの一時的な措置だったが、今回は1年単位の初の長期派遣となる。加えて問題なのは、船舶が攻撃されれば、武器が使用できる自衛隊法の海上警備行動に切り替えて対処するとしていることだ。防衛省設置法の下で地理的制約なく自衛隊の活動範囲を拡大しておいて、行った先で不測の事態が生じたら別の法律で対処する―。国会承認が必要のない法の規定を、政権の意図にかなうように組み合わせた、こんなやり方は不誠実だ。
(3)今回、政府は閣議決定という体裁をとり、国会報告を義務付けた。活動終了時や、閣議決定の内容を変更する際も国会で報告する。だが国会に派遣を中止させる権限はない。政権の判断で自由に延長でき、歯止めにはならない。
2.対米追従
(1)政府は、海上自衛隊の中東派遣を閣議決定した。日本関連船舶の安全確保に必要な情報収集態勢の強化が目的としている。船舶防護の緊急性は否定していながら、国会審議も経ず、あまりに拙速な決定で容認できない。
(2)米国はイラン近海での安全確保のため、自ら主導して結成した有志連合に参加するよう、日本に繰り返し求めてきた。有志連合への参加は見送りつつも、別の形で派遣を実現し、米国への同調をアピールする政府の狙いが透けて見える。
(3)対米追従ありきで、法的根拠も説得力を欠く。
(4)安倍政権は積極的平和主義の名の下、専守防衛から逸脱する政策を次々と遂行し、自衛隊と米軍の一体化を進めている。対米追従を優先し、国会論議は後回しにして、紛争の近接地域に自衛隊を出すことは、隊員を無用な危険にさらすだけだ。
3.国際社会への日本政府のあり方
(1)米国とイランの核問題を巡る対立で、中東海域の緊張は続いている。日本は中東に原油輸入の9割近くを依存しており、海上交通路の安全確保は欠かせない。安倍首相は先週、来日したイランのロウハニ大統領と会談した。有志連合への不参加や、イランに接するホルムズ海峡とペルシャ湾を活動地域から外したことを説明し「理解」を得たとしている。ただイランは経済制裁を続ける米国への反発を強めている。自衛隊派遣に積極的に賛同したわけでもない。
(2)一方、日本は米国と、中東での情報を密に交換するとしている。友好国であるイランに配慮した姿勢を見せながら、二枚舌のような対応では信頼を失いかねない。そもそも中東の緊張は、トランプ政権がイラン核合意から一方的に離脱したことに起因する。米主導の有志連合への参加は7カ国にとどまり、国際的な支持が広がっているとは言えない。首相が仲介外交を買って出るなら、親密さを強調するトランプ氏に、核合意への復帰を粘り強く求め続けることが最優先だ。


 「北海道」は、最後に、「現地には護衛艦1隻とP3C哨戒機、約260人の部隊が派遣される予定だ。早ければ来月から活動を始める。派遣海域はイランだけでなく、イエメンなども含む紛争が頻発する地域の沿岸だ。防衛省は『米軍からの防護要請は想定していない』とするが、米軍が自衛隊の眼前で攻撃され、防護を求めてくる可能性は否定しきれない。陸上自衛隊を南スーダンに派遣した際は、部隊の日報の隠蔽が問題となった。後から公開された日報には『戦闘』の記述があった。自衛隊員に危険な任務を強いながら、国民の目を欺いて事実を隠すようなことが繰り返されてはならない。」、との危惧感を表明した上で、「憲法解釈を覆し、集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法を強引に成立させた政権である。危惧は尽きない。通常国会で徹底的に論議すべきである。」、と結論づける。


 今回の安倍晋三政権の閣議決定で明確になったものは、次のことである。


1.国会に派遣を中止させる権限はないことから、安倍晋三政権は自らの判断で自由に延長できることになり、国会は何ら歯止めにはならない。つまり、国会審議を経なかったことを含め、国会そのものを異常に軽視していること。
2.今回の閣議決定は、「有志連合への参加は見送りつつも、別の形で派遣を実現し、米国への同調をアピールする政府の狙いが透けて見える。」(「北海道」)ものであること。また、安倍晋三政権の積極的平和主義の名の下での「専守防衛から逸脱する政策を次々と遂行し、自衛隊と米軍の一体化を進める。」(「北海道」)政策は、露骨な対米追従政策でしかないこと。
3.この結果、もたらされるのは、「紛争の近接地域に自衛隊を出すことは、隊員を無用な危険にさらす。」(「北海道」)、ということでしかない。




by asyagi-df-2014 | 2020-01-04 10:03 | 米軍再編 | Comments(0)

米海兵隊は、迫撃砲照明弾による訓練を再開する方針を県側に伝えた。

 琉球新報(以下、「新報」)は2019年12月21日付けの社説を「金武町伊芸の民間地域に今月5日、米軍の照明弾3発が落下した事故で、米海兵隊が迫撃砲照明弾による訓練を再開する方針を県側に伝えた。」、と始めた。
実は、「新報」は、2019年12月5日、「畑に照明弾か? 民家から50メートル 沖縄県金武町」、と次のように伝えていた。


(1)5日午後、金武町伊芸の民間地で長さ10センチほどの筒状の照明弾のようなものが見つかった。石川署が現場検証しており、詳細を確認している。現時点でけが人や物的被害は確認されていない。落下現場は畑で、最も近い民家から約50メートル、米軍キャンプ・ハンセンの都市型戦闘訓練施設があるレンジ4から直線距離で約400メートルの位置にある。
(2)目撃した住民らによると、午後3時までに照明弾のようなものが上がり、落下傘が開きふらふらと落ちてきた。
(3)畑の持ち主である70代の男性は「作業中だったら大変だった。誰かに当たることもあったかもしれない」と話し『謝って済む問題じゃない。どうするつもりなのか。伊芸だけの問題じゃない。どこでも起こる話だ」と憤った。
(4)米軍は2~8日、キャンプ・ハンセン内のレンジ4などで演習すると通報している。


 全く原因究明がされていない中で、米海兵隊による迫撃砲照明弾訓練が再開されるというのである。
このことに関して、「新報」は「照明弾訓練再開方針 住民危険にさらす暴挙だ」、と断じるのである。
 その方針は、「強風が事故の原因であり、訓練が実施できる最大風速を、従前よりも下方修正することで再発防止を図るという。」、というものでしかない。
 「新報」は、この再発防止策の不毛さについて、次のように指摘せざるを得ないことになる。


(1)県民を愚(ぐ)弄(ろう)しているとしか思えない。一定以上の風速のときは訓練を控えるよう規則を変えたからといって、守られる保証は全くないからだ。
(2)発射する方向や角度を誤れば民間地域に落下する事態は起こり得る。規則が破られたり、発射の方法を間違ったりすることがないと、誰が言い切れるのか。
(3)現に、民間地域への流弾などの事故は、過去に何度も発生している。海兵隊が示した改善策は実効性がない。訓練の再開は住民を危険にさらす暴挙であり、断じて受け入れられない。


 だからこそ、「新報」は、「米軍にどんな不手際があっても民間地域への落下は金輪際起きないという万全な対策は、狭い沖縄では望むべくもない。そうである以上、演習は直ちに全廃すべきだ。」、と米国政府と日本政府に突きつける。


 あわせて、「新報」は、「まかり間違えば県民の生命、財産に危害が及ぶ恐れがあった。被害が出なかったのは運が良かっただけだ。本来なら日本の捜査当局が主体的に解明すべき事案である。」、とも両政府に突きつける。


(1)照明弾は、パラシュートが開いて燃焼しながら落ちてくる。民家に落下すれば火災を引き起こす恐れがある。車両が行き交う道路に落ちれば死傷事故を誘発しかねない。今回、3発のうち1発が見つかった場所は、沖縄自動車道から15メートルしか離れていない。
(2)沖縄防衛局が県に伝えた情報によると、発射されたのはキャンプ・ハンセン内のレンジ2だった。伊芸区から約1キロの距離だ。12個を発射し、うち3個が民間地で発見された。訓練時の詳しい状況などは明らかにされていない。
(3)まかり間違えば県民の生命、財産に危害が及ぶ恐れがあった。被害が出なかったのは運が良かっただけだ。本来なら日本の捜査当局が主体的に解明すべき事案である。


 最後に、「新報」は、日本政府に根本問題の解決を突きつける。


(1)米軍は風に流されたことが原因と結論付けているが、あくまでも加害者側の一方的な言い分だ。決してうのみにはできない。もしかすると、迫撃砲の誤射といった重大なミスを隠しているのかもしれない。真相はやぶの中だ。ここにも、捜査を阻む不平等な日米地位協定の存在が影を落とす。
(2)照明弾落下に抗議するため、県が米海兵隊に来庁を求めたところ、米側は「基地に来るなら応じる」として断った。米軍は近年、県の呼び出しをたびたび拒んでいる。
(3)迷惑を掛けたのだから、相手から求められる前に謝罪に赴くのが当たり前だ。来るなら会ってやる、という高飛車な態度は常軌を逸している。ここまで米軍を増長させたのは、米国に追従するばかりで、地位協定の抜本見直しをはじめ、主張すべきことを主張してこなかった日本政府の責任と言えよう。
(4)政府は、米国に対し演習の恒久的な中止を強く要求すると同時に、非常識な対応を改めるよう求めるべきだ。







by asyagi-df-2014 | 2019-12-25 07:10 | 米軍再編 | Comments(0)

何と、米国は思いやり予算を5倍要求だと。

 2019年11月19日、沖縄タイムスと琉球新報が日本政府の「思いやり予算」について社説で取りあげた。
沖縄タイムス(以下、「タイムス」)が「[思いやり予算5倍要求]日本側は毅然と対応を」、琉球新報(以下、「新報」)が「駐留経費増額要求 いびつな『同盟』見直しを」、とそれぞれ論評している。
一方、政府側は、いつも通りの対応をしている。毎日新聞は2019年11月18日、「 菅義偉官房長官は18日の記者会見で、トランプ米政権が7月に日本政府に対し、在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)を約4倍に増やすよう要求していたとの報道について、『そのような事実はない』と否定した。」、と報じた。
 ということで、「タイムス」と「新報」で、この問題を考える。
 まず事実を両社は次のように捉える。


(「タイムス」)
(1)トランプ米政権が在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)の5倍増を日本政府に打診していたことが明らかになった。今年7月に当時のボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が来日した際に日本側に伝え、日本側は拒否したという。一方的で理不尽な要求である。日本は2019年度予算で思いやり予算約1974億円を計上している。単純計算で5倍にすると、9800億円以上の巨額に上る。
(2)思いやり予算について最後に公表された04年の米国防総省の報告書によると、日本は在日米軍駐留経費の74・5%、約4分の3を負担している。同じ同盟国の韓国やドイツ、英国、イタリアなどと比べても負担割合は突出して大きい。
(3)思いやり予算は1978年度に始まった。円高による米側の負担増に伴い、日米地位協定で本来米側が支出すべき費用も肩代わりしはじめた。当初は基地従業員の福利費用などにとどまっていたが、日米の特別協定を結んだ87年度以降は、日本が基地従業員の給与や光熱費、訓練移転費を支出している。
(4)5年間の協定は2021年3月末で期限を迎える。交渉は来春にも本格化しそうだ。
防衛省関係者は米側の要求について「日本の反応を見たかったのだろう」と感想を述べたというが、毅然と向き合ってもらいたい。

(「新報」)
(1)在日米軍の駐留経費負担(思いやり予算)を巡り、トランプ米政権が日本政府に対し、現行の5倍の増額を求めていた。トランプ氏の法外な要求をむしろ奇貨として、ゆがんだ日米の「同盟」関係を見直していくべきである。
(2)国家安全保障問題担当のボルトン大統領補佐官(当時)が7月に来日した際、韓国政府に在韓米軍の負担を5倍に引き上げるよう求めると説明し、日本も同様の増額を検討すべきだと迫ったという。増額要求は来年の大統領選に向け、貿易交渉など経済面を含めて日本の譲歩を引き出そうとするトランプ氏特有のディール(取引)との見方も強いが、今後圧力を強めるとみて間違いないだろう。
(3)日本側はボルトン氏に対し「日本は既に同盟国の中で最も高い割合を負担している。非現実的だ」と拒んだ。だが安倍政権は昨年もトランプ氏に言われるがまま、105機に上る最新鋭ステルス戦闘機など高額な米国製武器の大量購入を決めている。拒否の姿勢が変わらない保証は全くない。
(4)日本は米軍基地の光熱費や基地従業員の給与、施設整備費なども負担している。日米地位協定上、本来は米側が出すべき分野でも解釈拡大や特別協定の締結などによって支出を拡大させてきた。駐留経費負担は19年度予算で約1974億円。このほかにも基地周辺対策費や米軍用地の借料、漁業補償、辺野古の新基地建設を含む米軍再編経費や日米特別行動委員会(SACO)関連経費、基地交付金など在日米軍関係経費の総額は約8千億円に達するといわれている。


 次に、この問題を何が引き起こしているのかについて、両社は、次のように把握する。

(「タイムス」)
(1)トランプ大統領は来年、再選が悲願の大統領選を控えており、外交的な得点は有権者へのアピールになるからだ。
(2)実際、9月から交渉が始まった韓国に対しても在韓米軍駐留経費の来年以降の負担額について、今年の5倍以上の47億ドル(約5100億円)を提示したと報じられている。
(3)トランプ氏は選挙中から一貫して「誰かが日本を攻撃したら、われわれは駆け付けなくてはならない。でもわれわれが攻撃を受けても日本は助けに来なくていい」などと日米安保を疑問視する発言を繰り返してきた。「安保ただ乗り論」で日本側をゆさぶり、さまざまな交渉を有利に運ぶ狙いがうかがえる。元国防長官がかつて議会で「米軍にとって日本駐留は、必要とあれば常に出動できる前方基地として使用できる。日本は米軍駐留経費の75%を負担してくれる」などと利点を強調したことがある。トランプ氏は日米安保への理解を欠いている。
(4)トランプ氏の外交における基本姿勢はディール(取引)である。5倍増の要求をふっかけてだんだん落として決着させることを狙っているのかもしれない。

(「新報」)
(1)増額要求は来年の大統領選に向け、貿易交渉など経済面を含めて日本の譲歩を引き出そうとするトランプ氏特有のディール(取引)との見方も強いが、今後圧力を強めるとみて間違いないだろう。


 両社は、最後に、次のように主張する。

(「タイムス」)
(1)懸念されるのは安倍晋三首相がトランプ氏の売り込みに米国製兵器の「爆買い」をのまされていることだ。日本政府は日米交渉にどう臨むべきなのか。辺野古新基地建設の見直しをはじめとする沖縄の負担軽減策と抱き合わせ、どこに着地点を見いだすのか知恵を絞るべきである。
(2)思いやり予算について米側と毅然と対応しながら、同時に交渉の中に沖縄側の要求を入れ込むべきだ。

(「新報」)
(1)「同盟国の中で最も高い割合を負担」という説明はその通りだ。試算では駐留経費の負担割合は2015年度で実に86・4%に上る。韓国やドイツなどの他の米同盟国に比べ突出していることを改めて指摘しなければならない。
(2)米側の求めに応じて日本国民の負担をさらに拡大させるような過ちはもう許されないことは当然だ。一方でトランプ氏はこれまで日米安保条約について「不公平な合意だ」とたびたび不満を述べている。米国による日本防衛義務が、片務的で不公平だと言いたいようだ。だが日本の経費負担に支えられた広大な米軍基地の自由使用によって米国がアジア太平洋地域への影響力を長年行使し、さらには世界戦略の拠点としてその機能を強化させてきた歴史をトランプ氏はどれだけ知っているのか。まして、沖縄がその犠牲となり戦後74年たった今も過重な基地を負担し続けている状況など理解していないだろう。
(3)日本政府はこの機会に、対米従属姿勢から脱却して健全な「同盟関係」を構築する方向にかじを切り、虚心坦懐に米側と協議すべきである。そしてその中で、特定地域に安全保障の負担を集中させている異常な状態の解消を優先させるべきなのは言うまでもない。


 確かに、沖縄の二紙の主張は、「目下の同盟」として、沖縄に犠牲を負わせる中で、安易にその場をしのいできた日本政府の「やり方」を突く。
米軍再編という目的に、「トランプ流」という手法が加えられていることから、日本政府の責任は、限りなく重たい。




by asyagi-df-2014 | 2019-11-28 07:52 | 米軍再編 | Comments(0)

この国の闇を浮き上がらせること。

 日本国憲法から、守られていない地域があること。
 それは、この国の「闇」。
 単なる「隠蔽」以前の問題として、不可侵の「闇」としてある。
この「闇」に関して、沖縄タイムス(以下、「タイムス」)は2019年11月4日、「[米軍事故公表せず]政府は毅然と向き合え」、と社説で論評した。
最初に、「タイムス」は、ことの顛末を次のように指摘する。


(1)米海兵隊岩国基地(山口県)所属部隊が2016年4月、嘉手納基地沖の上空でFA18戦闘攻撃機とKC130空中給油機の接触事故を起こしながら公表せず、正式な調査も見送っていたことが米軍の報告書でわかった。
(2)2機は嘉手納基地に着陸し、けが人はいなかったという。報告書には引きちぎられた給油機の給油ホースがFA18の右翼に引っかかっている生々しい写真が掲載されている。一歩間違えれば民間地を巻き込む大惨事につながりかねなかったはずである。18年12月に高知沖で6人が死亡・行方不明になる事故の調査過程で明らかになった。
(3)沖縄、高知の事故はいずれもFA18の操縦士が月明かりのない暗闇で空中給油を受けている最中に起きたという共通点がある。報告書では「(沖縄で)調査していれば(高知は)防げた可能性がある」と内部批判している。


 このことについて「タイムス」は、「米軍は日本側に通報せず、隠蔽した上に調査をしなかったのである。事故をなかったことにしたのである。県民の生命と財産を軽んじていることに憤りを禁じ得ない。」、と断じる。
何故なのか。
「タイムス」は、このことについて続けて追求する。


(1)16年12月に名護市安部の沿岸部でオスプレイが墜落した。夜間の困難な気象条件で空中給油訓練を強行した末の墜落である。調査しておればこれも防げたかもしれない。
(2)米軍担当者は「通報は日米両政府間の合意に沿って行う」という。実際は日本側に伝えておらず、日本政府はきちんとただすべきだ。
(2)仮に通報があったとしても日本側は捜査にはタッチできず米側の捜査報告を丸のみするだけだ。日本側が捜査権を行使できるようにするにはやはり地位協定改定しかない。


 さらに、「タイムス」は「ぞっとする」、と指摘を続ける。


(1)ぞっとするのは、岩国基地で重大な事故につながりかねない規律違反が横行していることだ。報告書には手放しでの操縦や飛行中の読書なども含まれている。事故の背景として報告書は部隊内に「薬物乱用、アルコールの過剰摂取、不倫、指示違反といった職業倫理にもとる実例」が存在したと指摘している。
(2)高知の事故では乗員2人の尿から睡眠導入剤の成分が検出されている。身の毛がよだつ。チェック体制はどうなっているのだろうか。
(3)岩国基地に限らない。18年4月には米軍三沢基地(青森県三沢市)のF16戦闘機が東北の山間部を超低空飛行した動画を「ユーチューブ」に投稿。操縦席から撮影したとみられ、日本国内での最低高度150メートルより低く飛行したことを同基地は認めている。
(4)岩国基地は米軍厚木基地(神奈川県)から空母艦載機約60機が移駐し、嘉手納基地と並ぶ極東最大級の航空基地となった。FA18などは外来機として沖縄にたびたび飛来しており、危険性は岩国にとどまらず拡散しているのだ。


 最後に、「タイムス」は、「米軍内に安全性軽視の考えが蔓延しているのではないか。個人だけでなく構造的問題に踏み込むべきである。日本政府は米軍と毅然と向き合い、事故を通報しなかった理由とともに、原因究明と再発防止策、規律違反の横行に対する対策をただし公表させなければならない。」、と要求する。


 この国の「闇」の実態がここにある。




by asyagi-df-2014 | 2019-11-11 07:13 | 米軍再編 | Comments(0)

米軍の気ままな「パラシュート降下訓練」が許されていいわけはない。

 「地元自治体が中止を要請する中、米空軍が嘉手納基地でパラシュート降下訓練を29日に強行した。基地周辺には学校や住宅が密集しており一歩間違えば重大事故につながりかねない。政府は毅然とした態度で米国に抗議すべきだ。」、との琉球新報主張を安倍晋三政権は、日本政府は、まともに受け止めることができない。
 どういうことなのか。
 琉球新報(以下、「新報」)は2019年10月30日の社説で、「米軍の落下傘降下 訓練は全て中止すべきだ」、と断じるのである。
 「新報」の「事実」に関する指摘は次のもの。


(1)パラシュート降下訓練は1996年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告によって、米軍伊江島補助飛行場で実施することが合意されている。その後、2007年の日米合同委員会で例外的な場合に限り嘉手納基地を使用すると追加合意された。
(2)だが嘉手納基地での訓練は今年に入り既に4回を数える。今や「例外」どころか常態化の様相を呈している。日本を軽く見ているからこそ、米国は国同士の取り決めさえ守ろうとしないのだ。


 この「事実」について、さらに「例外」事項について指摘する。


(1)河野太郎防衛相によると、「例外的」と言えるような状況の説明さえ、米国からなされていないという。防衛省は「SACO合意に反する」として米国に中止を求めたが、無視された。これでは同盟国とは言えない。属国に対する扱いだ。
(2)この間、政府はあらゆる場面で米国に迎合し追従してきた。トランプ米大統領の求めに応じ米国製武器の大量購入を約束したのは象徴的だ。何でも言いなりになる政府の姿勢が今日の事態を招いたと言っていい。
(3)そもそも07年に嘉手納基地の使用を例外的に認めたことが大きな間違いだ。どのような場合が「例外」に当たるかは明らかにされていない。当時、政府関係者が基準として挙げたのは(1)非定期かつ小規模(2)人命に関わる(3)伊江島の気象条件―だった。
(4)今回は空軍が訓練をした同じ日に海兵隊が伊江島で降下訓練を実施しており、気象条件は理由にならない。米軍は、自分たちが「例外」と主張すればいつでも嘉手納基地で訓練ができると、都合良く解釈しているのだろう。日米合同委の合意は白紙に戻すしかない。
(5)嘉手納基地での降下訓練に先立って伊江島補助飛行場で実施された米海兵隊によるパラシュート訓練では、2人が提供区域外にある畑や県所有の伊江島空港に降下した。訓練は30日も行われ同空港に1人が降下する事態になった。伊江村では、訓練に伴い日常的に民間地への兵士の降下や物の落下、騒音に悩まされている。25日には米軍MC130J特殊作戦機から落下した部品が伊江島補助飛行場で見つかっていたことが明らかになった。嘉手納に兵士を降下させたのは同型機だ。


 「新報」は、最後に、「SACOで合意されたからといって、住民を危険にさらすことは断じて許されない。伊江村民の大幅な負担軽減を図ることが急務だ。沖縄は全国の米軍専用施設面積の7割が集中している。パラシュート降下訓練まで押し付けられたのでは県民は安心して生活できない。全ての訓練の中止を求める。」、と


 やはり、次のことを確認するしかない。
1.SACOで合意そのものが、沖縄を基地問題から解放するものではないこと。
2.そのSACO合意さへ「例外」規定で、骨抜きになっていること。
3.どうやら、米軍の「意思」には、日本政府の「密約」が絡んでいるのではないかという疑惑があること。



by asyagi-df-2014 | 2019-11-08 08:42 | 米軍再編 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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