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最高裁第三小法廷は、在特会側の上告を退ける。徳島県教職員組合への人種差別に対しての判決が確定。

 朝日新聞は2016年11月2日、標題について次のように報じた。


(1)「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の会員らが徳島県教職員組合(徳島市)で人種差別的な罵声を浴びせたとして、県教組側が慰謝料など約2千万円を在特会側に求めた訴訟で、436万円の賠償を在特会側に命じた二審・高松高裁判決が確定した。最高裁第三小法廷(大谷剛彦裁判長)が、1日付の決定で在特会側の上告を退けた。
(2)一、二審判決によると、在特会の会員ら十数人は2010年、日本教職員組合が集めた募金の一部を県教組が四国朝鮮初中級学校(松山市)に寄付したことを攻撃するため、県教組の事務所に乱入。女性書記長に拡声機で「朝鮮の犬」「非国民」などと怒鳴ったり手首をつかんだりし、その動画をインターネットで公開した。
(3)二審判決は、会員らの行動は「人種差別的思想の表れで強い非難に値する」「リンチ行為としか言いようがない」と指摘。日本も加入する人種差別撤廃条約上の「人種差別」にあたるとして、賠償額を一審・徳島地裁が命じた約230万円から436万円に増額。支払い命令の対象も一審より2人増やして10人とした。


 以下、朝日新聞の引用。






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by asyagi-df-2014 | 2016-11-03 16:37 | 書くことから-ヘイトクライム | Comments(0)

澤藤統一郎さんのブログから大阪地裁ヘイトスピーチ訴訟を見る。

 澤藤統一郎さん〈以下、澤藤とする〉は、2016年9月28日のブログで大阪地裁ヘイトスピーチ訴訟を、「訴訟に価値ある判決」、と評した。
 このことを考える。
 まず、澤藤は、次のように指摘する。


「判決は、名誉毀損ではなく民族差別を侮辱ととらえた。そして、人種差別撤廃条約を前面に押し出した。いずれも、今後に影響が大きい。ヘイトスピーチ撲滅への『価値ある勝利』と言えよう。」


 澤藤は、この訴訟について次のように説明する。


(1)報道を総合する限りだが、認定された桜井の侮辱行為の内容は次のようなもの。
(2)街宣活動やネット動画・ツイッターで、原告を「朝鮮人のババア」「朝鮮ババア」「反日記者」「差別の当たり屋」などと表現し、名前をもじって「ドブエ」と連呼した。
このことを通じて、在特会を「在日朝鮮人を日本から排斥することを目的に活動する団体」と断定、「人通りの多い繁華街などで原告の容姿や人格を執ようにおとしめた。論評の域を逸脱した限度を超えた侮辱で、在日朝鮮人に対する差別を助長する意図が明らかだ」「社会通念上許される限度を超える侮辱行為で、原告の人格権を違法に侵害した」と認定した。また、違法の根拠として「日本が加入する人種差別撤廃条約に違反する」と明示的に認めた。
(3)一方、在特会側は「互いに批判し合う表現者どうしの言論のやり取りで、賠償すべき発言ではない」と主張した(NHK)というが、一顧だにされなかった。当然のことだ。
(4)問題になったのは「互いに批判し合う表現者どうしの言論のやり取り」ではない。一方的な差別の言動である。差別の悪罵は、マジョリティからマイノリティに、強者が弱者に向けてする一方通行のもので、その逆はない。これを「相互批判の言論」へのすりかえは、卑怯この上ないというべきである。
(5)さらに、同判決について被告側代理人弁護士は、「在日特権を批判、追及している政治団体への偏見に基づく一方的な判決で不当であり、控訴を検討する」とコメントしたという。このコメントは判決に不満だとは言っているものの、判決のどこが間違っているという指摘ができていない。むしろ、できないことを自白する内容。事実認定にはケチをつけようがない以上、不満は違法の評価にある。「日本の裁判所の日本人裁判官であれば、『在日朝鮮人を差別し侮辱してけっこうだ』というべきではないか」とコメントすれば、ホンネがよく分かるのだが。


 澤藤は、この裁判について、こう触れる。


(1)判決後、原告は伝統衣装のチマ・チョゴリ姿で記者会見し、「どんな判決が出るのか眠れなくて不安でしたが、民族差別だと認められたのはうれしく、すごく価値のある勝利だと思います。これからも小さな勝利を積み重ねて差別のない社会を作りたい」と喜びを語ったという。
(2)深く同感する。あなたの勝利は価値あるものだ。その「小さな勝利の積み重ね」が差別のない社会に通じる。不義不正の横暴と闘ってこその正義の実現である。面倒な訴訟を勇気をもって提起し、勝訴されたことへの敬意と祝意を表したい。


 また、澤藤は、こうも記す。


「ところで、『公然事実を指摘して、人の社会的評価を低下させる』という名誉毀損の要件の認定には、それなりのハードルを超えなければならない。一方、民族差別の言動を人種差別撤廃条約に照らして違法とし、これを『人格権を違法に侵害した侮辱』ととらえれば、被害者側からの訴訟は簡明になる。今は代理人弁護士が付かなければ提訴は困難だが、やがて代理人不要で定式化された訴状のひな形に、侮辱の言動を補充することで損害賠償請求訴訟提起が可能となる。無数の反差別裁判が日本中に提起されることによって、民族差別がなくなることを考えると痛快ではないか。」


 李信恵さんの 「どんな判決が出るのか眠れなくて不安でしたが、民族差別だと認められたのはうれしく、すごく価値のある勝利だと思います。これからも小さな勝利を積み重ねて差別のない社会を作りたい」、との言葉に深い敬意と拍手を送ります。
 また、澤藤さんの「不義不正の横暴と闘ってこその正義の実現」、という言葉に未来を思います。


 以下、澤藤統一郎さんのブログの引用。






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by asyagi-df-2014 | 2016-09-30 07:09 | 書くことから-ヘイトクライム | Comments(0)

ヘイトクライム-大阪地裁は、「在日朝鮮人への差別を助長、増幅させる意図があった」と認定。

 フリーライターの李信恵(リシネ)さんへの「人種差別」行為の訴訟について、毎日新聞に地新聞は2016年9月28日、「インターネット上などの民族差別的なヘイトスピーチで名誉を傷付けられたとして、在日朝鮮人の女性が『在日特権を許さない市民の会(在特会)』と元会長の桜井誠氏(44)に550万円の賠償を求めた訴訟の判決が27日、大阪地裁であった。増森珠美裁判長は一部について『在日朝鮮人への差別を助長、増幅させる意図があった』と認定し、在特会側に77万円の支払いを命じた。双方とも控訴を検討している。」、と報告した。
 この判決内容について、「増森裁判長は桜井氏の一部の発言や記述について、『人格権を違法に侵害するもの』と指摘。人種差別の撤廃を求める人種差別撤廃条約の趣旨に反した侮辱行為と結論付けた。」、と伝えた。
 また、この裁判は、「原告はフリーライターの李信恵(リシネ)さん(45)。判決によると、李さんはネットニュース上でヘイトスピーチについて批判的な記事を書いた。桜井氏は在特会の会長だった2013〜14年、神戸・三宮での街宣活動で『朝鮮人のババア』と発言したり、ツイッターで『鮮人記者』などと書き込んだりした。」、というものであった。
 さらに、今後について、「李さんはネット情報の拡散被害による精神的苦痛なども訴えたが、判決はこうしたネット被害には踏み込まなかった。在特会側は代理人弁護士を通じ、『判決は一方的で不当』などとする談話を出した。」、と報じた。


 以下、毎日新聞の引用。





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by asyagi-df-2014 | 2016-09-28 08:01 | 書くことから-ヘイトクライム | Comments(0)

「沖縄ヘイトを考える」を読む。

 安田浩一さん(以下、安田とする)は、沖縄タイムスに「沖縄ヘイトを考える(上・下)」を寄稿した。
 安田は、ヘイトクライム・ヘイトスピーチを行う集団を、「ヘイトスピーチをぶちまけ、外国人の排斥を訴えることでどうにか自我を保っていられる、単なる差別集団者だ。」、と喝破し、その構造を、「世の中に存在する納得しがたい不可解なもの、いわばブラックボックスを紐解くカギとして、在日コリアンなど外国籍住民の存在が都合よく利用されているだけだ。」、と見抜く。
 そして、「人々は差別を“学んで”いく。無自覚のうちにヘイトスピーチを自らの中に取り込んでいく。」、と日本社会の病巣をえぐる。
 この寄稿をもとに、「外国籍住民へのヘイトスピーチと沖縄バッシングは地続きだった。」との意味を、「沖縄ヘイトクライム」を考える。


 「死ね、殺せ」「首を吊(つ)れ」「日本から出て(いけ」
から
「日本から出ていけ」「ふざけんじゃねえよ」



 ユーチューブの画面に映し出される「ヘイトスピーチ」のこうした「像」は、基本的人権が国の成り立ちの重要な要素だと考えてきた者にとっては、実に、耐えがたいものであった。
 でも、私自身も含めて、どれほどの人たちがこれに立ち向かうことができたのか。
だから、安田は、「ヘイトスピーチ対策法」の成立について、「今年6月、ヘイトスピーチ対策法が施行された。罰則なしの理念法である。保護対象が『適正に居住する本邦外出身者』とされるなど問題点も少なくない。とはいえ、わずか数年前まで『我が国には深刻な差別は存在しない』というのが政府の公式見解であったことを考えれば、差別の存在を認め、それが不当であると断じたのだから、一歩前進であると私は考えている。恐怖によって沈黙を強いられているヘイトスピーチの被害当事者のためにも、そして社会への分断を食い止めるためにも、法的整備は必要だった。」、と評価する。
安田は、日本におけるヘイトクライム・ヘイトスピーチの実態を次のように描き出す。


(1)「憎悪の矛先を向けられるのは、在日コリアンをはじめとする外国籍住民だ。こうした“ヘイトデモ”は10年ほど前から外国籍住民の集住地域を中心に、各地で見られるようになった。」
(2)「へらへら笑いながら『おーい、売春婦』などと沿道の女性をからかう姿からは、右翼や保守といった文脈は浮かんでこない。古参の民族派活動家は私の取材に対し『あれは日本の面汚し』だと吐き捨てるように言ったが、当然だろう。ヘイトスピーチをぶちまけ、外国人の排斥を訴えることでどうにか自我を保っていられる、単なる差別集団者だ。」
(3)「『本当に殺されるかもしれない』。在日コリアンの女性は、脅(おび)えた表情で私にそう訴えた。デモ隊から『朝鮮半島に帰れ』と罵声を浴びせられながら、じっと耐えている男性もいた。彼はデモ隊が通り過ぎた後、こぶしを地面に叩(たた)きつけながら泣きじゃくった。」
(4)「ヘイトデモの隊列は、地域に、人々の心に、大きな傷跡を残していく。参加者たちはデモを終えれば居酒屋で乾杯し、差別ネタで笑い転げ、『来週もがんばろう』と気勢を上げて、それぞれの生活圏に帰っていく。まるで週末の草野球にでも参加しているような感覚なのだろう。社会にとって大事なものを壊しているのだという自覚などない。多くはネット掲示板などで外国人排斥の書き込みに忙しい者たちだ。それだけでは飽き足らず、いつしか街頭に飛び出してきた。高校生から年金生活者まで世代もさまざま、女性の数も少なくない。」
(5)「なぜ、そんな醜悪なデモを繰り返すのか。半ばケンカ腰で取材する私に対し、ヘイトデモ常連の男性は吐き捨てるように答えた。
 『日本は日本人のための国じゃないか。奪われたものを取り返したいと思っているだけだ』
 彼だけじゃない。私が取材した多くの者が、この『奪われた感』を訴えた。外国人に土地を奪われ、福祉も奪われ、正しい歴史認識も奪われ、治安を乱され、揚げ句に領土も奪われ、そのうえメディアや行政をコントロールされている-つまり、世の中に存在する納得しがたい不可解なもの、いわばブラックボックスを紐解(ひもと)くカギとして、在日コリアンなど外国籍住民の存在が都合よく利用されているだけだ。」
(6)「彼ら彼女らに憎悪を植え付けるのは、ネットで流布される怪しげな情報だけではない。執拗(しつよう)に近隣国の脅威を煽(あお)るメディアがあり、特定の民族を貶(おとし)める書籍が流通する。テレビのバラエティー番組で、ヘイトデモに理解を示す“識者”もいた。憎悪の種が社会にばらまかれる。そして人々は差別を“学んで”いく。無自覚のうちにヘイトスピーチを自らの中に取り込んでいく。」


 安田は、日本という国の現在の病巣を次のようにえぐり出すのである。


「憎悪と不寛容の空気は、さらに新たな『敵』を生み出していった。国への補償を求める公害病患者や、震災被害で家を失い、仮設住宅で暮らす人々、生活保護受給者などに、『反日』『売国奴』といったレッテルが貼られる。私はこの数年間、そうした現場ばかりを見てきた。」


 しかし、安田は、「そればかりではない。差別主義者、排外主義者にとって、沖縄もまた『敵』として認知されるようになった。」、とあらためて指摘する。
 安田は、沖縄を「敵」として扱う日本人の姿を次のように描き出す。


(1)「私の網膜には、あの日の光景が焼き付いている。2013年1月、沖縄の市町村長や県議たちが東京・銀座でオスプレイ配備反対のデモ行進を行ったときのことだ。日章旗を手にして沿道に陣取った集団が、沖縄のデモ隊に向けて『非国民』『売国奴』『中国のスパイ』『日本から出ていけ』、あらん限りの罵声をぶつけた。彼ら彼女らは、日ごろから外国人排斥運動に参加している者たちだった。」
(2)「沖縄の人間を小ばかにしたように打ち振られる日章旗を見ながら、沖縄もまた、差別と排他の気分に満ちた醜悪な攻撃にさらされている現実に愕然(がくぜん)とした。
『戦後70年近くにして沖縄がたどり着いた地平がこれなのか』。デモ参加者の1人は悔しさをにじませた表情で話した。」
(3)外国籍住民へのヘイトスピーチと沖縄バッシングは地続きだった。
(4)「実は、銀座の沿道から罵声を飛ばしていた者たちの一部は、その前年、辺野古にも出向いている。新基地建設反対派のテントに踏み込み、『日本から出ていけ」「ふざけんじゃねえよ」などと拡声器を使って悪罵の限りを叩きつけた。しかもこれを『愛国運動』などと称しているのだから呆(あき)れるばかりだ。地域を破壊し、分断し、人々の心を傷つけているだけじゃないか。」


 安田は、「このような“沖縄ヘイト”は、いま、社会の中でさらに勢いを増している。」、と指摘する。
安田はそそ危惧感を次のように説明する。


(1)「ところで、同法が国会で審議されているときから、ネットを中心に奇妙な言説が目立つようになった。
 『米軍出ていけ』はヘイトスピーチ-。
 実際、ヘイトスピーチ問題を取材している私のもとへもどう喝めいた“問い合わせ”が相次いだ。『沖縄の米軍差別をどう考えるのか』『辺野古の基地反対運動もヘイト認定でいいんだな?』。それ以前から『首相を呼び捨てで批判するのもヘイトスピーチ』といった的外れな物言いも存在したが(そのような書き方をした全国紙もある)、同法成立が必至となるや、ネット上では新基地建設反対運動も『取り締まりの対象』といった書き込みが急増したのである。」
(2)「無知と無理解というよりは、ヘイトスピーチの発信者たちによる、恣意(しい)的な曲解と勝手な解釈であろう。これに煽(あお)られたのか、それともさらに煽りたかったのか、同法が『米国軍人に対する排除的発言が対象』と自身のSNSに書き込んだ自民党衆院議員もいた。」
(3)「そもそもヘイトスピーチとは、乱暴な言葉、不快な言葉を意味するものではない。人種、民族、国籍、性などのマイノリティーに対して向けられる差別的言動、それを用いた扇動や攻撃を指すものだ。ヘイトスピーチを構成するうえで重要なファクトは言葉遣いではなく、抗弁不可能な属性、そして不均衡・不平等な社会的力関係である。」
(4)「これに関しては、同法の国会審議において、幾度も確認されたことだった。法案の発議者である参院法務委員会委員の西田昌司議員(自民党)は私の取材に対し、『米軍基地への抗議は憲法で認められた政治的言論の一つ。同法の対象であるわけがない』と明確に答えた。結局、基地反対運動とヘイトスピーチを無理やりに結び付けようとする動きには、基地問題で政府を手こずらせる『わがままな沖縄』を叩(たた)きたい-といった意図が見え隠れする。基地反対派住民を『基地外』と揶揄(やゆ)した神奈川県議も同様だ。」


 安田は、「そう、問題とすべきはむしろ沖縄へ向けられたヘイトである。」、と続ける。


(1)「うるま市在住の女性が米軍属に殺害された事件でも、ネット上には被害者を愚弄(ぐろう)し、沖縄を嘲笑するかのような書き込みがあふれた。『事件を基地問題に絡めるな』『人権派が喜んでいる』。ナチスのカギ十字旗を掲げて『外国人追放』のデモを行うことで知られる極右団体の代表も、この事件では、あたかも女性の側に非があるかのような持論をブログに掲載した。ツイッターで『「米軍基地絡みだと大騒ぎになる』『米軍が撤退したら何が起きるか自明だ』などと発信した元国会議員もいる。これら自称『愛国者』たちは、簡単に沖縄を見捨てる。外国の軍隊を守るべきロジックを必死で探す。なんと薄っぺらで底の浅い『愛国』か。」


 また、安田は、沖縄への「誤解」が次々と生みだされていく日本の状況を指摘する。


(1)「1年前には人気作家の沖縄蔑視発言が話題となったが、この手の話を拾い上げればきりがない。『沖縄は基地で食っている』『沖縄の新聞が県民を洗脳している』『沖縄は自分勝手』『ゆすりの名人』-。」
(2)「不均衡で不平等な本土との力関係の中で『弾よけ』の役割を強いられてきた沖縄は、まだ足りないとばかりに、理不尽を押し付けられている。差別と偏見の弾を撃ち込まれている。しかも、そうした状況を肯定する素材としてのデマが次々と生み出されていく。」
(3)「歴史を振り返ってみれば、外国籍住民へのヘイトスピーチ同様、沖縄差別も決して目新しいものではない。日本社会は沖縄を蔑み、時代に合わせて差別のリニューアルを重ねてきた。アパートの家主が掲げた『朝鮮人、琉球人お断り』の貼り紙が、いま、『日本から出ていけ』といった罵声や横断幕に取って代わっただけだ。」
(4)「『沖縄は甘えるな』といった声もあるが、冗談じゃない。倒錯している。沖縄に甘えてきたのは本土の側だ。見下しているからこそ、力で押し切ればなんとかなるのだと思い込んでいる。実際、そうやって強引に歯車を動かすことで、沖縄の時間を支配してきた。辺野古で、高江で、沖縄の民意はことごとく無視されている。」


 安田は、この寄稿の最後をこのようにまとめる。


「私はこれまで、ヘイトスピーチの“主体”を取材することが多かった。だが、被害の実情を見続けているうちに、加害者分析に時間をかける必要を感じなくなった。差別する側のカタルシスや娯楽のためにマイノリティーや沖縄が存在するわけではない。
 これ以上、社会を壊すな。そう言い続けていくしかない。差別や偏見の向こう側にあるのは戦争と殺りくだ。歴史がそれを証明しているではないか。」


 沖縄の高江・辺野古の状況は、安田の「差別や偏見の向こう側にあるのは戦争と殺りくだ。歴史がそれを証明しているではないか。」、との指摘が示すものを、まさしく証明している。
 「社会を壊すな。」
 確かに、今は、そう言い続けなければならない。
 ともに。


 以下、沖縄タイムスの引用。





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by asyagi-df-2014 | 2016-08-10 05:41 | 書くことから-ヘイトクライム | Comments(0)

東京地裁は、ツイッターでの「捏造」被害に賠償を命令。

 標題について、時事通信は2016年8月3日、ツ「イッターに『従軍慰安婦捏造(ねつぞう)記者の娘』と名前と写真を投稿され、名誉を毀損(きそん)されたとして、元朝日新聞記者の長女(19)が関東地方の40代男性に損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁(朝倉佳秀裁判長)は3日、請求通り慰謝料など170万円の支払いを命じた。
 朝倉裁判長は『父の仕事上の行為に対する反感から未成年の娘を人格攻撃しており、悪質で違法性が高い』と指摘。長女側は慰謝料の請求を100万円にとどめていたが、同裁判長は『200万円が相当だ』とも述べた。」、と報じた。
 このことについて、 「長女は弁護団を通じ、『判決が不当な攻撃をやめさせる契機になってほしい』とコメント。弁護団は『一般の個人に対する慰謝料としては異例の高額を認めた。インターネットの無法化に対する抑止力となる判決だ』と評価した。」、と伝えた。



 以下、時事通信の引用。




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by asyagi-df-2014 | 2016-08-07 05:30 | 書くことから-ヘイトクライム | Comments(0)

ヘイトクライム-「共に生きよう」と書いた手紙を手渡した。「法ができたおかげで、私たちの尊厳が守られた。全国で被害に遭っている人たちも、あきらめないで」と涙を流してあいさつした。

 川崎市のヘイトデモの中止について、朝日新聞は2016年6月6日、「ヘイトスピーチ対策法が施行されて最初の週末の5日午前、排外主義的な団体が川崎市中原区で計画していたデモが、出発直後に中止された。十数人が集まったのに対し、反対する市民ら数百人が取り囲んだ。神奈川県警も中止するよう説得した。市民らは、デモの出発地とされた同区の中原平和公園で『ヘイトデモ中止』『帰れ』と叫び、路上に座り込んだ。デモ隊は日の丸やプラカードを掲げて10メートルほど進んだところで市民らに阻止され、警察の説得に応じて中止を決めた。」、と報じた。
 また、この日までの経過について、「在日コリアンが理事長を務める社会福祉法人が、同市川崎区の桜本地区周辺でのヘイトデモ禁止を申し立てたのに対し、横浜地裁川崎支部は2日、デモ禁止の仮処分決定を出した。また川崎市も、周辺の公園使用を不許可処分とした。これに対し主催団体の男性は場所を変更し、中原平和公園からのデモをネット上で予告。県警が道路使用を許可したのに対し、デモに反対する川崎の市民グループがツイッターなどで抗議に集まるよう呼びかけていた。」、と伝えた。


 朝日新聞は、川崎市でヘイトデモ反対の先頭に立ってきた崔江以子(チェカンイジャ)さんのこんな様子と声を伝えた。これは、テレビ映像では、流されなかったもの。


「デモの主催者の男性に歩み寄り、『共に生きよう』と書いた手紙を手渡した。中止後、『法ができたおかげで、私たちの尊厳が守られた。全国で被害に遭っている人たちも、あきらめないで』と涙を流してあいさつした。」


 「共に生きよう」。
あまりにも、重く、勇気ある言葉。


 以下、朝日新聞の引用。




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by asyagi-df-2014 | 2016-06-06 18:25 | 書くことから-ヘイトクライム | Comments(0)

ヘイトクライム-川崎市は、差別をあおるヘイトスピーチを繰り返していた団体に対し、公園の使用を不許可にした。

 「この国に広がる差別を根絶する一歩と捉えたい。」
 
 琉球新報は2016年6月2日の社説で、こう伝えた。
 また、琉球新報は次のように報じた。


①「 川崎市は、差別をあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)を繰り返していた団体に対し、公園の使用を不許可にした。ヘイトスピーチをなくすための取り組みを国や自治体に求めた対策法が成立して以降、公共施設の利用を許可しなかったのは全国で初めてとなる。」
②「ただ対策法は憲法が保障する表現の自由を侵害する恐れがあるとして、禁止規定や罰則はない。法律専門家の間では、実効性を疑問視する見方がある。それなら対策条例を制定した大阪市をモデルに各自治体が条例を制定して、根絶の動きを加速しよう。」
③「 今回、川崎市がヘイト団体に公園の使用を不許可とした点は評価する。今後は道路使用に関する許可も出さないなど、ヘイトスピーチの根絶に向け取り組みを強化してもらいたい。」


 さらに、琉球新報は、このことに関して、次のように論じた。


①「10年に『在日特権を許さない市民の会』(在特会)の会員らが徳島市の徳島県教職員組合の事務所を襲撃する事件が発生した。ヘイトスピーチを放っておけば、ヘイトクライム(憎悪犯罪)にエスカレートすることを忘れてはならない。」
②「国連自由権規約委員会は14年に『過激で表現の自由を超えている』と日本に法規制を勧告した。表現の自由は憲法で保障されているが、ヘイトスピーチは明らかに権利の乱用であり、個人の尊厳を傷つけている。」
③「7万人を超える在日韓国・朝鮮人が暮らす大阪市は1月、全国の自治体で初めてヘイトスピーチ対策の条例を制定した。団体名を公表することで活動をけん制する効果がある。かつて全国の地方自治体は、国に先駆けて公害対策や情報公開などを条例化した。その後、国が重い腰を上げたという事例がある。規制に先鞭をつけた大阪のように地方が独自の条例を制定することを検討すべきだ。」


 確かに、国・政府の腰は常に重い。だとしたら、「規制に先鞭をつけた大阪のように地方が独自の条例を制定することを検討すべきだ。」、ということが大事になるし、その地方自治体を動かす市民の動きが重要になるということだ。


 以下、琉球新報の引用。




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by asyagi-df-2014 | 2016-06-05 14:25 | 書くことから-ヘイトクライム | Comments(0)

ヘイトクライム-「ヘイトスピーチ法」および「取り調べ可視化法」が成立。

 標題について、朝日新聞は2016年5月24日、「特定の人種や民族を標的に差別をあおる『ヘイトスピーチ』の解消に向けた推進法や、取り調べの録音・録画(可視化)を一部義務づけるなどした刑事司法改革関連の改正法が24日、衆院本会議で可決、成立した。ヘイトスピーチに対応する法律の制定は初めて。」、と報じた。
 特に、ヘイトスピーチ法について、「法は『在日外国人や子孫らに対する差別を助長、誘発する目的で、生命や身体に危害を加えると告知するか侮蔑するなど、地域社会からの排除を扇動する不当な差別的言動』と定義。国や自治体に対し、相談体制の整備や人権教育の充実などを求める。罰則は設けていない。」、と伝えた。
 さらに、「刑事司法改革では刑事訴訟法などが改正された。日本では初めてとなる検察による司法取引の導入や、警察が通信傍受(盗聴)できる犯罪の対象拡大も盛り込まれており、犯罪捜査や公判を取り巻く環境が大きく変わることになる。
 また、離婚した女性の再婚禁止期間を現行の6カ月から100日に短縮する民法の改正案も可決され、参院に送られた。『100日を超える再婚禁止期間は違憲』とした昨年12月の最高裁判決を受けたもので、与党は今国会での成立を目指す。」、と報じた。


 以下、朝日新聞の引用。




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by asyagi-df-2014 | 2016-05-24 17:23 | 書くことから-ヘイトクライム | Comments(0)

日弁連会長の「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案」の一部修正を求める会長声明から、自公の法案を考える。

 自民党及び公明党が2016年4月8日に提出した「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案」(以下、「本法案」という。)について、
日本弁護士連合会(以下、日弁連とする)は2016年5月10日、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案」の一部修正を求める会長声明を発表した。
 この会長声明の「本法案」についての考え方や主張は次のとおりである。

(1)主張
 特に適法居住要件の修正等が行われた上で、本法案が今国会において成立することを求め、もって日本における人種的差別が一日も早く根絶することを期待するものである。
(2)自公の「本法案」の問題点及び指摘事項
①本法案が第2条において、「不当な差別的言動」の対象を「適法に居住する者」に限定(以下「適法居住要件」という。)している点は、在留資格のない者はヘイトスピーチの対象となってもやむを得ないとの解釈を生じさせる危険があるものであり、このような限定は削除されるべきである。
②ヘイトスピーチは、個人の尊厳を著しく傷つけ、差別や偏見を醸成するものであることからその防止が求められているのであり、個人の尊厳や差別を受けない権利は、在留資格の有無にかかわらず等しく保障されなければならない人権である。国連人種差別撤廃委員会も「人種差別に対する立法上の保障が、出入国管理法令上の地位にかかわりなく市民でない者に適用されることを確保すること、および立法の実施が市民でない者に差別的な効果をもつことがないよう確保すること。」(市民でない者に対する差別に関する一般的勧告30)と勧告している。
③ヘイトスピーチを行うグループは、過去に、非正規滞在から人道配慮による在留特別許可を求めた者を非難・誹謗するデモ、街頭宣伝を行ったこともある。また、難民申請者の相当数は、入国の経緯からして、やむなく在留資格を持たない者であるが、同グループは、難民申請者を非難・誹謗したりする街頭宣伝を行ったこともある。したがって、「適法に居住」していない者についても、ヘイトスピーチから保護する必要性は高い。
④日本が批准している人種差別撤廃条約に基づけば、「本邦外出身者」に限らない人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身を理由とする差別的言動も禁止の対象とすること、また、差別的な言動のみならず、就職や入居などの様々な社会的差別の撤廃を実現することも検討されるべきである。本法案を人種差別撤廃に向けた法整備の第一歩と捉え、国は今後、人種差別全般について実態調査を行ってその実態を検証するとともに、当連合会が求める包括的な基本法制定の必要性について検討を行うべきである。

 
 自公案の問題点については、再度、伊藤和子さんの次の指摘を押さえたい。


① 人種差別撤廃条約は人種差別を「人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づく」(同条約第1条)差別と定義している。これにならって、すべての民族的、世系上のマイノリティを対象とするべきだ。国がこのような法律をつくるとき、一部のマイノリティだけを保護し、他のマイノリティを保護しない、という施策を決めることは、保護の対象とされなかったマイノリティを一層深刻な立場に置くことになる。あたかも、そうした者は保護に値するものでないと国が言っているに等しい。
 それは、新たな差別をもたらすことになる。特にこの法律がヘイトスピーチという深刻な人権侵害に関するものであることを考えるなら、その影響は深刻である。
②本法案は、前文で「不当な差別的言動は許されないことを宣言」しながら、本文では「本邦外出身者に対する不当な差別的言動のない社会の実現に寄与するよう努めなければならない」(第3条)として、努力義務を定めるにとどまる。
 どこにもヘイトスピーチは違法、禁止する、という文言がないのは、様々な場面において、果たして有効にマイノリティを保護しうる法律なのか、という実効性に疑問を呼んでいる。
 この点、人種差別撤廃条約は、締約国に対して「すべての適法な方法により、いかなる個人、集団又は団体による人種差別も禁止し、終了させる」義務を課している(2条1項(e)等参照)のであり、実効性のあるヘイトスピーチ抑止のために、「違法」若しくは「禁止」の文言を明確に規定する必要がある。
③本法案は7条までしかない短い法律で、施策として掲げられているのは相談体制の整備、教育、啓発だけである。被害救済の具体的措置は明確とは言えず、深刻になっているインターネット上のヘイトスピーチへの対応なども抜けている。
④現実に役割が求められる地方公共団体の責務が、「努力義務」に過ぎない点も問題である。相談体制の整備、教育の充実、啓発活動等ですら努力義務に過ぎないとされているので、本法案の掲げる施策は実効性に乏しいという懸念がある。
 この点、2016年4月に施行された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(障害者差別解消法)では、「国及び地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、障害を理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施しなければならない。」とし、国と地方公共団体に「努力」以上の「実施義務」を課しているので、どうして同様の法律にできないのだろうか。甚だ疑問である。


 国は、日本における人種的差別が一日も早く根絶するため、日弁連会長声明等の意見を取り入れる必要がある。


 以下、日本弁護士連合会会長声明の引用。





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by asyagi-df-2014 | 2016-05-13 05:53 | 書くことから-ヘイトクライム | Comments(0)

ヘイトクライム-自公提出の「ヘイトスピーチ法案」のなかで容認できない「適法居住要件」とは。

 伊藤和子さんは、2016年5月3日付けのブログを、「在日コリアン等のマイノリティに対するヘイトスピーチが深刻な状況にある。 新聞報道によれば、熊本の地震の直後にも悪質なヘイトスピーチが飛び出したとのことで、暗澹たる気持ちになった。」、と始める。
 そして、「与党が、ヘイトスピーチの解消が「喫緊の課題」(第1条)だという認識に立って、ヘイトスピーチへの対処を進める法案を提出したことは歓迎したい。しかし、法案を見ると、どうしても容認できない、許してはならないという点がある。『適法居住要件』である。」、と続ける。
この「適法居住要件」や自公法案の問題点について、伊藤和子さんの「人権は国境を越えて-弁護士伊藤和子のダイアリー」で考える。
 はじめに、これを要約する。


(1)自公法案のヘイトスピーチの定義


 自公法案のヘイトスピーチの定義では「適法に居住する者に対するヘイトスピーチだけが、この法案で対応すべき課題だ」、としている。
 以下の文面である。


「『本邦外出身者に対する不当な差別的言動』とは、専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの(以下この条において「本邦外出身者」という。)に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉又は財産に危害を加える旨を告知するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動にかかる不当な差別的言動をいう。」

(2)自公法案のヘイトスピーチに盛り込まれた「適法居住要件」にかかる問題点


①ヘイトスピーチ規制の背景にあるのは、日本が批准している国連人種差別撤廃条約に基づく人種差別撤廃委員会が勧告を行ったことにあるが、国連人種差別撤廃委員会は、適法に居住しているか否かの区別なく、すべての人種差別をしてはならない、と言っている。こうした条約の精神からみて、適法居住要件は明らかにそぐわない。
②「適法」を要件とすると、在留資格なく日本に滞在している外国人や、あるいは滞在の適法性を争っている外国人(この中には多くの難民申請者も含まれる。)は適用対象外とされ、これらの外国人に対するヘイトスピーチは野放しになってしまう。
これでは適法に居住していなければ、ヘイトスピーチの対象とされても仕方がないと国が言っているようなもの、国が容認しているようなものである。
しかし、人はたとえ在留資格がないからと言って、ヘイトスピーチや憎悪的表現の対象とされてはならないはずだ。在留資格がないから人権侵害をしてもかまわない、このような考えは到底容認できない。
③このような定義では、故国から逃れ、日本に救いを求めようとする難民認定申請者の多くがヘイトスピーチの対象者として野放しになる。
いま、シリアをはじめ、世界中で紛争が続く中、難民受け入れ・保護は国際社会が取り組むべき最重要課題のひとつとなっている。
日本で難民申請をする人たちは、難民として認められるまでに「仮滞在許可」を受ける場合もあるものの、こうした許可を受けられず、難民認定も得られず、審査請求をしたり、裁判を提起したりしてようやく難民と認められる人たちも少なくない。こうして最終的には難民と認められる人たちでも、そのプロセスで「不法滞在」という扱いを受けることも少なくないのだ。
日本では、そもそも難民認定率があまりにも低く、大きな問題となっており、多くの難民申請希望者は大変深刻な状況に置かれている。
そこへきて、こうした難民認定を求める人たちに対して、ヘイトスピーチからの保護から除外することでよいのか。
「そうだ、難民しよう」というヘイト書籍が問題になったが、この本に代表されるような難民に対するヘイトスピーチへの対処をせず、迫害を受けて庇護を求める難民申請者を差別し、傷つける言動をすることを私たちの社会は容認していいのだろうか。
④難民だけではない、日本には、様々な形で、在留資格がないために苦境に立たされている人がいる。例えば、夫からDVを受けて避難生活を送り、離婚を求める外国人女性も一時的にオーバーステイになってしまうことが多い。在留資格がないからヘイトスピーチの対象となっても仕方がない、というのは明らかにおかしい。
⑤「居住」というのもおかしい。一時的な外国からの旅行者に対するヘイトスピーチは完全に除外されることになるからだ。
例えば、2020年には東京オリンピックが予定されているが、仮にオリンピックに出場するために来日した選手や、観戦に来た観客に対するヘイトスピーチがなされても、「居住」していないから、何らの対策もないというのだ。
これで本当に国際的に開かれたオリンピックを実現できるというのだろうか。
⑥上記のような法律の定義では、外国にルーツを持つマイノリティはヘイトスピーチから保護されるのに対し、日本にルーツをもつマイノリティへのヘイトスピーチは規制されないことになる。
例えば、日本の先住民族であるアイヌ民族や琉球・沖縄の人々、また被差別部落といった国内のマイノリティに対してヘイトスピーチをしても適用対象外とされることも大きな問題だ。


(3)自公法案の問題点


① 人種差別撤廃条約は人種差別を「人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づく」(同条約第1条)差別と定義している。これにならって、すべての民族的、世系上のマイノリティを対象とするべきだ。
国がこのような法律をつくるとき、一部のマイノリティだけを保護し、他のマイノリティを保護しない、という施策を決めることは、保護の対象とされなかったマイノリティを一層深刻な立場に置くことになる。あたかも、そうした者は保護に値するものでないと国が言っているに等しい。
それは、新たな差別をもたらすことになる。特にこの法律がヘイトスピーチという深刻な人権侵害に関するものであることを考えるなら、その影響は深刻である。
②本法案は、前文で「不当な差別的言動は許されないことを宣言」しながら、本文では「本邦外出身者に対する不当な差別的言動のない社会の実現に寄与するよう努めなければならない」(第3条)として、努力義務を定めるにとどまる。
どこにもヘイトスピーチは違法、禁止する、という文言がないのは、様々な場面において、果たして有効にマイノリティを保護しうる法律なのか、という実効性に疑問を呼んでいる。
この点、人種差別撤廃条約は、締約国に対して「すべての適法な方法により、いかなる個人、集団又は団体による人種差別も禁止し、終了させる」義務を課している(2条1項(e)等参照)のであり、実効性のあるヘイトスピーチ抑止のために、「違法」若しくは「禁止」の文言を明確に規定する必要がある。
③本法案は7条までしかない短い法律で、施策として掲げられているのは相談体制の整備、教育、啓発だけである。
被害救済の具体的措置は明確とは言えず、深刻になっているインターネット上のヘイトスピーチへの対応なども抜けている。
④現実に役割が求められる地方公共団体の責務が、「努力義務」に過ぎない点も問題である。相談体制の整備、教育の充実、啓発活動等ですら努力義務に過ぎないとされているので、本法案の掲げる施策は実効性に乏しいという懸念がある。
この点、2016年4月に施行された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(障害者差別解消法)では、「国及び地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、障害を理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施しなければならない。」とし、国と地方公共団体に「努力」以上の「実施義務」を課しているので、どうして同様の法律にできないのだろうか。甚だ疑問である。


(4)実効性のあるヘイトスピーチ抑止のために


①自公ヘイト法案も、障害者差別解消法にならって、地方自治体に不当な差別的言動の解消に向けて充実した施策の実施を義務付けるべきである。
②私たちとしては、 今後、与野党の協議を通じて、修正が図られ、実効的なヘイトスピーチ対策の立法が実現することを強く求めたい。
③特に、適法居住要件に対しては、これまで述べてきた通り、人権上極めて問題がある規定であり、なんとしても、修正してほしい。 与野党の責任者が、こうした問題提起を真摯に受け止め、修正を進めていかれることを強く期待する。
④そして、この法律案が成立しても、これはあくまでも人種差別撤廃法制の最初の一歩に過ぎない。根本的な解決のために、人種差別撤廃委員会が勧告するとおり、ヘイトスピーチ以外の人種差別にも対処する包括的差別禁止法の制定を推進していくことが必要である。


 まず、私たちが前提としなければならないのは、「根本的な解決のために、人種差別撤廃委員会が勧告するとおり、ヘイトスピーチ以外の人種差別にも対処する包括的差別禁止法の制定を推進していくことが必要である。」、ということである。
 特に、この自公法案の「適法居住要件」については、「人権上極めて問題がある規定」であり、修正が必要である。
実効的なヘイトスピーチ対策の立法が実現することを強く求めたい。


 以下、人権は国境を越えて-弁護士伊藤和子のダイアリーの引用。





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by asyagi-df-2014 | 2016-05-05 05:16 | 書くことから-ヘイトクライム | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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