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ヘイトスピーチによる名誉毀損被告事件(被告人西村斉)に対する罰金50万円に処する有罪判決の意味。

 2019年11月29日、京都地方裁判所第3刑事部は、ヘイトスピーチによる名誉毀損被告事件(被告人西村斉)について、罰金50万円に処する有罪判決を言い渡しました。
 このことに関して、学校法人京都朝鮮学園(告訴人・弁護団)は2019年11月29日、声明(以下、「声明」)を出しました。
この声明では、この判決を、「公益目的を認定したこと(及び量刑)は極めて不当であり、ヘイト被害を受けた学校関係者への動揺を与えている。本件のヘイトクライムとしての本質に対する判断を回避していることは、昨今の日本社会での反差別・反ヘイトスピーチの立法化の流れに逆行する判決内容と言わざるを得ない。」、と断じています。  また、「2009年の事件以来、学校当事者の努力で獲得されてきた裁判の成果を無に帰せしめかねず、多文化共生社会の実現に大きな障害となりかねない司法判断である。控訴審における是正が喫緊の課題となる。」、と批判しています。
 さらに、「判決の根底には、ヘイト被害の特徴への無理解があり、そのために被害者である児童ら、学父母らに生ぜしめた恐怖感・不安感への想像を欠落させてしまったことが疑われる。本件を含め名誉毀損は被害者参加制度の対象犯罪ではなく、法廷においてヘイト被害の実態を直接訴える機会もなかった。こうした被害者不在の構造からの影響が、判決結果に如実に現れてしまったように見受けられる。」、とも。
「声明」は、批判の根拠を次のように示しています。


1  公益目的の認定の不当性

(1) 公益目的とは
①一般に「公共の利害に関する事実」の摘示である場合には、名誉毀損があっても「その目的が専ら公益を図ること」(公益目的)と認められ、真実性ないし真実相当性の証明があれば処罰されない(刑法230条の2)。                     ②本判決では最終的には真実性・真実相当性の証明がないとして有罪判決を導いたものの、公益目的を肯定してしまった点で、極めて問題のある判断内容である。本件のような明らかなヘイトスピーチに対し、あたかも公益目的があるかのような認定を行うものであるため、今後の同種犯罪を誘発し、刑事司法によるヘイト犯罪の抑止力を弱めてしまう作用が懸念される。
(2) 判決の認定と、その不当性
①この公益目的の認定において、判決文では、被告人は「主として、日本人拉致事件に関する事実関係を一般に明らかにする目的で判示の行為に及んだ」などとされ、その理由として、被告人自身が朝鮮が行った悪事を知ってほしい自分の活動が最終的に日本の国益になると信じている旨、供述していることなどを挙げた。               ②しかし、本件行為の具体的態様や前後の経過に照らし、自身の主要な目的が、拉致問題の啓発であったなどと弁明すること自体が欺瞞であり、判決は、こうした本質を見誤っている。
③本件の具体的な発言内容や行為態様に照らして評価した場合[2] に、公益目的が認定しうるのか、甚だ疑問である。被告人において、真実、判決が認定したような真摯な目的があるならば、あえて、被告人が標榜する公益(拉致事件の解決)を実現していく効果が希薄で、なおかつ、児童や学校関係者らの不安・恐怖感を殊更に煽るような表現態様を選択する必要はない。本件の具体的な行為態様の特徴であった、
•あえて、以前に自身が刑事事件を起こした京都朝鮮学校の跡地に行き、
④「当該学校があった跡地を指さして、根拠が皆無であったにも関わらず、殊更に、当該学校と拉致問題を関係づけて危険視する発言を繰り返していたこと、等に鑑み、専ら朝鮮学校に対する差別を扇動し社会的評価をおとしめる目的であったことが十分に推認される。
⑤被告人は、もともと、長年にわたって朝鮮学校の解体を目的と掲げた街宣デモ行為を繰り返し行ってきた人物でもある。実態としては、こうした差別目的のもとで行われた行為である。拉致問題を口実として利用し、表現行為であるかのような「表面上の装い」(後述の京都地裁H25.10.7判決参照)を偽装して本件犯行に及んだものとの認定は証拠上優に認められると評価すべきであった。
⑥今回の判決理由も、被告人の発言のうち「まだこの朝鮮学校関係者がこの近辺に潜伏していることは確実」「朝鮮学校関係者かなと思ったら110番してください」など、一般聴衆の不安感を殊更に煽る内容に照らして「朝鮮学校関係者というだけで犯罪者と印象づける目的」があったとの認定まではしている。そうであれば、端的に差別扇動の目的こそが主目的で、公益性などはないと認定すべき事案であった。


(2) 過度の一般化に潜む差別性
①判決は、被告人の公益目的を認定するにあたり、「被告人において、少なくとも、大阪朝鮮学校の元校長が日本人拉致によって国際手配されたことや、朝鮮総聯が朝鮮学校全般に一定の影響力を及ぼしていたことについては、そのように考える相当の理由があった」ことに重きを置いた。
②しかし、全国に何十とある朝鮮学校は、それぞれ個別の独立した学校として、それぞれの地域に根差した教育実践を行っている。そのようななかで、仮に被告人が上記考えを抱いていたとしても、今回のように京都初級学校のみを殊更に標的にする発言内容として、同校の校長が犯罪に関わったとする事実無根の名誉毀損を行うことに合理性を見いだすことはできない[3]。
③さらに、社会的耳目を集めた2009年事件の主犯格として服役までした人物が、その刑の執行終了直後に、犯行現場となった当該学校跡地に立ち寄り、あえてヘイト犯罪の再犯を公然と敢行するという態様での犯罪行為となれば、これは法秩序に対する挑戦に外ならない。当然、それによって惹起される社会不安は極めて大きい。なかでも京都の学校を中心とした在日朝鮮人コミュニティに大きな不安を与えうることについては、外ならぬ被告人自身が、従前の裁判審理等の経験、服役中や保護観察中の矯正教育をとおして熟知しているはずである。そのうえで本件学校を街宣場所としてあえて選択したことを加味して考えるならば、なおのこと公益目的であるなどとの被告人の弁明の不当性が際立つ。
④結局のところ、被告人の弁明で述べられる公益目的よりも、差別扇動目的のほうがより強く推認される状況にあるなか、刑法230条の2の定める「目的の公益性」を認める余地はない。


2 従前行為との連続性
①従前の2009年事件においても、被告人は正当な表現活動であると弁明していた。しかし、京都地裁H25.10.7判決、大阪高裁H26.7.8判決は、それぞれ慎重な審理を経た事実認定として、
「(隣接する京都市公園の利用を)口実にして本件学校に攻撃的言動を加え、その刺激的な映像を公開すれば、自分たちの活動が広く世に知れ渡ることになり、多くの人々の共感を得られる」「『朝鮮人を糾弾する格好のネタを見つけた』と考え」、「在日朝鮮人に対する差別意識を世間に訴える目的」で行われたものであって、各街宣において在特会が喧伝してきた「違法な占用状態を……解消する意図」などについては、単なる「表面的な装いにすぎない」
と断じてきた。本件は「拉致問題」を口実にして、正当な表現行為を「装う」という点で共通している。ヘイト動機に基づく悪質性、この点について全く無反省であることにおいても明らかな共通性が見られる。にもかかわらず、判決理由では、この点を看過して、「学校の業務を直接的に妨害した前記の前科とは犯行態様が大きく異なる」、などと認定して、懲役刑を回避した。罰金刑とした結論は、事案の本質を見誤る不当な量刑評価であることは明らかである。

[1]判決では、被告人が、2017年4月23日、勧進橋公園において、かつて同公園に隣接して所在した学校法人京都朝鮮学園が運営していた京都朝鮮第一初級学校のことを指して、拡声器を用い「ここに何年か前まであった京都の朝鮮学校ってありますよね、この朝鮮学校は日本人を拉致しております。」「まだこの朝鮮学校関係者がこの近辺に潜伏していることは確実」「朝鮮学校関係者かなと思ったら110番してください」などの発言を行い、動画配信サイトにその様子を投稿して不特定多数の者が閲覧できる状態にさせたとの事実を認定した。京都朝鮮学園に対する名誉毀損罪が成立すると判示した。
[2]この点、公益目的の判定にあたっては、「摘示する際の表現方法や事実調査の程度などは、同条にいわゆる公益目的の有無の認定等に関して考慮されるべきことがら」(月刊ペン事件最高裁判決(昭和56年4月16日))とされている。
[3]たとえ、とある組織の元代表が公共の利害にかかわる犯罪をおかしたという報道があったとしても、当該組織はもちろんのこと、それと独立した別の法人格である関連組織とその関係者も同じ犯罪を犯したことにならないことは言うまでもない。そのような発言をしてでの公益目的は希薄と評価されるであろう。同様に本件でも、大阪の元校長という人物の犯罪報道一つをとって、京都の朝鮮学校に対する名誉毀損が公益目的などとして正当化しうるべきものではない。//// 特定の属性にある多様な人々の個別性を捨象して、過度な一般化を図ることは、単に論理的誤謬であることに留まらない。これが、マイノリティに対する悪感情と合わさると、差別と偏見を助長することになる。そしてこうした「助長」を意図的に作出し、差別扇動の効果をもたらすことは、被告人の真の目的である。/// 判決は、被告人の過度な一般化(差別的思考)を追認してしまった点で、極めて不当である。


 確かに、今回の京都地裁による「公的目的の認定」が、「2009年の事件以来、学校当事者の努力で獲得されてきた裁判の成果を無に帰せしめかねず、多文化共生社会の実現に大きな障害となりかねない司法判断である。」、ことを確認しました。



by asyagi-df-2014 | 2019-12-04 07:08 | 書くことから-ヘイトクライム | Comments(0)

在特会の元京都支部長、西村斉に、京都地裁(柴山智裁判長)は罰金50万円(求刑・懲役1年6月)の有罪判決。

 毎日新聞は2019年11月29日、表題について次のように報じた。


(1)2017年4月に京都市で「ここに日本人を拉致した朝鮮学校があった」などとヘイトスピーチをして学校法人京都朝鮮学園の名誉を傷つけたとして、名誉毀損(きそん)罪に問われた「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の元京都支部長、西村斉(ひとし)被告(51)に対し、京都地裁(柴山智裁判長)は29日、罰金50万円(求刑・懲役1年6月)の有罪判決を言い渡した。ヘイトスピーチを巡って全国で初めて同罪で起訴された事件で、判決が注目されていた。
(2)判決によると、西村被告は17年4月23日、京都市南区の京都朝鮮第一初級学校の跡地近くの公園で、拡声機を使って「ここにあった朝鮮学校は日本人を拉致しております」「拉致した実行犯のいる朝鮮学校がありました」などと約10分間発言。その様子を動画で撮影してインターネットで配信し、京都朝鮮学園の名誉を傷つけた。京都地検に18年4月に在宅起訴されていた。
(3)公判では発言内容を認めた上で①大阪朝鮮学校の元校長が拉致事件の実行に関与し、国際手配を受けた②朝鮮学校を支配しているのは拉致事件に関与した朝鮮総連であり、京都朝鮮学園ではない――と主張。「発言中の朝鮮学校は朝鮮学校一般の意味。発言は重要部分で真実だった」「発言の目的は朝鮮総連の糾弾であり、京都朝鮮学園の名誉を損ねる意図はなかった」などとして無罪を訴えていた。
(4)柴山裁判長は「京都朝鮮学園の外部的評価を低下させる行為だった」と名誉毀損を認定した。「発言中に京都朝鮮第一初級学校の跡地の方向を指さしており、発言の指す学校が同校であったことは明らか。学校法人が朝鮮総連と一体ではなく、活動が形骸化していたとまでは言えない」と指摘。「発言を総合すると京都の学校の校長が拉致事件で国際手配されていると解釈され、真実性の証明も真実と信じる相当の理由もない」と結論付けた。
(5)量刑の理由については「すでにその場所に存在しない学校で、学校の業務を直接妨害したわけではなく、懲役刑を選択するほど重い罪ではない」と述べた。
(6)西村被告は08年ごろから在特会のメンバーとして活動し、09年12月に京都朝鮮第一初級学校前で仲間10人とヘイトスピーチをしたとして威力業務妨害と侮辱の罪で懲役2年、執行猶予4年の有罪判決が確定。この事件を巡る民事訴訟でも約1220万円の賠償を命じる判決が14年に確定した。17年2月以降は在特会設立者が代表を務める政治団体「日本第一党」で活動している。また、12年3月に韓国人女優をCMに起用したロート製薬に対し、竹島に関する見解を無理に回答させたとして強要罪で懲役1年の実刑が確定していた。                                  【添島香苗、国本ようこ、小田中大】



by asyagi-df-2014 | 2019-11-29 19:29 | 書くことから-ヘイトクライム | Comments(0)

ヘイトクライムを呼び起こす行為は、『否』。(1)

 Yahooニュースは、9月2日発売の週刊誌「週刊ポスト」の記事について、
「週刊ポストが『韓国なんて要らない』特集を謝罪。『誤解を広めかねず、配慮に欠けていた』」、と配信した。


この問題に関して、奈良新聞は2019年9月6日、金曜時評で「友好の手を今こそ」、と報じた。 日頃読んだことのない新聞社であったため、目についた。
奈良新聞は、次のように主張する。


(1)小学館は2日発売の「週刊ポスト」に掲載した「韓国なんて要らない」と題した特集を巡り、配慮に欠けていたとして謝罪を表明した。特集では「断韓」を呼び掛け、「怒りを抑えられない『韓国人という病理』」などの見出しが踊る。元徴用工訴訟やあいちトリエンナーレの「平和の少女像」を巡る問題など、日韓関係は冷え込む一方に見える。
(2)国民感情のガス抜きが政治的に利用され、結果として国民をさらに苦しめることになるのは過去の歴史が物語っている。政府は「ホワイト国」(優遇対象国)から韓国を除外した措置を輸出管理の運用見直しと説明するが果たしてそうだろうか。週刊誌の過激な記事で留飲を下げたところで問題は何も解決しない。
(3)本紙8月15日付の連載「74年目の戦争遺跡」で、天理大学国際学部の熊木勉教授(朝鮮近現代文学)が「政治と切り離して私たちが取るべき姿勢は冷静であること、相手の考えを侮蔑(ぶべつ)しないこと、これまで育んできた成熟した交流を大切にして粛々と進めること」と語っている。日韓両国に対して言えることだ。


 奈良新聞は、「友好の手を今こそ」、と今必要なことを示す。


(1)最近も県内では韓国を含めた交流事業が行われた。奈良市の東アジア文化交流プログラムに参加した韓国の大学生は「政治とは別の関係が築けてうれしい」と語った。8月31日には駐日韓国大使館主催の「韓日文化キャラバンin奈良」が同市で開かれ、ナム・グァンピョ駐日韓国大使は「両国民が互いに対する信頼と愛情をもって真の友情を築き上げれば、どのような難しさでも乗り越えていける」と呼び掛けた。
(2)ツイッターでは「♯好きです韓国」「♯好きです日本」のハッシュタグをつけた投稿が増えているという。そこに見えるのは政府と国民は別との思いである。両国の関係にとって大切なのは、国民一人一人が真の国益を考え、自分をしっかり持つことだ。互いの隣には、北朝鮮という脅威が控えることも忘れてはならない。
(3)天理市が予定していた姉妹都市・韓国瑞山への中学生派遣事業が韓国側の意向で中止されるなど、民間交流にも影響が出ているのは残念だ。県内には、ほかにも韓国の都市と姉妹都市などの形で交流している自治体がある。韓国側の現在の姿勢が将来にまで影を落とすことがあってはならない。


 奈良新聞は、「『嫌』や『断』の文字で語れば悪感情はさらに高まる。視野を広げ、友好の手を差し出し続ける先にこそ、関係改善の希望がある。」、と断じる。


 今、私たちは、奈良新聞の提起を確かに受け取る。


1.国民感情のガス抜きが政治的に利用され、結果として国民をさらに苦しめることになるのは過去の歴史が物語っている。
2.政府は「ホワイト国」(優遇対象国)から韓国を除外した措置を輸出管理の運用見直しと説明するが果たしてそうだろうか。
3.週刊誌の過激な記事で留飲を下げたところで問題は何も解決しない。
4.「政治と切り離して私たちが取るべき姿勢は冷静であること、相手の考えを侮蔑(ぶべつ)しないこと、これまで育んできた成熟した交流を大切にして粛々と進めること」と語っている。日韓両国に対して言えることだ。



by asyagi-df-2014 | 2019-09-20 07:12 | 書くことから-ヘイトクライム | Comments(0)

川崎市は、ヘイトスピーチ違反者への刑事罰を盛り込んだ条例を市議会に提示。

 朝日新聞は2019年6月24日、表題について次のように報じた。


(1)特定の民族や人種を侮辱したり、地域から追い出そうとしたりするヘイトスピーチを規制しようと、川崎市は24日、違反者への刑事罰を盛り込んだ条例の素案を市議会に提示した。違反を3回重ねた場合、50万円以下の罰金とする。市によると、ヘイトスピーチに刑事罰を科すと定めた自治体はこれまでなく、全国初になるという。
(2)市がこの日、「差別のない人権尊重のまちづくり条例」(仮称)の素案を明らかにした。
(3)市内の公共の場でヘイトスピーチをしたり、させたりすることを禁じたうえで、違反があった場合、市長は①違反行為をやめるように勧告②2回目の違反をした者に、やめるよう命令③3回目の違反をした者の氏名や団体名などを公表し、市が被害者に代わって検察庁か警察に告発する。
(4)罰金を科すべきかどうかを司法手続きに乗せ、裁判所などの判断に委ねる仕組みだ。市幹部は「憲法が保障する『表現の自由』に留意する必要がある。ヘイトスピーチかどうかを行政が恣意(しい)的に決めないようにすべきだ」と説明している。
(5)市長は勧告や命令の前には、有識者でつくる「差別防止対策等審査会」の意見を聴く。審査会は違反者に文書で意見を述べる機会を与えることができる。ヘイトスピーチは2013年ごろから、東京・新大久保や大阪・鶴橋などで激化。川崎市でも公園を利用した集会やデモが繰り返された。16年にはヘイトスピーチ対策法が成立したが、罰則はなく、市は18年、ヘイトスピーチの恐れがあれば公園など公的施設の利用を拒めるガイドライン(指針)を、全国で初めて施行した。市によると、対策法施行後、市内ではヘイトスピーチは確認されていないものの、市幹部は「今後もヘイトスピーチが起きる可能性がある。抑止するためには罰則付き条例が必要だ」と語る。
(6)市は素案について今夏、パブリックコメントを実施し、12月議会に条例案を提出する方針。罰則を含め、来年7月に全面施行したい考えだ。             (斎藤茂洋)
(7)川崎市が、ヘイトスピーチを繰り返す者に刑事罰を科す方針を示した。行政罰としての過料を命じる条例はこれまでもあったが、刑事罰を盛り込んだ案は初めてだという。国や自治体にヘイトスピーチ解消の取り組みを求める対策法が2016年に施行され、各地での動きが広がりつつある。
(8)香川県観音寺市は17年、公園条例を改正してヘイトスピーチの禁止条項を盛り込んだ。違反した場合、行政罰として5万円以下の過料を科す。大阪市の条例には、ヘイトスピーチをした者の名前を公表する規定がある。
(9)罰則はないものの、法にはない「差別禁止」の文言を盛り込んだのは、東京都国立市や東京都世田谷区。東京都は「オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」を今年4月に施行した。不当な差別的言動を防ぐため、公園などの利用制限の基準を定めたほか、性的少数者の差別的取り扱いを禁じた。
(10)京都府や京都市では公的施設の利用制限を可能とするガイドラインを定めた。神戸市では6月、外国人に対する差別解消に向けた条例が成立し、来年施行される。
(11)国連人種差別撤廃委員会は、国際条約上の義務としてヘイトスピーチを刑事規制するよう日本に4回にわたって勧告している。                    (編集委員・北野隆一)
(12)奈須祐治・西南学院大教授(憲法)の話:「人種、国籍、民族、信条、年齢、性別、性的指向、性自認、出身、障害」などを理由とする差別的取り扱いを禁止した、包括的な人権条例として画期的だ。そのうえでヘイトスピーチの対象を「本邦外出身者」に限り、刑事罰の対象を川崎市内の公共の場所での言動と想定し、インターネットを別扱いとした。刑事罰を科す際に検察や裁判所を介在させる慎重な手続きをとることも含め「表現の自由」への配慮も示したと言えるのではないか。市長が勧告や命令の前に意見を聴く審査会のメンバーの多様性と専門性の確保が、必要となるだろう。
(13)小谷順子・静岡大教授(憲法)の話:素案が禁じるヘイトスピーチの定義の一つに「特定国出身者等を著しく侮蔑するもの」の概念が入った。特定の個人ではなく不特定多数の集団への侮辱を刑事規制することは、被害が抽象的との観点から憲法違反との学説が多い。規制できないとされた「集団的侮辱」を新たに規制するため、言論を直接罰するのではなく、命令違反に罰金を科す構造としたところが、表現の自由保障への配慮と言える。




by asyagi-df-2014 | 2019-06-25 12:14 | 書くことから-ヘイトクライム | Comments(0)

ヘイト投稿に罰金。

 かねてから、16年6月に施行されたヘイトスピーチ対策法は、禁止規定や罰則規定を設けていないことから、その有効性が問われてきた。
こうした中で、「インターネットの匿名掲示板に投稿されたヘイトスピーチが、名誉毀損罪に当たるとして処罰されていたことが分かった。ネット上のヘイトスピーチに対して侮辱罪が適用されたケースはあるが、より罰則が重い名誉毀損罪は全国でも初めてだ。」、と沖縄タイムス(以下、「タイムス」)の社説が指摘した。。
 これは、2019年2月7日の「[ヘイト投稿に罰金]画期となる司法判断だ」、との社説である。
 このことについて、「タイムス」は、事実経過を次のように押さえる。


(1)石垣市の在日韓国人の男性(35)を誹謗中傷し名誉を傷つけたとして石垣区検は1月15日と23日に、男性2人をそれぞれ名誉毀損罪で略式起訴した。
(2)石垣簡裁は1月17日、24日、2人にいずれも罰金10万円の略式命令を出した。
(3)被害者の男性はネット掲示板「2ちゃんねる」で、「在日朝鮮人、詐欺師、借金まみれ」「在日だから当然か」などと、名指しで民族差別をあおる誹謗中傷を受けた。自営業を営む男性は、会社名まで書かれ、収入が大幅に減ったという。
(4)2016年2月、名誉毀損の疑いで刑事告訴したが、八重山署は昨年11月、被疑者不詳のまま那覇地検石垣支部に書類送検した。
(5)ヘイト投稿は、ネットの匿名性を隠れみのにしているだけに、発信者の特定には壁が立ちはだかる。石垣区検は男2人を特定し、略式起訴にこぎつけたのである。


 また、「タイムス」は、「今回の司法判断は、二つの点で大きな意味を持つ。」とし、次の二点を挙げる。


(1)区検が匿名の壁をこじ開けて発信者を特定し、刑事事件として司法の場に持ち込んだこと。
(2)簡裁が名誉毀損罪を適用して被害者救済に新たな道を開いたこと。

   
 さらに、「タイムス」は、ヘイトスピ-チをめぐる日本の現状について次のように指摘する。


(1)ヘイトスピーチ対策法は、16年6月に施行された。被害者男性が警察に告訴した4カ月後のことだ。同法は国や地方公共団体に対し、「不当な差別的言動の解消に向けた取り組み」を求めている。対策法ができたことで市民団体の取り組みが全国で活発化し、条例制定の動きも広がった。だが、禁止規定や罰則規定を設けていない。理念法の限界がさまざまな形で浮上している。
(2)被害者救済に時間や労力がかかりすぎるのは、今回のケースでもあきらかだ。
(3)在日コリアンや差別問題を扱う弁護士らは、ヘイトスピーチそのものは決して減っていない、と指摘する。
(4)ヘイトをなくしてほしい、と切実な思いから声を上げた人びとが、攻撃のターゲットにされ、ネット上で「日本がいやなら出て行け」などと排外的な言葉を浴びせられる事例もある。


 最後に、「タイムス」は、次のように主張する


(1)国連の人種差別撤廃委員会は昨年8月、日本政府にヘイト対策の強化を勧告した。政府は「表現の自由」を理由に、ヘイトスピーチの規制強化には慎重だ。「表現の自由」がもっとも重要な権利であることは論をまたないが、だからと言って、ヘイトスピーチを放置することは許されない。
(2)人間としての尊厳をおとしめ、被害者を不安に陥れ、苦痛を与えるのは、暴力そのものであり違法行為である。日韓関係が悪化しているときだけになおさら、「感情の暴走」には注意したい。


 確かに、今回のことは、一つの風穴を開けた。
しかし、日本政府は、国連の人種差別撤廃委員会の2018年8月の勧告には答え切れていない。



by asyagi-df-2014 | 2019-02-21 07:05 | 書くことから-ヘイトクライム | Comments(0)

「スリーパーセル(潜伏工作員)」との中傷は、名誉毀損の判決。

 朝日新聞は、表題について次のように報じた。


(1)在日コリアン3世で人権団体「のりこえねっと」共同代表の辛淑玉(シンスゴ)氏が、フリージャーナリストの石井孝明氏のツイッターで「スリーパーセル(潜伏工作員)」などと中傷されたとして、550万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、東京地裁であった。鈴木正弘裁判長は、石井氏に55万円の支払いを命じた。
(2)石井氏は2016年11月~18年2月、ツイッターで辛氏に言及。辛氏の代理人によると、判決は、名誉毀損(きそん)を訴えた「北朝鮮のパシリ」などという10件の投稿について、辛氏の主張を認めた。脅迫だと訴えた「普通の先進国だったら、極右が焼きうちにしかねない」という1件については、脅迫には当たらないと判断したという。
(3) 石井氏は「非常に残念な内容。控訴も含めて対応を考える」とコメントした。



by asyagi-df-2014 | 2018-12-26 10:55 | 書くことから-ヘイトクライム | Comments(0)

最高裁第三小法廷は、李信恵さんの訴訟で、上告を棄却した。

 表題について、弁護士ドットコム NEWSは2018年12月12日、「保守速報の上告棄却、李信恵さん『判例が差別解決に役立てばうれしい』」、と次のように伝えた。


(1)まとめサイト「保守速報」の差別的な表現で、精神的苦痛を受けたとして、在日朝鮮人で、大阪府在住のフリーライター、李信恵さん(47)が、サイト運営の男性に損害賠償をもとめた訴訟で、最高裁第三小法廷(宮崎裕子裁判長)は、男性の上告を棄却し、上告審として受理しないと決定した。男性に200万円の支払いを命じた1審・2審判決が確定した。決定は12月11日付け。
(2)李さんは2014年、まとめサイト「保守速報」の掲載された表現で、精神的苦痛を受けたとして、サイト運営の男性に対して、損害賠償2200万円をもとめて提訴。1審・大阪地裁は2017年11月、記事が差別的な内容を含むと判断して、男性に対して200万円の支払いを命じた。2審・大阪高裁も2018年6月、1審判決を支持し、男性側が上告していた。
(3)李さんは、弁護士ドットコムニュースの取材に「年内ギリギリに良い報告ができた。これで裁判は終わったが、日本には、人権問題、差別問題がまだまだあるので、今回の判例が差別解決に役立てばうれしい。これからもいろんなマイノリティの人たちと手をつないで、差別のない社会のためにできることをやっていきたい」とコメントした。




by asyagi-df-2014 | 2018-12-13 20:21 | 書くことから-ヘイトクライム | Comments(0)

東京都議会が、ヘイト規制条例を可決した。

 朝日新聞は2018年10月4日、表題について次のように報じた。


①「人権の尊重をうたう東京都の条例案が3日、都議会総務委員会で賛成多数で可決された。ヘイトスピーチ規制と、性的少数者を理由にした差別の禁止が柱で、いずれも都道府県の条例で初となる内容だ。5日の本議会で成立し、来年4月に全面施行される見通しだが、恣意(しい)的な運用や「表現の自由」への影響を心配する声があがっている。」
②「可決されたのは『オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例案』。2020年東京五輪・パラリンピックに向けアピールするため、小池百合子知事が昨年12月に制定方針を表明していた。」
③「条例案では、ヘイトスピーチ対策として、公園やホールなど都の施設の利用制限を盛り込んだ。都によると、差別的な言動の可能性が高く危険性が明らかな場合を想定しているが、都が具体的な利用制限の基準を設けるのは条例成立後だ。」
④「施設利用の事前制限は、川崎市が昨年11月にガイドラインを公表。京都府や京都市も同様のガイドラインを作るなど動きが広がりつつある。一方で、16年に全国で初めてヘイトスピーチの抑止条例を設けた大阪市も事前の利用制限を検討したが、最終的に見送った。」
⑤「都の条例案に対し、田島泰彦・元上智大教授やジャーナリスト有志らが『表現の自由を侵害し、自由な言論やジャーナリズムを脅かしかねない』と反対声明を発表。市民団体『外国人人権法連絡会』共同代表の丹羽雅雄弁護士は『東京で条例ができることは評価できる』としつつ、制限基準が条例に書かれない点を『知事が恣意(しい)的に基準をつくれてしまう』と問題視する。」
⑥「大阪市は条例をつくる前に弁護士や大学教授らの検討部会を立ち上げ、議論を重ねた。東京都は個別に有識者から意見を聞いて条例案を作っており、都議会自民党は『議論が不十分』と批判、3日の委員会で反対した。」
 (井上裕一)
⑦「条例案のもう一つの特徴が、LGBTなど性的少数者に焦点をあて、『性自認及び性的指向を理由とする不当な差別的取り扱いをしてはならない』と明記したことだ。「あらゆる場面で差別や偏見がある』。2日の総務委員会で質疑を傍聴した元タカラジェンヌの東(ひがし)小雪さん(33)は言う。自身はレズビアン。『条例で差別はだめだということが明文化され、共通認識になることに価値がある』と評価する。」
⑧「条例案は啓発のための基本計画作りが盛り込まれたが、具体的な検討はこれからだ。心と体の性が一致しないトランスジェンダーで、NPO法人『東京レインボープライド』の共同代表を務める杉山文野(ふみの)さん(37)は『具体化には僕たちも声をあげていきたい』と強調。条例により全ての人たちの人権を守ることにもつながってほしいと期待する。」
 (斉藤寛子)
⑨「<ヘイトスピーチ規制>:◆都の施設での不当な差別的言動を防ぐため、利用制限の基準を定める、◆差別的言動の拡散を防ぎ、言動の概要を公表する、◆公表前に審査会の意見を聴かなければならない 」
 <性的少数者の差別禁止>
⑩「性自認や性的指向を理由とする不当な差別的取り扱いをしてはならない」、◆啓発のための基本計画を定める」




by asyagi-df-2014 | 2018-10-05 20:59 | 書くことから-ヘイトクライム | Comments(0)

大阪高裁は、「人種差別、女性差別に当たる内容を含む記事が多数存在している。不法行為は複合差別に根差すもので非常に悪質」と指摘。

 時事通信は2018年6月28日、表題について次のように報じた。


(1)「インターネット上の投稿をまとめたサイト『保守速報』の差別的な表現で精神的苦痛を受けたとして、在日朝鮮人のフリーライター李信恵さん(46)が運営者の男性に2200万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁(江口とし子裁判長)は28日、男性に200万円の支払いを命じた一審大阪地裁判決を支持し、双方の控訴を棄却した。」
(2)「江口裁判長は保守速報について『人種差別、女性差別に当たる内容を含む記事が多数存在している。不法行為は複合差別に根差すもので非常に悪質』と指摘。『記事掲載が執拗(しつよう)に繰り返され、多大な精神的苦痛を被ったと認められる』と判断した。」
(3)「判決によると、保守速報は2013年7月から約1年間、ネット掲示板『2ちゃんねる』の李さんに関する投稿を引用するなどした記事を掲載した。」 




by asyagi-df-2014 | 2018-06-30 06:44 | 書くことから-ヘイトクライム | Comments(0)

京都市南区の京都朝鮮第一初級学校の跡地付近でのヘイトスピーチに、京都地裁は、名誉毀損罪を初めて適用。

 毎日新聞は、表題について次のように報じた。


(1)「昨年4月に京都市内でヘイトスピーチを行い朝鮮学校の名誉を傷つけたとして、京都地検は名誉毀損(きそん)罪で、『在日特権を許さない市民の会』(在特会)の西村斉(ひとし)・元京都支部長(49)=京都市右京区=を20日付で在宅起訴した。学校側の弁護士によると、在特会による一連のヘイトスピーチを巡る刑事事件で、名誉毀損罪が適用されるのは初めてという。」
(2)「弁護士らによると、西村被告は昨年4月23日夕、京都市南区の京都朝鮮第一初級学校の跡地付近で、拡声機を用い『ここに日本人を拉致した朝鮮学校があった』『一日も早く、日本人を拉致するような学校はたたき出さなければなりません』などと繰り返し発言。さらにインターネットで動画を配信し、学校法人京都朝鮮学園の名誉を傷つけたとして、学園が昨年6月に京都府警南署に刑事告訴し、府警が任意で捜査していた。」
(3)「在特会は2009年12月、同校に対してヘイトスピーチを行い、授業を妨害したとして、西村被告を含む幹部4人が威力業務妨害と侮辱の罪で起訴され、有罪判決を受けた。この事件を巡る民事訴訟ではヘイトスピーチが人種差別に当たるとして在特会側に1220万円の賠償を命じた判決が確定している。」
(4)「京都朝鮮第一初級学校は12年3月末で休校し、京都朝鮮第三初級学校に統合された。13年4月に同市伏見区に移転し、現在は京都朝鮮初級学校になっている。」
(4)「西村被告は23日、取材に『事実に基づいた発言で、名誉毀損ではない。起訴状はまだ届いていない』と述べた。                         【澤木政輝、中津川甫】




by asyagi-df-2014 | 2018-04-24 12:00 | 書くことから-ヘイトクライム | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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