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日弁連会長声明で伊方原発差止仮処分広島高裁決定を考える。

 広島高裁は2017年12月13日、広島市などの住民4人が求めた仮処分申請の即時抗告審で、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを認める決定をした。
広島高裁は、「火山の影響による危険性について伊方原発が新規制基準に適合するとした規制委の判断は不合理で、申立人らの生命、身体に具体的に危険があることが事実上推定されるから、申し立ては立証されたと言える。伊方原発は現在稼働中であるから、差止の必要性も認められる。本件は仮処分であり、現在係争中の本訴訟で広島地裁が異なる判断をする可能性を考慮し、運転停止期間は18年9月30日までとする。」、と結論づけている。
 この広島高裁の判断の評価と問題点について、日弁連会長声明の「伊方原発差止仮処分広島高裁決定に対する会長声明」(2017年12月13日)から考える。
この日弁連会長声明は、今回の決定の意義について、次のように指摘する。


(1)これまで、福井地方裁判所が、2014年5月に大飯原子力発電所3、4号機の運転差止めを命じる判決を言い渡し、2015年4月には高浜原子力発電所(以下「高浜原発」という。)3、4号機の運転差止めを命じる仮処分決定を言い渡した。また、大津地方裁判所でも2016年3月に高浜原発3、4号機の運転差止めを命じる仮処分決定を言い渡している。これらはいずれも地方裁判所での判決・決定であり、今回、初めて高等裁判所において仮処分の請求を認容し、2018年9月30日まで原子炉の運転の停止を命ずる決定を言い渡したことは、極めて意義のあることである。
(2) 今回の決定は、原子力規制委員会の定めた火山ガイドの評価手順に従い、伊方原発から130キロに位置する阿蘇カルデラについて原子炉の運用期間中に火山の活動性が十分小さいと判断することはできず、噴火規模を推定することもできないから、過去最大の阿蘇4噴火(約9万年前)の噴火規模(火山噴火指数7)を想定すべきで、阿蘇4噴火時の火砕流が伊方原発敷地に到達した可能性が十分小さいと評価することはできないから、伊方原発の立地は不適であると判断したものである。同様の事実は、川内原子力発電所に関する福岡高等裁判所宮崎支部決定(2016年4月6日)や、本決定の原決定である広島地方裁判所決定(2017年3月30日)においても認定されていたが、原子力発電所(以下「原発」という。)の運用期間中に破局噴火が発生する可能性が示されない限り、これを停止させることは社会通念に反すると判断して、住民の請求を認めなかった。しかし、本決定は、原子力規制委員会が最新の科学技術的知見に基づいて定めた火山ガイドが考慮すべきと定めた自然災害について、社会通念を根拠に限定解釈をして、判断基準の枠組みを変えることは、原子炉等規制法及びその委任を受けて制定された新規制基準の趣旨に反すると判断した。さらに、火砕流噴火よりも小さい規模の噴火の際の降下火砕物の層厚と、大気中濃度の想定も過小評価であると認め、運転の差止めを認めたものである。
(3)本決定は、国民の生存を基礎とする人格権に基づき、国民を放射性物質の危険から守るという観点から、司法の果たすべき役割を見据えてなされた、画期的決定であり、ここで示された火砕流噴火に関する判断は九州、四国、北海道、東北の原子力施設に、降下火砕物に関する判断は、他の全ての原子力施設に当てはまる。


 日弁連会長声明は、この声明の最後を次のように結んでいる。


(1)当連合会は、2013年の人権擁護大会において、いまだに福島第一原発事故の原因が解明されておらず、同事故のような事態の再発を防止する目処が立っていないこと等から、原子力発電所の再稼働を認めず、速やかに廃止すること等を内容とする決議を採択している。本決定は、この当連合会の見解と基本的認識を共通にするものであり、高く評価する。
(2)当連合会は、四国電力株式会社に対し、本決定を尊重することを求めるとともに、政府に対して、本決定を受けて従来のエネルギー政策を改め、できる限り速やかに原発を廃止し、再生可能エネルギーを飛躍的に普及させ、これまで原発が立地してきた地域が原発に依存することなく自律的発展ができるよう、必要な支援を行うことを求めるものである。


 確かに、広島高裁の四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを認める決定については、次のことが確認できる。


Ⅰ.本決定は、国民の生存を基礎とする人格権に基づき、国民を放射性物質の危険から守るという観点から、司法の果たすべき役割を見据えてなされた、画期的決定である。
Ⅱ.本決定によって示された火砕流噴火に関する判断は、九州、四国、北海道、東北の原子力施設に、降下火砕物に関する判断は、他の全ての原子力施設に当てはまるものである。。
Ⅲ.日本政府は、本決定を受けてこれまでのエネルギー政策を改め、速やかに原発を廃止しなければならない。




by asyagi-df-2014 | 2017-12-28 07:34 | 書くことから-原発 | Comments(0)

広島高等裁判所の四国電力伊方原子力発電所3号機の運転差止を命じる仮処分を決定を考える。(3)

 広島高等裁判所は、2017年12月13日、四国電力伊方原子力発電所3号機の運転差止を命じる仮処分を決定した。
 このことに関して、大分合同新聞は2017年12月14日、「伊方原発運転禁止 重い、高裁判断」、と論説で評した。
この「論説」を基に考える。
大分合同新聞は、次のように押さえる。


(1)「四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを、広島市などの住民4人が求めた仮処分申請の即時抗告審で、広島高裁は13日、認める決定をした。これまで、地裁段階の原発運転差し止め判決を高裁がひっくり返したことはあったが、逆のケースは初めて。」
(2)「広島高裁の決定は、火山活動を最大の理由にしている。阿蘇カルデラは伊方原発から約130キロの位置にあり、約9万年前に大爆発を起こしている。『この際、火砕流が伊方原発に到達する可能性が十分小さいことを四国電力は評価できていない』と指摘している。」
(3)「伊方原発は1973年、1号機の設置許可取り消しが提訴され、日本で初の原発裁判となった。当初、原発に関する知識、情報はほとんど被告国側が握っており、原告住民側とは決定的な差があるとみられていた。しかし、原発の安全性に疑問を持つ、学者や弁護士などの支援で数々の問題点が明るみに出た。約20年後の92年、最高裁が上告を棄却し、住民側の敗訴が確定した。後に続いた原発訴訟も、最高裁判決が裁判官の判断のよりどころとなり、大半が住民側敗訴となった。」
(4)「この流れが福島第1原発事故(2011年)を食い止められなかったといえる。三権分立の意義を失い、司法の存在意義が問われた。」
(5)「3月末、広島地裁の裁判長は、全国で原発の差し止めを求める仮処分が申請されていることから、『同じ原発なのに、違う判断が出るのは望ましくない』と見解を提示。新基準の合理性を認めた九州電力川内原発(鹿児島県)1、2号機を巡る福岡高裁宮崎支部決定を踏襲した。この判断が続くと思われていただけに、広島高裁の判断は原発裁判史上画期的だ。伊方原発1号機に対する提訴から、44年後に初めて伊方周辺住民側の主張が認められたことになる。」
(6)「このほか、基準地震動も争点になった。四国電力は最大650ガルと設定。これに対し、住民側は『基準地震動は過小だ』と訴えた。伊方原発は南海トラフ地震の震源域上に位置し、『中央構造線断層帯』が近いなど特別なリスクがあると強調した。全国の原発の中で、浜岡(静岡県)、伊方両原発は特に危険視されていた。『申請時には活断層の研究があまり進んでいなかった。安全審査をやり直したら、こんなに中央構造線に近い場所に原発を建設できなかった』との指摘もある。しかも中央構造線断層帯が、大分県内陸部の別府―万年山(はねやま)断層帯まで続いているとする調査結果を政府の地震調査研究推進本部がまとめたことがわかった。活断層が長いほど、大きな地震を起こすと考える地震学者もいる。」
(7)「被爆地広島での高裁決定とあって、訴えるものは大きい。しかも、伊方原発以外の各原発も爆発の影響を受ける恐れのある範囲内の火山をそれぞれ抱えている。広島高裁は運転禁止期間を来年9月30日までとした。住民側はこの時まで伊方原発の運転差し止めを求める裁判が終わっていない場合、改めて差し止め処分の申請をする方針。」
(8)「大分地裁での仮処分審理は、広島高裁の決定を待って、日程を遅らせており、影響するのは必至である。」


 確かに、広島高裁が判断した「火山のリスク」に加えて、大分合同新聞が指摘する「住民側は『基準地震動は過小だ』と訴えた。伊方原発は南海トラフ地震の震源域上に位置し、『中央構造線断層帯』が近いなど特別なリスク」が、大分地裁での今後の裁判闘争の大きな課題となる。




by asyagi-df-2014 | 2017-12-27 07:22 | 書くことから-原発 | Comments(0)

広島高等裁判所の四国電力伊方原子力発電所3号機の運転差止を命じる仮処分を決定を考える。(2)

 広島高等裁判所は、2017年12月13日、四国電力伊方原子力発電所3号機の運転差止を命じる仮処分を決定した。
 このことに関して、伊方原発運転差止広島裁判弁護団は2017年12月13日、「広島高裁決定を受けて」、という「声明」を発表した。
「声明」は、この仮処分について、次のように説明する。

Ⅰ.仮処分の内容


 広島高裁第2部(野々上友之裁判長,太田雅也裁判官,山本正道裁判官)は,本日,伊方原発3号機運転差止仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件において,伊方原発3号機の運転差止を命ずる仮処分を求める住民らの申立てに対し,平成30年9月30日までの期限をつけて運転を差し止める旨の決定を出した。


Ⅱ.意義


 高等裁判所として現実に原発の運転禁止を命ずるのは,史上初であり,また,被爆地ヒロシマの裁判所においてこれ以上放射線による苦しむ人々を増やさない決定がなされた意義はひとまず大きい。これによって,四国電力は,伊方原発3号機について,現在行なわれている定期検査に伴う運転停止を終えた後も(送電開始予定日は2018年(平成30年)1月22日),運転を再開することはできなくなった。


Ⅲ.問題点等


(1)もっとも,本決定の内容については,原発の危険性について正しく認定していない点も見られる。
  特に,傍論とは言いながら,地震動に対する原発の安全性については,①地震科学の不確実性を見誤って事業者の楽観的な主張を踏襲している点,②地震本部の策定したいわゆるレシピを絶対視して不確実性を踏まえない点で,福島第一原発事故の教訓を活かしきれておらず,再び深刻な事態が生じかねない内容となっている点で極めて不当である。ただし,これらの点はあくまでも傍論であり,判例的価値は有しないと考える。
(2)本訴において証拠調べをするためとの理由で平成30年9月30日までの期限付の差止めとしている点でも不合理である。現在本訴において証拠調べ等の審理の見通しは立っていない状況であり,被告側は反論すら出していない。そもそも,本決定で示された差止の理由は,火山事象に対して全面的に本件原発が安全性を有していないという点であり,火山ガイドの抜本的な見直しや十分保守的な対策が講じられない限り,期限を経過したとしても,本件原発が安全でないという事実は何ら変わるものではない。
(3)9月30日が迫った段階で本訴が終了していない場合,我々は,改めて本原発差止仮処分の申請をする予定である。また,四国電力に対しては,上記期限を経過した後も,本件原発を再稼働しないことを強く求める。


Ⅳ.今後について


(1)福島第一原発事故が発生してから6年9か月以上もの長い時間が経過した現在において,その被害は収束するどころか,深刻さを増している。国からは避難指示解除によって事故前の基準の20倍も汚染された地域で生活するように強いられ,必死の思いで避難して,ようやくみなし仮設住宅に落ち着いた人たちは,その住宅の明け渡し請求訴訟まで起こされている。避難指示が解除されても,汚染された地域へ戻る人は少なく,ふるさとの存続が危ぶまれる状況にある。
(2)私たちは,本決定が現実に本原発の運転を差し止めたという事実を高く評価する。(3)また,火山事象に対する問題点は,全国の原発においても同様に当てはまる問題であるから,他の原発においてもこの点を追求していく。





by asyagi-df-2014 | 2017-12-26 07:16 | 書くことから-原発 | Comments(0)

広島高等裁判所の四国電力伊方原子力発電所3号機の運転差止を命じる仮処分を決定を考える。(1)

 広島高等裁判所は、2017年12月13日、四国電力伊方原子力発電所3号機の運転差止を命じる仮処分を決定した。
 このことに関して、NPO法人原子力資料情報室は2017年12月13日、「伊方原子力発電所は危険である-伊方原発3号機、広島高裁運転差止仮処分決定について-」との「声明」を発表した。
 この「声明」は、まず、「私たち原子力資料情報室はこの決定を歓迎し、伊方原子力発電所の危険性を訴えて闘った原告団、弁護団、そしてその運動を支えた広島の市民の皆さんに敬意を表します。」、とする。
 この上で、この仮処分について、次のように分析する。


(1)「伊方原子力発電所のおよそ100km圏内(広島市、松山市)の住民は、被爆地ヒロシマが再び被ばくすることを恐れ、原発の具体的危険性や新規制基準の合理性を問う闘いとして広島地方裁判所に運転差止の仮処分を申請した。しかし広島地裁は申立を却下したため、住民側が抗告したものである。」
(2)「広島高裁の決定は、運転差止の期間を平成30年9月30日までとしている。」
(3)「特に火山事象の影響による危険性について、伊方原発が新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は不合理としている。」
(4)「一方で、新規制基準は合理的であり、伊方原発が新基準に適合するとした原子力規制委員会の判断も合理的と認めている。その上で、本仮処分が証拠調べの手続きに制約があるということから、現在係争中の広島地方裁判所の訴訟に判断を委ねて期限を付している。仮処分についてのこのような対応は、市民に理解されにくいのではないだろうか。」(5)「決定にあるように、住民らの生命身体に具体的危険の存在が事実上推定されるならば、伊方原子力発電所の危険性に、期限などないことは自明である。」


 NPO法人原子力資料情報室は、「声明」の最後で、「私たち原子力資料情報室は、広島の市民をはじめ四国、九州、中国地方の多くの市民とともに、今後も伊方原子力発電所の危険性を広く世論に訴えていく、また、広島地方裁判所での本訴ではより明解な判決が出ることを期待する。」、とまとめる。


 この広島高裁の運転差止仮処分決定について、今後の課題となることもあるが、最近の情勢の中での運転差止をまずは喜びたい。




by asyagi-df-2014 | 2017-12-24 07:32 | 書くことから-原発 | Comments(0)

広島高裁の仮処分決定を不服として、四国電力は12月21日、決定の取り消しを求める保全異議を広島高裁に申し立て。

 朝日新聞は2017年12月21日、表題について次のように報じた。


(1)「四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを命じた広島高裁の仮処分決定を不服として、四電は21日、決定の取り消しを求める保全異議を広島高裁に申し立てた。」
(2)「今後広島高裁で決定を取り消すかどうかが異議審で審理される。来年9月30日まで運転を禁じる決定を出した野々上友之裁判長は20日で定年退官しており、別の裁判官らで判断する。」
(3)「四電は21日、決定の執行停止も広島高裁に申し立てた。四電は定期検査中の同原発3号機を来年2月から営業運転する予定だったが、仮処分はただちに法的拘束力を持つため、決定取り消しか、執行停止が認められなければ運転はできない。」




by asyagi-df-2014 | 2017-12-21 19:08 | 書くことから-原発 | Comments(0)

ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の価格が最安値から5倍の価格に。

 東京新聞は2017年12月17日、表題について次のように報じた。


(1)「原発で使うウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の価格が、一体当たり十億円を超え、国内で導入を始めた一九九九年の最も安かったケースに比べ約五倍に高騰していることが、財務省の貿易統計などから分かった。MOX燃料は毒性の強いプルトニウムを含み加工が難しいため、製造を海外メーカーに依存した結果、価格が高騰したとみられる。」
(2)「国の核燃料サイクル政策では、原発の使用済み燃料は再処理し、取り出したプルトニウムをMOX燃料に加工して再利用する。プルトニウムは核兵器に転用可能なため、余剰分は持たないのが国際公約だが、消費手段は現状ではMOX燃料だけ。同政策の維持のためには価格が高騰しても一定量、使用する必要があり、電力利用者ら国民の負担となっている。」
(3)「原発で通常のウラン燃料だけではなく、MOX燃料を燃やすプルサーマル発電は現在、関西電力高浜3、4号機(福井県)と四国電力伊方3号機(愛媛県)で実施。九州電力が来年に再稼働を見込む玄海3号機(佐賀県)でも予定されている。」
(4)「貿易統計などによると、MOX燃料一体の価格は、九九年九月に東京電力が輸入した福島第一原発用が約二億三千万円だった。二〇一〇年六月に関西電力が輸入した高浜原発用は約八億八千万円に上昇。第一原発事故後、さらに値上がりし、関電が今年九月に輸入したのは一体十億円を超えた。電力各社はMOX燃料の価格を公表せず、輸入した数のみを明らかにしている。関係者によると、価格には厳重な警備の費用や輸送料、保険料なども含まれている。」
(5)「MOX燃料は、使用済み燃料をフランスのメーカーに委託して再処理後、輸入している。プルトニウムの加工などが必要なため価格はウラン燃料より数倍以上高いとされ、これまでも経済性が疑問視されてきた。電力関係者は『価格交渉の余地がなく、値上げされれば従うしかない』と説明する。日本原燃の再処理工場(青森県)は相次ぐトラブルで完成の見通しが立っていない。」
(6)「MOX燃料は本来、エネルギーの自給自足を目指す核燃サイクルの軸となる高速増殖炉用の燃料だった。しかし、高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)は廃炉が決定。消費手段はプルサーマル発電しかないのが実情だ。」
(7)「プルサーマル発電」:原発の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムとウランを取り出し、混合酸化物(MOX)燃料に加工して再び原発で利用する発電方法。制御棒の効きが悪くなる懸念があるほか、使用済みMOX燃料の処分方法も未定など課題が多い。2009年に国内で初めて九州電力玄海3号機(佐賀県)で導入され、四国電力伊方3号機(愛媛県)、東京電力福島第一の3号機(福島県)などが続いた。」


 確かに、MOX燃料に関しては、国の核燃料サイクル政策が変わらない限り、「価格が高騰しても一定量、使用する必要があり、電力利用者ら国民の負担」となる歪な「構造」になっている。
 だとしたら、日本の政策を変えるしかないではないか。




by asyagi-df-2014 | 2017-12-18 12:26 | 書くことから-原発 | Comments(0)

大分合同新聞から見た高裁の運転差止

 広島高裁は2017年12月13日、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを、広島市などの住民4人が求めた仮処分申請の即時抗告審で、運転差止を認める決定をした。
大分合同新聞(以下、合同)は、14日の一面をこの報道で扱った。
 合同は、 「阿蘇噴火の危険重視 3号機運転差し止め 伊方原発」、と次のように報じた。


(1)「【大分合同・愛媛伊方特別支局】四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求め、広島市などの住民4人が申し立てた仮処分の即時抗告審で、広島高裁(野々上友之裁判長)は13日、火山の影響による危険性を認め、運転を禁止する決定をした。期間は来年9月30日まで。昨年8月に再稼働した伊方3号機は定期検査のため停止中だが、この司法判断が覆らない限り、運転を再開できない。四国電は近く高裁に異議と執行停止を申し立てる方針。」
(2)「原発の運転を禁じた高裁判断は初めて。愛媛、大分、山口3県の住民が申し立て、各地の裁判所で続いている同様の仮処分審理に影響を与える可能性がある。」
(3)「高裁では火山の影響のほか、伊方原発沖を通る国内最大級の活断層帯「中央構造線断層帯」による地震のリスク、新規制基準の合理性などが争点となった。決定は火山問題を重視。同原発から約130キロの阿蘇山(熊本県)で約9万年前に起きた過去最大規模の噴火を想定した場合、火砕流が原発敷地に到達する可能性が小さいとはいえず、「立地不適」と判断した。火山灰の厚さや大気中の濃度に関する四国電の想定が過小とも指摘。『新規制基準に適合するとした国の原子力規制委員会の判断は不合理。住民らの生命、身体に対する具体的危険があると推定される』結論付けた。」
(4)「一方で、伊方原発の運転差し止め訴訟が広島地裁で続いていることを踏まえ、『火山の影響による危険性の評価について(地裁が)今回と異なる判断をする可能性もある』と、運転禁止に期限を設けた。」
(5)「火山の問題以外は『新規制基準や規制委の判断も合理的』と四国電側の主張を認めた。」
(6)「住民側の河合弘之弁護士(脱原発弁護団全国連絡会共同代表)は『高裁の決定は大きな意義がある。原発裁判で敗訴が続いていたが、流れを大きく変える歴史的な転換点だ』と強調。」
(7)「四国電は滝川重理登(えりと)原子力部副部長らが高裁前で取材に応じ、厳しい表情で『主張が認められず極めて残念』と繰り返した。」


 また、合同は、今回の決定を次のように解説した。


(1)「対岸の原発を止めたのは『火山リスク』だった。国が進める原発再稼働路線に待ったをかけた初の高裁判断として重い決定となった。」
(2)「伊方原発を巡る裁判では、地震と火山が二大リスクとされてきた。広島高裁は火山に着目。国の原子力規制委員会が安全性の審査に当たって定めた『火山ガイド』に基づき、伊方原発への影響を検討した。」
(3)「阿蘇山の過去最大規模の噴火では、火砕流が160キロの距離まで到達したとされる。阿蘇から130キロの同原発への影響が小さいと評価するには『相当程度に確かな立証が必要』とし、四国電力の立証は不十分だとして危険性を認定した。」
(4)「高裁が原発事故による広域被害の危険性を指摘した意義も大きい。広島で仮処分を申し立てた4人のうち3人は、伊方原発から約100キロ離れた広島市の住民。決定は放射性物質が放出された場合、住民らに被害が及ぶのが想定されると言及した。国は原発から半径30キロの範囲を原子力防災の重点地域とし、圏内の自治体に事故時の避難計画の策定を義務付けている。伊方原発から最短距離で45キロの対岸にある大分県は対象外だ。再稼働に必要な『地元同意』の手続きでも蚊帳の外に置かれている。高裁決定は、国による『線引き』の妥当性も問い掛けている。」
(5)「仮処分は民事保全法に定められた手続きで、通常の訴訟で争っている間に著しい損害や急迫の危険が生じるのを避ける必要から、当事者の申し立てに基づき裁判所が審理し、認めるか否かを判断する。審理は通常の訴訟より迅速に進み、決定後直ちに効力を持つ。四国電力は13日の伊方原発3号機の運転差し止め決定に対し、広島高裁へ異議申し立ての手続きを取る方針を明らかにしている。差し止めを命じた野々上友之裁判長は今月下旬に定年退官となり、別の裁判長が審理を担当する見通し。」
(6)「伊方3号機は今後、差し止めの決定を覆す司法判断が出るか、決定が差し止めの対象期間とした来年9月30日を過ぎるまで法的に動かすことができず、定期検査後の来年1月に再稼働する当初の計画は困難となった。四国電は、原発の停止によって『償うことのできない損害』が生じると訴えて一時的に仮処分の効力を止める執行停止の手続きも別途申し立てる方針で、認められた場合は異議審の間も例外的に運転が可能となる。」


 さらに、合同は、この決定の反響を次のように報じた。


(1)「伊方原発の運転差し止めを求め、大分地裁で係争中の県内関係者は13日、広島高裁の決定を一様に歓迎した。ただ、高裁は『阿蘇山の火砕流』の危険性を指摘したものの、主な争点だった地震の想定は問題なしと判断。『大分での闘いに、どれだけ影響があるか分からない』との声も漏れた。」
(2)「大分地裁では昨年から、仮処分の手続きと、訴訟の審理が並行して続いている。仮処分は今月20日に審尋を終え、年度内にも判断が出る見通しという。」
(3)「『伊方原発をとめる大分裁判の会』のメンバー約10人はこの日、大分市中心部でチラシを配り、『対岸の原発』が止まることを買い物客らに伝えた。小坂正則事務局長(64)は『すごい決定が出た。高裁レベルの判断であり、大きな影響力がある』と笑顔。『多くの県民が関心を持ち、裁判に参加してもらいたい。訴訟の原告を現在の378人から、大分地裁での過去最大を超える500人以上にしたい』と意気込んだ。」
(4)「原告団と弁護団は同日夜、同市内で会議を開き、今後の方針を確認。運転差し止めの理由に『火砕流』を追加する考えを示した。会議終了後、弁護団の徳田靖之共同代表(73)は『司法に原発容認の流れがある中で、期限付きとはいえ差し止めの判断が出たのは高く評価したい』と強調。一方で、『理由が火砕流に限定されている。大分の仮処分や訴訟への影響は限定的ではないか』と述べた。原告団の松本文六共同代表(75)は『内容は100パーセント満足とはいかないが、停止は非常に大きなインパクトがあった。さらに市民の意識を高めることができると思う』と話した。」

事故想定の対策に現時点で影響なし 広瀬知事
(5)「広島高裁が四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを決めたことを受け、広瀬勝貞知事は13日、現時点で原発事故を想定した県の安全対策に影響はないとの考えを示した。県庁で記者団の取材に応じ、『今回の決定と各地で提起されている訴訟の状況を注目していく。一つのプロセスであり、今のところ対応が変わることはない』などと述べた。
さらに、知事は『仮処分の決定でどういう点が判断の基準になったのか勉強したい』と言及。『国民は原発の安全性を心配している。国、電力会社には万全の措置を取ってもらわないといけない。今回の決定に対しても、しっかり説明できるかが大事なポイントと思う』と語った。」
(6)「大分合同新聞社は13日、伊方原発3号機の運転を差し止めた広島高裁決定を伝える号外を発行。大分市中心部6カ所に11枚を張り出した。トキハ本店前で見た大分市判田台の無職真田耕治さん(87)は『地震の心配もあり、運転差し止めには賛成。原発は永久的に廃止してもらいたい』と話した。」


 確かに、今回の高裁の決定に関しては、『地震の心配もあり、運転差し止めには賛成。原発は永久的に廃止してもらいたい』との大分県民の声を届けた合同の指摘を受けて、次のことが押さえられる。


Ⅰ.この高裁判断は、国が進める原発再稼働路線に待ったをかける初めての判断であり、非常に重い決定であること。
Ⅱ.この高裁の判断理由に、「阿蘇山の過去最大規模の噴火では、火砕流が160キロの距離まで到達したとされる。阿蘇から130キロの同原発への影響が小さいと評価するには『相当程度に確かな立証が必要』」とされ、四国電力の立証は不十分だとして危険性が認定されたことは、今後の裁判に大きな影響を持つこと。
Ⅲ.高裁が原発事故による広域被害の危険性を指摘した意義は大きく、今後、国による「線引き」の妥当性も問われることになること。
Ⅳ.今回の決定の理由が、火砕流に限定されているため、大分の仮処分や訴訟への影響は限定的になることも予想されること。




by asyagi-df-2014 | 2017-12-15 06:02 | 書くことから-原発 | Comments(0)

広島高裁は2017年12月13日、申し立てを却下した今年3月の広島地裁の判断を取り消し、四電に運転差し止めを命じる決定を出した。

 毎日新聞は2017年12月13日、表題について次のように報じた。


(1)「四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを広島、愛媛両県の住民が求めた仮処分申請の即時抗告審で、広島高裁(野々上友之裁判長)は13日、申し立てを却下した今年3月の広島地裁の判断を取り消し、四電に運転差し止めを命じる決定を出した。野々上裁判長は『阿蘇山(熊本県)の噴火で火砕流が原発敷地に到達する可能性が十分小さいと評価できない』などとし、火山災害による重大事故のリスクを指摘した。高裁レベルの差し止め判断は初めて。差し止め期限は来年9月末まで。仮処分はただちに効力が生じ、今後の司法手続きで決定が覆らない限り運転できない。」
(2)「伊方3号機は定期検査のため今年10月に停止。四電は来年2月の営業運転再開を目指していたが、差し止め決定で稼働スケジュールに影響が出ることは避けられない。四電は近く決定の取り消しを求める保全異議と、仮処分の執行停止の申し立てを広島高裁に行う方針だ。」
(3)「伊方3号機は2015年7月、原子力規制委員会が東日本大震災後に策定した新規制基準による安全審査に合格し、昨年8月に再稼働した。住民側は、四電の安全対策は不十分で、事故で住民の生命や生活に深刻な被害が起きるなどとして広島地裁に仮処分を申請。地裁は今年3月に申し立てを却下し、住民側が即時抗告していた。」
(4)「高裁の審理では、基準地震動(想定する最大の揺れ)の妥当性や火山の危険性などが争点となった。野々上裁判長は決定で、規制委が作成した安全審査の内規『火山ガイド』が、火山の噴火規模が推定できない場合、過去最大の噴火を想定して評価すると定めていることを指摘。その上で、伊方原発から約130キロ離れた阿蘇山について『四電の地質調査やシミュレーションでは、過去最大の約9万年前の噴火で火砕流が原発敷地の場所に到達した可能性が十分小さいとは評価できない』などと述べ、原発の立地として不適と断じた。さらに、阿蘇山の噴火に伴う噴石や火山灰などの降下物についても、四電が想定した九重山(大分県)噴火の『2倍近くになる』と説明。『伊方原発から見て阿蘇山が九重山より遠方に位置することを考慮しても、四電の降下物の厚さや大気中濃度の想定は過小』と判断。『住民らの生命身体に対する具体的危険が推定される』と述べた。一方、火山災害以外の地震対策などは、新規制基準の内容や規制委の判断、四電が設定した基準地震動などを『合理的』として容認した。」
(5)「運転差し止めの期限を巡って野々上裁判長は、広島地裁で別途審理している差し止め訴訟の判決で『仮処分決定と異なる判断をする可能性もある』などと述べ、来年9月30日までとした。」
(6)「東日本大震災後、差し止めを認めた判決・決定(異議審含む)は、関西電力高浜原発3、4号機(福井県、3号機は当時稼働中)を巡る昨年3月の大津地裁の仮処分など4例。いずれも地裁の判断だった。」【東久保逸夫】
(7)「四電は『基準地震動の合理性や火山事象への安全性の確保について、裁判所に丁寧に主張・立証を行ってきた。主張が認められなかったことは極めて残念で、到底承服できない。早期に仮処分命令を取り消していただけるよう、速やかに異議申し立ての手続きを行う』とのコメントを発表した。」




by asyagi-df-2014 | 2017-12-13 20:08 | 書くことから-原発 | Comments(0)

福井県知事が、関西電力大飯原発3・4号機の再稼働に合意。

 福井県の西川一誠知事は、関西電力大飯(おおい)原発3、4号機の再稼働への同意を表明した。
このことについて、毎日新聞は、次のように報じた。


(1)「関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)について、福井県の西川一誠知事は27日、県庁で記者会見し、『再稼働は地域のためになる。日本にとっても有意義だ』と述べ、再稼働への同意を表明した。世耕弘成経済産業相に電話で意向を伝えた。おおい町長・町議会と福井県議会も既に同意しており、地元同意手続きは完了した。関電は3号機を来年1月中旬、4号機を3月中旬に再稼働させる計画だ。」
(2)「東京電力福島第1原発事故を受けて策定された原子力規制委員会の新規制基準の下で、西川知事が原発の再稼働に同意したのは、稼働中の関電高浜原発3、4号機(福井県高浜町)に続き2例目。知事同意は▽九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)▽四国電力伊方原発3号機(愛媛県)▽高浜原発3、4号機▽九電玄海原発3、4号機(佐賀県)--に続き全国で5例目となる。」
(3)「大飯3、4号機は5月に規制委の安全審査に合格。西川知事は今月22日、福井県原子力安全専門委員会から2基の安全性を評価する報告書を受け取った。26日には世耕氏と面会し、原発の必要性を訴える国の姿勢を確認した。一方、県外立地を求めている使用済み核燃料中間貯蔵施設については、23日に関電の岩根茂樹社長から『来年には具体的な計画地点を示す』との回答を引き出した。」
(4)「大飯3、4号機を巡っては、福井地裁が2014年5月の判決で、原発から250キロ圏内の住民は『運転により人格権が侵害される危険がある』とし、関電に運転差し止めを命じ、関電側が控訴した。名古屋高裁金沢支部での控訴審は今月20日に結審したが、判決期日は未定。運転差し止め判決が確定しない限り、2基は再稼働できる。」
【岸川弘明、立野将弘】


 さて、問題は、どうして「再稼働は地域のためになる。日本にとっても有意義だ」と福井県知事は言い切ることができるのか、ということだ。
 これに関して、朝日新聞は2017年11月30日、「関電大飯原発 課題はまた置き去りか」、とその社悦で論評した。
朝日新聞は、「再稼働はとうてい容認できない。」との見解の基に、次のように指摘する。


(1)「福井県の西川一誠知事が、関西電力大飯原発3、4号機の再稼働への同意を表明した。『地元同意』の手続きはこれで終わり、関電は年明け以降、2基を順次稼働させる方針だ。」
(2)「自治体の避難計画作りの対象となる原発から30キロ圏には15万9千人が暮らす。その圏内で、大飯原発から西に14キロの関電高浜原発では、3、4号機が今年5~6月から稼働している。だが、両原発が同時に事故を起こすことを想定した住民避難計画はできていない。重い課題がまたも置き去りだ。再稼働はとうてい容認できない。」
(3)「関電は、運転開始から40年を超えた高浜1、2号機と美浜原発3号機をあと20年使うと決めた。再来年で40年になる大飯1、2号機も存廃は未定だ。福井の若狭湾沿いに多くの原発が集中する状況は当分続く。」
(4)「もし原発事故が起きれば、周辺住民の大半がマイカーで避難する想定だ。これまでの避難訓練で、限られた避難ルートで渋滞が起きないか、悪天候時に一部の地域が孤立しないかといった懸念が浮かんでいる。近接する原発が同時に事故を起こせば、住民の混乱は必至だ。さまざまな展開を想定して計画を練り、住民に周知することが最低限、必要だろう。それがないまま再稼働を進める関電や国はもちろん、同意した自治体も無責任というしかない。」
(5)「30キロ圏に住民がいる滋賀県知事が『容認できる環境にない』と述べるなど、周辺自治体の懸念は根強い。だが関電は、福井県と原発が立地する町以外に『同意権』を認めないままだ。」
(6)「関電の原発は使用済み核燃料プールが満杯に近い。岩根茂樹社長は今月、福井県外につくるとしている中間貯蔵施設について「来年中に計画地点を示す」と述べた。ただ、関西の電力消費地では、多くの自治体が受け入れを拒む構えだ。関電の思惑通りに進むか予断を許さない。」
(7)「関電は高浜原発で、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を用いるプルサーマル発電をしており、大飯でも実施の可能性を探るという。だが、使用済みMOX燃料を再処理する国の構想は白紙の状態だ。当面、各原発で保管し続けるしかない。」
(8)「こうした課題の多くは全国のほかの原発にも共通し、しかも繰り返し指摘されてきた。ところが電力会社と国、多くの立地自治体は、真剣に向き合う姿勢をいっこうに見せない。」
(9)「懸念が積み重なるなかで、再稼働だけが既成事実になっていくことを憂える。」


 この朝日新聞の指摘だけから見ても、今回の福井県知事の再稼働承認には、次の問題がある。


Ⅰ.両原発が同時に事故を起こすことを想定した住民避難計画はできていない。重い課題がまたも置き去りだ。
Ⅱ.開催電力は、福井県と原発が立地する町以外に『同意権』を認めないままだ。
Ⅲ.使用済み核燃料について、使用済みMOX燃料を再処理する国の構想は白紙の状態だ。当面、各原発で保管し続けるしかない。


 結局、「ところが電力会社と国、多くの立地自治体は、真剣に向き合う姿勢をいっこうに見せない。懸念が積み重なるなかで、再稼働だけが既成事実になっていくことを憂える。」、という朝日新聞の警告が、日本政府の原発行政のあり方を撃つのである。




by asyagi-df-2014 | 2017-12-01 06:38 | 書くことから-原発 | Comments(0)

福島地裁の判決(2017年10月10日)の重みを肝に銘じること。

 朝日新聞は2017年10月10日、)「東京電力福島第一原発事故でふるさとの生活が奪われたとして、福島県の住民ら約3800人が国と東電に生活環境の回復や慰謝料など総額約160億円の賠償を求めた訴訟で、福島地裁(金沢秀樹裁判長)は10日、国の責任を認め、国と東電に賠償を命じる判決を言い渡した。生活環境の回復を求める訴えは却下した。原発事故を巡る同様の集団訴訟は全国で約30あり、福島地裁での判決は前橋、千葉の両地裁に続き3例目。福島訴訟では、国の避難指示が出た区域の原告は約1割。大半は福島県内の避難指示が出なかった地域の住民で、宮城や茨城、栃木の住民もいる。」、と伝えた。
 このことを考える。
2017年10月11日、茨城新聞は「原発政策と福島判決 苦悩と教訓に向き合え」、信濃毎日新聞は「福島集団訴訟 国は責任を直視せよ」、」、と次のように論評した。


Ⅰ.判決の特徴・内容
(茨城新聞)
(1)これまで判決が出た前橋と千葉の両訴訟とは異なり、原告の大半は避難者ではなく、事故時に福島県や隣県で避難指示などの対象にならず、居住地にとどまった住民。被ばくによる健康不安にさらされずに平穏に生活する権利を侵害され、家族や地域の人間関係を壊された-などと訴えた。
(2)判決で福島地裁は、福島沖などで巨大な津波地震が発生する恐れを2002年に指摘した政府機関の長期評価について「専門的研究者の間で正当な見解と是認されていた」とし、国と東電は津波到来を予見できたと判断。「津波対策を取っていれば、事故は回避可能だった」と結論付けた。
(3)その上で、国の責任を巡り「規制権限の不行使は許容される限度を逸脱し、著しく合理性を欠いていた」と批判。対策を怠った東電の責任については「過失があるといえるが、故意や重過失は認められない」とした。
(4) 国の責任を巡っては前橋判決も同じ判断を示したが、先月の千葉地裁判決は予見可能性を認めながらも「対策を取っても、事故は防げなかった可能性がある」と東電のみに賠償を命じ、裁判所の判断が分かれている。


(信濃毎日新聞)
(1)原発事故の被害者による集団訴訟は、全国各地で30件ほど起こされている。福島地裁の訴訟では、事故後も避難せず自宅で暮らしてきた福島県の人たちが原告の中心で、宮城、茨城、栃木各県の住民も加わっている。判決は3件目。3月の前橋地裁は今回と同様に国の過失を明確に認定した。9月の千葉地裁は国の責任は認めなかった。
(2)大津波を予見できたか、が争われた。政府機関が2002年に公表した地震予測の長期評価に基づき、東電が08年に試算したところ津波が海面から10メートルの原発敷地を上回るとの結果が出た。
(3)福島地裁は判決で、国が長期評価を基にシミュレーションしていれば「最大15・7メートルの津波を予見可能だった」と断じた。さらに、東電に対策を命じていたら事故は回避可能だったとし「規制権限の不行使は著しく合理性を欠いた」と厳しく批判している。長期評価は確かな知見ではなく、東電に命じる権限もなかったとする国側の反論を一蹴した。
(4)原告側は放射線量を事故前の水準に戻す「原状回復」を求め、実現するまで1人月5万円の慰謝料を請求。判決は原状回復の訴えは退けた。前橋地裁、千葉地裁が認定した「ふるさと喪失」への慰謝料も、既に支払われた賠償に含まれるとして却下している。ただ、2件の判決に続いて、今回も国の指針に沿って東電が支払っている慰謝料を上回る賠償を命じている。現在の指針は加害者側が決めた枠組みであり、その範囲で解決できない損害がいかに大きいかを示している。


Ⅱ.主張
(茨城新聞)
(1)原発事故から6年7カ月。今なお福島県の5万5千人余りが県の内外で避難生活を強いられ、多くの人が被ばくの不安や風評被害などに苦しんでいる。だが国は原発の再稼働に前のめりだ。福島地裁判決の直前には、新潟県の東電柏崎刈羽原発6、7号機が再稼働に向け原子力規制委員会の審査に事実上合格した。
(2)衆院選で野党は競うように「原発ゼロ」を公約に掲げているが、具体的な工程表はどこからも示されず、うわべだけの論戦に終わらないか懸念する声も出ている。与野党とも、集団訴訟で語られる住民らの苦悩と事故の教訓にきちんと向き合うことが求められよう。
(3)政府は事故原因の検証もそこそこに、原発を「重要な電源」と位置付け再稼働を進める。規制委が規制基準への適合を認めたら、その判断を尊重して地元の理解を得るという手続きを踏むが、多くを規制委や自治体、電力会社に任せ、国の責任があいまいなまま、既成事実が積み上げられていくことに疑問が投げ掛けられている。
(4) 福島判決は「国の責任の範囲は東電の責任の2分の1と認めるのが相当」とするが、長年にわたり原発事業が国策として推し進められ、再稼働についても「世界一厳しい規制基準」が強調されており、原発の安全、さらに万が一の事故に対する責任において、国が前面に立つのが筋だろう。
(5) 一方、衆院選では、希望の党が「30年までに原発ゼロ」を、立憲民主党も「一日も早く原発ゼロを実現」を公約に掲げている。ただ他の野党も含め、目標達成の具体的な工程表は示されていない。また原発再稼働を巡って、希望が条件付きで容認するなど主張に濃淡があり、本気度がまだ伝わってこないことを指摘しておきたい。


(信濃毎日新聞)
(1)まっとうな判断だ。
(2)住宅や仕事を失い、人間関係を断たれた。避難先では子どもがいじめに遭い、体調を崩す大人も少なくない。年間被ばく線量の限度は20ミリシーベルトに引き上げられ、その“異常値”を当然の目安のようにして国は避難区域を解除し、慰謝料や住宅無償提供を打ち切る。健康管理にさえ、国と東電は責任を持とうとしない。被害者が置かれている現状である。
(3)国と東電は支援や賠償のあり方の見直しこそ急ぐべきだ。原発事故は起きないと「安全神話」を吹聴しておきながら、法廷で「想定外だった」と強弁し、責任を回避するのではあまりに見苦しい。


 確かに、「原発政策と福島判決 苦悩と教訓に向き合え」「福島集団訴訟 国は責任を直視せよ」と並べただけで、判決の意味の一端を理解できる。
 ここでは、信濃毎日新聞の「国と東電は支援や賠償のあり方の見直しこそ急ぐべきだ。原発事故は起きないと『安全神話』を吹聴しておきながら、法廷で『想定外だった』と強弁し、責任を回避するのではあまりに見苦しい。」、を強く掲げる。




by asyagi-df-2014 | 2017-10-21 06:44 | 書くことから-原発 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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