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広島高裁は四国電力伊方原発3号機の運転を差し止めた。(5)

 伊方原発への運転差し止めは、二度目である。
 では、私たちは、この判断を重く受け止めるという意味で、何を受け止めることができるのか。また、それは、どのような社会を目指すべきなのか、ということにも繋がらなければならない。
日本弁護士連合会は2020年1月20日、「伊方原発差止仮処分広島高裁2020年1月決定に対する会長声明」(以下、「声明」)を出した。
この「声明」から、考える。
まず、「声明」は、「広島高等裁判所(以下「広島高裁」という。)は、本年1月17日、四国電力株式会社に対し、伊方原子力発電所(以下「伊方原発」という。)3号機の原子炉について、周辺住民の人格権侵害に基づき、運転の差止めを命じる仮処分決定(以下「本決定」という。)を言い渡した。」、と伊方原発差止仮処分の意味を示す。
 また、「伊方原発は、2017年12月にも広島高裁より運転差止仮処分決定が出されていたが、2018年9月25日、同高裁により同決定が取り消され、同年10月27日に再稼働していた。現在は定期検査のため停止中で、本年4月27日に営業運転に入る計画だったが、運転再開に先駆けて、二度目の運転差止仮処分決定が広島高裁によりなされたものである。」、とも。
 さらに、「声明」は、今回の伊方原発差止仮処分の意義を次のように押さえる。
(1)福島第一原子力発電所事故後、原子力発電所(以下「原発」という。)の安全確保に問題があるとして差止めを認めた事例としては5例目となるが、本決定は、地震・活断層の影響評価及び火山噴火規模の可能性の双方に関する争点について、高等裁判所において初めてその危険性を認めたものであり、その意義は大きい。
(2)本決定では、「ある問題について専門家の間で見解が対立している場合には、支配的・通説的な見解であるという理由で保守的でない設定となる見解を安易に採用することがあってはならない」と判示した点が重要である。
(3)本決定は、この考え方を踏まえ、活断層の影響評価と、火山噴火規模の評価の2点で、事業者及び原子力規制委員会の評価に不十分な点があったと指摘する。
(4)まず、活断層については、伊方原発の近傍にある中央構造線断層帯について、事業者が想定するよりも近い位置に存在する可能性があるという専門家の見解があることを踏まえ、より慎重な評価が求められるのに、これを行っていないとした。        (5)次に、火山についても、巨大噴火の可能性を否定できないという複数の専門家の見解があることを踏まえ、少なくとも巨大噴火に至らない規模の噴火を考慮しなければならないところ、これを行っていないとした。このような考え方は、当連合会の第57回人権擁護大会宣言とも基本的認識を共通にするもので、評価できる。


 この上で、「声明」は、日本弁護士連合会として、「当連合会は、四国電力株式会社に対し、本決定を尊重することを求めるとともに、政府に対して、本決定を受けて従来のエネルギー政策を改め、できる限り速やかに原発を廃止し、再生可能エネルギーを飛躍的に普及させること、及びこれまで原発が立地してきた地域が原発に依存することなく自律的に発展できるよう、必要な支援を行うことを強く求めるものである。」。と明確な見解を示した。


 この間、問題となってきた「社会通念」という規範に、「本決定では、『ある問題について専門家の間で見解が対立している場合には、支配的・通説的な見解であるという理由で保守的でない設定となる見解を安易に採用することがあってはならない』と判示した点が重要である。」、と一定の足枷を引いている。




by asyagi-df-2014 | 2020-01-28 09:25 | 書くことから-原発 | Comments(0)

四国電力伊方原発で一時的に原発内の全交流電源が喪失。

 愛媛新聞は2020年1月26日、表題について次のように報じた。


(1)愛媛県は25日、四国電力伊方原発(伊方町)で一時的に原発内の全交流電源が喪失したと発表した。四電は原因が究明されるまで、3号機で実施中の定期検査を全て停止するとした。1~3号機の設備に電源を供給する送電関連設備の交換作業をしていた際に遮断器が作動し2、3秒間、全交流電源が喪失。3号機では非常用ディーゼル発電機が自動起動した。四電によると、1~3号機の全交流電源喪失は初。伊方原発では1月に入り3号機の燃料集合体から誤って制御棒を引き抜くなどのトラブルが相次いでおり、県が即時公表しているA区分の異常は今回で3件目となった。
(2)県や四電によると、25日は3号機の定検作業の一環で、外部からの電源供給を担う送電関連設備の交換を行っていたところ、午後3時44分、遮断器が作動し外部交流電源が喪失。1、2号機は2、3秒後に別の外部電源からの受電に切り替わったが、3号機は約10秒後に非常用ディーゼル発電機が自動起動し、約30分間、電力を供給した。
(3)3号機の燃料プールには、使用済みプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料16体を含む使用済み燃料を冷却のため保管している。未使用のMOX燃料5体も入れている。四電によると、プールの温度は午後3時時点で33・0度だったが、電源喪失により同5時に34・1度まで1・1度上昇した。継続的な温度上昇は認められなかったと説明している。
(4)県庁での会見で四電原子力本部の渡部浩本部付部長は「一瞬とはいえ外部からの電力供給が途絶えたことは重大と認識している。相次ぐ伊方原発でのトラブルで皆さまに大変な心配を掛けていることを心よりおわびする」と陳謝。四電は「機器の故障か作業による影響か予断を持たずに原因を調べる。定検日程への具体的影響は現状では未定」とした。
(5)県の大橋良照・原子力安全対策推進監は「県としては看過できない事態。(20日に起きた燃料集合体『落下』信号発信を受けた)厳重注意よりも厳しい対応になる」と述べた。
(6)四電は近く、3号機の運転を差し止めた広島高裁の仮処分決定に異議申し立てを行う予定。高松市であった会見では、伊方原発でトラブルが続発する中、安全性を主張する申し立てには説得力がないとの記者の指摘に対し、四電担当者は申し立てを行うかどうかの言及を避け「申立書を作成している段階だ」と述べた。


 また、愛媛新聞は2020年1月27日、、広島高裁の仮処分決定に異議申し立てに関しても、「四国電力の長井啓介社長は27日午前、愛媛県庁で中村時広知事との面会後、報道陣に、伊方原発3号機(伊方町)の運転を差し止めた広島高裁の仮処分決定に対する異議申し立てを当面見送る方針を明らかにした。全交流電源の一時喪失など相次ぐトラブルの原因究明を優先するためとしている。」、と報じた。




by asyagi-df-2014 | 2020-01-27 20:55 | 書くことから-原発 | Comments(0)

広島高裁は四国電力伊方原発3号機の運転を差し止めた。(4)

 伊方原発への運転差し止めは、二度目である。
 では、私たちは、この判断を重く受け止めるという意味で、何を受け止めることができるのか。また、それは、どのような社会を目指すべきなのか、ということにも繋がらなければならない。
 今回は、Yuichi KaidoさんのFB(2020年1月18日)が、「阪神淡路大震災の日にこの決定を示した広島高裁の見識に深い敬意を表します。今朝の毎日新聞の報道です。ポイントがわかりやすくまとめられ、火山学の石原和弘先生の適切なコメントがついていますので紹介します。」、と次のように掲載しました。


(1)阪神淡路大震災の日にこの決定を示した広島高裁の見識に深い敬意を表します。
(2)今朝の毎日新聞の報道です。ポイントがわかりやすくまとめられ、火山学の石原和弘先生の適切なコメントがついていますので紹介します。


(3)「今回の運転差し止めでは新たに敷地近くの活断層の調査の不十分さが根拠となった。この活断層は、国の機関や国土地理院、大学など各機関が「音波探査」で調査したものの、政府の地震調査委員会が『探査がなされていない。今後の詳細な調査が求められる』と評価していた。四電は同様の『海上音波探査』で調査したため、高裁は十分な調査と言えないと疑問視。この探査結果を基にした四電の申請を規制委が『問題ない』と判断したことも批判した。」
(4)「阿蘇カルデラの噴火についても新たな判断が示された。『破局的噴火に至らない程度の最大規模の噴火を考慮すべきなのに、四電は降下火砕物の量を過小評価している』とし、過小評価を前提とした原子炉設置変更許可申請や原子力規制委の判断も不合理だと断じた。」
(5)「破局的噴火については『火砕流が原発に到達する可能性を否定できないからといって、それだけで立地不適とするのは社会通念に反する』とした上で、破局的噴火に準じる噴火について検討し、噴出量は四電の想定の約3~5倍に上るとして『過小評価』と断定した。」
(6)「石原和弘・京都大名誉教授(火山物理学)は『火山噴火の知見に基づいた妥当な決定。ガイドの妥当性に踏み込んだことは評価できる』と話す。噴火の時期や程度を予測できることを前提にしている点について、日本火山学会としても見直すべきだと指摘しているという。『現在の知見では噴火の前兆が早く分かったとしても数カ月前。【相当前】と言えるか疑問だし、そこから準備して備えられるのか』と説明する。」

(7)改めて、今回の決定は、『火砕流が原発に到達する可能性を否定できないからといって、それだけで立地不適とするのは社会通念に反する』という部分には、納得できないのですが、この部分は同じ広島高裁で同様の判断が示されており、これを尊重したのだと思います。
(8)その結果、この決定は、異議審でも覆すことがむつかしい、手堅い論理となったと評価できると思います。


 この「 この決定は、異議審でも覆すことがむつかしい、手堅い論理となったと評価できると思います。」、との評価にこの先の道を思う。




by asyagi-df-2014 | 2020-01-27 07:32 | 書くことから-原発 | Comments(0)

原発の闇、玄海原発を飲み込んでいた。

 標題について、「東京」は2020年1月23日、「玄海町長へ100万円 高浜町元助役の関係企業」「玄海町長の選挙手伝う 高浜町元助役系企業 早期から接触か」、と報じた。
東京新聞の記事は語る。


(1)九州電力玄海原発がある佐賀県玄海町の脇山伸太郎町長(63)が初当選直後の二〇一八年七月、福井県敦賀市の建設会社「塩浜工業」側から現金百万円を受け取っていたことが分かった。塩浜工業は、原発立地自治体のトップは電力会社に影響力を持つと考え、原発関連工事受注への便宜を期待した可能性がある。原発利権を巡る不適切な資金のやりとりがまた明らかになった。
(2)脇山氏は共同通信の取材に現金受領を認め、「ずっと返すつもりでいた。便宜は図っていない」と釈明。昨年十二月以降になって返還できたとし、進退については後援会などと相談する必要があると述べた。二十三日に記者会見し、一連の経緯を改めて説明する見通し。
(3)塩浜工業は、関西電力役員らに金品を贈っていた福井県高浜町の元助役森山栄治氏(一九年三月に九十歳で死亡)に顧問料として毎月五十万円などを支払っていたことが既に判明。脇山氏への現金提供については「(当時担当だったとされる)専務が亡くなっているため、事実関係を把握できない」とコメントした。
(4)脇山氏によると、町長選で初当選した二日後の一八年七月三十一日、自宅を訪ねてきた塩浜工業の関係者から「当選祝い」として、のし袋に入った現金百万円を受け取った。いったんは「要りません」と拒否したが、相手は玄関にのし袋を置いて帰ったという。
 返金を検討していたが、業務が多忙で実現せず、自宅の金庫に保管し続けたと釈明。返した際も、のし袋に入った状態だったとしている。
(5)政治資金規正法は、政党以外が企業・団体献金を受け取ることを禁じており、法人として塩浜工業が百万円を支出していれば、抵触する恐れがある。同社の役員や社員の個人献金であっても、脇山氏が代表を務める政治団体の収支報告書に記載はなく、違法性を問われる可能性がある。一方、原発関連工事の発注権限自体は九電にあるため、職務に関して賄賂を受け取った場合に適用される収賄罪の成立は難しいとみられる。
(6)脇山氏は玄海町議を経て、一八年八月に町長に就任した。
(7)塩浜工業は一九五五年創業。工事経歴書などによると、高浜をはじめ全国の原発で安全対策などの工事を受注。玄海での実績は、閲覧できる範囲の経歴書では確認できない。
(8)佐賀県玄海町の脇山伸太郎町長(63)が福井県敦賀市の建設会社「塩浜工業」側から現金百万円を受け取った問題で、同社関係者が現金授受の直前にあった町長選を手伝っていたことが、関係者への取材で分かった。町内に立つ九州電力玄海原発の安全対策工事受注への便宜を期待し、早期から接触を図っていた可能性がある。
(9)脇山氏は二十三日午後、町役場で記者会見し、現金受領について「大変な迷惑を掛けた。反省している」と陳謝。進退は後援会と相談して決めたいとした。二十二日の共同通信の取材には「塩浜工業が選挙を手伝っていたことは知らなかった。塩浜工業の関係者とは現金を持ってきたときに初めて会った」と説明していた。
(10)関係者によると、塩浜工業側は当選が有力視されていた脇山氏に早期から接触し、工事受注の希望を繰り返し伝えていた。町長選でも選挙運動を手伝い、当選二日後の二〇一八年七月三十一日、脇山氏の自宅で、のし袋に入った現金百万円を手渡した。
(11)塩浜工業は、関西電力役員らに多額の金品を贈っていた福井県高浜町の元助役森山栄治氏(一九年三月に九十歳で死亡)を顧問に迎え、毎月五十万円を支払っていた。全国の原発で関連工事を多数受注しているが、玄海での実績は閲覧できる工事経歴書では確認できない。
(12)脇山氏は現金受領を認める一方「便宜は図っていない」と主張。自宅の金庫に保管し、昨年十二月以降に関係者を介して返金したとしている。




by asyagi-df-2014 | 2020-01-25 07:21 | 書くことから-原発 | Comments(0)

広島高裁は四国電力伊方原発3号機の運転を差し止めた。(3)

 伊方原発への運転差し止めは、二度目である。
 では、私たちは、この判断を重く受け止めるという意味で、何を受け止めることができるのか。また、それは、どのような社会を目指すべきなのか、ということにも繋がらなければならない。
 今回は、朝日新聞(以下、「朝日」)と琉球新報(以下、「新報」)の社説で、このことの意味をを考える。
 

 「朝日」は、「原発のすぐ近くに活断層がないとは言い切れず、地震対策に誤りがある。火山噴火への備えも想定が小さすぎる。福島第一原発の事故を受けた新規制基準に沿って進められている電力会社の安全対策、およびそれを認めてきた原子力規制委員会の判断に疑問を突きつける司法判断が示された。」、と今回の広島高裁の判断を明確にする。
まず、私たちが受け取ることができるのは、『原子力規制委員会の判断に異を突きつけた』ということである。
 また、「朝日」は、判決の意味を次のように押さえる。
(1)伊方原発は佐田岬半島の付け根にある。四電は詳細な海上音波探査の結果「原発のすぐ近くに活断層はない」として対策を進め、規制委もそれを認めたが、高裁は中央構造線に関連する活断層がある可能性を否定できないと判断。活断層が至近距離にある場合の評価作業を欠いているとした。
(2)火山噴火の影響では、新規制基準の内規である「火山影響評価ガイド」に従って、熊本県の阿蘇山の噴火が焦点となった。高裁は、数万年前に実際にあった「破局的噴火」については、原発以外の分野で特に対策がとられていないことを理由に「社会通念上、容認されている」とした。その一方で、破局的噴火には至らない最大規模の噴火について検討。火山灰などに関する四電の想定がその数分の1に過ぎないとして、対策の不十分さとそれを認めた規制委の判断の不合理さを指摘した。
また、「朝日」は、四国電力に対しても、「四電は決定を不服として争う方針だ。規制委も『新規制基準は最新の科学的・技術的知見に基づいており、適切に審査している』と反発している。しかし、高裁の判断を聞き流してはならない。」、と突きつける。
 「朝日」は、最後に、(1)福島のような事故を起こさないよう高度な安全性を求めてできたのが新規制基準である。専門家の間で見解が対立している場合は、通説だからとの理由で厳しくない方を安易に採用してはならない――。高裁は判断の立場をそう説明した上で、四電の音波探査を「不十分」と結論づけた。専門家の意見が分かれる中での判断である、(2)火山ガイドについても、噴火の時期と程度を相当前に予測できるとしている点について「不合理」と批判した。2018年秋にも同様の指摘がされた問題だ。いつまで放置するのか、との二点を指摘した上で、「異見にも謙虚に耳を傾け、新規制基準とそれに基づく対策を不断に見直していく。そうした姿勢を欠けば、いくら『基準も審査も万全』と訴えても納得は得られない。」、と断じる。
 私たちは、原子力規制委員会という組織が、常に他者からの意見を真摯に捉え直し、不断に見直しと検証を行う組織でなけねばならないをいうことを確認することができる。


 一方、「新報」は、「原発ゼロへ転換すべきだ」、と明確な次の指針を示す。
(1)東京電力福島第1原発事故で得られた教訓は「安全に絶対はない」という大原則だ。最優先されるべきは住民の安全であり、災害想定の甘さを批判した今回の決定は当然である。
(2)四国電は「極めて遺憾で、到底承服できない」と反発し、不服申し立てをする方針を示した。政府も原発の再稼働方針は変わらないとしている。だがむしろ原発ありきの姿勢を改める契機とすべきだ。
(3)共同通信の集計によると原発の再稼働や維持、廃炉に関わる費用の総額は全国で約13兆5千億円に上る。費用はさらに膨らみ、最終的には国民負担となる見通しだ。原発の価格競争力は既に失われている。電力会社には訴訟などの経営リスクも小さくない。
(4)一方、関西電力役員らの金品受領問題では原発立地地域に不明瞭な資金が流れ込んでいる実態が浮かび上がった。原発マネーの流れにも疑念の目が向けられている。
(5)政府は依然、原発を重要なベースロード電源と位置付け、2030年度に電源構成に占める割合を20~22%に引き上げる計画だ。脱原発を求める国民世論とは大きな乖離(かいり)があり、再生可能エネルギーを拡大させている世界の潮流からも取り残されつつある。
 この上で、「新報」は、「政府や電力業界は原発神話の呪縛からいい加減抜け出し、現実的な政策として原発ゼロを追求すべきである」、と断じるのである。


 どのような社会を目指すべきなのか、ということに関して、「新報」は、「原発ゼロを追求すべき」、と投げかけている。
ただ、この国の政府や企業が原発神話の呪縛に囚われているというよりは、あくどく利用していると映るのは、安全保障神話の中で『日米同盟は宝』と言いきってしまうこの国のあり方があるからである。



by asyagi-df-2014 | 2020-01-24 07:04 | 書くことから-原発 | Comments(0)

広島高裁は四国電力伊方原発3号機の運転を差し止めた。(2)

 伊方原発への運転差し止めは、二度目である。
 今回は、下記の新聞社の社説で、このことの重みを考える。
5社の社説の標題は、このようになっている。
(1)朝日新聞社説-伊方差し止め 原発の安全を問い直す-2020年1月18日
(2)毎日新聞社説-伊方原発再び差し止め 安全審査への重い警告だ-2020年1月18日
(3)信濃毎日新聞社説-伊方の差し止め リスクと謙虚に向き合え-2020年1月18日
(4)南日本新聞社説- [伊方差し止め] 災害想定の甘さに警鐘-2020年1月19日
(5)琉球新報社説-伊方差し止め 原発ゼロへ転換すべきだ-2020年1月20日
 つまり、この国の安全審査における災害想定の甘さに警鐘を鳴らし、原発の安全を問い直す必要があるということ。
ここでは、「安全審査への重い警告だ」とする毎日新聞(以下、「毎日」)の社説と「リスクと謙虚に向き合えとする信濃毎日新聞(以下、「信毎」)から、高裁からの警告の内容に意味を捉え直す。
最初に、「毎日」は、この広島高裁の運転差し止めの判断を、まず、「司法の場で同じ原発に対して2度にわたって運転差し止めの決定が下された。重く受け止めなければならない。」、と評する。
 その根拠を次のように示す。
(1)今回の決定は、伊方原発沖の近くを通る断層「中央構造線」は活断層である可能性が否定できないとして、地元住民への具体的な危険があると認めた。
(2)活断層の有無に関する四電の調査に関しては不十分だと指摘した。その上で、政府の原子力規制委員会が安全審査にあたって「問題ない」と判断したことについても「過誤か欠落があった」と断じた。
(3)2017年12月に出された広島高裁の決定は、阿蘇山(熊本県)が噴火した場合、火砕流が敷地に達する可能性があるため立地として不適だと差し止めを命じた。その決定はその後、四電の異議で取り消されたが、今回の決定は、噴火の影響を四電が過小評価したと結論づけた。
 また、伊方原発そのもの危険性について、「もともと伊方原発は、他の原発に比べても、安全面で大きな問題を抱えている。東西約40キロ、最小幅約800メートルの細長い佐田岬半島の付け根に立地している。このため事故が発生すれば、半島の住民は逃げ道を塞がれかねず、避難できるかどうかが不安視されている。」、と押さえる。


 結局、「毎日」は、このように今回の広島高裁の判断に明快に見解を示す。


(1)活断層の問題は今回争点になった伊方原発沖近くだけではない。沖合約6~8キロには国内最大級の活断層が走っている。今後30年の間には南海トラフ巨大地震が高い確率で発生すると想定されており、発生時の影響が懸念されている。
(2)それだけに、伊方原発を巡って四電だけでなく、規制委に対しても安全審査の厳格化を求めた高裁の姿勢は理解できる。規制委はこの決定を軽視してはならない。
(3)国内では6基の原発が稼働中で、12基が新規制基準の適合審査中だ。東京電力福島第1原発事故の教訓を踏まえ、原発の安全対策には万全を期す必要がある。


 次に、「信毎」は、「求めたのは50キロ圏内に住む山口県の三つの島の住民だ。地震や火山噴火で過酷事故が起きるリスクがあるのに避難計画もなく、暮らしが奪われると訴えていた。決定は、再稼働を認めた原子力規制委員会の判断にも疑問を突きつけている。全国で原発の再稼働を進めている国や電力各社は決定を重く受け止め、リスクと謙虚に向き合わねばならない。」、と指摘する。
 だから、「決定は、再稼働を認めた原子力規制委員会の判断にも疑問を突きつけている。全国で原発の再稼働を進めている国や電力各社は決定を重く受け止め、リスクと謙虚に向き合わねばならない。」、と広島高裁の判断を明確に指示する。


 また、「信毎」は、この間問題となってきた『社会通念』の捉え方について、そんな問いを改めて投げかけた決定と受け止めたい。」、と次のように見解を示す。
(1)伊方原発は現在、定期検査で停止している。運転禁止は係争中の差し止め訴訟の判決までだが、再開が見通せなくなった。
(2)愛媛県の東西に細長い半島の付け根にある原発だ。道路が寸断されれば、半島西側の住民も陸の孤島に取り残される。
(3)今回に限らず、不安を感じた住民らが差し止めを求めて仮処分申請や提訴を繰り返してきた。
(4)地裁で運転を容認する判断が続いた中、広島高裁は2017年、約130キロ離れた阿蘇山の巨大噴火によって火砕流に襲われる危険性を指摘し、差し止めを命じる決定を出した。その後一転し、18年に決定を取り消していた。
(5)揺れる司法判断の分かれ目は巨大噴火への考え方だった。めったに起きない噴火のリスクは社会通念上容認される、との判断が運転容認の根拠になってきた。
(6)広島高裁は今回、一定規模の噴火は考慮すべきと判断。地震に関する調査も不十分と指摘した。
(7)福島第1原発事故を経験した日本社会は、ひとたび事故を起こせば取り返しの付かない事態に陥る危険性を学んだはずだ。国民の間で十分な議論もなく、なぜ社会通念上リスクを容認できると言えるのか。原発のリスクを社会はどこまで容認するのか。


 最後に、「信毎」は、「国や電力各社は、現実から目をそらし続けるわけにはいかない。」、と次のようにまとめる。
(1)政府は、2030年度の電源構成に占める原発の割合を20〜22%に引き上げる計画だ。比較的安く安定して供給できる「ベースロード電源」と位置付けている。しかし、住民の不安は強く、司法からストップがかかる現実も踏まえると、安定した電源とは言えなくなったのは明白だ。
(2)自然災害や重大事故への対策強化を義務付けた新規制基準によって、安全対策費や廃炉費用も大きく膨らんでいる。
(3)原発のリスクは経営面からも直視せざるを得なくなっている。国や電力各社は、現実から目をそらし続けるわけにはいかない。



by asyagi-df-2014 | 2020-01-23 10:23 | 書くことから-原発 | Comments(0)

広島高裁は四国電力伊方原発3号機の運転を差し止めた。

 大分合同新聞(以下、『合同』)は2020年1月17日、「広島高裁、再び仮処分決定」、と次のように報じた。


(1)四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転禁止を求めて、50キロ圏内に住む山口県東部の三つの島の住民3人が申し立てた仮処分の即時抗告審で、広島高裁(森一岳裁判長)は17日、運転を認めない決定をした。「四国電の地震や火山リスクに対する評価や調査は不十分だ」とし、安全性に問題がないとした原子力規制委員会の判断は誤りがあると指摘した。運転禁止の期間は、山口地裁岩国支部で係争中の差し止め訴訟の判決言い渡しまでとした。
(2)伊方3号機の運転を禁じる司法判断は、2017年の広島高裁仮処分決定以来2回目。伊方3号機は現在、定期検査のため停止中で、今月15日にはプルサーマル発電で使い終わったプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料の取り出しを完了した。4月27日に営業運転に入る計画だったが判決の見通しは立っておらず、運転再開は当面できない状態となった。原発再稼働を進める国の方針にも影響しそうだ。
(3)主な争点は、耐震設計の目安となる地震の揺れ(基準地震動)や、約130キロ離れた熊本県・阿蘇カルデラの火山リスクの評価が妥当かどうかだった。
(4)森裁判長は、四国電は伊方原発がある佐田岬半島北岸部に活断層は存在しないとし、活断層が敷地に極めて近い場合の地震動評価や十分な調査を行わなかったと指摘。火山リスクについても「阿蘇カルデラが破局的噴火に至らない程度の噴火も考慮するべきだ」とし、四国電の噴火想定は過小だとした。その上で、原子炉設置変更許可申請を問題ないとした規制委の判断は誤りで不合理だと結論付けた。
(5)四国電は決定に対し、不服申し立てをする方針を明らかにした。
(6)昨年3月の山口地裁岩国支部決定は、地震動や火山リスクの評価に不合理な点はないとし、申し立てを却下。住民側が即時抗告した。岩国支部の訴訟は2月28日に次回口頭弁論予定だが、判決期日は未定となっている。


また、「合同」は、このことに関連して、詳細な記事と大分側の反応を、次のように報じた。


(1)伊方3号機の運転を禁じた司法判断は、2017年12月に同高裁の別の裁判長が出した仮処分決定以来2度目。同機は昨年12月から定期検査のため停止している。四国電は今年4月27日に営業運転を再開する計画だったが、事実上難しくなった。近く同高裁に異議と、決定の効力を一時的に止める執行停止を申し立てる。
(2)森裁判長は地震に対する安全性について、原発沖にある国内最大級の活断層帯「中央構造線断層帯」による地震動に関しては四国電の想定を妥当と認定。原発が立地する佐田岬半島沿岸部の活断層に関しては四国電が十分な調査をせず、「震源が敷地に極めて近い場合の地震動評価をしていない」と断じた。
(3)火山については、数万年に一度とされる阿蘇山(熊本県)の破局的噴火のリスクを理由に立地不適とするのは「社会通念に反する」との考えを示した。一方、それに至らない程度の噴火に関する四国電の想定を「過小」だと問題視。再稼働を認めた規制委の判断を不合理だと指摘した。
(4)住民側は17年3月に仮処分を申請した。昨年3月の山口地裁岩国支部決定は、四国電の地震、火山対策に不合理な点はないとして却下し、住民側が即時抗告していた。
(5)伊方原発を巡っては地元の愛媛県や周囲にある大分、山口、広島各県の住民らが運転禁止を求め、法廷闘争を続けている。
(6)広島市などの住民が申し立てた仮処分では、17年12月に同高裁が阿蘇山の破局的噴火のリスクを理由に運転を差し止めた。同高裁は18年9月、別の裁判長が四国電の異議を認めて決定を取り消した。
(7)大分でも16年6月以降、住民が仮処分や訴訟で係争中。仮処分は18年9月に大分地裁が却下し、住民側が不服として福岡高裁に即時抗告している。
(8)伊方1、2号機は四国電が既に廃炉を決め、18年5月までに運転を終えた。
(9)司法が再び「対岸の原発」に待ったをかけた。広島高裁が四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転を差し止めた17日、大分地裁で同機の運転差し止め訴訟を起こしている市民団体のメンバーらは「追い風になる」と喜んだ。大分県内の沿岸部で暮らす住民の多くは「安心した」と決定を評価。一方で国内の電力供給への影響を心配する声も聞かれた。
(10)「伊方原発をとめる大分裁判の会」は17日夕、大分市中心部の街頭で差し止め決定をアピールする活動をした。メンバー6人が「司法は生きていた」などと書いた垂れ幕を持ち、「原発は本当に安全なのか改めて考える機会にしてほしい」と通行人に呼び掛けた。
(11)会は2016年9月、運転差し止めを求めて大分地裁に提訴。これまでに県民569人が原告となり、住民運動としては同地裁で過去最大規模の訴訟に発展した。うち4人は仮処分も申し立てている。
(12)大分から伊方原発までは最短距離で約45キロ。大分原告団の共同代表を務める中山田さつきさん(65)=杵築市=は「県民にもわがことと考える人が増えていると感じる」。弁護団の共同代表、岡村正淳弁護士(74)=大分市=は「原発を止めた決定の意義は大きい」と強調した。
(13)国東半島からは天気のいい日に対岸の同原発を肉眼で見ることができる。国東市国東町鶴川のNPO法人理事、岡松寛さん(64)は「何かあってからでは遅い。伊方で事故があれば市内も大きな被害を受ける恐れがある」と差し止めに理解を示した。
(14)大分市佐賀関では、地元の漁師姫野宏治さん(75)が「豊予海峡で漁をするので少し安心した」。ただ、同機は定期検査中の12日にも、核燃料取り出し準備の作業中にトラブルが発生。「止まっていても落ち着かない」と漏らした。男性会社員(62)は「原発は災害リスクがあるかもしれないが、資源の少ない日本で安定的なエネルギーを確保するのも重要」と複雑な表情を見せた。
(15)【大分合同・愛媛伊方特別支局】広島高裁が決定を出した17日午後2時すぎ。高裁前に出てきた住民側の関係者が「勝訴」の垂れ幕を掲げると、集まった支援者らは「やった」と歓喜の声を上げた。「全面勝訴と言っても過言ではない」。弁護団の中村覚共同代表(山口県弁護士会)はマイクを握り、「阪神大震災から25年目の日に出た決定。私たちの生活が地震に脅かされていることを裁判所が警告している」と強調した。
(16)住民側は広島市内で記者会見。弁護団は、原発のごく近くにあると主張している活断層に関し、四国電の調査が不十分と認めた決定を「画期的」と評価した。一方、山口県内の離島などで暮らす申立人の避難の困難性について決定で触れられなかったことなどは「問題」と訴えた。
(17)申立人の3人は「決定を足掛かりに、原発をなくす運動や裁判がさらに加速してほしい」などとコメントを寄せた。
(18)大分地裁で続く伊方原発の運転差し止め訴訟で原告となっている大分県の住民も高裁前に駆け付けた。杵築市相原の自営業大原洋子さん(66)は「今回の決定が大分にも良い影響を与えてくれれば」と期待した。
(19)広島高裁決定を受け、広瀬勝貞知事は17日、「今後も司法の動向を注視していく」とのコメントを出した。知事は伊方原発3号機について「まだ各地で訴訟が継続している」とし、決定に対する評価は避けた。電力会社や国には「引き続き原発の安全対策に万全を期し、地域へ丁寧な説明を」と求めた。
(20)家族で買い物に訪れた杵築市八坂のパート中村奈奈美さん(56)は「伊方町は海を挟んで近く、対岸の火事とは思えない。子どもや孫の将来を考えると、差し止めが決まって安心した」と話した。




by asyagi-df-2014 | 2020-01-19 17:00 | 書くことから-原発 | Comments(0)

伊方3号機定期検査時に、制御棒を引きあげる異常トラブルを起こす。

 標題の事件について、共同通信、愛媛新聞、大分合同新聞、朝日新聞、毎日新聞、は次のように報じた。


(1)共同通信-四国電、制御棒引き抜くトラブル 伊方3号機、定検中-2020年1月12日


 四国電力は12日、定期検査中の伊方原発3号機(愛媛県伊方町)で、核燃料を取り出すため、原子炉容器上部で燃料を固定している装置を引き上げようとした際、制御棒1体を一緒に引き抜くトラブルがあったと発表した。原発への影響や外部への放射能漏れはないとしている。
 伊方3号機は13日午前0時ごろから、プルサーマル発電で使い終わったプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を含む核燃料の取り出しを開始する予定だった。トラブルの原因調査などで遅れる見込み。四国電によると、本格的なプルサーマル発電でMOX燃料の取り出しは全国初だった。


(2)愛媛新聞-定期検査中 制御棒引き上げるトラブル 伊方3号機-2020年1月12日


 愛媛県は12日、定期検査中の四国電力伊方原発3号機(伊方町)で、原子炉内の燃料集合体取り出しに向けて上部の構造物をつり上げ作業中、本来は燃料集合体の中に残すはずだった制御棒48体のうち1体を引き上げる異常が起きたと発表した。四電は「燃料集合体の取り出し作業などにどの程度の影響が出るかは不明。環境への放射能の影響はなかった」としている。


(3)大分合同新聞-伊方原発3号機、誤って制御棒抜く 7時間後に戻す-2020年1月13日


 四国電力は12日、定期検査中の伊方原発3号機(愛媛県伊方町)で、核燃料を取り出すため、原子炉容器上部で燃料を固定している装置を引き上げようとした際、制御棒1体を一緒に引き抜くトラブルがあったと発表した。原発への影響や外部への放射能漏れはないとしている。
 伊方3号機は13日午前0時ごろから、プルサーマル発電で使い終わったプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を含む核燃料の取り出しを開始する予定だった。トラブルの原因調査などで遅れる見込み。
 四国電によると、本格的なプルサーマル発電でMOX燃料の取り出しは全国初だった。
 四国電や県によると、12日午後1時20分ごろ、燃料の上下を固定している装置のうち上部をクレーンでつり上げた際、制御棒48体のうち1体が一緒につり上がり、原子炉から引き抜かれていることに作業員が気付いた。約7時間引き抜いた状態が続いた後、制御棒を原子炉に挿入し直した。
 四国電は、クレーンの重量センサーが制御棒が切り離された状態の数値を示したため、正常に切り離されていると判断してつり上げたとしている。
 制御棒は核分裂を抑える役割があり、原子炉を停止する際に挿入する。四国電によると、原子炉の起動には制御棒を引き抜く操作のほか、冷却水に含まれるホウ素濃度の調整が必要となる。
 大分県にはトラブル確認から約4時間後の同5時15分、愛媛県から電話で一報が入った。愛媛県が地元報道機関に公表したのに合わせて、同6時55分にファクスで詳細な情報提供があった。


(4)朝日新聞-定期検査中の伊方原発3号機でミス 制御棒つり上がる-2020年1月12日 22時13分


 四国電力は12日、伊方原発(愛媛県伊方町)3号機で、核燃料を取り出すために燃料を固定している原子炉容器内の装置をつり上げる作業中に、核分裂の反応を抑える制御棒(長さ約3・8メートル)1体が一緒につり上がるミスが発生した、と発表した。3号機は定期検査で運転を停止中で、県は安全面の問題はないとしている。
 12日は正午前からつり上げを開始。午後1時20分ごろ、制御棒1体も一緒に上がっているのを確認したという。


(5)毎日新聞-制御棒1体を引き抜くミス 伊方原発3号機で 燃料取り出し準備作業中に-2020年1月12日 22時02分


 愛媛県と四国電力は12日、定期検査中の伊方原発3号機(同県伊方町)で、燃料取り出し準備の作業中に、核分裂を調節するための制御棒1体を誤って引き抜くミスがあったと発表した。放射能漏れはないとしている。13日から予定していた、使用済みとなるウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料16体を含む燃料全157体の取り出し作業に影響する可能性もある。

 県と四電によると、12日午前11時45分ごろ、原子炉容器上部で燃料を固定している装置のつり上げ作業を始めた。ところが制御棒48体のうち1体が切り離されておらず一緒に引き上がった。重量センサーが制御棒が切り離された状態の数値を示したため、正常に切り離されていると判断したという。

 監視カメラを見ていた保修員が異常に気づき、元の位置に戻すまで制御棒は7時間ほど原子炉容器から引き抜かれた状態だった。再度切り離し作業を行う予定で、四電は燃料の取り出しについて「検査への影響は現時点では何とも言えない」としている。【中川祐一】




by asyagi-df-2014 | 2020-01-14 17:18 | 書くことから-原発 | Comments(0)

原発控訴審で審議を尽くせ。

 2019年10月6日付けの朝日新聞(以下、「朝日」)の社説は、「福島第一原発の事故をめぐり東京電力の旧経営陣3人が強制起訴された裁判で、検察官役の指定弁護士が控訴した。」、と始められる。
「原発事故控訴 疑問に応える審理を」と主張する「朝日」の論調は次のもの。まずは、東京地裁の無罪判決について。


(1)無罪を宣告された者を被告の立場におき続けることの是非については、かねて議論がある。だが、東京地裁の無罪判決には承服しがたい点が多々見受けられ、指定弁護士が高裁の判断を求めたのは理解できる。
(2)例えば、判決は「事故を防ぐには原発の運転を停止しておくしかなかった」と断じている。指定弁護士は、防潮堤の設置や施設の浸水防止工事、高台移転などの方策にも触れ、その実現可能性について証人調べも行われた。しかし判決は、詳細に検討することなく退けた。
(3)結果として、社会生活にも重大な影響が及び、きわめてハードルの高い「運転停止」にまで踏み込む義務が元幹部らにあったか否かが、判決を左右することになった。被災者や複数の学者が疑問を呈し、「裁判所が勝手に土俵を変えた」との批判が出たのはもっともだ。


 また、「原発の安全性に関する判断にも首をかしげざるを得ない。」、と続ける。


(1)判決は、国の防災機関が02年に公表した「三陸沖から房総沖のどこでも、30年以内に20%程度の確率で巨大地震が起こりうる」との見解(長期評価)の信頼性を否定した。根拠として、一部に異論があったこと、電力会社や政府の規制当局が事故対策にこの見解をとり入れていなかったことなどを挙げた。
(2)一体となって原発を推進した国・業界の不作為や怠慢を追認し、それを理由に、専門家らが議論を重ねてまとめた知見を否定したものだ。さらに判決は、当時の法令は原発の「絶対的安全性の確保」までは求めていなかったとも述べた。


 「朝日」は、最後に、「万が一にも事故が起こらぬように対策を講じていたのではなかったのか。巨大隕石(いんせき)の衝突まで想定せよという話ではない。実際、この長期評価をうけて、東電の現場担当者は津波対策を検討して経営陣にも報告し、同じ太平洋岸に原発をもつ日本原電は施設を改修している。こうした事実を、地裁は適切に評価したといえるだろうか。」、と批判した上で、「指定弁護士が高裁の判断を求めたのは理解できる。」とした根拠について、次のように断じる。


「組織や人が複雑に絡む事故で個人の刑事責任を問うのは容易ではない。有罪立証の壁の厚さは織り込み済みだったが、問題は結論に至る道筋と理屈だ。政府や国会の事故調査ではわからなかった多くの事実が、公判を通じて明らかになった。判決には、それらの一つ一つに丁寧に向きあい、事故との関連の有無や程度を人々に届く言葉で説明することが期待されたが、それだけの内容を備えたものになっていない。高裁でのレビューが必要なゆえんである。」


 確かに、原発控訴審で審議を尽くせ、ということになる。




by asyagi-df-2014 | 2019-10-19 06:20 | 書くことから-原発 | Comments(0)

関電よ。「3.11」とはあなた達にとって何だったのか。(5)

「安全神話」を振りかざし、人びとを脅しつけてきた輩の姿は、残念なことにこんなもんだったということ。それも、ことは、東日本大震災が起きた2011年以降の7年間というのだから、本当に耐えられない。
 しかし、「3.11」の意味をきちんと振り返る必要がある。


 朝日新聞(以下、「朝日」)は2019年10月3日、「関電金品受領 原発は『聖域』なのか」、とこの事件について論評した。
「原発は『聖域』なのか」、と問う「朝日」の批判は次のものである。
まずは、関電が、公表を拒否した「社内調査報告書」について。


(1)関西電力がきのう、高浜原発がある福井県高浜町の元助役(故人)から首脳らが金品を受け取っていた問題で2度目の会見を開き、公表を拒んできた社内調査報告書を開示した。現金のほか商品券や仕立券付きスーツ生地、金貨、米ドル……。一度に1千万円の現金授受をはじめ、総額が1億円を超えた役員が2人。関電が「20人で3・2億円」としていた受領の中身を知り、その非常識ぶりに改めてあぜんとする。
(2)さらに、地元の有力者だったという元助役と関電、とりわけ原子力事業本部との異様な関係と、直面する問題に当事者として向き合おうとしなかった企業統治の不在もあらわになった。
(3)報告書によると、関電が原発増設などで協力を仰いできた元助役は、金品を受け取らないと厳しく叱責することが多々あった。機嫌を損ねては原発事業に影響しかねないとの心配から受け取り、「返却の機会をうかがいながら個人として保管していた」とするが、理解しがたい。


 とくに、今回誰もが疑問に思う「返却の機会をうかがいながら個人として保管していた」、との回答について次のように指摘する。


(1)金品を受け取っていたのは原子力事業本部の幹部が大半で、授受は同本部で引き継がれていた。一部からは金品を会社で管理できないかと相談があったが、本部の責任者は個人で対処するよう回答。調査に対して「会社として対応すると会社全体の問題になってしまう」との声もあったという。
(2)関電は1年前に報告書をまとめ、岩根茂樹社長と八木誠会長が報酬を一部返上するなど社内処分もしたが、一連の対応を非公表としたばかりか取締役会に報告しなかった。社内の役員で情報は共有したとするが、かねて閉鎖性を指摘されてきた原発事業の実態にがくぜんとする。
(3)八木氏や原子力事業本部の幹部らは金品を受領したまま昇進を重ね、岩根氏も社長就任祝いで受け取った。報告書は「前例踏襲主義」を批判したが、経営の根幹にかかわる事態である。
(4)関電は、社外の弁護士らだけからなる調査委員会を新設し、調査の対象や時期を拡大して調べ直すと発表した。
(5)元助役は、関電の工事を受注し、関電に流れた資金を用意した地元の土木建築会社をはじめ、原発事業にかかわる複数の会社で要職に就き、関電の子会社でも顧問として報酬を受け取っていた。関電は元助役に対し、地元で発注予定の工事の概算額や時期の見通しを伝えていた。社内報告書は「実際の発注に影響はなかった」とするが、元助役や土木建築会社からの聞き取りはしておらず、新委員会での検証が欠かせない。


 結局、「朝日」の結論は、「岩根、八木両氏は引責辞任を否定する。しかし、責任は明白である。」、と断じる。


 「3.11」が示した安全神話の崩壊は、実は、虚妄の神話を維持していくための「構造的虚構」の犯罪性をも明らかにしている。




by asyagi-df-2014 | 2019-10-09 07:01 | 書くことから-原発 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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