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Yuighi KaidoのFBより-なぜ、日本は世界中で二か国としか犯罪人引き渡し条約が締結できないのか?

 このFBの記事で、初めて、「日本は世界中で二か国としか犯罪人引き渡しができない」のだと知りました。
 Yuighi KaidoのFBは、次のように指摘しています。そのまま掲載します。


なぜ、日本は世界中で二か国としか犯罪人引き渡し条約が締結できないのか?

1 犯罪人日引き渡し条約の締結状況
 カルロス・ゴーン氏がレバノンに逃れたことから、ゴーン事件に関する報道の中で、日本がなぜ多くの国々と犯罪人引き渡し条約を締結することができないのかに注目が集まっています。
 2016年現在、日本は2か国、フランスは96か国、イギリスは115か国、アメリカは69か国、韓国は25か国と犯罪人引渡し条約を締結しています。
 2016年現在、日本が犯罪人引渡し条約を結んでいる国はアメリカ(日米犯罪人引渡し条約、1980年発効)と韓国(日韓犯罪人引渡し条約、2002年発効)の2カ国しかありません。

2 逃亡犯罪人引渡法の手続
 これらの条約に基づく引き渡し請求がなされた際の日本国内の手続きは逃亡犯罪人引渡法で定められています。条約の相手国から国外逃亡犯の引き渡しを求める請求があると、外務省から東京高等検察庁を経て、東京高等裁判所で審理されることになります。
 東京高等裁判所における審査の手続は二ケ月以内に決定をすることとなっています。なお、審査についての関係証人の尋問、鑑定、通訳、翻訳等の手続などは、刑事訴訟法の規定がそのまま準用されることとなります。
 そして、対象者が日本国籍の場合や政治犯の場合などの例外的な場合を除き、原則引き渡すことになっています。

3 日本の条約締結数が他の国々と比べて極端に少ないのはなぜか
 日本の条約締結数が他の国々と比べても極端に少ないことの理由が問題となりますが、この理由としては、日本が死刑存置国であることが大きく影響しているようです。
 犯罪人引渡のための地域的な条約であるヨーロッパ犯罪人引き渡し条約にヨーロッパだけでなく、韓国や南アは加入しているのに、日本は加入できていません。韓国は事実上の執行停止国、南アは廃止国です。日本はヨーロッパ評議会のオブザーバー加盟国なのに、この条約に加盟できない理由は死刑以外には考えられません。

4 犯罪人引渡と基本的人権
 犯罪人引渡の問題について考えるには、罪を犯した者の処罰を確保するという問題と、犯罪人の引き渡しによって基本的人権の侵害を引き起こしてはならないという問題とを総合的に考慮しなければなりません。
 カナダが死刑存置国である米国に対し、犯罪人を引渡したことが自由権規約に反するのではないかという事件が、自由権規約委員会の個人通報事件として多く取り扱われてきた。
初期の事件では、キンドラー事件、ヌー事件(Ng v. Canada, Communication No. 469/1991,   CCPR/C/49/D/469/1991, 5 November 1993.)などにおいて、第7条違反、すなわち米国での死刑の執行方法が非人道的な取扱いや刑罰にあたるかが検討されてきました。
 しかし、ジャッジ事件(Judgev.Canada,Communication No. 829/1998, CCPR/C/78/D/829/1998, 20 October 2003)では、死刑廃止国が、死刑制度存置国に対して、死刑が確定している犯罪人を引渡すこと自体が、真正面から生命に対する権利を保障した第6条1項そのものに違反するという判断にたどり着いています。
 最近の自由権規約委員会では、死刑制度だけでなく仮釈放の可能性のない終身刑を課される可能性があるということが規約7条に反する可能性があることを示唆するようになっています。
 ヴァイス対オーストリア第二事件について委員会は、「ある人物が、あらゆる実質的目的のために、釈放の可能性のない終身刑が課される国に送還されることは、自由権規約第10条3 項21に述べられている刑罰の目的に照らして、第7条に関する問題を生じさ せるかもしれないということを認識する一方で、当事国が通報者を米国に引渡すとした決定は、主張されている権利侵害が発生した時点の法的発展に照らして検討されなければならないと本委員会は考える。これに関して、本事 件の当事者双方から、通報手続において委員会に提出された情報からは、当事国は、オーストリアの上級地方裁判所が、当時の事実状況と適用可能な法に照らして慎重に行った審査の結論に基づいて、通報者の米国への引渡を決定したと考えることができる。したがって、本委員会は、通報者の引渡によって、当事国が規約第7条の権利を侵害したとは言えない」と判断しています(Weiss v. Austria, Communication No. 1821/2008, CCPR/C/106/D/1821/2008, 24 October 2012.  前田直子「犯罪人引渡における人権基準の発展 ―ヴァイス対オーストリア事件(第2)(自由権規約委員会、2012年10月24日)」京女法学第4号より翻訳孫引き)。

5 死刑制度の廃止を含む刑罰制度の改革が今後の大きな課題になっている
 このように、死刑や仮釈放の可能性のない終身刑が存在することが障害となり、犯罪人の引渡条約が締結できず、犯罪人の引き渡しが認められないという現象が生じていることがわかります。
 日本の死刑を含む刑罰制度が犯罪人引渡の障害となり、条約締結わずか二か国という状況につながっていることはあきらかであると思われますが、このことを指摘した際に考えられる反論としては、日本と同じく死刑を存置している中国が、多数の国と犯罪人引渡のための条約を締結していることをあげる方がいるかもしれません。
 中国は、極めて活発に犯罪人引渡の合意を形成しようとして、2年位前の報道では条約締結は約30か国に達するとされています。まだ、締結には至っていませんが、日本との間でも条約の締結交渉が重ねられてきました。香港の大規模デモも、香港が中国に犯罪者を送還するための「逃亡犯条例」の制定がきっかけとなっていました。これらは、中国政府の必死の外交努力によるものであり、それでも締結されたのは約30か国にとどまっているわけで、死刑や非人道的な刑罰の存在が犯罪人の引渡条約が締結できないことの支障となっているという見立ては誤っていないと考えます。
 犯罪人の引き渡し条約の締結を促進するためには、死刑制度を廃止し、人権が保障され、罪を犯した人々の社会復帰を容易にするための制度改革を進めることが必要不可欠です。




by asyagi-df-2014 | 2020-01-19 15:06 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

公平性とは何なのか。

 このことに関連する記事を読んだ時、やはり、この国の歪みを感じた。
 このことに関して、沖縄タイムス(以下、「タイムス」)は2019年1月10日、「[技術検討会委員に寄付] 公平性に根本的な疑い」、と社説で論評した。
どういうことが起こっているのか。
 「タイムス」は、まず、「名護市辺野古の新基地建設を巡り、軟弱地盤の改良工事に関する有識者会議『普天間飛行場代替施設建設事業に係る技術検討会』の3委員が、新基地建設の工事関連業者から計570万円の奨学寄付金を受け取っていたことが分かった。」、と事実関係を明らかにしたうえで、「県は軟弱地盤などを理由に埋め立て承認を撤回。政府は地盤改良工事により県の主張に対抗する目的で、工事の妥当性を審議する検討会を設置した。その3委員が関連業者から受け取っていたのが、研究振興のため民間から大学学部や教授などに提供される奨学寄付金だ。審議内容の公正・公平性が疑われる。名前が挙がった委員は辞任し、検討会の在り方も根本から見直すべきだ。」、と厳しく指摘する。
 「タイムス」の批判の根拠は次のもの。
(1)検討会は、国会で軟弱地盤の問題が指摘されたことを受けて、昨年9月に設置された。8委員で構成する。うち、副委員長の大谷順・熊本大学副学長が不動テトラから120万円を受け取ったとされるほか、青木伸一・大阪大学大学院教授と渡部要一・北海道大学大学院教授が東洋建設からそれぞれ300万円と150万円の寄付を認めている。
(2)そのほかにも委員長に就任した清宮理・早稲田大学理学術院名誉教授を含む4人が国土交通省など政府関係機関の現職や勤務経験者で、検討会の審議の中立性や客観性には当初から疑問が出ていた。
(3)初会合では、政府が示した地盤改良工事の工法をほぼ追認。飛行場の機能を維持する工法を検討する意見があがったものの、計画全体に特段の異論は出なかった。
 また、「タイムス」は、次のように指摘する。
(1)政府は軟弱地盤の改良で、砂杭(すなぐい)7万7千本を海底に打ち込む工法を採用する方針で、全体の工期は約12年に延長。工費は当初の約2・7倍の9300億円になる見込みだ。こうした工事に対し、国土交通相が鑑定を求めた専門家は当初、追加の地質調査の必要性を指摘していた。
(2)一方、検討会は設計に関する地質調査についても「妥当」としており、政府が追加調査を実施しないための口実づくりの可能性もある。
(3)新基地建設を巡っては、過去にも沖縄防衛局が設置した環境監視等委員会の複数の委員が新基地の工事を受注した業者から寄付を受けていたことが発覚した。
(4)河野太郎防衛相は、環境監視等委員会と検討会は性質が違うとして、中立性の疑念について「当たらない」とするが、検討会は最深90メートルの地盤強化など世界的に例のない工法にお墨付きを与えた形で、その主張には無理がある。


 だからこそ、「タイムス」は、次のように断じる。


(1)新基地建設は、その規模や性格から名護市辺野古海域の環境や県民生活に大きな影響を与える。
(2)その上、工期や工費が大きく膨らんだ計画が政府の言う「唯一の解決策」なのか、かかるコストと得られる効果、安全の点からも詳細で公正・公平な検討が必須だ。
(3)だが政府が設置する第三者委員会は、透明性が度々疑われ疑念は増すばかりだ。無理のある第三者委を設置することしかできない新基地建設は計画そのものが破綻していると言わざるを得ない。


 確かに、「タイムス」の「無理のある第三者委を設置することしかできない新基地建設は計画そのものが破綻していると言わざるを得ない。」、との主張を噛みしめる。




by asyagi-df-2014 | 2020-01-15 06:52 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

「カジノ疑惑 全容の解明が最優先だ」、と朝日新聞社説。

 朝日新聞(以下、「朝日」)は2020年1月8日、「カジノ疑惑 全容の解明が最優先だ」、と社説で論評した。
「朝日」の指摘は、次のもの。
(1)カジノを含む統合型リゾート(IR)への参入疑惑が広がりを見せている。秋元司衆院議員=逮捕勾留中=に賄賂を贈ったとされる中国企業側が、東京地検の調べに、他の衆院議員5人にも「100万円前後の現金を配った」と供述し、符合するメモも残されているという。
(2)その1人、日本維新の会の下地幹郎議員は、金を受け取ったこととその事実を政治資金収支報告書に書かなかったことを認め、離党届を出した。メモなどの信用性が裏づけられた形だ。
(3)外国企業からの献金や報告書への不記載は、政治資金規正法に触れる可能性がある。維新の松井一郎代表は議員辞職まで持ちだして下地氏に厳しい姿勢を示したが、一貫してIRを推進してきた党の責任をどう考えているのか。問題の深部にまで踏み込まず、ただ火の粉を払おうとしても理解は得られまい。
 さらに、「朝日」は追求する。
(1)残りの4人は自民党所属で、そろって受領を否定している。それでもあやしい資金の流れが見え隠れする。
(2)中村裕之前文部科学政務官が代表を務める政党支部の17年の収支報告書によると、中国企業と共にIR事業を計画する観光会社の幹部名で、10月初めに200万円の寄付があり、その直後に同支部から岩屋毅前防衛相の政党支部に100万円が渡っている。秋元、下地両議員への現金供与があったとされる時期と重なる。前者は個人の献金、後者は講演謝礼との説明だが、直ちに信用せよと言われて、どれだけの人が納得するか。
(2)疑惑はふくらむ一方なのに、無視を決めこむ政権の態度は驚くばかりだ。首相は年頭会見でこの問題に一切触れなかった。菅官房長官も木で鼻をくくったような答弁を繰り返し、内閣府の外局としてカジノ規制を担う管理委員会を、きのう予定通り発足させた。
(3)衆院内閣委員長としてIR推進法案の採決を強行した秋元議員が逮捕され、閣僚経験者や現職政務官らが次々と検察の任意聴取を受けているのだ。成長戦略の柱に掲げるIRの正当性が根底から問われている。その認識を持って、国民に向き合うのが当然の務めではないか。
(4)政府の予定では、今月中にIR運営事業者の選定基準などを盛り込んだ基本方針を決めることになっている。だがカジノ利権をめぐる不透明な金の流れが浮上したいま、管理委の業務は当面凍結し、疑惑の全容解明を優先させるべきである。
 この上で、「朝日」は、「野党はIR実施法の廃止法案を共同提出する構えだ。日本にカジノは必要なのか。これまでの政府与党の強引な国会運営で封殺されてしまったこのテーマを、一から議論し直すときだ。」、と断じる。


 「日本にカジノは必要なのか。これまでの政府与党の強引な国会運営で封殺されてしまったこのテーマを、一から議論し直すときだ。」、と朝日新聞の社説の結論は正しい。
 確かに、見えていたのは、新しい収益構造に群がる「輩」達のおぞましい姿である。



by asyagi-df-2014 | 2020-01-13 09:27 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

安倍晋三首相の年頭会見を読む。

 安倍晋三首相は2019年1月6日、三重県伊勢市で年頭の記者会見を行った。
 とても、生で見ることはできないので、各新聞社の社説等で見る。
朝日新聞(以下、「朝日」)は年頭会見の要旨を6日、次のように報じた。


1.【中東情勢】中東地域が緊迫の度を高め、現状を深く憂慮している。全ての関係者に緊張緩和のための外交努力を尽くすことを求める。この地域の緊張緩和と情勢安定化のため、日本ならではの外交を粘り強く展開する。わが国はこの地域にエネルギー資源の多くを依存する。外交努力とあわせて情報収集態勢を強化するため、この地域に自衛隊を派遣し、日本関係船舶の航行の安全を確保していく。
2.【憲法改正】先の参院選や最近の世論調査を見ても、国民の声は憲法改正の議論を前に進めよということだと思う。国会議員として国民的意識の高まりは無視できない。憲法改正を私自身の手で成し遂げていくという考えには全く揺らぎないが、改憲のスケジュールは期限ありきではない。通常国会の憲法審査会で与野党の枠を超えて、国民投票法の改正、憲法改正原案の策定を加速させたい。
3.【桜を見る会】桜を見る会の個々の招待者については、個人に関する情報であるため、招待されたかどうかも含め回答を差し控えている。桜を見る会について、国民の皆さまから様々なご批判があることは十分承知している。世論調査の結果も謙虚に受け止め、今後も丁寧に対応したい。
4.【社会保障改革】全ての世代が安心できる社会保障制度へと改革する。これが本年、内閣の最大のチャレンジだ。70歳までの就労機会の確保、労働制度や年金制度の改革について、通常国会に法案を提出する。医療についても、年齢にかかわらず一定以上の所得がある方に応分の負担をいただくことで、現役世代の負担上昇を抑える。高齢者の実態などを踏まえて検討し、夏までに成案を得たい。
5.【2020年】本年の干支(えと)は「庚子(かのえね)」。ネズミは十二支のトップバッターで、新しい芽が伸び始める年と言われる。「庚」には、これまでの継承の上に思い切って改革していくという意味が込められている。庚子はこれまでも節目の年になってきた。60年前は日米安全保障条約が改定された。日本は東西冷戦を乗り越え、平和と繁栄を享受してきた。日米同盟は、その後の時代を切り開くものとなった。
6.【拉致問題】東アジアの安全保障環境がかつてない厳しい状況の下、日米、日米韓の緊密な連携、ロシアや中国との協力関係を築くことは極めて重要。北朝鮮と日朝平壌宣言に基づいて諸問題を解決し、不幸な過去を清算して国交正常化するとの方針も揺らがない。最も重要な拉致問題の早期解決に向け、金正恩(キムジョンウン)(朝鮮労働党)委員長と条件無しで直接向き合う考えだ。
7.【東京五輪・パラリンピック】日本全体が大きなエネルギーを発するような大会にしたい。カギはホストタウン。全国のホストタウンの皆さんに、それぞれの役割を果たしていただき、それぞれの地域で交流の輪を広げ、オリンピックを全国的な盛り上がりにつなげていきたい。


 さて、この年頭会見を毎日新聞(以下、「毎日」)、「朝日」はどのように論じたのか。
まず、「毎日」は、「安倍晋三首相が伊勢神宮に参拝し、年頭の記者会見を行った。自民党総裁としての任期はあと1年9カ月となった。首相は『4選』を否定しており、長期政権は仕上げの段階に入っている。会見では首相がその点をどう語るかがポイントだった。」、と始める。
「毎日」の指摘は次のもの。
(1)首相が会見冒頭に強調したのは、東京五輪・パラリンピックへの期待と、「新時代を切り開く1年」にするとの意気込みだ。そのうえで、全世代型社会保障改革を「最大のチャレンジ」と位置づけた。しかし、今年の通常国会に政府が提出する関連法案は、年金などの給付水準を抑え、高齢者にも相応の負担を求める保険財政のやり繰りが中心となる見通しだ。人口減少と正面から向き合い、将来世代に活力を与える新時代のビジョンにはなっていない。
(2)史上最長の通算9年目に突入しながら、国民の将来不安は変わらず、成果に乏しいのが現状だ。これでは仕上げの道筋も見えてこない。
(3)憲法改正に関しては記者からの質問を受ける形で「私自身の手で成し遂げたい」と改めて意欲を示した。政権のレガシー(遺産)にしたい思いもあるのかもしれない。だが、首相在任中に本気で改憲を実現したいなら、野党を巻き込んだ国民的な議論が必要になる。与野党対立の極まった国会では、改憲手続きを定めた国民投票法改正案の審議すら2年近く棚上げ状態にある。
(4)首相がまず取り組むべきは「安倍1強」下で機能不全が指摘される立法府の立て直しだ。国会を軽んじる姿勢から改めなければならない。
(5)首相は海上自衛隊の中東派遣について、国会でほとんど議論しないまま昨年末に閣議決定した。会見で予定通り派遣する考えを示したが、中東情勢が緊迫する中でなぜ派遣が必要なのか。与野党で徹底的に議論する必要がある。
(6)「桜を見る会」の問題も通常国会で議論すべき重要なテーマだ。しかし、会見で首相は記者の質問に具体的な説明はせず、「今後も丁寧に対応してまいりたい」と述べるにとどまった。


 一方、「朝日」は、「政権の取り組みのアピールや自らが意欲を示す改憲については滔々と語る一方、『桜を見る会』をめぐる質問にはほとんど答えない。説明責任に真摯に向き合おうとしない安倍首相の姿勢は、年が改まっても変わっていないと言わざるをえない。」、と断じる。
 「朝日」の指摘は次のもの。
(1)首相がきのう、年頭の記者会見を行った。夏に迫った東京五輪・パラリンピックの準備に万全を期すとともに、全ての世代が安心できる全世代型社会保障の実現を内閣の「最大のチャレンジ」と位置づけた。
(2)米国とイランの軍事衝突の懸念が強まる中東情勢については、冒頭発言で取り上げた。「さらなるエスカレーションは避けるべきで、緊張緩和のための外交努力を尽くすことを求める」と、すべての関係者に呼びかけたのは当然だ。ただ、日本政府の反応は鈍くはなかったか。米軍によるイランの司令官殺害は3日。フランス、ドイツなどが早々に関係国の自制を促す声を上げるなか、政府の公式見解はきのうの首相発言まで示されなかった。米国の同盟国でありながら、イランとも友好関係を保つ日本は、両者の「仲介」に努めてきたのではなかったか。今こそ、戦争回避のための知恵と行動が問われる局面だ。首相はきのう「日本ならではの外交」を粘り強く続けると語った。言葉だけに終わらせてはいけない。
(3)首相は同時に、中東海域への自衛隊派遣に変わりがないことも表明した。昨年末の閣議決定時から現地情勢は大きく変化したのに、新たなリスクをどう判断し、どう備えるのかの説明は一切なかった。このまま既定路線を突き進むのは許されない。
(4)改憲については、記者の質問に答えて持論を展開した。「私自身の手で成し遂げるという考えに全く揺らぎはない」と強調、今年の通常国会で原案の策定を加速させたいと述べた。しかし、その前提として語った、改憲へ国民的意識が高まっているという現状認識は、実態と明らかに乖離している。
(5)対照的だったのが、桜を見る会の質問に対する素っ気ない対応だ。オーナー商法で行政指導を受けたジャパンライフの元会長が首相の推薦枠で招待されたのではないかという指摘に対し、これまで同様、個人情報を理由に回答を拒否した。


 こうして、「朝日」は、最後を『世論の批判を『謙虚に受け止め、今後も丁寧に対応する』という発言もあった。とはいえ、森友・加計問題を振り返れば、首相の『謙虚』『丁寧』を額面通りには受け取れない。『いや、違う』というのであれば、首相は今年こそ、自らに不都合なテーマについても、逃げずに正面から説明を尽くすべきだ。」、とまとめる。


 どうやら、両社の見解は、「史上最長の通算9年目に突入しながら、国民の将来不安は変わらず、成果に乏しいのが現状だ。これでは仕上げの道筋も見えてこない。首相がまず取り組むべきは『安倍1強』下で機能不全が指摘される立法府の立て直しだ。国会を軽んじる姿勢から改めなければならない。野党の求める審議を拒み、説明責任に背を向けた前国会の繰り返しにしてはならない。」、だと読み取れる。
気づかされるのは、森友・加計問題や桜を見る会のことを自らが引き起こしながら、公の場で「世論の批判を謙虚に受け止め、今後も丁寧に対応する」、と不遜にも言い切ってしまう人間としての精神構造のあり方である。




by asyagi-df-2014 | 2020-01-12 06:17 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

2020年1月4日の朝、「激しくきしむ音」の正体を静かに考えてみる。

 2020年1月4日の朝、共同通信の47NEWSは、今年も「検証」の材料を提供してくれる。
 今朝も、沖縄タイムスは「[後退する民主政治]相互抑制の機能高めよ」(2020年1月4日)、西日本新聞は「2020政治展望 この国のかたち問い直せ」(2020年1月3日)、と社説で論評した。
沖縄タイムス(以下、「タイムス」)は、「世界の多くの国で民主主義が後退し、強権政治が台頭している。不平等の拡大、排外主義のまん延、フェイクニュースのはんらん、分断をあおる政治手法。欧米の自由民主主義(リベラル・デモクラシー)を掲げる国々も、将来展望が描けず混迷を深めている。日本はどうか。米英などに比べ安定しているように見えるが、憲政史上最長の政権の下で、議会制民主主義の空洞化は深刻だ。」、と始める。
 西日本新聞(以下、「西日本」)は、「この国を支える屋台骨が揺らぎ、激しくきしむ音が聞こえるかのようだ。公正・公平であるべき行政の不正が後を絶たない。国会の行政監視は機能せず、政治不信は募るばかりだ。2度目の東京五輪とパラリンピックを迎える今年は戦後75年の節目でもある。私たちはどんな国づくりを目指すのか。この国のかたちを問い直し、国民的合意を踏まえて将来のグランドデザインを描く年としたい。地に落ちた感のある政治の信頼回復こそ、その大前提となる。」、と切り口を示す。


 どうやら、2社の主張は、2020年は世界にとってもも日本にとっても、「世界の多くの国で民主主義が後退し、強権政治が台頭している。不平等の拡大、排外主義のまん延、フェイクニュースのはんらん、分断をあおる政治手法。」(「タイムス」)との状況下の中で、将来のグランドデザインを描く年としなければならない、ということにある。そして、その根本には、「地に落ちた感のある政治の信頼回復こそ」(「西日本」)が必要ということにある。
日本の政治状況を「激しくきしむ音」、と表現する「西日本」と同様に、「タイムス」は、日本の今を次のように捉える。
(1)日本はどうか。米英などに比べ安定しているように見えるが、憲政史上最長の政権の下で、議会制民主主義の空洞化は深刻だ。形式的に立法・行政・司法の三権分立が確立しているものの、運用実態を見ると、首相官邸に権力が集中し、三権相互のチェック・アンド・バランスが著しく失われてしまった。国政与党の自民党は安倍政権を擁護するだけで、かつての自民党のようなチェック機能を果たしていない。あの活力は一体どこに行ってしまったのか。
(2)官僚機構もわが身の安泰を優先し、官邸への忖度(そんたく)に明け暮れている。公文書を偽造したり、不都合な事実を隠蔽(いんぺい)するため廃棄したり、統計データを不正処理したり。政策エリートのモラル崩壊としかいいようがない。
(3)安倍政権はダメージ・コントロールが巧みだ。だが目立つのは、疑惑の議員をトカゲの尻尾切りのように早期に辞めさせ、問題になった施策事業を検証もなく取りやめるなど、「臭い物にフタ」をする手法である。
 だから、「タイムス」は、「一に情報開示、二に説明責任。それがきちんと守られなければ権力の専横を防ぐことはできない。」、と断じる。
 この上で、「タイムス」は、この場で、安倍晋三政権の手法とその影響をを明確に捉える。
(1)法は解釈され運用されることで効力を発揮する。法の条文を変えなくても、解釈の変更によって、実質的改正の効果を手に入れることができる。安倍政権は、解釈変更という手法を多用してきた。集団的自衛権の行使容認がそうだ。
(2)辺野古埋め立てについても、政府は県との調整を行わず、一方的な法解釈でコトを推し進めてきた。
(3)民主政治の変調は、地方自治体にも押し寄せている。
(4)宮古島市は、住民訴訟を起こした市民6人に対し、市の名誉を傷つけたとの理由で、損害賠償を求め提訴する議案を議会に提出した。石垣市議会では、自治基本条例を廃止する議案が十分な議論もないまま議会に提出された。宮古島市は批判を受けて議案を撤回、石垣市議会は廃止条例案を否決した。いずれも「権力の不当な圧力」だと強い批判を浴びた。
 2020に何をしなければならいのか。
 「タイムス」の主張は、次のようにに示される。
「民主主義は『民意に基づく統治』であり、立憲主義は憲法によって権力を縛る考え方である。両者は必ずしも一致しない。両者のバランス上に成立する『立憲民主主義』をどうやってつくり直していくか。民主主義によって民主主義を死なせるようなことがあってはならない。『炭鉱のカナリア』のように変化を敏感に受け止め、警鐘を鳴らしていく作業が求められる。」


 一方、「西日本」は、2020に何をしなければならないかについて、「2度目の東京五輪とパラリンピックを迎える今年は戦後75年の節目でもある。私たちはどんな国づくりを目指すのか。この国のかたちを問い直し、国民的合意を踏まえて将来のグランドデザインを描く年としたい。地に落ちた感のある政治の信頼回復こそ、その大前提となる。」、とその見解を示す。
 「西日本」、また、当然のように日本の今を次の表に把握する。
(1)昨年は「官の不正」に始まり、「政治不信」で暮れた1年だった。年明け早々に厚生労働省の毎月勤労統計でデータ操作が繰り返された「統計不正」が問題化する。雇用保険の過少給付などに波及し、政府予算案を組み替え、閣議決定もやり直す前代未聞の事態となった。
(2)障害者雇用数の水増し、森友学園問題を巡る財務省の決裁文書改ざん、イラクに派遣された陸上自衛隊の日報隠蔽(いんぺい)など、ここ数年続発する不正はまさに底なしの様相である。極め付きは昨年末に発覚した「かんぽ不正」処分案を巡る総務事務次官の情報漏えいだろう。
(3)昨年の臨時国会で野党が追及した「桜を見る会」の疑惑は、安倍晋三首相率いる長期政権のひずみを露呈するとともに、公文書管理と情報公開、政治家の説明責任や「政と官」の関係など民主主義の土台の在り方を鋭く問い掛けている。
(4)官の不正や暴走が、手を替え品を替え繰り返される背景に、その場しのぎの対応でお茶を濁し、責任の所在を曖昧にしたまま、うやむやにする構造的な問題が巣くってはいないか。それは有権者の付託を受け結果責任を厳しく問われるべき政治の弛緩(しかん)であり、国会の怠慢と言っても過言ではあるまい。
(5)与野党を問わず政治に強く求めたいのは、そんな現状認識と謙虚な反省である。
 また、「西日本」は、「信なくば立たず」、と2020の政治を捉える。
(1)今年の政治は、任期満了まで折り返しの2年を切った衆院の解散・総選挙を意識した展開となるだろう。安倍首相の自民党総裁任期は2021年9月までであり、その翌月は衆院議員の任期が満了する。首相は昨年12月の記者会見で「国民の信を問うべき時が来たと考えれば、ちゅうちょしない」と述べた。
(2)これに対し、野党は立憲民主党の枝野幸男代表が国民民主党の玉木雄一郎代表ら共同会派を組む政党・議員に合流を呼び掛けている。先の臨時国会で積み重ねた共同会派の成果を足場に「強い野党第1党」をつくろうという試みだ。
(3)首相は野党結集の状況や「ポスト安倍」候補の動向、憲法改正論議の進展を勘案しながら解散のタイミングを計ることになろう。首相に注文したいのは、いたずらに政局の駆け引き材料として解散風を吹かせないことだ。野党も解散ムードに浮足立つことは厳に慎んでほしい。
(4)相変わらず改憲に意欲を示す首相だが、ここは国民の賛否が分かれ、連立与党の公明党も慎重な改憲に長期政権の体力を消耗する局面ではあるまい。
 最後に、「西日本」は、安倍晋三政権に、次のように突きつける。
「『信を問う』前に『信なくば立たず』である。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡る政界汚職で国民は一段と政治不信を募らせている。政治の信頼回復と行政の不正根絶にこそ、首相は全力を尽くすべきだ。野党も政権の疑惑を追及する一方、国会の行政監視機能を強める政策立案で現実的な政権担当能力を示してほしい。少子高齢化と人口減少、東京一極集中と地方の衰退、持続可能な社会保障制度と将来世代に付けを回さない財政再建など、深刻な課題だらけである。不信や疑惑にまみれ、たじろいでいる場合ではない。政治が国民の信頼とともに活力を取り戻し、本来の役目を果たす時である。」


 実は、「激しくきしむ音」とは、この国の崩壊する音である。
もしかしたら、冷静に分析などしている暇などないのかもしれない。
 崩壊する音の下では、自らの生き残りをかけた輩たちが、屍を積み重ねる準備をしているのだから。




by asyagi-df-2014 | 2020-01-09 07:12 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

業原信郎で「ゴーン出国を」を捉える。

 YAHOOニュ-スは2020年1月1日、郷原信郎(郷原総合コンプライアンス法律事務所)弁護士の「ゴーン氏出国は『単なる刑事事件』の被告人逃亡ではない~日本の刑事司法は、国際的な批判に耐えられるのか」、と伝えた。
この記事から、「ゴーン出国」を考える。


(1)産自動車の元会長のカルロス・ゴーン氏が、海外への渡航禁止の保釈条件に違反して日本を出国し、トルコ経由でレバノンに入国した。
(2)2018年11月19日、羽田空港到着した直後の「衝撃の逮捕」以降、検察捜査の杜撰さ、重大な問題を指摘続けてきた私としては、ゴーン氏が出国したレバノンから日本に身柄が引き渡される見込みがなく、旧来の特捜事件での「人質司法」の悪弊の中で、ゴーンの早期保釈を獲得した弁護団の努力や、検察側の主張を排斥して保釈を許可した裁判所の英断があったのに、それらが裏切られる結果になってしまったのは、誠に残念だ。
(3)しかし、被告人のゴーン氏が保釈条件に違反して出国して「逃亡」したことから、そもそも裁判所が保釈を認めるべきではなかったと問題と単純化すべきではない。ゴーン氏の事件は、極めて特異な経過を辿ってきた、特異な事件であり、一般的な刑事事件と同様に扱うのは誤りだ。
(4)ゴーン氏の事件をめぐる経過を、改めて振り返ってみれば、それは明らかであろう。(5)逮捕直後は、検察が金融商品取引法違反の容疑事実とされた「役員報酬の過少申告」の内容を全く明らかにしなかったため、隠蔽された報酬は「海外での自宅の提供」だとか、SAR(株価連動型報酬)だとか、それによって日本で税を免れていたとか、マスコミが勝手な憶測報道を続けていた。そして、逮捕から5日後になって、その逮捕容疑が実際に支払われた役員報酬ではなく、退任後の支払い予定の「未払い報酬」に過ぎなかったという衝撃の事実が明らかになった(【ゴーン氏事件についての“衝撃の事実” ~“隠蔽役員報酬”は支払われていなかった】)。勾留満期には逮捕事実の「2015年までの5年間」の有価証券報告書虚偽記載で起訴し、その逮捕事実と同じ「直近3年分」で再逮捕するという、従来の検察の常識からも逸脱したやり方で身柄拘束を継続しようとしたが、東京地裁が、それまでの特捜事件ではあり得なかった勾留延長請求の却下を決定(【ゴーン氏勾留延長却下決定が検察に与える衝撃 ~根本原因は“不当な再逮捕”にある】)。それに対して、延長請求却下の翌日に、当初は「形式犯」だけの立件しか予定していなかった検察は無理やりサウジアラビア・ルートを含む特別背任を立件して再逮捕した(【ゴーン氏「特別背任」での司法取引に関する “重大な疑問”】)。
(6)まさに、「衝撃」の連続だったゴーン氏の事件の経過を見るだけでも、この事件がいかに異常なものだったのかはわかるであろう。
(7)そして、検察は、無理に立件したサウジアラビア・ルート、オマーン・ルートについては、日産から中東への送金が事業目的に見合うものであったのかどうかという「特別背任罪の成否の核心」に関する事実について、中東での証拠収集がほとんどできていないまま日産関係者の供述だけで特別背任で逮捕するという、これまた従来の検察の常識に反するやり方を強行し(【ゴーン氏「オマーン・ルート」特別背任に“重大な疑問”】)、逮捕後に、中東各国への捜査共助要請をして証拠を収集しようとするという有様だった。
これらの捜査は、ゴーン氏逮捕の際に社長として記者会見を行い、「ゴーン氏の不正への憤り」を露わにした西川氏を中心とする日産経営陣の全面協力によって行われたが、その西川氏も、退任後に支払い予定の「未払いの報酬」に深く関わっていることが明らかになり、さらに、自分自身の報酬に関する不正が明らかになって引責辞任に追い込まれた。
(8)ゴーン氏の事件は、このような「異常な事件」であり、凡そまともな刑事事件ではないことは、いずれ刑事公判で明らかになるはずであった。しかし、その公判は一体いつ始まりいつ終わるのか、全く見通しがつかない。金商法違反については、来年4月に初公判が開かれる可能性が出てきていたが、中東ルートの特別背任については検察の証拠開示すら十分に行われおらず(もともと中東に関する証拠がほとんどないまま起訴しているのであるから、開示がなかなかできないのも当然である)、いまだに初公判の見通しすら立っていない。
(9)こういう状況で、ゴーン氏は、保釈条件として妻との接触を9か月もの間禁止されたまま日本国内に公判対応のためだけに留め置かれ、いつになったら接触禁止が解除されるかもわからないのである。しかも、このような明らかに異常な捜査経過の問題、長期間の身柄拘束や保釈条件による人権侵害の問題などを自らの言葉で世の中に訴えようとしても、当初の保釈後に記者会見をしようとした途端にオマーン・ルートの特別背任容疑で再逮捕されたことがあって、また逮捕されるのではないかとの恐怖から記者会見すらできない。弁護団が予定主張記載書面を公開したりしてゴーン氏の主張を公表しても、日本のマスコミは殆ど報じない。
(10)こういう「絶望的な状況」に置かれていたゴーン氏が、何者かの援助によって「国外脱出が可能」ということを知り、15億円の保釈保証金を失ってでもその可能性に賭けてみようとしたのは、理解できないことではない。日本人が北朝鮮や中国で不当に身柄を拘束された場合と同じように考えたとすれば、何とか国外に脱出しようと考えるのは、普通の人間であれば自然なことと言えるのではないだろうか。
(11)レバノンに入国したゴーン氏は、「私は有罪が前提とされ、差別がまん延し、基本的な人権が無視されている不正な日本の司法制度の人質ではなくなります」「私は正義から逃げたわけではありません。不公正と政治的迫害から逃れたのです。私は不公正と政治的迫害から逃れました。ようやくメディアと自由にコミュニケーションができるようになりました。来週から始めるのを楽しみにしています」との声明を出している。
(12)ゴーン氏は、「レバノンに逃亡した被告人」の身に甘んじるつもりはないのであろう。日本の検察が逮捕・起訴した事件がいかに不当で異常なものか、日本でいかに非人道的な扱いを受けたのか、ということに関して、国際社会への発信を徹底した行うことで、自ら潔白を訴え名誉回復を図るであろう。
(13)検察としては、保釈を請求した弁護人や、保釈を許可した裁判所を批判したり、恨んだりしている場合ではない。検察が起訴した被告人が海外に逃亡し、レバノンに所在することが明らかになっているのであるから、そのレバノンに対して、外務省当局の協力の下に、被告人のゴーン氏の引き渡しをとことん求めるべきであろう。犯罪人引渡し条約が締結されていなくも、本当に、ゴーン氏を起訴した罪状が悪質・重大なものであり、ゴーン氏に対する日本での扱いが不当なものではないと「確信を持って」言えるのであれば、国際社会に対してそれを堂々と主張し、犯罪者を匿うレバノンを批判すればよいはずだ。国際世論に訴えて、レバノンに身柄の引き渡しへの協力を求めることは不可能ではないであろう。
(14)問題は、「ゴーン氏事件」が、日本政府が逃亡犯罪人を匿う国に対する「当然の要請」として行えるような事件なのかどうか、である。
(15)「ゴーン氏事件」は、日本の検察・裁判所・司法マスコミの間では、「一つの刑事事件」であるかのように扱われてきた。そして、日本では多くの人がそう思っている。しかし、それが、果たして、国際社会から客観的に見た場合、そのような認識を持ってもらえる事件なのであろうか。ゴーン氏が主張するように、日産の日本人経営陣と経産省と検察とが結託して国際的なカリスマ経営者を日産自動車から追放し、さらに犯罪者として葬ろうとした「異常な出来事」にしか見えないかもしれない。今年4月に、5年に一度開催される刑事司法分野における国連最大規模の国際会議である「国連犯罪防止司法会議(コングレス)」が京都で開催される(京都コングレス)。日本で開催されるのは50年ぶりであり、法務省は、ホームページに、「開催まで〇日」などと、オリンピック並みの扱いで開催をアピールしている。
(16)日本の法務・検察当局は、ゴーン氏事件を契機に日本の刑事司法に対する国際社会からの批判が高まる中、コングレスに集まる海外の刑事司法関係者に納得できる説明・反論が行えるのであろうか。


 どうやら、核心は、「問題は、『ゴーン氏事件』が、日本政府が逃亡犯罪人を匿う国に対する『当然の要請』として行えるような事件なのかどうか、である。」、ということにある。


以下、業腹信郎のFBの引用。



ゴーン氏出国は「単なる刑事事件」の被告人逃亡ではない~日本の刑事司法は、国際的な批判に耐えられるのか-郷原信郎 | 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士-2019年1月1日
以下、記事の掲載。


(1)産自動車の元会長のカルロス・ゴーン氏が、海外への渡航禁止の保釈条件に違反して日本を出国し、トルコ経由でレバノンに入国した。
(2)2018年11月19日、羽田空港到着した直後の「衝撃の逮捕」以降、検察捜査の杜撰さ、重大な問題を指摘続けてきた私としては、ゴーン氏が出国したレバノンから日本に身柄が引き渡される見込みがなく、旧来の特捜事件での「人質司法」の悪弊の中で、ゴーンの早期保釈を獲得した弁護団の努力や、検察側の主張を排斥して保釈を許可した裁判所の英断があったのに、それらが裏切られる結果になってしまったのは、誠に残念だ。
(3)しかし、被告人のゴーン氏が保釈条件に違反して出国して「逃亡」したことから、そもそも裁判所が保釈を認めるべきではなかったと問題と単純化すべきではない。ゴーン氏の事件は、極めて特異な経過を辿ってきた、特異な事件であり、一般的な刑事事件と同様に扱うのは誤りだ。
(4)ゴーン氏の事件をめぐる経過を、改めて振り返ってみれば、それは明らかであろう。(5)逮捕直後は、検察が金融商品取引法違反の容疑事実とされた「役員報酬の過少申告」の内容を全く明らかにしなかったため、隠蔽された報酬は「海外での自宅の提供」だとか、SAR(株価連動型報酬)だとか、それによって日本で税を免れていたとか、マスコミが勝手な憶測報道を続けていた。そして、逮捕から5日後になって、その逮捕容疑が実際に支払われた役員報酬ではなく、退任後の支払い予定の「未払い報酬」に過ぎなかったという衝撃の事実が明らかになった(【ゴーン氏事件についての“衝撃の事実” ~“隠蔽役員報酬”は支払われていなかった】)。勾留満期には逮捕事実の「2015年までの5年間」の有価証券報告書虚偽記載で起訴し、その逮捕事実と同じ「直近3年分」で再逮捕するという、従来の検察の常識からも逸脱したやり方で身柄拘束を継続しようとしたが、東京地裁が、それまでの特捜事件ではあり得なかった勾留延長請求の却下を決定(【ゴーン氏勾留延長却下決定が検察に与える衝撃 ~根本原因は“不当な再逮捕”にある】)。それに対して、延長請求却下の翌日に、当初は「形式犯」だけの立件しか予定していなかった検察は無理やりサウジアラビア・ルートを含む特別背任を立件して再逮捕した(【ゴーン氏「特別背任」での司法取引に関する “重大な疑問”】)。
(6)まさに、「衝撃」の連続だったゴーン氏の事件の経過を見るだけでも、この事件がいかに異常なものだったのかはわかるであろう。
(7)そして、検察は、無理に立件したサウジアラビア・ルート、オマーン・ルートについては、日産から中東への送金が事業目的に見合うものであったのかどうかという「特別背任罪の成否の核心」に関する事実について、中東での証拠収集がほとんどできていないまま日産関係者の供述だけで特別背任で逮捕するという、これまた従来の検察の常識に反するやり方を強行し(【ゴーン氏「オマーン・ルート」特別背任に“重大な疑問”】)、逮捕後に、中東各国への捜査共助要請をして証拠を収集しようとするという有様だった。
これらの捜査は、ゴーン氏逮捕の際に社長として記者会見を行い、「ゴーン氏の不正への憤り」を露わにした西川氏を中心とする日産経営陣の全面協力によって行われたが、その西川氏も、退任後に支払い予定の「未払いの報酬」に深く関わっていることが明らかになり、さらに、自分自身の報酬に関する不正が明らかになって引責辞任に追い込まれた。
(8)ゴーン氏の事件は、このような「異常な事件」であり、凡そまともな刑事事件ではないことは、いずれ刑事公判で明らかになるはずであった。しかし、その公判は一体いつ始まりいつ終わるのか、全く見通しがつかない。金商法違反については、来年4月に初公判が開かれる可能性が出てきていたが、中東ルートの特別背任については検察の証拠開示すら十分に行われおらず(もともと中東に関する証拠がほとんどないまま起訴しているのであるから、開示がなかなかできないのも当然である)、いまだに初公判の見通しすら立っていない。
(9)こういう状況で、ゴーン氏は、保釈条件として妻との接触を9か月もの間禁止されたまま日本国内に公判対応のためだけに留め置かれ、いつになったら接触禁止が解除されるかもわからないのである。しかも、このような明らかに異常な捜査経過の問題、長期間の身柄拘束や保釈条件による人権侵害の問題などを自らの言葉で世の中に訴えようとしても、当初の保釈後に記者会見をしようとした途端にオマーン・ルートの特別背任容疑で再逮捕されたことがあって、また逮捕されるのではないかとの恐怖から記者会見すらできない。弁護団が予定主張記載書面を公開したりしてゴーン氏の主張を公表しても、日本のマスコミは殆ど報じない。
(10)こういう「絶望的な状況」に置かれていたゴーン氏が、何者かの援助によって「国外脱出が可能」ということを知り、15億円の保釈保証金を失ってでもその可能性に賭けてみようとしたのは、理解できないことではない。日本人が北朝鮮や中国で不当に身柄を拘束された場合と同じように考えたとすれば、何とか国外に脱出しようと考えるのは、普通の人間であれば自然なことと言えるのではないだろうか。
(11)レバノンに入国したゴーン氏は、「私は有罪が前提とされ、差別がまん延し、基本的な人権が無視されている不正な日本の司法制度の人質ではなくなります」「私は正義から逃げたわけではありません。不公正と政治的迫害から逃れたのです。私は不公正と政治的迫害から逃れました。ようやくメディアと自由にコミュニケーションができるようになりました。来週から始めるのを楽しみにしています」との声明を出している。
(12)ゴーン氏は、「レバノンに逃亡した被告人」の身に甘んじるつもりはないのであろう。日本の検察が逮捕・起訴した事件がいかに不当で異常なものか、日本でいかに非人道的な扱いを受けたのか、ということに関して、国際社会への発信を徹底した行うことで、自ら潔白を訴え名誉回復を図るであろう。
(13)検察としては、保釈を請求した弁護人や、保釈を許可した裁判所を批判したり、恨んだりしている場合ではない。検察が起訴した被告人が海外に逃亡し、レバノンに所在することが明らかになっているのであるから、そのレバノンに対して、外務省当局の協力の下に、被告人のゴーン氏の引き渡しをとことん求めるべきであろう。犯罪人引渡し条約が締結されていなくも、本当に、ゴーン氏を起訴した罪状が悪質・重大なものであり、ゴーン氏に対する日本での扱いが不当なものではないと「確信を持って」言えるのであれば、国際社会に対してそれを堂々と主張し、犯罪者を匿うレバノンを批判すればよいはずだ。国際世論に訴えて、レバノンに身柄の引き渡しへの協力を求めることは不可能ではないであろう。
(14)問題は、「ゴーン氏事件」が、日本政府が逃亡犯罪人を匿う国に対する「当然の要請」として行えるような事件なのかどうか、である。
(15)「ゴーン氏事件」は、日本の検察・裁判所・司法マスコミの間では、「一つの刑事事件」であるかのように扱われてきた。そして、日本では多くの人がそう思っている。しかし、それが、果たして、国際社会から客観的に見た場合、そのような認識を持ってもらえる事件なのであろうか。ゴーン氏が主張するように、日産の日本人経営陣と経産省と検察とが結託して国際的なカリスマ経営者を日産自動車から追放し、さらに犯罪者として葬ろうとした「異常な出来事」にしか見えないかもしれない。今年4月に、5年に一度開催される刑事司法分野における国連最大規模の国際会議である「国連犯罪防止司法会議(コングレス)」が京都で開催される(京都コングレス)。日本で開催されるのは50年ぶりであり、法務省は、ホームページに、「開催まで〇日」などと、オリンピック並みの扱いで開催をアピールしている。
(16)日本の法務・検察当局は、ゴーン氏事件を契機に日本の刑事司法に対する国際社会からの批判が高まる中、コングレスに集まる海外の刑事司法関係者に納得できる説明・反論が行えるのであろうか。


 どうやら、核心は、「問題は、『ゴーン氏事件』が、日本政府が逃亡犯罪人を匿う国に対する『当然の要請』として行えるような事件なのかどうか、である。」、ということにある。




by asyagi-df-2014 | 2020-01-08 07:19 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

2020に、思いを込めること。-沖縄タイムスと琉球新報の社説から-

 沖縄から、何を受け取ることができるのか。
 2020もまた、このことの検証を続けることになる。
2020年1月1日の社説を、沖縄タイムス(以下、「タイムス」)は「[2020 新年に]私たちは絶対諦めない」、琉球新報(以下、「新報」)は「新年を迎えて 民主主義が機能する国に」、とそれぞれが論評した。


 例えば、「新報」は、「2020年を迎えた。県民が主体性を発揮し、大きく揺らいでいる民主主義の土台を再構築する年にしたい。」、と書き出す。
やはり、安倍晋三政権下の日本がすでに壊れているという認識から、再生(出発)をする必要があるとの主張である。
「新報」は、日本が壊れているとはどういうことなのかという根拠を、次のように示す。
(1)衆院で政権党が絶対安定多数を占める国会は政府の追認機関と化した感がある。チェック機能が十分に働いていない。裁判官は良心に従い職権を行使する独立した存在だが、国におもねるような司法判断が目立つ。三権分立は半ば機能不全に陥っている。安倍晋三首相による政権が長期に及び、強権を振るえる体制が築かれたことが背景にあるとみられる。
(2)米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設では、国民の権利利益の救済を目的とする行政不服審査制度を沖縄防衛局が利用した。福岡高裁那覇支部は国も利用できると判断し、県の訴えを却下している。国に追随する姿勢があらわになった。権力の乱用を防ぎ国民の権利を保障する仕組みが十分に機能していない。そのしわ寄せが、日本の末端に位置する沖縄を直撃している。
(3)昨年2月の県民投票では投票者の7割超が辺野古の埋め立てに反対した。本来なら速やかに他の選択肢を検討すべきだが、沖縄の民意は完全に無視された。これは民主主義の正常な在り方ではない。国民の意思に従って政治を行うという基本がなおざりにされている。
(4)現在の政府出先機関は県民の意を体して中央の考えとは異なる意見を本省に具申することがあるのだろうか。それどころか、沖縄防衛局などは、多くの民意に逆行する新基地の建設を推し進めている。


 また、沖縄県がなぜこのように闘い続けることができるのかの一端を、「自らの手で権利を勝ち取ってきた歴史」(「新報」)として示す。


(1)沖縄は戦後、米国の施政下に置かれた。抑圧された民衆が人権擁護と自治権拡大を粘り強く求め、主席公選をはじめ自らの手で権利を勝ち取ってきた歴史がある。
(2)1972年の日本復帰に先立ち、70年に実施された国政参加選挙もその一つだ。当初、政府や自民党の間では、表決権のない代表にとどめようとする動きがあり、日本政府沖縄事務所長だった岸昌(さかえ)氏は、表決権を含めた完全な権能を与えよ、という見解を読売新聞紙上で発表した。これが、実現に大きな影響を与えたといわれる。当時の木村俊夫官房長官は「施政権下にないところの代表に本土議員と同じ資格を与えるわけにはいかないのではないか」と否定的だった。その中で現地の責任者が沖縄の人々の権利を保障するよう表だって求めた事実は興味深い。


 「新報」は、自らの2020の意味を、「戦後初の国政参加から50年たつが、沖縄の置かれた状況は、自らの権利を粘り強く主張し続けなければならないという点で、当時と変わってはいない。大切なのは主体性を失わないことだ。平和を希求しつつ、自分自身の手で未来を切り開いていかなければならない。そのためにも、今まさに、日本の民主主義が危機にひんしていることを沖縄から強く訴えていく必要がある。」、と指し示す。


 一方、「タイムス」は、「モノレール駅では大きなスーツケースを引いたり、買い物袋を両手に抱えたりした外国人観光客の家族連れが目立つ。国際通りでは、クルーズ船から下りた多くの外国人観光客の姿が見られる。平和であればこその光景である。沖縄のことわざ『イチャリバチョーデー(一度会ったら皆兄弟)』は、世界で吹き荒れる排外主義や不寛容とは対極に位置する『共生の思想』である。沖縄滞在を存分に楽しんでほしいと願わずにはいられない。」、と沖縄の平和の意味を語りかける。
また、「2020年の新しい年が明けた。沖縄は観光客1千万人時代の新しいステージに入った。沖縄を訪れる観光客の3人に1人は外国人ということにあらためて驚かされる。」(「タイムス」)、とも。
 ただ、「明」としての沖縄の平和のイメージと辺野古新基地建設の実際を「暗」として触れる。
(1)明があれば暗もある。辺野古新基地建設問題である。長年、多くの県民の心に重苦しくのしかかっている。米軍キャンプ・シュワブゲート前での座り込みは2千日を超えた。機動隊に何度排除されても非暴力の抵抗を続けている。
(2)今年は沖縄戦から75年でもある。民意無視の政府への怒り、沖縄のことは沖縄が決めるというウチナーンチュとしての誇り、クヮンマガ(子や孫)のために再び戦場にしてはならない−抵抗運動を持続させているのはそんな強い決意からである。決して諦めることはない。
(3)私たちの先人は苦難の中にあっても寛容とユーモアを忘れず、豊かな芸能・文化を育んできた。「沖縄のチャップリン」と呼ばれた芸人、小那覇舞天さん(1897〜1969年)は沖縄戦が終わった後「命(ぬち)ぬ御(ぐ)祝事(すーじ)さびら(命のお祝いをしましょう)」と家族を失い沈みきった人びとの家に押しかけ、生き残った人たちに漫談や歌、踊りを披露した。笑いで傷付いた心を癒やしたのである。そんな有名、無名の先人に思いをはせることは私たちを励まし、勇気づける。抵抗する現場で代わる代わる歌や踊りで鼓舞するのはその精神を受け継いだものといえよう。


 「タイムス」は、最後に、辺野古新基地建設に関わって、次のことを明確にする。
(1)米軍普天間飛行場の一日も早い危険性除去のために新基地建設という政府の考えは破綻しているというほかない。
(2)防衛省は工期を当初の8年から約12年に大幅に見直す案を公表した。総工費も当初の2・7倍の約9300億円。大浦湾側に広がる軟弱地盤の改良工事のためである。水面下90メートルでの改良工事は例がない。工期と総工費はこれにとどまらない可能性が高い。
(3)普天間返還は「22年度またはその後」から30年代半ば以降にずれ込む。普天間の危険性の固定化である。責任は、既成事実をつくるため、なりふり構わず工事を強行している政府にある。
(4)公共工事としても問題だ。公共工事はいったん始めるとやめることが難しい。経済学でサンクコスト(埋没費用)との考えがある。投入した予算は回収することができない。これがサンクコストである。増大するばかりの膨大な事業費と完成時の効果を比較衡量すれば、着手したとしても傷口を広げる前に取りやめるのが得策なのである。
(5)民意は圧倒的だ。翁長雄志前知事が当選した14年以来、知事選と国政選挙はオール沖縄が12勝1敗。県民投票では反対が投票総数の7割を超えた。安倍晋三首相が「沖縄に寄り添う」なら新基地を断念し、普天間の閉鎖・返還の道こそを探るべきだ。
(6)今年最大の政治決戦は、6月の県議選だ。現有勢力は定数48(欠員2人)に対し与党26議席、野党20議席。玉城デニー知事を支持する与党が安定多数を維持することができるかどうかが最大の焦点だ。政府も県議選を重要視している。昨年12月末、企業経営者らが菅義偉官房長官の来県に合わせて那覇市内で会合を開き、引き締めを図った。
(7)首里城が昨年10月末焼失し、県民に大きなショックを与えた。今年は「再建元年」に位置付けられる。再建までは長い道のりをたどるはずである。県民主体の再建にするには県民の思いをすくい上げ、再建の過程そのものを公開して観光客を呼び込むような仕掛けが必要だ。


 今回も、「タイムス」と「新報」から、次のことを受け取る。

1.沖縄の民意は圧倒的である。だとしたら、日本政府は、新基地建設を断念し、普天間の閉鎖・返還の道を探るべきだということ。
2.安倍晋三政権下の日本がすでに壊れているという認識から、再生(出発)として、辺野古新新基地建設の断念と米国との新たな安全保障の枠組み作りを始めること。




by asyagi-df-2014 | 2020-01-02 07:30 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

伊藤詩織さん勝訴にも、捜査機関の『ブラックボックス』とは。

 2019年最後のニュースです。
 2020に向けて「伊藤詩織さんの事件は、日本の捜査機関の「ブラックボックス」問題を浮き彫りにした。」、ということについて、じっくり受け止めます。


YAHOOニュ-スが、弁護士ドッドコムの「伊藤詩織さん、ホテル側『重要証言』知らされず・・・捜査機関の『ブラックボックス』問題」を掲載しました。
弁護士ドッドコムの記事は、次のもの。
(1)ジャーナリストの伊藤詩織さんが、元TBS記者のジャーナリスト・山口敬之さんから性暴力被害にあったという訴えに対し、12月18日の東京地裁判決は、山口さんが合意のないまま性行為に及んだと認定した。
(2)山口さん側が控訴したが、伊藤さんは控訴審で新たに、ホテルの部屋に入る二人の姿を最後に見たドアマンの証言を提出する予定だという。 一体どうしてこんな重要な証拠が、今になって出てきたのだろうか。これには、捜査機関の「ブラックボックス」問題が関係している。
(3)伊藤さんは検察審査会で「不起訴相当」と議決され、2017年9月28日に民事訴訟を提起した。民事訴訟では、請求する側が請求の根拠となる主張と証拠を集めなければならない。被害者は事件が不起訴となった場合、記録の開示請求ができる。伊藤さんも検察審査会に申し立てする前に開示請求を行い、著書『Black Box』では「不起訴にしては多くの証拠を出してもらえた」と記している。
(4)代理人の西廣陽子弁護士によると、防犯カメラの解析結果、DNA対比結果、当日の衣類などの写真報告書、ホテル客室の宿泊記録や開錠記録などが開示され、民事訴訟で証拠として提出したという。一方で、防犯カメラ映像や供述調書などは「あるはず」の記録だが、開示されなかった。防犯カメラ映像は、裁判所を介して提出された。
(5)これらに加えて、請求で開示されず、伊藤さん側が存在することも知らなかった記録もある。それが冒頭で触れたドアマンの証言だ。
(6)民事訴訟は2019年10月7日、全ての審理が終了し結審した。その報道を受け、新たに、事件の起こったホテルのドアマンから、伊藤さんの支援団体を通じて連絡があった。そのドアマンは、警察から調書も取られていたという。伊藤さんはいう。「(調書を取り)ドアマンは捜査員から『これでいける』と言われていたが、それから何も連絡がなかった。裁判になったら、裁判所から呼ばれるんじゃないかと思っていたそうです。自分の調書が隠されてしまったのではないかと思い、支援団体のほうに連絡をくださったんですね。その方が、私たちを見た最後の人だったんです」
(7)代理人の村田智子弁護士も18日の会見で「不起訴になったときに刑事記録の謄写をしたが、その中には(ドアマンの調書が)含まれてなかったので、私たちのほうは(検察審査会でドアマンの調書が使われたかどうか)分からないんです」と話す。
(8)そもそも捜査権限のない一般人が証拠を集めようとしても限界がある。著書『Black Box』によれば、伊藤さんは検察審査会への申し立てにあたり、ホテルに対して陳述書を作成したいとお願いしたが、受け入れられなかった。
(9)不起訴事件で被害者が証拠を開示しても、全てが開示されるわけではなかった。このあたりのさじ加減は「ブラックボックス」だ。
(10)伊藤さんが感じた「ブラックボックス」はこれだけではない。検察審査会では、そもそもどのような証拠をもとに審査がなされたのか。議決以外の情報がなかった。伊藤さんが問い合わせたところ、出て来た文書は黒塗りだったという。伊藤さんは「なんのためにやったんだろうと思った」と吐露する。「どんな証拠や証言が採用されたのか、何を見て判断するのか全くわからない。私も証人として呼ばれなかった。不起訴相当の議決以外の情報がない。不透明な部分があるからこそ、なかなか解決できないのではないか」
(11)検察審査会法では、すでに議決があったときは、同じ事件について更に審査の申立をすることはできない規定があるため、一度「不起訴相当」と議決された伊藤さんは、この民事裁判の結果をもってしても、再び審査の申し立てをすることはできない。
(12)今後は検察官が再び事件に着手しない限り、刑事事件化されることはない。一度しかチャンスのない検察審査会でどのような審理がなされたのかわからず、民事訴訟を起こそうと不起訴事件記録の開示請求をしても、一部しか出てこない。刑事事件化を諦めた被害者にとって、あまりに酷な対応ばかりだ。被害者が納得できるよう、判断の根拠を説明すべきではないか。伊藤詩織さんの事件は、日本の捜査機関の「ブラックボックス」問題を浮き彫りにした。



by asyagi-df-2014 | 2019-12-31 18:00 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

都道府県警察の在り方を通して、沖縄の基地問題が問われる。

沖縄で日常的に行われている機動隊員による反対住民への排除についての判決が出された。
 このことに関して、沖縄タイムスは2019年12月16日、「東村高江の米軍ヘリパッド建設現場への警視庁機動隊の派遣は違法として、都民183人が当時の警視総監2人に派遣隊員の給与約2億8千万円の返還などを求めた訴訟の判決が16日、東京地裁であり、古田孝夫裁判長は原告の訴えを却けた。警視庁は判決を受け、『当方の主張が認められたものと認識している』とコメントを発表した。」、と報じている。
 東京新聞(以下、「東京」)は2019年12月24日、「沖縄の住民排除 警察への重い戒めだ」、とこのことに関して社説で論評した。
 沖縄で日常指されている違法な排除について、「東京」の社説で押さえる。 
 「東京」は、「沖縄の基地建設現場での機動隊員による反対派住民の排除は、適法性に疑問がある-。警視庁機動隊の派遣を巡る住民訴訟で、東京地裁が示した判断だ。警察は重い戒めとしなければならない。」、と指摘する。
 「東京」の指摘の根拠は次のもの。


(1)訴訟の対象となったのは、沖縄県東村高江周辺での米軍ヘリパッド建設に伴い、二〇一六年七~十二月に行われた約百四十人の警視庁機動隊員の派遣。約百八十人の都民が、派遣期間中に支払われた隊員基本給約二億八千万円や特殊勤務手当の損害賠償を求めて一六年十二月に提訴し、今月十六日に判決が言い渡された。
(2)損害賠償の請求は退けられたが、判決は、東京、大阪、神奈川、愛知など六都府県警から派遣された機動隊員の反対派住民らへの対応に言及。「職務行為が必ずしも全て適正だったとは言い難い」とし、特に一六年七月、住民らが建設現場出入り口に置いた車両やテントを強制撤去したことについて「適法性に看過しがたい疑問が残る」との見解を示した。
(3)根拠法があいまいなまま警察権力が行使されたことに、強く警鐘を鳴らしたものだ。テント撤去以外にも現地では、沖縄平和運動センターの山城博治議長ら延べ十四人もの逮捕、建設車両への警察官同乗、県道の通行規制などが過剰警備として批判されていた。大阪府警隊員による住民への「土人」発言は、大きく波紋を広げた。
(4)三年にわたる裁判で、警視庁側は、今後の警備に影響するなどとして派遣隊員の人数さえ明らかにしなかった。判決での厳しい指摘は、原告側の陳述や証言、沖縄県警幹部らへの証人尋問の積み重ねにより導き出されたといえよう。


 この判決は、沖縄の今に関わる。
 だからこそ、「東京」は、次のように押さえる。


(1)沖縄で、座り込み住民らの強制排除は、辺野古の新基地建設現場などでも続いている。警察側は、司法の指摘を真摯(しんし)に受け止めて警備に当たるべきだ。法令順守は言うまでもなく、威圧的と受け取られないよう細心の注意を払うことが求められる。
(2)原告側は、今回の訴訟の最大の争点を「国家が一部地域に国策を押しつけるため、警察権力によって住民らの抵抗を排除することが許されるか」に置いた。抗議活動は平和的に行われており、都府県の機動隊派遣自体が工事推進を目的とした違法なものと訴えたが、その主張は通らなかった。
(3)原告は控訴する方針だ。愛知県でも来年三月、同趣旨の住民訴訟の判決がある。身近な都道府県警察の在り方を通して、沖縄の基地問題が問われている。


 実は、沖縄の基地問題は、日本のあり方そのものを問うている。
しかも、具体的に。



by asyagi-df-2014 | 2019-12-31 07:03 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

伊藤詩織さん民事訴訟で勝訴。

 東京地裁は、伊藤詩織さんが元TBS記者山口敬之氏を訴えた裁判で、330万円の賠償を命じる判決を言い渡した。
 この判決をマスコは大きく取りあげた。
 朝日新聞(以下、「朝日」)は2019年12月20日、「伊藤氏の勝訴 社会の病理も問われた」、と社説で論評した。
「朝日」は、まず、このように伝えた。


(1)ジャーナリストの伊藤詩織氏が元TBS記者山口敬之氏を訴えた裁判で、東京地裁は「酒を飲んで意識を失った伊藤氏に対し、合意のないまま性行為に及んだ」と認め、330万円の賠償を命じる判決を言い渡した。
(2)山口氏は準強姦(ごうかん)容疑(当時)で告訴されたが、嫌疑不十分で不起訴となった。刑事事件では検察側に厳格な立証が求められるが、民事裁判では両者の言い分のどちらがより確からしいかが判断される。地裁は、合意があったとする山口氏の主張を、「重要部分が不合理に移り変わり、客観的な事情に合致しない点も複数ある」と退けた。
(3)山口氏は控訴を表明したが、判決後の記者会見で見過ごせない発言があった。自らが話を聞いたとする「本当の(性犯罪)被害者は会見で笑ったりしない」という女性の声を紹介し、身の潔白を訴えたのだ。


 こうした山口の反応も含めて、「朝日」は突き詰める。


(1)苦しみを抱え込み、下を向いて生きていくのが被害者の正しい姿だ、と言うに等しい。こうしたゆがんだ認識が、過酷な傷を負いながらも生きていこうとする人々を、追い詰めてきたのではないか。
(2)勇気をふるって告発すると、「あなたにも落ち度があった」などと責められ、二重三重に傷つく。性暴力を受けた人は、その体験に加え、声を上げることの難しさにも苦しんできた。
(3)その呪縛を断ち切り、被害をなくしていこうという動きが、世界各地で広がる。代表が「#MeToo」運動だ。国内ではことし、性犯罪をめぐる無罪判決が相次いだことへの批判をきっかけに、泣き寝入りせず性暴力に抗議する「フラワーデモ」が始まり、いまも全国に波及し続けている。伊藤氏が氏名と顔を明らかにして行動したことが、多くの被害者の背中を押したのは間違いない。

 また、「朝日」は、いわゆる「セカンドレイプ」の問題について指摘する。


(1)この間(かん)、伊藤氏にはネット上などで異常な攻撃が加えられた。政権寄りの論者らが、安倍首相を取材した著作のある山口氏の応援にまわり、右派系雑誌には、伊藤氏の人格をおとしめる記事が掲載された。
(2)これに対し判決は、「伊藤氏は性犯罪の被害者を取り巻く法的・社会的状況の改善につながると考え、自身の体験を明らかにした」と述べ、その行動には公益を図る目的があったと認めた。名誉毀損(きそん)だという山口氏の主張は退けられた。


 「朝日」は、伊藤詩織さんの勝訴判決に、「曲折を経ながらも性犯罪に向けられる目は厳しさを増している。罰則を強化する改正刑法がおととし成立し、さらなる見直しの議論が進む。相談・支援態勢も強化されてきている。この歩みをより確かなものにし、被害者の尊厳を守る。私たちの社会が背負う重要な課題である。」、と伊藤詩織さんとともに未来を見つめる。


 一方、東京新聞(以下、「東京」)は2019年12月24日、「詩織さん勝訴 『黒箱』の中が見えない」、と社説で論評した。
「性暴力被害を訴えたジャーナリストの伊藤詩織さんが民事訴訟で勝訴した。『#MeToo(ミートゥー)』の声が高まる契機にもなった事件だが、ブラックボックスの中はまだ見えない状況だ。」、と押さえる。
 どういうことなのか。
「東京」は、この判決に関する評価から触れる。


(1)勝訴の報は海外メディアでも大きく取り上げられた。米国のワシントン・ポストは「日本人女性の権利の勝利」と。CNNテレビも、英国のBBC放送なども一斉に報道した。台湾などでも同じだ。伊藤さんの著書「Black Box」は、中国では「黒箱」と題し出版、注目されている。
(2)海外メディアの主張はどれも正当なものだ。例えば日本では性暴力に遭っても警察に相談するケースは少ないとか、刑事罰を科す困難さを挙げて、日本の性犯罪に対する後進性を説いたりした。何より首相と親しい山口敬之(のりゆき)元TBS記者を訴えた裁判だったことに焦点を当てたりした。
(3)内閣府が昨年まとめた調査では、女性の十三人に一人は無理やりに性交をされた経験があった。だが、被害を受けた女性の約六割はどこにも相談していなかった事実も浮かんだ。伊藤さんが記者会見で「誰もが被害者になるリスクがある。声を上げられない人もいる。傍観者にならないことが大事」と語ったのも、そんな背景があるからだ。
(4)確かに性犯罪の現場は密室が多く、立証は困難だ。それでも判決は、性行為に合意がなかったことを認めた。飲食店からタクシー、さらにホテルでの原告と被告の状況を時系列で詳細に検討し、導いた事実認定である。ひどい酩酊状態だったのだ。


 そして、「黒箱」(Black Box)の意味について示す。


(1)刑事事件の準強姦罪(現在は準強制性交罪)などでは暴行や脅迫などで抵抗が著しく困難な状態にあったことが要件となる。だが、今回の民事裁判での事実認定ならば、刑事上、なぜ東京地検は不起訴としたのか疑問視する専門家の意見もあった。
(2)「Black Box」には山口氏に逮捕状が発行されながら、警察上層部の判断で逮捕が取りやめになったと記されている。これこそ明らかにされねばならない最重要の問題ではないか。日本の刑事司法がこの事件を闇に葬ったことと同じだからだ。
(3)不正義に国家権力が絡んでいたら、もはや法治国家と呼べない。山口氏は「法に触れる行為は一切していない」と主張するが、真相は解明されねばならない。「黒箱」の中を開けるように…。


 確かに、あらためて、真相は解明されなければならない、ことに気づかされる。
大事なことは、「東京」が指摘する「山口氏に逮捕状が発行されながら、警察上層部の判断で逮捕が取りやめになったと記されている。これこそ明らかにされねばならない最重要の問題ではないか。日本の刑事司法がこの事件を闇に葬ったことと同じだからだ。」、ということだ。



by asyagi-df-2014 | 2019-12-30 06:41 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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