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沖縄の米軍基地を朝日新聞で考える。(1)

 朝日新聞(以下、「朝日」)は2018年10月7日、「全国の米軍専用施設の7割が集中する沖縄。新たな米軍基地建設の是非が最大の争点となった県知事選で、玉城デニー氏が過去最多得票で勝利しました。この問題にどう影響するのでしょうか。また、新基地は本当に沖縄に必要なのでしょうか。沖縄の抱える問題とヤマト(本土)の人々の向き合い方について、3回シリーズで考えます。」、と連載を始めた。

 
「朝日」が沖縄の問題をどのように切り込むのか。
米軍基地の問題を、この「朝日」で考えます。
 シリーズは次のように、9月30日付けの沖縄の状況から始められます。 


(1)「新基地建設は絶対に認めない。日本全体でどこに持って行くか考えてください。国民がこれ以上、米軍は必要ないというのであれば、米軍の財産はアメリカに引き取っていただく。それでいいと思います」
(2)9月30日夜、沖縄県知事選で初当選を果たした玉城デニー氏(58)が喝采と声援のなか支援者らに語った言葉です。名護市辺野古で進められる米軍基地建設に対し、明確に反対を訴えた玉城氏の勝利は、人々の切なる願いの表れでもありました。
(3)1996年に決まったこの計画は、中部・宜野湾市にある米海兵隊の普天間飛行場を返還し、代わりの軍用飛行場を建設するというもの。人口密集地での危険性を減らすなどが最初の目的でした。2006年、辺野古沿岸部を埋め立ててV字形滑走路を建設することで日米が合意。「負担軽減」と言っても辺野古にも人は住んでいます。ただでさえ多い基地を、また新たにつくることへの反対は根強く、今回まで6回の知事選でこの問題が問われました。
(3)沖縄には米軍の陸・海・空軍と海兵隊がいます。空軍は極東最大といわれる嘉手納基地(沖縄市など)があり、海軍には軍港ホワイトビーチ(うるま市)などがありますが、海兵隊の基地面積は最も広く、全体の約7割になります。陸海空の機能をあわせ持ち、緊急時の展開が可能とされ、その航空基地が普天間です。


 具体的に何が問題であるというのか。
 まず、「朝日」は、在沖米軍、特に在沖米海兵隊に関わって、次のように指摘しています。


(在沖米軍、特に在沖米海兵隊に関わって)
(1)近年、特に海兵隊に関わる事件や事故が問題になっています。04年、大型ヘリが沖縄国際大学に墜落。一昨年は名護市沖の浅瀬に大型輸送機オスプレイが墜落。昨年はヘリが民間地で炎上。飛行中のヘリから部品が落下……。95年、小学生を拉致、暴行する事件を起こしたのも海兵隊員らでした。一昨年は元海兵隊員が女性を殺害し、沖縄は悲しみと怒りに包まれました。
(2)海兵隊は沖縄にいる必要があるのでしょうか。疑問を抱く人は少なくありません。海兵隊を輸送する強襲揚陸艦などの母港は、800キロ近く離れた長崎・佐世保基地。そこから兵員を乗せるために沖縄まで来て、海兵隊はその艦船に乗って多くの期間、アジア各地へ移動して訓練などを行っています。
(3)安全保障問題に詳しい有識者によるシンクタンク「新外交イニシアティブ」(ND)は、部隊が結集する拠点を沖縄ではなく海外に置いても機能は損なわれないとして、海兵隊の国外移転を提案しています。
(4)では、海兵隊が存在することによって相手に攻撃を思いとどまらせる「抑止力」はあるのでしょうか。12年の日米合意で、在沖海兵隊のうち約9千人がグアムなどに移転することが決まりました。残る海兵隊の部隊だけでは大規模紛争には投入できません。また仮に海兵隊が撤収しても沖縄には依然、多くの米軍基地が存在し、「本土」にも第7艦隊(神奈川県横須賀市)などの強大な米軍兵力が駐留しています。


 だから、「朝日」は、「沖縄の抱える問題とヤマト(本土)の人々の向き合い方」について、「日米安保条約が締結されて67年。国内の米軍基地の意味を、私たちは真剣に議論してきたでしょうか。『抑止力』『辺野古が唯一』といった言葉の内実を、どの程度考えたでしょうか。沖縄の選挙結果は国民全体にそのことを問いかけています。(川端俊一)」、と問いかけの意味を焦点化します。ます。
 また、このことを考えるために、軍事ジャーナリストの田岡俊次さんと元沖縄タイムス論説委員の屋良朝博さんの意見を紹介します。


(1)「現状の態勢『抑止力』にならぬと軍事ジャーナリストの田岡俊次さん」


①沖縄の海兵隊の大部分はグアムなどに移転し、戦闘部隊で残るのは第31海兵遠征部隊。約800人の歩兵大隊にオスプレイなどの部隊が付きますが、戦争をできる兵力、装備ではなく、「抑止力」にはなりません。第一の任務は、戦乱や災害の時の在留米国人の救出。現地で空港や埠頭(ふとう)を一時確保し、そこに米国人を集めて脱出させることです。その部隊が沖縄に残るのは、朝鮮半島有事や中国での暴動を想定した場合、グアムからでは何日もかかるからです。
②鳩山政権の時、私は普天間の部隊を長崎県の海上自衛隊大村航空基地に移すことを提案しました。歩兵は佐世保市の陸自相浦駐屯地へ移せば佐世保基地の揚陸艦部隊とも近くなり、海兵隊に異論はないはずです。
③在日米軍は日本を守るためではなく、西太平洋、インド洋に出動するため待機しています。「日米防衛協力のための指針」によれば、尖閣諸島防衛や奪回に海兵隊が参加することはない。だが駐留経費の過半は日本が負担し、日本にいる方が安上がりだから駐留が続くという面もあります。


(2)「『安心』の恩恵と負担 どう考えると元沖縄タイムス論説委員の屋良朝博さん」


①玉城デニー新知事は辺野古新基地に反対し、選挙で圧勝しました。それでも政府は、普天間飛行場を一日も早く移転・閉鎖するには辺野古の基地建設が「唯一の選択肢」として、工事を強行する方針です。
②一日も早いとは? 辺野古の工事が完了し、普天間移転が実現するのは10年先といわれています。総事業費1兆円ともいわれる予算を投じ、10年先まで「一日も早く」と政府は言い続けるのでしょうか。
③普天間を使う海兵隊を沖縄から出せば問題は一挙に解決します。すでに米軍再編で海兵隊はグアムや豪州などへ主力部隊の分散移転を決めています。残る小ぶりな部隊だけでも「本土」が引き取るべきでしょう。嫌なら国外移転を検討すればいい。沖縄は、米空軍嘉手納基地だけでも負担は重いのです。新知事には、「安心」の恩恵と負担をどう考えるかを全国に問いかけてほしいと思います。

県外は他人事 負担軽減を

(3)「朝日新聞デジタルのアンケートに寄せられた声の一部を紹介します。」


●「沖縄出身で現在は関東住みですが、遠くから沖縄のことを見させていただいてとても悲しい気持ちになっています。高校生時代に県外の高校生との交流を持つ場がありました。その際に基地案内をしたのですが、みなさん軍用機を写真に撮りながらカッコイイ!と言っていました。高校生ながら、嫌な気持ちになったのを今でも鮮明に覚えています。県外の方は他人事で、沖縄に住んでる方の中にも当然ですが基地容認で基地にお世話になっている方々もいます。もし沖縄から基地撤退してもらい雇用の面で保障があればもっと良い沖縄になっていくのではないかな?とずっと考えてるところです。私には力がなくそれは無理かもしれませんが」(千葉県・40代女性)
●「沖縄県民には、大戦中に日本国内で唯一、戦場化して多大な犠牲を課している。このことを本土にある者は決して忘れてはならない。いわば本土の人々の身代わり同然であったと言えよう。沖縄県民には政治、産業、教育、福祉にわたり格別の配慮をと願ってやまない。私自身は、東京空襲にからくも生き残った幸運に恵まれた」(海外・80代男性)
●「トランプの姿勢を見ていると、これからは米軍が頼りになるかは未知数に感じる。米軍基地に税金を投入するくらいなら自衛隊基地を増強すべきであると考える」(大阪府・40代男性)
●「僕は10代なので、教科書やニュースで沖縄問題を知った。基地をなくすことのメリット・デメリットは本当に悩ましいことだと思う。世界中が平和的な考えならそんな悩みさえ無いのだろうが」(宮崎県・10代男性)
●「ヘリが落ちた沖縄国際大学へ行き、実際に普天間基地を見てきた。市街地の真ん中に基地があり、そこから飛び立つヘリや戦闘機の爆音はすさまじいものであった。そんな環境に、さらにヘリの窓枠が落下したりオスプレイが不時着するような危険性があっては一刻も早く基地負担軽減をしなければならないと思う。また沖縄へ押し付けているという認識を本土の人はないがしろにしすぎではないか。戦略的に重要だとふんぞり返る前に、少なくとも日米地位協定の見直しを求めるなど沖縄の人々の負担を減らすことが必要ではないかと感じる」(埼玉県・20代男性)
●「沖縄は、地形上重要な位置にあり、米軍基地があることでアジア、東シナ海の安全を保てるのに、必要だと思います。沖縄の人たちに苦痛があるのは本当に心苦しいです。かといって日本のどこに、これ以上の場所があるでしょうか? 沖縄県民の方々の苦痛も減らし、基地との共存を探ること。難しいけどそれしかない」(愛媛県・60代女性)
●「沖縄以外も含めた在日米軍の必要性、仮に必要だとしても、どこにどの程度が妥当なのか、論理的な説明がまったくなされていない。核の傘、地政学リスク云々(うんぬん)との曖昧(あいまい)な言葉ばかりが並ぶ。現代においては、沖縄集中の後ろ盾となる根拠も無い。沖縄が受けている差別は解消されるべきだ。そのために、政府は尽力すべきだし、そうさせる責任は私たち国民にある」(千葉県・50代男性)
●「正直なところよく分からない。基地に対する日米の経済的負担の実情や安全保障の内容、米軍による事件や事故に対する各国の対応の比較、そもそもなぜ米軍の治外法権を許して基地を日本に置き続けなければならないのか。感情論やイデオロギー抜きで、客観的事実と防衛ついての基本的な学識にアクセスすることが非常に難しく、もどかしい」(愛知県・40代女性)


 さて、シリーズ1なので、「朝日」が今後どのように論理展開をするのか、楽しみに待つ。



by asyagi-df-2014 | 2018-10-16 07:19 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

日米地位協定の欠陥が、悲惨さを倍加させる。~琉球新報20181007~

 2018年10月7日付けの琉球新報(以下、「新報」)の社説は、「若い女性の命も尊厳も奪った痛ましい事件の刑が確定した。」、と始められる。
それは、「今回の事件は日米地位協定の欠陥を改めて浮き彫りにした。米軍関係犯罪の元凶である米軍基地の在り方を解決しないことには、根本的な再発防止策にはならない。」、との痛烈な批判とともに。
この事件は次のものである。


(1)2016年4月に起きた米軍属女性暴行殺人事件で、殺人や強姦(ごうかん)致死などの罪に問われた元海兵隊員で事件当時軍属のケネス・フランクリン・シンザト(旧姓ガドソン)被告は、期限までに上告せず、無期懲役の判決が確定した。一審、二審判決とも、ケネス被告が被害者の頭部を殴ったり、首を絞めたりして、首付近をナイフで数回突き刺したとして、殺意を認めた。
(2)ケネス被告は公判で黙秘権を行使し、供述を拒んだ。反省の言葉や被害女性、遺族への謝罪はなかった。動機も本人の口からは語られず、「なぜ殺されたのか」という被害者の父親の疑問や無念さは晴らされなかった。不誠実な態度に終始したと言えよう。


 さて、「新報」は、この犯罪に関して、次のように指摘をする。


(1)今回の事件では、米軍人・軍属に特権を与えている日米地位協定の構造的欠陥も改めて指摘された。
(2)刑事面では、被告が基地内で証拠隠滅を図った可能性があるにもかかわらず、立ち入り捜査ができなかった。
(3)民事面では、遺族補償の肩代わりを、被告の「間接雇用」を理由に米側が拒否した。軍属は、地位協定で直接雇用・間接雇用を問わず、裁判権などの特権が認められている。一方で、賠償責任については直接雇用と間接雇用で区別し、米側は補償対象外として支払いを免れようとした。
(4)米政府は、責任を取らない間接雇用の軍属にまで特権を与えていることになる。今回は政治的判断で見舞金が支払われるものの、極めてご都合主義であり、許されない。


 結局、「地位協定が米軍絡みの犯罪の温床になっているだけでなく、悲しみに沈む遺族にさらに苦痛の追い打ちを掛け続けている。地位協定を改定しなければ、元凶は絶てない。」、と「新報」は訴えるのである。
 それにしても、「新報」の「だが日本政府は及び腰だ。事件後に取った対策は、軍属範囲の縮小とパトロール隊設置という小手先に終わった。軍属範囲を狭めた補足協定を政府は「画期的」と自賛したが、根本解決ではない。事件事故を起こす圧倒的多数の米兵には何の効果もない。車両100台で夜間に見回りをする『沖縄・地域安全パトロール隊』に至っては、犯罪抑止効果が疑わしい。隊が17年度に県警に通報した年間474件のうち、米軍人・軍属関係は4件しかなかった。年間約8億7千万円の税金を投じるだけの費用対効果はあるのだろうか。」、との指摘が非常に重い。
 「新報」は、最後に、「そもそも、基地がなければ米軍関連の犯罪は起こらない。被害女性の父親が『基地があるがゆえに起こる』と指摘する通り、最善の再発防止策は基地撤去である。国策による犠牲はもう要らない。日米両政府は地位協定改定と基地の抜本的削減をするべきだ。」、と今回も断じる。


 確かに、問題は、『基地があるがゆえに起こる』のである。また、その基地が一地域に、国策として強制され続けることは、もはや許されない。




by asyagi-df-2014 | 2018-10-15 07:10 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

実は、敗戦前の日本を取り戻したいのです。~琉球新報20181006~

 琉球新報(以下、「新報」)は、2018年10月6日の社説で、「教育勅語評価発言 戦前に逆戻りしたいのか」、と強く断じた。
 さて、これを読む人たちが、この社説の意味を熱く反論するようになるのだろうか。
事の起こりは、「柴山昌彦文部科学相が2日の就任記者会見で教育勅語について問われ『現代風にアレンジした形で、今の道徳などに使えるという意味で普遍性を持っている部分がある』と評価する発言をした。」、ということである。
 「新報」は、このことについて、次のように指摘する。


(1)「『同胞を大切にするとか国際的な協調を重んじるとか、基本的な記載内容について現代的にアレンジをして教えていこうと検討する動きがあると聞いている。そういったことは検討に値する』とも述べている。時代錯誤も甚だしい。」
(2)「教育勅語は1890年に発布され、明治天皇の名で国民道徳や教育の根本理念を示した。親孝行や家族愛を説きながら『一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ』と記し、万一危急の大事が起こったならば一身をささげて皇室国家のために尽くすことを求めている。」
(3)「学校では『御真影』(天皇、皇后両陛下の写真)とともに保管され、神聖化された。昭和の軍国主義教育と密接に結び付いていた。」
(4)「当然のことながら、現行憲法の基本原理である国民主権、基本的人権の尊重、平和主義とは相いれない。1948年に衆院は排除決議、参院は失効確認決議を可決する。衆参両院は詔勅の謄本の回収を政府に求めた。教育勅語は、戦争という誤った方向に突き進んだ時代の『負の遺産』だ。」


 だからこそ、「新報」は、「親孝行や家族愛を説くのなら、わざわざ教育勅語を持ち出すまでもなく、適切な教材はいくらでもある。戦前に逆戻りしたいのだろうか。」、と批判する。
 また、「新報」は指摘を続ける。


(1)政府は昨年3月、「教育の唯一の根本とするような指導を行うことは不適切」としながらも「憲法や教育基本法に反しないような形で教材として用いることまでは否定されない」との答弁書を閣議決定している。
(2)政府方針を拡大解釈し、歴史の史料以外の教材として教育勅語を利用するケースが出てこないとも限らない。柴山氏の発言でそうした懸念が一層強まった。
(3)多様性が尊重される昨今、一つの価値観を押し付ける教育の在り方は国際的な潮流にも逆行する。まして、憲法の理念に反する教育勅語を道徳などで教材化することは許されない。


 「新報」は、最後に、安倍晋三政権に対して、このように釘を刺す。


(1)柴山文科相を任命したのは安倍晋三首相だ。教育勅語を巡っては昨年3月、当時の稲田朋美防衛相も「全くの誤りというのは違うと思う。その精神は取り戻すべきだ」と述べ、野党から批判を浴びた。両氏とも首相に近い。首相自身と同じ考えだから起用したのではないか。
(2)柴山氏は、公明党幹部から「教育勅語を是認するような発言はアウトだ」とくぎを刺され、「すいません」とこうべを垂れたという。謝る相手が違う。
(3)5日になって「政府レベルで道徳なども含めて教育現場に活用することを推奨する考えはない」と釈明したが、不十分だ。発言を撤回した上で、混乱を招いたことを国民に謝罪すべきだ。


 はっきり言えることは、彼らは、明治期以降敗戦までの日本に戻りたいと考えているに過ぎないということ。
 教育勅語については、「現行憲法の基本原理である国民主権、基本的人権の尊重、平和主義とは相いれない。1948年に衆院は排除決議、参院は失効確認決議を可決する。衆参両院は詔勅の謄本の回収を政府に求めた。教育勅語は、戦争という誤った方向に突き進んだ時代の『負の遺産』だ。」(琉球新報)との論理で、これまで何度も、誤りを正してきた。
しかし、「歴史の史料以外の教材として教育勅語を利用するケースが出てこないとも限らない。柴山氏の発言でそうした懸念が一層強まった。」、との「新報」の疑念は、にやけた笑いとともに、すぐそこまで現実のものになろうとしている。




by asyagi-df-2014 | 2018-10-14 09:43 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

沖縄県の民意を確認する。(3)

 沖縄タイムスは、2018年10月1日、玉城デニー氏の初当選を次のように報じた。


「第13回県知事選は30日投開票され、無所属新人で「オール沖縄」勢力が推す前衆院議員の玉城デニー氏(58)が過去最多となる39万6632票を獲得し、初当選を果たした。玉城氏は、8月に急逝した翁長雄志前知事の後継候補として名護市辺野古の新基地建設阻止や自立型経済の発展などを訴え、政府、与党が全面支援した前宜野湾市長の佐喜真淳氏(54)=自民、公明、維新、希望推薦=を8万174票の大差で破った。県民が改めて辺野古新基地建設に反対の意思を明確に示した形だ。玉城氏は4日に知事に就任する。」


 今回の選挙戦の結果が伝えるものは、一つの沖縄の大きな民意である。
 この民意は、「沖縄でよかった」と言いつのる日本国民への異論でもある。
 沖縄の民意を、10月1日付けの各紙の社説等で確認する。
 実は、もう読売は取りあげるに値しないと考えているのだが、読売の社説があまりにひどいので、北海道新聞社説-「沖縄知事選 新基地拒否で県政継続」-及び京都新聞社説- 「沖縄に新知事 『基地』」に新たな視点を」-、と読売新聞社説とを比較する。


 三紙をまとめると、次のようになる。


Ⅰ.事実

(北海道新聞)
(1)沖縄県知事選はきのう投開票され、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対する自由党前衆院議員の玉城(たまき)デニー氏が勝利した。この結果は「辺野古移設が唯一の解決策」として新基地建設を強行し続ける安倍晋三政権の高圧的なやり方に、改めて「ノー」を突きつけたものと言える。
(2)玉城氏は新基地阻止を訴えてきた翁長雄志(おながたけし)知事が8月に急逝したことを受け、その後継として出馬し、保守、革新の枠を超えた「オール沖縄」勢力の支持を受けた。

(京都新聞)
(1)県民は、辺野古移設に改めて「ノー」を突き付けた。

(読売新聞)
(1)沖縄県知事選が投開票され、野党が支援した玉城デニー・前衆院議員が、自民、公明など4党推薦の佐喜真淳・前宜野湾市長らを破り、初当選した。
(2)米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画について、玉城氏は「何が起きても基地は造らせない」と強調した。亡くなった翁長雄志・前知事の「弔い選挙」と陣営が訴えたことも、支持を広げた要因だろう。自公両党は、多くの国会議員が沖縄入りし、総力を挙げて佐喜真氏を支持した。敗北は安倍政権にとって痛手である。


Ⅱ.選挙結果が見せたもの

(北海道新聞)
(1)移設反対の声が広がった背景には、安倍政権が米軍基地の県内移設を推進するため、経済振興を絡めて、アメとムチとも言える「上から目線」のやり方を続けていることへの怒りがある。国は県民の分断を招くような手法は改める必要があろう。
(2)政権与党が支援した前宜野湾市長の佐喜真淳(さきまあつし)氏は、国とのパイプを強めて経済に力を注ぐと強調し、一定の支持を集めた。沖縄は県民所得、有効求人倍率ともに全国最低水準という経済状況にある。次期県政は経済振興を求める県民の声にも応える責任を負うことになろう。
(3)佐喜真陣営の訴えには、分かりづらさも多かった。普天間基地の返還が重要だとしながら、辺野古移設の是非にはあえて言及しなかった。推薦を受けた自公両党が辺野古移設を進める中で「争点隠し」とも言える主張に反発もあったのではないか。
(4)公明党は、本部が政権と歩調を合わせながら、県本部は普天間の県外移設を求めた。こうした足並みの乱れも影響したとみられる。

(京都新聞)
(1)きのう投開票された知事選は、自由党衆院議員だった玉城氏と、前宜野湾市長で自民、公明、維新、希望の各党が推す佐喜真淳氏の事実上の一騎打ちだった。佐喜真氏の敗北は、安倍晋三政権が進める移設に対し、県民の抵抗感が根強いことを改めて示した。
(2)選挙戦で玉城氏は辺野古移設反対を前面に掲げ、翁長氏の「弔い合戦」を印象づけた。保守層の取り込みを念頭に政党色を抑えた。佐喜真氏は辺野古移設の是非を明言せず、経済振興と普天間飛行場の早期移転を訴えた。移設問題の争点化を避けたといえる。それでも移設問題は選挙戦の大きなテーマだった。共同通信による選挙中盤の世論調査では、玉城氏支持層の8割強が移設に反対、佐喜真氏支持層も3割強が反対だった。勝敗にかかわらず、こうした県民の拒否感は否定できない。


Ⅲ.主張

(北海道新聞)
(1)国は、県による辺野古沿岸部の埋め立て承認撤回に対し、法廷闘争などに踏み切るべきではない。工事を中止し、県側と真摯(しんし)に向き合わねばならない。
(2)沖縄の現状で忘れてならないのは、米兵・米軍属の事件が後を絶たないことである。選挙戦で玉城、佐喜真両氏はともに在日米軍の法的地位を定めた日米地位協定の改定の必要性を訴えた。全国知事会も協定を抜本的に見直すよう提言している。こうした声を受け、国は協定の改定に向けて取り組むべきだ。
(3)沖縄には国内の米軍専用施設の7割が集中している。その負担軽減こそが沖縄が求める声である。国が説得すべき相手は沖縄ではない。米国だ。首相は「沖縄に寄り添う」と言い続けている。ならば行動で示してもらいたい。

(京都新聞)
(1)安倍政権は重く受け止めてほしい。同時に、国民全体も沖縄の意思を理解しなければならない。
(2)だが、安倍政権は選挙結果に関わりなく移設を進める方針だ。県が辺野古沿岸部の埋め立て承認を撤回したことへの対抗措置をとるとみられ、再び県と政府の全面的な法廷闘争が続くことになる。地元の民意を切り捨てる形で移設手続きを強行すれば、県と国だけでなく県民同士の分断がますます進むことになりかねない。
(3)米軍基地が安全保障面で重要であればこそ、安倍政権は米国や他府県とも協議して、沖縄の重い負担を軽減するためのあらゆる可能性を探るべきだ。まずは、新知事と誠実に向き合ってほしい。
(4)基地を沖縄だけの問題にせず、日本全体の課題として考えようとの機運が生まれている。米朝関係の改善など東アジア情勢が大きく動く今こそ、基地の必要性も含め、新たな視点で基地問題をとらえ直す好機ではないか。安倍首相は沖縄の現状から目をそらさず、事態打開に踏み出してほしい。


(読売新聞)

(1)国との対立をあおるだけでは、県政を率いる重要な役割を果たせまい。新知事は、基地負担の軽減や県民生活の向上に地道に取り組むべきだ。
(2)玉城氏が反対の立場を貫けば、移設工事の停滞は避けられない。日米両国は、早ければ2022年度の普天間返還を目指しているが、工事は大幅に遅れている。政府は、計画の前進に向けて、県と真摯しんしな姿勢で協議するとともに、着実に基地の再編や縮小を進めなければならない。
(3)翁長県政は、辺野古の埋め立て承認の取り消しや、工事差し止め訴訟などで計画を阻止しようとした。司法の場で翁長氏の主張は認められていない。県は8月、埋め立て承認を撤回した。政府は近く、裁判所に撤回の執行停止を申し立てる方針である。基地問題を巡って国と争いを続けることに、県民の間にも一定の批判があることを玉城氏は自覚しなければならない。
(4)選挙戦で玉城氏は、普天間の危険性除去の必要性も訴えていた。辺野古への移設は、普天間の返還を実現する上で、唯一の現実的な選択肢である。日本の厳しい安全保障環境を踏まえれば、米軍の抑止力は不可欠だ。基地負担を減らすとともに、住民を巻き込んだ事故が起きないようにする。そのために、どうすべきなのか、玉城氏には冷静に判断してもらいたい。
(5)玉城氏を推した野党は、辺野古への移設計画について、「違う解決策を模索する」と反対する。具体的な案を示さずに普天間返還を実現するという主張は、かつての民主党の鳩山政権と同じで、無責任のそしりを免れない。
(6)知事の立場は、野党議員とは異なる。沖縄の発展に重い責任を負うからには、県民所得の向上や正規雇用の拡大に向けて、総合的に施策を推進する必要がある。政府との緊密な連携が欠かせない。


 不思議な感覚を抱いている。
 北海道新聞や京都新聞にあって読売新聞にはないものがある。
 読売の社説には、全く沖縄県知事選挙結果のことが触れられていない。
沖縄県民の選択、それは『民意』というものだが、その選択に込められた苦渋、焦燥、恐怖、苦悩、理想といったジャーナリズムが本質的に汲み取らなけねばならないものをあえて無視している。
例えば、「選挙戦で玉城氏は、普天間の危険性除去の必要性も訴えていた。辺野古への移設は、普天間の返還を実現する上で、唯一の現実的な選択肢である。」と言いきる根拠は、どこから来るというのか。
 今回の選挙結果は、「唯一の現実的な選択肢」と言い続ける安倍晋三政権への「否」の宣言であったはずなのにである。それは、沖縄県民は、辺野古新基地建設は求めないということである。この場合、普天間の危険除去は、徒然当たり前の前提である。
 ここには、普天間の問題と辺野古新基地建設を直接結びつけるという、日本政府の悪質なトリックをそのまま利用する欺瞞がある。
 まして、「日本の厳しい安全保障環境を踏まえれば、米軍の抑止力は不可欠だ。」「基地負担を減らすとともに、住民を巻き込んだ事故が起きないようにする。そのために、どうすべきなのか、玉城氏には冷静に判断してもらいたい。」、とのあきれた主張は、現在の新しい東アジアの安全保障の動きや、米軍基地問題解決の責任は日米両政府の基にあるということを無視したものであるに過ぎない論調である。
いや、むしろ、安倍晋三政権に責任はないと言いたいがために、無理矢理理屈を重ねているとしか受け取れない。
 さらに、読売新聞の「基地問題を巡って国と争いを続けることに、県民の間にも一定の批判があることを玉城氏は自覚しなければならない。」、との指摘そのものが、「全く沖縄県知事選挙結果のことが触れられていない。」ことの反証である。


 ここで、北海道新聞と京都新聞の主張を再掲する。
 これだけで、読売への反論に充分である。


(1)「辺野古移設が唯一の解決策」として新基地建設を強行し続ける安倍晋三政権の高圧的なやり方に、改めて「ノー」を突きつけたものと言える。(北海道新聞)
(2)県民は、辺野古移設に改めて「ノー」を突き付けた。(京都新聞)
(3)経済振興を絡めて、アメとムチとも言える「上から目線」のやり方を続けていることへの怒りがある。国は県民の分断を招くような手法は改める必要があろう。(北海道新聞)
(4)沖縄の現状で忘れてならないのは、米兵・米軍属の事件が後を絶たないことである。選挙戦で玉城、佐喜真両氏はともに在日米軍の法的地位を定めた日米地位協定の改定の必要性を訴えた。全国知事会も協定を抜本的に見直すよう提言している。こうした声を受け、国は協定の改定に向けて取り組むべきだ。(北海道新聞)
(5)沖縄には国内の米軍専用施設の7割が集中している。その負担軽減こそが沖縄が求める声である。国が説得すべき相手は沖縄ではない。米国だ。首相は「沖縄に寄り添う」と言い続けている。ならば行動で示してもらいたい。(北海道新聞)
(6)米軍基地が安全保障面で重要であればこそ、安倍政権は米国や他府県とも協議して、沖縄の重い負担を軽減するためのあらゆる可能性を探るべきだ。まずは、新知事と誠実に向き合ってほしい。(京都新聞)
(7)基地を沖縄だけの問題にせず、日本全体の課題として考えようとの機運が生まれている。米朝関係の改善など東アジア情勢が大きく動く今こそ、基地の必要性も含め、新たな視点で基地問題をとらえ直す好機ではないか。安倍首相は沖縄の現状から目をそらさず、事態打開に踏み出してほしい。(京都新聞)


 ここで、もう一つの反証。
 琉球新報は2018年10月3日、「辺野古再考促す 米NYタイムズ、玉城氏知事当選で社説」、と次の記事を掲載した。


①「【ワシントン=座波幸代本紙特派員】米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は1日、米軍普天間飛行場移設に伴う沖縄県名護市辺野古の新基地建設計画に反対する玉城デニー氏の県知事選当選を受け『沖縄の米軍駐留を減らすために」と題した社説を掲載し「日米両政府は妥協案を見いだすべきだ』と新基地計画の再考を促した。」
②「同紙は、日本政府がこれまで沖縄に対し、『アメとムチ』で新基地建設を受け入れさせようとしてきたが『沖縄の人々は何度も何度も、新しい基地は要らないと答えてきた。彼らは既に過重な米軍を受け入れていると考えている』と指摘した。」
③「その意思は玉城氏が知事に選ばれたことで非常に明確に示されたとし『安倍晋三首相に迫られた決断は、最高裁で玉城氏が司法の場に訴える【反対】を全て退けるか、(もっと前にやるべきだったが)沖縄の正当な不満を受け入れ、負担を軽減する、あまり面倒でない方法を探すことだ』と提起した。」
④「また、米軍は『沖縄の兵たん、航空、地上部隊を日本の他の場所に分散させると、東シナ海での迅速な対応能力を低下させる』と主張するが、日本と地域の安全保障のために、不公平、不必要で、時に危険な負担を県民に強いてはいけないと説明した。その上で安倍首相と米軍司令官は、公平な解決策を見いだすべきだと主張した。」


 どうだろうか。
 「読売の社説には、全く沖縄県知事選挙結果のことが触れられていない。」、という意味は、米紙ニューヨーク・タイムズの社説一つを見ても理解できるではないか。
 米紙ニューヨーク・タイムズは、沖縄知事選について、「日本政府がこれまで沖縄に対し、『アメとムチ』で新基地建設を受け入れさせようとしてきたが『沖縄の人々は何度も何度も、新しい基地は要らないと答えてきた。彼らは既に過重な米軍を受け入れていると考えている』。・・・その意思は玉城氏が知事に選ばれたことで非常に明確に示されたとし『安倍晋三首相に迫られた決断は、最高裁で玉城氏が司法の場に訴える【反対】を全て退けるか、(もっと前にやるべきだったが)沖縄の正当な不満を受け入れ、負担を軽減する、あまり面倒でない方法を探すことだ』」、と指摘する。


 こう並べてみると、読売がその使命を放棄しているのがよくわかる。


by asyagi-df-2014 | 2018-10-13 09:02 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

沖縄県の民意を確認する。(2)

 沖縄タイムスは、2018年10月1日、玉城デニー氏の初当選を次のように報じた。


「第13回県知事選は30日投開票され、無所属新人で「オール沖縄」勢力が推す前衆院議員の玉城デニー氏(58)が過去最多となる39万6632票を獲得し、初当選を果たした。玉城氏は、8月に急逝した翁長雄志前知事の後継候補として名護市辺野古の新基地建設阻止や自立型経済の発展などを訴え、政府、与党が全面支援した前宜野湾市長の佐喜真淳氏(54)=自民、公明、維新、希望推薦=を8万174票の大差で破った。県民が改めて辺野古新基地建設に反対の意思を明確に示した形だ。玉城氏は4日に知事に就任する。」


 今回の選挙戦の結果が伝えるものは、一つの沖縄の大きな民意である。
 この民意は、「沖縄でよかった」と言いつのる日本国民への異論でもある。
 沖縄の民意を、10月1日付けの各紙の社説等で確認する。
今回は、朝日新聞-「沖縄知事選 辺野古ノーの民意聞け」-と毎日新聞-「沖縄知事に玉城デニー氏 再び『辺野古ノー』の重さ」-及び東京新聞社説-「沖縄県知事選 辺野古基地は白紙に」-の社説から。


Ⅰ.事実


(朝日新聞)


(1)まず問われるのは、県が8月末に辺野古の海の埋め立て承認を撤回したことへの対応だ。この措置によって工事は現在止まっているが、政府は裁判に持ち込んで再開させる構えを見せている。しかしそんなことをすれば、県民との間にある溝はさらに深くなるばかりだ。
(2)朝日新聞などが行った県民世論調査では、辺野古への移設は賛成25%、反対50%だったが、基地問題に対する内閣の姿勢を聞く問いでは、「評価する」14%、「評価しない」63%とさらに大きな差がついた。「沖縄に寄り添う」と言いながら、力ずくで民意を抑え込むやり方が、いかに反発を招いているか。深刻な反省が必要だ。


(毎日新聞)


(1)沖縄県の新知事に、米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する玉城(たまき)デニー元衆院議員が当選した。8月に死去した翁長雄志(おながたけし)氏に続き、再び「辺野古ノー」の知事を選んだ県民の審判は極めて重い。


(東京新聞)


(1)日米両政府が一九九六年、普天間飛行場の返還に合意して以来、知事選は六回目。辺野古移設への対応が毎回の争点となってきた。今回は、故翁長雄志知事の後継者として出馬した玉城デニー氏が勝利し、二〇一二年以降の安倍政権下では二回、いずれも辺野古反対の重い民意が明らかにされた。


Ⅱ.選挙結果が見せたもの


(朝日新聞)


(1)今回の選挙で政権側がとった対応は異様だった。全面支援した佐喜真淳(さきまあつし)氏は辺野古移設への賛否を明らかにせず、応援に入った菅官房長官らは、県政とは直接関係のない携帯電話料金の引き下げに取り組む姿などをアピールして、支持を訴えた。都合の悪い話から逃げ、耳に入りやすい話をちらつかせて票を得ようとする。政権が繰り返してきた手法と言えばそれまでだが、民主主義の土台である選挙を何だと思っているのか。
(2)一方で、沖縄の今後を考えるうえで重要な主張の重なりもあった。玉城、佐喜真両氏がそろって、在日米軍にさまざまな特権を認めている日米地位協定の改定を、公約の柱にすえたことだ。佐喜真氏も、協定の運用を話し合う日米合同委員会に「沖縄の声が反映する仕組みをつくる」と具体的に唱えた。


(毎日新聞)


(1)安倍政権はこの間、民意に刃向かう形で強引に埋め立て工事を進めてきた。知事選には佐喜真淳前宜野湾市長を擁立し、県外から国会議員や地方議員、秘書団まで動員する政権丸抱えの選挙戦を展開した。それでも玉城氏が勝利したことで、政権が従来の姿勢を見直さざるを得なくなったのは明らかだ。
(2)市街地の真ん中に位置する普天間飛行場は一刻も早い返還が必要だ。にもかかわらず、日米の返還合意から22年が過ぎても実現していない根底に、基地負担のあり方をめぐる本土と沖縄の意識差が横たわる。


(東京新聞)


(1)政権の全面支援を受けるも敗れた佐喜真淳氏は、訴えで移設の是非に触れずじまい。玉城氏とは激戦だったが、それをもって辺野古への賛否が割れたとは言い難い。選挙期間中の琉球新報社などの県民世論調査では、県内移設に反対する意見が六割を超えた。辺野古問題では、明らかに多数が新基地は不要と判断している。


Ⅲ.主張


(朝日新聞)
(1)急逝した翁長雄志前知事は、米軍普天間飛行場の移設先として、名護市辺野古に基地を造ることに強く反対してきた。その遺志を継ぐ玉城氏を、有権者は新しいリーダーに選んだ。安倍政権は県民の思いを受けとめ、「辺野古が唯一の解決策」という硬直した姿勢を、今度こそ改めなければならない。
(2)過重な基地負担に苦しむ県民の、立場を超えた願いと見るべきだ。政府もまさか「佐喜真氏の独自の考えで、我々とは関係ない」とは言うまい。実現に向けた真摯(しんし)な努力を求める。
(3)新知事の前には、基地問題だけでなく、地域振興や福祉・教育などの課題が待ち受ける。加えて、安倍政権がとってきた、従う者は手厚く遇し、異を唱える者には徹底して冷たく当たる政治によって、県民の間に深い分断が生まれてしまった。その修復という難題にも、全力で取り組んでもらいたい。


(毎日新聞)


(1)日米安保条約に基づく在日米軍の存在が日本の安全保障の要であることについて、国民の間でそれほど意見対立があるわけではない。問題の核心は、日米安保のメリットは日本全土が受けているのに基地負担は沖縄に集中するという、その極端な不均衡にある。(2)県外移設を求める沖縄側と、『辺野古移設が普天間の危険性を除去する唯一の選択肢』という政府の主張はかみ合っていない。民主主義国家では最終的に多数決で政策が決定されるが、議論を尽くしたうえで少数派の意見を可能な限り取り入れることが前提となる。外交・安保は政府の専権事項だからといって、圧倒的な多数派の本土側が少数派の沖縄に不利益を押しつけるのを民主主義とは言わない。
(3)辺野古移設をめぐる国と沖縄の対立を解消していくにはどうすればよいのか、今こそ政府は虚心に県との話し合いを始める必要がある。翁長氏が知事に就任した際、安倍晋三首相と菅義偉官房長官は4カ月にわたって面会を拒み続けた。玉城新知事に対してもそんな大人げない対応を繰り返せば、国と沖縄の対立はますます深まるだけだろう。来年春までには辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票も行われる見通しだ。自民党総裁に3選されたばかりの首相だが、問答無用で基地負担をごり押しする手法で状況を動かすことはできない。


(東京新聞)


(1)新基地建設に関しては八月末、国の工事に違法性があるとして、県が沿岸の埋め立て承認を撤回した。事前の設計協議なしに着工し軟弱地盤や活断層の問題も判明した-などが理由。手続き上も工法上も国側が無理を重ねている。
(2)辺野古反対派が当選した以上、政府は法的対抗措置を凍結し、移設計画を白紙から見べきだ。普天間返還に代替施設が必要か、あらためて米国と交渉し、再び国内移設をというのなら、移設先を一から検討するよう求めたい。
(3)辺野古の海では一部区域の護岸建設が進められたが、埋め立ての土砂投入は行われていない。元の海への回復はまだ間に合う。


 さて、こうしてみると、今回の選挙結果は、沖縄の民意として、安倍晋三政権へ重大な指摘を突きつけている。
 もちろん、日本人の一人一人に向けても。


(1)8月に死去した翁長雄志氏に続き、再び「辺野古ノー」の知事を選んだ県民の審判は極めて重い。(毎日新聞)
(2)選挙期間中の琉球新報社などの県民世論調査では、県内移設に反対する意見が六割を超えた。辺野古問題では、明らかに多数が新基地は不要と判断している。(東京新聞)


(3)「沖縄に寄り添う」と言いながら、力ずくで民意を抑え込むやり方が、いかに反発を招いているか。深刻な反省が必要だ。(朝日新聞)
(4)安倍政権は県民の思いを受けとめ、「辺野古が唯一の解決策」という硬直した姿勢を、今度こそ改めなければならない。(朝日新聞)
(5)都合の悪い話から逃げ、耳に入りやすい話をちらつかせて票を得ようとする。政権が繰り返してきた手法と言えばそれまでだが、民主主義の土台である選挙を何だと思っているのか。(朝日新聞)


(6)まず問われるのは、県が8月末に辺野古の海の埋め立て承認を撤回したことへの対応だ。この措置によって工事は現在止まっているが、政府は裁判に持ち込んで再開させる構えを見せている。しかしそんなことをすれば、県民との間にある溝はさらに深くなるばかりだ。(朝日新聞)
(7)辺野古の海では一部区域の護岸建設が進められたが、埋め立ての土砂投入は行われていない。元の海への回復はまだ間に合う。(東京新聞)


(8)在日米軍にさまざまな特権を認めている日米地位協定の改定を、公約の柱にすえたことだ。佐喜真氏も、協定の運用を話し合う日米合同委員会に「沖縄の声が反映する仕組みをつくる」と具体的に唱えた。(朝日新聞)
(9)外交・安保は政府の専権事項だからといって、圧倒的な多数派の本土側が少数派の沖縄に不利益を押しつけるのを民主主義とは言わない。(毎日新聞)


(10)市街地の真ん中に位置する普天間飛行場は一刻も早い返還が必要だ。にもかかわらず、日米の返還合意から22年が過ぎても実現していない根底に、基地負担のあり方をめぐる本土と沖縄の意識差が横たわる。(毎日新聞)




by asyagi-df-2014 | 2018-10-12 07:10 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

沖縄県の民意を確認する。(1)

 沖縄タイムスは、2018年10月1日、玉城デニー氏の初当選を次のように報じた。


「第13回県知事選は30日投開票され、無所属新人で「オール沖縄」勢力が推す前衆院議員の玉城デニー氏(58)が過去最多となる39万6632票を獲得し、初当選を果たした。玉城氏は、8月に急逝した翁長雄志前知事の後継候補として名護市辺野古の新基地建設阻止や自立型経済の発展などを訴え、政府、与党が全面支援した前宜野湾市長の佐喜真淳氏(54)=自民、公明、維新、希望推薦=を8万174票の大差で破った。県民が改めて辺野古新基地建設に反対の意思を明確に示した形だ。玉城氏は4日に知事に就任する。」


 今回の選挙戦の結果が伝えるものは、一つの沖縄の大きな民意である。
 この民意は、「沖縄でよかった」と言いつのる日本国民への異論でもある。


実は、不覚にも、この選挙結果を信じる切ることができなかった。
宮城康博さんは、そのFBでの次のようにつぶやいた。


「さて眠ります。永遠の眠りでもいいんですけど、たぶん明日目覚めて生き続けます。生きていたいなぁと思っています。ウチナンチュが追い込まれている理不尽を蹴散らすために、戦い続けたいと思ってる。できることを地道にやるのもそうだけど、できないことだってできるようにしてやる。ありがとう。おつかれさまでした。みんな心労しただろう、怖かったよね、あの攻勢。ほんとよく踏ん張った。」


 今回の選挙の意味を、この宮城さんの言葉が物語る。
 沖縄の民意を各紙の社説等で確認する。
まずは、沖縄タイムスと琉球新報の社説から。


Ⅰ.事実


(沖縄タイムス)
(1)新しい沖縄県知事に前衆院議員の玉城デニー氏(58)が選ばれた。前回知事選の翁長雄志氏の得票を上回り、復帰後の知事選では過去最多得票での勝利である。出馬表明の遅れや組織体制の不備、相手の強大な組織力をはねのけての圧勝だ。その政治的意味は極めて大きい。


(琉球新報)
(1)翁長雄志知事の死去に伴う沖縄県知事選挙は、名護市辺野古への新基地建設反対を訴えた前衆院議員・玉城デニー氏が、安倍政権の支援を受けた前宜野湾市長・佐喜真淳氏を大差で下し、初当選した。米軍普天間飛行場の移設に伴う辺野古への新基地建設について、玉城氏は「辺野古に新たな基地は造らせない」と主張、知事の持つあらゆる権限を行使して阻止する姿勢を示した。佐喜真氏は辺野古移設を推進する安倍政権の全面的な支援を受けながらも、その是非について言及を避け続けた。
(2)玉城氏が当選したことで、新基地建設に反対する沖縄県民の強固な意志が改めて鮮明になった。政府は、前回、今回と2度の知事選で明確に示された民意を率直に受け止め、辺野古で進めている建設工事を直ちに中止すべきだ。
(3)沖縄には、普天間飛行場の4倍以上の面積を有する嘉手納基地をはじめ在日米軍専用施設面積の7割が集中している。県内移設を伴わない普天間飛行場の返還は決して法外な要求ではない。


Ⅱ.選挙結果が見せたもの


(沖縄タイムス)
(1)大方の予想を覆して玉城氏が勝利を収めた要因は何か。一つは、安倍政権と国政与党が前宜野湾市長の佐喜真淳氏をなりふり構わず支援したことへの反発である。菅義偉官房長官は9月に入って3度も沖縄入りし、人気者の小泉進次郎衆院議員も告示後3度沖縄に駆け付けた。水面下では二階俊博幹事長らが企業や団体へのテコ入れを徹底。党が前面に出たことで候補者の影は薄くなり、『政権丸抱え』の印象を与えた。」
(2)佐喜真氏が若者票を意識して権限のない『携帯電話利用料の4割減』を公約に掲げたのもとっぴだったが、これに菅氏が『実現したい』と応じたのに違和感を持った県民も多かった。有権者は『古い政治』の臭いをかぎつけたのではないか。」
(3)玉城氏は、翁長県政の継承と辺野古新基地反対の姿勢を明確に打ち出しつつ、名護市長選敗北の経験から経済政策や子育て支援策にも力を入れ、幅広い層の支持を得た。米軍統治下の沖縄で、米兵を父に持ち母子家庭で育った玉城氏は、沖縄の戦後史を体現するような政治家である。自らの人生を重ねるように語った多様性の尊重や子どもの貧困対策は、女性を中心に有権者の心をつかんだ。
(4)グローバル化が進む中、草の根運動によって二つのルーツを持つ知事が誕生したことは、「新しい政治の始まり」を予感させるものがある。
(5)今回の知事選では、前回自主投票だった公明党が佐喜真氏推薦に回り、翁長知事を誕生させた「オール沖縄」陣営から抜ける企業もあった。政党の基礎票を単純に積み上げていけば、玉城氏が勝てる要素は乏しかった。組織票で圧倒的に不利だったにもかかわらず勝利したことは、安倍政権の基地政策に対する有権者の「ノー」の意思表示であり、新基地反対の民意が依然として強固なことを示すものだ。


(琉球新報)
(1)今選挙で政府・与党は菅義偉官房長官、自民党の二階俊博幹事長、竹下亘総務会長、公明党の山口那津男代表らが次々と沖縄入りし、総力を挙げて佐喜真氏を応援した。
(2)政権の動きに呼応するかのように、ネット上では玉城氏に対する誹謗(ひぼう)中傷やデマが拡散された。模範となるべき国会議員までが真偽不明の情報を発信した。沖縄県知事選で玉城氏ほど、いわれのない多くの罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせられた候補者がかつていただろうか。有権者の中には、デマを本当のことだと思い込んだ人もいたかもしれない。
(3)戦後、米軍統治下にあった沖縄で直接選挙によって住民の代表を選ぶ主席公選が初めて認められたのは1968年のことだ。自治権の拡大を求める沖縄住民が勝ち取った権利だった。その際、自民党は川島正次郎(副総裁)、福田赳夫、中曽根康弘の各氏ら有力者を次々と送り込み、保守側の候補者を強力に支援した。結果は、革新の屋良朝苗氏が当選している。あれから50年。政府与党は知事選に介入し敗れた。振興策で思い通りになると考えていたとすれば、県民を軽んじた話ではないのか。


Ⅲ.主張

(沖縄タイムス)
(1)選挙期間中、佐喜真氏が連呼したのは「対立から対話へ」のキャッチフレーズだった。しかし翁長氏との対話を拒否したのは安倍政権である。就任後、面会を申し入れても安倍晋三首相に会えない日が続き、会談が実現したのは4カ月も後のこと。新基地建設問題を巡る係争処理手続きで総務省の第三者機関が協議を促す結論を出した際も、政府は話し合いによる解決を拒んだ。現在、県の埋め立て承認撤回によって工事は止まっている。政府は法的な対抗措置を取るのではなく、これを受け入れ、新たな協議の場を設けるべきだ。これ以上、政府の都合で県民同士の分断と対立を深めてはならない。従来のような強硬策では何も解決しない。」
(2)今度の選挙は、1968年の主席公選から50年の節目の選挙である。新知事は在任中に復帰50年を迎える。本土との格差是正を目的に、国の責務として始まった沖縄振興特別措置法に基づく沖縄振興策は、ここ数年、新基地の「踏み絵」のように使われ始めている。翁長県政になって以降、目玉の一括交付金が減額されるなど沖振法が「米軍再編特措法化」しているのだ。究極の「アメとムチ」政策である米軍再編交付金だけでなく、沖縄関係予算まで基地維持の貢献度に応じてということになれば、沖縄の地方自治は成り立たない。玉城氏には、佐喜真氏支援に回った経済団体とも早急に対話を進め、民間主導の自立型経済の構築に向け、一致協力して取り組んでもらいたい。
(3)子どもの貧困対策や子育て支援、雇用の質の改善、県民所得の向上など生活に密着した課題も山積みだ。「新時代沖縄」につながる政策を着実に進めてほしい。


(琉球新報)
(1)政権与党対県政与党という対立構図の中で、県民は翁長県政の路線継承を望み、安倍政権に「ノー」を突き付けた。「政府の言いなりではなく、沖縄のことは沖縄で決める」という強い意志の表れだ。
(2)県は前知事による辺野古の埋め立て承認を8月31日に撤回した。政府は法的対抗措置を取る構えを見せている。
(3)この期に及んで、なおも新基地を押しつけるというのなら、民主主義国家を名乗る資格はない。政府は沖縄の揺るぎない民意を尊重し、新基地建設を即刻断念すべきだ。


 確かに、沖縄からの「民意」を確認できた。


Ⅰ.安倍政権の全面的な介入は、「振興策で思い通りになると考えていたとすれば、県民を軽んじた話」、と沖縄県民が反発したこと。
Ⅱ.特に、辺野古新基地建設に関して「その是非について言及を避け続けた」手法に対しては、今回の県知事選挙では、沖縄県民が反発したこと。
Ⅲ.今回の選挙結果は、安倍政権の基地政策に対する有権者の「ノー」の意思表示であり、新基地反対の民意が依然として強固であることを示したこと。
Ⅳ.また、「沖縄には、普天間飛行場の4倍以上の面積を有する嘉手納基地をはじめ在日米軍専用施設面積の7割が集中している。県内移設を伴わない普天間飛行場の返還は決して法外な要求ではない。」、ということを、本土の日本人に突きつけたこと。
Ⅴ.今回の沖縄からの「民意」は、安倍晋三政権に、辺野古新基地建設をちに中止しなければならないことを要求していること。



by asyagi-df-2014 | 2018-10-11 07:26 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

問われているのは、自らの問題との認識があるかどうか。~琉球新報20180927~

 琉球新報(以下「新報」)は2018年9月27日の社説で、「『基地本土移転』採択 全国の全自論治体で議を」、と論評した。
 「新報」は、その中で、「東京都小金井市議会が、普天間飛行場代替施設の必要性を全国で議論し、必要なら沖縄以外に建設地を決めるよう求める陳情を採択した。自分の地域が候補になるかもしれないことを前提に、公正かつ民主的な手続きで問題を解決しようという意思表示だ。この取り組みが全国に広がることを期待する。」、と表した。
「新報」は、小金井市が採択した陳情について、次のように指摘する。


(1)陳情は、ことし5月に出版された「沖縄発 新しい提案―辺野古新基地を止める民主主義の実践」(新しい提案実行委員会編)で示された4項目を盛り込んだ。
(2)昨年4月に沖縄国際大で開かれたシンポジウム「県外移設を再確認する―辺野古新基地建設を止めるもう一つの取り組み」で議論され提言された。
(3)この4項目は①辺野古新基地建設工事を直ちに中止し、普天間飛行場を運用停止にする②米軍普天間飛行場の移設先について、沖縄以外の全国の全ての自治体を等しく候補地とする③その際、基地が必要か否か、日本国内に必要か否かも含めて、当事者意識を持った国民的議論を行う―とうたう。続いて次のように求めている。
(4)「国民的議論において普天間飛行場の移設先が国内に必要だという結論になるのなら、その移設先については、民主主義および憲法の精神にのっとり、一地域への一方的な押し付けとならないよう、公正で民主的な手続きにより決定すること」


 またあわせて、こうした動きが生まれてきた背景も指摘する。


(1)当然、軍事的理由ではなく政治的理由で沖縄に基地が集中しているという認識が前提になっている。これは政府当事者の発言などで何度も裏付けられている。
(2)ことし2月には、安倍晋三首相が国会で県外への基地移転が進まない理由を問われて「移設先となる本土の理解が得られない」と答弁した。最近も石破茂元防衛相が「反米基地運動が燃え盛ることを恐れた日本と米国が、当時まだ米国の施政下にあった沖縄に多くの海兵隊部隊を移したからだ」と自身のホームページで述べた。
(3)政治的理由による沖縄への基地集中は「差別」だという沖縄の訴えに呼応して、「基地引き取り」運動が各地で立ち上がっている。世論の多数が米軍基地を必要とするなら、沖縄への差別をやめるために自らの地域で引き受けようという「正義」と「責任」の自覚に基づく運動だ。
(4)そして今回、基地と直接関係のない小金井市議会で「公正」「民主主義」を強調する陳情が採択されたことは、さらに大きなステップとなる。
(5)反戦・反基地のイデオロギーとは距離を置き、日米安保条約や在日米軍基地を認める人からも賛同を得られる可能性のある取り組みだからだ。しかも、住民を代表する議会の意思表示である。


 「新報」は、「党派を超えて、理性と論理で沖縄の基地問題を解決しようという議論が、全ての自治体に広がるよう促したい。」、と訴える。


 確かに、辺野古新基地を止める新しい動きが日本中で始まり、深まることが、辺野古新基地建設をやめさせることになる。




by asyagi-df-2014 | 2018-10-02 07:13 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

安倍晋三政権と沖縄

 2018年9月30日。
 沖縄県知事選挙という大きな節目を迎える。またもや、沖縄にその命運を委ねるのかという忸怩たる想いの中で、
 OKIRONで、宮城大蔵上智大学教授は、「安倍政権の『幕引き』と沖縄上・下」を著し、安倍晋三政権と沖縄について次のように指摘した。
 一部を紹介する。


(1)さて、このように「キャッチフレーズ羅列」の第二次安倍政権の中にあって異彩を放つのが、実行ありきとばかり突き進んできた普天間・辺野古問題である。強固な政権基盤という安倍政権が手にした政治的資産は、消費税や社会保障をめぐる国内合意の調達といったハードルの高い問題には振り向けられず、その一方で辺野古新基地に反対して登場した翁長雄志県政を圧迫することには徹底的かつ熱心に用いられた。
(2)その手法も一括交付金の増減に始まり、強引な法解釈や県や名護市を頭越しにした集落単位への補助金交付など、実に芸が細かい。安全保障環境の変容に応じた態勢整備といった「大きな絵」は語られず、もっぱら「唯一の解決策」という決まり文句の反復ばかりである。細々とした微細な工作に用いる政治的エネルギーを、もう少し国政指導者に相応しい、歴史と国際情勢を踏まえた大局的な政治に向けられないものか。
(3)そんな歯がゆさを感じていたのだが、なるほど考えてみれば普天間・辺野古問題に安倍首相が直接的に関わった気配はほとんどない。もっぱら菅義偉官房長官の管轄する問題となってきた。上述のような日常業務的な手練手管も、同氏のキャラクターの反映なのであろう。
(4)菅氏にとっては、「県外移設」の公約を翻させ、水面下で「話しをつけた」はずの仲井真弘多前知事を選挙で下して登場した翁長知事と協議に応じることは、自らの政治手法の否定につながりかねず、自らの権勢を掘り崩す「蟻の一穴」と見えたのであろうか。また、翁長氏との感情的なしこりもあっただろう。だが結果として、菅氏が主導した強硬一辺倒の対応が、この問題を必要以上にこじらせてしまったことは確かである。筆者もこの問題について、自民党の重鎮が「官房長官がねえ・・・」と漏らすのを耳にしたことがある。


 また、沖縄知事選挙については、次のように触れる。


(1)自公が異例のテコ入れをする佐喜真淳候補、翁長知事の遺志を継ぎ、「オール沖縄」を標榜する玉城デニー候補。だが、どちらの候補が勝っても、普天間・辺野古をめぐるこれまでの政府側の強硬策は見直しを迫られるのではないか。そのとき安倍首相は・・・。
(2)折しも9月30日に翁長後継を選ぶ沖縄県知事選挙が実施される。官房長官は危機対応の要として東京を離れないというのが歴代政権での慣行であるが、菅氏はこれを顧みず、再三にわたって選挙応援のために沖縄入りしている。それ自体が問題のはずだが、それだけ同氏も必死なのであろう。とはいえ、仮に政権側が推す佐喜真淳氏が当選したとしても、各種世論調査によれば県民の7割前後は辺野古新基地に反対である。政権側の強硬策を丸呑みするようでは、佐喜真氏も知事としてもたないのではないか。また、同氏を推薦し、支持母体の創価学会ともどもひときわ熱心に選挙運動をしている公明党だが、公明党県本部は「県外移設」を維持したままという事情がある。安倍政権も、政敵と化した翁長知事相手だったので問答無用の強硬姿勢をとってきたが、佐喜真氏が知事となれば、何らかの対応が必要になるのではないだろうか。
(3)逆に玉城デニー氏が当選となれば、国政レベルでも安倍政権への打撃は甚大である。求心力の衰えが加速する中で、辺野古新基地だけは強引に推進という異様さがどこまで維持できるだろうか。また、当面は無理に工事を進めても、いずれ設計変更に伴う知事の承認は不可避で、工事が行き詰まる可能性は高い。そもそも地元の知事と全面対立しながら工事を進めていることが異常なのである。
(4)こうしてみれば今回の県知事選挙は、政権側の強引な対応によってこじれてしまった普天間・辺野古問題を本来の軌道に載せる好機だといえる。本来の軌道とは、政府と県が十分な協議を通じてどのようなものであれば沖縄にも受け入れ可能なのかを探り出す作業である。それが本来、政治が果たすべき役割なのである。


 宮城大蔵上智大学教授は、安倍晋三について、こう指摘する。


(1)大規模な金融緩和からの出口の難しさを考えれば、安倍政権の看板政策である「アベノミクス」が、負の遺産としてはともかく、肯定的な意味で歴史に残ることはないだろう。日露交渉も拉致問題も行き詰まり、憲法改正も「言っただけ」で後を継ぐ後継者も見当たらない。荒涼たる光景の中で、沖縄の抵抗を押し切って辺野古新基地を建設することが、安倍政権の代表的な「実績」になるのだろうか(もっとも、現政権のうちに新基地が完成することはあり得ないのだが)。多くの問題点が指摘される中で強引に成立させたという点では、先日のカジノ法案も思い起こされる。「辺野古とカジノが置き土産」などと揶揄されては、安倍首相もいたたまれないであろう。
(2)安倍首相が敬愛してやまない祖父・岸信介の代表的な業績といえば日米安保改定(1960年)である。安保改定といえば、なんといっても戦後最大の抗議運動が耳目をひくが、改定された条約の内容自体は、在日米軍の出動に関わる事前協議制度の導入など、日米をより対等な関係に近づけるものであった。また、岸は「両岸」と揶揄されたように、イデオロギーや立場を越えて気脈を通じる老練さと奥深さを備えていた。
(3)そして岸の弟、すなわち安倍首相の大叔父にあたる佐藤栄作は、沖縄返還を悲願として、その実現に政治生命をかけた。戦後の首相として初めて沖縄を訪れた際(1965年)、佐藤が那覇空港で述べた「沖縄が本土から分かれて20年、私たち国民は沖縄90万のみなさんのことを片時たりとも忘れたことはありません」「沖縄の祖国復帰が実現しない限り、わが国にとって戦後が終わっていないことをよく承知しております」というスピーチは、戦後政治史を代表する演説であった。
(4)その血脈を継ぎ、保守を掲げる安倍首相である。保守の根幹とは、歴史と国民統合である。引くに引けなくなった官房長官と一蓮托生となってアメリカの一基地の返還・移設をここまで政治化し、一部における沖縄ヘイトの風潮まで生み出してしまったことについて、安倍首相は、内心では不本意なのではなかろうか。しかし、仮にそうであったとしても、この政権下での施策はすべて、安倍首相の名前で歴史に刻まれる。


 だから最後に、宮城大蔵上智大学教授は、締めくくる。


「今からでも遅くはない。知事選後という好機に、普天間・辺野古問題を本来の軌道に載せるべく、指導力を発揮して欲しい。このままではいずれ天上で祖父や大叔父に対面したとき、彼らがなした政治的営為に、深く傷をつける軽率な政治であったと白眼視されるのではないか。だから本稿【上】の冒頭のように思うのである。『本当にそれでいいのですか?』」


 宮城大蔵上智大学教授の「荒涼たる光景の中で、沖縄の抵抗を押し切って辺野古新基地を建設することが、安倍政権の代表的な『実績』になるのだろうか」との指摘は、心情的には思うところもある。
 また、安倍晋三に関しての「安全保障環境の変容に応じた態勢整備といった『大きな絵』は語られず」「なるほど考えてみれば普天間・辺野古問題に安倍首相が直接的に関わった気配はほとんどない。」、との批判は頷くところである。
 だからこそ、今、沖縄について考える時なのだ。
 さらに、「菅の必死な理由とは」の指摘は、「菅氏にとっては、『県外移設』の公約を翻させ、水面下で『話しをつけた』はずの仲井真弘多前知事を選挙で下して登場した翁長知事と協議に応じることは、自らの政治手法の否定につながりかねず、自らの権勢を掘り崩す『蟻の一穴』と見えたのであろうか。」、との指摘にこれまた頷く。




by asyagi-df-2014 | 2018-09-30 07:01 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

日本政府が直視しなければならないこと。~沖縄タイムス20180922~

 沖縄タイムスの主張は、「沖縄への米軍基地集中がどういう事態を発生させているか、日米政府は現実を直視すべきだ。」、ということに尽きる。
 もちろんそれは、日本人一人一人に突き刺ささらなけねばならない言葉でもある。
沖縄タイムス(以下、「タイムス」)は、2018年9月22日、「[元米兵 再び無期懲役]基地集中の解消必須だ」、とその社説で論評した。
「タイムス」は、事実を次のように示す。


(1)「強姦(ごうかん)致死、殺人、死体遺棄の三つの罪に問われた元米海兵隊員で軍属だった被告(34)の控訴審判決で、福岡高裁那覇支部(大久保正道裁判長)は、無期懲役を言い渡した一審判決を支持した。」
(2)「事件は2016年4月、うるま市でウオーキング中だった女性会社員=当時(20)=が殺害され、恩納村の雑木林に遺棄された。」
(3)「判決は、被告がスラッパー(打撃棒)で被害者の後頭部を殴り、首を絞めたと事実認定。首の後ろ付近をナイフで数回刺すなどの暴行を加えたが強姦の目的を遂げず、死亡させ、遺体を恩納村の雑木林に遺棄したと認めた。」
(4)「控訴審で被告側は、殺人を認定した証拠が捜査段階の自白しかないと指摘し、殺意を示すほどの証拠価値はないと主張。殺人罪を無罪とした上で強姦致死と死体遺棄の両罪について有期懲役を求めたが、裁判所は退けた。」
(5)「被告は一審で黙秘を通した。今年7月に開かれた控訴審に被告の姿はなく結審。裁判ではこれまで一言も事件について語っていない。控訴審判決で無期懲役が言い渡された時も、被告は表情を変えなかった。黙秘は被告に認められた権利の一つだが、今回はその行使が逆に、被告の『反省のなさ』や『非情性』を象徴したように受けとめられた。判決を受け遺族は『裁判で被告人は人を殺した罪の意識を感じていないように見えた』とコメントを出した。」
(6)「被告からはこれまで被害者への謝罪もなく、遺族の無念さは募るばかりだ。」


 この事件は、もう一つの大きな問題点も焙り出した。


(1)「那覇地裁は被告に対し今年2月、遺族への賠償を命じる決定を出した。しかし被告に支払い能力がないため、遺族は4月、日米地位協定に基づき米政府に補償を求めた経緯がある。ところが当初、米政府は支払いに難色を示していた。」
(2)「日米両政府が、遺族に見舞金を支払うことに正式合意したと発表したのは6月。支払われたのは7月に入ってからだ。支払いを拒む米側に対し、日本側も負担する例外的対応でようやく取り付けた合意だった。」
(3)「日米地位協定は、米軍人らによる公務外の不法行為で本人に支払い能力がない場合、被害者側が米政府に補償金を求めることができると規定する。しかし今回の事件を見ても、被害者側が実際に補償にたどり着くには高い壁が立ちはだかっている。」


 「タイムス」は、こう締める。


「被害者が遺棄された恩納村の現場には祭壇が設けられ、事件から2年以上が経過した今も献花が絶えない。ウオーキング中という日常生活で起きた悲惨な事件で県民は、米軍基地と隣り合わせで暮らす現実を目の当たりにした。米兵による事件は続いている。今月7日夜には酒に酔った米陸軍兵の男が、高校生がいる家に侵入した。『殺される』と思った高校生は子守をしていた妹を抱えてはだしで逃げ出したという。沖縄への米軍基地集中がどういう事態を発生させているか、日米政府は現実を直視すべきだ。」


 「『殺される』と思った高校生は子守をしていた妹を抱えてはだしで逃げ出した」。
 これが、事実。




by asyagi-df-2014 | 2018-09-25 07:21 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

「平安名純代の想い風」が心を揺すぶる。(2)~沖縄タイムス20180919~

 「平安名純代の想い風」は、「沖縄の思い国連に 孤立深める米国 存在感薄い日本」、と綴る。
 いつものように、波風を起こし、人の心を揺さぶる。

 今回は、次のように始まる。


「ニューヨーク国連本部で18日(現地時間)に国連総会が開幕した。25日から始まる一般討論演説には、各国首脳や外相ら約200人が集結。北朝鮮を核兵器廃棄協議の場に招いた韓国の文在寅大統領が存在感を増す一方、トランプ米大統領は国際社会から孤立を深めるなど、国際舞台が変化している。」


 また、こう続ける。


(1)北朝鮮と韓国は6日、4月の南北首脳会談で署名した「板門店宣言」を国連の公式文書として加盟国に配布するよう国連に要請した。国連加盟国に、朝鮮半島の完全な非核化や朝鮮戦争終戦宣言の年内採択を目標とする同宣言を支持してもらうことで、朝鮮半島の平和を後押ししてほしいとの思いなのだろう。
(2)昨年9月、就任後初の国連総会の一般討論演説で、北朝鮮を「完全に破壊」する可能性に言及し、各国に衝撃を与えたトランプ大統領は、「脅し」から始めた北朝鮮との対話で激怒することが多かったようだ。
(3)ペンス副大統領の側近によると、今年2月、米側の要求に譲歩しない北朝鮮にいら立ったトランプ氏は、マティス国防長官に「韓国や沖縄の米軍を増強して圧力をかけろ」と伝えたこともあったそうだ。しかし、米朝会談の実現性が高まると、方針を転換。北朝鮮の要求を受け、マティス氏に米韓合同軍事演習の中止の検討を命じ、安倍首相にも方針を伝えた。
(4)これに慌てた安倍晋三首相は、「北朝鮮が非核化の具体的工程を提示するまでは、米韓軍事演習を中止すべきではない」と「助言」したが、トランプ氏は耳を傾けず、逆に安倍氏にいら立ちの矛先を向けたという。


 さらに続ける。


(1)マティス氏側近によると、沖縄県の埋め立て承認撤回は、トランプ氏にまだ報告されていない。気まぐれなトランプ氏が「バッド・ディール(悪い取引)」と怒る可能性を懸念しているのだそうだ。
(2)トランプ氏は大統領就任後、パリ協定離脱やイラン核合意破棄、国連人権委員会離脱、エルサレムの米大使館移転などを推し進め、国際的な指導力と信用を失いつつある。
(3)一方で、「戦争はしない」と北朝鮮と地道に対話を進め、米朝会談を実現させた韓国と、それを後押しした中国への信用が高まり、国際社会における相対的な関係は変化している。


 「平安名純代の想い風」は、「沖縄がどこに視点を据えるかは重要だ。」、と次のように指摘する。


「翁長雄志知事は2015年、ジュネーブの国連人権委員会で、沖縄の米軍基地は米軍が強制収用して造ったものであり、「沖縄が自ら土地を提供したものではない」と訴えた。朝鮮戦争が終結すれば、米軍が沖縄に駐留する理由もなくなり、新基地建設の根拠も消滅する。埋め立て承認が撤回された今、新基地建設は沖縄が合意していない計画だ。県は胸を張って国連に沖縄の思いを訴えてみてはどうか。」


 確かに、「9月平壌共同宣言」を受けた今、平和に向けて進み出さなければならない。



by asyagi-df-2014 | 2018-09-24 09:03 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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