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政府は「働き方」関連法案を提出。そもそも高プロは導入されてはいけない。(3)

 東京新聞は2018年4月7日、政府が「働き方」関連法案を国会に提出したことについて、「政府は六日、「働き方」関連法案を国会に提出した。長時間労働を助長すると批判された裁量労働制の対象拡大を削除するなどの修正をしたが、残業時間の罰則付き上限規制の導入や、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ制度)」の創設が盛り込まれ、過酷な労働を招きかねない点や、実効性が疑わしい内容が目立つ。対案を準備している野党側と激しい論戦になりそうだ。」、と報じた。
 琉球新報は2018年4月7日、「高プロ導入に過労死遺族から反対の声」との声を伝えるとともに、「働き方法案閣議決定 残業代ゼロ制度削除を」との社説の中で、「長時間労働を減らし健康な状態で働ける社会の実現につながるだろうか。」、と投げかけた。
 まず、琉球新報(毎日新聞配信)は遺族の声を次のように伝えた。


(1)「安倍晋三首相が『70年ぶりの大改革』として今国会での成立を目指す働き方改革関連法案には、対象を高収入の一部専門職の働き手に限定するとはいえ、労働時間の規制を初めて撤廃する『高度プロフェッショナル制度』(高プロ)が盛り込まれた。過労で大切な人を失った遺族からは『どんな職種でも、時間管理をなくしてはいけない。労働者に代わりはいても、家族に代わりはいないのだから』と、制度に反対する声が上がっている。」
(2)「高プロに該当する労働者は、年収1075万円以上の金融ディーラーや研究開発職などの専門職が想定されている。この枠組みが今後拡大されて、時間規制がない労働者が増えていくのではないかという懸念を、過労死遺族や労働問題に詳しい弁護士らは抱いている。」
(3)「2013年に過労死したNHK記者、佐戸未和さん(当時31歳)の父守さん(67)と母恵美子さん(68)は『人の命に関わる法案。過労死をなくすため、国会では一つ一つのテーマをきちんと議論してほしい』と語っている。」
(4)「両親が未和さんについて調べたところ、未和さんの時間外労働は亡くなる直前の1カ月に209時間に達していた。守さんは『未和のように労働時間がきちんと管理されなければ、過労死につながる。過労死防止に直結する規制強化を先行して議論すべきではないか』と訴える。法案の閣議決定を聞いて、恵美子さんは『高プロで企業が労働時間の管理を免れることによって、労災認定が難しくなってしまう。企業の都合の良い【働かせ方改革】になっているのではないか』と憤った。」
(5)「小児科医だった夫を過労自殺で亡くした『東京過労死を考える家族の会』代表の中原のり子さん(62)は、野党の会合に連日、足を運んで法案の行方を見つめてきた。14年に厚生労働省の協議会に参加して、同省と二人三脚で過労死防止法を作ったという思いがある。それだけに『その厚労省が、労働者とは正反対の方を向いた法案を作ったのは残念だ。今の社会に子どもたちを出せないと感じている。どんな職種でも時間管理は必要で、その原点に立ち返ってほしい』と語った。」
【古関俊樹、神足俊輔、市川明代】(毎日新聞)


 琉球新報は、この問題を次のように批判する。


(1)「政府は今国会の重要法案と位置付ける働き方改革関連法案を閣議決定した。長時間労働を是正する残業規制や、非正規労働者の処遇改善を盛り込む一方、労働時間規制の対象とならない『高度プロフェッショナル制度』を創設する。高度プロフェッショナル制度は、年収1075万円以上で高度な専門的知識を必要とする業務に従事する労働者が対象となる。」
(2)「経済界は『時間に縛られない働き方ができる』と主張している。しかし、労働時間の上限を原則1日8時間、週40時間などとする規制が適用されなくなる。残業や深夜・休日労働をしても割増賃金が支払われず、長時間労働を助長することになりかねない。実態は『残業代ゼロ制度』であり、過労死の温床になると懸念されている。」
(3)対象業務は「金融ディーラーや経営コンサルタントなどを想定」している。しかし「など」と記述しているため、なし崩し的に拡大され年収の上限も下がる可能性がある。」


 琉球新報は、労働者保護の観点に立った労働法制のあり方について、次のように主張する。


(1)「残業規制や待遇格差の改善と抱き合わせにせず、働き方改革関連法案から切り離して削除すべきだ。」
(2)「残業時間の抑制について法案は、年間720時間とし、繁忙期は月100時間未満、2~6カ月平均で80時間以内とした。720時間には休日に出勤した時間を含まないため最長で年960時間の残業が可能になる。労災認定の基準となる『過労死ライン』ぎりぎりである。長時間労働の抑制になっていない。誰のための改革なのか。上限規制を厳しくする必要がある。自動車運転業と建設業、医師は適用を5年間猶予しているが、例外なく適用すべきではないか。」
(3)「終業から翌日の始業までに一定の時間を置く勤務間インターバル制度について法案は『一定時間の休息時間の確保』を求める努力規定となっている。努力ではなく、企業側に具体的な時間の確保を義務化すべきである。」
(4)「安倍晋三首相は今国会を『働き方改革国会』と強調してきたが、法案作成の前提となった厚生労働省調査で2月に不適切なデータ処理や異常値が相次いで発覚した。働き方改革関連法案に盛り込む予定だった裁量制の適用業種拡大が、削除に追い込まれた。閣議決定も当初予定の2月後半からずれ込んだ。共同通信社が3月31日、4月1日の両日に実施した全国緊急電話世論調査によると、働き方改革関連法案について、今国会で成立させるべきかの問いでは『必要はない』が69・9%に対し『成立させるべきだ』は18・5%にとどまっている。」
(5)「長時間労働に歯止めをかける規制強化は急ぎたいが、国民は与野党による熟議を望んでいる。」


 確かに、この「働き方」関連法案の根本的問題は、「肝心の働く人々が置き去りにされている。」、ことにある。
 また、一括法案という安倍晋三政権の常套手段は、「残業時間の上限規制など働く人を守る規制強化と、官邸主導で進めてきた規制緩和を同時に進めることは矛盾する。」(東京新聞)、というものでしかない。
 まずは、遺族からの『どんな職種でも、時間管理をなくしてはいけない。労働者に代わりはいても、家族に代わりはいないのだから』との声に、耳を傾けなくてはならない。
 また、遺族からの「高プロで企業が労働時間の管理を免れることによって、労災認定が難しくなってしまう。企業の都合の良い『働かせ方改革』になっているのではないか」、との憤りの声を出発点としなければならない。
 結局、「高プロ」制度の導入は、『時間に縛られない働き方ができる』との経済界の主張には労働者保護の観点が抜け落ちていることから、長時間労働を助長するだけの結果を持たらすことになる。これまでも指摘されてきたように、「高プロ」の実態は『残業代ゼロ制度』である。
 したがって、「高プロ」の導入は、過労死の温床になる。
 この観点からすると、裁量労働制以上に規制を緩和するすることになる「高プロ」制度を導入することは、間違っている。したがって、今回の一括法案に、「高プロ」をそのまま残すことは到底許されない。

 であるとしたら、やはり、何度でも繰り返すしかない。
 大事なことは、「残業代や割増賃金の規制を緩めて、長時間労働や過労死が増える心配はないのか、という点だ。」(朝日新聞)、ということであった。
 結局、安倍晋三政権が固執する成長戦略の中では、「首相周辺は『首相は【是が非でも通す】と言っている』と明かす」(朝日新聞)という思惑が最優先され、大企業のより大きな収奪のための規制緩和が徹底されようとする。
 あらためて、安倍晋三政権は、政治が人の命を預かっていることを肝に銘じなければならない。




by asyagi-df-2014 | 2018-04-17 07:47 | 書くことから-労働 | Comments(0)

政府は「働き方」関連法案を提出。そもそも高プロは導入されてはいけない。(2)

 東京新聞は2018年4月7日、政府が「働き方」関連法案を国会に提出したことについて、「政府は六日、「働き方」関連法案を国会に提出した。長時間労働を助長すると批判された裁量労働制の対象拡大を削除するなどの修正をしたが、残業時間の罰則付き上限規制の導入や、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ制度)」の創設が盛り込まれ、過酷な労働を招きかねない点や、実効性が疑わしい内容が目立つ。対案を準備している野党側と激しい論戦になりそうだ。」、と報じた。


 朝日新聞は2018年4月7日、この「働き方」関連法案について、「『高プロはスーパー裁量労働』野党が批判 働き方法案、成立見通せず 過労死遺族も反発」、と次のように問題点を伝えた。


(1)「6日に国会に提出された働き方改革関連法案。柱の一つとなった『高度プロフェッショナル制度』(高プロ)には野党や過労死遺族から批判が相次ぐ。国会を揺るがす問題の発覚が相次ぐなか、審議日程も窮屈になっており、政権が『最重要』と位置づける法案の今国会の成立には黄信号がともっている。」
(2)「法案には労働時間規制の緩和策として、高プロのほか、実際に働いた時間にかかわらず一定時間働いたとみなす『裁量労働制』の対象を法人営業職の一部などに広げる内容が盛り込まれるはずだった。だが、根拠となったデータが不適切だったことが発覚して全面削除され、高プロだけが残った。アナリストなどの専門職で、年収が約1千万円以上と高い人を労働時間規制そのものから外す内容だ。」
(3)「裁量労働制は、残業時間が一定とみなされることはあっても、深夜・休日労働をした場合は割増賃金が必要になる。一方、高プロの場合は労働時間と賃金の関係が一切、切れるため、それも払われなくなる。政府は、高プロの適用には本人の同意が必要で、適用者には年104日以上の休日を与えることを義務づけるなどの健康確保措置を設けると説明する。ただ、今の法案では4週間で4日休ませれば、残りの24日は24時間働いても違法にならない。NHK記者だった娘を過労死で亡くした佐戸恵美子さん(68)は『働かせ放題の制度』と批判。野党は、削除された裁量労働制の対象拡大より長時間労働を助長する恐れがあるとして、『スーパー裁量労働制だ』と指摘する。」
(4)「新たにできる罰則付きの残業時間の上限設定は、働き過ぎの防止策として評価される面がある。上限をめぐっては、安倍晋三首相が議長を務めた『働き方改革実現会議』で労使がギリギリの調整をした末、忙しい月は『「100時間未満』とすることで合意した。ただ、罰則付きの規制は中小企業には厳しいとの指摘が与党にもある。また、『100時間』は過労死認定基準で目安とされている時間数のため、過労死遺族や一部野党には『100時間まではOK、と思われかねない』との懸念もある。」
(5)「安倍政権は今回の法案を、1947年の労働基準法の制定以来の『大改革』と位置づける。労働時間規制を緩める内容と、強める内容がセットになっている法案だけに、個々の政策に対する議論がどのように進むかも法案審議の焦点になる。」
(松浦祐子)


 また、朝日新聞は、国会での審議等における問題点についても、次のように指摘する。


(1)「安倍晋三首相は今国会を『働き方改革国会』と名付けて臨んだ。成立できなければ首相の政策遂行能力に疑問符がつきかねない。裁量労働制の対象拡大を削除したのも、周囲は成立への『覚悟の表れ』と受け止める。首相周辺は「首相は『是が非でも通す』と言っている」と明かす。とはいえ、今国会での成立は見通せない情勢だ。」
(2)「閣議決定は当初の想定よりすでに1カ月以上遅れている。首相は今月17~20日に米国を訪問する予定。衆院本会議での法案の趣旨説明と質疑には首相出席が必要なため、審議入りは早くても帰国後になる。」
(3)「審議入りの日程をめぐる与野党の協議も、野党側が高プロに強く反対していることから、難航が予想される。さらに野党側は高プロを削除した対案も提出し、対抗する構えだ。成立を確実にするため、6月20日までの会期を延長することも難しいとの見方が広がる。9月の自民党総裁選で3選を目指す首相にとって、会期を延長すればその分、野党からの追及を受けやすい。自民党国会対策委員会の幹部は『国会を開いていることが一番のリスク』と言う。」
(4)「働き方改革関連法案を扱う厚生労働委員会では、受動喫煙の防止策強化のための健康増進法改正案も控える。与党は『働き方改革』を優先させ、『受動喫煙防止策』を後回しにして成立を期す構えだが、厳しい状況には変わりない。」
(5)「今国会では他にも重要法案を抱える。カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案は与党内で合意したばかり。財務省の公文書改ざん問題や自衛隊のイラク派遣時の日報問題で与野党の対立が激化するなか、重要法案は軒並み綱渡りの審議を強いられそうだ。」
(笹川翔平、平林大輔、別宮潤一)


 さらに、朝日新聞は2018年4月7日、「働き方改革 労働者保護に焦点絞れ」、とその社説で論評した。


(1)「安倍政権が今国会の最重要法案と位置付ける働き方改革関連法案が国会に提出された。長時間労働是正のための残業時間の罰則付き上限規制と、非正社員の待遇改善に向けた同一労働同一賃金が柱だ。いずれも喫緊の課題である。だが法案には、専門職で年収の高い人を労働時間の規制から外す『高度プロフェッショナル制度(高プロ)』の新設も盛り込まれた。」
(2)「長時間労働を助長しかねないと、多くの懸念や不安の声がある制度だ。緊急性の高い政策と抱き合わせで拙速に進めることは許されない。切り離して、働き過ぎを防ぐ手立てや制度の悪用を防ぐ方策を、しっかりと議論するべきである。政府・与党に再考を求める。」
(3)「関連法案は、当初、2月中の閣議決定をめざしていた。大幅に遅れたのは、あらかじめ決められた時間を働いたとみなす裁量労働制をめぐり、首相の答弁撤回や、法案づくりの参考にされた調査データの不備など、問題が相次いだためだ。その結果、政府は今回の法案から裁量労働制の対象拡大を削除した。だが、問われているのは、残業代や割増賃金の規制を緩めて、長時間労働や過労死が増える心配はないのか、という点だ。裁量労働制以上に規制を緩和する高プロを、そのまま法案に残す判断は理解しがたい。」
(4)「与党との調整で、法案には管理職を含め、働く人たちの労働時間の状況を把握するよう、会社に義務付けることが新たに加えられた。だが、これはもともと法律の成立後に省令でやることになっていたものだ。一方、裁量労働制の拡大を削除するのに伴い、企画業務型の裁量労働制の対象者を『勤続3年以上』とする要件を新たに設けることや、健康確保措置の強化策まで見送りになった。」


 朝日新聞は、最後に、次のようにまとめる。


(1)「裁量労働制をめぐっては昨年1年間で、272事業所が是正勧告や指導を受けている。野村不動産の違法適用は、問題が表に出た、まれな例に過ぎない。」
(2)「対象拡大を見送ったからといって、裁量労働制がはらむ問題は放置できない。現状を改め、指導・監督の実効性を高めるために何をすべきか。議論を進めるべきだ。」
(3)「野党は、働く人々を守る規制の強化に重点を置いた、働き方改革の対案を準備している。高プロを関連法案から切り離せば、与野党が歩み寄り、話し合う余地は生まれるはずである。」
(4)「だれのための働き方改革か。政府・与党はそのことを考えるべきだ。」


 大事なことは、「残業代や割増賃金の規制を緩めて、長時間労働や過労死が増える心配はないのか、という点だ。」(朝日新聞)、ということであった。
 この観点からすると、裁量労働制以上に規制を緩和するすることになる「高プロ」制度を導入することは、間違っている。したがって、今回の一括法案に、「高プロ」をそのまま残すことは到底許されない。
 結局、安倍晋三政権が固執する成長戦略の中では、「首相周辺は『首相は【是が非でも通す】と言っている』と明かす」(朝日新聞)という思惑が最優先され、大企業のより大きな収奪のための規制緩和が徹底されようとする。
 であるとしたら、やはり、繰り返すしかない。
 確かに、この「働き方」関連法案の根本的問題は、「肝心の働く人々が置き去りにされている。」、ことにある。
 また、一括法案という安倍晋三政権の常套手段は、「残業時間の上限規制など働く人を守る規制強化と、官邸主導で進めてきた規制緩和を同時に進めることは矛盾する。」(東京新聞)、というものでしかない。
 あらためて、安倍晋三政権は、政治が人の命を預かっていることを肝に銘じなければならない。





by asyagi-df-2014 | 2018-04-16 06:15 | 書くことから-労働 | Comments(0)

政府は「働き方」関連法案を提出。そもそも高プロは導入されてはいけない。(1)

 東京新聞は2018年4月7日、政府が「働き方」関連法案を国会に提出したことについて、「政府は六日、「働き方」関連法案を国会に提出した。長時間労働を助長すると批判された裁量労働制の対象拡大を削除するなどの修正をしたが、残業時間の罰則付き上限規制の導入や、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ制度)」の創設が盛り込まれ、過酷な労働を招きかねない点や、実効性が疑わしい内容が目立つ。対案を準備している野党側と激しい論戦になりそうだ。」、と報じた。
 また、この「働き方」関連法案の問題について、次のように指摘する。


(1)「法案は、労働基準法や労働契約法など計八本の改正案の一括法案。施行日は残業時間規制や残業代ゼロ制度、正社員と非正規社員との間で賞与や手当などで不合理な差別を禁止する『同一労働同一賃金』など内容ごとに異なり、労務体制が弱い中小企業は大企業より一年遅くなるものが多い。」
(2)「残業時間規制は一九四七年の労働基準法制定以来、初めて設ける。年間の上限は七百二十時間。繁忙期では月百時間未満、二~六カ月は平均八十時間以内とする。長時間労働が特に問題視される建設、運輸、医師は五年間適用を猶予する。」
(3)「月百時間未満の残業は、厚生労働省が脳・心臓疾患を労災認定する目安で『過労死ライン』と呼ばれる水準。百時間に達しないケースでは、労災認定が難しくなる恐れがある。立憲民主党の対案は月八十時間未満とする方針だ。」
(3)「残業代ゼロ制度は、年収千七十五万円以上の金融ディーラーや研究開発職など一部専門職を労働時間規制から除外。残業代だけでなく、休日や深夜の割増賃金も支払われなくなる。野党の対案は同制度を盛り込んでいない。」
(4)「法案は、終業から再び始業するまでに一定の休息時間をおく『インターバル規制』も設けるが、『制度の普及に努める』として努力義務にとどめた。立民の対案や、民進、希望両党の対案は義務化する方向だ。」
(5)「残業時間規制について『東京過労死を考える家族の会』の中原のり子代表は『法案の内容では過労死は防げない』と指摘。インターバル規制に関し、労働問題に詳しい上西充子法政大教授は『法案に明記されることは歓迎したい』としながら『努力義務では実効性に乏しい』と話す。」
(木谷孝洋)


 さらに、東京新聞は2018年4月7日、このことについて、「働き方法案 これでは過労死防げぬ」、と社説で論評した。
 東京新聞の主張は次のものである。
まず、東京新聞は、安倍晋三政権の姿勢そのものに、「肝心の働く人々が置き去りにされている。」、と根本的な問題として批判を加える。


(1)「働き方改革関連法案は閣議決定され国会で本格的な論戦が始まる。その前に言っておきたい。これまでの法案を巡る政府の対応は不適切、不誠実だった。肝心の働く人々が置き去りにされている。」
(2)「安倍政権が『働き方改革』を掲げる狙いは、経済界が望む裁量労働制の対象拡大と労働時間規制から外す高度プロフェッショナル制度(高プロ)創設の規制緩和策を実現しアベノミクスを推し進めることではないのか。それに差し障りのある情報は隠したい。その姿勢が論議を混乱させている。」
(3)「野村不動産の社員が、裁量労働制の対象外なのに違法に適用され自殺していた。長時間労働による過労が原因で労災認定もされた。政府は不適切な運用をする企業を特別指導した実績例としてこのケースを説明した。指導の事実は会見まで開いて公表したのに、過労自殺の事実は公表しなかった。だが、違法に適用され犠牲者まででていたことの方が指導の成果より重要である。公表しなかった点などを国会で野党に追及されても納得できる説明はないままだ。」
(4)一般の労働者の労働時間よりこの制度で働く人の方が少ないと強調しようと不適切なデータを利用していたこともそうだが、健康を害しかねない働き方だとの印象を与えたくなかったのではないか。不適切データ問題で裁量労働制の対象拡大は法案から削除された。だから説明する責任はないと政府は考えるべきではない。」


 また、東京新聞は、次のことを指摘する。


(1)「労使であらかじめ労働時間と賃金を決める裁量労働制は、労働者に業務量の調整に裁量があるとは言い難く、長時間労働を助長すると指摘されている。今、改善策が要るのはあきらかである。」
(2)「ところが、働く人の健康を守る手だても法案から削られてしまった。新入社員のような裁量を発揮できない人を対象外にする要件を設け、終業から始業までの休息時間の確保や有給休暇の付与などの対策を企業に義務付ける内容で、必要な対策だった。」


 さらに、スーパー裁量労働制高プロ」について、「高プロは法案に盛り込まれた。野党から『スーパー裁量労働制』だと批判もでている。法案は国会論議を通し再考すべきだ。」、と批判を加える。
東京新聞は、最後に、「残業時間の上限規制など働く人を守る規制強化と、官邸主導で進めてきた規制緩和を同時に進めることは矛盾する。多くの人は仕事への強い責任感がある。そこにつけこんだような制度をつくり働かせていいはずがない。制度のありようは、働く人の命にかかわると政府は自覚すべきだ。」、と断ずる。   


 確かに、この「働き方」関連法案の根本的問題は、「肝心の働く人々が置き去りにされている。」、ことにある。
 また、一括法案という安倍晋三政権の常套手段は、「残業時間の上限規制など働く人を守る規制強化と、官邸主導で進めてきた規制緩和を同時に進めることは矛盾する。」(東京新聞)、というものでしかない。

 あらためて、安倍晋三政権は、政治が人の命を預かっていることを肝に銘じなければならない。




by asyagi-df-2014 | 2018-04-07 10:12 | 書くことから-労働 | Comments(0)

安倍晋三政権は、働き方改革法案を4月上旬にも閣議決定し、今国会での成立を目指す。

 朝日新聞は2018年3月29日、表題について次のように報じた。


(1)「自民党厚生労働部会は29日、安倍政権が今国会の目玉法案と位置づける働き方改革関連法案を了承した。政府は与党内の手続きを経て、4月上旬にも法案を閣議決定し、今国会での成立を目指す。」
(2)「政府は当初、2月中の閣議決定を目指していたが、法案の根拠となる労働時間の不適切データ問題を受けて裁量労働制への疑念が深まり、裁量労働制の対象拡大を法案から全面削除する事態に追い込まれた。」
(3)「野党は調査データの不備を結束して追及。労働時間のデータに『異常値』が相次いで見つかり、厚生労働省は対応に追われた。さらに、残業時間の罰則付き上限規制の対象から中小企業を外すよう求める声が自民党内から出て意見集約が難航。中小企業の実態に配慮した助言・指導をするとの付則を労働基準法改正案に加え、ようやく了承にこぎつけた。」
(4)「法案は、残業時間の上限規制と、非正社員の待遇改善を図る『同一労働同一賃金』が柱だが、年収の高い人を労働時間規制から外す『高度プロフェッショナル制度』(高プロ)の導入も盛り込む。裁量労働制の対象拡大は削除したが、政権はなお高プロの新設を目指している。野党は労働時間規制を完全に外す高プロを『スーパー裁量労働制』」と呼んで批判を強めており、後半国会の審議で与野党の対立が激化しそうだ。」
(村上晃一)




by asyagi-df-2014 | 2018-03-29 20:47 | 書くことから-労働 | Comments(0)

加藤勝信厚生労働相は、裁量労働制に関するデータを撤回し、裁量労働制の実態調査をやり直す考えを示す。

 毎日新聞は2018年3月23日、表題について次のように報じた。


(1)「働き方改革関連法案をめぐる労働時間の調査データに『異常値』が相次いで見つかった問題を受け、加藤勝信厚生労働相は23日の衆院厚生労働委員会で、問題となっている調査から裁量労働制に関するデータを撤回すると表明した。立憲民主党の西村智奈美氏の質問への答弁。加藤氏は、裁量労働制の実態調査をやり直す考えも示した。」
(2)「撤回するのは、2013年度の『労働時間等総合実態調査』のうち、裁量労働制で働く人の労働時間を調べた部分。1日の労働時間が『1時間以下』となるなどの異常値が見つかり、野党から撤回を求められていた。加藤氏は裁量労働制に関するデータについて、『実態を反映したものとは確認できなかった』として、『撤回をさせていただく』と述べた。政府は労働時間に関する不適切データ問題を受け、働き方改革関連法案から裁量労働制の対象拡大を全面削除し、今国会への提出を断念した。法案の削除に続き、データの撤回に追い込まれた形だ。」
(3)「裁量労働制の対象拡大に特化した法案の提出は来年以降にずれ込む見通し。法案の根拠となるデータを撤回したことで、法案を出し直すには裁量労働制の実態調査をやり直す必要がある。加藤氏は異常値が見つかった調査と同じ方法ではなく、『新たな形での制度設計をして調査を実施していく』考えを示し、『ヒアリング等の実態把握もあわせて行いたい』と述べた。ただ、具体的な調査方法については『外部有識者との議論も聞きながら詰めていきたい』と述べるにとどめた。」
(村上晃一)




by asyagi-df-2014 | 2018-03-23 20:04 | 書くことから-労働 | Comments(0)

裁量労働制を削除しただけで済まされる話ではない。~沖縄タイムス20180303~

 沖縄タイムス聞は2018年3月3日、「[裁量労働制削除]『高プロ』も同じ問題だ」、と安倍晋三政権に突きつけた。
どういうことなのか。
この国で起こっていること、それは、働き方改革が、労働者の命を守るのではなく、逆に切り捨てに向かっているのが実情であり、狂いが生じた裁量労働制を止めただけでは収まらないということを言っているのである。


 沖縄タイムスは、事実関係を次のように指摘する。


(1)「今国会に提出予定の働き方改革関連法案から、裁量労働制の適用拡大を削除すると、安倍晋三首相が参院予算委員会で正式表明した。安倍首相が1月の衆院予算委で『裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方に比べれば一般労働者より短い』と答弁したことに端を発した問題である。」
(2)「答弁の基になった厚生労働省の調査は、裁量制労働者と一般労働者で手法の異なる不適切なものだった。安倍首相は答弁を撤回し陳謝する事態に追い込まれ、その後も厚労省調査に数百件もの『異常値』が発見された。」


 沖縄タイムスは、これについて次のように押さえる。


(1)「こんなずさんな調査を法律の必要性の根拠とすることはできない。関連法案から削除するのは当然である。」
(2)「裁量労働制は、実際の労働時間に関係なく、あらかじめ労使で決められた時間を働いたとみなし、その分だけの賃金を支払う制度だ。厚労省は裁量労働制で働く人の労働時間の実態を再調査し、労働政策審議会で改めて協議してもらう考えだ。これまた当然である。」
(3)「新たな調査と同時に、今回の不適切な調査がなぜ起きたのか、その検証も不可欠だ。」


 そして、沖縄タイムスは、「高プロ」の問題について、「関連法案の4本柱は(1)残業時間の上限規制(2)同一労働同一賃金の導入(3)高度プロフェッショナル制度(高プロ)の創設(4)裁量労働制の適用拡大-である。裁量労働制を削除したからといって問題が解決したわけではない。高プロも長時間労働につながりかねない同じ問題を内包しているからだ。」、と結論づける。


 沖縄タイムスは、この問題について、このように整理を行う。


(1)「労働基準法は『労働時間の上限を1日8時間』『残業には割増賃金を支払う』と定めている。高プロは一部専門職をその労働時間規制から完全に外すものである。」
(2)「法案には対象職種は具体的に示されていないが、厚労省は金融商品の開発業務やコンサルタントなどの専門職で、年収1075万円以上の人を想定している。政府は『時間ではなく成果で賃金が支払われる』などと柔軟な働き方のメリットを強調する。」
(3)「ほんとうにそうなのか。裁量労働制は深夜、休日の割増賃金が支払われるが、高プロにはそれもない。労働組合や過労死遺族らは『残業代ゼロで過剰な仕事量を押し付けられ、過労死が増える』と危惧する。野党は『スーパー裁量労働制』と批判している。導入されれば、対象職種は省令で決めることができ、広がっていく懸念が拭えない。労働者の視点に立つならばこちらも法案から削除すべきだ。」


 沖縄タイムスは、最後に、安倍晋三政権に対して、次のように要求する。


「働き方改革関連法案は8本の法律の改正案を抱き合わせたいわゆる『束ね法案』である。労働側が求める残業規制の強化と、経済界が長年要望している労働時間規制の緩和という方向性の違う政策を1本の法案として提出しようとするものである。2015年の安全保障関連法案も10本の法律の改正案を抱き合わせた『束ね法案』による乱暴なやり方だった。政府が17年にまとめた『働き方改革実行計画』には『働く人の視点に立って、労働制度の抜本改革を行う』とある。原点に立ち返るべきだ。」


 確かに、このままでは、労働組合や過労死遺族らが指摘するように『残業代ゼロで過剰な仕事量を押し付けられ、過労死が増える』、ことが実態となってしまう。まさしく、「高プロ」は、「スーパー裁量労働制」なのである。
 とするなら、まずは、労働者の命を守るという視点に立ち、「高プロ」も法案から削除しなければならない。




by asyagi-df-2014 | 2018-03-06 06:58 | 書くことから-労働 | Comments(0)

日本の労働法制は労働者の命を守れない。違法適用の裁量労働の社員が、過労自殺。

 毎日新聞は2018年3月5日、表題について次のように報じた。


(1)「裁量労働制を違法に適用したとして厚生労働省東京労働局から特別指導を受けた不動産大手「野村不動産」(東京)の50代の男性社員が過労自殺し、労災認定されていたことが関係者への取材で明らかになった。男性も裁量労働制を違法適用されていたという。」
(2)「政府は今国会に提出を予定する働き方改革関連法案から裁量労働制の対象拡大を削除し、来年以降に提出を先送りする考えだが、現行の制度でも過労死が防げていない実態が判明した。」


 また、この男性社員の労災認定について次のように報じた。


(1)「関係者によると、男性は東京本社に勤務し、個人が所有する住宅を賃貸する業務を担当していたが、2016年9月に自殺した。顧客などへの対応に追われて長時間労働が続いており、残業が月180時間を超えることもあったという。遺族が労災申請し、昨年12月に労災と認定された。」
(2)「野村不動産は当時、会社の中枢で企画立案をする人に限り適用できる企画業務型裁量労働制を、社員約1900人のうち約600人に適用し、男性もその一人だった。東京労働局は昨年12月、裁量労働制を適用した社員に営業など対象外の業務をさせたとして、同社の宮嶋誠一社長に是正を求める特別指導をしたと発表した。ただ、社員の労災認定は明らかにしていない。」
(3)「野村不動産は今年4月から裁量労働制を廃止する方針。安倍晋三首相や加藤勝信厚労相は今国会での答弁で、同社への特別指導を裁量労働制の違法適用を取り締まった事例として挙げている。」


 さらに、この事例に合わせて、「『高プロ』も乱用の懸念」、と続けた。

(1)「裁量労働制は実際の労働時間ではなく、あらかじめ決めた『みなし労働時間』に基づいて残業代込みの賃金が支払われる。このため労働時間管理が甘くなり、過労死遺族から『長時間労働につながる恐れがある』という声が上がっていた。野村不動産のケースのように、違法適用されても外部からのチェックが難しい面もあるとされる。」
(2)「こうした懸念は、政府が働き方改革関連法案に盛り込む予定の『高度プロフェッショナル制度』(高プロ)にも共通している。高プロは年収が1075万円以上の一部専門職を労働時間規制の対象から外す制度で残業代が支払われなくなる。年104日の休日を取得させるなど健康確保措置も企業に義務付けられるが、他の日は長時間労働をさせても違法ではない。制度が乱用される懸念は残る。」
(3)「安倍晋三首相は今国会の答弁で、『時間ではなく成果で評価される働き方を労働者が自ら選択できる』と高プロを創設する意義を強調している。一方、野党は『高プロは【スーパー裁量労働制】。根っこは一緒だ』と批判を強めており、政府に法案から高プロを外すよう求めている。」
【古関俊樹】




by asyagi-df-2014 | 2018-03-05 12:33 | 書くことから-労働 | Comments(0)

安倍晋三政権の働き方改革-裁量労働制削除-を考える。

 東京新聞は2018年3月1日、表題に関連して次のように報じた。


(1)「安倍晋三首相は一日の参院予算委員会で、今国会に提出予定の『働き方』関連法案から裁量労働制の対象を拡大する部分を削除すると正式表明した。高収入の専門職を労働時間規制から外す『高度プロフェッショナル(残業代ゼロ)制度』創設については『予定通り今国会に提出する法案に盛り込む』と強調した。民進党の大塚耕平代表への答弁。」
(2)「首相は裁量労働制を巡る厚生労働省のデータに多数の不備があったことについて『精査せざるを得なくなったことを重く受け止めている』と表明。実態把握に努めるとともに、裁量労働制の対象拡大部分を法案から『全面削除する』と語った。」
(3)「大塚氏は、法案に含まれる残業時間の罰則付き上限規制や非正規労働者の待遇改善を図る『同一労働同一賃金』について『われわれも賛成だ』と指摘。長時間労働につながるとの批判がある残業代ゼロ制度も関連法案から削除すれば『前向きに審議に応じられる』と迫った。」
(4)「これに対し首相は『柔軟な働き方を可能にし、生産性の向上にもつながる』と拒否。残業規制と『同一労働同一賃金』、残業代ゼロ制度創設を一括して提出する考えを示した。」
(5)「残業代ゼロ制度を巡っては、立憲民主、希望、民進、共産、自由、社民の野党六党の国対委員長は国会内で会談し、関連法案から切り離すべきだとの認識で一致。立憲民主党の辻元清美国対委員長が一日、自民党の森山裕国対委員長と国会内で会談し、切り離しを求めた。公明党の山口那津男代表は一日の党中央幹事会で、関連法案から裁量労働制の対象拡大を削除するとした首相の判断について『大きな決断だ』と評価。関連法案について、残業代ゼロ制度も含めて『大改革を成し遂げていく政府、与党の意思は変わりはない』と成立に向けて努力する意向を強調した。菅義偉(すがよしひで)官房長官は一日午前の記者会見で、裁量労働制の対象拡大部分を削除した関連法案の国会提出時期について『速やかに(与党と)調整し次第、対応する』と話した。」
(6)「<残業代ゼロ制度> 専門的な業務を行う事務職を対象に、労働時間の規制を外す制度。導入されれば、残業時間や休日・深夜の割増賃金が一切支払われなくなるため、長時間労働につながるとの懸念がある。現在検討中の法案では、対象者は年収1075万円以上で、金融ディーラーや研究開発職などの専門職に限られている。導入には本人の同意が必要。裁量労働制は労働時間の規制は残した上で、実際に働いた時間に関係なく、あらかじめ労使で決めた時間を働いたとみなす制度。」


 こうした安倍晋三政権の動きに対して、2018年3月2日には、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、日本経済新聞、東京新聞が、その社説でこのことについて論評した。
 この社説をもとに、表題について考える。
 まずは、それぞれの社説の題目は次のようになっている。
まあ、いつものように、朝日・毎日・東京対読売・日経というかたちである。この違いは、どこにその軸足を置くのかということから起こる。それは、「高プロ」制度を、「脱時間給」制度の創設として捉えるかどうかとして、端的に表れる。


①朝日新聞社説-働き方改革 「高プロ」制度も削除を
②毎日新聞社説-裁量労働拡大を今国会断念 元々「一括」が無理だった
③東京新聞社説-裁量労働制 断念で幕引きとするな
④読売新聞社説-裁量労働制断念 冷静に審議できる環境整えよ
⑤日本経済新聞社説-裁量労働拡大をいつまで先送りするのか


 この五社の社説の必要な部分をを要約する。


Ⅰ.『高プロ』をどのように捉えているのか


(朝日新聞)
(1)「納得できない。高プロも法案から削除して出直すべきだ。働き過ぎに歯止めをか ける規制の強化こそ急がねばならない。裁量労働制を削除する理由について、首相は『国民が(政策立案に使われた労働実態調査の)データに疑念を抱く結果になった』と語った。しかし、問われているのは単なるデータの問題ではない。規制を緩めて企業が残業代の支払い義務を免れると、歯止めがなくなって長時間労働が横行するのではないか。その懸念と不安に政府が答えられていないことが問題の根本だ。その構図は今も変わっていない。」
(2)「働き方改革法案の本来の目的は、残業時間に上限を設け、長時間労働を是正することだ。その規制強化が及ばないのが、裁量労働制と高プロである。」
(3)「裁量労働制では、実際の労働時間に関係なくあらかじめ定めた時間を働いたとみなし、その時間分の残業代しか出ない。高プロは、専門職で高年収の人を規制の外に置く。深夜・休日の割増賃金もなく、裁量労働以上に長時間労働につながる懸念は大きい。」
(4)「二つの制度では働く時間を自由に決められると、首相は今も利点を強調する。だが、多くの職場では仕事の量を自分で決められないのが実態だ。裁量労働では仕事の時間配分を具体的に指示してはいけないが、守られていない例が少なくない。高プロには指示を禁じる規定すらない。」
(5)「一連の規制緩和策は、安倍政権が成長戦略の一環として方針を決め、厚生労働省の審議会が追認してきたのが実情だ。審議会では労働側の反対意見を押し切って結論が出され、議論が尽くされたとは言い難い。」


(毎日新聞)
(1)「首相は、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す『高度プロフェッショナル(高プロ)』制度の創設は外さず、残業時間規制などと抱き合わせにした法案を今国会に提出する考えを変えていない。」
(2)「『高プロ』は裁量労働制と同様、経営者側の長年の要望を受けた制度で、首相は従来、これらを一体として改革することが『企業の生産性向上につながる』と力説してきた。」


(東京新聞)
(1)「政府は、労働時間規制から外す働き方で『残業代ゼロで働かせ放題になる』と批判のある高度プロフェッショナル制度(高プロ)の創設は法案に盛り込む方針だ。首相は一日の国会で『柔軟な働き方を可能とし、生産性の向上につながっていく』と意義を強調した。」
(2)「だが、労働者自身に働き方を決められる裁量がほとんどないのが実態ではないか。長時間労働が助長され過労死が増えると批判される点では、裁量労働制と同じだ。高プロ創設も法案から切り離し再考する必要がある。」


(読売新聞)
(1)「野党は、脱時間給制度についても『過労死を誘発する大改悪』などと批判している。不安をいたずらにあおるような決めつけは不毛だ。具体的な対案を提示し、建設的な論戦を挑んでもらいたい。」
(2)「野党の『長時間労働を助長する』との批判は一面的過ぎる。」


(日本経済新聞)
(1)「社会のこうした変化に備える改革が、裁量労働拡大であり、成果をもとに賃金を払う『脱時間給』制度の創設である。裁量労働の拡大では、法人顧客への提案業務をともなう営業職などが新たに対象になる。一部の専門職などに限られている対象者が広がる。最初の法案が提出されてからこの4月で丸3年になる。日本の成長力の底上げを考えるなら、裁量労働制の拡大をこれ以上、先延ばしする時間は本当はない。法案に残す脱時間給制度の新設は政府が意義を十分に説く必要がある。」
(2)「今回の国会論議の混乱は首相が不備なデータをもとに裁量労働制が労働時間の短縮につながるかのような答弁したことに端を発している。政府内には裁量労働の拡大について、実態を把握し直さない限り推し進めないとの声がある。しかし、そもそも裁量労働制は、働く時間の短縮を目的とした制度ではない。厚生労働省の労働政策審議会はこれまで相当の時間をかけて議論してきた。国会審議の先延ばしは日本の生産性の低迷を長引かせるだけだ。」


Ⅱ.一括法案という手法について


(毎日新聞)
(1)「そもそも経営者側が求める規制緩和と、労働者側の視点に立った残業規制を抱き合わせて一括法案にすること自体に無理がある。今回はその矛盾が表れただけである。」(2)「一括法案に野党が反対すれば『野党は残業規制にも反対した」とアピールできる。そんな狙いもあるはずだ。やはり、一つ一つ法案を切り離し国会で丁寧に検討すべきだ


(東京新聞)
(1)「関連法案は、多岐にわたる制度変更を盛り込んだ八本の法案を一本に束ねる。個々に議論を重ねるべき重要な制度が多い中で、一括して法案を通そうとする安倍政権の姿勢は乱暴にすぎる。」


Ⅲ.その他の主張

(朝日新聞)
(1)「一連の規制緩和策は、安倍政権が成長戦略の一環として方針を決め、厚生労働省の審議会が追認してきたのが実情だ。審議会では労働側の反対意見を押し切って結論が出され、議論が尽くされたとは言い難い。」
(2)「都合の良いデータだけを見て、批判や異論に耳を傾けない。国会審議の混乱は、結論ありきで突き進む政権の体質が生んだと言えるだろう。首相の姿勢が問われている。そのことを自覚すべきだ。」


(毎日新聞)
(1)「遅すぎた決断と言うべきだろう。」
(2)「ただしこれで一件落着ではない。この問題は、首相が1月末の国会で、野党の懸念に反論するため『裁量労働制で働く人の労働時間は一般労働者より短いというデータもある』と自ら持ち出したのが始まりだ。首相は再度実態を調査し、裁量労働制部分は今国会後、改めて提出する意向だという。しかし、まず必要なのは、なぜずさんな調査となったかの検証だ。厚労省が言うように単なるミスだったのか。『裁量労働制は長時間労働につながらない』という結論を導き出す意図が最初からあったのか。公正さという政治の根幹に関わる疑問は消えていない。」
(3)「首相が削除を表明したのは新年度予算案が衆院を通過し、年度内の成立が確実になった直後だ。国会はこの1カ月、データ問題に集中した。もっと早く決断していれば、北朝鮮問題など他の課題にも審議時間を割けたはずだ。その責任も大きい。」


(東京新聞)
(1)「『国民に疑念を抱かせた』。首相は、裁量労働制部分の法案からの削除についてこう述べた。今国会への提出も断念する。発言はその通りである。しかし、疑念は一向に解消していない。一般の労働者よりこの制度で働く人の労働時間が短いとの不適切な比較データをなぜ厚生労働省が作成したのか。どんな意図で誰の指示があったのか。この制度による働き方についてどう考えているのか。政府は、この疑問に依然として十分に答えていない。首相は国会で『きっちり実態把握をしない限り、政府全体として前に進めない』と制度に対する新たな調査を行う意向を示した。ならば、政府内でのデータ作成の経緯も調査し公表すべきだ。」
(2)「対象業務の拡大は経済界が求めており、官邸主導で議論が進められた。政策の方向を決めてから厚労省の労働政策審議会に諮られた経緯がある。労政審には今回問題となった比較データが提供されたわけではない。逆に議論に必要な情報が十分に提供されていたのか疑問も残る。」
(3)「裁量労働制は、あらかじめ労使で労働時間と賃金を決める働き方だ。ブラック企業が悪用し長く働かせるケースが問題化している。国会ではこうした問題点や対策の議論こそ求められている。」
(4)「働き方は多くの人の生活に影響する。しかも二つの制度は働く人の命と健康に深くかかわる。政府はその重みをかみしめるべきだ。」


(読売新聞)
(1)「法案の根拠となるデータに不備があった以上、今国会成立を断念したのはやむを得まい。政府は、早急に態勢を立て直さなければならない。」
(2)「政府は3月中にも働き方改革関連法案を国会に提出する。残業時間の上限規制、正規と非正規の待遇差を是正する同一労働同一賃金、高収入の専門職を労働時間規制から外す脱時間給制度の創設などを盛り込む方針だ。首相は今国会を『働き方改革国会』と位置づける。労働力人口が減少する中、働きやすい環境を整え、生産性向上につなげることが重要である。政府は、客観的かつ正確な資料を用意し、冷静な議論に資することが必要だ。」


(日本経済新聞)
(1)「柔軟に働くための労働時間制度の改革を、後退させてはならない。仕事の進め方や時間配分を働き手自身が決められる裁量労働制の対象業務の拡大は、できるだけ早く実現すべきだ。」
(2)「安倍晋三首相は裁量労働制をめぐる不適切データ問題を受けて、働き方改革関連法案から同制度に関する部分を切り離し、今国会への提出を断念する方針を決めた。だが対象業務の拡大を先送りすればするほど、働き方改革の眼目である労働生産性の向上は進みにくくなる。柔軟に働ける制度の意義を政府は認識し直してほしい。」
(3)「国会での裁量労働制の論議が不適切な調査データの問題にばかりとらわれているのは、おかしなことだ。時代の変化に合わせた労働法制のあり方をどう考えるか、という本質的な議論にこそ力を入れるべきではないか。」
(4)「時間をかけて働くほど賃金が増える現在の制度には、働き手自身の生産性向上への意識が高まりにくいという問題がある。戦後、長く続いてきた仕組みだが、国際的にみて低い日本のホワイトカラーの生産性を上げるには制度の見直しが不可欠だ。」
(5)「グローバル競争がさらに激しくなり、人工知能(AI)が普及すれば、生産性の低いホワイトカラーは失職する恐れもあるだろう。」


 表題を受けて、今、確認しなければならないのは、次のことである。


Ⅰ.働き方改革法案の本来の目的は、残業時間に上限を設け、長時間労働を是正することと捉えなければならない。
Ⅱ.長時間労働の規制強化が及ばないのが、裁量労働制と「高プロ」である。
Ⅲ.経営者側が求める規制緩和と、労働者側の視点に立った残業規制を抱き合わせて一括法案にすること自体に無理がある。当然、一つ一つ法案を切り離し国会で丁寧に検討しなければならない。
Ⅳ.今回の一括法案という手法は、野党が反対すれば『野党は残業規制にも反対した」と理由付けができるという、安倍晋三政権の意図が見えるものである。
Ⅴ.安倍晋三政権は、「高プロ」について、「柔軟な働き方を可能とし、生産性の向上につながっていく」とするが、日本の労働現場の現状は、労働者自身に働き方を決められる裁量がほとんどないのが実態である。したがって、「高プロ」の導入は、長時間労働を助長し、過労死を増えすものでしかない。


 最後に、押さえておかなければならないのは、「働き方は多くの人の生活に影響する。しかも二つの制度は働く人の命と健康に深くかかわる。政府はその重みをかみしめるべきだ。」(東京新聞)、ということだ。




by asyagi-df-2014 | 2018-03-05 06:50 | 書くことから-労働 | Comments(0)

安倍晋三政権は、働き方改革関連法案から、裁量労働制の対象拡大に関わる部分を削除する方針を決定。

 毎日新聞は2018年3月1日、表題について次のように報じた。


(1)「安倍晋三首相は28日、裁量労働を巡る厚生労働省の調査結果に異常値が多発している問題を受け、今国会に提出を予定する働き方改革関連法案から、裁量労働制の対象拡大に関わる部分を削除する方針を決めた。裁量労働制部分については今国会での実現を断念した。異常データ問題への批判が拡大し、与党からも慎重な対応を求める声が高まったため、裁量労働を含む一括法案のままでは国会審議に耐えられないと判断した。」
(2)「首相は28日深夜、首相官邸で加藤勝信厚労相と会談し、働き方改革関連法案から裁量労働制に関する部分を削除するよう指示。首相は会談後、『裁量労働制に関わるデータについて、国民の皆様が疑念を抱く結果になっている。裁量労働制は全面削除するよう指示した』と記者団に表明した。」
(3)「裁量労働制の対象拡大については『厚労省で実態を把握した上で、議論し直すこととした』と説明。時間外労働の上限規制▽高度プロフェッショナル制度の創設▽同一労働同一賃金--など、裁量労働制に関する部分を除く働き方改革関連法案について、改めて今国会で成立を目指す考えを強調した。会談には自民党の二階俊博、公明党の井上義久両幹事長らも同席し、首相の方針を了承した。」
(4)「首相は28日の衆院予算委員会で、異常データについて『誠に遺憾だ』とした上で、『きっちり実態を把握しない限り、政府全体として前に進めない』と明言した。政府は『2013年度労働時間等総合実態調査』の1万件超の全データを精査中だが、厚労省は28日の予算委で異常値が新たに57件見つかったと明かし、異常値は累計で400件を超えた。菅義偉官房長官は記者会見で、働き方法案の提出時期について『実態把握をした上で、という形になるのは当然だ』と述べた。」
(5)「だが首相は、裁量労働の拡大を含む『働き方改革』が企業の生産性向上にもつながる、と説明してきた。最重要法案から唐突に一部を削除すれば過去の答弁との整合性も問われ、『働き方改革国会』を掲げる首相の求心力低下は必至だ。一方、一般会計総額97兆7128億円の18年度当初予算案は28日夜の衆院本会議で、自民・公明両党などの賛成多数で可決された。参院の議決がなくても送付から30日で自然成立するため、年度内の成立が確定。与党はこれに先立つ予算委で、野党の抵抗を押し切って予算案を可決し、野党は河村建夫予算委員長(自民)の解任決議案を提出したが否決された。」【光田宗義、古関俊樹】


 しかし、このことは、「時間外労働の上限規制▽高度プロフェッショナル制度の創設▽同一労働同一賃金--など、裁量労働制に関する部分を除く働き方改革関連法案について、改めて今国会で成立を目指す考えを強調した。」(毎日新聞)、ということに過ぎない。






by asyagi-df-2014 | 2018-03-01 11:58 | 書くことから-労働 | Comments(0)

「無期転換ルール 雇い止めは許されない」。~北海道新聞20180213~

全国の新聞社の気になる社説、論説を不定期に取り上げて考える。
多くの内容は、「社説・論説-47NEWS」からの紹介となる。



 北海道新聞は2018年2月13日、「無期転換ルール 雇い止めは許されない」、とこの国の実態を強く批判した。
どういうことなのか。
この国で起こっていること、それは、労働者法制の悪用が、労働者の命を守るのではなく、逆に切り捨てに向かっている実態を、「相変わらず非正規労働者を、単なる雇用の調整弁とみなしているのだろうか。」、と告発するのである。
 北海道新聞は、次のように指摘する。


(1)「契約社員やパートなど有期雇用で働く人が、企業から契約を打ち切られる『雇い止め』が、またも問題化している。」
(2)「通算5年以上同じ企業で働く人が無期雇用への転換を申し込めば、企業は拒めない『無期転換ルール』の適用が、4月から本格的に始まるからだ。新ルールは、2008年のリーマン・ショックで雇い止めが続出したことを受け、13年施行の改正労働契約法で決まった。法の趣旨に反する雇い止めは、到底許されない。企業は、有期雇用労働者と誠実に向き合い、その希望を尊重するべきだ。」
(3)「有期雇用で働く人は1500万人おり、うち3割は既に契約期間が通算5年を超えている。こうした労働者の雇用安定が求められるにもかかわらず、雇い止めが広がっている。」
(4)「全国私立学校教職員組合連合によると、17都府県の有期雇用教員204人が3月末での雇い止め通告を受けた。これは氷山の一角にすぎないだろう。厚生労働省の調査では、自動車メーカー7社が、無期への切り替えを避ける措置をとっていた。再契約までに6カ月以上の契約空白期間を置けば、それ以前は無期転換につながる雇用期間として算定されない規定を利用した。」


 北海道新聞は、このことについて、次のように要求する。


(1)「政府は、こうした『抜け道』をふさぐ法改正を検討すべきだ。」
(2)「個人加盟労組の連合会が先月行った電話相談では、既に雇い止めされたり、近くされそうな人が相談者の7割に上った。」
(3)「気がかりなのは、無期転換ルールが十分知られていないことだ。連合の調査によれば、企業の9割は新ルールを知っている半面、有期雇用労働者の8割が内容を理解していなかった。」
(4)「企業と政府は、周知徹底を図らなければならない。」


 また、北海道新聞は、「一方、道内を含めて無期転換に積極的な企業もある。道内の有効求人倍率は1・18倍と95カ月連続で前年同月を上回り人手不足は深刻だ。無期雇用にすれば、人材確保はもちろん、社員の能力向上にもつながろう。新ルールは給与など待遇改善までは求めていない。連合の調査では、有期雇用労働者の半数が無期化だけでは不十分と答えている。むしろ企業は、無期雇用への転換を人材確保の好機ととらえ、待遇改善に努めてほしい。」、とする。


 さて、問題は、安倍晋三政権の方向性が、企業利益の拡大のための成長戦略にあることにある。そこで求められているのは、企業利潤追求のための方策である。
 こうした中で行われる労働法制の改悪は、これまで労働者を守るために果たしてきた役割をなくしていくことでしか効果を発揮しない。
 そうすると、必然的に労働者の命は蝕ばまれることになる。




by asyagi-df-2014 | 2018-02-21 06:56 | 書くことから-労働 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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