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定年後の再雇用で賃金を減らされたのは労働契約法が禁じる「不合理な格差」に当たる。

 毎日新聞は2018年6月1日、表題について次のように報じた。


(1)「定年後の再雇用で賃金を減らされたのは労働契約法が禁じる『不合理な格差』に当たるとして、横浜市の運送会社『長沢運輸』で働く嘱託社員3人が正規社員との賃金差額を支払うよう求めた訴訟の上告審判決が1日、最高裁第2小法廷(山本庸幸裁判長)であった。」
(2)「最高裁は『労働条件の差が不合理か否かの判断は賃金総額の比較のみではなく、賃金項目を個別に考慮すべきだ』との初判断を示した上で、賃金項目を個別に検討。全営業日に出勤した正社員に支給される月額5000円の『精勤手当』について、嘱託社員に支給されない点を『不合理』と判断し、この部分の2審・東京高裁判決(2016年11月)を破棄。会社に対し、相当額の5万~9万円を3人に支払うよう命じた。」
(3)「その他の基本給や大半の手当については、3人が近く年金が支給される事情などを踏まえ、格差は『不合理ではない』として請求を退け、精勤手当に連動する超勤手当の再計算の審理のみを同高裁に差し戻した。裁判官4人全員一致の意見。」
(4)「訴えていたのは、63~64歳の男性3人。正社員時代と仕事内容が全く同じなのに、定年後に年収が2~3割減らされたとして14年に提訴。1審・東京地裁判決(16年5月)は『仕事内容が同じなのに賃金格差を設けることは、特段の事情がない限り不合理だ』として会社側に計約415万円の支払いを命じた。これに対して高裁判決は『企業が賃金コスト増大を避けるために定年者の賃金を引き下げること自体は不合理とは言えない』と指摘し、請求棄却を言い渡していた。」
【伊藤直孝】


 この最高裁判決をどのように捉えるか。
 この最高裁判決に対して、一方には、「働き方が変化し、「同一労働同一賃金」が重視されつつある社会の状況に対応した判断といえよう。」(毎日新聞)という評価がされ、もう一方では、「同一労働同一賃金の趣旨をゆがめかねない判決である。」(信濃毎日新聞)
という評価がされる。
 まず最初に、この二紙のそれぞれの主張をまとめてみる。


Ⅰ.毎日新聞

1.判決内容
(1)「判決があったのは、物流会社の契約社員として働くトラック運転手が提訴した裁判だ。」
(2)「1審では通勤手当、2審ではそれに加え無事故、作業、給食の3手当について『支払われないのは不合理だ』と認定されていた。」
(3)「最高裁は、四つの手当に加え、皆勤手当についても、乗務員を確保する必要性から支払われており、格差は不合理だと判断した。」
(4)「住宅手当については、正社員と契約社員の間に転勤の有無などの差があり、契約社員に支払わないのは『不合理ではない』とした。それでも格差を個別に精査することで、『不合理』の範囲を過去の裁判より広く認めたと評価できる。」
(5)「定年後に再雇用された嘱託社員のトラック運転手3人が原告の裁判では、基本給や大半の手当について、格差は『不合理ではない』とした。退職金が支給され、近く年金が支給される事情も踏まえた。ただし、全営業日に出勤した正社員に支払われる精勤手当や、超勤手当については、やはり個別に考慮して格差は不合理だと結論づけた。」

2.最高裁判決の意味
(1)「正社員と非正規社員が同じ仕事をした場合、待遇に差があるのは、労働契約法が禁じる『不合理な格差』に当たるのか。最高裁は、通勤手当などを非正規社員に支給しないのはその目的に照らし、不合理だと初めて認定した。」
(2)「現在、非正規社員が労働者の約4割を占める。同じように手当に格差を設けている企業に、判決は見直しを迫るものとなるだろう。同種の訴訟にも影響が予想される。」
(3)「この裁判で原告らは、同じ仕事なのに年収が2~3割減ったと訴えていた。企業側は『再雇用の賃下げは社会的に容認される』と訴え、2審はそれを認めていた。最高裁は一定の格差を認めつつも、そうした考え方にくぎを刺したと言える。」

3.毎日新聞の主張
「働き方改革の一環である『同一労働同一賃金』の流れの中で、不合理な待遇格差の是正は当然だ。ただし、格差是正には正社員の賃金体系の見直しとの兼ね合いもある。判決を踏まえ、将来的な雇用慣行を見据えた議論を労使で進める必要がある。」


Ⅱ.信濃毎日新聞

1.最高裁判決の意味
(1)「焦点になっていたのは、運送会社を定年後に再雇用された3人の賃金格差である。3人は仕事内容は定年前と同じなのに、再雇用後の賃金が引き下げられたのは違法と主張していた。最高裁は判決で、再雇用された嘱託の非正規労働者と正社員について、職務内容や転勤、異動の扱いは同じと認定している。一方で再雇用者は定年まで賃金を支給され、老齢厚生年金も予定されていることを考慮するべきだと初めて判断。基本給などの格差は年金支給額も考慮すると不合理といえないとした。」
(2)「最高裁は、年金支給と再雇用が『その他の事情』に当たると判断している。」
(3)「各種手当などの格差については、『各賃金項目の趣旨を個別に考慮するべきだ』と判断。一部手当については相当額を支払うよう会社に命じ、別の手当については審理を高裁に差し戻した。個別内容を具体的に審理し合理性を判断する姿勢は納得できる。」

2.信濃毎日新聞の主張
(1)「賃金は仕事内容と責任範囲に基づくのが原則である。」
(2)「労働契約法20条も、正社員と非正規労働者の格差は不合理であってはならないと規定。不合理かどうかは(1)職務の内容(2)転勤や昇進など「配置の変更範囲」(3)その他の事情―を考慮するとされている。(1)と(2)が同一なのに格差を認めるのは、契約法の趣旨に反するのではないか。」
(3)「最高裁は、年金支給と再雇用が『その他の事情』に当たると判断している。これには疑問がある。年金支給と賃金は別のものだ。各労働者が長年にわたって納付してきた年金を受給することを理由に賃金を抑えるのは筋が違う。」
(4)「定年後だろうと、労働内容と責任が同じならば賃金は同じであるべきだ。再雇用という制度を基に格差を容認するのは不合理だ。」
(5)「国会では働き方改革関連法案が審議されている。同一労働同一賃金の実現は柱の一つだ。最高裁が安易に格差を認めると論議に影響を与え、格差の容認と定着につながりかねない。」
(6)「最高裁がきのう判決を出した別件の非正規労働者訴訟でも、手当ごとに違法性を判断し、二審で認めなかった皆勤手当を支払わないのは不合理と判断している。企業は非正規労働者と正社員の手当の格差について改めて検討し、問題があれば早急に改善しなければならない。」


 問題は、この判決が、毎日新聞の指摘する「企業側は『再雇用の賃下げは社会的に容認される』と訴え、2審はそれを認めていた。最高裁は一定の格差を認めつつも、そうした考え方にくぎを刺したと言える。」、との評価ができるのかということにある。
例えば、信濃毎日新聞はこのことについて、「定年後だろうと、労働内容と責任が同じならば賃金は同じであるべきだ。再雇用という制度を基に格差を容認するのは不合理だ。」
、と労働を捉える根本的な問題としてこの最高裁判断を批判する。
 どうやら、「働き方が変化し、『同一労働同一賃金』が重視されつつある社会の状況に対応した判断といえよう。」と「同一労働同一賃金の趣旨をゆがめかねない判決である。」
との二社の「差」は、労働を捉える根本的な問題の把握の違いから生じている。
 だとしたら、安倍晋三政権の進める「同一労働同一賃金」が「高プロ」を背景に施策されているように、安易に現在の「同一労働同一賃金」施策を安易に認める中で、労働の問題を捉えるべきではない。
労働問題は、資本と労働の力関係で歪められてきたものであることを忘れてはいけない。
 今回も、「高プロ」を導入した利益を考えれば、「同一労働同一賃金」などは資本の側の論理でどうにでもできるという思惑が見えているではないか。





by asyagi-df-2014 | 2018-06-08 06:59 | 書くことから-労働 | Comments(0)

働き方法案が衆院を通過したこと。~愛媛新聞20180601~

 働き方法案が衆院を通過した。
各地方紙の社説・論説を追ってみた。
一番目に焼き付いたのは、愛媛新聞の社説だった。
 愛媛新聞(以下、「愛媛」。)は、2018年6月1日の社説で、「働き方法案衆院通過 労働者の命綱断ってはならない」、と論評した。
 普通に考えれば、わかるはずだ。これは、命の問題なのである。
だからこそ、「命に関わる法案が、これほどまで軽々かつ強引に扱われることに、憤りを禁じ得ない。」、との書き出しは、胸を打つ。
「愛媛」は、次のように批判する。


(1)「安倍晋三首相が今国会の最重要法案と位置付ける働き方改革関連法案が、野党の反対を押し切って衆院本会議で採決され、参院へ送付された。先の衆院厚生労働委員会でも、高鳥修一委員長(自民)が怒号飛び交う中で採決を強行した。問題の多い法案を8本もひとくくりにし、十分な審議もなくごり押しする政府与党の姿勢は、看過できない。撤回を含め、参院での徹底審議を求める。」
(2)「中でも高収入の一部専門職を労働時間規制や残業代支払いの対象から外す『高度プロフェッショナル制度(高プロ)』は、労働基準法の根幹となる法定労働時間制を根底から壊し、過重労働や過労死から労働者を守る命綱を断ち切る、極めて危険な内容だ。経営者側に都合のいい『労働改悪』にほかならず、決して容認できない。」
(3)「『夫が亡くなった日、会社からは【裁量労働制だから過労死じゃない】と言われた。高プロもそうなりかねない』―。電機メーカーに勤める夫を過労死で亡くした女性は、あらかじめ決まった時間を働いたとみなす裁量制の危険性を、高プロに重ねる。時間に縛られず自由な働き方ができるとされるが、実際は業務に追われ、休みなく早朝から深夜まで勤務。企業は残業代を支払う義務がなく、働いた時間も把握していなかった。高プロには同じ懸念がつきまとう。」
(4)「経営者が労働時間の管理をしなければ、今でさえ困難な労災申請はさらに厳しくなる。企業を監督指導する労働基準監督署は人員不足で、当てにし難い。これでは労働者が使い捨てられた揚げ句、遺族の救済も置き去りにされかねない。政府、国会は過労死遺族の悲痛な訴えを重く受け止めるべきだ。」
(5)「これは一部の特殊な人に限った話ではない。高プロの対象職種は曖昧な上、法が成立すれば国会審議なく省令を変えるだけで、対象をいくらでも拡大できる。法案は『年104日以上、4週間で4日』の休日を健康確保措置として企業に義務付けてはいる。だが、4週間で4日休みさえすれば、残りはたとえ毎日24時間働かせ続けても違法にならず、まやかしにすぎない。」
(6)「その上、成果を上げたとしても賃金に結びつく保証もない。首相は『時間でなく成果で評価される』と意義を強調するが、加藤勝信厚労相は『成果給導入は労使で決めること』と逃げの答弁。導入の根拠の一つ『労働者のニーズ』についても、厚労省が意見を聴取したのはわずか12人。共同通信の世論調査でもほぼ7割が今国会の成立は『必要ない』と答え、国民が求めているとは言えない。」


 また、「愛媛」は、「命を使い捨てにして経済成長を目指す国は、誰も幸せにしない。2014年施行の『過労死防止法』で防止対策が国の責務となったことを肝に銘じ、法案を抜本的に見直す必要がある。」、と断じる。


 映像では、過労死家族の怒りに満ちた姿が、映し出された。
 命の告発-「夫が亡くなった日、会社からは『裁量労働制だから過労死じゃない』と言われた。高プロもそうなりかねない」-は、安倍晋三首相の薄ら笑いの中に消された。
 このままでは、働く者の命は削られる。




by asyagi-df-2014 | 2018-06-07 08:56 | 書くことから-労働 | Comments(0)

働き方改革関連法案が、衆院本会議で自民、公明両党と日本維新の会、希望の党などの賛成多数で可決。

 毎日新聞は2018年6月1日、表題について次のように報じた。


(1)「安倍政権が今国会の最重要課題と位置づける働き方改革関連法案は31日、衆院本会議で自民、公明両党と日本維新の会、希望の党などの賛成多数で可決された。6月4日にも参院で審議入りする。法案の柱の一つで、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)について、立憲民主党などの野党が反対姿勢を強めるが、政府・与党は20日までの会期を延長する方針で、法案は成立する見通しだ。」
【神足俊輔】
(2)「立憲の長谷川嘉一氏は本会議で、高プロについて『長時間労働を助長し、過労死が増えるのではないか、対象業務の拡大や年収要件の引き下げが行われるのではないかという懸念は、何一つ払拭(ふっしょく)されないままだ』と与党を批判。自民の後藤茂之氏は『希望する高度専門職の方が、明確な職務範囲で高い年収を確保した上で、自ら仕事の進め方を決めて働くことができる。対象がなし崩しに拡大されることはない』と反論した。」
(3)「法案の可決を受け、安倍晋三首相は経団連の定時総会のあいさつで『多様な働き方ができる社会を、今こそ作り上げていかなければならない。この国会において、働き方改革を必ずや実現する決意だ』と語った。」
(4)「一方、連合の相原康伸事務局長はコメントを発表。『(法案には残業時間の)罰則付きの上限規制の導入など、長時間労働の是正に向けた施策が盛り込まれた中で、長時間労働を助長する懸念のある高プロが削除されずに衆院を通過したことは極めて遺憾。参院では与野党の真摯(しんし)な議論を強く望みたい』としている。」
(5)「働き方改革関連法案は高プロと並び、残業時間の罰則付き上限規制や、正社員と非正規労働者の不合理な待遇差を禁じる『同一労働同一賃金』の導入なども柱になっている。 だが、衆院厚生労働委員会の審議では高プロに質問が集中した上、野党側が野村不動産社員の過労死や、厚生労働省データの異常値問題への追及に時間を割き、他の柱については議論が深まらなかった。残業時間の上限規制を巡っては、政府案は脳・心臓疾患の労災認定基準をベースに「最長で月100時間未満、2~6カ月の月平均で80時間以下」としているが、これは過労死ラインにあたるとの批判がある。立憲民主党は対案で『月80時間未満、複数月の平均で60時間以下』と厳格化した。政府は『(政府案の上限は)連合と経団連が合意した水準だ』との答弁を繰り返し、上限の妥当性まで議論が及ばなかった。」
(6)「また同一労働同一賃金に関し、政府が策定したガイドライン案では正社員の待遇が下がらないのかや、退職金の扱いをどうするのかについての言及はなく、議論の余地を残した。」
(7)「厚労省幹部は『データ問題に時間を費やしたことは、こちらに非があるが、それでも高プロ以外の議論は深まらなかった。参院では有意義な審議が必要だ』と話す。」 【神足俊輔】




by asyagi-df-2014 | 2018-06-01 11:55 | 書くことから-労働 | Comments(0)

木村草太さん。沖縄タイムスの「憲法の新手(80」で、「高度プロフェッショナル制度 労働者側にメリットなし」。

 首都大学東京教授の木村草太さんは、沖縄タイムスの「憲法の新手(80)」で、「高度プロフェッショナル制度 労働者側にメリットなし」、と論じた。
まず、木村教授は「高プロ」の概略を説明する。


(1)「政府は、働き方改革推進法案に、『働いた時間ではなく成果で』賃金が支払われる仕組みを導入するために、働き方改革関連法案に、高度プロフェッショナル制度(高プロ)の創設を盛り込んだ。」
(2)「高プロの対象は、『高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務』とされる。」
(3)さらに、(1)『使用者との間の書面その他の厚生労働省令で定める方法による合意に基づき職務が明確に定められている』こと(2)『労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を一年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額の三倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上である』ことという条件を満たす必要がある。」
(4)「この条件を満たす者が同意すれば、労働基準法上の『労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金」の規定の適用を除外することができる(労働基準法の改正案41条の2)。』


 次に、「労働者にとって、高プロ導入のメリットはない。」、とその問題点を指摘する。


(1)」高プロには、労働問題専門の弁護士や過労死の被害者遺族などから強い批判の声が上がっている。」
(2)「まず、現行法でも、業績に応じてボーナスを出したり、賃金を上乗せしたりすることは禁じられていない。また、勤務時間内に、なすべき業務が終了した場合に、賃金を減らすことなく早退を認めても、現行法には違反しない。労働者にとって、高プロ導入のメリットはない。」
(3)「他方、使用者には過重労働や過労死を防ぐ安全配慮義務がある。労働時間の上限規制や、最低限の休憩設定義務は高プロ対象労働者にも必要なはずで、これらの適用を全て除外するのは不適切だ。」
(4)「この法案で実現されるのは、「成果で賃金が支払われる制度」ではなく、「成果がでない限り、いくら働いても残業代が出ない制度」であり、「残業代ゼロ法案」と批判されるのもやむを得ない。」
(5)「また、法案には、憲法の観点からも疑問がある。憲法27条2項は、『賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める』と規定する。労働基準は、政令や省令など行政機関限りで決定するのではなく、国民の代表が集まる国会で討議をして、法律という厳格な形式で決めるべきだからだ。しかし、高プロの規定の肝心部分は、『厚生労働省令で定める』とされている。法律には多少の基準が定められるのみで、対象業務・合意の方法・対象労働者の年収基準は、行政の判断で変えられる。これでは、国会が労働基準を決定しているとは言えないだろう。」
(6)「さらに、多くの論者が指摘するように、『労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない』という効果は強烈すぎる。条文通りに適用すれば、休憩なしの24時間勤務を連日命じることも、理論的に可能になってしまう。」

 この上で、木村教授は、「成果を基準に賃金を支払い、柔軟な労働時間を設定したいなら、高プロよりも良い方法はいくらでも考えられる。この法案を強行に実現するのは、あまりに危険だ。」、と結論づける。


 あらためて、次のことが確認できる。


Ⅰ.この法案で実現使用とするものは、「『成果で賃金が支払われる制度』ではなく、『成果がでない限り、いくら働いても残業代が出ない制度』」であること。まさしく、この法案は、「残業代ゼロ法案」であること。
Ⅱ.この法案は、「『労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない』ということを、条文通りに適用すれば、休憩なしの24時間勤務を連日命じることも、理論的に可能になってしまう。」、ということ。
Ⅲ.「高プロの規定の肝心部分は、『厚生労働省令で定める』とされている。法律には多少の基準が定められるのみで、対象業務・合意の方法・対象労働者の年収基準は、行政の判断で変えられる。」、という産業界にとって、恣意的な法律である。この法案が、他の労働者に適用拡大されることも、また織り込み済みなのである。こと。
Ⅳ.「憲法27条2項は、『賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める』と規定する。労働基準は、政令や省令など行政機関限りで決定するのではなく、国民の代表が集まる国会で討議をして、法律という厳格な形式で決めるべきだからだ。しかし、高プロの規定の肝心部分は、『厚生労働省令で定める』とされている。法律には多少の基準が定められるのみで、対象業務・合意の方法・対象労働者の年収基準は、行政の判断で変えられる。これでは、国会が労働基準を決定しているとは言えない。」、ということ。



by asyagi-df-2014 | 2018-05-31 06:58 | 書くことから-労働 | Comments(0)

働き方改革関連法案が、衆院厚生労働委員会で自民、公明両党と日本維新の会の賛成多数で強行可決。

 毎日新聞は2018年5月26日、表題について次のように報じた。


(1)「安倍政権が今国会の最重要法案と位置づける働き方改革関連法案は25日、衆院厚生労働委員会で自民、公明両党と日本維新の会の賛成多数で可決された。法案に盛り込まれた『高度プロフェッショナル制度』(高プロ)の削除を求める立憲民主党などの野党議員が、高鳥修一委員長(自民)を取り囲み怒号が飛び交う中、採決が行われた。与党は29日に衆院を通過させ、参院に送付、会期末の6月20日までの成立を目指す。」
②「『加藤勝信厚労相は可決後、記者団に一日も早い成立を図りたい。参院でもご理解いただけるよう、真摯に答弁する』と語った。」
③「この日の厚労委は、24日に衆院本会議で解任決議案が否決された高鳥委員長が職権で開催と採決の実施を決めた。野党側は、厚労省の労働時間調査の不適切データ問題で、新たに6事業場で二重集計するミスがあったことが分かり、反発。加藤厚労相の不信任決議案を提出して対抗したが、衆院本会議で反対多数で否決され、委員会審議が再開した。」④「立憲の西村智奈美氏は『過労死遺族の思いを受け止めたのであれば、法案から高プロを削除すべきだ』と改めて主張したが、野党側の質問時間が終了したとして採決に踏み切った。立憲などの野党は『採決は強行的で認められない』と抗議し採決に応じなかった。」⑤「法案は高収入の一部専門職を労働時間規制から外す高プロの創設のほか、残業時間の罰則付き上限規制、正規・非正規労働者の不合理な待遇差を禁じる同一労働同一賃金の導入が柱で、労働基準法など八つの労働法規の改正が一つに束ねられた形になっている。与党と維新が提出した、高プロ対象者が適用後に本人の意向で撤回できる修正案も可決された。
⑥「法案を巡っては、2月に裁量労働制に関する厚労省のデータに不備が見つかり、裁量労働制の対象拡大が法案から削除された。その混乱で閣議決定が4月にずれ込んだ。立憲など野党は高プロを『長時間労働につながり、過労死を助長する』として法案からの削除を求めている。」                                【神足俊輔】




by asyagi-df-2014 | 2018-05-26 14:02 | 書くことから-労働 | Comments(0)

安倍晋三政権の働き方改革は、止めるべきだ。

 東京新聞は2018年5月17日、「働き方改革 やはり再考すべきだ」、と社説で論評した。
 どういうことなのか。
 東京新聞は、次のように指摘する。


(1)「裁量労働制を巡る不適切な調査データについて厚生労働省が再調査の結果を公表した。政府の働き方改革関連法案の議論の前提となった調査だが、公正な法案づくりがされたのか不信が強まった。」
(2)「安倍晋三首相が『裁量制で働く人の方が一般労働者より労働時間が短いとのデータがある』と国会で答弁したことが発端だった。」
(3)「本来比較できない、双方の労働時間を比べていたことが分かった。首相は答弁撤回と謝罪を余儀なくされ、裁量制の適用拡大は法案から削除された。」
(4)「データそのものにも一般労働者が『一日の残業時間が二十四時間超』など不自然な点が指摘された。再調査は、対象の約一万二千事業所のうち約二割を不適正として除外、再集計した。」
(5)「元のデータより一般労働者の残業時間は短くなったが、厚労省は『傾向は変わらない。統計としての有効性はある』と説明する。」


 また、東京新聞は「そうだろうか。」、と反論する。


(1)「比較する以前にデータの集め方や分析の仕方がずさんだったようだ。国の政策決定に使う重要データのはずだが、お粗末ではないか。厚労省は反省すべきだ。」
(2)「裁量制についてはなお疑問が残る。本来比較できないはずのこの制度と一般労働者を比べる不適切なデータをなぜ作成したのか経緯が明らかになっていない。」
(3)「法案作成時に厚労政務官だった自民党の橋本岳厚生労働部会長が自身のフェイスブックに『執拗(しつよう)に(データを)要求したのは野党で、繰り返し問い詰められ、(厚労省が)やむを得ず作成した』などと投稿した。後で謝罪、訂正したが、野党に責任転嫁するような姿勢は筋違いだ。厚労省は作成経緯を明らかにする責任がある。」
(4)「野村不動産の社員が裁量制を違法に適用され過労自殺していた問題では、自殺の事実を公表しなかった点などについてもいまだに説明がない。」
(5)「十六日には裁量制で働く男性が過労死したことも新たに判明した。法案から削除されたから疑問に答える責任はないとは言えまい。」
(6)「元データは、法案の議論を行った厚労省の労働政策審議会にも提出された。労働実態を把握しないままで公正な議論が行われたのか疑問だ。法案全体の信頼性に関わるのではないか。」


 東京新聞は、「法案に入る高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ制度)は、国会審議でも長時間労働への懸念があらためて指摘されている。やはり法案は再考すべきだ。」、と結論づける。


 確かに、「国の政策決定に使う重要データのはずだが、お粗末ではないか。厚労省は反省すべきだ。」、との状態では、安倍晋三政権の働き方改革は、止めるべきだ。





by asyagi-df-2014 | 2018-05-26 06:11 | 書くことから-労働 | Comments(0)

[ 高プロ」は、「どんな職種でも待遇でも、時間管理をなくしてはいけない」、ということに尽きる。~毎日新聞20180524~

 毎日新聞は、2018年5月24日、「離脱選べるのか 現場は反発と歓迎」、と「高プロ」の問題を掲載した。
 毎日新聞は、「政府与党は、安倍晋三首相が最重要課題と位置付ける働き方改革関連法案を25日にも衆院厚生労働委員会で採決する構えだ。労働法制の大改革は、実態を踏まえて審議が尽くされてきたのか。働く現場や国会の動きから法案のポイントに焦点を当てる。」、と始める。
 まずは、現場の声から。


(1)「法案で与野党の対立軸は、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す『高度プロフェッショナル制度』(高プロ)だ。」
(2)「企業でコンサルタント業務を担う関東地方の40代の男性は、自身を高プロの対象者と想定している。忙しい時期の平日は午前2~3時まで働き、土曜も出勤するため、ひと月250時間近く残業したこともある。『締め切りが決められ、膨大な量の作業があれば、終わるまで死ぬ気でやるしかない』。自分で仕事量をコントロールできる状況ではない。」
(3)「高プロは労働法制上で初めて、労働時間規制をなくす制度だ。『会社による労働時間の管理から外れれば、働かされるだけ働くことにならないか。制度を適用される時には、社員は言われるままにハンコを押すことになると思う』と語る。高プロ適用者は本人の意思で離脱できるという規定が設けられることになったが、『働く側に選択の余地はあるのだろうか』と反発する。」
(4)「一方、大阪市の大手の民間シンクタンクに勤める40代の研究員の男性は『導入に賛成』と語る。年に数回公表を迫られる経済リポートの執筆時は、企業や行政機関への取材、統計の分析に時間を費やし、関西の経済予測などをまとめるのに午後10時ごろまで勤務する日が続く。年に4~5カ月は月の残業時間が80時間近くになる。普段は定時近くに退社し、忙しい時期との差が大きい。時間ではなく成果で判断される制度が適用されれば、抱えている仕事の量に合わせて、自分のペースで働けるといい『私たちのような職種の実態に合った仕組み』と歓迎する。」
(5)「ただ、『運用には慎重さが求められる』とも口にした。『【長時間労働は美徳】という風潮の会社では、高プロが長時間労働や連続勤務を助長し、働き方改革に逆行しかねない』
【市川明代、山口知】


 毎日新聞は、「高プロ」の問題点を次のように指摘する。


(1)「『どんな職種でも待遇でも、時間管理なくしてはいけない』」
(2)「高プロの対象と想定されている人たちからは、今のところ制度の新設に対して強い懸念の声は上がっていない。ただ、対象業務や年収要件は、国会審議が不要な省令で変えることができる。過労死遺族や労働界からは、将来、要件が緩和され、対象が拡大するのではとの見方も出ている。」
(3)「勤務医だった夫を過労死で亡くした『東京過労死を考える家族の会』代表の中原のり子さん(62)は、『専門職だろうが、自分で働き方や仕事量を選べる人は、どれだけいるだろうか』と訴える。」
(4)「中原さんの夫(当時44歳)は、東京都内の民間病院の小児科医だった1999年8月、病院の屋上から飛び降りて命を絶った。亡くなる半年前に小児科部長代行に昇進。6人いた小児科医のうち3人が退職し、1日半連続で働く当直に月8回入ることもあった。病院にタイムカードはなかった。死後に起こした過労死を巡る裁判には8年近くを費やした。」
(5)「高プロは労働時間を管理する必要がなくなる分、過労死しても事後の検証は難しくなる。中原さんは「どんな職種でも待遇でも、時間管理をなくしてはいけない」と強調する。【神足俊輔】


※高度プロフェッショナル制度

 高収入の一部専門職を労働時間規制から外す制度。対象は年収1075万円以上の金融ディーラーやコンサルタント、研究開発職など「働いた時間と成果の関連性が高くない仕事」が想定されており、職種は省令で定められる。残業時間に対して割増賃金を支払うという労働基準法上の規定が適用されなくなる。健康確保措置として、年104日の休日取得を義務化した上で(1)働く時間の上限設定(2)終業から次の始業まで一定の休息を確保する「勤務間インターバル」(3)連続2週間の休日取得--などから一つを選択する。適用に同意した人でも、自らの意思で撤回できる規定が加えられる。
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 日本の人権問題や権利問題を学ぶ時、よく言われることが日本で人権意識や権利意識がどれぐらい浸透しているだろうかこととである。また、日本という国が人権や権利を自らの歩みで勝ち取ってきたことがあるのかとも。
 この「高プロ」を、考える時にも、やはり、「ただ、『運用には慎重さが求められる』とも口にした。『【長時間労働は美徳】という風潮の会社では、高プロが長時間労働や連続勤務を助長し、働き方改革に逆行しかねない』、という日本の歩んできた歴史の壁がそびえ立つ。
 だからこそ、「専門職だろうが、自分で働き方や仕事量を選べる人は、どれだけいるだろうか」との訴えは、正鵠を得ている。
 確かに、「高プロ」については、「どんな職種でも待遇でも、時間管理をなくしてはいけない」、ということに尽きる。




by asyagi-df-2014 | 2018-05-25 12:28 | 書くことから-労働 | Comments(0)

過酷死。裁量労働制が引き起こしているもの。

 裁量労働制下に働いていたある男性が、ツイッターに綴った文章であるという。


<2017年6月>
【24日午前1時46分】:「やっと家ついたー。この安心感よ。今月も華麗に300時間やー。ねむすぎ。」
【26日午後10時29分】:「身体の疲れ方が尋常じゃない」

<2017年7月>
【4日午後0時24分】:「ねむい。13時から翌日の18時までってなんなん。」
【4日午後8時20分】:「仕事終わるまであと22時間」

【5日午前6時32分】:「外明るいと思ったらもう6時かよ。アーメン。」
【6日午前1時20分】:「うおー!やっとしごとおわったぁー!!社会人になってから36時間ぶっ通しで働いたの初めてやがな。」


 この文章は、「東京のIT会社で裁量労働制で働いていた男性会社員が、2017年にくも膜下出血で死亡し、池袋労働基準監督署が2018年4月に過労死として労災認定していた」、との毎日新聞の2018年5月16日記事からの引用である。
 これは、まさしく、『男性の過重労働は裁量労働制の適用前からだが、適用直後には徹夜勤務があるなど、裁量労働制が過労死に悪影響を及ぼした可能性は高い』(毎日新聞)、との裁量労働制の実態を示すものである。
毎日新聞は、このことについて次のように紹介する。


(1)「東京のIT会社で裁量労働制で働いていた男性会社員(当時28歳)が昨年、くも膜下出血で死亡し、池袋労働基準監督署が今年4月に過労死として労災認定していた。遺族代理人の川人博弁護士が16日、記者会見して明らかにした。労基署は亡くなる直前の2カ月間で、過労死ラインとされる月80時間を超え、月平均87時間45分の残業があったと認定。また、裁量労働制が適用される前には最長で月184時間の残業があったとした。」
(2)「川人弁護士によると、勤務先は東京都豊島区の『レックアイ』」。男性は不動産会社向けのシステム開発を担当していた。昨年7月、チームリーダーに昇格した際に専門業務型の裁量労働制が適用された。みなし労働時間は1日8時間だった。」
(3)「男性は裁量労働制が適用される前から、長時間労働が常態化していたが、適用直後の7月上旬には納期に追われ、徹夜を含む連続36時間の勤務もあった。同月下旬には家族に『頭が痛い』と訴えた。翌8月の中旬に都内の自宅アパートで倒れているのが見つかり、死亡が確認された。両親は10月に労災申請した。」
(3)「男性は昨年6月から7月にかけて、ツイッターに『仕事終わるまであと22時間』『社会人になってから36時間ぶっ通しで働いたの初めてやがな』などと投稿している。」(4)「川人弁護士は『男性の過重労働は裁量労働制の適用前からだが、適用直後には徹夜勤務があるなど、裁量労働制が過労死に悪影響を及ぼした可能性は高い』と指摘した。」(5)「男性の母(58)は『今後、息子と同じような犠牲者が出ないように会社に求めます。若いときは二度とないから、休日もきっちりとれて、リフレッシュできる時間を若い人につくってあげてください』とコメントした。」
(6)「同社は取材に『詳細を把握していないため、コメントできない』としている。」 【神足俊輔】


 これだけに止まらない、
毎日新聞は同日の深夜、「テレ朝男性社員に労災認定 残業70~130時間」、と次のように伝える。


(1)「テレビ朝日(東京都)でドラマを担当していた男性プロデューサー(当時54歳)が2015年に心不全で死亡したのは長時間労働による過労死だったとして、三田労働基準監督署が同年に労災認定していたことが16日、明らかになった。」
(2)「テレ朝によると、男性は13年7月、出張中にホテルで心臓の病気を発症し救急車で搬送された。男性は裁量労働制を適用する制作部門に所属し、直近の3カ月は時間外労働が月に70~130時間に達していた。三田労基署は、過労死ラインとされる月80時間を超えていたため、過労による労災と認定した。」
(3)「男性はその後、療養していたが、15年2月に死亡。三田労基署は同年7月に長時間労働との因果関係を認め、過労死と認定した。」
(4)「テレ朝は「極めて重く受け止めている。社員の命と健康を守るための対策をより一層進めてまいります」とコメントしている。テレ朝は16日、報道局で映像取材のデスクを務めていた子会社の男性社員(49)も先月21日に急死したことを明らかにしたが、勤務実態などについては「遺族に対応中であり、プライバシーに関わる」として回答を控えた。」
【井上知大】


 日本という国は、すでに壊された感がある。
安倍晋三政権の荒廃振りは、この政権を支える団体にも当然当てはまるということだ。




by asyagi-df-2014 | 2018-05-25 06:09 | 書くことから-労働 | Comments(0)

政府は「働き方」関連法案を提出。そもそも高プロは導入されてはいけない。(3)

 東京新聞は2018年4月7日、政府が「働き方」関連法案を国会に提出したことについて、「政府は六日、「働き方」関連法案を国会に提出した。長時間労働を助長すると批判された裁量労働制の対象拡大を削除するなどの修正をしたが、残業時間の罰則付き上限規制の導入や、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ制度)」の創設が盛り込まれ、過酷な労働を招きかねない点や、実効性が疑わしい内容が目立つ。対案を準備している野党側と激しい論戦になりそうだ。」、と報じた。
 琉球新報は2018年4月7日、「高プロ導入に過労死遺族から反対の声」との声を伝えるとともに、「働き方法案閣議決定 残業代ゼロ制度削除を」との社説の中で、「長時間労働を減らし健康な状態で働ける社会の実現につながるだろうか。」、と投げかけた。
 まず、琉球新報(毎日新聞配信)は遺族の声を次のように伝えた。


(1)「安倍晋三首相が『70年ぶりの大改革』として今国会での成立を目指す働き方改革関連法案には、対象を高収入の一部専門職の働き手に限定するとはいえ、労働時間の規制を初めて撤廃する『高度プロフェッショナル制度』(高プロ)が盛り込まれた。過労で大切な人を失った遺族からは『どんな職種でも、時間管理をなくしてはいけない。労働者に代わりはいても、家族に代わりはいないのだから』と、制度に反対する声が上がっている。」
(2)「高プロに該当する労働者は、年収1075万円以上の金融ディーラーや研究開発職などの専門職が想定されている。この枠組みが今後拡大されて、時間規制がない労働者が増えていくのではないかという懸念を、過労死遺族や労働問題に詳しい弁護士らは抱いている。」
(3)「2013年に過労死したNHK記者、佐戸未和さん(当時31歳)の父守さん(67)と母恵美子さん(68)は『人の命に関わる法案。過労死をなくすため、国会では一つ一つのテーマをきちんと議論してほしい』と語っている。」
(4)「両親が未和さんについて調べたところ、未和さんの時間外労働は亡くなる直前の1カ月に209時間に達していた。守さんは『未和のように労働時間がきちんと管理されなければ、過労死につながる。過労死防止に直結する規制強化を先行して議論すべきではないか』と訴える。法案の閣議決定を聞いて、恵美子さんは『高プロで企業が労働時間の管理を免れることによって、労災認定が難しくなってしまう。企業の都合の良い【働かせ方改革】になっているのではないか』と憤った。」
(5)「小児科医だった夫を過労自殺で亡くした『東京過労死を考える家族の会』代表の中原のり子さん(62)は、野党の会合に連日、足を運んで法案の行方を見つめてきた。14年に厚生労働省の協議会に参加して、同省と二人三脚で過労死防止法を作ったという思いがある。それだけに『その厚労省が、労働者とは正反対の方を向いた法案を作ったのは残念だ。今の社会に子どもたちを出せないと感じている。どんな職種でも時間管理は必要で、その原点に立ち返ってほしい』と語った。」
【古関俊樹、神足俊輔、市川明代】(毎日新聞)


 琉球新報は、この問題を次のように批判する。


(1)「政府は今国会の重要法案と位置付ける働き方改革関連法案を閣議決定した。長時間労働を是正する残業規制や、非正規労働者の処遇改善を盛り込む一方、労働時間規制の対象とならない『高度プロフェッショナル制度』を創設する。高度プロフェッショナル制度は、年収1075万円以上で高度な専門的知識を必要とする業務に従事する労働者が対象となる。」
(2)「経済界は『時間に縛られない働き方ができる』と主張している。しかし、労働時間の上限を原則1日8時間、週40時間などとする規制が適用されなくなる。残業や深夜・休日労働をしても割増賃金が支払われず、長時間労働を助長することになりかねない。実態は『残業代ゼロ制度』であり、過労死の温床になると懸念されている。」
(3)対象業務は「金融ディーラーや経営コンサルタントなどを想定」している。しかし「など」と記述しているため、なし崩し的に拡大され年収の上限も下がる可能性がある。」


 琉球新報は、労働者保護の観点に立った労働法制のあり方について、次のように主張する。


(1)「残業規制や待遇格差の改善と抱き合わせにせず、働き方改革関連法案から切り離して削除すべきだ。」
(2)「残業時間の抑制について法案は、年間720時間とし、繁忙期は月100時間未満、2~6カ月平均で80時間以内とした。720時間には休日に出勤した時間を含まないため最長で年960時間の残業が可能になる。労災認定の基準となる『過労死ライン』ぎりぎりである。長時間労働の抑制になっていない。誰のための改革なのか。上限規制を厳しくする必要がある。自動車運転業と建設業、医師は適用を5年間猶予しているが、例外なく適用すべきではないか。」
(3)「終業から翌日の始業までに一定の時間を置く勤務間インターバル制度について法案は『一定時間の休息時間の確保』を求める努力規定となっている。努力ではなく、企業側に具体的な時間の確保を義務化すべきである。」
(4)「安倍晋三首相は今国会を『働き方改革国会』と強調してきたが、法案作成の前提となった厚生労働省調査で2月に不適切なデータ処理や異常値が相次いで発覚した。働き方改革関連法案に盛り込む予定だった裁量制の適用業種拡大が、削除に追い込まれた。閣議決定も当初予定の2月後半からずれ込んだ。共同通信社が3月31日、4月1日の両日に実施した全国緊急電話世論調査によると、働き方改革関連法案について、今国会で成立させるべきかの問いでは『必要はない』が69・9%に対し『成立させるべきだ』は18・5%にとどまっている。」
(5)「長時間労働に歯止めをかける規制強化は急ぎたいが、国民は与野党による熟議を望んでいる。」


 確かに、この「働き方」関連法案の根本的問題は、「肝心の働く人々が置き去りにされている。」、ことにある。
 また、一括法案という安倍晋三政権の常套手段は、「残業時間の上限規制など働く人を守る規制強化と、官邸主導で進めてきた規制緩和を同時に進めることは矛盾する。」(東京新聞)、というものでしかない。
 まずは、遺族からの『どんな職種でも、時間管理をなくしてはいけない。労働者に代わりはいても、家族に代わりはいないのだから』との声に、耳を傾けなくてはならない。
 また、遺族からの「高プロで企業が労働時間の管理を免れることによって、労災認定が難しくなってしまう。企業の都合の良い『働かせ方改革』になっているのではないか」、との憤りの声を出発点としなければならない。
 結局、「高プロ」制度の導入は、『時間に縛られない働き方ができる』との経済界の主張には労働者保護の観点が抜け落ちていることから、長時間労働を助長するだけの結果を持たらすことになる。これまでも指摘されてきたように、「高プロ」の実態は『残業代ゼロ制度』である。
 したがって、「高プロ」の導入は、過労死の温床になる。
 この観点からすると、裁量労働制以上に規制を緩和するすることになる「高プロ」制度を導入することは、間違っている。したがって、今回の一括法案に、「高プロ」をそのまま残すことは到底許されない。

 であるとしたら、やはり、何度でも繰り返すしかない。
 大事なことは、「残業代や割増賃金の規制を緩めて、長時間労働や過労死が増える心配はないのか、という点だ。」(朝日新聞)、ということであった。
 結局、安倍晋三政権が固執する成長戦略の中では、「首相周辺は『首相は【是が非でも通す】と言っている』と明かす」(朝日新聞)という思惑が最優先され、大企業のより大きな収奪のための規制緩和が徹底されようとする。
 あらためて、安倍晋三政権は、政治が人の命を預かっていることを肝に銘じなければならない。




by asyagi-df-2014 | 2018-04-17 07:47 | 書くことから-労働 | Comments(0)

政府は「働き方」関連法案を提出。そもそも高プロは導入されてはいけない。(2)

 東京新聞は2018年4月7日、政府が「働き方」関連法案を国会に提出したことについて、「政府は六日、「働き方」関連法案を国会に提出した。長時間労働を助長すると批判された裁量労働制の対象拡大を削除するなどの修正をしたが、残業時間の罰則付き上限規制の導入や、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ制度)」の創設が盛り込まれ、過酷な労働を招きかねない点や、実効性が疑わしい内容が目立つ。対案を準備している野党側と激しい論戦になりそうだ。」、と報じた。


 朝日新聞は2018年4月7日、この「働き方」関連法案について、「『高プロはスーパー裁量労働』野党が批判 働き方法案、成立見通せず 過労死遺族も反発」、と次のように問題点を伝えた。


(1)「6日に国会に提出された働き方改革関連法案。柱の一つとなった『高度プロフェッショナル制度』(高プロ)には野党や過労死遺族から批判が相次ぐ。国会を揺るがす問題の発覚が相次ぐなか、審議日程も窮屈になっており、政権が『最重要』と位置づける法案の今国会の成立には黄信号がともっている。」
(2)「法案には労働時間規制の緩和策として、高プロのほか、実際に働いた時間にかかわらず一定時間働いたとみなす『裁量労働制』の対象を法人営業職の一部などに広げる内容が盛り込まれるはずだった。だが、根拠となったデータが不適切だったことが発覚して全面削除され、高プロだけが残った。アナリストなどの専門職で、年収が約1千万円以上と高い人を労働時間規制そのものから外す内容だ。」
(3)「裁量労働制は、残業時間が一定とみなされることはあっても、深夜・休日労働をした場合は割増賃金が必要になる。一方、高プロの場合は労働時間と賃金の関係が一切、切れるため、それも払われなくなる。政府は、高プロの適用には本人の同意が必要で、適用者には年104日以上の休日を与えることを義務づけるなどの健康確保措置を設けると説明する。ただ、今の法案では4週間で4日休ませれば、残りの24日は24時間働いても違法にならない。NHK記者だった娘を過労死で亡くした佐戸恵美子さん(68)は『働かせ放題の制度』と批判。野党は、削除された裁量労働制の対象拡大より長時間労働を助長する恐れがあるとして、『スーパー裁量労働制だ』と指摘する。」
(4)「新たにできる罰則付きの残業時間の上限設定は、働き過ぎの防止策として評価される面がある。上限をめぐっては、安倍晋三首相が議長を務めた『働き方改革実現会議』で労使がギリギリの調整をした末、忙しい月は『「100時間未満』とすることで合意した。ただ、罰則付きの規制は中小企業には厳しいとの指摘が与党にもある。また、『100時間』は過労死認定基準で目安とされている時間数のため、過労死遺族や一部野党には『100時間まではOK、と思われかねない』との懸念もある。」
(5)「安倍政権は今回の法案を、1947年の労働基準法の制定以来の『大改革』と位置づける。労働時間規制を緩める内容と、強める内容がセットになっている法案だけに、個々の政策に対する議論がどのように進むかも法案審議の焦点になる。」
(松浦祐子)


 また、朝日新聞は、国会での審議等における問題点についても、次のように指摘する。


(1)「安倍晋三首相は今国会を『働き方改革国会』と名付けて臨んだ。成立できなければ首相の政策遂行能力に疑問符がつきかねない。裁量労働制の対象拡大を削除したのも、周囲は成立への『覚悟の表れ』と受け止める。首相周辺は「首相は『是が非でも通す』と言っている」と明かす。とはいえ、今国会での成立は見通せない情勢だ。」
(2)「閣議決定は当初の想定よりすでに1カ月以上遅れている。首相は今月17~20日に米国を訪問する予定。衆院本会議での法案の趣旨説明と質疑には首相出席が必要なため、審議入りは早くても帰国後になる。」
(3)「審議入りの日程をめぐる与野党の協議も、野党側が高プロに強く反対していることから、難航が予想される。さらに野党側は高プロを削除した対案も提出し、対抗する構えだ。成立を確実にするため、6月20日までの会期を延長することも難しいとの見方が広がる。9月の自民党総裁選で3選を目指す首相にとって、会期を延長すればその分、野党からの追及を受けやすい。自民党国会対策委員会の幹部は『国会を開いていることが一番のリスク』と言う。」
(4)「働き方改革関連法案を扱う厚生労働委員会では、受動喫煙の防止策強化のための健康増進法改正案も控える。与党は『働き方改革』を優先させ、『受動喫煙防止策』を後回しにして成立を期す構えだが、厳しい状況には変わりない。」
(5)「今国会では他にも重要法案を抱える。カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案は与党内で合意したばかり。財務省の公文書改ざん問題や自衛隊のイラク派遣時の日報問題で与野党の対立が激化するなか、重要法案は軒並み綱渡りの審議を強いられそうだ。」
(笹川翔平、平林大輔、別宮潤一)


 さらに、朝日新聞は2018年4月7日、「働き方改革 労働者保護に焦点絞れ」、とその社説で論評した。


(1)「安倍政権が今国会の最重要法案と位置付ける働き方改革関連法案が国会に提出された。長時間労働是正のための残業時間の罰則付き上限規制と、非正社員の待遇改善に向けた同一労働同一賃金が柱だ。いずれも喫緊の課題である。だが法案には、専門職で年収の高い人を労働時間の規制から外す『高度プロフェッショナル制度(高プロ)』の新設も盛り込まれた。」
(2)「長時間労働を助長しかねないと、多くの懸念や不安の声がある制度だ。緊急性の高い政策と抱き合わせで拙速に進めることは許されない。切り離して、働き過ぎを防ぐ手立てや制度の悪用を防ぐ方策を、しっかりと議論するべきである。政府・与党に再考を求める。」
(3)「関連法案は、当初、2月中の閣議決定をめざしていた。大幅に遅れたのは、あらかじめ決められた時間を働いたとみなす裁量労働制をめぐり、首相の答弁撤回や、法案づくりの参考にされた調査データの不備など、問題が相次いだためだ。その結果、政府は今回の法案から裁量労働制の対象拡大を削除した。だが、問われているのは、残業代や割増賃金の規制を緩めて、長時間労働や過労死が増える心配はないのか、という点だ。裁量労働制以上に規制を緩和する高プロを、そのまま法案に残す判断は理解しがたい。」
(4)「与党との調整で、法案には管理職を含め、働く人たちの労働時間の状況を把握するよう、会社に義務付けることが新たに加えられた。だが、これはもともと法律の成立後に省令でやることになっていたものだ。一方、裁量労働制の拡大を削除するのに伴い、企画業務型の裁量労働制の対象者を『勤続3年以上』とする要件を新たに設けることや、健康確保措置の強化策まで見送りになった。」


 朝日新聞は、最後に、次のようにまとめる。


(1)「裁量労働制をめぐっては昨年1年間で、272事業所が是正勧告や指導を受けている。野村不動産の違法適用は、問題が表に出た、まれな例に過ぎない。」
(2)「対象拡大を見送ったからといって、裁量労働制がはらむ問題は放置できない。現状を改め、指導・監督の実効性を高めるために何をすべきか。議論を進めるべきだ。」
(3)「野党は、働く人々を守る規制の強化に重点を置いた、働き方改革の対案を準備している。高プロを関連法案から切り離せば、与野党が歩み寄り、話し合う余地は生まれるはずである。」
(4)「だれのための働き方改革か。政府・与党はそのことを考えるべきだ。」


 大事なことは、「残業代や割増賃金の規制を緩めて、長時間労働や過労死が増える心配はないのか、という点だ。」(朝日新聞)、ということであった。
 この観点からすると、裁量労働制以上に規制を緩和するすることになる「高プロ」制度を導入することは、間違っている。したがって、今回の一括法案に、「高プロ」をそのまま残すことは到底許されない。
 結局、安倍晋三政権が固執する成長戦略の中では、「首相周辺は『首相は【是が非でも通す】と言っている』と明かす」(朝日新聞)という思惑が最優先され、大企業のより大きな収奪のための規制緩和が徹底されようとする。
 であるとしたら、やはり、繰り返すしかない。
 確かに、この「働き方」関連法案の根本的問題は、「肝心の働く人々が置き去りにされている。」、ことにある。
 また、一括法案という安倍晋三政権の常套手段は、「残業時間の上限規制など働く人を守る規制強化と、官邸主導で進めてきた規制緩和を同時に進めることは矛盾する。」(東京新聞)、というものでしかない。
 あらためて、安倍晋三政権は、政治が人の命を預かっていることを肝に銘じなければならない。





by asyagi-df-2014 | 2018-04-16 06:15 | 書くことから-労働 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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