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第7回ブラック企業大賞がノミネ-トされる。

 第7回ブラック企業大賞が2018年12月5日、次のように9社ノミネ-トされた。
 なお、ホ-ムペ-ジでは、ブラック企業の定義について、次のようにされている。


 ブラック企業には幅広い定義と解釈がありますが、『ブラック企業大賞』では次のようにブラック企業を定義し、その上でいくつかの観点から具体的な企業をノミネートしていきます。
 ブラック企業とは・・・・①労働法やその他の法令に抵触し、またはその可能性があるグレーゾーンな条件での労働を、意図的・恣意的に従業員に強いている企業、②パワーハラスメントなどの暴力的強制を常套手段として従業員に強いる体質を持つ企業や法人(学校法人、社会福祉法人、官公庁や公営企業、医療機関なども含む)。


 この「ブラック企業大賞」のホ-ムページの内容ををそのまま掲載する。

 2018年12月5日、ブラック企業大賞実行委員会は、2018年のブラック企業大賞のノミネート企業9社を発表いたしました(以下)。ウェブ投票も開始しましたので(~12月22日17:00締切)、ぜひご参加ください。

1.株式会社ジャパンビジネスラボ

 株式会社ジャパンビジネスラボは、都内で語学学校等を運営する企業である。同社で英語講師を務めていた正社員の女性は、2014年、育休明けに保育園が見つからず規定上の休職を申し出たが拒否された。同社には「希望する場合は正社員への契約変更が前提」と記載された育休明け社員向け契約社員転換制度があり、このままでは自己都合退職になると言われた女性は、「正社員に戻れるなら」と、週3回、1年雇用の契約社員として職場復帰した。
  復帰後、保育園が見つかり、正社員に戻りたいと求めたが、会社は拒否し、1年後の2015年、「期間満了」を理由に社員を雇い止めした。なお、社員は面談の中で上司から「俺は彼女が妊娠したら、俺の稼ぎだけで食わせるくらいのつもりで妊娠させている」と発言されるなどした。社員は会社を相手取って地位確認を求める訴訟を起こし、2018年9月、東京地裁は、会社が行った雇止めについては無効、会社の対応は不法行為とする判決を下した。ただし、正社員の地位の確認を求めた点については退けた。
 判決文では「原告の受けた不利益の程度は著しく、被告(会社側)の不誠実な対応はいずれも原告が幼年の子を養育していることを原因とするもの」と認定している。また、「俺の稼ぎだけで食わせる」発言については、「暗に妊娠した者とその配偶者に落ち度がある批判しているものと捉えられかねない不用意かつ不適切な言動であり、交渉に臨む態度として許容されない」と厳しい指摘をした。
 現在、会社側も社員側も共に控訴して係争中である。
 女性の労働市場への参加が進む中、出産した女性社員を短期契約の契約社員などに転換させ、契約期限をもって雇止めにする新手の出産解雇は、ここ数年目立っている。その典型的な例の一つとしてノミネートした。

2.財務省

 財務省は、国家予算の編成などを担う省庁の1つであり、行政の中枢に位置付けられる国の重要機関である。
 今年4月、当時、財務省の事務方のトップである事務次官が、テレビ朝日の女性記者に対して、取材中に性的な言動を繰り返していたことが報道された。同省の最高責任者である麻生太郎財務大臣は当初、事実関係の確認には双方から意見を聴くべきだなどとし、被害女性に名乗りでるよう促す一方で、事務次官がはめられた可能性などにも言及した。
その後、財務省は顧問弁護士に調査を委託。同月27日の記者会見で、事務次官によるセクシュアルハラスメント(セクハラ)があったと判断したことを発表した。なお、事務次官側はセクハラについて否定している。
 この過程で麻生大臣は、日本には「セクハラ罪という罪はない」と発言し、セクハラを軽視する態度を崩さなかった。また、セクハラ行為を防止することが第一であるはずなのに、「男を番記者にすればいい」などと女性記者を排除するような発言もあった。こうした麻生大臣の言動は、セクハラが深刻な社会問題であることの認識を欠いていると指摘せざるを得ない。
 現在、健全な民間企業はセクハラなどのハラスメントをなくそうと努力している。にもかかわらず、「女性活躍」を標榜する政府の中枢機関で起きたセクハラ事件に対して、その対応があまりにお粗末であったと言わざるを得ない。その悪影響は計り知れないほど大きい。そこで、民間企業ではないが特別にノミネートした。

3.三菱電機株式会社

 三菱電機株式会社は、家電から発電機まで様々な電気製品を製造するメーカー企業であり、我が国の代表的な大企業である。
 同社では男性社員5人が長時間労働が原因で精神障害や脳疾患を発症して2014~17年に相次いで労災認定されていたことが発覚した。5人はシステム開発の技術者か研究職で、そのうち2人は過労自死しており、3人には裁量労働制が適用されていた。裁量労働制が適用された3名の中には過労自死した社員も含まれていたという。
 同社・ネットワーク製作所(兵庫県尼崎市)に勤務し、2016年2月に過労自死した男性社員は亡くなる4カ月ほど前から法定時間を上回る残業がそれ以前の約5倍に急増し、月80時間前後の残業が続いたという。この時期に精神障害が発症したとして、2017年6月に労災認定された。裁量労働制が適用されていたため「残業」扱いにもなっていない。
 また、同社名古屋製作所(名古屋市)の技術者の男性社員(当時28歳)は、2012年8月に過労自死した。2011年にシステム開発プロジェクトの担当に任命されたが、システムに次々と不具合が発生した。完成が予定に間に合わず、遅れを取り戻すために月100時間を超す長時間労働が数カ月続き、精神障害を発症。2014年12月に労災認定された。
 長時間労働による過労死という深刻な事故を起こしながら、同社は再発防止できず、4年間に2人もの過労自死を出したことは極めて重大であり、短期間に長時間労働を原因とした労災が5件も認定されたことも異常な状況であるため、ノミネートした。

4.株式会社日立製作所・株式会社日立プラントサービス

 株式会社日立製作所は、日立グループの中核的企業であり、日本を代表する電機メーカーである。会長の中西宏明氏は、日本経団連会長を務めている。また、日立プラントサービスは日立製作所のグループ会社である。
 2013 年に同社に新卒入社した20 代の労働者が、日立プラントサービスに在籍出向中、精神疾患によって労災認定された。この労働者は富山県の工事現場で設計・施工管理監督をしていたが、月100 時間を超える長時間残業が頻発し、最大で月160 時間を超えていた。
 さらに、所長から「いらない」「着工まで不要」「めざわりだから帰れ」「仕事辞めてしまえ」などの暴言を受け続け、労働時間を勤怠記録に記入する際には「考えてからつけるように」と言われ、労働時間の過少申告に追い詰められた。さらには座っていた椅子を蹴られており、これらの長時間労働やパワハラによって精神疾患を発症した。
 加えて、同社では山口県の笠戸事業所において、数百名のフィリピン人技能実習生を不正に働かせていたとして、法務省が技能実習適正化法違反の疑いで同社を調査している。報道によれば、彼らは配電盤や制御盤を作る「電気機器組み立て」を習得するはずが、窓や排水パイプ、カーペットやトイレを鉄道車両に取り付ける作業しかさせられていなかったという。技能実習生の在留資格の更新ができないことを理由に、すでに99 名が解雇されている。
 長時間労働とパワハラによって深刻な労災が発生したこと、また、外国人技能実習生に対する扱いの不適切さからノミネートした。

5.株式会社ジャパンビバレッジ東京

 株式会社ジャパンビバレッジ東京は、サントリー食品インターナショナルグループ傘下の自動販売機オペレーション大手・ジャパンビバレッジホールディングスの子会社である。
 同社は、2017 年末に足立労働基準監督署により「事業場外みなし労働時間制度」の違法適用を指導され、違法な長時間残業があったとして是正勧告を受けた。この労働者の残業時間は月100 時間を超えていたという。
 しかし、同社はこの制度を違法適用したことで、1日10 時間を超える自動販売機の補充などの労働に対して、7時間45 分の給与しか支払っていなかった。
 また、ある支店の支店長がクイズを出し、正解者にのみ有給休暇の取得を認める「有給チャンス」とよばれるパワハラの存在も明らかとなり、メディを賑わせた。言うまでもないが、有給休暇の取得は労働者の権利であるので、「クイズに正解すること」をその取得条件とすることは法律違反である。この「有給チャンス」問題に関連して、同社の複数の管理職が処分されたという。
 自動販売機でいつでも飲み物が買えるのは、その自動販売機に飲料を補充する労働者があってのことであるが、その利便性の裏には、無理のある労働条件や有給休暇すらまともに取らせないパワーハラスメントなどの横行があったことは、世に広く知られるべきことであるのでノミネートした。

6.野村不動産株式会社

 野村不動産株式会社は、不動産業界の最大手企業である。野村不動産では、「裁量労働制」が違法適用されていた2016 年9月、50 代の男性社員が過労自殺していたことが今年3 月発覚した。
 同社では2005 年、会社の中枢で経営企画の立案や情報分析などを行う社員が対象の「企画業務型裁量労働制」を約600 人の社員に適用した。だが実際には、マンションの営業担当など本来は適用の対象とはならない業務の担当者がここに多数含まれており、亡くなった社員もこれを適用された結果、一ヶ月の残業時間が180 時間を超えることもある長時間労働を強いられていた。
 上記の過労自殺が労災認定された2017 年12 月には、こうした裁量労働制の違法適用とそれに伴う違法残業、残業代未払いなどにより同社の東京本社など5 つの事業所が労働基準監督署から是正勧告を受けたほか、宮島誠一社長が東京労働局から是正の特別指導を受けている。
 裁量労働制が違法な長時間労働の温床となっている事実を示し、その悪用が最悪の労災事故を引き起こした事例としてノミネートした。


7.スルガ銀行株式会社

 スルガ銀行は静岡県沼津市に本店を置き、東京ほかの大都市でも営業展開していた地方銀行である。同行では、今年5 月に破産手続開始が決定し破綻した不動産会社「スマートデイズ」の勧誘のもと同社のシェアハウスに投資していた一般投資家らに不正な融資をしていたことが判明し、今年9 月7 日にはこの問題に関する第三者委員会(委員長=中村直人弁護士)の調査報告書が公表された。これにより、同行が行員たちに過大なノルマを押し付ける一方、達成できない人に対しては凄絶なパワーハラスメントを行っていたことが発覚した。
 上記報告書によれば、第三者委ではスルガ銀行の全行員を対象にアンケート調査を実施。その結果、「首を捕まれ壁に押し当てられ、顔の横の壁を殴った」「数字ができないなら、ビルから飛び降りろといわれた」、「ゴミ箱を蹴り上げたり、空のカフェ飲料のカップを投げつけられた」「死んでも頑張りますに対し、それなら死んでみろと叱責された」「ものを投げつけられ、パソコンにパンチされ、お前の家族皆殺しにしてやるといわれた」…などの回答が多数寄せられたとされており、第三者委もこうしたパワハラの蔓延が不正融資の温床になったとの見方を示している。
 パワハラ行為それ自体のひどさもさることながら、この放置・励行が最終的には社会全体に害を及ぼすことの実例としてノミネートした。

8.ゴンチャロフ製菓株式会社

 ゴンチャロフ製菓株式会社は神戸市に本社を置き、チョコレート・焼き菓子などの洋菓子の製造販売及び喫茶経営を手がけている。
 2016 年6 月、同社の工場に勤務していた当時20 歳の男性が電車に飛び込んで自殺した。これが長時間労働と上司によるパワーハラスメントが原因として、2018 年6 月に西宮労働基準監督署により労災認定された。
 報道によると、チョコレート製造などに携わっていた男性は、廃棄品は牧場に回されることから、ミスをすると「牛のえさ、作りに来とんか」と責められ、辞意を申し出ると「お前の出身高校からはもう採用しない」と叱られるなど、上司からパワハラを受けていたという。
 さらに男性は2015 年9 月~12 月には月約80~100 時間の残業をしており、同労基署は「業務による強い心理的負荷が認められる」とした。長時間労働とパワーハラスメントによって20 歳の若い命が奪われるという痛ましい事例であり、近年社会問題となっている長時間労働とパワーハラスメントを象徴する事例としてノミネートした。


9.株式会社モンテローザ

 株式会社モンテローザは「白木屋」「魚民」「笑笑」「目利きの銀次」「山内農場」などの居酒屋チェーンを展開する外食企業である。
 2017 年6 月、同社が福岡県福岡市で運営する「わらわら九大学研都市駅店」の店長(当時53 歳)が開店準備中に倒れ、致死性不整脈で亡くなった。遺族の労災申請を受けて福岡中央労働基準監督署が調査したところ、男性が亡くなるまでの3カ月間の時間外労働が過労死ラインとされる月80 時間におおむね達していると確認されたことなどから、今年8 月7 日、労災と認定された。
 男性のいとこがインターネットで発表した告発漫画によれば、男性は生前、友人とのLINE で「15 時から深夜3時まで勤務。それから6 時台の始発まで帰れず、8 時前にやっと帰宅。そのあと12 時には起きないといけない」「地獄です」などと漏らしていた。
 モンテローザでは各店に勤怠管理ソフトを導入しており、亡くなった男性も記録上は週に2 日休み、休憩も取れていることになっていた。だが上記漫画や一部報道によれば、このソフトは一種の「労基署対策」であり、実際はサービス残業や休日出勤、休憩なしの労働がまかり通っていたという。
 外食産業における長時間労働の結果の過労死という幾度となく繰り返される悲劇は、けっして看過できないためノミネートした。


by asyagi-df-2014 | 2018-12-06 20:27 | 書くことから-労働 | Comments(0)

派遣法改正は、成長戦略政策に乗った経営者側からの要求を満たすためだけに特化した『法改正』でしかない。~沖縄タイムス20180925~

 沖縄タイムス(以下、「タイムス」)は2018年9月24日、「[「派遣切り」問題]法改正で待遇改善図れ」、とその社説で論評した。
「タイムス」の主張は、「正社員への道はむしろ狭まったのではないか。」、との指摘である。
 「タイムス」は、法改正の矛盾について、次のように示す。


(1)改正労働者派遣法の施行から3年を前に、「派遣切り」や「雇い止め」への不安が高まっている。
(2)2015年9月30日に施行された改正法は、派遣労働者が同じ職場で働ける期間を最長3年に制限するものだった。それまで受け入れ期間に制限がなかった秘書や通訳など26専門業務でもルールを統一したのだ。
(3)他方、派遣会社に対しては雇用安定措置を義務付けた。同じ職場で3年を迎えた労働者の正社員化など直接雇用を派遣先企業に依頼するほか、派遣会社自らが無期雇用するなどの対応である。派遣元と派遣先は、10月1日以降、この雇用安定措置をとらなければならない。


 しかし、日本という国の実態は、「ところが3年の経過を前に、派遣切りが指摘されている。」「市民団体『非正規労働者の権利実現全国会議』が昨年来続ける労働相談にも深刻な事例が数多く寄せられている。」、というのが実情ではないのかと言うのである。
 どいうことなのか。


(1)15年以上継続勤務してきた女性が直接雇用されることなく派遣を打ち切られた、派遣元が派遣先に求めた高額の紹介料が壁となって直接雇用が頓挫した、派遣元で無期雇用となった場合、時給が下がると言われた-などである。
(2)3年前の法案審議で安倍晋三首相は、「正社員を希望する人にはその道を開き、派遣を選択する人には処遇の改善を図る」と意義を繰り返した。
(3)希望者の正社員化どころか、現状は雇用の安定とは逆の方向に進む。


 「タイムス」は、この問題の本質を次のように指摘する。


(1)そもそも派遣法改正は、労働分野の規制改革を掲げる安倍政権が経済界の意向をくんで進めた規制緩和策である。
(2)改正法の最大のポイントは、企業の派遣労働者受け入れ期間の制限をなくしたことだ。働く個人でみると同じ職場にいられるのは3年に限られるが、3年ごとに人を入れ替え、労働組合の意見を聞くといった手続きを踏めば、企業は派遣労働者に同じ仕事を任せられる。そのため当時から「不安定な雇用が拡大する」との懸念が強かった。 
(3)頼みの綱の雇用安定措置も、派遣元は直接雇用の依頼義務を負うが、派遣先が断るのを拒めない。派遣先が見つからない間も給与を保障する派遣元での無期雇用には高い壁がある。


 だから、「タイムス」は、日本政府に対して、まずはきちんとした「雇用安定措置の実効性や、派遣切りの実態を調査すべきだ。」、と要求する。
また、「改正労働契約法により4月から始まった『無期転換ルール』で、開始直前の雇い止めが問題となったばかりだ。法の『抜け道』を利用したルール逃れである。改正派遣法も同様に『抜け道』による悪影響が目立ってきている。」、「派遣で働く人は、昨年6月時点で約156万人。リーマン・ショック後、雇い止めが横行したピーク時からは減っているものの、ここ数年増える傾向にある。」、との実態を突きつける。 


 「タイムス」は、「企業のやる気やモラルに頼るだけでは待遇改善は図れない。法の再改正を含む見直しが必要だ。」、と


 確かに、「労働分野の規制改革を掲げる安倍政権が経済界の意向をくんで進めた規制緩和策」(沖縄タイムス)としての派遣法改正は、成長戦略政策に乗った経営者側からの要求を満たすためだけに特化した『法改正』でしかない。
むしろ、沖縄タイムスの「法の再改正を含む見直しが必要だ。」との論調さへがむなしく響く。



by asyagi-df-2014 | 2018-09-29 07:52 | 書くことから-労働 | Comments(0)

労働者が追い込まれている実態を変えなくては。

 毎日新聞は2018年9月17日、表題に関して次のように報じた。


(1)「三菱電機(本社・東京都千代田区)の男性社員5人が精神障害や脳疾患を発症し、2014~17年に労災認定されていたことが判明した。同社が27日、明らかにした。いずれも開発業務にあたるエンジニアで、うち2人は過労自殺していた。自殺者1人を含む3人には裁量労働制が適用されていたが、同社は今年3月、これを廃止している。」
(2)「同社によると、労災認定されたのは20~40代(いずれも認定か死亡当時)の男性社員で、長時間労働が原因とみられる。このうち、情報技術総合研究所(神奈川県鎌倉市)で医療用半導体レーザーの研究開発などを担当していた社員(当時31歳)は16年11月、記者会見して、違法な長時間残業を強いられて適応障害を発症し、神奈川労働局藤沢労働基準監督署から労災認定されたと明らかにした。」
(3)「同社では04年に裁量労働制を導入し、全社員約3万人のうち研究職や企画業務にあたる社員約1万人に適用していた。裁量労働制は実際に働いた時間でなく、あらかじめ決めた『みなし労働時間』を基に残業代込みの賃金を支払う制度。仕事の進め方や時間配分を自分で決められる労働者に限り適用できるが、長時間労働の温床となっているとの指摘がある。
(4)「裁量労働制が適用されていた3人(労災認定は15年3月~17年8月)のうち、コミュニケーション・ネットワーク製作所(兵庫県尼崎市)の当時40代の社員は16年2月に過労自殺、2人は脳疾患を発症した。また、12年8月に過労自殺した名古屋製作所(名古屋市)の当時20代の社員や、労災を公表した社員も将来的には裁量労働制が適用される可能性の高い業務だった。」
(5)「今年3月に裁量労働制を全廃したことについて、同社広報部は「労働時間をより厳格に把握するため」と説明し、一連の労災認定との関連については「直接的な理由ではない」としている。」
【神足俊輔】


 2004に裁量労働制を導入した三菱電機が、2018年3月で、裁量労働制を全廃した理由を、是非とも公にし、学ぶ必要がある。
その理由の一つが、裁量労働制では果たせなかった「労働時間をより厳格に把握するため」ということが明確になったので。
確かに、労働者にとって「時間」の問題は、命に関わるのだから。




by asyagi-df-2014 | 2018-09-27 17:10 | 書くことから-労働 | Comments(0)

沖縄が非正規率が43.1%で全国一の高さである地平から、日本の非正規雇用問題を考える。

 沖縄タイムス(以下、「タイムス」。)は2018年7月15日、「2017年の就業構造基本調査では、沖縄県内の役員を除く雇用者に占め『「派遣社員』、『契約社員』、『嘱託』、『パート・アルバイト』などの非正規雇用者の割合は43・1%で、若年層では44・4%といずれも全国で最も高かった。好調な県経済を背景に有効求人倍率など雇用情勢は改善し、人手不足から女性や高齢者でも働く人が増えているが、非正規の割合が依然と高い状況が続いている。6月に成立した働き方改革関連法では、非正規の待遇改善が盛り込まれており、県経済の持続的な発展のためにも企業側の対応が急務となっている。」、と伝えた。
 あわせて、「タイムス」はこの非正規雇用の問題点を、「雇用形態が不安定だと転職率が上がり、平均継続就業期間は短くなる。企業にとっては技術やノウハウが蓄積されず、生産性低下につながりかねない。県経済全体にとってもデメリットになるといえる。まずは、労働者が企業に定着し、安心して働ける環境整備が急務である。」、と解説する。
 また、「タイムス」は2018年7月16日、「[非正規率全国一]政府の対応が不可欠だ」と社説を掲げた。
 日本の非正規雇用問題について、沖縄の地平から考える。
「タイムス」は、沖縄の非正規の実態を次のように示す。


「パートや有期契約、派遣などで働く県内の非正規労働者が過去最多の25万3800人となったことが、総務省の2017年就業構造基本調査で明らかになった。雇用者全体に占める割合は43・1%に上り、5年前の前回調査に引き続き全国一の高さである。非正規は全国的にも増えているが、その平均割合は38・2%。最も低い徳島は32・6%で、沖縄とは10ポイント以上の開きがある。働く人のおよそ2人に1人が、賃金が安く身分が不安定な非正規という現実は深刻だ。」


 こうした状況に、「タイムス」は、次の問題点を指摘する。


(1)「県内景気は58カ月連続で『拡大』し、経済は好調だというのに、雇用の『質』がなかなか改善されないのはなぜなのか。」
(2)「指摘されるのは、サービス業など第3次産業に極端に偏る産業構造である。仕事の繁閑が大きく、製造業に比べて低いとされる労働生産性が長期の安定した雇用を阻んでいる。」
(3)「資本力の弱い中小零細企業が大部分を占めていることも影響している。」

 
 また、「タイムス」は、こうした沖縄の抱える問題に、「これ以上放置できない問題だ。」として、次の疑問を挙げる。


(1)「フルタイムで働いても非正規の平均月給は正社員の7割に届かない。同じ仕事をしているにもかかわらず、身分の違いだけで、これだけ差が生じるのは不合理である。」
(2)「本土との格差の代名詞とされる1人当たりの県民所得が全国最下位なのも、沖縄の極めて厳しい子どもの貧困率も、全国一低い大学進学率も、生涯未婚率の高さも、雇用の質と密接に絡み合っている。」


 さらに、「タイムス」はこうした実態が沖縄に抱えさせられている問題点を指摘する。


(1)「中でも深刻なのは若者の雇用を巡る状況だ。15歳から34歳までの若年者の非正規率は44・4%とさらに悪く、こちらも全国一だった。」
(2)「高校や大学を卒業して最初の就職先が非正規というのは珍しくない。しかし社会人の入り口での不安定雇用は働くことへの意欲をそぐばかりか、格差の固定化を招きかねない。」
(3)「調査では、1年前と現在の勤め先が異なる転職者率も公表され、県内は6・7%と最も高かった。若者の離職率の高さは雇用の『ミスマッチ』ということもあるのだろうが、労働条件の悪さなど働き続けることが困難な現実にしっかり向き合う必要がある。」


 当然、この問題は、沖縄県だけで解決できるものではない。
 したがって、「タイムス」は、次のことを日本という国の課題とすることを要求する。


(1)「非正規を雇用の調整弁と考えている企業もあるかもしれない。ただ2人に1人という現実は深刻で、一企業での解決は困難である。一自治体で取り組める話でもない。」
(2)「製造業が育成されないなど産業構造の問題は、米軍統治下で『基地依存型輸入経済』を余儀なくされた経済政策を引きずるものだ。」
(3)「安倍晋三首相が何かにつけ『私が先頭に立って、沖縄の振興を前に進めていく』と話すのは、沖縄振興を国の責務と自覚しているからだろう。政府と県が一体となって構造転換や生産性の向上を促す新しい施策を打ち出す時だ。」


 沖縄の地から、不正規雇用の問題を考える時、まずは沖縄が抱えさせられている構造的問題がある。
 それは、①サービス業など第3次産業に極端に偏る産業構造であることから、仕事の繁閑が大きく、製造業に比べて低いとされる労働生産性が長期の安定した雇用を阻んでいること、②沖縄では資本力の弱い中小零細企業が大部分を占めていること、③こうした問題の背景には、「製造業が育成されないなど産業構造の問題は、米軍統治下で『基地依存型輸入経済』を余儀なくされた経済政策を引きずるものだ。」(沖縄タイムス)との構造的問題が横たわっていることである。
 実際この問題から、「沖縄の将来を担う世代の能力を生かすことができない」(沖縄タイムス)状況が生まれてきている以上、「社会にとって大きな損失だ。」、との沖縄の課題の指摘は、深刻な意味を持つ。

もちろん、日本の非正規雇用の問題は、非正規雇用が成長戦略という企業利潤の非常な追求のための「雇用の調整弁」と位置づけられていることが、大きな格差や差別を生じさせている原因であることを押さえておく必要がある。



by asyagi-df-2014 | 2018-07-21 09:30 | 書くことから-労働 | Comments(0)

「働き方改革」法が成立。この問題をきちんと押さえるために。(4)

 「この国は、また壊された。」
 何故なのか。
 「労働者の命と健康を犠牲にする」法律を作ってしまったから。

 毎日新聞の2018年6月29日付け「安倍政権が今国会の最重要課題と位置づけるは、29日午前の参院本会議で自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。残業時間の罰則付き上限規制が初めて設けられる一方、反対の声が根強い『高度プロフェッショナル制度』(高プロ)が創設される。施行は原則2019年4月だが、制度の適用は企業の規模などにより時期が異なる項目もある。」、との記事を上記のように捉えた。

この問題をきちんと整理するために、日本労働弁護団の「働き方改革関連法案の採決強行に対する抗議声明(2018年7月3日)」(以下、「声明」。)で考える。
「声明」は、次のように問題点を指摘する。


(1)「日本のほとんどの労働組合と組合員及び過労死を考える家族の会などの市民団体をはじめとする多くの国民が反対し、日本弁護士連合会や過労死弁護団、日本労働弁護団など法律家団体の多くが反対する中で、安倍晋三政権は、働き方改革関連法案の採決を強行し、成立させたこと」
(2)「国会の会期を延長し、もっと十分な審議時間があったにもかかわらず、法案の問題点や疑問点が多数残されたままで審議を尽くすことなく、野党の多くが反対するのを押し切って採決を行ったこと」
(3)「高プロ制度を望む労働組合や労働者など誰もいないにもかかわらず強行採決したこと」
(4)「高プロ制度は、労働基準法に基づく労働時間規制を全て外してしまい、使用者が対象労働者に対して際限のない長時間労働をさせることが可能となるという意味で、労働基準法による労働者保護規制の破壊であり、わが国で働く労働者に取り返しのつかない弊害をもたらすものであること」
(5)「改正法は、政府与党が説明するような『労働者が自らの意思で柔軟な働き方を選択できる』制度ではなく、『時間ではなく成果で評価され賃金が支払われる』制度でないことが明らかであること。何故なら、『高プロ』制度は、『長時間労働を助長し、過労死を増加させる危険が高い』『定額の固定賃金で働かせ放題になる』ものでしかなく、政府が働き方改革関連法案で掲げる『長時間労働の是正の目的』と高プロ制度の本質は完全に矛盾するものであるから」
(6)「『労働者の命と健康を犠牲にする』法律は断じて作ってはならないこと」


 日本労働弁護団は「声明」で、「労働基準法の労働時間規制を破壊する改正法に断固として反対し、政府与党に対し、速やかに高プロ制度を創設する法律を撤回することを求める。」、と要求する。
 この上で、「全ての労働組合と労働者に対して、それぞれの職場で働く労働者の命と健康を守るために、高プロ制度の導入に反対し、この制度を使わないまま廃止させることを強く呼び掛ける。」、と決意表明をする。
 また、「今後、もし、高プロ制度を導入する企業があるならば、当該企業は『ブラック企業』の烙印を押され、社会的な批判・非難の対象となることを免れ得ないであろう。」、と警告する。


 私たちも続けて、「高プロ制度を導入する企業があるならば、当該企業は『ブラック企業』の烙印を押され、社会的な批判・非難の対象となることを免れ得ない」、と高らかに宣言しよう。



by asyagi-df-2014 | 2018-07-13 07:12 | 書くことから-労働 | Comments(0)

「働き方改革」法が成立。この問題をきちんと押さえるために。(3)

 「この国は、また壊された。」
 毎日新聞の2018年6月29日付け「安倍政権が今国会の最重要課題と位置づけるは、29日午前の参院本会議で自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。残業時間の罰則付き上限規制が初めて設けられる一方、反対の声が根強い『高度プロフェッショナル制度』(高プロ)が創設される。施行は原則2019年4月だが、制度の適用は企業の規模などにより時期が異なる項目もある。」、との記事を上記のように捉えた。

このことを考えるために、今回は、東京新聞(以下、「東京」。)の社説から考える。
「東京」は2018年7月2日、「<北欧に見る「働く」とは>(6) 国民が安心できてこそ」、とその社説を掲載した。
「東京」は、安倍晋三政権が成立させた「働き方改革関連法」の立法趣旨の誤謬が何なのかを、北欧二カ国と日本を対比させる中で、次のように指摘する。
 

(1)「北欧二カ国を見て強く感じるのは、危機意識を持ち将来を見通し対策を練る姿勢だ。当たり前のようだが、先送りはしない。」
(2)「スウェーデンの職業訓練は絶えず改善が加えられている。フィンランドの社会実験は導入するか分からない制度の検証に国の予算を投じている。」
(3)「企業側ではなく働く側に立つ視点を忘れていない。国民が意欲を持って働けてこそ国が成り立つと考えている。経済界が求める高度プロフェッショナル制度を創設させた日本政府とは姿勢が違うのではないか。国の大小は関係ない。学びたいところだ。」


 だから、次に、「日本ではどうすべきだろうか。」、と問うことになる。


(1)「日本の働き方の特徴は終身雇用制度だ。これを大切にしながら、能力を生かすために転職したい人や、正社員になりたい非正規社員がそうなれるような職業訓練や教育の機会は増やすべきだ。」
(2)「今、支援が必要なのは、低収入で雇用が不安定な非正規社員と、個人で事業をする人たちだ。非正規は雇用されていても職場の健康保険や厚生年金に加入できないなど法制度の『保護の網』は限定されている。確かに企業の負担にかかわる。それでも網の拡大や正社員化は国の将来を見ればもっと進めるべきだろう。」
(3)「生活保護制度は収入があると利用しにくい。フィンランドのように働いても低収入なら、それを補う給付制度は検討に値する。」
(4)「日本では非正規の増加で格差拡大は最大の課題となっている。富の再配分の見直しを通して是正する必要がある。スウェーデンは再就職による安定した賃金確保で、フィンランドは低収入を補う社会保障の給付で格差をなくそうとしている。」
(5)「日本でも人工知能(AI)の進展などで個人で事業を始めたり起業する人が増えそうである。だが、『保護の網』は雇用される人が対象でこうした人はそこから漏れる。働き過ぎの防止や、最低賃金の保証、失業給付、労働災害の補償などがない。働き方が多様化している以上、それに対応した制度の改善に取り組まねばならない。」


 「東京」の核心は、「日常生活や将来に安心できてこそ働き続けられる。人の幸福の原点でもある。」、ということにある。 



by asyagi-df-2014 | 2018-07-12 06:26 | 書くことから-労働 | Comments(0)

「働き方改革」法が成立。この問題をきちんと押さえるために。(1)

「働き方改革」法が成立。この問題をきちんと押さえるために。(1)


 「この国は、また壊された。」
「働き方改革」法案の成立は、上記のように捉えられるものでしかない。
 毎日新聞は2018年6月29日、このこと次のように報じている。


(1)「安倍政権が今国会の最重要課題と位置づける働き方改革関連法は、29日午前の参院本会議で自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。残業時間の罰則付き上限規制が初めて設けられる一方、反対の声が根強い『高度プロフェッショナル制度』(高プロ)が創設される。施行は原則2019年4月だが、制度の適用は企業の規模などにより時期が異なる項目もある。」
(2)「高収入の一部専門職を労働時間規制から外す高プロや残業時間の上限規制に加え、正規・非正規労働者の不合理な待遇差を禁じる同一労働同一賃金の導入が柱となっている。八つの労働法規の改正が一つに束ねられ、規制の強化と緩和の要素を抱き合わせにした形だ。性質の異なる法律の改正を、一括して審議する手法を用いた政府・与党の姿勢に批判の声が上がった。」
(3)「このうち高プロについて、野党は『長時間労働を助長し、過労死を増やす』として、法案からの削除を求めた。また、残業時間の規制は、最長『月100時間未満、複数月の平均で80時間』とする上限が過労死ラインにあたるとの指摘があったものの、見直されなかった。」
(4)「参院厚生労働委員会は、省令で定める高プロの対象業務の明確化などを政府に求める47項目の付帯決議をした。適用は、人手不足への配慮や制度運用までの準備期間として先延ばしにされる項目がある。残業時間の上限規制は中小企業は20年4月で、自動車運転業と建設業、医師は24年4月。同一労働同一賃金は大企業が20年4月、中小企業が21年4月となっている。 」
(5)「政府は当初、あらかじめ決めた時間を働いたとみなす裁量労働制の対象拡大を法案に盛り込む考えだったが、厚労省のデータに多くの異常値が含まれる問題が発覚し、撤回に追い込まれた。」                                   【神足俊輔】


 やはり、この問題をきちんと押さえなくてはならない。
 今回は、読売新聞(以下、読売。)の社説を、朝日新聞(以下、朝日)と毎日新聞(以下、毎日)の社説で考えるというかたちをを取ってみた。
 まず、読売は、今回の「働き方改革」法の成立について、労働者側からの深刻な問題として出された「残業代がなくなることで、長時間労働が助長される、との不安も根強い。新制度は、対象者の健康確保措置を企業に義務付けている。適正な運用が求められる。」との問いかけには簡単に触れるだけで、「弊害が目立つ日本の労働慣行を見直し、多様な人材が能力を発揮して活躍できる環境を整える。その契機としたい。」、と高く評価する。
読売は、具体的には、その評価の観点として次の3点を挙げている。

Ⅰ.実質的に青天井だった残業時間に制限を設け、長時間労働を是正する。
Ⅱ.正社員との格差が大きい非正規労働者の処遇も改善する。
Ⅲ.働き方改革を通じて生産性を高め、企業の成長力強化につなげる視点が重要である。


 また、読売は、その根拠を次のように挙げている。


(1)「労働力人口が減る中、社会・経済の活力を維持するには、子育てや介護と仕事を両立できる働き方を広め、女性や高齢者らの労働参加を促すことが欠かせない。」
(2)「長時間労働の恒常化は、多様な人材の活躍を阻み、生産性を低下させてきた。過労自殺などの悲劇も招いた。低賃金で不安定な非正規雇用の拡大は、消費を低迷させ、少子化の要因にもなっている。」
(3)「残業の上限は、いわゆる『過労死ライン』ぎりぎりだ。『緩すぎる』との批判もあるが、上限いっぱいの残業を肯定する趣旨ではないことは、言うまでもない。」
(4)「関連法には、有給休暇の一部を企業の責任で付与する制度も盛り込まれた。終業と始業の間に一定時間を確保する『インターバル制度』の導入については、企業の努力義務とした。企業は労働時間削減に可能な限り努めるべきだ。」
(5)「同一労働同一賃金に関しては、雇用形態による不合理な格差の禁止をより明確にした。処遇差についての説明義務も企業に課す。労使で協議を重ね、正社員と非正規労働者の双方が納得できる処遇体系を構築してもらいたい。」
(6)「高収入の一部専門職を労働時間規制の対象から外す『脱時間給』(高度プロフェッショナル)制度も、新たに導入される。」


 さて、この読売の三点の判断に関することについて、朝日と毎日は次のように主張している。


Ⅰ.「実質的に青天井だった残業時間に制限を設け、長時間労働を是正する。」ということに関わって

(朝日新聞)
(1)「今回の法改正で、これまで労使が協定を結べば事実上無制限だった残業時間に、罰則付きの上限を設けることになったのは、働き過ぎ是正に向けた第一歩だろう。だが、この上限も繁忙月では100時間未満と、労災認定の目安ぎりぎりだ。さらなる時短の取り組みが欠かせない。」
(2)「『この制度は本人の同意が必要で、望まない人には適用されない』と、首相は繰り返す。それをどのように担保するのか。高プロと同じように、本人同意が条件になっている企画業務型の裁量労働制の違法適用が、野村不動産で昨年末に発覚したばかりだ。しかも、社員が過労死で亡くなるまで見抜けなかった。実効性のある歯止めをつくらねばならない。省令など今後の制度設計に委ねられる部分は、ほかにも多い。政府は、高プロを『自由で柔軟な働き方』とするが、使用者が働く時間や場所を指示してはならないという規定は法律にない。適用対象業務を含め、労働政策審議会での徹底した議論が必要だ。」

(毎日新聞)
(1)「残業時間については労働基準法が制定されて初めて上限規制が罰則付きで定められた。『原則月45時間かつ年360時間』『繁忙期などは月100時間未満』という内容だ。過労死ラインは月80時間とされており、規制の甘さも指摘されるが、現行法では労使協定を結べば青天井で残業が認められている。長時間労働が疑われる会社に関する厚生労働省の調査では、月80時間を超える残業が確認された会社は2割に上り、200時間を超える会社もある。甘いとはいえ残業時間の上限を法律で明記した意義は大きい。」


 このように、朝日も読売も、この点に関しては、「働き過ぎ是正に向けた第一歩」「甘いとはいえ残業時間の上限を法律で明記した意義は大きい。」、と評価する。
しかし、労働者保護を実施するための補償は何も担保されてはいない。
このような評価に値するものであるかは疑問である。


Ⅱ.「正社員との格差が大きい非正規労働者の処遇も改善する。」に関わって


 毎日新聞は、「日本の非正規社員の賃金は正社員の6割程度にとどめられており、欧州各国の8割程度に比べて著しく低い。このため『同一労働同一賃金』を導入し、非正規社員の賃上げなど処遇改善を図ることになった。具体的な内容は厚労省が作成する指針に基づいて労使交渉で決められる。若年層の低賃金は結婚や出産を控える原因にもなっている。少子化対策の面からも非正規社員の賃上げには期待が大きい。抜け道を許さないための厳しい指針が必要だ。」、と指摘する。
 しかに、今回の「働き方改革」法は、戦後のこの時期まで本来の『同一労働同一賃金』政策を否定してきた側が、自らが導入し拡大させてきた非正規雇用制度が、予想通りに大きな問題を顕在させてきたことにより、『同一労働同一賃金』との言葉だけを取りあげ、自らの失政政を取り繕うだけのものではないのか。


Ⅲ.「働き方改革を通じて生産性を高め、企業の成長力強化につなげる視点が重要である。」に関わって

(朝日新聞)
(1)「今回の改革の原点は、働く人たちの健康や暮らしを守ることである。その改革の実をどのようにあげるか。それぞれの職場の状況に応じた、労使の話し合いが重要となることは言うまでもない。」

(毎日新聞)
(1)「最も賛否が分かれたのは高プロの導入だ。年収1075万円以上の専門職を残業規制から外し、成果に応じた賃金とする制度である。本人が希望すれば対象から外れることになったが、上司との力関係で、高プロ適用を拒否できる人がどれほどいるのか疑問が残る。 残業代を払わずに長時間労働をさせられる社員を増やしたい経営者側の意向を受けて、安倍政権が関連法に盛り込んだものだ。対象の職種や年収の基準を法律で規定することも一時は検討されたが、省令で決められることになった。これでは、なし崩し的に対象が広げられる恐れがある。長時間の残業を強いられると過労死した人の遺族が懸念するのはよく分かる。経営側の利益のために制度が乱用されないよう、監視を強めるべきだ。」(2)「一方、働く側からは柔軟な働き方を求める声が高まっている。介護や育児をしながら働く人は増え、地域での活動や副業、趣味などにもっと時間をかけたい人も多いはずだ。求められるのは、コスト削減のための制度ではなく、働く人が自分で労働時間や働き方を決められるような制度である。」


 実は、今回三社の社説を比べてみたのは、読売が主張する「働き方改革を通じて生産性を高め、企業の成長力強化につなげる視点」について、朝日と毎日が、それぞれの社説でどのようにで触れているかを知りたかったことにある。
朝日の指摘する「今回の改革の原点は、働く人たちの健康や暮らしを守ることである。」とする視点と読売の視点の違いは大きい。
 また、毎日も「長時間の残業を強いられると過労死した人の遺族が懸念するのはよく分かる。経営側の利益のために制度が乱用されないよう、監視を強めるべきだ。」「求められるのは、コスト削減のための制度ではなく、働く人が自分で労働時間や働き方を決められるような制度である」、との視点を唱えている。
 結局、朝日毎日の二社と「企業の成長力強化」とでしか見ていない読売とは、大きな違いがあることがわかる。


 これ以外に、読売に欠けているものは、次の視点である。
 一つには、現在のこの国の方針決定のあり方に関わることである。
 朝日は、次のように指摘する。


(1)「制度の乱用を防ぐための監督指導の徹底など47項目もの参院での付帯決議が、何よりこの法律の不備を物語る。本来なら、議論を尽くして必要な修正を加えるべきだった。」
(2)「国会審議で浮き彫りになったのは、不誠実としか言いようのない政府の姿勢だ。比較できないデータをもとに、首相が『裁量労働制で働く方の労働時間は一般労働者よりも短い』と誤った説明をし、撤回に追い込まれた。その後も、法案作りの参考にした労働実態調査のデータに誤りが次々と見つかった。」
(3)「一定年収以上の人を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル制度(高プロ)の必要性も説得力に欠ける。政府は当初、『働く人にもニーズがある』と説明した。しかし具体的な根拠を問われて示したのは、わずか12人からの聞き取り結果というお粗末さ。審議終盤、首相は『適用を望む労働者が多いから導入するのではない』と説明するほかなかった。」


 まさしく、この政権には、丁寧さや弱者への配慮が足りないことが浮き彫りになっている。

 もう一つは、毎日の「これらの改革を着実に実行するには、公的機関による監視や指導が不可欠だ。2015年に東京と大阪の労働局に『過重労働撲滅特別対策班(かとく)』が新設された。検察庁へ送検する権限を持つ特別司法警察職員だが、現在は計15人しかいない。これでは全国の会社に目を光らせることなどできないだろう。労働基準監督署による指導だけでなく、労働組合のチェック機能の向上、会社の取り組みに関する情報公開の徹底などが求められる。」、という労働保護のあり方の根本的な問題である。


 結局、今回の「法」に貫かれている「弊害が目立つ日本の労働慣行を見直し」(読売)という考え方は、「過労死」という言葉が普通に使用されるまでに労働者を追い込んだ日本の労働行政と資本の側が、さらに「働き方改革を通じて生産性を高め、企業の成長力強化につなげる」(読売)ために、新たに編みだしたものでしかないということである。
 今回の働き方改革関連法の成立に関わっての評価は、この法を「弊害が目立つ日本の労働慣行を見直し、企業の成長力を強化」と読売風に評価するのかしないのかにかかっている。
読売の言う「弊害」は、あくまでも使用者の勝手な都合に基づく「弊害」に過ぎない。
 労働者保護の観点を全く含んでいないことが、今回の「法」の最大の問題点である。



by asyagi-df-2014 | 2018-07-09 07:16 | 書くことから-労働 | Comments(0)

「「働き方改革」法が成立。この問題をきちんと押さえるために。(2)

 「この国は、また壊された。」
 毎日新聞の2018年6月29日付け「安倍政権が今国会の最重要課題と位置づける働き方改革関連法は、29日午前の参院本会議で自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。残業時間の罰則付き上限規制が初めて設けられる一方、反対の声が根強い『高度プロフェッショナル制度』(高プロ)が創設される。施行は原則2019年4月だが、制度の適用は企業の規模などにより時期が異なる項目もある。」、との記事を上記のように捉えた。
このことを考えるために、今回は、田中龍作ブログから引用する。
「高プロ成立 家族の会『絶対に過労死は出ます』」、と題された題目から絞り出された怒りを感じる。
ブログは、次のように始まる。


(1)「『労働者を死ぬまでコキ使っても何の罪に問われない』。経営者にとっては夢のような法律がきょう、制定された。2018年6月29日は、日本の労働法制が前近代に後戻りする歴史的な日となった。」
(2)「過労死促進法案と異名をとる高プロ制度がキモの『働き方改革(働かせ方改悪)』法案が、この日、参院本会議で採決された。『過労死家族の会』は、亡き夫や娘の遺影と共に本会議を傍聴した。田中と助手の村上も共に傍聴した。記者クラブではないため、写真撮影は許可されなかった。」
(3)「法案に賛成する与党議員が演説すると、家族の会は首を横に振った。遺影は小刻みに震えた。野党議員が『過労死が増える』と声を大にして警鐘を鳴らすと、すすり泣いた。」
(4)「午前11時45分、法案は賛成多数で可決、成立した。『数の力はどうしようもない』。東京過労死を考える家族の会の中原のり子さんは、無念そうに語った。『悔しいね』『悔しいね』。家族の会はお互いを抱き支えるようにして本会議場を後にした。」
(5)「国民民主党の山井和則議員は、本会議場の外で家族の会を待ち受けた。『力になれず済みませんでした。私の力不足です』。山井議員は無念の表情で唇を噛み締めた。家族の会は国民民主に対しては怒りを隠さないが、過労死撲滅に尽力する山井議員は受容しているように見えた。」
(6)「家族の会はこの後、国会内で記者会見を開いた。」
(7)「全国過労死を考える家族の会の寺西笑子代表は『安倍首相の冷たい答弁、無関心さにショックを受けている』と憤った。安倍首相は法案提出理由を『労働者の働き方のニーズに合わせて』と説明していたが、問い詰められると『財界の要請であった』と本音をのぞかせた。」
(8)「立法事実も何もあったものではない。データもデッチあげ。法案のデタラメさは最後の最後まで指摘された。20日間で4日休ませれば、いくら連続勤務させても違法ではない。労働者が過労死で命を落としても労基署は踏みこめなくなるのだ。過労死は闇に葬られるのである。」
(9)「労働弁護団の玉木一成弁護士がいみじくも指摘した。『労基法を守らなくてもいいというお墨付きが与えられることが怖いんです。(ブラックホールに向かって)大きな穴が空いた』。」
(10)「『絶対に過労死は出ます。絶対出るんです。私たちにはそれが分かるんです』。18年前、エンジニアの夫を過労死で亡くした渡辺しのぶさんは、断言した。」


 私たちは、この言葉を決して忘れない。
 いあや、突きつけていこう。


『労基法を守らなくてもいいというお墨付きが与えられることが怖いんです。(ブラックホールに向かって)大きな穴が空いた』。」
『絶対に過労死は出ます。絶対出るんです。私たちにはそれが分かるんです』



by asyagi-df-2014 | 2018-07-08 06:42 | 書くことから-労働 | Comments(0)

「働き方改革」法が成立。この問題をきちんと押さえるために。(1)

 「この国は、また壊された。」
「働き方改革」法案の成立は、上記のように捉えられるものでしかない。
 毎日新聞は2018年6月29日、このこと次のように報じている。


(1)「安倍政権が今国会の最重要課題と位置づける働き方改革関連法は、29日午前の参院本会議で自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。残業時間の罰則付き上限規制が初めて設けられる一方、反対の声が根強い『高度プロフェッショナル制度』(高プロ)が創設される。施行は原則2019年4月だが、制度の適用は企業の規模などにより時期が異なる項目もある。」
(2)「高収入の一部専門職を労働時間規制から外す高プロや残業時間の上限規制に加え、正規・非正規労働者の不合理な待遇差を禁じる同一労働同一賃金の導入が柱となっている。八つの労働法規の改正が一つに束ねられ、規制の強化と緩和の要素を抱き合わせにした形だ。性質の異なる法律の改正を、一括して審議する手法を用いた政府・与党の姿勢に批判の声が上がった。」
(3)「このうち高プロについて、野党は『長時間労働を助長し、過労死を増やす』として、法案からの削除を求めた。また、残業時間の規制は、最長『月100時間未満、複数月の平均で80時間』とする上限が過労死ラインにあたるとの指摘があったものの、見直されなかった。」
(4)「参院厚生労働委員会は、省令で定める高プロの対象業務の明確化などを政府に求める47項目の付帯決議をした。適用は、人手不足への配慮や制度運用までの準備期間として先延ばしにされる項目がある。残業時間の上限規制は中小企業は20年4月で、自動車運転業と建設業、医師は24年4月。同一労働同一賃金は大企業が20年4月、中小企業が21年4月となっている。 」
(5)「政府は当初、あらかじめ決めた時間を働いたとみなす裁量労働制の対象拡大を法案に盛り込む考えだったが、厚労省のデータに多くの異常値が含まれる問題が発覚し、撤回に追い込まれた。」                              【神足俊輔】


 やはり、この問題をきちんと押さえなくてはならない。
 今回は、読売新聞(以下、読売。)の社説を、朝日新聞(以下、朝日)と毎日新聞(以下、毎日)の社説で考えるというかたちをを取ってみた。
 まず、読売は、今回の「働き方改革」法の成立について、労働者側からの深刻な問題として出された「残業代がなくなることで、長時間労働が助長される、との不安も根強い。新制度は、対象者の健康確保措置を企業に義務付けている。適正な運用が求められる。」との問いかけには簡単に触れるだけで、「弊害が目立つ日本の労働慣行を見直し、多様な人材が能力を発揮して活躍できる環境を整える。その契機としたい。」、と高く評価する。
読売は、具体的には、その評価の観点として次の3点を挙げている。

Ⅰ.実質的に青天井だった残業時間に制限を設け、長時間労働を是正する。
Ⅱ.正社員との格差が大きい非正規労働者の処遇も改善する。
Ⅲ.働き方改革を通じて生産性を高め、企業の成長力強化につなげる視点が重要である。


 また、読売は、その根拠を次のように挙げている。


(1)「労働力人口が減る中、社会・経済の活力を維持するには、子育てや介護と仕事を両立できる働き方を広め、女性や高齢者らの労働参加を促すことが欠かせない。」
(2)「長時間労働の恒常化は、多様な人材の活躍を阻み、生産性を低下させてきた。過労自殺などの悲劇も招いた。低賃金で不安定な非正規雇用の拡大は、消費を低迷させ、少子化の要因にもなっている。」
(3)「残業の上限は、いわゆる『過労死ライン』ぎりぎりだ。『緩すぎる』との批判もあるが、上限いっぱいの残業を肯定する趣旨ではないことは、言うまでもない。」
(4)「関連法には、有給休暇の一部を企業の責任で付与する制度も盛り込まれた。終業と始業の間に一定時間を確保する『インターバル制度』の導入については、企業の努力義務とした。企業は労働時間削減に可能な限り努めるべきだ。」
(5)「同一労働同一賃金に関しては、雇用形態による不合理な格差の禁止をより明確にした。処遇差についての説明義務も企業に課す。労使で協議を重ね、正社員と非正規労働者の双方が納得できる処遇体系を構築してもらいたい。」
(6)「高収入の一部専門職を労働時間規制の対象から外す『脱時間給』(高度プロフェッショナル)制度も、新たに導入される。」


 さて、この読売の三点の判断について考えてみる。


Ⅰ.「実質的に青天井だった残業時間に制限を設け、長時間労働を是正する。」ということに関わって

(朝日新聞)
(1)「今回の法改正で、これまで労使が協定を結べば事実上無制限だった残業時間に、罰則付きの上限を設けることになったのは、働き過ぎ是正に向けた第一歩だろう。だが、この上限も繁忙月では100時間未満と、労災認定の目安ぎりぎりだ。さらなる時短の取り組みが欠かせない。」
(2)「『この制度は本人の同意が必要で、望まない人には適用されない』と、首相は繰り返す。それをどのように担保するのか。高プロと同じように、本人同意が条件になっている企画業務型の裁量労働制の違法適用が、野村不動産で昨年末に発覚したばかりだ。しかも、社員が過労死で亡くなるまで見抜けなかった。実効性のある歯止めをつくらねばならない。省令など今後の制度設計に委ねられる部分は、ほかにも多い。政府は、高プロを『自由で柔軟な働き方』とするが、使用者が働く時間や場所を指示してはならないという規定は法律にない。適用対象業務を含め、労働政策審議会での徹底した議論が必要だ。」

(毎日新聞)
(1)「残業時間については労働基準法が制定されて初めて上限規制が罰則付きで定められた。『原則月45時間かつ年360時間』『繁忙期などは月100時間未満』という内容だ。過労死ラインは月80時間とされており、規制の甘さも指摘されるが、現行法では労使協定を結べば青天井で残業が認められている。長時間労働が疑われる会社に関する厚生労働省の調査では、月80時間を超える残業が確認された会社は2割に上り、200時間を超える会社もある。甘いとはいえ残業時間の上限を法律で明記した意義は大きい。」


 このように、朝日も読売も、この点に関しては、「働き過ぎ是正に向けた第一歩」「甘いとはいえ残業時間の上限を法律で明記した意義は大きい。」、と評価する。
しかし、労働者保護を実施するための補償は何も担保されてはいない。
このような評価に値するものであるかは疑問である。


Ⅱ.「正社員との格差が大きい非正規労働者の処遇も改善する。」に関わって


 毎日新聞は、「日本の非正規社員の賃金は正社員の6割程度にとどめられており、欧州各国の8割程度に比べて著しく低い。このため『同一労働同一賃金』を導入し、非正規社員の賃上げなど処遇改善を図ることになった。具体的な内容は厚労省が作成する指針に基づいて労使交渉で決められる。若年層の低賃金は結婚や出産を控える原因にもなっている。少子化対策の面からも非正規社員の賃上げには期待が大きい。抜け道を許さないための厳しい指針が必要だ。」、と指摘する。
 しかに、今回の「働き方改革」法は、戦後のこの時期まで本来の『同一労働同一賃金』政策を否定してきた側が、自らが導入し拡大させてきた非正規雇用制度が、予想通りに大きな問題を顕在させてきたことにより、『同一労働同一賃金』との言葉だけを取りあげ、自らの失政政を取り繕うだけのものではないのか。


Ⅲ.「働き方改革を通じて生産性を高め、企業の成長力強化につなげる視点が重要である。」に関わって

(朝日新聞)
(1)「今回の改革の原点は、働く人たちの健康や暮らしを守ることである。その改革の実をどのようにあげるか。それぞれの職場の状況に応じた、労使の話し合いが重要となることは言うまでもない。」

(毎日新聞)
(1)「最も賛否が分かれたのは高プロの導入だ。年収1075万円以上の専門職を残業規制から外し、成果に応じた賃金とする制度である。本人が希望すれば対象から外れることになったが、上司との力関係で、高プロ適用を拒否できる人がどれほどいるのか疑問が残る。 残業代を払わずに長時間労働をさせられる社員を増やしたい経営者側の意向を受けて、安倍政権が関連法に盛り込んだものだ。対象の職種や年収の基準を法律で規定することも一時は検討されたが、省令で決められることになった。これでは、なし崩し的に対象が広げられる恐れがある。長時間の残業を強いられると過労死した人の遺族が懸念するのはよく分かる。経営側の利益のために制度が乱用されないよう、監視を強めるべきだ。」(2)「一方、働く側からは柔軟な働き方を求める声が高まっている。介護や育児をしながら働く人は増え、地域での活動や副業、趣味などにもっと時間をかけたい人も多いはずだ。求められるのは、コスト削減のための制度ではなく、働く人が自分で労働時間や働き方を決められるような制度である。」


 実は、今回三社の社説を比べてみたのは、読売が主張する「働き方改革を通じて生産性を高め、企業の成長力強化につなげる視点」について、朝日と毎日が、それぞれの社説でどのようにで触れているかを知りたかったことにある。
朝日の指摘する「今回の改革の原点は、働く人たちの健康や暮らしを守ることである。」とする視点と読売の視点の違いは大きい。
 また、毎日も「長時間の残業を強いられると過労死した人の遺族が懸念するのはよく分かる。経営側の利益のために制度が乱用されないよう、監視を強めるべきだ。」「求められるのは、コスト削減のための制度ではなく、働く人が自分で労働時間や働き方を決められるような制度である」、との視点を唱えている。
 結局、朝日毎日の二社と「企業の成長力強化」とでしか見ていない読売とは、大きな違いがあることがわかる。


 これ以外に、読売に欠けているものは、次の視点である。
 一つには、現在のこの国の方針決定のあり方に関わることである。
 朝日は、次のように指摘する。


(1)「制度の乱用を防ぐための監督指導の徹底など47項目もの参院での付帯決議が、何よりこの法律の不備を物語る。本来なら、議論を尽くして必要な修正を加えるべきだった。」
(2)「国会審議で浮き彫りになったのは、不誠実としか言いようのない政府の姿勢だ。比較できないデータをもとに、首相が『裁量労働制で働く方の労働時間は一般労働者よりも短い』と誤った説明をし、撤回に追い込まれた。その後も、法案作りの参考にした労働実態調査のデータに誤りが次々と見つかった。」
(3)「一定年収以上の人を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル制度(高プロ)の必要性も説得力に欠ける。政府は当初、『働く人にもニーズがある』と説明した。しかし具体的な根拠を問われて示したのは、わずか12人からの聞き取り結果というお粗末さ。審議終盤、首相は『適用を望む労働者が多いから導入するのではない』と説明するほかなかった。」


 まさしく、この政権には、丁寧さや弱者への配慮が足りないことが浮き彫りになっている。
 もう一つは、毎日の「これらの改革を着実に実行するには、公的機関による監視や指導が不可欠だ。2015年に東京と大阪の労働局に『過重労働撲滅特別対策班(かとく)』が新設された。検察庁へ送検する権限を持つ特別司法警察職員だが、現在は計15人しかいない。これでは全国の会社に目を光らせることなどできないだろう。労働基準監督署による指導だけでなく、労働組合のチェック機能の向上、会社の取り組みに関する情報公開の徹底などが求められる。」、という労働保護のあり方の根本的な問題である。


 最後に、今回の働き方改革関連法の成立に関わっての評価は、この法を「弊害が目立つ日本の労働慣行を見直し、企業の成長力を強化」と読売風に評価するのかしないのかにかかっている。
読売の言う「弊害」は、あくまでも使用者にとって弊害なのであって、労働者保護の
観点が含めれたいないことが今回の最大の問題点である。



by asyagi-df-2014 | 2018-07-07 07:08 | 書くことから-労働 | Comments(0)

この国は、また壊された。

 毎日新聞は2018年6月29日、表題について次のように報じた。


(1)「安倍政権が今国会の最重要課題と位置づける働き方改革関連法は、29日午前の参院本会議で自民、公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。残業時間の罰則付き上限規制が初めて設けられる一方、反対の声が根強い『高度プロフェッショナル制度』(高プロ)が創設される。施行は原則2019年4月だが、制度の適用は企業の規模などにより時期が異なる項目もある。」
(2)「高収入の一部専門職を労働時間規制から外す高プロや残業時間の上限規制に加え、正規・非正規労働者の不合理な待遇差を禁じる同一労働同一賃金の導入が柱となっている。八つの労働法規の改正が一つに束ねられ、規制の強化と緩和の要素を抱き合わせにした形だ。性質の異なる法律の改正を、一括して審議する手法を用いた政府・与党の姿勢に批判の声が上がった。」
(3)「このうち高プロについて、野党は『長時間労働を助長し、過労死を増やす』として、法案からの削除を求めた。また、残業時間の規制は、最長『月100時間未満、複数月の平均で80時間』とする上限が過労死ラインにあたるとの指摘があったものの、見直されなかった。」
(4)「参院厚生労働委員会は、省令で定める高プロの対象業務の明確化などを政府に求める47項目の付帯決議をした。適用は、人手不足への配慮や制度運用までの準備期間として先延ばしにされる項目がある。残業時間の上限規制は中小企業は20年4月で、自動車運転業と建設業、医師は24年4月。同一労働同一賃金は大企業が20年4月、中小企業が21年4月となっている。 」
(5)「政府は当初、あらかじめ決めた時間を働いたとみなす裁量労働制の対象拡大を法案に盛り込む考えだったが、厚労省のデータに多くの異常値が含まれる問題が発覚し、撤回に追い込まれた。」                              【神足俊輔】




by asyagi-df-2014 | 2018-06-29 21:25 | 書くことから-労働 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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