2019年 10月 05日 ( 2 )

ここに、スラップ訴訟の判決が。

 yahooニュースは2019年10月4日、「DHC会長に賠償命令、東京地裁 批判弁護士提訴は「違法」」、と次のように配信した。


「化粧品会社ディーエイチシー(DHC)の吉田嘉明会長が政治家に資金を貸し付けたことをブログで批判した弁護士が、吉田氏側から自由な言論を封じる脅し目的の訴訟『スラップ』を起こされ、精神的苦痛を受けたとして損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は4日、提訴は著しく相当性を欠く違法行為だったと認め、吉田氏と同社に110万円の支払いを命じた。吉田氏は渡辺喜美元行政改革担当相に、2010年参院選と12年衆院選の前に計8億円を貸した。DHCは『判決に不服があり控訴したい』としている。ブログを書いたのは東京弁護士会の沢藤統一郎弁護士。」


 「澤藤統一郎の憲法日記」を久しぶりに、開けてみた。
 そこには、いつものブログ(160弾)が展開されていた。
ここでは、ブログが長いので、先に大事なところを抜粋します。


「DHC・吉田嘉明には澤藤ブログが面白くないとしても、裁判をしても勝てっこないことは分かっていたはず。仮にそのことが分かっていなかったとしても、普通の人なら容易にそのことが分かったはずなのだから、そんな提訴はしてはいけない。してはいけない提訴をしたことは澤藤に対する違法行為として、損害賠償の責任を負うことになる」
「光前幸一弁護団長は、記者会見で『民事訴訟制度は社会の公器。それを強者の凶器としたのがスラップ訴訟』という名言を残している。スラップが横行するところ、公共の言論は萎縮し、民主主義は形骸と化すことにならざるを得ない。本日の判決は、東京地方裁判所民事一部の判決として、重みをもつ。近時のスラップ横行の潮流に歯止めを掛けるものとして評価に値する。」


「よい判決だったから、《10月4日》は勝訴記念日。 ― 『DHCスラップ訴訟』を許さない・第160弾 」ブログは、次の内容。


(1)本日(10月4日)13時15分。東京地裁415号法廷。裁判長(前澤達朗)が判決を読み上げる。朗読が「原告の…」から始まれば、棄却判決で私の敗訴。「被告らは…」で始まれば、認容判決で私の勝訴。
(2)「主文…」。ほんの少しだけ間をおいて、「被告らは,原告に対し,」と続いた。私の勝訴である。あとは落ちついて聞くことができる。「…連帯して110万円及びこれに対する平成26年8月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え」「原告のその余の請求をいずれも棄却する」「訴訟費用は,これを6分し,その1を原告の負担とし,その余は被告らの連帯負担とする」とつづき、最後に「この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる」で、主文の朗読は終わり。
(3)「理由は判決書をお読みください」で、裁判官3人は席を立った。法廷内の弁護団と支援の傍聴者から、期せずして拍手と歓声が起こった。「よかった。よかった」「ご苦労様」「ありがとう」。その歓声に、法廷を出ようとしていた裁判長が、くるりと傍聴席の方に向き直った。そして、「法廷では拍手をお控えください」。勝訴の法廷だから、とげとげしい雰囲気にはならなかったが、少々驚いた。いろんな裁判官がいるものだ。
(4)前件の「DHCスラップ訴訟」では、勝訴は確実と思っていた。これに続く、今回の「DHCスラップ『反撃』訴訟」では、勝訴のはずとは思っていたが、確実とまでは思えなかった。ところが、判決の中身は、実に明確に、そして簡潔にDHC・吉田嘉明による提訴の違法を認定している。
(5)判決の出発点は、次の最高裁判例である。「訴えの提起は,提訴者が当該訴訟において主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,同人が,そのことを知りながら,又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合に限り,相手方に対する違法行為になるものというべきである(最高裁判所昭和63年1月26日第三小法廷判決)。
(6)その上で、大要次のように判断する。「DHC・吉田嘉明が澤藤に対して訴えを提起し、損害賠償請求の根拠としたブログは合計5本あるが、そのいずれについても、客観的に請求の根拠を欠くだけでなく、DHC・吉田嘉明はそのことを知っていたか、あるいは通常人であれば容易にそのことを知り得たといえる。にもかかわらず、DHC・吉田嘉明は、敢えて訴えを提起したもので、これは裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合に当たり、提訴自体が澤藤に対する違法行為になる」
(7)「DHC・吉田嘉明には澤藤ブログが面白くないとしても、裁判をしても勝てっこないことは分かっていたはず。仮にそのことが分かっていなかったとしても、普通の人なら容易にそのことが分かったはずなのだから、そんな提訴はしてはいけない。してはいけない提訴をしたことは澤藤に対する違法行為として、損害賠償の責任を負うことになる」ということでもある。
(8)660万円の請求に対する110万円の認容だから、この金額に不満は残るところではある。もっとも、判決は、「一見して負けるはずもない損害賠償請求訴訟をされたとて、大きな精神的打撃を受けたとは言い難い」という趣旨が述べられている。認容額の多寡はともかく、スラップ提訴の違法を簡明に認めた判断をしている点では、影響の大きな貴重な判決と言えよう。光前幸一弁護団長は、記者会見で「民事訴訟制度は社会の公器。それを強者の凶器としたのがスラップ訴訟」という名言を残している。スラップが横行するところ、公共の言論は萎縮し、民主主義は形骸と化すことにならざるを得ない。本日の判決は、東京地方裁判所民事一部の判決として、重みをもつ。近時のスラップ横行の潮流に歯止めを掛けるものとして評価に値する。
(9)さて、吉田嘉明に聞いてみたい。彼は裁判所から本人尋問のために出廷の呼出を命じられていながら出廷を拒否した。出廷していたら,ぜひとも聞いてみたいことがあった。現時点ではこういう問になる。
(10)「在日で反日の徒の原告、在日の弁護団、在日の裁判長だから敗訴した」とお考えですか、と。一審判決のPDFを掲載しておきたい。下記URLから読むことができる。https://drive.google.com/file/d/1998RJj5Z-J2m5EG4D7PCGDc8jCAHLcl8/view?usp=sharing
(11)本日・10月4日は、記念すべきよき日だった。本日は、枕を高くして、ぐっすりと寝よう。


 「澤藤統一郎の憲法日記」は、「DHCスラップ『反撃』訴訟の構図と論点」をありがたいことに掲載してくれています。そのまま載せます。


※本日(10月4日)判決のこの事件は、
DHC・吉田嘉明の「国民の裁判を受ける権利(民事訴訟提起の権利)」(憲法32条)と,澤藤の「表現の自由」(憲法21条)の衝突の調整という図式です。

※「国民の裁判を受ける権利」も濫用は許されません。民事訴訟制度は、国民が自らの権利を擁護するためにこそあります。自らの権利擁護の目的を逸脱して、社会的強者が,自らへの批判の言論を封殺する目的での提訴は、訴権の濫用として提訴自体が違法とならざるを得ません。それがスラップの本質です。

※光前幸一弁護士は、このスラップの本質を「市民の公器が強者の凶器と化している」と表現し、「公共的言論の『不当な裁判から免れる権利』」を確立しなければならないと言っています。まさに、本日の判決では、このことが問われています。

※DHC・吉田嘉明による当初2000万円、訴訟係属中に増額して6000万円請求の前件提訴は、以下の要件から、スラップ性が明白だと考えられます。
☆週刊誌への自らの手記が批判の言論を招いたものであること。
☆批判の言論における事実摘示は、吉田手記にもとづくものでその内容の真実性にまったく問題のないこと。
☆関連10件のスラップ提訴は明らかに濫訴と考えられること。
☆常識的な事前交渉のない、唐突な提訴であること。
☆もともと、2000万円の請求が、高額に過ぎること。
☆しかも、澤藤がブログで反撃をはじめるや、6000万円に請求の拡張を行っていること。⇒言論封殺の目的を自白しているに等しい。
☆反撃訴訟において、吉田嘉明は、裁判所の呼出にもかかわらず、出廷を拒否していること。⇒真摯な、訴訟利用の態度ではない。
☆違法と主張されているブログは、いずれも常識的な表現であること。

※以上のとおり、DHC・吉田嘉明は自らの権利擁護のためではなく、敗訴は当然と知りながらも、批判の言論を威嚇し、自らへの批判を萎縮させる効果を狙って提訴に及んだもので、提訴・請求の拡張・上訴が、いずれも違法なのです。

※本日の判決がスラップの蔓延に歯止めとなり、その害悪を防止するものとなり得たことを喜びたいと思います。

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DHCスラップ訴訟・『反撃訴訟』経過の概略

☆スラップ提訴以前
2013年4月1日  ブログ「澤藤統一郎の憲法日記」新装開店
(以来毎日連続更新・本日で2380回)
2014年3月27日 吉田嘉明手記掲載の週刊新潮(4月3日号)発売
2014年3月31日 澤藤・違法とされたブログ(1)掲載
「DHC・渡辺喜美」事件の本質的批判
2014年4月2日  違法とされたブログ(2)掲載
「DHC8億円事件」大旦那と幇間 蜜月と破綻
2014年4月8日  違法とされたブログ(3)
政治資金の動きはガラス張りでなければならない
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☆DHCスラップ訴訟の経過
(原告 DHC・吉田嘉明、被告 澤藤統一郎
東京地裁民事24部 H26年(ワ)第9408号)
2014年4月16日 提訴(当時 石栗正子裁判長)
5月16日 訴状送達(2000万円の損害賠償請求+謝罪要求)
7月13日 ブログに、「『DHCスラップ訴訟』を許さない」シリーズ開始
13日 第1弾「いけません 口封じ目的の濫訴」
14日 第2弾「万国のブロガー団結せよ」
15日 第3弾「言っちゃった カネで政治を買ってると」
16日 第4弾「弁護士が被告になって」
8月20日 705号法廷 実質第1回弁論期日。
8月29日 原告 請求の拡張(6000万円の請求に増額) 書面提出
新たに下記2ブログ記事が名誉毀損とされる。
7月13日の「第1弾」ー違法とされたブログ(4)
「いけません 口封じ目的の濫訴」
8月8日「第15弾」ー違法とされたブログ(5)
「政治とカネ」その監視と批判は主権者の任務
2015年7月1日 第8回(実質第7回)弁論 結審(阪本勝裁判長)
2015年9月2日 請求棄却判決言い渡し 被告(澤藤)全面勝訴

2015年12月24日 控訴審第1回口頭弁論 同日結審
2016年1月28日 控訴審控訴棄却判決言い渡し 被控訴人全面勝訴

2016年2月12日 DHC・吉田嘉明上告受理申立
2016年2月12日 最高裁DHC・吉田嘉明の上告受理申立不受理決定
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☆DHCスラップ「反撃」訴訟の経過

(本訴 原告 DHC・吉田嘉明、被告 澤藤( ⇒取り下げられている)
(反訴 原告 澤藤、反訴被告 DHC・吉田嘉明)
2017年9月4日 DHC・吉田嘉明が澤藤を被告として
債務不存在確認請求訴訟を提起   H29年(ワ)第30018号
東京地方裁判所民事1部に係属⇒裁判長 後藤健(41期)
2017年11月10日 澤藤から反訴提起 H29年(ワ)第38149号
損害賠償請求660万円
2018年10月5日 反訴原告 澤藤と吉田嘉明両名の本人尋問申し出
2018年10月26日 裁判長交代・前澤達朗(48期)
2019年1月11日 人証採用決定(3名)
澤藤と吉田両本人と内海拓郎(DHC総務部長)
2019年4月19日 吉田呼出に応ぜず不出頭 澤藤と内海拓郎尋問
2019年7月4日  結審
2019年10月4日 13時15分 判決言い渡し

勝訴 110万円の請求認容

(2019年10月4日)


by asyagi-df-2014 | 2019-10-05 17:52 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

日米地位協定を考える糧として。

 「日米地位協定によって捜査権が侵害される。主権国家といえるのだろうか。」(沖縄タイムス)。
実は、この言葉が言い尽くしているのではないか。
 日米地位協定を考えるとは、日本の主権について考えるということだ。
 沖縄タイムス(以下、「タイムス」)は2019年9月25日、「[オスプレイ墜落 書類送検]米軍に国内法適用せよ」、と社説で論評した。
「タイムス」の指摘は次のもの。
まずは、事実に関して。


(1)米軍普天間飛行場所属のMV22オスプレイが2016年12月に名護市安部沿岸部に墜落し大破した事故で、中城海上保安部は24日、航空危険行為処罰法違反容疑で、事故機の機長を被疑者不詳のまま那覇地検に書類送検した。
(2)機長は空中給油訓練中に、業務上の注意を怠り、給油機の装置とオスプレイのプロペラを接触させ、破損。沿岸部に墜落させ、機体を大破させた。
(3)海保は事故直後から、人物特定などの捜査協力を米軍当局に要請していた。米側は要請を無視し、回答はこれまでなかった。
(4)当時、米軍の規制に阻まれ、現場の海域に近づくこともできず、立ち入りできたのは、米軍が「物証」の機体や残骸の回収後。事情聴取もできないまま、捜査は難航。時効成立は12月に迫っていた。
(5)同型機は事故と同じ日に米軍普天間飛行場では胴体着陸していた。だが、事故原因が究明されないまま、わずか6日で飛行を再開。3週間余り後に事故を発生させた空中給油訓練を再開している。


 そして重要なことは、「県民を愚弄(ぐろう)するかのような訓練強行を日本政府は追認した。」(「タイムス」)、ということであった。
 また、「被疑者は米兵であるのは間違いない。米軍の報告書によると、『困難な気象条件下で、空中給油訓練を行ったパイロットの操縦ミス』と原因も分かっている。にもかかわらず、被疑者の人物特定などの米側の捜査協力を得られず、うやむやのまま、捜査が終結することに納得できるはずがない。」、と「タイムス」は断じる。


 「タイムス」は、「これまでも同じようなことが繰り返されてきた。」、と。

(1)04年8月に沖縄国際大で起きた普天間飛行場所属の大型ヘリコプターが墜落した事故でも、米側から米兵の氏名の通知を拒否された。その結果、県警は同法違反容疑で整備兵4人を被疑者不詳のまま書類送検。那覇地検は不起訴処分にした。
(2)沖国大ヘリ墜落事故では米軍が一方的に規制線を張って現場を封鎖し、県警の現場検証や消防の火災原因調査を拒んだ。地位協定とその合意議事録で、基地外でも米軍の財産の捜索や検証は同意なしにはできないとされているためだ。
(3)17年10月の東村高江の民有地に大型輸送ヘリが不時着炎上した事故も、県警の現場立ち入りは認められず、米軍が機体や土壌を回収した。


 最後に、「タイムス」は、次のこと指摘する。


(1)第2次世界大戦の敗戦国であるドイツとイタリアの地位協定では、米軍の訓練に国内法が適用されている。
(2)日米政府は国内の米軍機事故に関するガイドラインを改定し、警察や消防の規制区域内立ち入りで「迅速かつ早期の立ち入り」を可能とすると追記した。迅速な現場立ち入りといっても「相互の同意に基づく」という言葉は残り、米側の同意がなければできないことは変わりない。
(3)全国知事会も米軍に航空法などの国内法を適用することを要請している。小手先の運用改善では事態は変わらない。抜本改定が急務だ。


 確かに、主権国家として、日米地位協定の抜本改定が必要だ。



by asyagi-df-2014 | 2019-10-05 09:08 | 米軍再編 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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