2019年 08月 23日 ( 1 )

本からのもの-「福島第一原発は津波の前に壊れた」

著書名;「福島第一原発は津波の前に壊れた」
著作者:木村俊雄
出版社;文藝春秋2019 9月号


 本当に、久しぶりに、文藝春秋を読むことになった。
木村俊雄(以下、「木村」)さんは、文藝春秋9月号に、「福島第一原発は津波の前に壊れた」を掲載した。
この 「福島第一原発は津波の前に壊れた」で、原発そのものについて考える。
「木村」さんは、原発に対して、どのような考え方を持っているのか、また、福島第一原発の過酷事故の原因について、このように記している。


1.問題意識-再稼働の現状

①現在停止中の原発も、多くが再稼働に向けて動き出しています。原発メ-カ-日立製作所の会長で経団連会長も務める中西宏明氏も、今年4月の記者危険で「再稼働していくことが重要」と発言しています。かって、福島第一原発で原子炉の設計・管理業務に関わった者として、私はこの動きを非常に危惧しています。原発事故の原因の検証がいまだに十分になされていないからです。
②再稼働のためには、「事故原因」を踏まえた新たな「安全対策」が絶対条件となるはずです。けれども「安全対策」どころか、肝心の「事故原因」すら曖昧にされているのが現状なのです。


2.問題意識-何かがおかしい。事故原因について

①東電の事故報告書は、「津波想定については結果的に甘さがあったと言わざるを得ず、津波に対する備えが不十分であったことが今回の事故の根本的な原因」と結論づけています。
②実は「津波」が来る前からすでに、「地震動」により福島第一原発は危機的状況に陥っていたことが分かったのです。メルトダウンの第一の原因は、「津波」ではなく「地震動」だった可能性が極めて高い、ということです。「津波が原因」なら、「津波対策を施せば、安全の再稼働できる」ことになりますが、そうではないのです。


3.わかったこと-東電が重要デ-タを公開していないこと

①「何かがおかしい」。「東電は、すべてのプラントデ-タを公開していない」と、とくに気になったのは、炉心内の水の流れを示す「炉心流量」に関連するデ-タが一切公開されていなかったことでした。
②これは、「過度現象記録装置」という計算機が記録するデ-タで、航空機でいえば、フライトレコ-ダ-やボイスレコ-ダ-に相当するものです。

4.わかったこと-燃料がドライアウトという事実

①開示されたデ-タを分析したところ、過度現象記録装置は、地震発生後、プラントの全計測デ-タを百分の一秒周期で収集し、計算期内に保存していました。
②BWR(沸騰水型)では、水が原子炉圧力容器内で、「自然循環」していれば、電源喪失で電気が止まっても、炉心の熱を訳五〇%出力まで除去できる仕組みになっています。「自然循環」はBWRの安全性を保障する極めて重要な機能を担っているのです。
③逆に言えば、「自然循環」がなくなれば、BWRは危機的状況に陥ります。「自然循環」による水流がなくなると、炉心内の燃料パレット(直径・高さともに一センチ程度の円筒形に焼き固めた燃料)が入っているパイプ(燃料被覆菅)の表面に「気泡」がびっしり張り付きます。この「気泡」が壁となり、熱を発している燃料被覆菅と冷却水を隔離してしまい、冷やすことができなくなり、次々に燃料が壊れてしまう。これを「ドライオウト」と言います。

④過度現象記録装置のデ-タを解析して分かったのは、地震の後、わずか一分三十秒後に、「ドライアウト」が起こっていた可能性が高い、ということです。
⑤ではなぜ、「自然循環」が止まってしまったのか、私が分析したデ-タや過去の故障実績を踏まえると、圧力容器につながる細い配管である「ジェットポンプ計測配管」の破損が原因である可能性が極めて高い、と考えられます。
⑥「運転員の過失」というより、「設計上・構造上の欠陥」なのです。
⑦いずれにせよ、津波の第一波が到達したのは、地震の四十一分後の十五時二十七分ですが、そのはるか前に炉心は危機的状況に陥っていた、ということです。

5.わかったこと-東京電力の過ち

①私のデ-タ分析に対して、東電は「炉心流量の計測には、ロ-カットフィルタリングという回路があり、そういった処理が数値上なされているだけで、実際には数量は止まっていない。自然循環は残っている。だから自身によってドライアウトが起こったわけではない」という主張を繰り返してきました。
②ところが、五月の公判で東電側は、「反対尋問の資料」として原子炉のメ-カ-の設計書を出してきたのです。その設計書を読んでみると、驚くことに、私が解析に使用した炉心流関連デ-タのほぼ全てが、ロ-カットフィルタリング回路を通す前段のデ-タであることが判明したのです。つまり、ロ-カットフィルタリング回路による処理のないデ-タでした。東電は、自分の主張を否定するような証拠を自ら提出してきたわけです。
③恥ずかしながら、私自身も事故情報の隠蔽に加担したことがあります。デ-タの改竄も行っていました。
④「安全性」よち「経済合理性」を優先する企業体質でもありました。一九九〇年代後半から電力自由化の動きが始まると、原子力の優位性を示そうと、発電単価を下げるための圧力が現場にも押し寄せてきました。そのため、法令で定められた運転期間を延長したり、二十四時間休みなしの作業で定期検査機関を短縮するような行為も日常茶飯事でした。

問題意識-原発そのものについて

①原発にはそもそも無理があるというのが、長年、現場経験を積んできた私の実感で、私は「反原発」です。
②安全基準作りの根拠となるべき事故原因の究明すら、いまだなされていないのです。
③東電は「津波によってメトルダウンが起きた」という主張を繰り返しています。。そしてその「津波」は、「想定外の規模」で原子力損害賠償法の免責条件にあたるとしています。しかし、「津波が想定外の規模だったかどうか」以前に、「津波」ではなく「地震動」で燃料破損していた可能性が極めて高いのです。
④私が分析したように、「自然循環」停止の原因が、ジェットポンプ計測配管のような「極小配管の破損」にあったとすれば、耐震対策は想像を絶するものとなります。細い配管のすべてを解析して耐震対策を施す必要があり、膨大なコストがかかるからです。おそらく、費用面で見て、現実的には、原発はいっさい稼働できなくなるでしょう。


 最後に、「木村」は、次のように警告します。


「原発事故からすでに八年が経ちますが、この問題は、決して、“過去の話”では在りません。不十分な事故調査にもとづく不十分な安全基準で、多くの原発が今も稼働し続けているからです。」


 この「木村」の告発の書から、「不十分な事故調査にもとづく不十分な安全基準で、多くの原発が今も稼働し続けている」、ということを改めて確認する。
また、日本政府と東電による「『津波によってメトルダウンが起きた』という主張を繰り返しています。そしてその『津波』は、『想定外の規模』で原子力損害賠償法の免責条件にあたる」(木村)、との主張はごまかしであり、すでにその理屈は事実の前に崩壊している。
 したがって、「『津波が想定外の規模だったかどうか』以前に、『津波』ではなく『地震動』で燃料破損していた可能性が極めて高い。」(木村)、との事実を日本の原発を考える上での判断基準にしなければならない。




by asyagi-df-2014 | 2019-08-23 07:02 | 本等からのもの | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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