2018年 04月 16日 ( 1 )

政府は「働き方」関連法案を提出。そもそも高プロは導入されてはいけない。(2)

 東京新聞は2018年4月7日、政府が「働き方」関連法案を国会に提出したことについて、「政府は六日、「働き方」関連法案を国会に提出した。長時間労働を助長すると批判された裁量労働制の対象拡大を削除するなどの修正をしたが、残業時間の罰則付き上限規制の導入や、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ制度)」の創設が盛り込まれ、過酷な労働を招きかねない点や、実効性が疑わしい内容が目立つ。対案を準備している野党側と激しい論戦になりそうだ。」、と報じた。


 朝日新聞は2018年4月7日、この「働き方」関連法案について、「『高プロはスーパー裁量労働』野党が批判 働き方法案、成立見通せず 過労死遺族も反発」、と次のように問題点を伝えた。


(1)「6日に国会に提出された働き方改革関連法案。柱の一つとなった『高度プロフェッショナル制度』(高プロ)には野党や過労死遺族から批判が相次ぐ。国会を揺るがす問題の発覚が相次ぐなか、審議日程も窮屈になっており、政権が『最重要』と位置づける法案の今国会の成立には黄信号がともっている。」
(2)「法案には労働時間規制の緩和策として、高プロのほか、実際に働いた時間にかかわらず一定時間働いたとみなす『裁量労働制』の対象を法人営業職の一部などに広げる内容が盛り込まれるはずだった。だが、根拠となったデータが不適切だったことが発覚して全面削除され、高プロだけが残った。アナリストなどの専門職で、年収が約1千万円以上と高い人を労働時間規制そのものから外す内容だ。」
(3)「裁量労働制は、残業時間が一定とみなされることはあっても、深夜・休日労働をした場合は割増賃金が必要になる。一方、高プロの場合は労働時間と賃金の関係が一切、切れるため、それも払われなくなる。政府は、高プロの適用には本人の同意が必要で、適用者には年104日以上の休日を与えることを義務づけるなどの健康確保措置を設けると説明する。ただ、今の法案では4週間で4日休ませれば、残りの24日は24時間働いても違法にならない。NHK記者だった娘を過労死で亡くした佐戸恵美子さん(68)は『働かせ放題の制度』と批判。野党は、削除された裁量労働制の対象拡大より長時間労働を助長する恐れがあるとして、『スーパー裁量労働制だ』と指摘する。」
(4)「新たにできる罰則付きの残業時間の上限設定は、働き過ぎの防止策として評価される面がある。上限をめぐっては、安倍晋三首相が議長を務めた『働き方改革実現会議』で労使がギリギリの調整をした末、忙しい月は『「100時間未満』とすることで合意した。ただ、罰則付きの規制は中小企業には厳しいとの指摘が与党にもある。また、『100時間』は過労死認定基準で目安とされている時間数のため、過労死遺族や一部野党には『100時間まではOK、と思われかねない』との懸念もある。」
(5)「安倍政権は今回の法案を、1947年の労働基準法の制定以来の『大改革』と位置づける。労働時間規制を緩める内容と、強める内容がセットになっている法案だけに、個々の政策に対する議論がどのように進むかも法案審議の焦点になる。」
(松浦祐子)


 また、朝日新聞は、国会での審議等における問題点についても、次のように指摘する。


(1)「安倍晋三首相は今国会を『働き方改革国会』と名付けて臨んだ。成立できなければ首相の政策遂行能力に疑問符がつきかねない。裁量労働制の対象拡大を削除したのも、周囲は成立への『覚悟の表れ』と受け止める。首相周辺は「首相は『是が非でも通す』と言っている」と明かす。とはいえ、今国会での成立は見通せない情勢だ。」
(2)「閣議決定は当初の想定よりすでに1カ月以上遅れている。首相は今月17~20日に米国を訪問する予定。衆院本会議での法案の趣旨説明と質疑には首相出席が必要なため、審議入りは早くても帰国後になる。」
(3)「審議入りの日程をめぐる与野党の協議も、野党側が高プロに強く反対していることから、難航が予想される。さらに野党側は高プロを削除した対案も提出し、対抗する構えだ。成立を確実にするため、6月20日までの会期を延長することも難しいとの見方が広がる。9月の自民党総裁選で3選を目指す首相にとって、会期を延長すればその分、野党からの追及を受けやすい。自民党国会対策委員会の幹部は『国会を開いていることが一番のリスク』と言う。」
(4)「働き方改革関連法案を扱う厚生労働委員会では、受動喫煙の防止策強化のための健康増進法改正案も控える。与党は『働き方改革』を優先させ、『受動喫煙防止策』を後回しにして成立を期す構えだが、厳しい状況には変わりない。」
(5)「今国会では他にも重要法案を抱える。カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案は与党内で合意したばかり。財務省の公文書改ざん問題や自衛隊のイラク派遣時の日報問題で与野党の対立が激化するなか、重要法案は軒並み綱渡りの審議を強いられそうだ。」
(笹川翔平、平林大輔、別宮潤一)


 さらに、朝日新聞は2018年4月7日、「働き方改革 労働者保護に焦点絞れ」、とその社説で論評した。


(1)「安倍政権が今国会の最重要法案と位置付ける働き方改革関連法案が国会に提出された。長時間労働是正のための残業時間の罰則付き上限規制と、非正社員の待遇改善に向けた同一労働同一賃金が柱だ。いずれも喫緊の課題である。だが法案には、専門職で年収の高い人を労働時間の規制から外す『高度プロフェッショナル制度(高プロ)』の新設も盛り込まれた。」
(2)「長時間労働を助長しかねないと、多くの懸念や不安の声がある制度だ。緊急性の高い政策と抱き合わせで拙速に進めることは許されない。切り離して、働き過ぎを防ぐ手立てや制度の悪用を防ぐ方策を、しっかりと議論するべきである。政府・与党に再考を求める。」
(3)「関連法案は、当初、2月中の閣議決定をめざしていた。大幅に遅れたのは、あらかじめ決められた時間を働いたとみなす裁量労働制をめぐり、首相の答弁撤回や、法案づくりの参考にされた調査データの不備など、問題が相次いだためだ。その結果、政府は今回の法案から裁量労働制の対象拡大を削除した。だが、問われているのは、残業代や割増賃金の規制を緩めて、長時間労働や過労死が増える心配はないのか、という点だ。裁量労働制以上に規制を緩和する高プロを、そのまま法案に残す判断は理解しがたい。」
(4)「与党との調整で、法案には管理職を含め、働く人たちの労働時間の状況を把握するよう、会社に義務付けることが新たに加えられた。だが、これはもともと法律の成立後に省令でやることになっていたものだ。一方、裁量労働制の拡大を削除するのに伴い、企画業務型の裁量労働制の対象者を『勤続3年以上』とする要件を新たに設けることや、健康確保措置の強化策まで見送りになった。」


 朝日新聞は、最後に、次のようにまとめる。


(1)「裁量労働制をめぐっては昨年1年間で、272事業所が是正勧告や指導を受けている。野村不動産の違法適用は、問題が表に出た、まれな例に過ぎない。」
(2)「対象拡大を見送ったからといって、裁量労働制がはらむ問題は放置できない。現状を改め、指導・監督の実効性を高めるために何をすべきか。議論を進めるべきだ。」
(3)「野党は、働く人々を守る規制の強化に重点を置いた、働き方改革の対案を準備している。高プロを関連法案から切り離せば、与野党が歩み寄り、話し合う余地は生まれるはずである。」
(4)「だれのための働き方改革か。政府・与党はそのことを考えるべきだ。」


 大事なことは、「残業代や割増賃金の規制を緩めて、長時間労働や過労死が増える心配はないのか、という点だ。」(朝日新聞)、ということであった。
 この観点からすると、裁量労働制以上に規制を緩和するすることになる「高プロ」制度を導入することは、間違っている。したがって、今回の一括法案に、「高プロ」をそのまま残すことは到底許されない。
 結局、安倍晋三政権が固執する成長戦略の中では、「首相周辺は『首相は【是が非でも通す】と言っている』と明かす」(朝日新聞)という思惑が最優先され、大企業のより大きな収奪のための規制緩和が徹底されようとする。
 であるとしたら、やはり、繰り返すしかない。
 確かに、この「働き方」関連法案の根本的問題は、「肝心の働く人々が置き去りにされている。」、ことにある。
 また、一括法案という安倍晋三政権の常套手段は、「残業時間の上限規制など働く人を守る規制強化と、官邸主導で進めてきた規制緩和を同時に進めることは矛盾する。」(東京新聞)、というものでしかない。
 あらためて、安倍晋三政権は、政治が人の命を預かっていることを肝に銘じなければならない。





by asyagi-df-2014 | 2018-04-16 06:15 | 書くことから-労働 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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