2018年 03月 11日 ( 2 )

「黒島美奈子の政治時評」- 軍用機事故で露わに 日米地位協定の正体-

著書名;週刊金曜日1174号-「黒島美奈子の政治時評」
著作者;黒島美奈子
出版社;週刊金曜日




 週刊金曜日1174号の「黒島美奈子の政治時評」は、日米地位協定が日本にもたらしているものついて、痛烈にあぶり出す。
まずは、「『日米地位協定』とは何か。私たちの生活にどういう関わりがあるのか。2月に相次ぎ発生した軍用機事故で、図らずも、協定の正体が露わになった。」、と二つの事故を紹介する。


 一つ目の事故について。


(1)「2月5日、佐賀県神埼市の住宅地に陸上自衛隊のヘリコプターが墜落した。乗員2人は死亡、墜落した住宅にいた児童1人がけが、住宅2棟が炎上した。」
(2)「事故現場には、陸自をはじめ県警や消防が駆け付け、業務上過失致死と航空危険行為処罰法違反の容疑で現場検証を実施。翌日には、主回転翼(メイン・ローター)の異常が墜落に繋がった可能性のあることが報じられた。陸自は即座に事故機が所属する目達原駐屯地のヘリ全機の運用停止を表明。事故機と同型機以外のヘリ飛行を再開したのは、事故から約2週間後の22日だった。同型機の運用停止は2月26日現在継続している。」
(3)「この間、墜落の原因も少しずつ明らかになってきた。事故から9日後には防衛省が、事故機のメイン・ローター・ヘッドが以前にも故障・修繕した中古品であったと公表している。原因究明を速やかに実施・公表し、住民の安全に配慮する。当たり前のようだが、一連の陸自の行動は、日本国憲法や国内法の存在なしにはあり得ない。」


 二つ目の事故について。


(1)「同じ頃発生した米軍機事故の顛末はどうか。」
(2)「2月20日、、青森県の米軍三沢基地所属のF16戦闘機が離陸直後にエンジン火災を起こし、燃料タンク2個を基地近くの小川原湖に投棄した。燃料タンクは空の状態で重さ215キロという。当時、約10隻のシジミ漁船が操業しており、一歩間違えれば人身事故の可能性もあった。湖には漏れ出た燃料が広がり、直後から全面禁漁を余儀なくされた。」
(3)「当日、各紙は米空軍第35戦闘航空団司令官が発表した『事故原因究明のため徹底した調査を実施する』とのコメントを報じた。しかし以降、事故調査の進捗情報はない。湖面に広がった燃料の回収は、青森県知事による『災害派遣』要請で海上自衛隊があたり、米軍の姿はなかった。『しんぶん赤旗』によると、米軍は事故後も同型機の訓練を実施している。」


 黒島美奈子は、この二つの事故の「違い」を、「この対応の差を生み出しているのが、1960年、安全保障条約に基づき定められた日米地位協定の存在だ。米軍がドイツやイタリア、韓国など他国との間で結ぶどの地位協定と比べても日本とのそれは片務性が目立つ。つまり、米軍による事故の責任を不問にするのが日米地位協定と言える。」、と喝破する。
 また、こうした日本の状況を、2018年2月15日に開かれた全国知事会での翁長雄志沖縄県知事の「憲法の上に日米地位協定がある。国会の上に日米合同委員会がある」、との言葉を紹介することによって、日本の中の沖縄の位置づけ改めて焦点化させる。

 黒島美奈子は最後に、「米軍機事故は沖縄だけでなく全国で起き始めている。いずれ国民の不満は広がるだろう。政府に危機管理能力があるなら、地位協定の改定は何より急がなければならないはずだ。」、と結論づける。
つまり、もはや、沖縄だけに押し込めることができないほどに、米軍の劣化と、自衛隊の拡大強化が進んでいる中で、命の危機は国民一人一人のすぐ隣まで来ているということを語りかける。


 さて、「『日米地位協定』とは何か。私たちの生活にどういう関わりがあるのか。」に関わって、黒島美奈子がはっきりさせたことは、「原因究明を速やかに実施・公表し、住民の安全に配慮する。このことは、日本国憲法が求めるものである。」ということである。 また、もちろん、国内法は日本国憲法に沿って存在していることも。




by asyagi-df-2014 | 2018-03-11 17:30 | 本等からのもの | Comments(0)

やはり、産経新聞のマスコミのとしての使命を問う。

 沖縄タイムスは2018年3月5日、産経新聞の対しての「検証」記事を掲載した。
沖縄タイムスは、この「検証」記事を掲載した理由を、次のように説明している。


「産経新聞は2月8日付紙面で、沖縄県内の交通事故で『米兵が日本人を救出した』という未確認情報を伝え、それを報じない沖縄2紙を批判した記事について取材が不十分だったとして『おわびと削除』を掲載した。これまでにも当事者に取材しないまま、米軍や自衛隊に否定的な県内の動きを痛烈に批判する記事があった。3例を検証する。
 記事化に当たって、本紙は産経新聞広報部に11項目の質問を送付。当事者に取材しなかったのはなぜか、インターネット向け記事と新聞向け記事で事実関係のチェック基準に違いがあるのかなどを尋ねた。2月28日までに寄せられた回答は『個別の記事や取材、編集に関することは従来よりお答えしていない』だった。」


 沖縄タイムスは、「これまでにも当事者に取材しないまま、米軍や自衛隊に否定的な県内の動きを痛烈に批判する記事」に関して、次の三つの事実関係を紹介する。


Ⅰ.<辺野古新基地>抗議の市民逮捕を「朗報」


(1)「産経新聞ウェブサイトは昨年11月10日、『辺野古で逮捕された容疑者 基地容認派も知る“有名人”だった』というタイトルの記事を掲載した。ラッパーの男性(35)が辺野古新基地建設に対する抗議活動中、警察官の合図灯を奪ったとして公務執行妨害と窃盗の容疑で県警に逮捕されたことを取り上げた。」
(2)「男性について『基地容認派の間でも名が知られた、いわくつきの人物』と論評し、逮捕を『朗報』と記載。さらに、ネット上に書き込まれたコメントを引用して『高江を皮切りに辺野古でも暴力の限りを尽くし』『天誅(てんちゅう)が下った』『沖縄から追放、強制送還すべき』などと書いた。」
(3)「男性は本紙の取材に『阿波根昌鴻さんの非暴力の教えを何より大切にしてきた。暴力を振るったことはない』と説明。記事はネット上で拡散され、同氏がツイッターで何か発言するたび、この記事が繰り返し返信された。『言論を封じ、社会的に抹殺するような記事。全国メディアが個人について、しかも私に取材をせずにここまでデマを書くのは恐ろしい』と話した。」
(4)「那覇地検は男性の勾留を請求せず、逮捕翌日に釈放された。記事はその釈放の日に掲載され、2月28日現在もそのままになっている。」


Ⅱ.<沖縄県の統計>観光収入を「過大に発表」


(1)「産経新聞は1月4日付紙面とウェブサイトで『沖縄県が観光収入を過大発表し、基地関連収入と比較することで基地反対運動の材料に利用している』と報道した。『県民経済計算は、売上高などから経費を除いたいわゆる利益部分を公表するが、沖縄県の観光収入は売上高をそのまま公表』と批判した。」
(2)「翁長雄志知事は同月19日の記者会見で『筋違い』と全面的に否定。県によると、産経新聞の指摘した観光収入は県民の経済活動状況の推計である県民経済計算そのものではなく、それに添付する参考資料にすぎず、そもそもの前提が違う。注釈で算出方法に違いがあることを明記している。さらに、国や他の都道府県も沖縄と同様の方法で観光収入を計算しており、翁長知事は『沖縄だけをこのように取り上げ、基地依存をごまかしているような話にするのは大変残念』と不快感を示している。」
(3)「産経は、翁長知事が講演や記者会見で『(過大に評価した)観光収入を引用して基地依存の低下を強調している』とも報道。翁長知事はこれも否定した。」
(4)「記事の掲載前や知事の会見後に産経新聞からの県の担当部署への取材は一度もなかったという。」


Ⅲ.<前宮古島市議>団地入居「月収制限超え」


(1)「産経新聞ウェブサイトは2017年3月22日、陸自配備に反対して同年1月の宮古島市議補選に当選した前市議の女性(37)が『補選後に市内にある県営団地に入居していたことが分かった』と記事にした。『月収制限超える県営団地に入居』との見出しを付け、本文でも市議としての月収が『資格より大幅に上回る』と記述した。だが県の規定に照らしても、前市議の入居資格に問題はなかった。」
(2)「県の規定によると、前市議の世帯の場合、県営団地の入居資格は月収21万4千円以下。前市議は補選2カ月前の16年11月に県営団地入居のための審査書類を提出し、当時の月収が入居資格を満たしていた。さらに入居後に県営団地に住む資格がなくなるのは5年以上住み、直近2年間の月収が31万3千円を超えた人に県が明け渡しを求めた場合。記事掲載時に前市議は、団地への入居期間も市議報酬の受け取りのいずれも2カ月しかたっておらず、『月収制限を超える』『資格より大幅に上回る』との指摘は当てはまらなかった。」
(3)「当選後、前市議は県に問い合わせ、『条例上、入居に問題はない』との回答を得ている。ところが記事を見た市民から抗議が相次いで寄せられ、その都度説明に追われた。17年4月に同社へ抗議の電話をし、記事の訂正を求める内容証明郵便を送ったが回答はなく、28日現在もネット上に記事が掲載されている。」
(4)「記事には第三者から聞き取った前市議の『発言』が引用されたが、前市議は『発言していない虚偽の内容が載っている』と抗議。『産経は私に取材せず、入居が法令違反でないにもかかわらず、印象操作で問題のように仕立てた。訂正を求めても応じないのは明らかな人権侵害で、報道機関として誤りを正すべきだ』と訴えている。」


 こうした、沖縄タイムスの記事から、次のことがはっきりする。
 Ⅰの事例については、「那覇地検は男性の勾留を請求せず、逮捕翌日に釈放された。記事はその釈放の日に掲載され、2月28日現在もそのままになっている。」、ということ。
 Ⅱの事例については、「記事の掲載前や知事の会見後に産経新聞からの県の担当部署への取材は一度もなかったという。」、ということ。
 Ⅲの事例については、「同社へ抗議の電話をし、記事の訂正を求める内容証明郵便を送ったが回答はなく、28日現在もネット上に記事が掲載されている。」、ということ。


 沖縄タイムスは、こした「事例」を受けて、「なぜ当事者に取材しなかったのか 識者の見方」、とジャーナリストの大谷昭宏の談話を掲載する。
 大谷氏は、次のようにこの問題を断ずる。


(1)「産経新聞の一連の報道は、手抜き取材やうっかりミスによる誤報ではない。最初から沖縄県民に悪意をぶつけることを目的とした敵対記事だった。」
(2)「批判する場合、公平性を担保するため相手の言い分を聞くのが報道の原則だ。だが、敵対記事を書くためには事実が明らかになっては困る。根底から崩れてしまう。だからあえて当事者に聞いていない。産経新聞はメディアであることを自ら放棄したに等しい。」
(3)「安倍政権による裁量労働制の不適切データ問題がよく似ている。自らに都合が良いように事実の方をねじ曲げる、そんな手法がまかり通っている。共通の目的は日本を戦争のできる国にすること。そのためには沖縄戦の体験、平和を希求する県民が邪魔になる。」


 また、大谷氏は、「対抗するために、ジャーナリズムの原則を持ちだしても効果がない。例えば観光収入の報道について、県が産経新聞に損害賠償を求めて提訴してはどうか。県民全員に対する侮辱であり、精神的損害が1人100円としても1億円を超える。でたらめだからと放っておいては被害が繰り返される。司法の判断を仰ぎ、一つ一つつぶしていく必要がある。」、と対抗策を指摘する。


 この沖縄タイムスが掲載した三つの事例は、どう考えても人権侵害に当たる。
 ただ、「全国紙としての誇りを持っているだろう産経新聞が、意図的にこのような行為を行うのだろうか」というのが、日常的に産経新聞からの被害を受けていない者にとっての思いであったかもしれない。
 しかし、今回の沖縄タイムスの検証記事は、産経新聞の新聞社としてのあり方を、はっきりと証明した。
 それは、大谷氏の指摘する「産経新聞の一連の報道は、手抜き取材やうっかりミスによる誤報ではない。最初から沖縄県民に悪意をぶつけることを目的とした敵対記事だった。」、というものが産経新聞の方針であったということだ。
 それも、「批判する場合、公平性を担保するため相手の言い分を聞くのが報道の原則だ。だが、敵対記事を書くためには事実が明らかになっては困る。根底から崩れてしまう。だからあえて当事者に聞いていない。産経新聞はメディアであることを自ら放棄したに等しい。」(大谷氏)、ということに尽きるものである。

 確かに、「やはり、産経新聞のマスコミのとしての使命を問う。」、とするなら、産経新聞は、すでに、メディアであることを自ら放棄した、というのが答えなのだ。




by asyagi-df-2014 | 2018-03-11 07:23 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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