2017年 12月 23日 ( 1 )

社説、論説から-BPO意見書。~毎日新聞・琉球新報・東京新聞~

 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は2017年12月14日、東村高江のヘリパッド建設に対する抗議行動を取り上げた東京MXテレビの番組『ニュース女子』について、「重大な放送倫理違反があった」、とする意見書を公表した。
このことについて、東京新聞は2017年12月16日に「沖縄基地番組 事実は曲げられない」、毎日新聞は2017年12月17日に「MXテレビにBPO意見書 放送業界の大きな汚点だ」、琉球新報は2017年12月17日に「BPO意見書 東京MXは直ちに謝罪を」、とそれぞれの社説で論評した。
これらの社説で考える。
 まずは、その社説を分類する。



Ⅰ.主張
(毎日新聞))
①事実の裏付けがないとの指摘は、裁判にたとえるなら有罪判決に等しい。放送業界の大きな汚点と言わなければならない。MXは、番組内容の問題を事前にチェック(考査)できなかったことを深刻に受け止める必要がある。
②検証委は意見書の中で、考査を要の仕組みと位置づけ、それが崩れたことに危機感を募らせた。行政の介入を許さず、自主自律を貫くためにも、自らの情報を不断に点検しなければならない。
(琉球新報)
①裏付け取材を十分しないまま、ヘリパッド建設に反対する人々を中傷する番組を放送しており、当然の結論だ。東京MXは公共の電波を使用している放送局として、一から出直す必要がある。
②調査結果を踏まえ、委員会は「放送の自主・自律を守る砦(とりで)」について、東京MXが「本放送において、砦は崩れた」と指摘した。崩した砦をどう修復するのかを注視したい。そして東京MXは沖縄の人々と視聴者に直ちに謝罪すべきだ。二度と沖縄ヘイト番組を作ることは許されない。
(東京新聞)
①「重大な放送倫理違反だ」。沖縄の米軍基地反対運動を取り上げた東京MXテレビの番組に「放送倫理・番組向上機構」(BPO)は厳しい意見を出した。放送の矜恃(きょうじ)と責任が問われている。
②MXテレビは編成局に考査部を新設した。BPOは考査を「放送の自主・自律を守る砦(とりで)」という。権力の規制を受けず表現の自由を確保するためだ。考査が適切に機能してこそ放送の自由が生きる。


Ⅱ.何が問題だったのか。
(毎日新聞))
①検証委は今年1月2日に放送された番組「ニュース女子」の沖縄基地問題特集を審議した。スポンサーの化粧品会社「DHC」が番組枠を買い取り、子会社などが作った番組の納品を受ける「持ち込み番組」だ。BPOは放送の言論・表現の自由を守るためにNHKと民放連が設立した第三者機関で、放送局に意見を述べる役割を負う。制作に関与していなくても、番組内容の責任は電波を預かる放送局にあると判断した。
②検証委は沖縄で現地調査し、基地反対派が救急車を妨害したとの放送は、事実が確認できないと述べた。反対派が活動の日当をもらっているのではないかとの放送も、裏付けられたとは言い難いと指摘した。
③検証委が重視したのはMXが考査で問題を発見できなかったことだ。放送法は番組の編集に際し、政治的に公平であることや、事実を曲げないこと、意見が対立する問題について多くの角度から論点を明らかにすること、を放送局に義務づける。民放連とNHKが定めた放送倫理基本綱領は、報道に、事実を客観的かつ正確、公平に伝え、真実に迫るための最善の努力を求めている。MXは抗議活動を行う側に取材しなかったことを問題とせず、番組の完成版をチェックしていなかった。多様な論点を示す以前に必要な事実確認を怠った責任は重大である。
④今でこそ再発防止を打ち出しているが、MXは問題を指摘された当初「捏造(ねつぞう)、虚偽は認められない」と、問題視しない見解を出していた。
(琉球新報)
①「ニュース女子」は制作会社の持ち込み番組だ。このため委員会は東京MXが放送前、放送倫理などを基にして適正に考査したかを審議対象にした。さらに番組内容も検証した。
番組では(1)反対運動の参加者が救急車の出動を妨害している(2)取材者が襲撃の危険を感じるほど参加者が攻撃的であった(3)反対運動の参加者が日当をもらって活動している-とする内容を放送した。委員会は東京MXの考査担当者ら5人、番組内容の事実確認のため東村高江区の救急車の出動を管轄する地元の消防本部消防長、放送に映っていた抗議行動への参加者3人らに聞き取りをしている。
②その結果、救急車が通行を妨害された事実はなかった。また取材者が反対行動の市民から「おまえ誰や」と罵声を浴びせられたという制作会社の説明についても「あってしかるべき映像や音声の裏付けがない。(中略)放送内容には、その裏付けとなるような客観的な事実が認められない」と否定した。反対運動に日当が出ているとの内容についても「疑惑を裏付けるものとは言い難い。たとえスーパー(画面上の文字表示)に疑問符をつけていても、裏付けなしに提起することが不適切であることに変わりはない」と批判した。
③つまり放送内容の根幹部分がことごとく事実ではない、もしくは裏付けがないと断定された。あまりにもお粗末な番組だったというほかない。
④委員会は考査についても不十分だったと指摘している。考査担当者は制作会社による持ち込み番組であるにもかかわらず、番組の納品された完成品(完パケ)の考査をしていなかった。開いた口がふさがらない。考査したのはスタジオ収録部分にスーパーが付いていない制作途中のものだった。東京MXは自ら定めた「納品前の完パケの確認」を怠っていたのだ。放送責任を全うしたとは言い難い。
(東京新聞)
①問題となったのは、今年一月二日に放送された情報バラエティー番組「ニュース女子」だ。「沖縄緊急調査 マスコミが報道しない真実」と題し、沖縄県北部で進められている東村高江地区のヘリパッドの建設に反対する人々について報じ、コメンテーターたちが批判的な論評をする番組を放送した。この前提となる報道内容は、反対運動で救急車が止められた、日当をもらって運動している人がいる、などの根拠が不確かな情報が入っていた。MX側は当初、「可能性があるという表現にとどめ断定はしていない。問題はない」としてきた。だが、視聴者は反対派が救急車を止め、日当をもらっていると受け止めた人も多数いたはずである。
②BPOの検証委員会が調べたところ、救急車が止められた事実はなく、そもそも番組制作会社から消防本部などへの取材はなかった。日当問題もそうだ。ある時期、反対派は「市民特派員」を企画し、高江の状況を本土の人々に情報発信してもらう趣旨で、十六人を採用した。格安航空券と四日間の滞在費で五万円を支払った。実際に報告記事も人権団体のホームページなどで掲載されているという。これは日当とは呼ばない。裏付けもなく、日当があるかのように報道することは、明らかに不適切であろう。
③「逮捕されても生活に影響の少ない六十五歳以上を過激デモに従事させている」-。これを「シルバー部隊」と呼ぶとも。また「反対派には韓国人もいる、中国人もいる」とも。「反対派の人は週休二日」とも。つまり、偏見に満ちている。これは不快な表現を禁じた民放連放送基準に反しよう。
④この番組は制作会社が納品した「持ち込み番組」である。しかし、電波を使用しているのが放送局である以上、放送法に基づき、放送内容が放送倫理に反せぬよう最大限努めねばならない。これを「考査」という。放送時はこの歯止めが利かなかった。


 各社の社説で、このBPOの意見書が、次の三つの重要事項を指摘していることがわかる。
 一つ目は、東村高江のヘリパッド建設に対する抗議行動を取り上げた東京MXの「ニュース女子」の放送は、内容の根幹部分がことごとく事実ではないもしくは裏付けがないと、BPOが断定したようにあまりにもお粗末な番組だった、ということ。
二つ目は、したがって、この放送は、「重大な放送倫理違反だ」、ということ。
 三つ目は、BPOが「考査」を「放送の自主・自律を守る砦(とりで)」と位置づける中で、この東京MXの「ニュース女子」はこれを壊したということ。

 確かに、日本の放送局は、「放送の矜恃と責任」が問われている。
 特に、東京MXは、重大な放送倫理違反を犯したことを深く反省し、沖縄の人々と視聴者に直ちに謝罪しなければならない。
 また、東京MXは、沖縄ヘイト番組を作らせない立場にきちんと立ち、それを先導する役割を担わなければならない。
 さらに、このBPOの意見書を受けて、この東京MXの「ニュース女子」の放送に関わったコメンテーター等の個の責任が明確にされなければならない。
   





by asyagi-df-2014 | 2017-12-23 06:30 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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