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「旧姓単記」という愚策。(2)

 日本政府は2026年3月13日、男女共同参画社会の実現に向けた今後5年間の方向性を定める第6次基本計画を閣議決定した。
 その計画には、結婚した人の「旧姓単記」も可能とする通称使用の法制化を検討することを盛り込まれた。

 この問題をどの様に捉えるのか。

 2026年3月23日までに確認できた社説等は、次のもの。

(2026年3月26日)
神戸新聞社説-旧姓の「単記」/別姓の議論後退させるな-
高知新聞社説-【旧姓使用法制化】根本的解決にはならない-
(2026年3月22日)
朝日新聞社説-夫婦の姓 「旧姓単記」という迷走-
新潟日報社説-旧姓使用法制化 不利益解消が見通せない-
(2026年3月19日)
沖縄タイムス社説-男女共同参画計画 夫婦別姓制度が遠のく-
(2026年3月17日)
北日本新聞社社説-旧姓「単記」法制化検討/本質的解決遠のく懸念-
熊本日日新聞社説-旧姓使用の法制化 夫婦別姓議論の後退危惧-

 このことを、2026年3月22日付の新潟日報と朝日新聞の社説で押さえる。

(1)新潟日報社説-旧姓使用法制化 不利益解消が見通せない-

 新潟日報は、最初に、今回の「旧姓単記」方針について、次の問題点を指摘する。
1.夫婦のいずれかが改姓する必要がある点は現状と変わらない。          2.不利益が解消されるのかも不透明だ。
 その上で、「選択的夫婦別姓の導入を求める声が根強い理由を直視し、多様な生き方を支える制度作りを進めなければならない。」、と見解を示す。
 では、具体的治どういうこと問題があるのか、新潟日報の把握。
1.政府は、旧姓の通称使用の法制化を検討することを、第6次男女共同参画基本計画に明記した。
2.5次計画では旧姓の通称使用について「拡大や周知に取り組む」としてきたが、旧姓使用の拡大を持論とする高市早苗首相の意向を反映し、踏み込んだ形だ。
3.公的書類に旧姓だけを記す「単記」も認める内容で、旧姓を社会生活で広く使えるようにする。現行ではパスポートなどには、戸籍上の姓と旧姓が併記できる。
4.黄川田仁志男女共同参画担当相は「婚姻による氏(姓)の変更で不便や不利益を感じる人を減らせる」と法制化の意義を強調した。
5.留意すべきは、旧姓の通称使用の固定化で選択的夫婦別姓の導入が遠のくとの懸念が、当事者や経済界に広がっていることだ。旧姓の法制化は、戸籍上の「夫婦同姓」の維持を前提とする。婚姻により、夫婦のどちらかが改姓を迫られる状況は続く。
 したがって、「戸籍上の姓を同じにするか別にするかを夫婦が選べる選択的夫婦別姓制度とは大きく異なり、別姓を求める人たちが訴えてきた、生まれ持った姓を奪われる苦痛や人格権の侵害といった問題は放置されたままとなる。」、と大きな問題点を指摘する。
 また、「旧姓の単記で、どれだけ利便性が高まるのかも見通せない。」、と指摘を加える。1.高市首相は国会答弁で、マイナンバーカードや運転免許証、パスポートといった厳格な本人確認の際に用いられる証明書は、「併記を求める検討が当然必要」との認識を示している。
2.重要書類で単記が認められない可能性が高い。利便性が上がるとする政府の説明は説得力を欠く。
3.旧姓法制化が実現すれば「二つの公的な姓」が生まれ、管理する自治体や企業が膨大な費用や手間を強いられるとの課題も浮かぶ。
 結局、「『誰のためにもならず、混乱を生むだけ』との専門家の指摘を、政府は受け止めるべきだろう。」、と示す。
 最後に、今回の「旧姓単記」に向けて、次のようにまとめる。
1.選択的夫婦別姓制度を巡っては、1996年に国の法制審議会が、別姓制度の導入を含む民法改正案の要綱を答申した。審議会では旧姓の法制化は「混乱を招く」と否定していた。
2.法律で夫婦同姓を義務付けている国は日本以外になく、国連の女性差別撤廃委員会も4回にわたり、民法の夫婦同姓規定を「差別的」と批判している。
3.一連の国内外の動きを見ても、旧姓の法制化では対処できない問題があることは明らかだ。
4.政権が数を頼みに法制化を急げば禍根を残す。困難に直面する人の訴えに真摯(しんし)に耳を傾け、最善策を講じるのが政治の役割である。
(https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/800573 参照)

(2)朝日新聞社説-夫婦の姓 「旧姓単記」という迷走-

 朝日新聞は、最初に、「一体何を守りたいのか。戸籍には記載されない旧姓を公的証明書に単独で記載できるような法制度を政府が検討するという。選択的夫婦別姓を封じたいがために、弥縫(びほう)策を重ねて隘路に入り込むさまは、迷走にしか映らない。」、と突きつける。
 朝日新聞は、この主張の根拠を次のように示す。
1.政府は13日、今後5年の指針を定めた「第6次男女共同参画基本計画」を閣議決定した。旧姓の「単記」も可能とする法制化の検討を初めて明記した。今国会に関連法案の提出を目指すという。
2.計画には昨年の国会で議論された選択的夫婦別姓の記述はなく、代わりに高市首相の持論である旧姓使用の法制化で、姓が変わったことで生じる不便さや不利益を解消できると強調されている。
3.男女共同参画会議のメンバーからは議論のプロセスを含めて強い異論が出ていたが、衆院選圧勝を背景に押し切ったかたちだ。
4.しかし、実際にどこまで「単記」できるかは全く見通せない。現在の制度ではパスポートや運転免許証、マイナンバーカードなどの公的証明書に旧姓と戸籍名を「併記」することはできるが、旧姓の単記は認められていない。
5.高市首相は16日の参院予算委員会で、厳格な本人確認に用いられる証明書については旧姓単記の対象外であるとの認識を示した。だとすると、単記は限定的な書類にしか認められず、海外出張の入国時に起きるトラブルなどは解決しそうにない。一方で、戸籍上の姓と旧姓が書類によって混在することになり、管理する自治体や企業が多大な費用や手間を迫られかねない。
6.仮に幅広い証明書で「単記」を認められたとしても、懸念は大きい。「二つの公的な姓」を使い分けることでマネーロンダリングやテロ資金供与の防止に懸念が生じるというのは金融機関などが懸念するところだ。
7.経団連は、旧姓使用が日本独特の制度であり「海外ではダブルネームとして不正を疑われ、説明に時間を要することがある」と指摘している。
8.もう一つ、疑問がある。旧姓単記が社会に浸透し、旧姓のまま社会生活を送ることができるようになったと仮定しよう。戸籍を見ない限りは自分の本名を意識することもなくなるだろう。その場合、保守派の主張する「家族の一体感」は保たれるのだろうか。
 朝日新聞は、最後に、この社説をに次のことで締める。
 「法制審議会の答申から、30年がたつ。結婚によって姓を変えるのは今も9割以上が女性である。この社会に深く根差した男女不平等を解消するために、どうすべきなのか。そこから議論をスタートし直してほしい。」、と。
(https://www.asahi.com/articles/DA3S16427882.html 参照)

 この二社の社説を受けて、次のことを確認する。
1.「選択的夫婦別姓制度を巡っては、1996年に国の法制審議会が、別姓制度の導入を含む民法改正案の要綱を答申した。審議会では旧姓の法制化は『混乱を招く』と否定していた」(新潟日報)、ということ。
2.経団連の「旧姓使用が日本独特の制度であり『海外ではダブルネームとして不正を疑われ、説明に時間を要することがある』(朝日新聞)との指摘が重いこと。
3.今回の「旧姓単記」という政府の方針は、「一体何を守りたいのか。戸籍には記載されない旧姓を公的証明書に単独で記載できるような法制度を政府が検討するという。選択的夫婦別姓を封じたいがために、弥縫策を重ねて隘路に入り込むさまは、迷走にしか映らない」(朝日新聞)というものでしかないこと。
4.大事な視点は、「社会に深く根差した男女不平等を解消するために、どうすべきなのか」(朝日新聞)、とうことにあること。


by asyagi-df-2014 | 2026-04-08 20:48 | 持続可能な社会 | Comments(0)

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