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「旧姓単記」という愚策。(1)

 日本政府は2026年3月13日、男女共同参画社会の実現に向けた今後5年間の方向性を定める第6次基本計画を閣議決定した。
 その計画には、結婚した人の「旧姓単記」も可能とする通称使用の法制化を検討することを盛り込まれた。

 このことに関して、朝日新聞は2026年3月13日、「『旧姓単記を検討』男女共同計画を閣議決定、通称使用の法制化に流れ」(井上充昌)、と次のように報じた。
1.政府は13日、男女共同参画社会の実現に向けた今後5年間の方向性を定める第6次基本計画を閣議決定した。計画には、結婚した人の「旧姓単記」も可能とする通称使用の法制化を検討することを盛り込んでおり、旧姓の通称使用関連法案の国会提出に向けた調整を加速させる。
2.この日、政府は男女共同参画会議(議長=木原稔官房長官)を、実際に議員が集まらずに文書などをやりとりする「持ち回り」方式で開き、6次計画案を決定。それが高市早苗首相に答申され、その後の閣議で決定された。
3.計画は成果目標の一覧含め132ページ。「家族に関する法制の整備等」の欄に、「旧氏の単記も可能とする法制化を含めた基盤整備の検討」と盛り込んだ。一方で、選択的夫婦別姓(氏)の直接的な文言は入らなかった。
4.旧姓使用の法制化に対しては、選択的夫婦別姓の導入に向けた政治的機運が失われるとの懸念が根強い。
5.旧姓使用について、有識者で作る専門調査会が昨夏にまとめた6次計画の素案には法制化の文言は入っておらず、現行の5次計画と同様に「拡大やその周知に取り組む」とするにとどめていた。だが、昨年10月の自民・維新の連立合意を踏まえて「旧氏使用に法的効力を与える制度の創設の検討」と追加。これに反発が起き、当初予定していた12月中の6次計画の閣議決定を先送りした。
(「策定プロセスの透明性に疑義」抗議の意見書も)
1.男女会議の議員である連合の芳野友子会長は、「策定プロセスの透明性と答申の正当性に疑義を抱かざるを得ず、政府の対応に抗議の意を表明する」とする意見書を出した。芳野会長は、選択的夫婦別姓の導入を求めるとして、6次計画には「反対の立場だ」としている。
2.今回の6次計画をめぐっては異例づくしとなった。内閣府によると、2000年の1次計画以降、男女会議で最終的に反対の意見が出たのは初めてという。また5次計画までそれぞれ年末に閣議決定してきたが、翌年3月にずれ込んだのも初めてだ。計画には「衆院議員の候補者に占める女性の割合」など、項目ごとに数値目標が定められ、その期限の多くが25年や25年度となっている。6次計画の策定が3月からさらにずれ込むと目標の空白期間が広がるおそれがあった。
3.第6次男女共同参画基本計画は、旧姓の通称使用の法制化についての文言をめぐって揺れ動いた。昨夏から年末にかけての素案や原案になかった「旧姓単記」が最終的に盛り込まれており、選択的夫婦別姓の導入を求める人たちへの配慮とみられる。だが、具体化にはハードルもある。
(「社会生活の不備・不利益減らせる」担当相)
1.13日、黄川田仁志男女共同参画担当相は記者会見で、旧姓単記で「婚姻などによる氏の変更によって社会生活で不備や不利益を感じる方をさらに減らすことができる」と述べた。旧姓の通称使用法案の提出時期は明言しなかったが、これに伴い住民基本台帳法の改正が必要になるとの考えを示した。
2.6次計画には「旧氏の単記も可能とする法制化を含めた基盤整備の検討」と盛り込まれた。もともと25年6月に自民党の作業部会が10回の議論の末にとりまとめた「氏制度のあり方に関する基本的考え方」に書かれている表現だ。そこでは、旧姓単記が「国民の不便の解消に不可欠」と位置づけ、「精緻(せいち)な検討を進めなければならない」とある。
3.旧姓単記とはどういうものか。
4.例えば、パスポートや運転免許証、マイナンバーカード、住民票では希望すれば旧姓も表記することが認められているが、現状では戸籍名との併記が求められる。
(旧姓単記は「夫婦別姓派への配慮?」)
1.これらに旧姓だけの表記(単記)を認めることで、「事実上の選択的夫婦別姓に等しい扱い方となる」との見方をする人もいる。
2.選択的夫婦別姓制度の導入には、自民党内には反対派だけでなく賛成派もいる。6次計画案を議論した3月5日の党部会後、長谷川淳二部会長は「まさに自民党の知恵だ、ということ」と述べ、旧姓単記が選択的夫婦別姓の賛成派への配慮だったことをにじませた。
3.昨年10月に高市政権が発足した際、自民と日本維新の会との連立合意は「旧姓使用に法的効力を与える制度を創設する」だった。
4.12月の6次計画原案にはそのままの文言が記され、旧姓単記の記述はなかった。だが、専門調査会の議論を経ないままに盛り込まれたとして反発があり、12月の閣議決定は先送りされた。
5.今年2月、さらに計画の表現が変わる。第2次内閣の発足時、高市首相が関係閣僚に指示したのは、自民の作業部会がまとめた旧姓単記の検討だった。政府は自民の提案を受け入れる形で、6次計画を修正することになった。
6.ただ、旧姓単記については不確定な要素がある。国会審議で保守派が懸念を示すと、高市首相は、パスポートなど「厳格な身分確認」に用いられる書類については「併記を求める検討が当然必要だ」と述べ、野党から「重要な柱になる部分を併記と言われたら、一体何ですかとなる」と戸惑いの声が上がった。
7.連合の芳野友子会長も13日の意見書で、旧姓単記について「実効性についても疑念があり、社会の混乱を招くことを懸念する」とした。
8.長谷川部会長は、旧姓単記には様々な意見があるとして、こう言った。「相当検討が必要じゃないかと個人的には思う。(6次計画を)閣議決定したら(法案が)ポンと出てくるようなものではない」
(https://digital.asahi.com/articles/ASV3F3C6HV3FUTFL013M.html?pn=9&unlock=1#continuehere 参照)

 朝日新聞は、今回の「旧姓単記」の問題について、次のように押さえてきた。

(1)朝日新聞-コメントプラス-上西充子(法政大学教授)-2026年3月15日
1.第6次基本計画の該当部分の記述はこうです。
2.「現在、身分証明書として使われるパスポート、マイナンバーカード、運転免許証、住民票、印鑑登録証明書なども旧氏併記が認められており、旧氏の通称使用の運用は拡充されつつあるが、婚姻により氏を変更した人が不便さや不利益を感じることのないよう、旧氏の単記も可能とする法制化を含めた基盤整備の検討を含め、旧氏使用の更なる拡大やその周知に取り組む。」(p.106)
2.パスポートやマイナンバーカードなどにも旧姓単記を可能とするよう法制化を検討するようにも読めますが、「拡充されつつあるが」までは単に現況に関する記述であり、「旧氏の単記も可能とする法制化」にパスポートなどは含むものではなく、可能な範囲で旧姓の単記が可能なものを増やしていくという意味だ、と言い逃れることができる余地も残しているように読めます。
3.実際、パスポートの券面には「併記を求める検討が当然必要だ」と高市首相も述べているわけで、パスポートに旧姓単記は無理でしょう。
4.また、仮にパスポートに旧姓単記ができたとしてもICチップは従来通り戸籍名だけになるはずで、そうした場合には、改姓した者が仕事で海外に出向く際に、現在以上の困難に直面する可能性もあると思います。
(https://digital.asahi.com/articles/ASV3F3C6HV3FUTFL013M.html?pn=9&unlock=1#continuehere 参照日)

(2)朝日新聞-「『別姓阻止』に汗かいた高市氏 『通称使用の法制化』は何のためか」(聞き手・田中聡子)-2025年12月13日
1.高市早苗首相が検討を進めると明言した「旧姓の通称使用の法制化」。夫婦別姓を選べないために起きる様々な不便の対応策として、これまでも旧姓が使える場面は拡大してきました。旧姓の通称使用の法制化は、選択的夫婦別姓の導入にどのような影響があるのか。30年間にわたり国会をウォッチしてきたNPO法人「mネット・民法改正情報ネットワーク」の坂本洋子理事長に話を聞きました。
(別姓阻止のツール)
1.Q―また「選択的夫婦別姓」ではなく、「旧姓の通称使用」が出てきました。
2.A;「これは夫婦別姓を阻止するためのツールです。私がそう確信したのは、2009年に発足した民主党政権で選択的夫婦別姓が議論された時です。それ以前から「通称使用でこと足りる」という声はあったのですが、この時は民主党政権でいよいよ選択的夫婦別姓が現実的になり、それに対して自民党内で通称使用の法制化が議論されました。」:「当時、ある自民党議員が『この法案どう思う?』と見せてくれて、私は『これじゃ夫婦別姓を求める人はとても認められない』と答えました。しばらくして『あの法案どうなりましたか?』と私から尋ねると、『民主党が選択的夫婦別姓をまとめられないから、こっちも出す必要ない』となったと言うのです。それで『ああ、反対のために準備されたんだな』、と。」
(「高市先生に涙ながらに・・」)
1.Q―中でも高市氏は、通称使用に関する法律の私案を出すなど、力を入れてきた印象があります。
2.A;「民主党政権の時に自民党内で議論されたのも高市氏の私案でしたし、それより前の1997年の衆院法務委員会でも、『通称使用をオーソライズする』ことに言及しています。」:「高市氏は選択的夫婦別姓の阻止のために地道に汗をかいてきた人です。2001年ごろには政府の世論調査で賛成が反対を上回ったこともあり、自民党内で選択的夫婦別姓の賛成派が動き出すのですが、このとき高市氏は、反対議員の署名を一生懸命集めました。もともと賛成だったある知り合いの自民党議員が署名していたので、『先生、なんで名前が入っているのですか?』と聞いたら、『高市先生に涙ながらにお願いされた』と言っていました。」
3.Q―通称使用の法制化は、外形的には「不便を解消する」という「よいこと」にも見えます。
4.A;「肝心なのは、『通称使用の法制化』はことごとく選択的夫婦別姓に反対する側から出ていることです。賛成する側は『通称使用では解決しない』と言い続けています。選択的夫婦別姓の実現に時間がかかるから、それまでの不便を少しでも解消するために、旧姓を使える場面の拡大を支持してきた。夫婦別姓が選べないからこその、仕方なく『旧姓の通称使用』なのです。」:「それに、通称使用の法制化で困る人が出てくるのではないかという懸念もあります。」:「今は旧姓を使いたい人が『勝手に』使う、緩やかな旧姓の通称使用で、『勝手にやってるから』と許されている面があるでしょう。法制化されれば、『法的根拠のある旧姓』となり、それはだめだと配偶者などに言われ、通称使用さえできない人も現れるかも知れません。ここでもまた、夫婦の力関係が影響する可能性がある。通称使用は緩やかな形で残していくべきです。」
(別姓は「試金石」)
1.Q―今回はいよいよ法制化でしょうか。
2.A;「日本維新の会が旧姓の通称使用の法案を出すと言っているから、前向きな発言をしているのではないでしょうか。今の政治状況では、自民党は維新をつなぎとめておく必要があります。だから次の選挙で自民党が安定多数をとれば、いくらでもつぶせる。私にはその場しのぎのように見えます。」:「自民党がまとまるとも思えません。同じ『旧姓の通称使用』でも、維新の案は公的な証明書などに旧姓だけを使える案で、戸籍の姓と旧姓の併記までしか認めない高市氏の案より踏み込んでいます。法律上の通称が単独で使えるのなら、戸籍にしかない姓とは何なのか、というそもそも論にぶつかってしまう。そして自民党には、旧姓の通称使用すら認めない人もいれば、選択的夫婦別姓を導入すべきだという立場の人もいる。少なくとも、維新案には乗れないでしょう。まとまらなければ、『通称使用でこと足りる』なんて言えなくなるかも知れませんね。」
3.Q―ずっと政治に振り回されて夫婦別姓が実現しません。それでも政治に期待しますか?
4.A;「諦めて手を離した瞬間に喜ぶのは誰か、目に見えていますからね。30年間、全ての国会での審議を継続的に見ているのは、私くらいでしょう。見続けて、発信し続けることは武器なんです。『あの時あの人はこう言ってた』ということがすぐに分かる人間がいれば、いい加減なことは言えないはずです。」:「それに、選択的夫婦別姓は試金石だと思っています。実現したからと言って、名前くらいのことで世の中は変わらないはずです。だけど、その程度のこともできないのであれば、外国人など他の少数者の人権に関することも絶対によくならない。少数者の人権が守られるか、多様な生き方が認められるか、ジェンダー平等が実現するか――。閉塞したような日本社会を考える上でのシンボルのような存在が選択的夫婦別姓であり、私は諦めることはできません。」
(坂本洋子さん)
1.さかもと・ようこ;1962年生まれ。94年から選択的夫婦別姓の導入を求める市民運動に関わり、衆院議員秘書などを経て2000年に「mネット・民法改正情報ネットワーク」を設立。夫婦別姓に関する議員の発言を発信したり、院内集会を開いたりしている。
(https://digital.asahi.com/articles/ASTDD0QQJTDDUTFL01WM.html?pn=7&unlock=1#continuehere 参照)


by asyagi-df-2014 | 2026-04-06 20:02 | 持続可能な社会 | Comments(0)

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