パレスチナの国家承認。(4)
2025年 09月 28日
パレスチナの国家承認に向けて、2025年9月22日現在、フランスや英国、カナダ、ポルトガルがパレスチナを正式に国家承認する見通しとなっている。
実は、国連人権理事会の独立調査委員会は、2025年9月16日、イスラエルがパレスチナ自治区ガザでジェノサイド(集団殺害)を行ったと認定する報告書を発表した。
読売新聞は2025年9月24日、「パレスチナ承認 ガザ巡る危機打開につなげよ」、高知新聞は同日、「【パレスチナ承認】停戦の願いを受け止めよ」、と社説で論評した。
この2社の社説を、国連人権理事会の独立調査委員会の報告(2025年9月16日)がどのように反映されているかを中心に見てみる。
(1)読売新聞
読売新聞は、最初に、「国際社会の再三にわたる警告を無視し、無差別攻撃を続けてきたことが招いた事態である。イスラエルは、多くの国の支持を失った重みを深刻に受け止めるべきだ。」、と突きつける。
この主張の根拠。
1.米ニューヨークでの国連総会で、イスラエルとパレスチナが共存する「2国家解決」をめざす首脳級会合が開かれた。フランスなどがパレスチナを国家として承認すると表明した。
2.共同議長を務めたマクロン仏大統領は「イスラエルとパレスチナが平和と安全の中で共存する可能性を守るため、あらゆることをしなければならない」と述べた。
3.会合に先立ち、英国、カナダなども国家承認した。すでに約150か国がパレスチナを国家と認めていたが、先進7か国(G7)では仏英カナダが初めてである。
4.イスラエルのパレスチナ自治区ガザへの軍事攻撃は、イスラム主義組織ハマスのテロが発端だったとはいえ、もはや自衛の範囲を大きく逸脱している。国連などによる食料支援を妨害し、意図的に 飢饉 ききん を引き起こしている。
5.仏英などは、これ以上の横暴は容認できず、圧力を強めねばならないと判断したのだろう。
6.ネタニヤフ政権はパレスチナとの共存を拒否し、武力での制圧を進めている。今月に入り、中心都市ガザ市の制圧に向けた地上作戦を本格化させた。
7.イスラエル軍のガザ侵攻による死者は6万5000人を超え、国連人権理事会の調査委員会は惨状を「ジェノサイド(集団殺害)」と認定した。
その上で、読売新聞は、「にもかかわらず、イスラエルが危機を拡大しているのは言語道断である。」、と示す。
さらに、読売新聞は、「米国のトランプ政権がイスラエルの暴走を止めず、支援を続けている責任も重い。」、と日米両国に向けて、次のことを指摘する。
1.国連安全保障理事会では今月、ガザの即時停戦を求める決議案に理事国15か国中、14か国が賛成したが、米国が拒否権を行使したため否決された。
2.日本は今回、パレスチナの国家承認を見送った。現時点では、イスラエルの残虐行為を止める効果は低いと判断したとみられる。米国が反発して日米関係に悪影響が及ぶことも懸念したのだろう。だが、米国と「特別な関係」にある英国までが承認する中、このままでは日本がイスラエルの非道を黙認したと思われかねない。
3.岩屋外相は、イスラエルへの制裁や、将来のパレスチナ国家承認などを検討する考えを示した。ガザの危機打開につなげる具体的な措置を取る必要がある。米国への働きかけも強めねばならない。
(https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20250924-OYT1T50006/ 参照)
(2)高知新聞
高知新聞は最初に、パレスチナ(ガザ)の惨状を指摘する。
1.パレスチナ自治区ガザではイスラエルの攻撃と、飢餓や栄養失調による死者が増え続けている。戦闘を停止して深刻化する人道危機の改善を図り、2国家の平和的共存へ交渉を再開することが重要だ。
2.ガザの戦闘が長期化する中、パレスチナの国家承認が相次いでいる。先進7カ国(G7)でも英国とカナダ、フランスが加わる。
3.国際社会の非難を無視して地上侵攻を強めるイスラエルのネタニヤフ政権への圧力を強める。約160カ国が承認し、和平機運の醸成を目指す動きが広がる。
4.各国の首脳は、パレスチナとイスラエルの「2国家共存」を訴えている。総合的な解決策を探る動きへとつなげることを狙う。
5.国連総会は先に、2国家共存を支持する「ニューヨーク宣言」を日本を含む142カ国の賛成で採択した。法的拘束力はないが、平和解決を求める国際社会の強い意思を示した。こうした動きに、イスラエルや後ろ盾の米国はイスラム組織ハマスを利するだけだと非難する。イスラエルのネタニヤフ首相は、「テロ国家」を築こうとする試みだと反発している。
6.承認した国からも、ハマスを「残忍なテロ組織」と判断して、パレスチナ統治への関与を認めない考えが示される。
その上で、「平和的共存には聖地エルサレムの帰属やパレスチナ難民の帰還など、課題が山積する。前提となる対話の環境整備は簡単ではないが、対策を講じていくしかない。」、と見解を明確にする。
次に、国際社会の現状を示す。
1.国家承認を巡る足並みは、G7内でもそろっていない。
2.米国は拒否の姿勢を崩さない。
3.国連安全保障理事会では、ガザの停戦やイスラエルにガザへの支援物資搬入の制限解除を求めた決議案に拒否権を行使した。国際社会との溝が深まる。
4. ドイツはナチス時代のホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の加害責任を抱え、慎重姿勢を貫く。
5.だが、国連人権理事会の調査委員会は、ネタニヤフ氏がパレスチナ人に対するジェノサイド(民族大量虐殺)を扇動したと結論づけている。
4.現状は無視できないはずだ。
最後に、日本政府に向けて、次のことを
1.日本は承認見送りを表明した。イスラエルの態度を硬化させ、ガザ情勢の好転にはつながらないと判断したと説明している。対米追随との見方を否定し、イスラエルの対応次第では、パレスチナの国家承認やイスラエルへの制裁を検討する考えを示した。
2.即時停戦への取り組みを重ね、国際社会の理解を得ることが求められる。
3.ガザの住民からは、望むのは戦闘終結であり、国家承認は戦闘終結にはつながらないと冷めた声も上がる。戦闘開始から6万5千人以上が死亡し、飢餓や栄養失調による死者も増えている。現実の厳しさがのしかかる。
高知新聞は、最後に、このように突きつける。
「イスラエルはガザの中心都市、北部ガザ市の制圧は長期化するとの見通しを示した。ヨルダン川西岸の併合への動きを危惧する意見も出ている。国際社会の懸念を無視していては孤立が深まる一方だ。」、と。
(https://www.kochinews.co.jp/article/detail/910579 参照)
やはり、ガザの惨状は、「ガザの危機打開」(読売新聞)という表現ではなく、「ジェノサイド(集団殺害)」の打開、と指摘する必要がある。
また、「現実の厳しさ」(高知新聞)からの解放は、「ジェノサイド(集団殺害)」からの解放でなければ不十分なままに終わることになる。
by asyagi-df-2014
| 2025-09-28 12:41
| パレスチナ
|
Comments(0)

