パレスチナの国家承認。(3)
2025年 09月 27日
パレスチナの国家承認に向けて、2025年9月22日現在、フランスや英国、カナダ、ポルトガルがパレスチナを正式に国家承認する見通しとなっている。
2025年7月30日以来の社説等で確認できたものは、以下のもの。
(2025年7月30日)
東京新聞社説-パレスチナ 国家承認を日本も急げ-
(2025年8月2日)
朝日新聞社説-パレスチナ問題 2国家解決の扉を開け-
(2025年8月3日)
中國新聞社説-広がるパレスチナ承認 中東和平へ日本も決断を-
(2025年8月8日)
毎日新聞社説-パレスチナ国家承認 ガザ危機打開するテコに-
(2025年8月18日)
読売新聞社説-パレスチナ承認 イスラエルの非道に重い警告-
(025年9月18日)
毎日新聞社説-パレスチナ国家承認 危機打開へ首相は決断を-
(025年9月20日)
北海道新聞社説-パレスチナ問題 暴走阻止へ国家承認を-
(2025年9月22日)
沖縄タイムス社説-パレスチナ問題 主体的判断で承認せよ-
(2025年9月23日)
琉球新報社説-パレスチナ国家不承認 日本の信頼失われないか-
(2025年9月24日)
読売新聞社説-パレスチナ承認 ガザ巡る危機打開につなげよ-
高知新聞社説-【パレスチナ承認】停戦の願いを受け止めよ-
山形新聞社説-パレスチナ国家承認拡大 悲劇終結へ外交力結集-
山梨日日新聞論説-[パレスチナ国家承認拡大]外交圧力の潮流を逃がすな-
佐賀新聞論説-[パレスチナ国家承認拡大]外交圧力の潮流を逃がすな-
大分合同新聞論説-[パレスチナ国家承認拡大]外交圧力の潮流を逃がすな-
この中から、パレスチナの国家承認について押さえるために、2025年8月末までに確認できた、東京新聞社説(「パレスチナ 国家承認を日本も急げ」-2025年7月30日)、)朝日新聞社説(「パレスチナ問題 2国家解決の扉を開け」-2025年8月2日)、毎日新聞社説(「パレスチナ国家承認 ガザ危機打開するテコに」-2025年8月8日)、読売新聞社説(「パレスチナ承認 イスラエルの非道に重い警告」-2025年8月18日)、で考える。
(1)東京新聞社説(2025年7月30日)
東京新聞は最初に、「フランスのマクロン大統領が9月の国連総会でパレスチナを国家承認すると表明した。パレスチナ自治区ガザへの攻撃を続けるイスラエルに対するけん制だ。」、と始める。
その上で、「ガザでは支援物資の搬入が滞り、飢餓が広がる。日本政府も人道的見地から国家承認に踏み切るべきだ。」、と見解を表明する。
次は、パレスチナの国家承認について触れる。
1.パレスチナを巡っては国連加盟193カ国のうち150近い国々が国家として認めているが、先進7カ国(G7)ではフランスが初めて。
1.イスラエルのネタニヤフ首相はフランスによる承認に「テロへの報酬」と反発。イスラエルを支援する米国も「軽率な決定」(ルビオ国務長官)と反対した。
3.国連に正式加盟するには安全保障理事会による勧告が必要。拒否権を持つ常任理事国の米国の反対で実現は難しいが、同じ常任理事国のフランスによる承認はイスラエルへの圧力にはなる。
また、「フランスが国家承認を急いだ背景にはガザの惨状がある」、と次のように続ける。
1.イスラエルは3月にガザへの物資搬入を遮断。5月に米国とイスラエルが支援する「ガザ人道財団(GHF)」が配給を始めた。しかし、配給所の数は国連などの約400カ所に対し、GHFは4カ所にとどまり、うち3カ所はガザ南部にある。
2.ネタニヤフ政権内にはエジプト国境に接する最南部に事実上の収容所を設け、自発的に住民を他国に移住させる計画があり、飢餓を利用した住民移動と「民族浄化」の企てという批判が絶えない。
3.GHFの配給所付近ではイスラエル軍による攻撃で住民ら千人以上が死亡。栄養不足で数十人が亡くなり、ガザ住民の4分の1が深刻な飢餓に直面している。
4.イスラエルは国際的な非難を受け、支援物資の制限一部緩和や空中からの投下の容認に動き始めたが、飢餓の解消には程遠い。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のラザリニ事務局長は住民が「歩く死体」に見えるとも語っている。
最後に、東京新聞は、日本政府に向けて、次のように締める。
1.日本政府は昨年の国連安保理でパレスチナ正式加盟勧告案に賛成したが、交渉を通じた「2国家解決」案を支持する立場から国家承認には慎重なままだ。
2.イスラエルによるパレスチナ自治区併合も懸念されるような状況では、2国家解決の前提条件を担保するためにも国家承認は必要ではないか。
3.フランスに続く日本政府の決断を求めたい。
(https://www.tokyo-np.co.jp/article/424887 参照)
ただ、「国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のラザリニ事務局長は住民が「歩く死体」に見えるとも語っている」(東京新聞)とのガザの状況は、「日本政府も人道的見地から国家承認に踏み切るべきだ」(東京新聞)との状況表現では不十分であることを示している。
(2)朝日新聞社説(2025年8月2日)
朝日新聞は最初に、国家承認の動きを、「将来の希望につながる扉を閉ざしてはならない。そんな危機感の表れとみるべきだ。」、と示す。
では、どういう状況が生まれているのか。
1.パレスチナが国家として独立し、イスラエルと平和共存する。この2国家解決について話し合う国際会議が今週、国連本部で開かれた。100カ国以上が参加し、「2国家」が唯一の道だとの宣言を発表した。イスラエルと米国は反発し、欠席した。
2.注目されるのは、会議に前後して仏英カナダが、9月の国連総会でパレスチナ国家を承認する意思を表明したことだ。国連加盟193カ国の4分の3以上がパレスチナを国家として認めているが、主要7カ国では初めてとなる。
3.昨年には国連総会でパレスチナの正式加盟を支持する決議が採択されている。賛成143カ国に対し反対はイスラエル、米など9カ国。80年近くにおよぶ紛争に終止符を打つには、2国家解決しかない、というのが国際社会の総意であることは明らかだ。
次に、ガザの深刻な状況を示す。
1.パレスチナ自治区ガザでは2年近くにおよぶイスラエルの軍事作戦で6万人以上が死亡し、人々が自由と尊厳を踏みにじられている。その様をみれば、命を守るよりどころとなる国家の必要性はいっそう高まっている。
2.だが、イスラエルのネタニヤフ政権はパレスチナ国家を「テロへの報酬だ」と否定する。将来の領土となるガザを破壊し、同じ自治区のヨルダン川西岸でユダヤ人の入植を続け、2国家解決の基盤を掘り崩している。
その上で、「国連での会議や、仏英カナダの踏み込んだ対応は、その状況に歯止めをかける努力だと歓迎したい。」、と記す。
あわせて、「もちろん、言葉だけでは不十分だ」、と今後の取り組みに何が必要なのについて、指摘する。
1.欧州連合はパレスチナ自治政府への資金援助を表明した。
2.自治政府も、ガザを支配しイスラエルを急襲したイスラム組織ハマスの武装解除や、民主的な選挙の実施など改革が求められる。
3.アラブ諸国の多くやイランはイスラエルを国家承認していない。国際社会全体として取り組むには、大局的な目配りも欠かせない。
一方、日本政府の取り組みについて指摘する。
1.日本は一貫して2国家解決を支持してきた。
2.岩屋毅外相はパレスチナの国家承認について「和平進展を後押しする観点から、適切な時期や対応も含め総合的な検討をしたい」と述べた。超党派の議連も7月初め、議員146人分の署名とともに政府に承認を求める要望書を渡した。
最後に、朝日新聞は、こう締める。
「同盟国である米国に過剰に配慮する必要はない。仏英カナダとも意思疎通を図りながら、パレスチナの人々を絶望の淵から救い出す具体策を示してほしい。」、と。
(https://www.asahi.com/articles/DA3S16273235.html?msockid=3dad63cd52f66127323875a353976052 参照)
確かに、パレスチナ問題とは、まさに、「同盟国である米国に過剰に配慮する必要はない」(朝日新聞)、ということになる。
(3)毎日新聞社説(2025年8月8日)
毎日新聞は、最初に、「イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃の即時停止と、人道危機の解決につなげなければならない。」、と示す。
毎日新聞による主張の根拠。
1.フランス、英国、カナダが相次いでパレスチナを国家として承認する意向を示した。国連加盟193カ国のうち150カ国近くが承認済みだが、主要7カ国(G7)は態度を明確にしてこなかった。パレスチナ国家の樹立阻止を目指すネタニヤフ政権は強く反発している。
2.仏英は国連安全保障理事会の常任理事国でもある。ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)への歴史的反省からイスラエルに弱腰だった姿勢を転換した意味は大きい。
3.背景にあるのは、ガザの惨状だ。空爆などによる死者は6万人を超え、食料難で多くの住民が飢餓状態にある。3カ国は、承認をテコに状況を打開したい考えだ。
4.中東和平の機運はしぼんでいるが、将来樹立されるパレスチナ国家がイスラエルと共存する「2国家解決」案を支持する国は多い。
5.英国などは両者による交渉の進展を待つ構えだったが、承認の前倒しに転じた。ネタニヤフ政権によるヨルダン川西岸地区での入植拡大を阻む狙いもある。
その上で、国家承認の意味を、「承認によって2国間の外交関係や経済協定の締結が可能になるほか、パレスチナを支持するという強い意思表示となる。」、と示す。
一方では、「ただ、国家として機能するには、統治にあたる政府が必要だ。」とし、「現在はガザを実効支配するイスラム組織ハマスと、西岸のパレスチナ自治政府で分断状態にある。主要国は自治政府の統治能力強化を後押しする必要がある。」と指摘する。
あわせて、パレスチナの国連加盟について、指摘する。
1.仏英などの承認により、パレスチナの国連加盟を求める声も高まりそうだ。現在は未加盟の「オブザーバー国家」にとどまる。
2.加盟には安保理の承認が必要となる。最大の障壁となっているのは、イスラエル寄りで拒否権を握る米国の存在だ。
3.昨年の国連総会では加盟支持の決議が日本など143カ国の賛成で採択された。米国とイスラエルは重く受け止めるべきだ。
最後に、毎日新聞は、日本政務に向けて、次のこと求める。
「長年パレスチナを支援する日本も仏英カナダとの連携を強め、承認に動く時だ。人々を深刻な苦境から救うための行動が急がれる。」、と。
(https://mainichi.jp/articles/20250808/ddm/005/070/024000c 参照)
やはり、「ただ、国家として機能するには、統治にあたる政府が必要だ。」(毎日新聞)、との指摘の意味を、きちんと確認していく必要がある。
(4)読売新聞社説(2025年8月18日)
読売新聞は、最初に、「フランスが9月にもパレスチナを国家として承認する方針を示し、これに同調する動きが他の国にも広がっている。イスラエルがパレスチナ自治区ガザを侵攻し、人道状況を悪化させていることに対する警告にほかならない。政治的な宣言に終わらせず、イスラエルへの国際的な圧力を強める契機とすべきだ。」、と見解を明確にする。
この見解の根拠について、読売新聞次のように示す。
1.マクロン仏大統領はパレスチナの国家承認について、ガザの戦乱を止め、人道支援の再開をイスラエルに強く求めるのが狙いだと説明した。英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドも同様の方針を明らかにした。
2.パレスチナはすでに140以上の国から国家承認を受け、国連では「オブザーバー国家」の地位を得ている。だが、英仏カナダの先進7か国(G7)メンバーが承認に向けて動くのは初めてだ。
3.イスラエル軍は一昨年10月のガザ侵攻以来、自衛権の範囲を超えた攻撃を続けており、死者は6万人を超えた。国連による人道支援を阻み、食料を求めて配布所に集まる住民を銃撃している。
4.英仏などは、この事態を看過せず、より強いメッセージを発するべきだと判断したのだろう。
その上で、「イスラエルのネタニヤフ首相はこれを重く受け止め、ガザでの無差別攻撃をやめ、国連の支援を全面的に再開させねばならない。」、と突きつける。
次に、「2国家解決」について触れる。
1.イスラエルとパレスチナは1993年の「オスロ合意」で、互いの存在を認め、それぞれ独立した国として平和共存する「2国家解決」の方向性を打ち出した。
2.だが、国境の線引きや、イスラム教、ユダヤ教、キリスト教の聖地であるエルサレムの地位をどう定めるかなどを巡って隔たりが埋まらず、実現に向けた協議は10年以上も途絶えている。
3.イスラエルは「2国家解決」に反する動きを加速させている。
3.ガザ全域を制圧するとして軍事作戦を拡大させた。パレスチナ自治区ヨルダン川西岸でも、パレスチナ人から土地を奪うユダヤ人入植者の犯罪行為を放任している。
最後に、読売新聞は、パレスチナの国家承認及びその後に向けて、まとめる。
1.イスラエルの行動は非道極まりないが、パレスチナを承認するだけでは止められまい。2.日本はイスラエルを支持する米国への配慮から、承認には慎重な立場だ。だからといって傍観は許されない。
3.英国はイスラエルの極右勢力の閣僚に制裁を科している。
4.日本も制裁を科し、閣僚間の往来を停止するなど選択肢はあるはずだ。人道状況の改善に向け、英仏などと協力を進めていく必要がある。
(https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20250817-OYT1T50146/ 参照)
ガザ問題の核心は、「人道状況の改善」(読売新聞)ではなく、国連人権理事会の独立調査委員会による「イスラエルがパレスチナ自治区ガザでジェノサイド(集団殺害)を行ったと認定する」との報告書(2025年9月16日付)にあることである。
by asyagi-df-2014
| 2025-09-27 12:39
| パレスチナ
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