関東大震災における朝鮮人虐殺に、きちんと向き合うこと。(1)
2025年 09月 28日
東京都の小池百合子知事は、関東大震災の直後に虐殺された朝鮮人犠牲者を追悼する9月1日の式典に、9年連続で、追悼文を送らないことになった。
このことを考える上で、次の朝日新聞の記事から始める。
朝日新聞は2024年8月30日、「関東大震災の朝鮮人虐殺、否定論やまず 公的記録、相次ぐ『発掘』」(二階堂友紀、田渕紫織)、と次のように報じた。
1.1923年の関東大震災では「朝鮮人が略奪や放火をした」といった流言飛語が広まり、朝鮮人らが殺害される事件が多発した。9月1日で大震災から101年。史実を否定するような言動がやまない中、粘り強く記録をたどる人たちもいる。
(小池知事と林官房長官の説明は)
2.東京都の小池百合子知事は、震災時に虐殺された人を含む朝鮮人犠牲者の追悼式典に、今年も追悼文を送らない。2017年から8年連続だ。
3.小池氏は8月30日の記者会見で、不送付の理由について、式典と同じ9月1日にある震災の犠牲者を悼む大法要で「全ての方々へ哀悼の意を表している」と従来の説明を繰り返した。これまで虐殺の認識を問われると「何が事実かは歴史家がひもとく」などと語ってきたが、この日も「様々な研究が行われていることは承知している」と述べるにとどめた。
4.「政府として調査した限り、政府内において事実関係を把握することのできる記録が見当たらない」。昨夏には松野博一官房長官(当時)のそんな発言が問題になった。林芳正官房長官は30日の会見で「認識に変わりはない」と述べ、「災害発生時に、国籍を問わず、全ての被災者の安全安心の確保に努めることは、政府として極めて重要だ」と付け加えた。
(司法省などの記録を根拠に)
1.政府の中央防災会議が09年にまとめた報告書は、「官憲、被災者や周辺住民による殺傷行為が多数発生した。虐殺という表現が妥当する例が多かった」「殺傷の対象となったのは、朝鮮人が最も多かったが、中国人、内地人も少なからず被害にあった」と記す。233人の朝鮮人が殺され、367人が起訴された事件の詳細を記した司法省の当時の記録などを根拠資料としている。
2.だが、政府は「報告書は有識者が執筆したもので、その記述の逐一について政府としてお答えすることは困難」との立場だ。15年2月に「調査した限りでは、政府内に事実関係を把握することができる記録が見当たらない」とする答弁書を閣議決定している。
3.野党議員らは昨秋の臨時国会で様々な記録を示しながら、政府の認識を相次いでただした。閣僚らは「政府内に事実関係を把握できる記録が見当たらない」という従来の立場を維持しつつ、虐殺に関する文書が「独立行政法人国立公文書館」や「防衛研究所戦史研究センター史料室」などにあることを認めた。
4.「政府は10年ほど同様の答弁を続けてきたが、この1年でその矛盾が露呈した。史実を認めないような動きが相次いだことで、皮肉なことに、一般にはあまり知られていなかった朝鮮人虐殺に注目が集まった面もある」。虐殺否定論を検証するノンフィクションライターの加藤直樹さんは言う。
(昨年明らかになった二つの公的資料)
1.新たな資料も相次いで「発掘」された。
2.「(朝鮮人が)夜に入ると共に殺気立てる群集の為めに、久下、佐谷田及熊谷地内に於(おい)て、悉(ことごと)く殺さる」
3.陸軍の地方組織である、埼玉県の熊谷連隊区司令部が作成した「関東地方震災関係業務詳報」の記述だ。陸軍省が震災での活動内容を報告するよう求め、1923年12月15日付で提出された。震災3日後の9月4日夜、保護のため警察に移送中の朝鮮人四十数人が、今の熊谷市内で殺されたと記録し、「鮮人(朝鮮人の蔑称)虐殺事件」「不法行為」と表現する。
4.防衛省防衛研究所の史料室に所蔵されており、「関東大震災『虐殺否定』の真相」の著書がある元朝日新聞記者でジャーナリストの渡辺延志(のぶゆき)さんが内容を確認し、昨秋発表した。「軍や警察の内部で事態を深刻にとらえた人々による記録が、いまも政府内部に眠り、現在の私たちに託されている」と渡辺さん。
(犠牲者の名前、住所も)
1.元小学校教員で、朝鮮人犠牲者の調査や追悼会を横浜市で続ける団体の代表を務める山本すみ子さん(85)らは昨年9月、神奈川県での記録が見つかったと発表した。
2.県知事による内務省警保局長あての1923年11月の報告書で、県内で起きた朝鮮人への殺人57件を含む59件の殺傷事件の日時や概要のほか、殺された145人のうち14人の名前が書かれている。虐殺の歴史研究の第一人者である姜徳相・滋賀県立大名誉教授(故人)が持っていた。
3.横浜港の労働者だった朝鮮人男性42人が付近の民衆に殺された、などと記された具体的な犯罪事実は、これまでの証言や当時の報道と符合する。一方、山本さんらは、他の証言や小学生の作文と突き合わせる限り、「虐殺の証言数が多い場所の記録がなく、これが全てではない」とみる。
(「刻まなければ」)
1.山本さんらはこの1年、資料に出てくる殺害現場を一つ一つ古地図で確認し、足を運び、関係者に話を聞いてきた。
2.「政府や小池知事のような姿勢は、虐殺の事実を歴史から抹消する行為に等しい。亡くなった人たちが何という名前で、どこに住み、どこで働いていたのか、歴史に刻まなければならない」。9月7日に開く今年の横浜市での追悼会では、新たに明らかになった犠牲者一人一人の氏名を読み上げる。
(「歴史修正主義」の著書がある学習院女子大の武井彩佳教授の話)
1.虐殺など大きな人権侵害が起こった後、年月が経ち、生存者がいなくなると、発生当時は当然のように共有されていた事実について「十分な事実確認ができていない」といった言説が生まれやすくなる。歴史的事実は意識的に継承していかなければ、簡単に埋没する。
2.ホロコーストですら否定論があり、欧州の多数の国は、戦争犯罪やジェノサイドに関する否定の禁止を法制化している。法規制の妥当性には議論があるが、日本は最低限の事実の共有が不十分で、それ以前の段階にある。
3.歴史の資料を検証し、地道にたどる営みなくして、後の時代に事実は残らない。地域に残る記録や証言を集約する機関や場所をつくるのが、国や自治体の役割だろう。
(朝鮮人虐殺をめぐり、この1年で「発掘」された公的な記録)
・熊谷連隊区司令部「関東地方震災関係業務詳報」(1923年12月)
朝鮮人四十数人が「殺気立てる群集」によって「悉(ことごと)く殺さる」と記述。「鮮人虐殺事件」とも
・神奈川県「震災に伴う朝鮮人並びに支那人に関する犯罪及び保護状況その他調査の件」(1923年11月)
県内で起きた朝鮮人の殺傷事件59件の犯罪事実や、殺害された145人のうち14人の氏名を記載
政府の中央防災会議専門調査会の報告書(2009年)の根拠資料の一部
・司法省「震災後に於ける刑事事犯及之に関連する事項調査書」(1923年11月)
233人の朝鮮人が殺され、367人が起訴された事件の詳細を政府が調査
・関東戒厳司令部「震災警備の為兵器を使用せる事件調査表」(1923年9月)
陸軍による殺傷事件20件の詳細(うち12件は朝鮮人が被害者)
(https://digital.asahi.com/articles/ASS8Z2J1XS8ZUTIL02TM.html?pn=13&unlock=1#continuehere 参照)
また、 朝日新聞は2025年8月29日、「関東大震災の朝鮮人虐殺「政府は検証を」 有志議員の会が首相に要望」(北野隆一)、2025年の動きにいて、次のように報じた。
1.立憲民主党など野党の国会議員らでつくる「関東大震災朝鮮人虐殺を検証する有志議員の会」が29日、国会内で政府への要望書を提出した。石破茂首相や林芳正官房長官あてに、関東大震災発生時の虐殺に関連する資料を集めて内容を検証し、虐殺の事実を政府として正式に認めるよう求めている。
2.提出後に記者会見した議員らによると、要望書は青木一彦官房副長官が受け取った。青木氏は「過去の事実を網羅した確たる記録が見つからない」などと従来と同様の回答を繰り返したうえで、「共生社会を築くため、災害が起きたときに特定の民族を対象とした悲劇が起きたり、差別されたりしないよう、政府として対応していく」と語ったという。
3.議員の会は今年2月に結成。朝鮮人虐殺事件にかかわる千葉県の現地を視察したほか、専門家を招いて勉強会を開いてきた。震災102年となる9月1日を前に、政府に検証を求めることにしたという。
4.議員らは2023年の「震災100年」を機に、震災当時の公文書を示して国会質問を重ねてきた。政府側は「政府内に記録が見当たらない」「内容について確定的なことを申し上げるのは困難」などと答え、虐殺の史実を認めない状況が続いている。
(https://digital.asahi.com/articles/AST8Y320KT8YUTIL01LM.html?_requesturl=articles/AST8Y320KT8YUTIL01LM.html 参照)
by asyagi-df-2014
| 2025-09-28 19:04
| 人権・自由権
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