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高額療養費の引き上げを考える。(1)

 厚労省の社会保障審議会(医療保険部会)は2025年12月12日、公的医療保険の「セーフティーネット」の役割を果たしている「高額療養費制度」の見直しをめぐり、高額療養費の引き上げを段階的にすることを決めた。
 このことで、特に、高額な治療を長く続けているがん患者は、「『治療を諦めなくてはいけないのか』と深刻な懸念」(朝日新聞)を抱かされている。
 また、この高額療養費の引き上げは、「生活や命の継続の危険につながる。」(朝日新聞)ものであり、全世代に打撃を与える改悪となることが予想される。まさしく、「いま健康な人も、自分事として考えてほしい問題」(朝日新聞)なのである。
 したがって、「租税・保険料支払いへの抵抗感が強まっている現在」(朝日新聞)の中で、公的医療保険による高額療養費制度の公的負担のあり方を考える必要があります。

 では、どのような見直しが行われているのか。

 全国保険医団体連合会のホ-ムペ-ジによると、次のことが検討されている。
1.現在、厚労省の社会保障審議会(医療保険部会)では、この高額療養費制度について、患者が支払う負担限度額を引き上げる方向で議論が進められています。
2.これまで部会に示された案では、①全ての5つの所得区分をさらに細分化した上で、負担限度額水準を5%~15%引き上げることが示されています。
3.加えて、②70歳以上の高齢者(年収370万円未満)において外来医療費負担を抑える「外来特例」(月1万8,000円、又は8,000円など)について、廃止又は負担限度額引き上げが提案されています。
4.国は年末にも決定して、早ければ2025年夏以降からの負担引き上げを進める構えです。

 このことに関して、朝日新聞は2024年12月21日、「高額療養費上限引き上げ 激変緩和 最終形は27年8月、3段階検討」(吉備彩日)、と次のように報じた。
1.医療費の患者負担に月ごとの限度を設けた「高額療養費制度」の見直しをめぐり、厚生労働省は、上限額の引き上げについて、2025年8月から27年8月にかけて3段階で実施する検討に入った。これまでは26年8月まで2段階での移行を想定していたが、時間をかけて引き上げることで影響を緩和する狙い。最終的に引き上げる幅は変えない。
2.複数の関係者が明らかにした。
3.厚労省は見直しの1段階目として、25年8月から所得区分ごとに2.7~15%引き上げる方向で最終調整中。その後は26年8月に、所得区分を原則的に三つに分けた上で限度額を引き上げる方針だった。
4.しかし、上げ幅を大きく感じる人が受診を控える懸念などが浮上。激変緩和に向け、所得区分を細分化した後は、26年8月と27年8月に段階的に引き上げる案の検討を始めた。
5.高額療養費制度は、大きな手術などで医療費の支払いが膨らんだ際、所得などに応じた上限額に抑える仕組み。子ども関連政策の財源確保や、現役世代の保険料負担軽減のため、政府は上限額を引き上げる方針だ。
6.年末の予算編成過程で、具体的な引き上げ方を決定する。
(https://digital.asahi.com/articles/ASSDN3CF0SDNUTFL007M.html?pn=5&unlock=1#continuehere 参照)

 また、朝日新聞は2025年2月4日、「(がんとともに)『生きるの諦めて』言われたよう 高額療養費、負担上限引き上げ案に悲鳴」(上野創、松本千聖)と記事の中で、この引き上げがもたらす患者からの不安の声について、「高額な治療を長く続けるがん患者らは『治療を諦めなくてはいけないのか』と深刻な懸念」について報じた。
1.患者が負担する月ごとの医療費の限度額を定める「高額療養費制度」の負担引き上げを政府が検討していることを受け、患者から不安の声が上がっている。特に、高額な治療を長く続けるがん患者らは「治療を諦めなくてはいけないのか」と深刻な懸念を抱いている。
2.「生きるのは諦めなさい、と国から言われた気がした」。肺がんの治療を続ける東京都小平市の水戸部ゆうこさん(50)は、そう話す。
3.7年前に診断され、進行したがんで完治は難しいと言われた。中断期間をはさんで、1錠約2万円の薬を通算3年半ほど服用しており、公的医療保険による3割負担でも合計800万円近くになる。だが、高額療養費制度を適用することで、月ごとの負担は4万~8万円台に抑えられている。高額な支出が続き、2人の子どもと夫へ申し訳ない気持ちを抱き続けてきた。
4.「がんに限らず、今の上限額でもぎりぎりという患者や家族が大勢いる。患者の声に耳を傾けることなく、引き上げを決めるのはやめてほしい」と話す。
5.公的医療保険の「セーフティーネット」である高額療養費制度。高額な治療を受け、窓口での支払いが高くなっても、上限があることで、自己負担を一定額に抑えることができる。月々の自己負担の上限は、その人の年齢や所得区分によって決まる。
6.政府は、増え続ける社会保障費の伸びを抑えるため、2025年度当初予算案で、高額療養費制度の自己負担限度額の計算に使う基礎的な部分の金額の引き上げを盛り込んだ。政府案では、25年8月に所得区分ごとに2・7~15%引き上げ、さらに、26年8月と27年8月にも区分を細分化して引き上げる。例えば、年収700万円の人では、最終的には、現行から5万8500円増の月13万8600円となる。
(就労世代にも影響大)
1.全国がん患者団体連合会(全がん連)が1月17~19日に行った引き上げ反対に関するアンケートには、患者やその家族、医療従事者ら3623人の声が寄せられた。29日から始まった引き上げ反対を訴えるオンライン署名にも、6日間で約7万5千人(2月3日時点)が賛同している。
2.1月末、厚生労働省で記者会見を開いた全がん連の天野慎介理事長は、「高額療養費の引き上げは、生活や命の継続の危険につながる。すぐに案の見直しをしてほしい」とし、特に高額な治療が長期にわたる患者への配慮を求めた。会見には日本難病・疾病団体協議会の幹部も出席し、関節リウマチなどで高額な治療薬を必要とする患者の窮状を説明した。
3.ファイナンシャルプランナーとしてがん患者の家計相談に応じる、一般社団法人「患者家計サポート協会」の黒田ちはる代表理事は、就労世代の相談を多く受けている。がんになって休職するなどして収入が減る中で、治療が長期化し、毎月、高額療養費の限度額いっぱいの支出がかかり続けるケースを見てきた。
4.黒田さんは「高額な治療薬が増加しており、引き上げに一定の理解はする。だが、治療中の家計状況や負担能力に応じた自己負担のあり方を検討していく必要があるのではないか」と指摘。がんだけでなく、様々な病気の患者に関わる制度で、黒田さんは「いま健康な人も、自分事として考えてほしい問題だ」と話す。
5.石破茂首相は1月31日の衆院予算委員会で今後、当事者からの意見を聴くことを検討するとした。(上野創、松本千聖)
(https://digital.asahi.com/articles/DA3S16141852.html?pn=2&unlock=1#continuehere 参照)

 さらに、政府の対応について、朝日新聞は2025年2月4日、「高額療養費制度めぐり、厚労相が患者と面会へ 首相は「必要あれば」」(谷瞳児)、と報じた。
1.政府が検討している「高額療養費制度」の上限引き上げをめぐり、石破茂首相は4日の衆院予算委員会で、福岡資麿厚生労働相が患者団体と面会すると明らかにした。首相自身の面会については「必要であればお目にかかるのは当たり前だ」と述べた。立憲民主党の中島克仁氏への答弁。
2.患者が負担する月ごとの医療費の限度額を定める「高額療養費制度」の引き上げに対しては、患者から「治療を続けられなくなる」など不安の声が出ている。この日、中島氏は首相に対し、患者と面会し、その訴えを聞くよう求めた。
3.これに首相は、「福岡大臣、事務方が誠心誠意お話をうけたまわる」と答弁。自身の面会については「必要があれば」とし、明言しなかった。
(https://digital.asahi.com/articles/AST2424B3T24UTFK00NM.html?iref=pc_ss_date_article 参照)

 なお、朝日新聞は、「高額療養費制度」について、次の記事でこの問題を押さえている。

(1)朝日新聞-(くらし相談室)高額療養費見直し、引き上げ額は? 3年かけて段階的に、所得区分も細分化(吉備彩日)-2025年1月29日
1.保険適用の医療サービスを受けた際にかかる医療費には、患者の月ごとの負担限度を設ける「高額療養費制度」があります。この制度をめぐって政府は、所得ごとの負担限度額を引き上げる新年度予算案を閣議決定しました。背景には医療費の増大と、子ども関連政策の財源確保があります。
(8月から2.7~15%増、健康保険や児童手当の財源確保)
1.高額療養費制度は、大きな手術などによって医療費の支払いが膨らんだ際、所得などに応じた限度額を上限に負担を抑える仕組み。公的医療保険の「セーフティーネット」として機能している。
2.70歳未満で五つ、70歳以上で六つの所得区分が設けられている。例えば70歳未満で真ん中の所得層の人が100万円の医療を受けた場合、本来30万円の自己負担が8万7430円に軽減される。
3.政府は負担上限額の引き上げを検討。対象となるのは、負担額の計算式に使う基礎的な金額で、2025年から3年かけて引き上げる。
4.1段階目として、25年8月から現行の所得区分ごとに2・7~15%引き上げる。さらに所得区分を細分化した上で、段階的に26年8月と27年8月にも引き上げる予定だ。
5.70歳以上の低所得層の外来(通院)の負担額に上限を設定した「外来特例」も見直す。
6.基礎年金のみを受給する層など、収入が一定以下の人の場合は、現行の8千円に据え置く考え。それ以外の人については、26年8月に年収に応じて上限を2千~1万円引き上げる方針だ。
7.こうした引き上げの背景の一つに、子ども関連政策の財源確保がある。
8.児童手当の大幅拡充などが盛り込まれた「こども未来戦略」は、年3・6兆円規模の子ども関連施策のうち、1・1兆円の財源確保について、28年度までに社会保障の歳出削減で賄うとした。高額療養費の見直しで抑えた分を財源に回す形だ。
9.また、医療費が増大し、保険料負担が増え続けていることもある。
10.高額療養費制度では、本人負担分以外の医療費を、加入する健康保険(自治体や会社の健康保険組合など)が主に支払う。高額な新薬や治療の登場によって医療費が膨らむと、健康保険の財政が逼迫(ひっぱく)し、現役世代を中心とした保険料の負担上昇につながる。
11.厚生労働省の試算では、3段階すべての引き上げが完了すると、おおよそ年3700億円の保険料が削減される。1人あたりでは年1100~5千円程度の軽減となる見込みだ。(吉備彩日)
(https://digital.asahi.com/articles/DA3S16137148.html?pn=2&unlock=1#continuehere 参照 2025年2月5日)

(2)朝日新聞-コメントプラス-【視点】高額療養費の引き上げは、大きな問題を孕んでいると思います。(能條桃子)-2025年1月30日
1.若い世代のがんや突然の病気も含めて、いつ病気になるかなど、予知できず、だからこそそのような状況に置かれた人たちが生活困窮しないように高額療養費制度があります。
2.病気になって、仕事も続けられない、今後の見通しが立ちづらい状況に突如なった際に、現在月8万100円となっている層が13万8600円になるというのは大きな変化です。
3.想定できない事態に備えるのが支え合いの社会保障制度のはずです。本当にこれで良いのか、当事者の人たちの声を聞いて議論が進んでほしいです。
4.また、AYA世代と呼ばれる若年層のがんは、女性の方が罹患する人が多いところから、ジェンダーの視点も入れて話す必要があるという指摘もあります。標準と想定されるモデルが男性を中心に考えられている議論も多々あります。
5.多くの人にとっては今自分が当事者じゃない出来事に対し、どうしても想像しづらい部分もあるかもしれませんが、明日は我が身かもしれないという想像力を持って議論することで、租税・保険料支払いへの抵抗感が強まっている現在、公助への理解を広げられるのではないかなとも思います。
(https://digital.asahi.com/articles/DA3S16137148.html?pn=2&unlock=1#continuehere 参照)


by asyagi-df-2014 | 2025-03-11 19:49 | 高齢者福祉・医療 | Comments(0)

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