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「認知症施策推進基本計画」について考える。(1)

 政府は2024年12月3日、2024年1月1日に施行された「共生社会の実現推進するための認知症基本法」(2023年法律第65号、2023年6月14日成立、同月16日公布、2024年1月1日施行)に基づき、「認知症施策推進基本計画」について閣議決定行い、公表した。

 最初に、「共生社会の実現推進するための認知症基本法」(以下、基本法)について把握する。
 この基本法の目的・定義等の抜粋は以下のもの。

第1章 総則
(目的)
第1条 この法律は、我が国における急速な高齢化の進展に伴い認知症である者(以下「認知症の人」という。)が増加している現状等に鑑み、認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができるよう、認知症に関する施策(以下「認知症施策」という。)に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体等の責務を明らかにし、及び認知症施策の推進に関する計画の策定について定めるとともに、認知症施策の基本となる事項を定めること等により、認知症施策を総合的かつ計画的に推進し、もって認知症の人を含めた国民一人一人がその個性と能力を十分に発揮し、相互に人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生する活力ある社会(以下「共生社会」という。)の実現を推進することを目的とする。
(定義)
第2条 この法律において「認知症」とは、アルツハイマー病その他の神経変性疾患、脳血管疾患その他の疾患により日常生活に支障が生じる程度にまで認知機能が低下した状態として政令で定める状態をいう。
(基本理念)
第3条 認知症施策は、認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができるよう、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。
一 全ての認知症の人が、基本的人権を享有する個人として、自らの意思によって日常生活及び社会生活を営むことができるようにすること。
二 国民が、共生社会の実現を推進するために必要な認知症に関する正しい知識及び認知症の人に関する正しい理解を深めることができるようにすること。
三 認知症の人にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるものを除去することにより、全ての認知症の人が、社会の対等な構成員として、地域において安全にかつ安心して自立した日常生活を営むことができるようにするとと
もに、自己に直接関係する事項に関して意見を表明する機会及び社会のあらゆる分野における活動に参画する機会の確保を通じてその個性と能力を十分に発揮することができるようにすること。
四 認知症の人の意向を十分に尊重しつつ、良質かつ適切な保健医療サービス及び福祉サービスが切れ目なく提供されること。
五 認知症の人に対する支援のみならず、その家族その他認知症の人と日常生活において密接な関係を有する者(以下「家族等」という。)に対する支援が適切に行われることにより、認知症の人及び家族等が地域において安心して日常生活を営むことができるようにすること。
六 認知症に関する専門的、学際的又は総合的な研究その他の共生社会の実現に資する研究等を推進するとともに、認知症及び軽度の認知機能の障害に係る予防、診断及び治療並びにリハビリテーション及び介護方法、認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすための社会参加の在り方及び認知症の人が他の人々と支え合いながら共生することができる社会環境の整備その他の事項に関する科学的知見に基づく研究等の成果を広く国民が享受できる環境を整備すること。
七 教育、地域づくり、雇用、保健、医療、福祉その他の各関連分野における総合的な取組として行われること。
(国の責務)
第4条 国は、前条の基本理念にのっとり、認知症施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第5条 地方公共団体は、第三条の基本理念にのっとり、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の地域の状況に応じた認知症施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施する責務を有する。
(保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者の責務)
第6条 保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者は、国及び地方公共団体が実施する認知症施策に協力するとともに、良質かつ適切な保健医療サービス又は福祉サービスを提供するよう努めなければならない。
(日常生活及び社会生活を営む基盤となるサービスを提供する事業者の責務)
第7条 公共交通事業者等(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成十八年法律第九十一号)第二条第五号の公共交通事業者等をいう。)、金融機関、小売業者その他の日常生活及び社会生活を営む基盤となるサービスを提供する事業者(前条に規定する者を除く。第二十三条において同じ。)は、国及び地方公共団体が実施する認知症施策に協力するとともに、そのサービスを提供するに当たっては、その事業の遂行に支障のない範囲内において、認知症の人に対し必要かつ合理的な配慮をするよう努めなければならない。
(国民の責務)
第8条 国民は、共生社会の実現を推進するために必要な認知症に関する正しい知識及び認知症の人に関する正しい理解を深めるとともに、共生社会の実現に寄与するよう努めなければならない。
(認知症の日及び認知症月間)
第9条 国民の間に広く認知症についての関心と理解を深めるため、認知症の日及び認知症月間を設ける。
2 認知症の日は九月二十一日とし、認知症月間は同月一日から同月三十日までとする。
3 国及び地方公共団体は、認知症の日においてその趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めるものとするとともに、認知症月間においてその趣旨にふさわしい行事が実施されるよう奨励しなければならない。
(法制上の措置等)
第10条 政府は、認知症施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。

 では、この基本法は、どのようなものであったのか。
朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の社説で、この基本法を捉え直す。

(1)朝日新聞社説-認知症 社会の意識変えてゆく-2023年5月6日 5時00分

 朝日新聞は最初に、認知症を巡る状況について把握する。
1.「痴呆(ちほう)」から「認知症」へと呼称が変更され約20年がたつ。85歳を過ぎれば4割の人がなるといわれ、病気のとらえ方は変わってきた。とはいえ、いまなお認知症になったことを恥と感じ、周囲には言いづらいと感じる当事者や家族もいるだろう。
2.認知症になっても希望を持って暮らすことのできる「共生社会」の実現に向け、超党派の国会議員が3月下旬、「認知症基本法」の骨子案を公表した。患者が自立して日常生活を営むことができるようにすることなどを理念とし、国や自治体が講じるべき施策や治療・予防の研究推進が明記されている。
3.2019年に政府の「認知症施策推進大綱」が作られ、対策が進められてはいる。ただ、06年に議員立法で成立した「がん対策基本法」をきっかけに、がん対策は大きく前進した。それを思えば、法案提出に向けた議論や調整を加速させてほしい。
4.残る大きな課題は「予防」のための取り組みや研究開発の推進をめぐる表現だ。認知症の予防法は確立されていない。当事者からは「なってはいけない病気」だと受け取られ、「なったのは努力をしなかったから」といった誤解や偏見につながりかねないとの懸念がある。
5.現在の大綱でも、「予防」とは「なるのを遅らせる」「なっても進行を緩やかにする」と定義されている。予防に努めれば認知症にならないかのような印象を与える書きぶりは、避けるべきだ。
 次に、「同時に治療や予防の研究開発が進むことへの期待は大きい。」として、指摘を行う。
1.今年1月、代表的な認知症であるアルツハイマー病の進行を抑える薬の承認が申請された。病気の原因と考えられるアミロイドβというたんぱく質に作用する新しいタイプの薬だ。「効果を実感するのは難しい」との指摘もあるが、薬の開発に光が見えてきたとの声も聞く。
2.アミロイドβは、20年以上かけて脳に蓄積する。より早い段階から予防や治療を始めれば、発症を抑えたり、遅らせたりすることができる可能性もある。そのため血液検査のような負担が少ない方法の研究開発も進められている。希望すれば当事者や家族が研究に参画できるような仕組み作りが必要だ。
3.ただ、認知症になっても前向きに生きていける社会の実現が前提となる。
4.当事者でつくる「日本認知症本人ワーキンググループ」がつくった「希望宣言」は、冒頭で「自分自身がとらわれている常識の殻を破る」とうたう。同じように「何もできなくなる」といった認知症への古い先入観や病気への意識をまずは国民全体で変えていかなければならない。
(https://digital.asahi.com/articles/DA3S15629381.html?msockid=252fde7baf9b627c2eeccb0bae2c639d 参照)

 朝日新聞から、次のことが確認できる。
1.「『痴呆)』から『認知症』へと呼称が変更され約20年がたつ」こと。
2.「いまなお認知症になったことを恥と感じ、周囲には言いづらいと感じる当事者や家族もいる」こと。
3.したがって、「『何もできなくなる』といった認知症への古い先入観や病気への意識をまずは国民全体で変え」ていくなかで、「認知症になっても前向きに生きていける社会の実現」が必要とされること。

(2)毎日新聞社説-認知症基本法が成立 尊厳保ち暮らせる社会に-2023年6月22日

 毎日新聞は、この法について、「認知症になっても自分らしく、安心して暮らせる。そうした社会の実現を目指し、国や自治体の取り組みを定めた認知症基本法が超党派の議員立法で成立した。」、と示す。
 では、基本法はどういう法なのか。
1.認知症の人が基本的人権を持つ個人として、自らの意思で生活を営めるようにすることを基本理念に掲げた。
2.社会参加の機会が確保され、保健医療・福祉サービスを切れ目なく受けられるよう国が計画を作る。自治体にも策定を促している。
3.従来の施策は発症の予防やバリアフリー化の推進などに力点が置かれていた。当事者や家族は尊厳を持って暮らせることを目的に明記した法律の制定を求めていた。
4.厚生労働省によると2025年には約700万人、65歳以上の5人に1人が認知症になると推計されている。だれもが発症する可能性があり、国を挙げて取り組まなければならない課題だ。
 次に、「しかし、当事者を取り巻く現状は厳しい。」、と認知症を取り巻く課題を指摘する。
1.公的介護保険は、要介護度の低い人への生活支援サービスが縮小されており、認知症の人にも影響が出ている。ヘルパーの不足も深刻だ。
2.1人暮らしを支える見守りや外出の介助は不十分だ。当事者や家族同士の交流を促す「認知症カフェ」は、自治体によって開催頻度などにばらつきがある。閉じこもりがちになったり、孤立を深めたりすれば、社会とのつながりも薄れてしまう。
3.支援のネットワークを整えることも重要だ。厚労省の呼びかけで05年以降、企業や自治会などが認知症サポーターをのべ約1450万人養成してきたが、有効に活用できていない。
4.企業の果たす役割は大きい。65歳未満で発症する若年性認知症の人もいる。働き続けられるよう配慮が必要だ。介護しながら働く人への目配りも欠かせない。
5.「認知症になったら何もできなくなる」といった誤解や偏見をなくすことも大切だ。国民一人一人が病気に対する理解を深めることが求められる。
 最後に、毎日新聞は、この基本法の果たす役割について、「認知症の人が暮らしやすい社会はすべての人にとって暮らしやすいはずだ。そのための環境作りに基本法の精神を生かしていかなければならない。」、と示す。
(https://mainichi.jp/articles/20230622/ddm/005/070/086000c 参照)

 確かに、この基本法の役割は、「認知症の人が暮らしやすい社会はすべての人にとって暮らしやすいはずだ。そのための環境作りに基本法の精神を生かしていかなければならない。」(毎日新聞)、ということに尽きる。

(3)読売新聞社説-認知症基本法 「共生社会」の実現を急ぎたい-2023年7月2日

 読売新聞は、この基本法の意義を、「『人生100年時代』を迎えた日本にとって、認知症対策は重要な課題だ。認知症になっても安心して暮らせる社会の実現を急がねばならない。」、と意味づける。
 このことに関する読売新聞の把握。
1.認知症基本法が成立した。
2.認知症の人が尊厳を持って生活できるよう、国に対策の基本計画策定を義務づけ、自治体には地域事情に応じた支援計画を立てる努力義務を課した。その際、本人や家族の意見を聞くことも求めている。
3.認知症は、様々な原因により記憶力や判断力といった脳の機能が低下し、社会生活に支障を来す状態になる。2025年には約700万人に上ると推計される。65歳以上の5人に1人に当たり、誰にとってもひとごとではない。
4.基本法は「共生社会」の実現を目的としている。一人ひとりが当事者意識を持ち、支え合う姿勢が欠かせない。そのためには、国民の間に正しい知識と理解をしっかり浸透させなければならない。
5.認知症はかつて「 痴呆 ちほう 」と呼ばれた。認知症になると何もできないかのような偏見が根強い。
6.だが、認知機能は一気に低下するわけではなく、症状は徐々に進行する。食事をしたことを忘れても、得意なことをする力はあるなど、状態は一律でない。喜びや悲しみを感じる心も持っている。
7.誤解を 払拭 ふっしょく し、本人の人格や意思を尊重することが大切だ。社会全体で支えることで、残っている力を生かせるようにしたい。自立して暮らす期間が延びれば、豊かな高齢期を過ごせるはずだ。
 また、読みうる新聞は、この基本法に沿った具体的な取り組みを示唆する。
1.理解を広げるには、自治体や企業、学校で開かれる「認知症サポーター養成講座」を活用し、基礎知識を学んでもらうことが有効だろう。受講者を認知症の人の見守りや外出の手助けといった支援に生かせるよう工夫すべきだ。
2.認知症にならない方法は今のところない。ただ、運動不足や孤立などリスクになる要因はわかってきた。行政や専門家は情報を周知し、リスクを減らす活動に取り組みやすくしてほしい。
3.認知症の人が社会参加できる機会の拡充も必要だ。
4.本人同士や家族同士の交流会にとどまらず、本人と家族が一緒に参加して、好きなことを楽しむ取り組みも始まっている。東京都品川区や仙台市では、認知症の人を含めた家族が複数集まり、料理や外食をともにする例がある。
5.孤立しやすい認知症の人と介護する家族の気分転換になり、悪化しがちな家族関係の修復も期待できるという。先行事例のノウハウを共有し、全国に広げたい。
(https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20230701-OYT1T50247/ 参照)

 確かに、「認知症になっても安心して暮らせる社会の実現」、つまり「『共生社会』の実現」を目的としている、との読売新聞が説く基本法の理念を作り上げなくてはならない。
 また、「認知機能は一気に低下するわけではなく、症状は徐々に進行する。食事をしたことを忘れても、得意なことをする力はあるなど、状態は一律でない。喜びや悲しみを感じる心も持っている。」(読売新聞)、との指摘は、社会が寛容な社会であることを求めているということでもある。


by asyagi-df-2014 | 2025-02-06 19:23 | 高齢者福祉・医療 | Comments(0)

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