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地方自治法の改定を考える。(5)-2024年5月30日、地方自治法改正案が、衆院本会議で賛成多数で可決された。

 地方自治法改正案が2024年5月30日、衆院本会議で、賛成多数で可決された。

 このことに関して、朝日新聞は同日、-国に「指示権」、地方自治法改正案が衆院通過 今国会成立の見通し」(千葉卓朗)、と次の様に報じた。
1.大規模災害や感染症の大流行などの非常事態に国が地方に対応を指示できるようにする地方自治法改正案が30日の衆院本会議で与野党の賛成多数で可決され、衆院を通過した。焦点だった国の「指示権」乱用への歯止め対策は小幅修正にとどまり、立憲民主党などから「地方分権の流れに逆行する」との批判が続く中、改正案は参院での審議を経て6月中旬にも成立する見通しだ。
2.改正案には、与党のほか、日本維新の会、国民民主党が賛成。立憲、共産党、れいわ新選組が反対した。
3.改正案は「国民の生命等の保護のために特に必要な場合」に、個別法で対応できなければ、国が地方に指示権を行使できるようにすることが柱。ただ、どのような場合に指示権を行使するのかについて、政府側は「現時点で具体的に想定しうるものはない」(松本剛明総務相)との答弁を繰り返し、立憲は「(改正案の)根拠となるべき立法事実がない」(大築紅葉氏)などと追及した。
4.一方、国の指示権乱用の歯止めに関しては、国が行使後に指示の内容を国会に「事後報告」する義務を追加する修正が自公維の提案で盛り込まれた。しかし、立憲は修正が不十分とし、改正案に盛り込まれた指示権行使前に地方の意見を聞く「努力義務」を「義務」とすることや、国会の「事前関与」も必要だと訴えた。だが、法案修正には至らなかった。
5.30日の本会議で反対討論に立った立憲の吉川元氏は「想定されていないものを対象にどのように法律を作るのか。想定を超えた法案だ。これが許されるなら、どのような法律でも作ることが可能になる」と指摘。さらに「(指示権行使の要件が)極めてあいまい。時の内閣の恣意(しい)的な判断で自治体に指示を行う余地を残す」と指摘。指示権が乱用されれば、2000年の地方分権改革で「対等」になった国と地方の関係が「主従」に逆戻りするとの危機感を示した。共産党の宮本岳志氏も本会議で「憲法で保障された地方自治を根底から破壊する」と強く非難した。今後、審議の場は参院に移るが、6月中旬にも与野党の賛成多数で成立する見通しだ。(千葉卓朗)
(https://digital.asahi.com/articles/ASS5Z32BMS5ZUQIP01JM.html?pn=4&unlock=1#continuehere 参照)

 また、朝日新聞は2024年5月21日、識者の声として衆院での参考に質疑の様子を、「国→地方の「指示権」必要? 地方自治法改正案、衆院で参考人質疑」(千葉卓朗)」、と報じた。
1.大規模災害や感染症の大流行など非常事態に国が自治体に具体的な対応を指示できるようにする地方自治法改正案についての参考人質疑が21日、衆院総務委員会で開かれ、大学教授や知事ら5人が出席した。国から地方に対する「指示権」を巡って賛否が割れた。
2.この日は、新たな指示権の必要性を示す「立法事実」があるかが主な論点となった。3.年12月に指示権の創設を岸田文雄首相に答申した「地方制度調査会」専門小委員会委員長の山本隆司・東大大学院教授は、コロナ禍を例に挙げ「個別法で規定された指示ではカバーできない事態が発生した」と説明。「想定外」の事態に備え、「個別法を改正するまでの応急的対応のための一般的な制度」として必要と主張した。
4.これに対し、中央大の礒崎初仁教授は「立法事実はない」と真っ向から反論した。コロナ禍で起きた大型客船の感染拡大では「想定外」の事態が発生したが、「(国と自治体が)法の枠組みを超えて対応した」と指摘。「想定外の事態が起こるから指示権が必要というのは乱暴な議論」と批判した。
5.改正案では、新たな指示権の行使は、個別法では対応できない「国民の生命等の保護のために特に必要な場合」に限るとする。しかし、政府は指示権行使が想定される具体的な事態を示していない。専修大名誉教授で弁護士の白藤博行氏は「非常時」の概念があいまいだとし、「(国に対する)白紙委任に近い。要件と効果を定めようとする行政法の世界では想定しがたい」と、指示権乱用への懸念を示した。
6.中央大の礒崎氏は、指示権行使が想定される具体的な事態として「放射性廃棄物の保管や処理を巡って、国と自治体が対立する」ケースを例示。「こうしたケースほど合意形成の努力が必要で、指示権を行使して、地域を黙らせるべきではない」と主張した。
7.国の指示を受ける自治体側からは、全国知事会長の村井嘉浩・宮城県知事が参考人として出席。「(地方の)自主性、自律性という観点から望ましいものではない」としつつ、「指示を含め、(非常時における)国と地方の関係について、法律上明確化することは必要だ」と理解を示した。その上で、指示の前に自治体側と十分協議することや指示の範囲を必要最小限にとどめることを求めた。(千葉卓朗)
(https://digital.asahi.com/articles/ASS5P3FZQS5PULFA00CM.html?pn=4&unlock=1#continuehere 参照)

 この衆議院での可決に関する社説・論説は次のもの。

(2024年05月30日)
京都新聞社説-自治体への指示 国の権限拡大は撤回を-
(2024年05月31日)
琉球新報社説-地自法指示権拡大 自治介入の懸念拭えない-
毎日新聞社説-「国の指示権」拡大法案 疑問置き去りの衆院通過-
中国新聞社説-国の指示権拡大、衆院通過 参院で問題点洗い出せ-
高知新聞社説-【国の指示権拡大】なぜ必要か説得力欠く-
愛媛新聞社説-自治法改正案 国と地方の対等な関係ゆがめる-
北海道新聞社説-「指示権」の法案 疑問尽きぬ衆院通過だ-
山陽新聞社説-国の指示権拡大 改正の必要性が見えない-
中国新聞社説-国の指示権拡大、衆院通過 参院で問題点洗い出せ-
琉球新報社説-地自法指示権拡大 自治介入の懸念拭えない-

 今回は、京都新聞社説(「自治体への指示 国の権限拡大は撤回を」-2024年5月30日)で、この問題を掘り下げる。
 京都新聞は最初に、この改正について「なぜ国の『強権』が必要なのか。政府が明確な根拠を示せないまま国会審議が進んでいる。地方分権の流れを逆行させる懸念が強まるばかりだ。」、と突きつける。
 では、「規模災害などの非常時に、国が自治体に指示する権限を拡大する地方自治法改正案を衆院総務委員会が可決した。与党に加え日本維新の会などが賛成し、きょうにも衆院を通過する見通しだ。」、との状況下で、何が問題であるとしているのか。
1.大規模災害などの非常時に、国が自治体に指示する権限を拡大する地方自治法改正案を衆院総務委員会が可決した。与党に加え日本維新の会などが賛成し、きょうにも衆院を通過する見通しだ。
2.改正案では「国民の生命等の保護のため特に必要な場合」に、該当する個別法がなくとも閣議決定だけで指示できるとしている。
3.災害対策基本法や感染症法など、国が自治体に指示や命令ができる法律の枠組みでは対応できない「想定外」に備える改正という。
4.しかし、衆院審議で松本剛明総務相は、既存の法律で対応できない事例を野党に問われ、「現時点で想定し得るものはない」とし、曖昧な答弁に終始した。
 この上で、「法改正の根拠となる『立法事実』すら示せないのでは、必要性は根底から疑われる。国と地方は『対等』とする自治の基本理念を覆す改正法案の撤回を求めたい。」、と断じる。
 さらに、起用と新聞は、批判を加える。
1.極めて問題なのは、国民の安全に重大な影響を及ぼす事態の「おそれ」の段階で、指示を可能としている点だ。自治体には事前に意見を聞くとはいえ、政府が恣意(しい)的に運用する恐れが拭えない。
2.全国知事会長の村井嘉浩宮城県知事は参考人質疑で反対を明言はしなかったが、将来的な拡大解釈への懸念を示した。
3.衆院委では法案を修正して指示権行使後の国会報告を義務付けたが、事後の確認でしかない。自治体との事前協議は盛り込まれず、付帯決議にとどまった。歯止めとしての実効性は不十分だ。
4.政府が指示権拡大に動いたのは、新型コロナウイルス禍で患者の搬送先の確保などを巡り、国と自治体の間に行き違いが相次いだ反省からとしている。だが、コロナ禍での一斉休校要請や「アベノマスク」の配布が浮き彫りにしたのは、現場を顧みない国の一方的な指図が、自治体対応の混乱と無駄、目詰まりを招いたという教訓である。前例のない事態でこそ国と地方が協力し、最善の策を探るべきではないのか。
 京都新聞は最後に、「地方の不安を軽視し、統制を強める手法は、沖縄の米軍基地の辺野古移設や『マイナ保険証』の導入を強行する岸田文雄政権の姿勢に通底する。国と地方が『主従』に後戻りしかねないという危機感を持ち、自治体はもっと声を上げるべきだ。」、と日本全国に強く求める。
(https://nordot.app/1168824503564845087?c=39546741839462401 参照)


 第一に確認することは、今回の法改正では「根拠となる『立法事実』すら示せない」(京都新聞)、ということ。
 また、このような「地方の不安を軽視し、統制を強める手法」(京都新聞)は、まさしく「沖縄の米軍基地の辺野古移設や『マイナ保険証』の導入を強行する岸田文雄政権の姿勢に通底する。」ものであり、「国と地方が『主従』に後戻りしかねないと」状況を作り出すものである。


by asyagi-df-2014 | 2024-06-30 18:55 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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