人気ブログランキング | 話題のタグを見る

地方自治法の改定を考える。-国の指示権拡大-(2)

 国の自治体に対する「指示権」を拡大する地方自治法改正案が、2024年5月14日、衆院総務委員会で実質審議入りした。
 朝日新聞は、2023年11月27日の社説で、「国が間違うこともある。人材や財源面で国が地方を支えることこそ必要だ――それがコロナ禍の教訓だった。自治体が国に依存する社会は望ましくない。行政に住民の意思が反映されなくなれば、民主主義は壊れてしまう。」、と指摘していた。

 この問題に関する、2024年5月24日までの社説・論説は次のもの。

(2024年3月5日)
琉球新報社説-地方自治法改正案 国の「指示権」拡大は危険-
(2024年4月2日)
沖縄タイムス社説-国の「指示権」強化 地方分権 後退させるな-
(2024年4月5日)
東京新聞社説-国の指示権拡大 地方自治を後退させる-
(2024年4月22日)
毎日新聞社説-国の地方への指示権 拡大する必要性が見えぬ-
(2024年5月1日)
秋田魁新報社説-国の指示権拡大 地方自治尊重し議論を-
(2024年5月15日)
北海道新聞社説-国の指示権拡大 対等な関係壊す危うさ-
(2024年5月17日)
西日本新聞社説-国の指示権 根拠なき拡大認められぬ-
(2024年5月18日)
朝日新聞社説-国の指示権 地方の危機感が見えぬ-2024年5月18日-
(2024年5月22日)
神戸新聞社説-国の指示権拡大/地方自治をゆがめる懸念-
(2024年5月24日)
信濃毎日新聞社説-自治法の改定案 国の指示権は認められぬ-

 一方、これまで沖縄県は、「構造的沖縄差別」のなかで、常に負わされてきた状況を告発してきた。
 この視点から、この問題を捉え直す。

 琉球新報は(「地方自治法改正案 国の『指示権』拡大は危険」-2024年03月05日)及び沖縄タイムスは(「国の『指示権』強化 地方分権 後退させるな」-2024年4月2日)、と社説で論評した。
この二社の社説は以下のもの。

(1)琉球新報社説-地方自治法改正案 国の「指示権」拡大は危険-2024年03月05日

 琉球新報は、その姿勢を、「政府は、国と地方自治体の関係の基本ルールを覆す地方自治法改正案を国会に提出した。自治体の自由度が高い『自治事務』にまで国の『指示権』を拡大する。国と自治体の関係を『上下・主従』から『対等・協力』に変えた地方分権改革を完全に無にするものだ。憲法の定める地方自治の本旨を否定する改正に反対する。」、と最初に明確にする。
 琉球新報による問題点の具体的な指摘。
1.改正案は「大規模な災害、感染症のまん延その他の及ぼす被害の程度において、これらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」に対する「特例」として、国が閣議決定を経て「補充的な指示」をできるとしている。要件が極めてあいまいであり、乱用が懸念される。
2.改正案は法定受託事務と自治事務を区別していない。
1.2000年に施行された地方分権一括法で「機関委任事務」が廃止され、国が自治体にゆだねる「法定受託事務」と「自治事務」が定められた。法定受託事務について自治体側に違法などがあれば国は「是正の指示」ができ、最終的に訴訟を経て国が代執行できる。自治事務については「是正の要求」にとどまるが、災害対策基本法や感染症法など個別法で国の指示権を定めることができる。必要なら個別法を改正すればいい。
4.法改正を求めた昨年12月の地方制度調査会の答申は、新型コロナの感染症危機で「さまざまな局面において従来の法制で想定されていなかった事態が相次いだ」とする。自治体から感染動向の情報が迅速に提供されないとか、国から大量に発出された通知に現場が対応できなかったとか、営業時間制限で都道府県との調整が難航したなどの事例を挙げた。5.これは、政府と自治体双方の対策の不備が原因ではないか。実際に動くのは自治体の現場だ。国の指示で解決できるとは思えない。
6.日本弁護士連合会(日弁連)は1月に改正に反対する意見書を発表し「自治体の方が多くの情報を把握しており、国の判断に従うよう義務づけるのは誤りだ」と断じた。「日本の災害法制は基本的な災害対応自治体を市町村とした上で、その規模等に応じて、都道府県の関与、国の関与を可能とし、それぞれの責務や権限等を定めている」とし、感染症問題も含め「答申では、法制度、事実の両面において、十分な分析検証が行われたとは到底言えない」と批判した。
7.礒崎初仁中央大教授も「地方自治法は本来、国と自治体の役割分担を守るための法律で、非常時の対応は個別の法律で定めるべきだ。コロナ禍を振り返っても、現場から遠い国が強権的に指示しても混乱するだけだ」と述べる。
 琉球新報は、最後に、常に沖縄県としての自己決定権を奪われ続けてきた視点から、「沖縄県は辺野古新基地を巡り、設計変更承認が法定受託事務だとして史上初めて代執行を強行された。国の強権をさらに肥大化させ、自治をないがしろにしかねない法改正は決して受け入れられない。」、と突きつける。
(https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-2869817.html 参照)

 今回の地方自治法の問題の問題の核心について、琉球新報から受け取ること。
1.「自治体の自由度が高い『自治事務』にまで国の『指示権』を拡大する」こと。
2.「国と自治体の関係を『上下・主従』から『対等・協力』に変えた地方分権改革を完全に無にするもの」であること。
3.「憲法の定める地方自治の本旨を否定する改正」であること。

(2)沖縄タイムス社説-国の「指示権」強化 地方分権 後退させるな-2024年4月2日
 沖縄タイムスによる状況の把握。
1.自治体に対する国の権限を強化する地方自治法改正案が今月にも国会で審議入りする。
2.改正案は、大規模な災害や感染症のまん延などによって「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」が起きたことを想定したものだ。新型コロナ禍で国や自治体の業務が混乱した苦い経験を踏まえ、自治体に対する国の「指示権」を地方自治法の中に新たに盛り込んだ。
3.指示権とは、国が必要な事務処理などを指示できる権限のこと。
4.国は今でも感染症法などの個別法に基づいて指示権を発動することができるが、個別法に規定がなくても、必要な対応を自治体に指示し、国の意向に従わせることができるようにする。それが法改正の大きな特徴だ。
5.2000年の地方分権一括法によって国と地方の関係は「上下・主従」から「対等・協力」に改められた。
6.国による指示権の拡充によって分権改革の成果が骨抜きにされ、再び「上下・主従」の関係に逆戻りする懸念が拭えない。 
 このことに加えて、この改正が現在の沖縄・南西諸島の「軍事拠点化」を推進する役割を果たす危険性について指摘する。
1.「台湾有事」を巡る政府の対応に沖縄の自治体を従わせる際の法的な根拠にもなりかねない。それが決して杞憂(きゆう)だと言えないのは、指示権の適用対象が具体的に明示されていないからだ。
2.「台湾有事」を想定した社会の軍事化が急速に進む沖縄で、民意が軽視され、地方自治が骨抜きにされる事態が相次いでいる。改正案への懸念は尽きない。

■    ■
 最後に、沖縄タイムスは、今回の改正に、
1.国が自治体に委ねた「法定受託事務」だけでなく、自治体が責任を持つ「自治事務」にも幅広く指示権行使の網をかぶせた。 
2.全国知事会は今年1月、「国と自治体の対等関係が損なわれる恐れもある」として安易に指示権を発動できない仕組みを総務省に求めた。
3.非常時の対応は個別の法律で定めるべきである。
4.必要なことは「対等・協力」の関係を深化させ、さまざまな事態に適切に対応することであって、国による指示権を強化して「上下・主従」の関係を復活させることではない。
5.明治憲法に地方自治に関する章はなく、「官治・集権型」の政治行政が日本全体を覆い尽くした。 戦後、新憲法に地方自治制度が明記されたことで「自治・分権型」の政治行政が定着した。地方分権改革はその目に見える成果であり、後戻りさせてはならない。
6.気候変動や大規模災害に象徴されるように、一昔前には考えられなかったような事態が世界的に多発していることは確かだ。だからといって、なぜ、災害対策基本法や感染症法などの個別法を充実させるのではなく、一般法である地方自治法に手を付けるのか。
7.辺野古の新基地建設に伴う代執行は、過去に前例がない。代執行が可能になったのは地方自治法改正によって国の関与を定めたためだ。
 だから、「代執行と指示権強化は、国と地方の対等な関係を根本から突き崩す。」、と。
(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1335447 参照)


 今回の地方自治法の問題の問題の核心について、琉球新報及び沖縄タイムスから受け取ること。
1.「自治体の自由度が高い『自治事務』にまで国の『指示権』を拡大する」こと。
2.2000年の地方分権一括法によって国と地方の関係について、「国と自治体の関係を『上下・主従』から『対等・協力』に変えた地方分権改革を完全に無にするもの」であること。
3.日本国健保で謳われた「地方自治の本旨を否定する改正」であること。
4.指示権の適用対象が具体的に明示されていないことは、「『台湾有事』を巡る政府の対応に沖縄の自治体を従わせる際の法的な根拠にもなりかねない」こと。



by asyagi-df-2014 | 2024-06-28 19:35 | 書くことから-憲法 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人