認知症を考える。(2)-「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」
2024年 06月 23日
「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」は、2023年6月14日成立、2023年6月16日公布、2024年1月1日に施行された。
認知症の人を含めた共生社会(「認知症の人を含めた国民一人一人がその個性と能力を十分に発揮し、相互に人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生する活力ある社会の実現進-内閣府)をどのように実現していくのかが鍵となる。
具体的には、「政府は、秋ごろまでに認知症施策推進基本計画を取りまとめ、閣議決定する予定。その後、都道府県や市町村ごとに計画を作成し、取り組みを進める。」(朝日新聞)、とされている。
また、厚労省によるは認知症の推計は、次の様になっている
1.「2060年時点で、65歳以上の人のうち645万人(17・7%)が認知症となり、認知症の前段階『軽度認知障害(MCI)=キーワード』の人も632万人(17・4%)まで増えるとする推計を厚生労働省が公表した。認知症とMCIをあわせると、65歳以上のおよそ3人に1人が認知機能にかかわる症状があることになる。」(朝日新聞)
2.「認知症とMCIをあわせると、65歳以上のおよそ3人に1人が認知機能にかかわる症状があることになる。」(朝日新聞)
今回は、認知症基本法のことを押さえる。
「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」の概要について、内閣は、次の様に示している。なお、下線や太字は筆者による。
「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」の概要(内閣府)
1.目的
認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができるよう、認知症施策を総合的かつ計画的に推進
⇒ 認知症の人を含めた国民一人一人がその個性と能力を十分に発揮し、相互に人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生する活力ある社会(=共生社会)の実現を推進
~共生社会の実現の推進という目的に向け、基本理念等に基づき認知症施策を国・地方が一体となって講じていく~
2.基本理念
認知症施策は、認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができるよう、①~⑦を基本理念として行う。
① 全ての認知症の人が、基本的人権を享有する個人として、自らの意思によって日常生活及び社会生活を営むことができる。
② 国民が、共生社会の実現を推進するために必要な認知症に関する正しい知識及び認知症の人に関する正しい理解を深めることができる。
③ 認知症の人にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるものを除去することにより、全ての認知症の人が、社会の対等な構成員として、地域において安全にかつ安心して自立した日常生活を営むことができるとともに、自己に直接関係する事項に関して意見を表明する機会及び社会のあらゆる分野における活動に参画する機会の確保を通じてその個性と能力を十分に発揮することができる。
④ 認知症の人の意向を十分に尊重しつつ、良質かつ適切な保健医療サービス及び福祉サービスが切れ目なく提供される。
⑤ 認知症の人のみならず家族等に対する支援により、認知症の人及び家族等が地域において安心して日常生活を営むことができる。
⑥ 共生社会の実現に資する研究等を推進するとともに、認知症及び軽度の認知機能の障害に係る予防、診断及び治療並びにリハビリテーション及び介護方法、認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすための社会参加の在り方及び認知症の人が他の人々と支え合いながら共生することができる社会環境の整備その他の事項に関する科学的知見に基づく研究等の成果を広く国民が享受できる環境を整備。
⑦ 教育、地域づくり、雇用、保健、医療、福祉その他の各関連分野における総合的な取組として行われる。
3.国・地方公共団体等の責務等
国・地方公共団体は、基本理念にのっとり、認知症施策を策定・実施する責務を有する。
国民は、共生社会の実現を推進するために必要な認知症に関する正しい知識及び認知症の人に関する正しい理解を深め、共生社会の実現に寄与するよう努める。
政府は、認知症施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講ずる。
※その他保健医療・福祉サービス提供者、生活基盤サービス提供事業者の責務を規定
4.認知症施策推進基本計画等
政府は、認知症施策推進基本計画を策定(認知症の人及び家族等により構成される関係者会議の意見を聴く。)
都道府県・市町村は、それぞれ都道府県計画・市町村計画を策定(認知症の人及び家族等の意見を聴く。)(努力義務)
5.基本的施策
①【認知症の人に関する国民の理解の増進等】
国民が共生社会の実現の推進のために必要な認知症に関する正しい知識及び認知症の人に関する正しい理解を深められるようにする施策
②【認知症の人の生活におけるバリアフリー化の推進】
・認知症の人が自立して、かつ、安心して他の人々と共に暮らすことのできる安全な地域作りの推進のための施策
・認知症の人が自立した日常生活・社会生活を営むことができるようにするための施策
③【認知症の人の社会参加の機会の確保等】
・認知症の人が生きがいや希望を持って暮らすことができるようにするための施策
・若年性認知症の人(65歳未満で認知症となった者)その他の認知症の人の意欲及び能力に応じた雇用の継続、円滑な就職等に資する施策
④【認知症の人の意思決定の支援及び権利利益の保護】
認知症の人の意思決定の適切な支援及び権利利益の保護を図るための施策
⑤【保健医療サービス及び福祉サービスの提供体制の整備等】
・認知症の人がその居住する地域にかかわらず等しくその状況に応じた適切な医療を受けることができるための施策
・認知症の人に対し良質かつ適切な保健医療サービス及び福祉サービスを適時にかつ切れ目なく提供するための施策
・個々の認知症の人の状況に応じた良質かつ適切な保健医療サービス及び福祉サービスが提供されるための施策
⑥【相談体制の整備等】
・認知症の人又は家族等からの各種の相談に対し、個々の認知症の人の状況又は家族等の状況にそれぞれ配慮しつつ総合的に応ずることができるようにするために必要な体制の整備
・認知症の人又は家族等が孤立することがないようにするための施策
⑦【研究等の推進等】
・認知症の本態解明、予防、診断及び治療並びにリハビリテーション及び介護方法等の基礎研究及び臨床研究、成果の普及等
・認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすための社会参加の在り方、他の人々と支え合いながら共生できる社会環境の整備等の調査研究、成果の活用等
⑧【認知症の予防等】
・希望する者が科学的知見に基づく予防に取り組むことができるようにするための施策
・早期発見、早期診断及び早期対応の推進のための施策
※その他認知症施策の策定に必要な調査の実施、多様な主体の連携、地方公共団体に対する支援、国際協力
この認知症基本法の成立について、毎日新聞は2023年6月22日、「認知症基本法が成立 尊厳保ち暮らせる社会に」、と社説で論評した。
この社説で、認知症基本法の成立について押さえる。
毎日新聞による法成立の位置づけ。
1.認知症になっても自分らしく、安心して暮らせる。そうした社会の実現を目指し、国や自治体の取り組みを定めた認知症基本法が超党派の議員立法で成立した。
2.認知症の人が基本的人権を持つ個人として、自らの意思で生活を営めるようにすることを基本理念に掲げた。
3.社会参加の機会が確保され、保健医療・福祉サービスを切れ目なく受けられるよう国が計画を作る。自治体にも策定を促している。
4.従来の施策は発症の予防やバリアフリー化の推進などに力点が置かれていた。当事者や家族は尊厳を持って暮らせることを目的に明記した法律の制定を求めていた。
また、認知症めぐる現状について指摘する。
1.厚生労働省によると2025年には約700万人、65歳以上の5人に1人が認知症になると推計されている。だれもが発症する可能性があり、国を挙げて取り組まなければならない課題だ。
2.しかし、当事者を取り巻く現状は厳しい。
3.公的介護保険は、要介護度の低い人への生活支援サービスが縮小されており、認知症の人にも影響が出ている。ヘルパーの不足も深刻だ。
4.1人暮らしを支える見守りや外出の介助は不十分だ。当事者や家族同士の交流を促す「認知症カフェ」は、自治体によって開催頻度などにばらつきがある。閉じこもりがちになったり、孤立を深めたりすれば、社会とのつながりも薄れてしまう。
5.支援のネットワークを整えることも重要だ。厚労省の呼びかけで05年以降、企業や自治会などが認知症サポーターをのべ約1450万人養成してきたが、有効に活用できていない。
6.企業の果たす役割は大きい。65歳未満で発症する若年性認知症の人もいる。働き続けられるよう配慮が必要だ。介護しながら働く人への目配りも欠かせない。
7.「認知症になったら何もできなくなる」といった誤解や偏見をなくすことも大切だ。国民一人一人が病気に対する理解を深めることが求められる。
毎日新聞は、最後に、この法の成立を、「認知症の人が暮らしやすい社会はすべての人にとって暮らしやすいはずだ。そのための環境作りに基本法の精神を生かしていかなければならない。」、と位置づける。
(https://mainichi.jp/articles/20230622/ddm/005/070/086000c 参照)
確かに、「認知症の人が暮らしやすい社会はすべての人にとって暮らしやすいはずだ。そのための環境作りに基本法の精神を生かしていかなければならない。」(毎日新聞)、とすべての課題は集約されることになる。
by asyagi-df-2014
| 2024-06-23 19:19
| 持続可能な社会
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