沖縄県が2024年5月23日、沖縄防衛局から出されていたサンゴ類の特別採捕申請を条件付きで許可した。
2024年 06月 21日
沖縄県は、2024年5月23日、沖縄防衛局から出されていたサンゴ類の特別採捕申請を条件付きで許可した。
このことについて琉球新報及び沖縄タイムスは、次の様に報じた。
(1)琉球新報-大浦湾サンゴ移植着手 国、作業詳細は明らかにせず(池田哲平、明真南斗、新垣若菜)-2024年05月25日 05:00
1.【名護】米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、沖縄防衛局は24日、大浦湾側のサンゴ類約8万4千群体の移植作業に着手した。同日午後、作業員らが海に飛び込み、潜水作業をする様子が確認された。防衛局は移植作業の詳細を明らかにすることについて「作業の円滑な実施に影響を及ぼしかねない」とした。
2.同日午後1時35分ごろから「潜水調査中」の旗を掲げた船舶が工事区域のフロート内に進入し、同2時ごろから約2時間半、少なくとも3カ所で潜水作業が確認できた。県によると、24日に沖縄防衛局から「採捕に向けた調査をしている」と説明があった。
3.県は基地建設の設計変更申請を巡る代執行訴訟、サンゴ採捕を巡る訴訟でも4月に敗訴が確定し、今月23日に国による特別採捕(移植)を許可していた。今回の移植が完了すれば、この事業で防衛局が移植対象としているサンゴ類の移植が終わることになる。
4.県は採捕の許可条件として、移植先と移植元の状況など、詳細な情報を県に事前に報告するよう求めた。県担当者は24日の調査について「県が示した条件に反してはいない」とし、今後も詳細な報告を求めるという。防衛局は24日午後、県に今後の採捕計画書を提出した。
5.防衛省の茂木陽報道官は24日の記者会見で作業状況を問われ「自然環境や住民の生活環境にも十分に配慮しつつ、辺野古移設に向けた工事を着実に進めていきたい」と語った。防衛省担当者は25日以降の作業は「気象や海象などの条件が許す範囲で続けていく」と答えた。移植期間は12カ月を計画している。(池田哲平、明真南斗、新垣若菜)
(https://ryukyushimpo.jp/newspaper/entry-3122179.html 参照)
(2)沖縄タイムス-サンゴ移植 防衛局着手 新基地建設 大浦湾の8万4千群体(政経部・嘉良謙太朗、北部報道部・松田駿太)-2024年5月25日 3:59
1.名護市辺野古の新基地建設を巡り、沖縄防衛局は24日午後、大浦湾側のサンゴ類の移植を開始した。現場では午前中から移植に向けた準備をしているとみられる作業船の姿が確認された。防衛局は移植作業の詳細について「作業の円滑な実施に影響を及ぼしかねず、答えを差し控える」とコメントした。
2.移植するのは大浦湾側に生息するサンゴ類約8万4千群体。玉城知事が23日、詳細な移植作業計画や海水温など気象条件を約2週間ごとに報告すること-などの条件を付け、許可した。採捕期間は小型サンゴ類が1年、大型サンゴなどが8カ月となっている。
3.24日午後1時35分ごろ、複数の小型船が汀間漁港方面からオレンジのフロートで区切られている大浦湾の埋め立て海域に入った。
4.「潜水調査中」と書かれたのぼりを乗せた船には、黒のウエットスーツを着た作業員らが複数人乗船。午後4時前まで作業を続けた。
5.玉城デニー知事は24日の記者会見で、仮に条件に反する行為が行われた場合は「具体的な内容を確認し、まずは行政指導を行うことになる」との認識を示した。現時点では条件に違反する行為が行われていないとした。(政経部・嘉良謙太朗、北部報道部・松田駿太)
(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1365778 参照)
(3)沖縄タイムス-サンゴ移植に疑義 大浦湾の魅力喪失 半年間は様子見を 作業着手 市民ら批判」(社会部・勝浦大輔、塩入雄一郎、大野亨恭)-2024年5月25日 4:00
1.名護市辺野古の新基地建設で、県がサンゴ類移植の特別採捕許可申請を許可したことを受けて、沖縄防衛局は24日、大浦湾での移植作業に着手した。新基地建設に反対する市民や専門家からは移植の方法や効果への疑義とともに、政府と県の対応に批判の声が上がった。(社会部・勝浦大輔、塩入雄一郎、大野亨恭)
2.「これまでに移植したサンゴは生きているのか。まずはそれを確認すべきではなかったか」。グラスボートで大浦湾を案内している西原瑠夏さん(42)=名護市=は、移植を許可した県の対応に疑問を示す。
3.移植したサンゴの8割が死滅したのを専門家が確認したことを挙げ「今回の移植も同じ結果になることは国も分かっているはずだ」と指摘。世界的にも希少な大浦湾のサンゴは沖縄の財産だと強調し「死滅することは明らかで、腹立たしい」と憤った。
4.瀬嵩区長の西平伸さん(66)は「移植しても海への悪影響は止まらない。生物の種類が多い大浦湾の魅力がどんどん失われている」と言葉少な。「どうしたらいいかもう分からないが、ただ元の景色に戻してほしい」と願った。
5.日本自然保護協会の安部真理子主任は「移植は数百程度の群体で始め、半年間は様子を見るべきだ。なぜ大量の移植を急いで進めようとするのか。工事を急ごうとしているとしか思えない」と政府を批判した。
6.今年は南半球のグレートバリアリーフのサンゴで大量の白化が起きており、北半球でも起こる可能性が高いという。「海の様子がおかしい中、早急に進めるべきではない。サンゴの移植方法の検証もしっかり進めていくべきだ」と話した。
7.新基地建設を巡る抗告訴訟の控訴審判決で審理が地裁に差し戻され、実質審理の道が開けた原告の金城武政さん(67)=名護市辺野古=は移植作業の開始を残念がる。「やっと裁判で審議できるという段階なのに…。工事は一時停止してほしい。県は何が何でも抵抗してほしかった」と訴えた。
(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1365806 参照)
(4)沖縄タイムス-「一歩前進」「唐突だ」沖縄県の給食無償化、市町村の評価は二分 県は財源の確保が難航 中学生対象に費用を補助(政経部・國吉匠、社会部・新垣玲央、玉城日向子、中部報道部・又吉朝香)-2024年5月25日 4:20
1.玉城デニー知事は24日、選挙公約に掲げた学校給食費の無償化を巡り、中学生のいる世帯を対象に2分の1を補助する方針を示し、段階的に無償化の対象を拡充することも示唆した。「一歩前進」と評価する首長もいるが、無償化に必要な予算の半分は市町村が負担しなければならず、「唐突だ」と反発する声も上がった。(政経部・國吉匠、社会部・新垣玲央、玉城日向子、中部報道部・又吉朝香)
2.読谷村の石嶺傳實村長は「一歩前進だ」と評価。物価高の影響で食べ盛りの子を持つ家庭の負担が増えている状況を懸念しつつ「半分は県が持つが、読谷村でも単年度で1億円くらいの財源を捻出することになる。即答はできないが内部で検討する」とした。
3.県は当初、26年度の完全無償化を目指し、財源の確保を目指していた。県教育委員会は、給食費を無償化するための事業費は中学校で年間20億円、小学校は同38億円で計58億円が必要だと試算している。
4.一方、今回発表した中学生のいる世帯を対象とした給食費無償化の総事業費は20億円で、県の支出は半分の10億円となる。
5.限りある財源の中で実施可能な案をひねり出した形だが、根拠としたのは昨年度に実施した学校給食実態調査。「高校進学のために必要な費用」の負担が大きいと感じる割合について、中学生のいる世帯が多かったことを理由に挙げているが、分かりにくいとの指摘もある。
6.浦添市の松本哲治市長は、負担を強いる市町村との調整もないままの突然の発表に憤り「無償化できない市町村は『おたくの市町村が(負担)できないと言っているからですよ』と県に責任転嫁されかねない。踏み絵にするようなやり方で到底納得できない」と強く批判した。
7.別の保守系首長は「唐突で寝耳に水だ。合意形成が取れていない中での発表は選挙対策だ」と指摘。「県独自の施策であるにもかかわらず、二分の一の負担を市町村に求めるのはおかしい」と首をかしげた。
(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1365777 参照)
今回の沖縄県の処置をどの様に捉えることができるのか。
このことに関して、琉球新報及び沖縄タイムスは2024年5月25日付で、社説で論評した。
この両社の社説で、このことを考える。
(1)琉球新報社説-大浦湾サンゴ移植 保全無理なら作業やめよ-
まずは、琉球新報による経過の確認。
1.米軍普天間飛行場の移設に伴う辺野古新基地建設で沖縄防衛局は24日、大浦湾側に生息するサンゴ類約8万4千群体の特別採捕(移植)に向けた作業に着手した。
2.沖縄防衛局による2022年7月のサンゴ特別採捕申請の許可を求める政府の「指示」に従い、県は23日にサンゴ採捕を許可した。
2.許可に際し、県は(1)移植作業に係る詳細の報告(2)海水温などの海象条件および作業状況の2週間ごとの報告―の条件を付している。
4.サンゴ移植を巡る訴訟で県敗訴が確定しており、今回の許可は判決の結果に従ったものだ。玉城デニー知事は「辺野古新基地建設に反対する立場はいささかも変わるものではない」としている。
この上で、琉球新報は、沖縄県及び日本政府に次のことを求める。
1.新基地反対の姿勢を堅持するならば二つの条件を防衛局に厳守させなければならない。2.さらに移植によってサンゴが保全できるのか厳しく監視する必要がある。
3.環境省による検証作業も求められよう。
4.サンゴ保全は不可能だと判断されれば、ただちに県は移植作業の中止を求めるべきだ。無論、国もサンゴ移植作業をやめ、大浦湾埋め立て工事も中止すべきだ。
しかし、琉球新報は、「そもそも、移植によって大浦湾の豊かなサンゴを守ることができるのか。」、と根本的な疑問を投げかける。
どういうことなのか。
1.沖縄防衛局が18年に辺野古沿岸部から移植した絶滅危惧種オキナワハマサンゴ9群体のうち7群体は死滅していることが、新基地建設工事で有識者から助言を得る環境監視等委員会で報告されている。
2.1年7月から22年3月にかけて辺野古崎から大浦湾沖合に移植した小型サンゴ類の状態を調査した日本自然保護協会も「移植に成功している群体がある一方で、多くの群体は死滅した部分がある」と指摘し、「成功しているとは到底考えられない」と断じた。研究者も移植によるサンゴ保全を進める防衛局の姿勢を疑問視している。
3.これまでのサンゴ移植の実態を直視するならば、移植によるサンゴ保全は極めて困難だと言わざるを得ない。それにもかかわらず、政府はサンゴ移植に先行して大浦湾側の工事を進めている。沖縄防衛局は「サンゴ類の生息環境は維持される」という想定結果を示しているが、無謀な工事ではないか。
4.このような環境軽視の姿勢はジュゴンに関しても当てはまる。沖縄防衛局は20年にジュゴンの鳴き声らしき音声が検出されたことを受けて実施してきた追加調査を終了し、生息状況調査のみに縮小する。環境監視等委員会はこの方針に同意した。しかし、22年に県が実施した調査で久志沿岸部でみつかったふんからジュゴンのDNAが検出されており、調査縮小は早計である。
最後に、琉球新報は、こう締める。
「国は本気で大浦湾の環境保全を考えているのか極めて疑問である。サンゴやジュゴンの保護を度外視した工事強行は許されない。もちろん、抜本的な環境保全策は新基地建設の断念である。」
(https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-3121890.html 参照)
(2)沖縄タイムス社説-辺野古サンゴ採捕 移植は解決にならない-
沖縄タイムスは、最初に、「サンゴ礁の保全・再生に移植がどの程度、寄与するのか、実はまだよく分かっていない。埋め立てに伴ってサンゴを別の場所に移植すれば環境保全措置が講じられたことになるのか。移植の実態検証が必要だ。」、と押さえる。
沖縄タイムスによる経過の確認。
1.名護市辺野古の新基地建設を巡り、県は23日、沖縄防衛局から出されていたサンゴ類の特別採捕申請を条件付きで許可した。
2.最高裁で4月、県の敗訴が確定したことを受けた措置。防衛局は昨日、移植作業に着手した。
3.採捕とは自然の状態にある水産動植物を採取することである。大浦湾側にあるサンゴ類を採取して別の場所に移植し、軟弱地盤の広がる海の埋め立てに着手する計画だ。
4.対象になっているのは小型サンゴ類約8万4千群体とショウガサンゴ8群体、大型サンゴ類21群体。
5.許可に当たって県は、適切な移植時期の選定や詳細な移植作業計画の報告などの条件を付けた。
6.県は2021年7月にも、別の地点に生息するおよそ4万群体のサンゴ類の採捕を許可している。サンゴの生存率を高めるため台風や夏の高水温期、繁殖期を避けるとの条件を付けて。
7.だが防衛局は移植を許可した翌日の7月29日、条件を無視して移植を開始、両者の対立が深まった。
この上で、沖縄タイムスは、「移植後のサンゴの生存率が必ずしも高くないだけに、移植条件を順守しているかどうか、継続して監視していくことが必要だ。」、と指摘する。
特に、沖縄タイムスは、大浦湾一帯の生物多様性の危機に関して指摘する。
1.海洋学者らが進めるプロジェクトで辺野古・大浦湾一帯は、豊かな生物多様性を誇る日本初の「ホープスポット」(希望の海)と認定された。
2.大浦湾で確認されている生き物は5千種以上。絶滅危惧主も200種を優に超える。
3.今回、政府は約8万4千群体の移植を進める計画だが、どういう方法で、どういう場所に移植するのか。
4.移植したサンゴの生存率はサンゴの種類や植えた場所、移植したときの海水温などに左右されるため一概には言えないが、決して高くはない。
5.自然保護団体などの不信感を招いているのは、国の環境監視等委員会と、委員ではない専門家の評価が、大きくかけ離れていることだ。
6.国の監視委の評価は、国の開発行為に対して甘くなりがちで、移植が成功したかどうかの判断も国寄りの場合が多い。
7.監視委の公開性・客観性・厳密性を高めることなしに、信頼を回復するのは難しい。
最後に、沖縄タイムスは、辺野古新基地建設の環境面からの問題点について言及する。
1.新基地建設は、環境保全の面でも工期・工費の面でも軍事合理性という点でも、多くの疑問符が付いている。
2.国はこれまで、県の指摘を見解の相違だとして無視し、埋め立て工事を強行してきた。
3.代執行という前例のない強引な手法で、民意に反して大浦湾の「宝の海」をつぶす。これ以上、理不尽な政策はない。
4.サンゴの移植が埋め立てを正当化するために使われ、免罪符として利用されるようなことがあってはならない。
(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1365724 参照 2024年5月25日)
まずは、琉球新報の指摘から、次のことを確認する。
1.防衛局が、二つの条件(①移植作業に係る詳細の報告、②海水温などの海象条件および作業状況の2週間ごとの報告)を厳守しているかどうかを確認すること。
2.さらに移植によってサンゴが保全できるのか厳しく監視する必要があること。
2.環境省による検証作業を求めること。
3.サンゴ保全は不可能だと判断されれば、ただちに県に移植作業の中止を求めること。4.この場合、国にもサンゴ移植作業の中止を求めること。
5.さらに、大浦湾埋め立て工事の中止をさせること。
確かに、沖縄タイムスが指摘する様に、「代執行」という手法で大浦湾の「宝の海」をつぶす手法を踏襲して、今回もまた「サンゴの移植が埋め立てを正当化」(沖縄タイムス)するために、防衛局のサンゴの移植作業が行われることになった。
どう考えても、新基地建設の断念しかない。
by asyagi-df-2014
| 2024-06-21 19:34
| 安全保障
|
Comments(0)

