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名古屋地裁は、2023年5月30日、同性婚を認めていない民法や戸籍法の規定は、日本国憲法日本国憲法24条1項及び14条1項に違反と判断。(1)

 名古屋地裁は、2023年5月30日、同性婚を認めていない民法や戸籍法の規定は日本国憲法に違反するとの判断を示した。

 どういう内容の判決であったのか。
 以下、朝日新聞(以下、「朝日」)の記事で見る。

 「朝日」は2023年5月31日、「同性婚認めぬは違憲、2例目 『個人の尊厳』でも認定 国の賠償は認めず 名古屋地裁判決」(高橋俊成、前川浩之)、と次のように報じた。
1.同性どうしの結婚(同性婚)を認めていない民法や戸籍法の規定は憲法に違反するとして、愛知県内の同性カップルが国に損害賠償を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は30日、違憲との判断を示した。西村修裁判長は「法律婚から同性カップルを排除することは合理性を欠く」などと述べた。国会が立法措置を怠ったとまでは認めず、原告の請求は棄却した。
2.同種訴訟での違憲判断は2021年3月の札幌地裁に続いて2例目。憲法14条違反だけではなく、同24条2項違反も認定したのは初めて。
3.判決は、民法などの規定が「婚姻や家族に関する法は個人の尊厳に立脚すべきだ」との憲法24条2項に違反するかについて検討。同性カップルが置かれている状況について「法律婚に付与されている重大な人格的利益から排除されている」と指摘した。
4.その上で、こうした状況を放置することは「個人の尊厳の要請に照らして合理性を欠く」と判断。同性カップルの関係について「国の制度によって公証し、保護する枠組みすら与えていない」とし、同項に違反するとした。
5.民法などの規定が「法の下の平等」を定めた憲法14条に反するとも認定。その理由として、同性カップルについて「性的指向という自ら選択・修正できない事柄を理由として、婚姻に直接的な制約を課されている」としたうえで、差別的な取り扱いを受けていると結論づけた。
6.原告は、婚姻の自由を保障した憲法24条1項にも違反すると主張していた。だが判決は、同項の「両性の合意のみに基づく」の表現は異性間の婚姻を指すと指摘。社会情勢の変化などを踏まえてもこの判断を覆せないとして、これを退けた。
7.同種訴訟は全国5地裁で起こされ、今回の判決は4件目。これまで、札幌は「違憲」、22年の大阪は「合憲」、同年の東京は「違憲状態」と判断は分かれていた。(高橋俊成、前川浩之)
(https://digital.asahi.com/articles/DA3S15650169.html?unlock=1#continuehere 参照 2023年6月2日)

 また、この名古屋地裁の判決要旨について同日、次のように報じている。
1.同性婚が認められないことを「違憲」と判断した30日の名古屋地裁判決の要旨は次の通り。
(憲法24条1項(婚姻の自由)に違反するか)
1.24条1項は、婚姻は「両性」の合意のみに基づき、成立すると規定する。憲法制定当時、同性間に法律婚を及ぼすことを要請されていたとは解し難い。
2.その後、多数の諸外国で同性婚制度が導入され、我が国でも地方自治体の登録パートナーシップ制度の導入が進み、同性婚の法制化を求める声が上がるなど社会情勢が変化している。
3.24条の主眼は、明治民法下の家制度を改め、婚姻を含む家族生活について民主主義の基本原理である個人の尊厳と両性の本質的平等の原則を定めたところにあった。同条が同性間に法律婚を及ぼすことを禁止しているとは解されない。
4.同性カップルにいかなる保護を付与する制度を構築するのかは、現行の法律婚制度とは別の規律を設けることもありうる。同性婚を肯定している国でも、パートナーシップ制度などを先行させ、後に同性婚制度に移行または併存させるなど、制定過程は様々だ。社会情勢の変化を考慮しても、憲法が一義的に同性間に法律婚を及ぼすことを要請するとは解し難い。したがって、24条1項に違反するとはいえない。
(憲法24条2項(個人の尊厳と両性の本質的平等)に違反するか)
1.法律婚を利用できることが重大な法的利益であることは疑いの余地がない。同性カップルは自然生殖の可能性がないという点を除けば、異性カップルと何ら異なるところはない。
2.性的指向及び性自認は、医学心理学上、人生の初期または出生前に決定されている。自らの意思や精神医学的な療法によって変更されないにもかかわらず、法的利益を享受できない状態に陥っており、同性カップルと異性カップルとの間に、著しい乖離(かいり)が生じている。
3.婚姻の本質は真摯な意思で共同生活を営むことにあり、その価値は人の尊厳に由来し、重要な人格的利益だ。人格的利益を実現する法律婚制度は、両当事者の関係が正当だと社会的に承認されることが欠かせない。
4.現行制度は、歴史的な伝統的家族観に根差すもので、それ自体合理性を有する。しかし、婚姻の意義は、単に生殖と子の保護・育成のみにあるわけではなく、親密な関係に基づき永続性をもった生活共同体を構成することが、人生に充実をもたらす極めて重要な意義を有する。家族の多様化が指摘されており、伝統的な家族観が唯一絶対のものではなくなっている。
5.同性愛を精神的病理であるとする見解は、20世紀後半ごろには否定され、性的指向は障害ではないとの知見が確立している。現在までに28カ国が同性婚制度を導入している。
6.我が国でも多数の地方自治体が登録パートナーシップ制度を導入し、2018(平成30)年以降の意識調査では、同性婚の賛成派が約6割半に及ぶものや、贅成派が男性の約7割、女性の9割弱を占める結果もある。
7.同性カップルは、その関係が公証されず、保護するのにふさわしい効果の付与を受けるための枠組みすら与えられない甚大な不利益を被っており、結婚契約など公正証書を締結するなどしても解消できない。
8.立法は国の伝統や国民感情などを踏まえ、全体の規律を見据えた総合的な判断を要する。しかし、同性カップルが国の制度によって公証されたとしても、国民が被る具体的な不利益は想定し難い。地方自治体の登録パートナーシップ制度導入の増加により弊害が生じたという証拠はなく、伝統的家族観を重視する国民との間でも、共存する道を探ることはできる。
9.同性カップルが法律婚による重大な人格的利益を享受することから一切排除されていることに疑問が生じている。現状を放置することは、個人の尊厳の要請に照らして合理性を欠き、国会の立法裁量の範囲を超えるものとみざるを得ない。
10.24条2項に違反する。
(憲法14条1項(法の下の平等)に違反するか)
1.14条1項は、法の下の平等を定めている。
2.性的指向が向き合う者同士の婚姻をもって初めて本質を伴った婚姻といえる。
3.同性愛者にとって同性との婚姻が認められないのは、婚姻が認められないのと同義で、性的指向による別異取り扱いに他ならない。
4.国会の立法裁量の範囲を超えるものとみざるを得ず、14条1項にも違反する。
(https://digital.asahi.com/articles/DA3S15650150.html?pn=6&unlock=1#continuehere 参照 2023年6月2日)

 「24条2項に違反する。」
 「14条1項にも違反する。」
 今回の名古屋地裁の判決は、日本国憲法24条1項及び14条1項に違反する、と明確に示した。

 あわせて、「朝日」は同日、「結婚の自由、確かな前進 原告側「現状放置許されない」 名古屋地裁判決 同性婚訴訟」(奈良美里、良永うめか、杉原里美、松浦祥子、中山直樹、石垣明真)、と関係者の声を次のように報じている。
1.同性婚を認めないことは憲法に違反する――。30日の名古屋地裁判決は先行した札幌地裁より違憲性に強く踏み込んだ司法判断となった。「同性カップルに対する保護がなされない影響は深刻」などと、国に強く対応を促すものとなった。
2.判決後の記者会見で、弁護団の堀江哲史弁護士は「私たちが主張してきたことを丁寧に拾ってくれた」と評価した。
3.この日の判決は、先行した東京地裁判決と同じく、婚姻や家族に関する立法のあり方を定めた憲法24条2項に着目。東京地裁は同性カップルが家族になる法制度がない現状を「違憲状態」と指摘したものの、「違憲」とは認めなかった。だが、名古屋地裁は踏み込んだ。同性カップルには、「国の制度により公証され、その関係を保護する枠組みすら与えられていない」と指摘。国が現状を放置することについて「個人の尊厳の要請に照らして合理性を欠く」として「違憲」と判断した。
4.先行した札幌地裁判決は同項について「合憲」としつつ、法の下の平等を定めた憲法14条については「違憲」と判断。名古屋地裁判決はいずれも「違憲」とした。弁護団は「同性どうしのカップルが、公的に夫婦になっても社会に弊害がないことをはっきり正面から審査してくれた」とした。
5.「国会は現状を放置することは許されない点を強く自覚し、(民法などの)改正に直ちに着手しなければならない」とも訴えた。
6.会見で原告の鷹見彰一さん=仮名=が「皆さんと一緒にたたかってきた裁判」と話すと、支援者から大きな拍手が起きた。鷹見さんはパートナーで原告の大野利政さん=仮名=のメッセージを読み上げた。「世論が大きく変わっている今、この判決が後押しとなり、スタートラインが見えてきたように感じる」(奈良美里、良永うめか)
(「今までで一番いい判決」)
1.同種の裁判が進む東京、大阪、福岡、札幌の原告からも喜びの声が上がった。
2.〈今までで一番いい判決が出たよ〉
3.東京第2次訴訟の原告の一人、山縣真矢さん(56)は判決を傍聴後、都内で暮らす同性パートナーに、LINEで報告した。法廷では「憲法違反」と聞いて涙が浮かび、足元でガッツポーズをして仲間と見せ合った。
4.山縣さんは性的マイノリティーのパレード運営に、20年近く関わってきた。自分もパートナーも50代になり、「婚姻できない不利益に対する不安が、年々高まっている。これからも、シンプルに人権や命の問題なのだということを訴えていきたい」と話した。
5.大阪訴訟の原告、坂田麻智さん(44)=京都府=も、パートナーのテレサさん(40)と名古屋地裁で傍聴した。知人からの精子提供で授かった生後9カ月の娘も連れてきた。「家族の在り方が変わり、同性カップルも家族であると認めて、違憲と言い切ってくれた」
6.福岡地裁では6月8日に判決が予定されている。原告の福岡市のこうすけさん(33)とまさひろさん(35)は自宅で判決を待った。「違憲」の2文字がニュースで流れると、涙ぐみながら喜びを分かち合った。会見でまさひろさんは、「きちんと当事者の話を聞いてくれたことが判決から伝わってきて感動した」と述べた。
7.控訴審が続く札幌訴訟の原告の一人、中谷衣里さん(31)も喜んだ。判決が同性カップルの存在を公に認めても、国民に不利益が及ぶとは想定しがたいと指摘した点を評価した。「これを機に、国会は法整備の必要性を認識してほしい」(杉原里美、松浦祥子、中山直樹、石垣明真)
(国会議論へ、強力な後押し)
1.棚村政行・早稲田大教授(家族法)の話:誰に対しても結婚の自由を認める婚姻平等に道を開く司法判断だ。社会の変化や同性カップルの不利益や痛みに寄り添い、国会が真剣にこの問題に取り組むように強いメッセージを投げかけている。性的マイノリティーの権利擁護や差別撤廃などに向け、行政・立法・司法はさらなる積極的な取り組みをしなければならない。同性カップルに婚姻制度の道を開くには、社会保障や税制など様々な分野での立法的な手当てが必要だが、踏み込んだ憲法判断は、国会の議論の強力な後押しになるのではないか。
(違憲判断、ロジック明快)
1.小林直三・名古屋市立大大学院教授(憲法学)の話:妥当な判決と評価できる。同性カップルに公的な制度を用意していないことが、(個人の尊厳などに立脚した家族制度を要請している)憲法24条2項違反で、さらに制度を用意せず異性カップルと区別することに合理性がないため、憲法14条1項違反とした。24条2項を「違憲状態」としながらも14条1項には違反しないとした東京地裁判決と異なり、ロジックは明快だ。こうした判断を受け政治が動かないといけない。国を待たずとも、パートナーシップ制度などをどんどん進めるべきだ。
(https://digital.asahi.com/articles/DA3S15650078.html?pn=3&unlock=1#continuehere 参照 2023年6月2日)

 「朝日」は、この判決を「社会の変化や同性カップルの不利益や痛みに寄り添い、国会が真剣にこの問題に取り組むように強いメッセージを投げかけている。」(「朝日」)、と刻む。


by asyagi-df-2014 | 2023-06-06 18:31 | 人権・自由権 | Comments(0)

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