人気ブログランキング | 話題のタグを見る

米軍が訓練を目的とした下地島空港の使用申請を空港を管理する県に提出した。(3)

 沖縄タイムスの「在沖米海兵隊が訓練のため下地島空港(宮古島市)の使用を県に届け出ていることが17日、分かった。」(2023年1月18日)の記事が、この国の危うさを際立たせた。
 一方、琉球新報は同日、「今回の申請について、ある県関係者は『屋良覚書は法的な位置づけが難しい』と語り、民間利用や空港施設への影響が生じない限り、県が使用を『拒否』することは難しいとの認識を示した。」(琉球新報)、と報じた。
  つまり、この問題の背景には、この国のあり方そのものの問題が内在する。
主権国家であるにもかかわらず、「結局のところ、問題は法ではなく米軍の良識である。」(琉球新報)、というのである。

 改めて、この問題を沖縄の二紙から考える。

(1)沖縄タイムス(以下、「タイムス」)社説-[安保大変容:米軍、下地島訓練否定]軍事目的は許されない-2023年1月19日 9:00

 「タイムス」は沖縄が引き受けされることを強制されている状況について、「沖縄県の多くの島々が怒濤(どとう)のように、軍事化の波に洗われている。」、と表現する。
 それは、「18日の朝刊を読んだ読者は、軍事目的には使えないはずの下地島空港まで利用するのか、と不安を募らせたはずだ。」。と。
 どういうことが引き起こされているのか。
1.在沖米海兵隊が訓練のため下地島空港(宮古島市)の使用届を県に提出していたことが明らかになったのは17日のことである。
2.ところが、翌日になって情勢が急展開する。
3.本紙の取材に対し、海兵隊は、空港使用を県が「拒否」したため訓練は行われない、と回答してきた。
4.当初、訓練は「31日午後0時半から1時半まで」の1時間で、「人道支援、災害救援の習熟飛行」が目的だと県に説明していた。
5.外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)で「民間空港・港湾の柔軟な使用」の重要性が確認されたのは12日。県の下地島空港管理事務所に米軍から使用届が提出されたのは翌13日のことである。
6.県の嘉数登知事公室長は18日、在沖米海兵隊政務外交部のモレロ次長に電話で、緊急やむを得ない場合を除いて米軍は使用すべきではない、と自粛を申し入れた。
 このことに関して、「急転直下の撤回劇の裏で何があったのか。」、と続ける。
 「一つだけ明確なことは、県が管理する下地島空港には、軍事目的では使わない、という政府と沖縄県が交わした覚書があることだ。」、と「タイムス」。
この「覚書」について、「タイムス」は押さえる。
1.下地島空港は県が管理する空港の中では最も長い3千メートルの滑走路を持つ。
2.復帰前の1971年に沖縄県と政府の間で交わされた「屋良覚書」は、同空港を軍事目的には「使えない」「使わせない」ことを事実上確認したものだ。
3.その効力は今も失われていない。
4.「屋良覚書」は、当時の屋良朝苗行政主席が政府に確認を求め、政府が了承する形で交わされた次のような取り決めのことである。
5.「空港の使用方法は管理者である琉球政府(復帰後は沖縄県)が決める」
6.「民間利用以外の目的には使わない。使わせる法的根拠もない」
7.2006年、軍事演習でフィリピンに向かう米軍機が給油のため空港を利用したことはあるが、県は緊急時以外の使用を自粛するよう求めてきた。
8.下地島空港は、南西諸島防衛の要地に位置する。防衛省は早くから、同空港の利用に強い関心を示してきた。これまで空港の軍事利用が回避されてきたのは「屋良覚書」が存在したからだ。
9.屋良主席は当時、山中貞則総務長官に会い、「県民の不安解消のため確認書を取りたい」と要請。山中氏がそれに応じ、関係省庁との橋渡し役を務めたいきさつがある。
 「タイムス」がその最後を、「下地島空港を軍事利用することに私たちは強く反対する。『屋良覚書』を有名無実化するようなことがあってはならない。」、と締める。
(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1090319 参照 2023年1月19日)

(2)琉球新報(以下、「新法」)社説-米軍の下地島訓練申請 なし崩しの軍事拠点化だ-2023年1月19日 05:00
 「新法」もまた、「今後も訓練目的の空港使用を県に求める可能性がある。『屋良覚書』に照らしても下地島空港の軍事利用は認められない。」、と主張。
 「新法」の経過の押さえ。
1.米軍が訓練を目的とした下地島空港の使用申請を空港を管理する県に提出した。今月31日、CH53大型輸送ヘリコプターなどを使用し、米軍普天間飛行場との間を行き来する予定だった。                                 2.県の嘉数登知事公室長は訓練自粛を口頭で在沖米海兵隊に求め、18日になり米海兵隊は訓練を取りやめた。
3.米海兵隊は「人道目的、災害救援などのためのヘリコプター訓練を県が認めなかった」と説明している。
 「新法」は、この経過の意味を、「米軍が県に使用申請を提出したのは今月13日であった。日米安全保障協議委員会(2プラス2)の翌日であることを見逃すわけにはいかない。」、と関連させて、次のように押さえる。
1.昨年12月に政府が閣議決定した安保関連3文書は、平素の訓練を含め民間空港・港湾を自衛隊が柔軟に使用する方針を打ち出している。                2.2プラス2はその方針を日米双方にまで拡大することを確認した。        3.米軍による今回の使用申請はそれを実行に移すものだったと言えよう。
4.安保関連3文書によって日本の安保政策は大きく転換した。           5.米国は「同盟の抑止力を強化する重要な進化として、強い支持を表明した」と歓迎している。
 だから、「米軍と自衛隊の一体化が加速する中で、下地島空港の軍事拠点化がなし崩し的に進む恐れがある。到底容認できない動きだ。」、と指摘するのである。
 さらに、このことをつけ加える。
1.今回の使用申請に先立って、自民党国防議員連盟の一員として宮古島市を訪れた佐藤正久参院議員は、下地島空港を「県管理ではなく国管理にしたら」などと主張した。このような発言も、安保関連3文書や2プラス2で示された民間空港軍事利用の動きと軌を一にするものであろう。
2.国管理を主張する佐藤氏の発言は「屋良覚書」や下地島空港を県管理空港にした経緯を度外視するものであり、空港管理者である県や地元の声を無力化するものだ。
 この問題について、「新法」は、このように締める。
1.下地島空港の軍事利用を巡る激しい地域対立を背景に1971年、当時の琉球政府と運輸省の間で「屋良文書」は交わされた。(1)琉球政府(復帰後は県)が所有・管理し、使用方法は管理者である琉球政府が決定する(2)運輸省として、航空訓練と民間航空以外の目的に使用させる意思はなく、これ以外の使用を琉球政府に命令する法令上の根拠を有しない―と記している。軍事利用を否定しており、国の一存で使用方法を命じることもできないのである。
2.給油などを理由とした米軍機の飛来は80年代から恒常化しており、「屋良覚書」は履行されていない。しかし、そのことを当然視したり、過去の文書として放置したりしてはならない。
3.「屋良覚書」は国会答弁などで確認されてきた。その原点に立ち返り、住民生活の向上や地域振興に資する下地島空港の運営を追求すべきだ。
(https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1648674.html 参照 2023年1月19日)


 今回の下地島の軍事利用は、「昨年12月に政府が閣議決定した安保関連3文書は、平素の訓練を含め民間空港・港湾を自衛隊が柔軟に使用する方針を打ち出している。2プラス2はその方針を日米双方にまで拡大することを確認した。米軍による今回の使用申請はそれを実行に移すものだった。」(「新法」)、というもの。
 また、今後も、「米軍と自衛隊の一体化が加速する中で、下地島空港の軍事拠点化がなし崩し的に進む恐れがある。到底容認できない動きだ。」(「新法」)、ということになる。
 となると、私たちに必要なことは、「下地島空港を軍事利用することに私たちは強く反対する。『屋良覚書』を有名無実化するようなことがあってはならない。」(「タイムス」)との立脚点をもたねけばならないこと。


by asyagi-df-2014 | 2023-01-31 18:04 | 安全保障 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人