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核兵器禁止条約の発効を考える。(2)

 東京新聞(以下、「東京」)は2021年1月22日、「核兵器禁止条約が発効 不参加の米国も政権交代で期待高まる」(ニューヨーク=杉藤貴浩)、と伝えた。

 このことに関して、「東京」は「核禁条約発効 理想に一歩近づいた」(2021年1月23日)、河北新報は「核兵器禁止条約発効/保有国に放棄促す圧力に」(2021年1月23日)と社説で論評した。
 この二社の社説で、この「発効」を考える。
 まず最初に、「東京」はこのことを、『核なき世界』の実現という大義に向かうための日本のあり方として、「核兵器の使用や保有などを全面的に禁止する、核兵器禁止条約が発効した。小さな一歩だが『核なき世界』に近づいた。唯一の戦争被爆国・日本は、理想実現に向けて協力を惜しんではならない。」、と評価する。
 また、「東京」は、今回の発効に意義について、次のように説く。
(1)核兵器は最大級の非人道兵器であり、世界に一万三千発以上ある。しかし、包括的に禁止する条約はなかった。それだけに、条約発効には大きな意味がある。
(2)まず、核兵器への見方が大きく変わるだろう。条約が発効した国・地域において核兵器は、「力の象徴」ではなく「非合法」な存在となるからだ。
(3)核保有国が条約に反発するのは、この心理的効果を恐れてのことだ。核拡散防止条約(NPT)など、核軍縮の枠組みにも前向きな影響を与えるに違いない。
 さらに、コロナ禍における発効の意味を付け加える。
(1)この一年、世界の国々は新型コロナウイルスとの闘いが続き、二百万人以上が犠牲となった。
(2)非政府組織(NGO)の試算によれば、核大国の米国が二〇一九年に使った核軍備費を医療費に置き換えると、集中治療室のベッド三十万床、人工呼吸器三万五千台などを用意できたという。
(3)核兵器をどれだけ多く持っていても、一人一人の命を守れるわけではない。コロナ禍から学んだこの教訓を心に刻みたい。
 さらに、「東京」は続ける。
(1)条約には核保有国や核の傘に入っている国々が参加していない。そのため、核軍縮につながらないという否定的な意見もある。
(2)しかし、今では当たり前である奴隷制の否定や植民地の廃止、女性への参政権も、実現不可能と思われていた時代があった。現状に甘んじず、あえて高い理想を掲げることが、社会を変える力となる。このことは歴史が証明している。核兵器禁止も、決してあきらめてはなるまい。
 「東京」は、最後をこうまとめる。

 「核を持つことで、戦争が避けられるという『抑止効果』を信じている人も少なくないだろう。即座に廃絶できないにしても、核の危険な均衡に、われわれの未来を託し続けていいのだろうか。年内にも条約の締約国会議が開かれ、核兵器廃棄の期限といった運用策が話し合われる。米国は核禁条約に反対しているが、バイデン新政権は予算削減のため、国防戦略における核兵器の役割を縮小する方針と伝えられている。取り組みに期待したい。」
 そして、日本政府に向けて、「日本政府は条約を無視する姿勢を改め、締約国会議にオブザーバー参加すべきだ。そして核なき世界の実現を望む日本と世界の人々の声に、耳を傾けてほしい。」。と。


 次に、河北新報は、「この条約を高く掲げ、今度こそ『核なき世界』へ歩みを進めなければならない。」、とこの「発効」を位置づける。
 河北新報は、核を巡る状況とこの「発効」に関して次のように説く。
(1)核兵器禁止条約が、きのう発効した。条約締結を先導した非政府組織(NGO)「核廃絶国際キャンペーン」(ICAN)などの働き掛けにより昨年10月、批准する国が発効に必要な50カ国・地域に達していた。
(2)条約は核兵器を非人道的で違法と明記し、開発や保有、使用などを全面的に禁じる。核廃絶を目指す、初めての国際法規だ。前文で「全廃こそが、いかなる状況においても核兵器が二度と使われないことを保証する唯一の方法である」とうたった。
(3)これまで世界の核軍縮を担ってきたのは核拡散防止条約(NPT)だ。米英仏ロ中の5カ国に核保有を認める代わりに、軍縮交渉を進めることを義務付けている。冷戦時代の妥協の産物とはいえ、核保有を是認していたのでは廃絶は実現できるわけがない。不参加国の核開発も止めることができず、今はイスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮が保有する。
(4)世界にある核弾頭は昨年1月現在で推計1万3000発に上る。その9割を米国とロシアが占める。偶発的な核兵器使用の可能性を否定できないのが現状だ。
(5)保有国は核兵器が戦争の抑止力になると主張。核軍縮の必要性こそ認めるが、条約参加は拒否している。核を持つ優位性を失うことを意味するからだ。
 この上で、河北新報は、「NPTが核兵器を『必要悪』と位置付けるのに対し、核禁止条約は『絶対悪』とした点で決定的に異なる。」、と核兵器禁止条約の「発効」の意義を押さえる。
 ただ、河北新報は、次のことを指摘せざるを得ない。
(1)廃絶を進める具体的な方法は締約国会議で決まるが、法的拘束力が及ぶのは批准国だけだ。条約の実効性を考えると懐疑的な見方が強いのも事実だ。しかし、「核兵器は違法」とする国際規範ができたことには大きな意義がある。核を持ち続けることへの説明責任を求め、放棄を促す手だてを得たとも言える。
(2)賛同する国をさらに増やし、保有国の包囲網を作らなければならない。
(3)折しも、米国で「核なき世界」を提唱したオバマ元大統領の理念を継承するバイデン政権が発足した。保有国は「抑止論」から離れ、核廃絶へ行動を始めるべきだ。
(4)安全保障を米国の「核の傘」に頼る日本は条約に参加していない。菅義偉首相は開会中の国会で「条約に署名する考えはない」と改めて答弁。「現実的に核軍縮を追求するのが適切だ」と強調した。では、核軍縮に向けどう行動するのか。それがさっぱり伝わってこない。
(5)そもそも核禁止条約は、広島と長崎の被爆者の「核の惨禍は二度と繰り返さない」という願いを国際社会が具現化したものだ。日本は率先して動く責務があることを忘れてはならない。


 改めて、核兵器禁止条約の発効とは、「『核兵器は違法』とする国際規範」が動き出したということを確認する。


by asyagi-df-2014 | 2021-01-31 07:14 | 持続可能な社会 | Comments(0)

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