感染症法改正に関する「声明」と「意見表明」。
2021年 01月 30日
「法律が作り出した差別・偏見で苦しんできたわたしたちを、参考人として国会に呼んでください。わたしたちに、国会で、この問題に関する意見を述べさせてください。」(ハンセン病違憲国家賠償訴訟全国原告団協議会)、との絞り出された「訴え」が、この問題のすべてを明確にする。
今国会での感染症法改正に対して、「感染症法等の改正案に強く反対する弁護団声明」(ハンセン病家族訴訟弁護団)及び「感染症法改正に関する再度の意見表明」(ハンセン病違憲国家賠償訴訟全国原告団協議会)は、痛烈な批判を行った。
朝日新聞は2021年1月23日、このことに関して、「『入院強制は差別を助長』 元ハンセン病患者ら声明」(井岡諒、奥村智司)、と次のように報じた。
(1)新型コロナウイルス感染症に対応する政府の感染症法改正案について、ハンセン病家族訴訟の弁護団は22日、撤回を求める声明を出した。「(新型コロナ感染症)患者らの人権を不当に侵害し、差別の助長につながる」と反対している。
(2)改正案にはコロナ患者が入院に応じない場合などに刑事罰を科すことが盛り込まれている。元ハンセン病患者やその家族が受けてきた人権侵害の問題に長年取り組む弁護団は、声明でコロナ医療の切迫は国などによる医療体制整備の遅れにも起因すると指摘した。
(3)そのうえで「罰則による一方的な入院・調査等の強制は患者らの人権を不当に侵害するものであって、憲法違反」と改正案を批判。コロナ患者や家族への中傷・差別が起きている問題に触れ、「ハンセン病患者・家族に対する偏見差別の歴史が繰り返されている。罰則を伴う強制は恐怖や不安・差別を助長する」と警鐘を鳴らした。
(4)ハンセン病をめぐる偏見差別の歴史も踏まえ、前文で「患者等の人権尊重」をうたう感染症法の趣旨にも反するとして、「違憲かつ違法な内容」と断じた。
(5)ハンセン病家族訴訟を支援した元患者の竪山勲さん(72)=鹿児島県鹿屋市=は、改正案について「患者の人権はどこにあるのか。ハンセン病問題に次ぐ人権侵害になりかねない。国はコロナに罹患(りかん)した人が安心して医療を受けられる環境づくりをまずするべきだ」と話した。
このハンセン病家族訴訟弁護団の「感染症法等の改正案に強く反対する弁護団声明」(以下、「弁護団声明」)は、次のように訴えている。
(1)政府は、本日、新型コロナウイルス感染症の感染拡大をうけ、「感染症の予防及 び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下、「感染症法」という。)等の改 正案を閣議決定して国会に提出する予定であり、冋感染症法改正案では、患者等が 入院措置に応じない場合•入院先から逃げた場合の懲役刑•罰金刑、及び積極的疫 学調杳での慮偽答弁や調査拒否等をした場合の罰金刑の新設が盛り込まれている。
(2)しかし、入院や行動報告等の強制は、いうまでもなく人身の白由•自己決定権-プライバシー権に対する強度な人権制約であり、昨今の国•地方公共団体による医 療体制整備等の遅れにも起因する医療崩壊危機の状況に鑑みれば、罰則による一方 的な入院•調査等の強制は、患者等の人権を不当に侵害するものであって、憲法違 反と言わざるを得ない。
(3)さらに、今冋の改正案は入院拒否や逃亡事例等の実数やそれによる疫学的影響等の立法事実すら何ら明らかになっていない状況で拙速に浮上したものであり、議 論•検討がほとんどなされていないことも極めて重大な問題である。
(3)そもそも、昨年来、新型コロナウイルス感染症の患者•家族に対する誹謗中傷• 差別事例が数多く発生し、ハンセン病患者•家族に対する偏見差別の歴史が繰り返されているのであって、患者に対する罰則を伴う強制は市民に恐怖や不安•差別をより一層助長することにもつながり、刑事罰•罰則が科されることになると、それ を恐れるあまり、検査を受けない、あるいは検査結果を隠蔽することにもつなが り、結果、感染の抑止が困難になることが想定される。
(4)感染症法は、かつて強制隔離政策によって、患者及びその家族らが多大な人権侵害を受けたハンセン病問題などへの歴史的反省のもとに制定されており、同法の前文には「我が国においては、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である。このような感染症をめぐる状況の変化や感染症の患者等が置かれてきた状況を踏まえ、感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速かつ適確に対応することが求められている。」と記載されている。
(5)今回の改正案は、過去の過ちに対する真摯な反省のもとに制定されているはずの感染症法等の趣旨を無視した違憲かつ違法な内容であることが明らかであり、先のハンセン病国賠訴訟及びハンセン病家族訴訟で闘った原告ら、そして我々弁護団にとって、今回の改正湾を許すことは、同訴訟での闘いを無にするものと言っても過言ではない。
(6)我々は、本改正案に強く反対し、直ちに撤回することを求めるとともに、あらゆる手段を用いて同法案の可決を阻止する覚悟である。
さらに、ハンセン病違憲国家賠償訴訟全国原告団協議会は2021年1月29日、「感染症法改正に関する再度の意見表明」を公表した。
この「感染症法改正に関する再度の意見表明」(以下、「意見表明」)は、次のように指摘している。
(1)報道によれば、今般の感染症法改正問題につき、刑事罰の規定を削除して行政罰の過料とする方向で与野党が合意したとのことです。
(2)わたしたち全原協は、1月22日付けで、感染症法改正により患者・感染者を処罰の対象とすることに反対の意見を表明しました。これは刑事罰であろうと行政罰であろうと同じことです。わたしたちは、患者・感染者を過料の対象とすることに断固として反対いたします。
(3)入院の強制は、患者の自己決定権の制限であり、積極的疫学調査への協力義務はプライバシー権の制限です。この制限に服さないものに対して過料を科すことは、患者・感染者を、人権が制限されるべきものと社会的に位置づけることにほかなりません。長年にわたってハンセン病隔離政策による人権侵害に苦しんできたわたしたちは、このことを絶対に許すことができません。
(4)この間、様々な団体から、患者・感染者を処罰の対象とすることに対する反対意見が表明されています。そのなかには、公衆衛生の専門家団体の意見も含まれています。この感染症法改正の審議においては、患者・感染者を処罰の対象とすることが感染症蔓延防止という観点から果たして有効なものかどうか、専門家が参考人として意見を述べることになろうかと思います。
(5)しかし、それだけでは足りません。
(6)法律が作り出した差別・偏見で苦しんできたわたしたちを、参考人として国会に呼んでください。わたしたちに、国会で、この問題に関する意見を述べさせてください。
(7)各団体の意見書、声明には、ほぼ共通して、「……我が国においては、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である」という感染症法の前文が引用されています。
(8)政府は、ハンセン病問題から何を学んできたのでしょうか。これまで学んでこなかったのであれば、いまこそ、学んでください。いま学ばずして、いつ学びますか。患者・感染者を処罰の対象として、社会にいいことなどひとつもありません。
(9)改めて、患者・感染者に対する処罰規定の白紙撤回を強く求めます。
今回の感染症改正に関する、患者・感染者に対する処罰規定の白紙撤回を強く求めます。
by asyagi-df-2014
| 2021-01-30 20:11
| コロナ禍を生きる
|
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