英語民間試験導入から見えてくるもの。

 「英語民間試験導入」について、改めて押さえる。
  手元に、沖縄タイムス、琉球新報、朝日新聞の三社の社説がある。
 それぞれの社説の見出しは、次のものである。

(1)沖縄タイムス社説-[英語民間試験見送り]混乱招いた責任は重い
(2)琉球新報社説-英語民間試験見送り 制度設計を見直すべきだ
(3)朝日新聞社説-英語民間試験見送り 制度設計を見直すべきだ

 この問題に不覚にも問題が大きくなってから気づかされた者として、この制度そのものについて、『どうしてこんなことが導入されることになったのか。』、もしくは『どうしてこんな制度の導入を許したのか。』、ということが大きな疑問としてあった。
 この答えを知るためにこの三社の社説を見てみる。
まず最初に、沖縄タイムス(以下、「タイムス」)から。
 「タイムス」は、英語民間試験見送りに係る問題点を、まず最初に指摘する。


(1)大学入学共通テストにおける英語民間検定試験について萩生田光一文部科学相は1日の記者会見で、2020年度の導入を見送ると発表した。萩生田氏は同日時点で「試験がいつ、どこの会場で、全体を通じて確定できない。運営上、足らざるところがあった」と不備を認めた。強行すれば混乱を招くのは必至で出直すべきだ。
(2)1年かけて抜本的な見直しを議論。今の中1が受験生となる24年度をめどに新たな制度の導入を検討するという。従来の「読む・聞く」に、「話す・書く」を加えた4技能を評価する方向性は間違っていない。民間試験でなければならないのかどうか。ゼロベースでの議論を求めたい。
(3)大学入試センターは1日、受験に必要な「共通ID」の受け付け開始を中止した。萩生田氏は10月30日の衆院文部科学委員会で実施に前向きな答弁をしており、直前になってからの見送りは遅すぎる。
(4)被害者は民間試験に振り回された受験生である。志望大学の準備をしながら、不安を募らせていたに違いない。
(5)萩生田氏は文科省のホームページで「経済的な状況や居住している地域にかかわらず、等しく安心して受けられるようにするためには、更なる時間が必要だと判断した」と説明した。教育現場に一番近い全国高等学校長協会(全高長)などがかねてへき地や離島で暮らしていたり、家計が苦しかったりする受験生への救済策が乏しいなどと指摘。導入延期を求めていた。文科省が真剣に受け止めておれば、ぎりぎりになってからの延期決定にはならなかったはずである。文科省の責任は大きい。


 また、「タイムス」は、英語民間試験制度の導入の問題点を次のように指摘する。


(1)民間試験は「英検」や「GTEC」など6団体の7種類で、現在の高2が20年4~12月に最大2回まで受験できる仕組みだった。大学の英語専門家からは複数の異なる試験結果を比較できるか疑問の声が上がった。
(2)利用しない大学もあれば、成績を出願資格にしたり、大学独自の試験に加点したりするなど利用は大学に委ねられた。四年制大学の3割が利用しないのは民間試験への不信の表れだろう。県内では琉球大など5大学が参加を予定していた。
(3)1回の受験料は、5千円台~2万5千円台と4倍以上の開きがあり、会場も大都市にしかなく沖縄では受験できない試験もある。経済的に苦しい家庭や、離島などの受験生は宿泊も想定しなければならず、都市部に比べ不利になるのは明らかだ。


 最後に、「タイムス」は、英語民間試験制度導入そのものについて、見解を明らかにする。


「萩生田氏は10月24日のテレビ番組で家計状況や居住地で不利が生じるとの指摘に、『自分の身の丈に合わせて頑張ってもらえれば』と発言。教育格差を容認する制度の矛盾を図らずも明るみに出した。萩生田氏は批判を浴び、謝罪と撤回に追い込まれた。大学受験に当たって経済格差、地域格差が横たわっているのは現実である。教育行政を預かる文科省のトップとして親の所得や住んでいる地域によって格差が生じないよう是正するのが責務であることを肝に銘じてもらいたい。」


 次に、琉球新報(以下、「新報」)は、「見送りは当然だ。むしろ遅きに失したと言える。」、と英語民間試験見送りに関して断じる。その上で、次のように批判する。


(1)萩生田光一文部科学相は、大学入学共通テストへの英語民間検定試験の導入について「自信を持って受験生に薦められるシステムになっていない」と述べ、2020年度は見送ると発表した。経済格差や地域格差を広げるという批判に対し、十分な対応策が間に合わないと判断したためだ。
(2)民間試験の会場は都市部が中心のため、住む地域によっては受験生に渡航費や宿泊費の負担を強いる。家庭に経済力があれば、高校3年になる前に検定試験を何度も受けて、慣れておくこともできる。
(3)家庭の経済力や居住地が成績を左右しかねない。受験生や教育現場、家庭からは不安や批判が噴出したが、それでも実施へ突き進む文科省に不信感が拡大していた。そんな中、萩生田文科相はテレビ番組で「身の丈に合わせて頑張って」と言い放った。格差を容認し、弱者切り捨てとも取れる発言が火に油を注いだ。これが引き金となり、政権批判を恐れた官邸が見切りを付けた形だ。
(3)公平・公正を確保できない制度の欠陥は以前から指摘されていた。全国の国公私立高校計約5200校でつくる全国高等学校長協会(全高長)は9月10日、制度の実施を延期した上で大幅な見直しを求める要望書を文科省に提出した。本来なら文科省はその段階で実施延期を決断すべきだった。現場の切実な声は非常に重いからだ。
(4)英語民間試験導入の背景には、グローバル化の進展に伴い、聞く・読む・話す・書くの実践力を総合的に評価する狙いがある。この趣旨は大事だが、だからといって制度の欠陥を放置することは許されない。


 結局、「新報」は、この制度そのものについて、「最大の問題は、受験生の立場を最優先に考えずに、試験を民間に丸投げしたことにある。公平・公正の確保は教育基本法で定める教育の機会均等に関わる。その実現への努力を国が放棄したに等しい。」、と安倍晋三政権の責任を明確にする。
この上で、「教育に対する基本姿勢をおろそかにし、混乱を招いた文科省の責任は重大だ。同じ過ちを二度と繰り返してはならない。文科省は猛省し、受験生や教育現場、家庭の声に謙虚に向き合うことが求められる。受験生の立場を最優先しなければならない。文科省は今後、民間試験の活用中止も選択肢に含め、関係者を集めた検討会議を立ち上げ、1年間かけて抜本的な見直しを議論するという。中途半端では、全国の関係者は決して納得しないだろう。ゼロベースで制度設計を見直す必要がある。この際、大学入学共通テストの原点に立ち返らなければならない。原点とは、生徒の立場を第一に考え、公平・公正を確保することである。その実現に向け、全ての受験生がそれぞれの生活圏の中で同一の試験を同一の日程で受けられる仕組みを文科省が主導して整えることが望ましい。」、と見解を明確にする。


 最後に、「見送りは当然だ。むしろ遅きに失したと言える。」、との朝日新聞(以下、「朝日」)の社説を見てみる。
 「朝日」も、この制度導入の見送りについて、次のように批判する。


(1)萩生田光一文部科学相は、大学入学共通テストへの英語民間検定試験の導入について「自信を持って受験生に薦められるシステムになっていない」と述べ、2020年度は見送ると発表した。経済格差や地域格差を広げるという批判に対し、十分な対応策が間に合わないと判断したためだ。
(2)民間試験の会場は都市部が中心のため、住む地域によっては受験生に渡航費や宿泊費の負担を強いる。家庭に経済力があれば、高校3年になる前に検定試験を何度も受けて、慣れておくこともできる。
(3)家庭の経済力や居住地が成績を左右しかねない。受験生や教育現場、家庭からは不安や批判が噴出したが、それでも実施へ突き進む文科省に不信感が拡大していた。そんな中、萩生田文科相はテレビ番組で「身の丈に合わせて頑張って」と言い放った。格差を容認し、弱者切り捨てとも取れる発言が火に油を注いだ。これが引き金となり、政権批判を恐れた官邸が見切りを付けた形だ。


 「朝日」は、この制度の疑問について、「公平・公正を確保できない制度の欠陥は以前から指摘されていた。全国の国公私立高校計約5200校でつくる全国高等学校長協会(全高長)は9月10日、制度の実施を延期した上で大幅な見直しを求める要望書を文科省に提出した。本来なら文科省はその段階で実施延期を決断すべきだった。現場の切実な声は非常に重いからだ。」、と指摘する。
 また、「英語民間試験導入の背景には、グローバル化の進展に伴い、聞く・読む・話す・書くの実践力を総合的に評価する狙いがある。この趣旨は大事だが、だからといって制度の欠陥を放置することは許されない。最大の問題は、受験生の立場を最優先に考えずに、試験を民間に丸投げしたことにある。公平・公正の確保は教育基本法で定める教育の機会均等に関わる。その実現への努力を国が放棄したに等しい。」、とも。


 「朝日」は、この制度の見送り問題の責任及び制度そのものについて切り込む。


(1)教育に対する基本姿勢をおろそかにし、混乱を招いた文科省の責任は重大だ。同じ過ちを二度と繰り返してはならない。文科省は猛省し、受験生や教育現場、家庭の声に謙虚に向き合うことが求められる。受験生の立場を最優先しなければならない。
(2)文科省は今後、民間試験の活用中止も選択肢に含め、関係者を集めた検討会議を立ち上げ、1年間かけて抜本的な見直しを議論するという。中途半端では、全国の関係者は決して納得しないだろう。ゼロベースで制度設計を見直す必要がある。この際、大学入学共通テストの原点に立ち返らなければならない。原点とは、生徒の立場を第一に考え、公平・公正を確保することである。その実現に向け、全ての受験生がそれぞれの生活圏の中で同一の試験を同一の日程で受けられる仕組みを文科省が主導して整えることが望ましい。


 こうした三社の社説からは、「英語民間試験見送りの問題」と「英語民間試験導入の問題点」は、ある程度理解できる。
 ただ、この制度が「公平・公正を確保できない制度の欠陥は以前から指摘されていた。」(「新報」)にもかかわらず、ここまで来てしまった理由がわからない。つまり、安倍晋三政権の策動を止められなかった理由がよくわからない。
それは、安倍晋三政権の権力がこうした悪い状況をもたらすほどに、日本という国を悪化させているということが答えであるということなのか。




by asyagi-df-2014 | 2019-11-09 07:14 | 持続可能な社会 | Comments(0)

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