時には、じっくりと考えてみることを。-年金問題。私的年金制度-

 東京新聞(以下、「東京」)の2019年10月16日の社説は、「私的年金 自助の支えも拡充を」、と見解を表明した。それは、「公的年金に上乗せする給付を得られる私的年金制度の見直し議論が進んでいる。私的年金は企業や個人が加入する制度である。高齢化で働く期間が延びる時代、老後に備える見直しは欠かせない。」、と始められる。
 政府の2000万円不足のリークから、当然予想される内容ではある。
 しかし、「私的年金 自助の支えも拡充を」は一足飛びの結論と映る。
まず、「東京」の指摘の根拠は次のもの。


(1)公的年金に上乗せする給付を得られる私的年金制度の見直し議論が進んでいる。私的年金は企業や個人が加入する制度である。高齢化で働く期間が延びる時代、老後に備える見直しは欠かせない。金融庁報告書の「老後に二千万円不足」問題は、あらためて高齢期は公的年金だけでは不安は解消されない事実を明らかにした。政府はまずその事実を丁寧に説明する責任がある。
(2)その上で、自助の私的年金がある。より多くの人が利用できるよう見直しを進めるべきだ。


 この「金融庁報告書の『老後に二千万円不足』問題は、あらためて高齢期は公的年金だけでは不安は解消されない事実を明らかにした。」(「東京」)とは、明らかに政府からの「リーク」である。そこには、政府の失政のツケをきちんと精算しない土台の上に、姑息にも責任を転嫁しようとする強い意志がある。
したがって、「政府はまずその事実を丁寧に説明する責任がある。」との指摘は当然のものではあるが、その前に、その失政の責任を明確にさせる責任が、マスコミにはあるのではないか。

「東京」の具体的な考え方も示される。


(1)すべての国民を対象とする国民年金(基礎年金)と、会社員や公務員が加入する厚生年金が公的年金である。よく基礎年金を建物の土台として一階、厚生年金を二階に例える。私的年金は上乗せの三階部分にあたる。その中で企業が従業員向けに設ける制度が企業年金だ。原則、企業が掛け金を出し、運用で増やして退職後に受け取る。
(2)厚生労働省は、制度に加入できる年齢の上限を引き上げる見直し案を示した。来年の通常国会への関連法案の提出を目指す。
(3)案は企業年金のうち、企業が拠出額をあらかじめ決めて運用は従業員が行う企業型確定拠出年金について加入年齢の上限を今の六十四歳から六十九歳に引き上げる。勤務先に企業年金のない会社員や、公務員、自営業者、主婦などが加入できる個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」も五十九歳から六十四歳まで引き上げ、掛け金を払えるようにする。
(4)現在、六十~七十歳の間で選べる受給を始める時期は、七十歳以降も可能とする。公的年金もより長く加入できるよう見直しの議論が進む。上乗せの私的年金も働き方の変化に合わせた改善が望ましい。


 この上で、「東京」は、次のように見解をまとめる。


(1)少子高齢化で公的年金の目減りが避けられない。私的年金は高齢期を支える重要な制度になってきたが、改善の余地はある。転職しても加入記録を持ち歩ける制度や中小企業の加入促進などもっと使い勝手をよくしたい。
(2)私的年金は自身で運用をするため金融知識の周知も欠かせない。特に若い世代への知識普及にも政府と企業は取り組むべきだ。
(3)私的年金は、運用できる資産がない人との間で格差が広がる懸念がある。なにより政府は公的年金の給付を増やす改善に知恵を絞るべきだ。さらに生活保護、低廉な住宅の確保など年金制度を超えた支援も幅広く考えたい。   


 どうしても疑問が残る。
 そもそも、「上乗せの私的年金」の有効性を論ずる前に、これを必要としない社会保障制度の論議が必要ではないか。
「東京」の「私的年金」の主張には、必然的に、「私的年金は、運用できる資産がない人との間で格差が広がる懸念がある。」(「東京」)との限界を付帯事項として位置づけることになる。
 結局、「矛盾」の上に「矛盾」を乗せることになるしかない。



by asyagi-df-2014 | 2019-10-27 08:28 | 持続可能な社会 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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