「安全保障技術研究推進制度」の応募が、2年連続減で大学の応募は過去最少の8件にとどまったこと。

 このことに関して、朝日新聞(以下、「朝日」)は2019年8月31日、次のように報じていた。


(1)防衛装備庁は30日、防衛分野の研究資金を大学や企業に提供する「安全保障技術研究推進制度」で、2019年度の研究課題に16件を採択したと発表した。代表研究機関は、「企業等」と公的研究機関がそれぞれ7件、大学が2件。応募は57件あり、うち大学からは8件で過去最少だった。
(2)制度は15年度に約3億円の予算でスタートし、17年度から約100億円に増えた。研究費配分は3種類で、最も高額な枠(最大20億円)に採択されたのは、今年度は3件。いずれも「企業等」からの応募だった。大学で採択されたのは大阪市立大と山口大の2件で、ともに少額の枠だった。
(3)制度をめぐっては、軍事研究になると問題視する声もあり、日本学術会議が各大学に慎重な対応を求めるなど、議論も起きている。こうした中、大学の応募件数は4年連続で減少。19年度は過去最少の8件となり、初年度(58件)の7分の1ほどだった。
(4)応募状況を踏まえ、装備庁は今年度、初めてとなる高額枠の2次募集を実施する方針だ。


 日本学術会議が2017年に、一定の見解を示した中で、各大学がどのようの動きを示すかが注目されていたが、大学の役割からいっても望ましい方向に向かっているのではないか。
また、このことについて、「朝日」は2019年9月19日、「軍事研究 『ノー』の意識広く深く」、と論評した。
この社説を見る。
「朝日」は、「兵器など防衛装備品の開発につながりそうな研究に、政府が資金を出す『安全保障技術研究推進制度』の今年度の実績が、先ごろ発表された。応募は2年連続減の57件、採択は16件で、防衛装備庁は制度開始5年目で初めて追加募集に踏み切った。大学の応募は過去最少の8件にとどまった。5年間で最大20億円が支給される好条件にもかかわらず、応募が少ない背景には、日本学術会議の働きかけなどを通じて、制度の問題点が広く共有されたことがあるだろう。科学者の倫理や社会的責任を踏まえた対応であり、評価したい。」、と切り出す。
「朝日」の指摘は、次のものである。


(1)学術会議は1950年と67年の2回、軍事研究を否定する見解を表明。これを継承した2年前の声明では、今回の制度を「政府による介入が著しく、問題が多い」と指摘した。装備開発につなげようという目的が明確なうえ、政府職員が研究の進み具合を管理する点などを、学問の自由の下、人権、平和、福祉などの価値の実現を図る学術界とは相いれないと判断した。
(2)装備庁は「研究内容に口を出すことはない」などと釈明に懸命だが、多くの大学が「軍事研究はしない」との方針を確認している。いったん応募して支給対象になったものの、その後に辞退した例もある。
(3)意識は確実に浸透してきている。だが懸念がないわけではない。昨年、学術会議が全国の大学や研究機関を調べたところ、この制度への応募について、大学・機関としての方針や内部審査手続きを定めていないとの回答が、ほぼ半数を占めた。
(4)研究成果が民生と軍事の両面で使われる「デュアルユース」は、科学技術の宿命だ。個々の研究者に判断をゆだね、最終責任を負わせるのは酷であり、大学や機関で考え方に乖離(かいり)があれば、交流や人材の移籍の妨げにもなりかねない。これまでの議論の深まりを受けて、学術会議が音頭をとってスタンダードづくりを進めてはどうか。
(5)研究現場、とりわけ若手の間には「とにかく資金がほしい」「組織で個人を縛るべきではない」との声もある。前者は、政府が研究環境の整備を怠ってきたことの裏返しだ。軍事研究への誘導ではなく、着実な改善こそが求められる。また科学コミュニティーによる自主規律は、自由の侵害ではなく、将来に向けて研究を守ることに通じるとの認識を持つべきだ。


 今回の「朝日」の結論は、「遠くない過去、国内外の科学者は国家に組み込まれ、戦争に協力して、甚大な被害をもたらした。その反省と教訓を若い世代に伝えていくという重い課題にも、科学界は引き続き真摯に向き合わなくてはならない。」、ということである。


 是非とも、「軍事研究はしない」との方針の定着に向かってほしい。




by asyagi-df-2014 | 2019-09-27 07:04 | 持続可能な社会 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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