年金の財政検証から考える。(2)

 年金制度は、人の命に関わる国作りの基本政策である。
 持続可能な社会の実現のために、非常に大きなインパクトを持つ。
 そんな中、安倍晋三政権は2019年8月27日、年金の財政検証を公表した。
前回は、日本経済新聞を見てみたが、今回は、今回の年金財政の検証から浮かび挙がる問題点を琉球新報と沖縄タイムス及び朝日新聞の社説から押さえる。


1.年金受給額の割合「所得代替率」の問題

(琉球新報)
(1)公的年金の長期見通しを5年に1度試算する財政検証の結果を厚生労働省が公表した。現役世代の平均手取り収入に対する年金受給額の割合「所得代替率」は2047年度以降、50・8%で下げ止まるとの見通しが示された。
(2)政府が掲げる「代替率50%維持」は達成される見込みというが、経済が順調に成長することを前提にしており、額面通りには受け取れない。「50%」の水準は65歳の受け取り開始時点であり、年齢を重ねるにつれて目減りする。将来的な給付水準は大きく低下することになる。
(3)国民年金(基礎年金)は20歳以上60歳未満の全国民が加入する。会社員や公務員などはこれに上乗せする形で厚生年金に加入する。現役世代が支払った保険料を高齢者への年金給付に充てる仕組みだ。検証によると、経済成長と就業が進む標準的なケースでも、約30年後にモデル世帯の年金の実質的な価値は2割近く減る。基礎年金部分に限れば約3割低下するという。
(4)経済成長が滞って不況に陥った場合は、さらに給付水準は下がる。自営業や短時間労働者など国民年金だけを受給する人は、特に深刻な事態に直面する。国民年金は保険料を40年納めていても満額月約6万5千円だ。納付期間が短いと受給額は下がる。蓄えがなければ生活は成り立たないだろう。
(5)今や働く人の4割が非正規労働者だ。専業主婦のパート層や若年・中年層の非正規労働者が厚生年金に加入すれば、給付水準の改善が見込まれる。保険料は労使折半で負担するため、企業側の理解が不可欠であろう。非正規労働者を正社員化する取り組みも極めて重要だ。

(沖縄タイムス)
(1)老後の生活の柱になる公的年金の長期的な見通しを試算する財政検証は、モデル世帯の年金水準で約30年後に2割近く目減りする結果になった。基礎年金(国民年金)部分に限ると約3割低下する。現役世代の平均手取り収入に比べ、月額でどれだけの年金を受け取ることができるかの割合を示す「所得代替率」は現在の61・7%から50・8%に下がる。政府は「代替率50%維持」を掲げ、制度は持続可能としている。だが、給付水準の目減りは老後生活に大きく影響する。とりわけ低年金で暮らす人の生活を直撃するのは必至、弱者保護の対策が欠かせない。
(2)財政検証は将来の若者と人口比率がどう変わるか、女性や労働参加の進み具合、経済成長の見通しなどを踏まえ、約100年間の公的年金の財政状況や給付水準がどうなるかを試算している。5年に1度検証し、少子高齢化問題などに直面する年金制度の「健康診断」とされる。公的年金は現役世代の納める保険料と税金が主な財源で、現役世代から高齢者へ「仕送り」する仕組みだ。このため支える側と支えられる側の人口比率や経済状況を受けた賃金水準の変化が年金の財政、給付に影響する。
(3)検証では他に(1)会社員らが入る厚生年金の適用対象の拡大(2)働いて一定収入がある人の年金を減額する「在職老齢年金制度」の廃止・縮小(3)受給開始の選択幅を75歳まで拡大-などを実施した場合の影響を見る「オプション試算」も出した。保険料を払う支え手を増やし、年金額を確保する狙いを示している。

(朝日新聞)
(1)年金の水準は、現役世代の平均手取り収入の何割か(所得代替率)で示される。今年度は61・7%だが、経済成長などを見込むケースでも約30年後には51・9~50・8%に低下する。
(2)特に基礎年金は給付を抑えるための調整期間が長く、約3割低下する見通しだ。
(3)いくら年金財政が安定しても、安心して老後を迎えられそうにない。そんな不安をどう解消するのか。政府は高齢者もできるだけ長く働ける環境を整え、年金の受給を遅らせると年金額が割り増しになる仕組みの拡大や、働く高齢者の年金を給料に応じて減額する仕組みの見直しを進める考えだ。基礎年金の保険料を払う期間を20歳から60歳までの原則40年から、65歳までの45年に延ばすことも底上げの効果が大きい。ただし、基礎年金の国庫負担分の財源を考える必要がある。今後の検討課題だろう。


2.少子高齢化や世代間の不公平を是正するための改革を始めとする年金問題

(琉球新報)
(1)少子高齢化によって、保険料を支払う現役世代は減り、年金を受け取る高齢者は増えている。若い世代ほど老後の生活は厳しくなる。試算では、現在20歳の世代が老後に現在と同じ水準の年金を受け取るには66歳9カ月まで働いて保険料を納め続けなければならない。年金の目減りを抑えるには、厚生年金の適用対象を拡大するなど、実効性のある対策を講じる必要がある。
(2)支払う人が減る一方で受け取る人が増え続ける以上、年金財政の悪化は避けられない。これ以上、現在の付けを将来の世代に先送りすることは許されない。世代間の不公平を是正するための改革が求められる。
(3)気になるのは政府の及び腰の姿勢だ。「財政検証」は5年前、6月に公表されていたが、今回は8月下旬までずれ込んだ。参院選で攻撃材料にされることを嫌ったからだと考えられる。「試算に時間を要した」という根本匠厚労相の釈明が本当なら、驚くべき怠慢である。国民生活に密接に関わる課題だけに、政府の勝手な都合で公表を遅らせることがあってはならない。

(沖縄タイムス)
(1)急速な少子高齢化の進行で現役世代は減り、年金を受け取る高齢者は増える。年金制度を維持するために政府が導入したのが「マクロ経済スライド」。賃金や物価の伸びより抑制するため、給付水準は目減りしていく。モデル世帯の夫婦2人の厚生年金は2019年度は22万円だが、検証結果では47年度に24万円となった。額面上は増えるが、物価や賃金の上昇で所得代替率は下がる。国民年金は、19年度は13万円だが、47年度は12万4千円に減る。自営業や短時間労働者など国民年金のみ受給する人は大きな影響が出る。
(2)政府は財政検証を基に9月から制度の安定化や低年金者の対策など改革論議を本格化させ、来年度の通常国会に改正法案を提出する予定だ。年金制度の維持と高齢者が安心して暮らせる給付額のバランスをどうとるか-が問われる。
(3)県内の高齢者の現状は厳しい。2017年度の月平均給付額は厚生年金で12万5338円。国民年金は月5万2134円で47都道府県の中で最低になっている。全国で最も所得が低く、貧困率も全国一高い。非正規労働者が多い労働環境を考えると、今後の目減りの影響は深刻だ。
(4)老後に2千万円の蓄えが必要とした「老後2千万円問題」で年金制度への不安が広がった。政治の出番である。年金制度をどう持続可能なものにするか、与野党とも知恵を出して議論すべきだ。

(朝日新聞)

(1)将来の年金はどうなるのか。人口推計や経済見通しをもとに5年ごとに点検する、年金の財政検証の結果が公表された。高齢化と人口減少が進み、受け取れる年金の水準低下は避けられない。厳しい現実を改めて突きつける内容だ。痛みを和らげるために何ができるのか。結果をもとに、改革の議論を深めなければならない。
(2)働き手を増やす取り組みは重要だ。だがそれだけでは、公的年金に対する安心感を高める効果は限られている。何より急ぐべきは、非正規雇用で働く人などが厚生年金に加入しやすくすることだろう。本人が手厚い年金を受けられるようになるだけでなく、基礎年金の水準低下を抑える効果があることが、財政検証のオプション試算でも示されている。保険料負担が増える中小企業への目配りは必要だが、最優先で取り組むべきだ。
(3)野党の中には、基礎年金には給付抑制をかけないで、一定程度の年金額を保障すべきだという主張もある。しかしそのためには、財源など検討すべき問題が少なくない。年金制度だけで全てを解決するのは難しい。生活が苦しい人への対応は、福祉政策での対応も含めて考えるのが現実的ではないか。
(4)こうした議論の前提となる財政検証はこれまで、作業に使う経済見通しなどを決めてから約3カ月後に公表されていた。今回は6月初旬とみられたが大幅に遅れ、7月の参院選への影響を避けたい政府・与党による先送りだと批判された。そんな疑念を持たれること自体、年金制度への信頼を傷つける。政治状況に左右されぬよう、公表日程のルール化も検討すべきだ。


 この国の将来の年金はどうなるのか。
この国の持続可能性は、このことによる。
「高齢化と人口減少が進み、受け取れる年金の水準低下は避けられない。厳しい現実を改めて突きつける内容だ。痛みを和らげるために何ができるのか。結果をもとに、改革の議論を深めなければならない。」、と朝日新聞は指摘する。また、 日本経済新聞は、「不安定な雇用に甘んじている就職氷河期の世代が高齢化する数十年後は、低年金者の割合がさらに上昇するのは避けがたい。」、とする。
 だが、果たして、この国に違う道はないのか。



by asyagi-df-2014 | 2019-09-06 07:20 | 持続可能な社会 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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