最低賃金のあり方を考える。

 朝日新聞(以下、「朝日」)は2019年8月7日、「最低賃金『平均1千円』に達するころ…地域格差は拡大?」。と報じた。
 この記事で、最低賃金を考える。
「朝日」は、まず、「最低賃金の今年度の引き上げ額の『目安』が厚生労働省の有識者会議で示されました。東京都と神奈川県の時給は初めて1千円台に乗る一方、17県は700円台にとどまる見込みで、地域間の格差は広がりそうです。こうした現状について、最低賃金の制度に詳しい立教大の神吉(かんき)知郁子(ちかこ)准教授(労働法)と考えました。」、と次のように伝えている。


(1)「―労使の代表と大学教授でつくる厚労省の有識者会議が7月末に示した『目安』通りならば、引き上げ率は例年並みとなる一方、全国加重平均は901円に届きます。:『今回の目安の引き上げ率は3.09%。3%台の引き上げが続いてきた過去3年の実績の延長線上で落としどころを探った印象だ。【3%以上の引き上げ】と【平均900円以上】の二つのメルクマールの達成ありきの結果のようにも見える。意外性はなかった』」
(2)「―東京都と神奈川県の最低賃金が初めて1千円を超える一方、目安通りならば、トップの東京都と最下位の鹿児島県の金額差は2円拡大し、226円となる見込みです。:『都市部と地方の最低賃金の格差は開く一方だ。格差を縮小するには、東京など都市部の伸びを抑える一方で、地方をそれ以上に伸ばすしかない。ただ、地方をどこまで引き上げるかについての手がかりとなる数字がないなか、そこまで踏み込むつもりがあるのか。今回の目安の決定からは、そこは見えてはこなかった』」
(3)「―安倍政権は『年3%の引き上げ』を通じて『全国加重平均1千円』を早期に達成するという目標を掲げています。:『政権の数値目標が、近年の大幅な引き上げを後押ししているのは間違いない。ただ、全国加重平均は、働く人の数に応じて地域を重みづけして算出するもの。このままのペースとやり方で【加重平均1千円】を達成するころには、東京都の最低賃金は1千円をはるかに上回る一方、地方との格差はさらに拡大しているだろう』」
(4)「―都道府県ごとに最低賃金に差が付く現状には批判的ですね。:『先進国では、働く地域を理由に最低賃金に差をつける国は少数派だ。コンビニの商品の値段は変わらないのに、働く人の賃金は県境をまたいで差がつく。この現状に、疑問を持つ人は多い。労働の対価である賃金の格差は、人権問題になり得る。差をつけるには本来、相応の理屈が必要。その理屈が地域でいいのかが、改めて問われている』」
(5)「―日本の最低賃金は国際的にみて低い、とよく言われます。:『日本の最低賃金の水準は、フルタイム労働者の平均賃金(中央値)の4割超にとどまる。その割合は、先進国では最も低い部類だ。フランスやルクセンブルクの最低賃金は平均賃金の6割に達している。豪州は約5割だが、6割が目標と明言している。フルタイム労働者の平均賃金を物差しにして、その5~6割を最低賃金とするのが先進国の標準と言える』」
(6)「―国際的にみれば、日本の最低賃金は引き上げの余地がまだあるということですか。:『最低賃金がフルタイム労働者の賃金の半分に満たない日本の状況は問題で、この賃金格差は是正するべきだ。ただ、どの程度の賃金格差までなら容認できるかは、国によって異なる。【最低レベルは6割だ】【半分以下では公正さを欠く】といった社会的な議論が必要だ』」
(7)「―具体的に、どの程度まで引き上げるべきでしょう。:『欧州の例を参考にすれば、フルタイム労働者の平均賃金の約6割にあたる1200円台までは引き上げ余地と見ることができる』」
(8)「―最低賃金を引き上げると雇用に悪影響が出る、との指摘も多いです。:『例えば、ここ3年で最低賃金を30%近く上げた韓国では、負担に耐えかねた企業の倒産が相次ぎ、雇用情勢は冷え込んでいる。ある一定の限界を超えたり、急激に引き上げたりすれば、雇用の減少は当然あり得る。ただ、日本で問題なのは、実際に地域で雇用にどのような影響が出ているかについて、有効な検証がなされていないことだ。おっかなびっくりな議論に終始せず、現状を正確に把握すれば、最低賃金を上げるのに必要な対策も見えてくるはずだ』」
(8)「―現在の最低賃金は、労使の代表が互いの主張をぶつけ合ったうえで、すりあわせて決める仕組みですが、『年3%の引き上げ』を掲げる安倍政権の意向が事実上の議論の前提になっています。:『最低賃金は、下回れば罰則があり、企業の自由を縛るものだ。だからこそ、労使で議論しながら決めてきた。過去の労使の議論は膠着(こうちゃく)しがちで、1~2円の引き上げも簡単ではなかった。だからといって政権目標に追随して【結果的に3%上がればいい】というのでは、最低賃金制度の持続可能性は危うい。あるべき賃金の姿について、労使が主体的かつ継続的に議論をリードしていくべきだ』」(榊原謙)


 ここには、一つの大きな示唆がある。
「最低賃金は、下回れば罰則があり、企業の自由を縛るものだ。だからこそ、労使で議論しながら決めてきた。過去の労使の議論は膠着しがちで、1~2円の引き上げも簡単ではなかった。だからといって政権目標に追随して『結果的に3%上がればいい』というのでは、最低賃金制度の持続可能性は危うい。あるべき賃金の姿について、労使が主体的かつ継続的に議論をリードしていくべきだ」
 政権の思惑によって「政策」を決定するのではなく、仕組みを(こうこでは正常な労使関係)作り上げることによって、持続可能な状況を作っていくことが大事だということである。
また、ここで一つのことを確認できた。
「先進国では、働く地域を理由に最低賃金に差をつける国は少数派だ。コンビニの商品の値段は変わらないのに、働く人の賃金は県境をまたいで差がつく。この現状に、疑問を持つ人は多い。労働の対価である賃金の格差は、人権問題になり得る。差をつけるには本来、相応の理屈が必要。その理屈が地域でいいのかが、改めて問われている」
 さらに、「フルタイム労働者の平均賃金を物差しにして、その5~6割を最低賃金とするのが先進国の標準」だということと、「欧州の例を参考にすれば、フルタイム労働者の平均賃金の約6割にあたる1200円台までは引き上げ余地と見ることができる」、ということ。



by asyagi-df-2014 | 2019-08-15 15:15 | 書くことから-労働 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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