「東京電力福島第一原発の汚染水対策が難航している。」、と朝日新聞。

 朝日新聞は2019年7月28日、表題について次のように報じた。


「東京電力福島第一原発の汚染水対策が難航している。原子炉建屋などの地下にたまる高濃度汚染水はなお約1万8千トン。計画通りに減らせていない場所もある。安倍晋三首相は2013年9月の東京五輪招致演説で「状況はコントロールされている」と言い切ったが、開幕まで1年を切った今も、現場は汚染水を制御しきれていない。」、と朝日新聞(以下、「朝日」)の記事は、確かに、この国の危うさを突く。
 したがって、「見通しが立っているのか、お手上げなのか、示して欲しい」(「朝日」)との原子力規制委員会側の発言報道は、本音を表している。
 「朝日」は、次のように指摘する。
(1)廃炉の進捗(しんちょく)を監視する原子力規制委員会の6月の検討会で、伴信彦委員は東電の担当者にいらだちをぶつけた。3号機の原子炉建屋地下階の一部エリアで計画通り水位が下がらない状態が2カ月も続いているのに、原因についてあいまいな説明に終始したからだ。
(2)建屋地下の高濃度汚染水は、福島第一が抱える汚染水リスクの「本丸」だ。1~3号機の溶融燃料を冷やした水に、建屋の割れ目などから流入する地下水が加わって生まれる。放射性物質の濃度は、タンクに保管されている処理済み汚染水の約1億倍。事故直後には、地下の坑道を伝って海へ漏れ、魚介類から基準値を超える放射性物質が検出される事態を招いた。
(3)100万トン以上に増えたタンクの汚染水も、もとは建屋地下からくみ上げたもの。この「おおもと」をなくさない限り汚染水対策は終わらない。
(4)事故当初、1~4号機の原子炉建屋とタービン建屋の地下にたまっていたのは約10万トン。東電は、井戸から地下水をくみ上げたり、建屋の周りの土壌を凍らせる「凍土壁」をつくったりして地下水の流入を減らしながら、地下の汚染水の水位を徐々に下げてきた。事故から8年が過ぎた今、1万8千トンに。20年度中に6千トンに減らし、最下階の床をほぼ露出させる目標だ。
(5)ただ、思うようには進まない。検討会で規制委から「持ち帰って検討しますでは、また1カ月が無駄になる」と追及されることもあった。3号機の問題の区画も、溶融燃料を冷やす水が流れ込んでいることはわかったが、そこだけ水位が下がらない理由が不明だ。
(6)建屋内の水位が高いままだと、周囲の地下水の水位を下げたとき割れ目などから汚染水が地中へ漏れ出す恐れがあるため、作業全体が滞ってしまう。その後、東電は実際に作業員を現場に向かわせ調査したが、理由は特定できなかった。


 また、「朝日」は、東京電力の津波対策の遅れについても追求する。


(1)「おおもと」を減らす作業と並行して、規制委は津波対策も求めている。再び巨大津波に襲われると、引き波で地下の高濃度汚染水を海へもっていかれるおそれがあるからだ。国の地震調査研究推進本部が17年、北海道沖の千島海溝で東日本大震災級の地震が切迫している可能性が高いとの見解を公表するなど、警戒を緩められない状況にある。
(2)だが、この対策も遅れがちだ。原発事故の影響で密閉できなくなった扉など、津波時に汚染水の流出ルートになりうる開口部を約50カ所閉じる工事は21年度末までかかる見込み。千島海溝の巨大地震の津波も防げる防潮堤の増設は20年度上半期までかかるという。


 さらに、「朝日」は指摘を続ける。


(1)「コントロール」発言があった13年9月当時は、タンクにためていた高濃度汚染水があちこちで漏れて海へ流れたり、地中にしみこんだ汚染水が地下水と混ざって港湾内へ流れ込んだりしていた。政府は「港湾外の海水の放射性物質濃度は検出できないほど低くなっており、全体として状況はコントロールされている」と説明してきた。
(2)その後、岸壁に鉄板を打ち込むなどの対策が進み、海への汚染水流出はほぼ止まったとされる。ただ、建屋の表面や地表に残る放射性物質が雨水とともに海に流れ込むのは防ぎきれていない。東電は、16年度に排水路を通じて1日平均約1億ベクレルの放射性セシウムが流出していたと試算している。
(3)一方、筑波大の青山道夫客員教授(地球化学)が、東電が公表している原発周辺の海水に含まれる放射性物質のデータをもとに、同時期に原発から海へ流出した放射性セシウムの量を試算すると、1日あたり約20億ベクレルと出た。魚介類に影響が出るようなレベルではないものの、「東電が把握しているルート以外にも流出経路があると考えないと説明できない。しっかり調査すべきだ」と指摘する。
(4)東電は「計算の仕方が違っており、単純に比較できない。海水の放射性物質の濃度は大きく変動しておらず、新たな流出はないと考えている」と説明する。
(5)安倍首相は五輪招致にからみ、「汚染水による影響は、港湾内の0・3平方キロの範囲内で完全にブロックされている」とも述べた。東電は「放射性物質が外に漏れるのを完全に遮っているわけではない。少なくとも近海で放射性物質の濃度が上昇しているとは認められない」としている。
(杉本崇、今直也)


 最後に、「朝日」は、現状の危うさを批判する。


(1)福島第一原発事故は、発生直後から汚染水との格闘の連続だった。電源復旧作業に向かった作業員が足を水につからせ被曝(ひばく)。海への流出元の特定に時間がかかったうえ、高濃度汚染水の保管場所を確保するため、比較的低濃度の汚染水を意図的に海に放出し、海外から批判を浴びた。
(2)いくらくみ出しても、地下水が流入して追いつかない。状況把握は後手に回り、場当たり的な対応を繰り返した。タンクからの水漏れなどトラブルも相次いだ。
(3)「コントロール」発言があったのは、まだまだ混乱の渦中と言うべき時期だった。国際社会の懸念を払拭(ふっしょく)する目的だったとしても、歯切れの良い言い切りは、現場の実態とかけ離れていたあれから6年。当時に比べれば対策は進み、高濃度汚染水の量も減ったとはいえ、封じ込めができていない状況に変わりはない。
(4)農林水産省によると、原発事故を理由とする水産物の輸入規制は22カ国・地域で続いている。事故を起こした国に対する海外の視線はいまだ厳しい。
(5)東京五輪が近づくなか、何かのトラブルで汚染水がまた海に漏れ出すことがあれば、日本の国際的な信用は大きく傷つくだろう。潜在的なリスクから目をそむけてはならない。(編集委員・佐々木英輔)



 確かに、「朝日」は、ことの問題点を改めて指摘してくれる。
 一つには、安倍晋三政権の「『コントロール』発言があったのは、まだまだ混乱の渦中と言うべき時期だった。国際社会の懸念を払拭(ふっしょく)する目的だったとしても、歯切れの良い言い切りは、現場の実態とかけ離れていたあれから6年。当時に比べれば対策は進み、高濃度汚染水の量も減ったとはいえ、封じ込めができていない状況に変わりはない。」(「朝日」)、ということ。
 二つ目には、例え臨まない五輪だとしても「東京五輪が近づくなか、何かのトラブルで汚染水がまた海に漏れ出すことがあれば、日本の国際的な信用は大きく傷つく」、ということ。
 そして、このことが示しているのは、リスクが厳然と存在していること。



by asyagi-df-2014 | 2019-07-31 07:26 | 書くことから-原発 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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