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原告の思いよとどけ!-ハンセン病家族訴訟で、国の責任認める初の判決。(7)

 毎日新聞は2019年7月9日、「国は控訴を断念する方針を表明」、と次のように報じた。


(1)安倍晋三首相は9日午前、ハンセン病元患者家族への差別に対する国の責任を認めた熊本地裁判決を受け入れ、控訴を断念する方針を表明した。首相官邸で根本匠厚生労働相、山下貴司法相らと協議後、記者団に「筆舌に尽くしがたい経験をされたご家族のご苦労をこれ以上長引かせるわけにはいかない」と述べた。隔離政策が家族への差別も助長したと認定して初めて家族への賠償を命じた熊本地裁判決が確定する。
(2)熊本地裁判決は、世界保健機関(WHO)が隔離を否定した1960年以降も隔離政策を廃止しなかった厚労相らの義務違反などを認定。「隔離政策以前とは異質な家族への排除意識を生んだ」として、家族への偏見差別を除去する国の責任を認め、541人に1人当たり143万~33万円を支払うよう国に命じた。【杉直樹】


 このハンセン病家族訴訟を考えるために、ハンセン病家族訴訟原告団・ハンセン病家族訴訟弁護団によって出された「全面解決要求書」(2019年7月2日)と 「政府の控訴断念決定を受けての声明」(2019年7月9日)を取りあげる。
なお、「全面解決要求書」(以下「要求書」)は、7月2日に議員会館で開催された「ハンセン病問題の最終解決を進める国会議員懇談会」で提出されたものであり、「政府の控訴断念決定を受けての声明」(以下、「声明」)は政府の控訴断念決定を受けてのものです。
この「要求書」が突きつけているものは、1「責任の明確化と謝罪」、2「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律の改正」、3「恒久対策」、の要求です。
まず、第1の「責任の明確化と謝罪」については、「ハンセン病隔離政策が病歴者本人のみならずその家族らに対しても違法な 人権侵害であったこと、今日に至るまでなお、隔離政策による家族の被害を 認めず、その回復のための施策を講じなかったことにつき、責任を認め、真摯に謝罪すること。」、とされています。
第2の「名誉回復措置と損害賠償」については、「謝罪広告などにより、広く社会に対し、ハンセン病歴者家族らの名誉回復措置を採るとともに、家族らが受けた被害を償うに足りる賠償・補償をおこなうこと。」、とされています。
 第3の「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律の改正」みついては、「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律につき、①家族らも隔離政策の 被害者であったことを明確化する、②家族の被害回復をハンセン病問題に関 する施策の目的として位置付ける、③家族らに対する差別の禁止を明文化す る、④家族らのハンセン病問題に関する政策形成過程への参加を保障すると いった改正を行うこと。」、とされています。
 最後の第4の「恒久対策」については、差別・偏見の解消に向けた施策について、法務省、文部科学省も含め、国の行っているハンセン病問題の啓発活動全般につき、①国の加害責任を繰り返し明らかにする、②病歴者本人のみなら ず家族の被害を前提とする方向で、抜本的な見直しを行うこと。また、家族関係回復に向けての施策家族関係の回復に向けて、①それを目的とする社会福祉士や精神保健福祉士を、各療養所及び各都道府県に配置する等家族関係回復を促進するための仕組みを構築すること、②ハンセン病隔離政策による被害から立ち直ることを目的とする家族らのセルフヘルプグループの活動を援助する等の施策を講ずること。さらに、継続的な協議について、ハンセン病問題対策協議会に家族原告団代表の参加を認め、家族被害の解 消をこの協議会のテーマの一つとして位置付けること、とされています。
             

 さて、今回の国の控訴を断念する方針を表明を受けて、ハンセン病家族訴訟原告団・ハンセン病家族訴訟弁護団は、次のように声明を出しました。


(1)本日,安倍晋三総理大臣は、去る6月28日言い渡された、熊本地方裁判所のハンセン病歴者の家族に対する国の責任を認める判決に対し、政府として控訴をしない旨決定したことを表明した。
(2)同判決は、らい予防法及びハンセン病患者隔離政策により、ハンセン病家族が偏見差別を受ける地位におかれた被害及び家族関係形成が阻害される被害をこうむったことを認めるとともに、国会議員,厚生労働大臣(厚生大臣)、文部大臣(文部科学大臣)ならびに法務大臣の差別偏見解消義務等の作為義務違反を厳しく断罪したものである。
(3)安倍総理大臣は、かかる熊本地裁判決を深く受け止め,「筆舌に尽くしがたい家族のご苦労を長引かせるわけにはいかない」として控訴を断念したもので、われわれ原告団及び弁護団は、この決定によって、国のハンセン病家族に対する責任が確定したものと評価するところである。
(4)今後、われわれ原告団・弁護団は、確定した国の責任をふまえたハンセン病問題の全面解決をめざし、偏見差別の根本的解消に向けた国全体での取り組みを求めるとともに、その第一歩として、安倍総理が家族原告と面談し被害を直 接聴く場をもうけること、安倍総理が政府を代表して一人一人の心に響く謝罪を行うこと、ならびに被害者全員に対する一括一律の被害回復制度の創設を、早急に実現することを求めるものである。
(5)最後に、熊本地裁の勝訴判決から政府の控訴阻止にいたるまで絶大なる支援と協力をいただいた、市民、国会議員、ハンセン病回復者のみなさまに心より御礼を申し上げるとともに、ひきつづき、ハンセン病問題の全面解決のためのご理解とご協力をお願いする次第である。


 確かに、2019年6月28日の判決と7月19日の国の控訴を断念する方針の表を受けて、受け取るものは次のものである。
 『ハンセン病問題の全面解決』のために何ができるかのか、何をしなければならないのかを、一人一人がじっくり見つめ直し、一人一人が全面解決のために動く。




by asyagi-df-2014 | 2019-07-13 06:30 | ハンセン病 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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