安倍晋三政権が認知症に関する施策の指針となる大綱を決定。

 安倍晋三政権は2019年6月18日、認知症に関する施策の指針となる大綱を決定した。
成長戦略に沿った社会保障費の減額を狙った「予防」の数値目標の導入は、大綱の原案では「予防と共生」となっていたものが「共生と予防」に修正されたなかで、削除されることになった。
この大綱について、朝日新聞(以下「朝日」)は、「これまでは共生に軸足を置いてきたが、社会保障費の抑制などに向けて方針を転換」、と次のように報じた。


(1)政府は18日午前、認知症に関する施策を進めるための関係閣僚会議を開き、団塊の世代が75歳以上となる2025年までの取り組み方針をまとめた大綱を決定した。認知症になっても地域で安心して暮らせる『共生』と、認知症になる時期や進行を遅らせる『予防』を『車の両輪』として取り組むと明記した。これまでは共生に軸足を置いてきたが、社会保障費の抑制などに向けて方針を転換する。
(2)厚生労働省の推計では、認知症の人は25年には約700万人になり、高齢者の5人に1人にのぼる。大綱は「認知症はだれもがなりうる」としたうえで、運動不足の改善や社会参加などを進めた結果として「70歳代での発症を10年間で1歳遅らせることを目指す」とした。当初は数値目標で掲げる予定だったが、当事者らから「『認知症になるのは予防の努力が足りないからだ』との偏見を生みかねない」との反発を受けて参考数値に格下げした。
(3)共生の実現に向けては、車に代わる交通手段の確保や見守り体制の整備を進めるほか、認知症サポーターを20年度末までに1200万人養成するとした。原案には、老後の生活費が2千万円不足するとして資産形成・管理を呼びかける金融庁の審議会の報告書について「周知・浸透を図る」との記述もあったが、政府が正式な報告書として受け取らないと決めたことを受け、記述を削除した。                    (石川春菜)


 また、「朝日」は2019年6月19日、このことに関連して、「認知症『誰もがなりうる』 政府大綱が描く共生と予防」、と解説した。
 この中で、「予防」の数値目標を削減したことについて、次のように示している。


(1)団塊の世代が75歳以上となる2025年までを対象期間に、認知症になっても地域で安心して暮らせる「共生」と、認知症の発症や進行を遅らせる「予防」を「車の両輪」と位置づけた。予防の数値目標は反発を受けて撤回した。
(2)厚生労働省の推計では、認知症の人は25年には約700万人になり、65歳以上の5人に1人に上る。大綱は「認知症はだれもがなりうる」と指摘した上で、社会参加などを進めた結果として「70歳代での発症を10年間で1歳遅らせることを目指す」とした。15~25年が対象期間の従来の認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)は共生に重点を置いたが、今後は予防にも力を入れる。
(3)政府は当初、「70代で認知症になる時期を19~29年の10年間で1歳遅らせ、70代の認知症の人の割合を25年までに6%減らす」との数値目標を大綱に盛り込もうとした。だが、5月中旬に公表すると、当事者らが「予防に取り組んでいながら認知症になった人が『落第者』になり自信を失う」などと反発。最終的な大綱では「6%減」を削除し、「1歳遅らせる」は参考数値にとどめた。


 また、安倍晋三政権が、「予防」の数値目標を大綱に入れようとした目的については、次のように押さえている。


(1)予防を前面に打ち出すきっかけとなったのは、政府の経済財政諮問会議での議論だった。議事要旨によると、複数の民間議員が昨年10月の会合で、認知症にかかる医療・介護費などの社会的コストが30年には21兆円超になるとの試算に触れて、予防の重要性を主張。翌月の会合では、新浪剛史・サントリーホールディングス社長が、認知症を「日本経済に極めて大きな足かせとなる」としていた。当事者団体の幹部は「認知症の人や家族の声を脇に置いた、社会保障費の抑制の観点での議論だった」と残念がる。
(2)大綱を取りまとめた内閣官房と厚労省からは、「数値目標にあんなに反発があるとは」「軽率だった」との声が漏れる。原案では「予防と共生」だった語順も、大綱では「共生と予防」に修正。厚労省の担当者は「共生の基盤の上で予防を進めるという趣旨だ」と釈明した。
(3)また原案には、老後資金が2千万円不足するとして資産形成を呼びかける金融庁の審議会の報告書の「周知・浸透を図る」との記述もあったが、政府が受け取らないと決めたため記述を削除した。数値目標と同様、当事者の視点を欠いた内容の修正が相次いだ。


 「朝日」は、今回の大綱の決定について、最後に、次のように伝えた。


「認知症の人と家族の会代表理事の鈴木森夫さんは、数値目標が取り下げられたことは『評価したい』としつつも、『介護保険は、負担増や軽度向けサービス削減で【介護の社会化】の理想から後退を重ねている。本人や家族への支援を減らしながら【共生】の理念を掲げるのは矛盾する』と指摘。日本認知症本人ワーキンググループの藤田和子代表理事は、大綱が『本人』の意見や視点を踏まえた施策の推進を掲げたことを重視。『現在は地域差が大きい。身近な市町村で着実に実行され、希望をもって過ごせる人が増えるよう、私たち【本人】も一緒に取り組みたい』とする。」




by asyagi-df-2014 | 2019-06-27 05:49 | 持続可能な社会 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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