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川崎市は、ヘイトスピーチ違反者への刑事罰を盛り込んだ条例を市議会に提示。

 朝日新聞は2019年6月24日、表題について次のように報じた。


(1)特定の民族や人種を侮辱したり、地域から追い出そうとしたりするヘイトスピーチを規制しようと、川崎市は24日、違反者への刑事罰を盛り込んだ条例の素案を市議会に提示した。違反を3回重ねた場合、50万円以下の罰金とする。市によると、ヘイトスピーチに刑事罰を科すと定めた自治体はこれまでなく、全国初になるという。
(2)市がこの日、「差別のない人権尊重のまちづくり条例」(仮称)の素案を明らかにした。
(3)市内の公共の場でヘイトスピーチをしたり、させたりすることを禁じたうえで、違反があった場合、市長は①違反行為をやめるように勧告②2回目の違反をした者に、やめるよう命令③3回目の違反をした者の氏名や団体名などを公表し、市が被害者に代わって検察庁か警察に告発する。
(4)罰金を科すべきかどうかを司法手続きに乗せ、裁判所などの判断に委ねる仕組みだ。市幹部は「憲法が保障する『表現の自由』に留意する必要がある。ヘイトスピーチかどうかを行政が恣意(しい)的に決めないようにすべきだ」と説明している。
(5)市長は勧告や命令の前には、有識者でつくる「差別防止対策等審査会」の意見を聴く。審査会は違反者に文書で意見を述べる機会を与えることができる。ヘイトスピーチは2013年ごろから、東京・新大久保や大阪・鶴橋などで激化。川崎市でも公園を利用した集会やデモが繰り返された。16年にはヘイトスピーチ対策法が成立したが、罰則はなく、市は18年、ヘイトスピーチの恐れがあれば公園など公的施設の利用を拒めるガイドライン(指針)を、全国で初めて施行した。市によると、対策法施行後、市内ではヘイトスピーチは確認されていないものの、市幹部は「今後もヘイトスピーチが起きる可能性がある。抑止するためには罰則付き条例が必要だ」と語る。
(6)市は素案について今夏、パブリックコメントを実施し、12月議会に条例案を提出する方針。罰則を含め、来年7月に全面施行したい考えだ。             (斎藤茂洋)
(7)川崎市が、ヘイトスピーチを繰り返す者に刑事罰を科す方針を示した。行政罰としての過料を命じる条例はこれまでもあったが、刑事罰を盛り込んだ案は初めてだという。国や自治体にヘイトスピーチ解消の取り組みを求める対策法が2016年に施行され、各地での動きが広がりつつある。
(8)香川県観音寺市は17年、公園条例を改正してヘイトスピーチの禁止条項を盛り込んだ。違反した場合、行政罰として5万円以下の過料を科す。大阪市の条例には、ヘイトスピーチをした者の名前を公表する規定がある。
(9)罰則はないものの、法にはない「差別禁止」の文言を盛り込んだのは、東京都国立市や東京都世田谷区。東京都は「オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」を今年4月に施行した。不当な差別的言動を防ぐため、公園などの利用制限の基準を定めたほか、性的少数者の差別的取り扱いを禁じた。
(10)京都府や京都市では公的施設の利用制限を可能とするガイドラインを定めた。神戸市では6月、外国人に対する差別解消に向けた条例が成立し、来年施行される。
(11)国連人種差別撤廃委員会は、国際条約上の義務としてヘイトスピーチを刑事規制するよう日本に4回にわたって勧告している。                    (編集委員・北野隆一)
(12)奈須祐治・西南学院大教授(憲法)の話:「人種、国籍、民族、信条、年齢、性別、性的指向、性自認、出身、障害」などを理由とする差別的取り扱いを禁止した、包括的な人権条例として画期的だ。そのうえでヘイトスピーチの対象を「本邦外出身者」に限り、刑事罰の対象を川崎市内の公共の場所での言動と想定し、インターネットを別扱いとした。刑事罰を科す際に検察や裁判所を介在させる慎重な手続きをとることも含め「表現の自由」への配慮も示したと言えるのではないか。市長が勧告や命令の前に意見を聴く審査会のメンバーの多様性と専門性の確保が、必要となるだろう。
(13)小谷順子・静岡大教授(憲法)の話:素案が禁じるヘイトスピーチの定義の一つに「特定国出身者等を著しく侮蔑するもの」の概念が入った。特定の個人ではなく不特定多数の集団への侮辱を刑事規制することは、被害が抽象的との観点から憲法違反との学説が多い。規制できないとされた「集団的侮辱」を新たに規制するため、言論を直接罰するのではなく、命令違反に罰金を科す構造としたところが、表現の自由保障への配慮と言える。




by asyagi-df-2014 | 2019-06-25 12:14 | 書くことから-ヘイトクライム | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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