この国の現状。係争委が県申請却下。

「[係争委、また却下]地方自治守る砦 形骸化」(沖縄タイムス)
「係争委が県申請却下 国追認機関と化している」(琉球新報)


 2019年6月18日の沖縄タイムス(以下、「タイムス」)と琉球新報(以下。「新報」)の両社の社説の見出しは、何を物語るのか。
これをもとに、日本という国を考える。


1.事実
(「タイムス」)
(1)名護市辺野古の新基地建設を巡り、総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会(係争委)」(委員長・富越和厚元東京高裁長官)は17日の第2回会合で、県の審査申し出を却下した。県は埋め立て承認撤回を取り消した国土交通相の裁決は違法だとして取り消しの勧告を求めていた。
(2)富越氏は会合後の記者会見で埋め立て承認撤回を取り消した国交相の裁決は自治体の行政運営への介入を意味する「国の関与」に当たらず、「申し出は不適法」と却下の理由を説明した。
(3)今年2月には国交相による埋め立て承認撤回の執行停止に関し、係争委は同じく「国の関与」に当たらないと県の申し出を却下している。
(4)形式論に終始し実質審理に踏み込まなかった係争委の姿勢は納得できない。地方自治を守る砦が形骸化し、存在意義が問われている。
(「新報」)
(1)米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡り、総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」(係争委)は県の審査申し出を再び却下した。埋め立て承認撤回を取り消した国土交通相の裁決を不服とする県の申請に対してだ。2月には、埋め立て承認撤回の効力停止を不服とした県の主張を退けたが、それと同じ結論だ。
(2)係争委は県の審査請求の主張が前回と同趣旨だったため「判断も同旨となった」と説明した。「国が主張する内容の適法性を判断するものではない」とも述べた。国交相の判断が違法かどうかなど実質的な審議はせず形式論に終始し、またもや門前払いにした。
(3)係争委の判断を受けて県は国交相の裁決の取り消しを求めて福岡高裁に提訴する見通しだ。辺野古問題を巡る国と県の対立は再び法廷の場に移ることになる。


2.何が問題なのか。
(「タイムス」)
(1)今年2月には国交相による埋め立て承認撤回の執行停止に関し、係争委は同じく「国の関与」に当たらないと県の申し出を却下している。形式論に終始し実質審理に踏み込まなかった係争委の姿勢は納得できない。地方自治を守る砦が形骸化し、存在意義が問われている。
(2)係争委は国と自治体の関係を「上下・主従」から「対等・協力」に転換した1999年の地方自治法改正に伴い設置。国と自治体の紛争の解決のために公正・中立の立場で調停するのが筋だが、その役割を担っているか疑問だ。
(3)2015年に同じ構図で県の申し出が却下された際、当時の係争委は防衛省沖縄防衛局が「私人」と同じ立場で承認を受けたとする国交相の判断に「疑問も生じるところ」と疑義を呈し「一見明白に不合理であるとまでいうことはできない」と結論づけた。だが富越氏は「一見明白説をとらず、疑問は生じない」と明言した。自ら審理対象を狭め、国寄りへの転換ではないか。15年が賛成多数だったのに対し今回は5委員の全会一致だった点にも表れている。
(4)係争委の却下は県が行った撤回や、国交相の裁決についても適法か違法かの判断をしているわけではない。最終的な判断ではないのである。
(「新報」)
(1)行政不服審査制度を用いて撤回の審査を申し出た沖縄防衛局は一般私人と同様の立場にないため審査請求できないと県は主張する。内閣の一員である国交相は、防衛局の申し立てを判断できる立場にないとも指摘している。これに対し国は「防衛局は私人と同様の立場だ」と反論する。このため国の機関が審査庁になり得るとも主張している。
(2)これらの議論を巡る係争委の判断は前回同様、国の主張をうのみにした内容だ。国の主張に対しては、多くの行政法研究者が批判してきたが、それを無視した形だ。批判を真摯に受け止めているとは思えない。
(3)そもそも国が進める埋め立てには疑問が尽きない。大浦湾の軟弱地盤の改良は工期や工費を示せていない。県は、埋め立て工程の変更に関して環境保全を理由に国へ行政指導を再三実施している。環境面にも疑念が残る。こうした問題含みの工事について中身に踏み込まず形式論で門前払いしたことは、係争委が第三者機関として機能していないことを意味する。
(4)係争委は、国と自治体の関係を「上下・主従」から「対等・協力」に転換した1999年の地方自治法改正に伴い設置された。自治体の行政運営に対する国の介入が違法・不当だと判断すれば、是正を求める役割がある。ところが係争委は2月に続いて今回も国の主張に寄り添った。これではあるべき姿から程遠い。本来の役割を放棄し、国の追認機関と化しているように映る。


3.だから言わなければならないこと
(「タイムス」)
(1)県の主張は極めて常識的なことである。
(2)行政不服審査法(行審法)は国民(私人)の権利救済を図るのが目的である。行審法を国の機関の沖縄防衛局が利用するのは不適法である。公有水面埋立法では民間事業者と国の機関を明確に区別。防衛局が行審法を使って「私人」になりすまして審査請求・執行停止を申し立てたことに多くの行政法学者から批判を浴びたことからもわかる。
(3)裁決を下した審査庁の国交相は防衛省と同様、内閣の一員で、辺野古新基地を推進する立場である。安倍内閣の下で異なる判断が出るわけがないのである。国の「自作自演」というほかない。
(4)係争委は結果的に国の手法を追認しており、これが許されるなら自治体の処分が何であっても国の機関が覆すことができてしまう。
(5)県は係争委の結論を不服として福岡高裁那覇支部に訴訟を起こす方針だ。これとは別に、行政事件訴訟法に基づき、埋め立て承認の撤回を取り消した国交相の裁決を違法として取り消しを求める訴訟を那覇地裁に提起する見通しだ。
(6)司法には三権分立に則り、政権に忖度することなく中立・公正な審理を求めたい。
(「新報」)
(1)県が係争委に申し出たのは、いくら対話による解決を求めても政府が聞く耳を持たないからだ。投票者の約7割が反対した県民投票後も政府が姿勢を変えない中、第三者機関が機能しないのでは、自治にとどまらず、日本の民主主義制度全体が機能不全に陥っているとしか思えない。
(2)沖縄以外の人々にとっても人ごとではないはずだ。このあからさまな実態に目を向けてほしい。


 あらためて確認する。
 国地方係争処理委員会(係争委)は、国と自治体の関係を「上下・主従」から「対等・協力」に転換した1999年の地方自治法改正に伴い設置されたものであり、国と自治体の紛争の解決のために公正・中立の立場で調停するのが本来の仕事である。したがって、今回もまた、係争委員会は、その役割を逸脱した。
 日本という国を考えるとは、一つには、日本の司法の今を知るということである。この問題で、日本の司法は、本来の役割を果たすことができるのかを、注視する。




by asyagi-df-2014 | 2019-06-25 07:05 | 持続可能な社会 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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