認知症基本政策策定とは。(2)

 自民党の認知症基本政策策定に関して、朝日新聞は2019年5月19日、「自民党の社会保障制度調査会・介護委員会は17日、「認知症基本法案(仮称)」の骨子を公表した。認知症に関する施策を推進するための基本計画の策定を政府に義務づけ、首相がトップの推進本部を設置すると定める。公明党と協議し、今国会に共同提案する方針。」、と報じている。
 このことに関して、朝日新聞と琉球新報の社説から、次のようにまとめてみた。


 確かに、基本理念として「認知症の人が地域において尊厳を保持しつつ他の人々と共生すること」を掲げ、「予防」と「共生」が掲げられてはいるが、安倍晋三政権の成長戦略路線の中では、削減目標ありきの社会保障費抑制のための「予防」政策が偏重されることは、「既定路線なのではないか」、との不信感が拭えない。
「朝日」と「新報」の指摘から受け取るものは、次のことである。
Ⅰ.「認知症の発症原因や予防の科学的効果が十分立証されていない中、加齢によって誰でも発症し得る病気であることを理解することがまずは大切なこと」(「新報」)であることを、取り組みの大原則にしなければならないこと。
Ⅱ.「かつて認知症は「痴呆(ちほう)」「ぼけ」と呼ばれ、本人は「何もわからない」という偏見のなかで孤立していた。近年、認知症の人自身が思いを語ることで、少しずつその壁を崩してきた。本人の活動や交流の場は急速に広がっている。」(「朝日」)、との取り組みの成果を大切にしなければならないこと。
Ⅲ.「認知症の国家戦略とも言うべき大綱に、認知症の人の割合を減らす数値目標を盛り込むことは、予防そのものの意義とは別の危うさをはらむ」(「朝日」)ものであること。したがって、予防と並ぶ柱は「共生」であり、削減目標はこの共生の理念を揺るがしかねないものであること。
Ⅳ.いま国が予防を強調する背景には、社会保障費抑制の狙いがあること。また、「いまだ根強い偏見の中で、財政的圧力を背景とした削減目標の数字が独り歩きすれば、自治体が認知症の削減率を競うような、思わぬ副作用が生じないとも言い切れない。」(「朝日」)ことが予想されること。
Ⅴ.「予防重視の方針について、『頑張って予防に取り組んでいながら認知症になった人が、落第者になって自信をなくしてしまう』との意見を伝えたという。こうした当事者の懸念を軽視すべきではない。」(「朝日」)こと。また、「『認知症になった人は努力が足りないと思われるのでは』と、数値目標が独り歩きすることへの懸念も出ている。有識者からも『認知症にならない社会をつくる、という誤ったメッセージになる』と疑問」(「朝日」)を解消することが大事であること。
Ⅵ.「誰のための予防で、何のための削減目標なのか。政府は、わかりやすく明確に説明する必要がある。」(「朝日」)ことが重要であること。
Ⅶ.国の社会保障費抑制政策の中で、「公助」の位置づけは著しく後退させられてきているが、今回の基本政策の具体策の一つとして、「地域づくりの推進」や「公民館や公園など身近な場での体操や教育講座など『通いの場』への参加」(「新報」)が位置づけられている。このことは実際に、地域住民への過度な「自助」「共助」の押しつけになる危険性がある。特に、過疎地域では、その負担は危険水域に達している状況がある。このことのために、「公助」があって初めて、「自助」「共助」が生かされることを背景にした政策立案をする必要があること。


 今回は、北海道新聞(以下、「北海道」)の「認知症の予防 数値目標は懸念拭えぬ」との社説で、再度、この問題を考えてみる。


 「北海道」は、「認知症になる人の割合を減らす数値目標が一人歩きしてしまわないか、懸念が拭えない。」から始める。
 どういうことなのか。
 「北海道」は、安倍晋三政権の意図を、「政府は、従来の『共生』社会の実現に加え、『予防』重視を打ち出した新たな認知症対策の大綱素案を公表した。初めて数値目標を設定し、70代に占める認知症の人の割合を2025年までの6年で6%減、10年で1割減を目指す。認知症の医療・介護費など社会的コストは30年に21兆円を上回るとの推計もあり、予防で認知症になる年齢を遅らせ、社会保障費の抑制につなげる狙いのようだ。」、と指摘する。
 だから、「北海道」は、このことに関して、「しかし、認知症はいまだに治療法も予防法も確立されていない。予防を強調しすぎると、認知症になった人が責められるような風潮を生まないか危惧される。認知症になっても安心して暮らせる共生社会の実現に軸足を置くべきだ。」、と押さえる。


 さらに、「数値目標を設けるのは拙速ではないか。」、と批判を加える。


(1)現行の認知症施策「新オレンジプラン」は15年に策定され、住み慣れた地域で自分らしく暮らせる社会の実現をうたう。20年度末までに当事者や家族を支援する「認知症サポーター」を1200万人養成し、交流の場となる「認知症カフェ」の全市町村設置を目標に掲げる。こうした環境整備を急がなければならない。
(2)厚生労働省は、認知症の高齢者が15年の約500万人から25年には約700万人に増え、高齢者の5人に1人に達すると予測する。
(3)今回の大綱素案が「共生」とともに重視する「予防」では、運動不足の解消や高齢者らが交流する「通いの場」の拡充などを図る。
(4)一般的に、予防のため、禁煙や節酒などが推奨されるが、科学的根拠は不十分だ。予防の取り組みや研究を進めるのは当然だが、数値目標を設けるのは拙速ではないか。
(5)認知症の人の団体メンバーが根本匠厚生労働相に、予防重視は「予防に取り組んでいながら認知症になった人が落第者になってしまう」と伝えた。
(6)こうした当事者の声を十分にくみ取ったか疑わしい。


 最後に、「北海道」は、「全国各地で、認知症の人たちが思いを語る『本人ミーティング』が広がっている。認知症でも人の役に立ちたいと望む人は多い。介護をする家族や若年で認知症になる人なども置き去りにならぬよう、政府は、誰もが認知症になり得ることを前提に、制度を練り上げる必要がある。」、と結ぶ。




by asyagi-df-2014 | 2019-05-31 07:05 | 持続可能な社会 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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