改正出入国管理法が成立させられた。確かに、日本の政治の惨状を見せつけられた。(1)

 「改正出入国管理法」(以下、「入管法」)が可決された。
このことを、朝日新聞は2018年12月8日、次のように報じた。

(1)外国人労働者の受け入れ拡大に向けた改正出入国管理法(入管法)が、8日未明の参院本会議で採決され、自民、公明両党と日本維新の会、無所属クラブの賛成多数で可決、成立した。これに先立つ参院法務委員会では、与党は主要野党の反対を押し切って採決を強行した。来年4月1日に施行される。
(2)改正法は政府が指定した業種で一定の能力が認められる外国人労働者に対し、新たな在留資格「特定技能1号」「2号」を付与することが柱。政府は介護や建設など14業種を検討の対象とし、5年間で最大約34万5千人の受け入れを見込む。ただ、こうした主要項目は成立後に省令などで定めるとしている。
(3)改正法成立後、山下貴司法相は「衆参両院で熱心な議論をいただいた。しっかりとした制度を政省令で示し、施行まで準備を進めたい」と記者団に語った。大島理森衆院議長は法施行前に政省令を含む制度の全体像を国会に報告するよう政府に求め、安倍晋三首相も応じる考えを示している。
(4)野党は「白紙委任法だ」として今国会での成立阻止を目指し、7日に山下氏の問責決議案を、夜には首相の問責決議案を相次いで参院に提出。いずれも参院本会議で与党の反対多数で否決されたが、与党が目指した7日中の改正法成立は日付を越えて大幅にずれ込んだ。
(5)横山信一委員長(公明)が職権で開いた参院法務委は、8日午前0時過ぎに、反対する野党議員が委員長席に詰め寄るなか、与党が採決を強行した。その後、午前4時過ぎの参院本会議で改正法が成立した。立憲民主党の有田芳生氏は反対討論で「拙速な審議、一時しのぎの対策では必ず禍根を残す」と訴えた。国民民主党は、内閣不信任決議案の提出を立憲民主党に申し入れたが、同調が得られず、提出は見送りとなった。一方で国民は独自の付帯決議案を提出。外国人労働者の受け入れ数の上限を設定するなどの内容で、参院法務委で自民、公明、維新などが賛成し可決された。


 野党が「白紙委任法だ」と指摘した「入管法」の成立をどのように捉えるのか、考えてみた。
ここ最近確認した「入管法」の成立に関する、今回取りあげた七紙の社説・論説の見出しは次のものである。


(1)朝日新聞社説-改正入管法成立へ 多くの課題のを残したまま
(2)毎日新聞社説-就労外国人 改正入管法成立へ 国会を空洞化させた自民
(3)東京新聞社説-入管難民法の改正 「共生」の国はどこへ
(4)琉球新報社説-入管難民法改正 事は生身の人間の話だ
(5)岩手日報論説-外国人との共生 「人」として受け入れよ
(6)信濃毎日新聞社説-国会閉幕へ 政治の惨状を見せつけて
(7)読売新聞社説-改正入管法成立 外国人就労拡大へ課題は多い


 このように見出しを並べると、課題の指摘は全社で見られることから、いかに問題のある法案であったかが推測できる。読売新聞でさへ「野党の追求により、技能実習制度の問題点が改めて浮き彫りになった。」、と指摘するほどである。
 どうやら、問題の核心は、この「入管法」が「政府が主体的に関与しつつ、外国人就労の包括的な仕組みを整えることは評価できる。」(読売新聞)と評価できるもかどうかに係っている。
  肯定的に捉える読売新聞に対して、残りの六社は否定的に捉える。それは、「多くの課題」(朝日新聞)・「『共生』の国はどこへ」(東京新聞)・「事は生身の人間の話だ」(琉球新報)・「『人』として受け入れよ」(岩手日報)・「国会を空洞化させた自民」(毎日新聞)・「政治の惨状を見せつけて」(信濃毎日新聞)、との表現で行われている。

今回は、読売新聞と朝日新聞の社説を比べてみる。


1.読売の社説は。


 読売は今回の「入管法法」の成立を、「外国人就労の門戸を大きく広げる制度改革である。解決すべき課題は多い。政府は必要な対策を講じて、円滑な導入と、国民の不安解消に努めなければならない。」、と評価する。また、概ね次のように捉えている。


(1)改正出入国管理・難民認定法が成立した。新たな在留資格を設けて、人手不足が深刻な分野で就労を認めることが柱である。来年4月から施行する。
(2)有効求人倍率は、バブル期並みの高い水準にあり、農業や建設現場は、人材確保に苦慮している。高齢者の入所を断らざるを得ない介護施設もある。女性や高齢者の就労拡大でも補えない以上、研究者ら高度な専門人材に限られていた就労目的の在留資格を、単純労働の分野にも広げることはやむを得ない。
(3)日本で働いている外国人の4割は、技能実習生とアルバイトの留学生が占める。国際貢献や教育を名目に、安価な労働力として利用しているのが実情だ。いびつな形で外国人労働者を増やすのは、限界がある。
(4)政府が主体的に関与しつつ、外国人就労の包括的な仕組みを整えることは評価できる。


 しかし、読売新聞はこの法では制度全体の姿が見えていないにもかかわらず、「政府が主体的に関与しつつ、外国人就労の包括的な仕組みを整えることは評価できる。」、と結論づける。
あわせて、読売は、成立させられた「入管法」の積極的な意義を、「新制度では、一定の日本語能力や就業分野の知識があれば、特定技能1号として最長5年間の在留が認められる。熟練した技能を持つ2号は、定期的な審査を受ければ事実上の永住が可能となる。政府は1号について、介護や建設など14業種を対象に、5年間で最大約34万人になると推計する。そのうち約45%は、技能実習生から移行すると見込んでいる。技能実習を通じて、日本社会に適応した外国人が、長く働ける制度が整うことになる。」、と位置づける。
 ただ、一方では、この「入管法」の問題点の核心を、①政府は近く、業種ごとの受け入れ見込み数を定める。外国人労働者を野放図に増やすことは、混乱を招きかねない。労働力不足が解消された場合には、速やかに受け入れを停止するなど、機動的に対応すべきである、②重要なのは、外国人労働者が能力を十分発揮できるよう、労働条件を整えることだ。新制度が、受け入れ企業に、日本人と同等の報酬や福利厚生を確保するよう義務づけたのは、妥当な措置と言えよう、と指摘している。
 つまり、問題点が「技能実習制度」にあることを認め、「是正が必要だ」と次のように示す。


(1)外国人の給与水準が低ければ、日本人の賃金上昇を妨げ、雇用機会を奪うことになりかねない。低賃金や不当な処遇を強要する企業に対しては、受け入れを停止させるなど、政府は制度を厳格に運用しなければならない。
(2)新資格で入国した外国人労働者は、失業しても、同じ分野なら転職できる。帰国を余儀なくされた技能実習制度と異なり、生活の安定につながろう。
(3)野党の追求により、技能実習制度の問題点が改めて浮き彫りになった。母国の悪質なブローカーに多額の借金を背負わされている実習生は少なくない。送り出し国と連携し、実効性のある対策を打ち出すべきである。問題点を改めて洗い出し、是正策をまとめることが肝要だ。
(4)外国人が日本社会に適応しやすい環境を整備することが、国民の不安の軽減につながる。日本語教育をはじめ、生活相談や医療、住宅の提供など、きめ細かい支援が求められる。国と自治体の役割を明確にし、効率的に進めてもらいたい。
(5)在留管理を担うため、法務省入国管理局から格上げされる「出入国在留管理庁」の責任は重い。外国人の出入国管理や、受け入れ企業への調査や指導を担う。約5400人に増員するとはいえ、厚生労働省や市区町村と密接に連携することが重要である。
(6)法施行に先だって、政府は国会に、受け入れ分野ごとの運用方針や、外国人労働者に対する総合的な支援策などの全体像を提示する。多角的な観点から、与野党が妥当性を吟味すべきだ。

 もちろん、読売新聞も「人口減対応の戦略描け」、とこの「入管法」の不十分さもあわせて次のように指摘せざるを得ない。


(1)人口減少のペースは今後も加速する見通しだ。手立てを講じなければ、日本経済は縮小を余儀なくされよう。国際通貨基金(IMF)は、実質国内総生産(GDP)は今後40年で約25%減少する恐れがあると指摘している。
(2)一連の国会審議は低調で、外国人労働者をどう位置付けるのかといった全体像についての論議が深まらなかったのは残念だ。
(3)数十年先を見越し、経済や社会の活力をいかに維持するか。政府を挙げて、真剣に議論すべきだ。司令塔を明確にし、少子高齢化社会に対応した中長期的な戦略を描くことが大切である。


 このことは、さすがの読売新聞も、この「入管法」の審議が十分になされなかったことを言及しなければならなかったほどひどかったことを指摘せざるを得なかったということである。
 結局、、読売新聞はこの「入管法」が不完全なものになってしまったにもかかわらず、①「政府が主体的に関与しつつ、外国人就労の包括的な仕組みを整えることは評価できる。」、②「技能実習を通じて、日本社会に適応した外国人が、長く働ける制度が整うことになる。」、とジャーナリズムの使命を放棄して安倍晋三政権の擁護に回ってしまった。


2.朝日新聞の「多くの課題」と読売新聞の「課題」の違いは。


 朝日新聞の指摘する「多くの課題」とは、読売新聞の肯定的「課題」と違って、「立法府を軽視して成立させた『将来に禍根』を残す」ものということである。
 朝日新聞は、そのことを次のように示す。


(1)少子高齢化に伴う人手不足が深刻化するなか、受け入れの必要性自体は多くの人が理解するところだ。だが円滑に進めていくには、文化や言葉の違いを超え、同じ社会でともに生きていく覚悟と準備が求められる。そこに向けて、議論を重ね、幅広い合意を形づくることが政治の役割だ。その地道な努力を放棄し、数の力で法案を押し通す。将来に禍根を残す振る舞いであり、到底認められない。
(2)これまでも立法府を軽視してきた安倍政権だが、今回その体質をますますあらわにした。どんな業種に、どれくらいの数の外国人を受け入れるかは、制度の根幹だ。にもかかわらずそれらは法成立後に省令で決めるとし、質問されても「検討中」を繰り返した。


 また、朝日新聞は具体的な将来への禍根を次に指摘する。


(1)ごまかしの説明も多かった。非専門職の就労に初めて門戸を開くのに、「従来の方針を変更するものではない」と言い張る。新設する在留資格「特定技能1号」で働く人の約半数、業種によっては100%が、現行の技能実習制度から移行するとの見込みを政府自らが示しながら、「二つの制度は全く別のものだ」と強弁を続ける。参院法務委員会での審議に臨む前には、安倍首相が「ややこしい質問」を受けなければならないと発言した。国会を愚弄(ぐろう)する象徴的な光景だった。
(2)なぜ生煮えの法案をつくり、拙速に成立をめざしたか。透けて見えるのは打算や思惑だ。来年の統一地方選と参院選に向けて、人手を確保したい産業界の支持を得たい。一方で、外国人の増加を警戒する政権の支持層もつなぎとめたい。その帰結が、政府が描く「単身で来日し、働き、やがていなくなってくれる労働者」像といえる。在留期間に上限がなく、家族も帯同できる「特定技能2号」の資格もある。だが定住に道を開くとの指摘を受けると、政府はその要件は厳しいものだと言い出し、規定はあるが実現性の薄いものになろうとしている。ご都合主義というほかない。
(3)外国人政策は多くの国が失敗と試行を重ねてきた難題だ。ドイツは、戦後受け入れた出稼ぎ労働者が国を分断する一因になったと総括し、移民を認める方向にカジを切った。同じ社会の構成員として暮らしていくための支援に力を注ぐ。技能実習と似た制度が多くのトラブルを生んだ韓国は、これを廃止。04年に政府が前面に出て受け入れを調整する仕組みにし、やはり共生を重視する。
(4)こうした国々の経験から何を学んだのか。法案や国会審議からはついに見えなかった。逆にはっきりしたのは、新制度の土台である今の技能実習制度がもつ数々の問題点だ。実習生の多くが、最低賃金以下での長時間労働を強いられたり、暴力を振るわれたりし、中には中絶を迫られた例もある。野党による聞き取りや参考人質疑などを通じて、深刻な人権侵害状況が明らかになった。法務省は、実習生の調査を通じて内実を知りうる立場にありながら、是正に取り組まず、教訓をくむこともしなかった。それどころか、いい加減なデータを国会に提出し、審議を混乱させた。山下法相は、詳細を調査し来年3月までに実態を解明すると表明したが、順序が逆だ。


 朝日新聞は、読売が「政府が主体的に関与しつつ、外国人就労の包括的な仕組みを整えることは評価できる。」「技能実習を通じて、日本社会に適応した外国人が、長く働ける制度が整うことになる。」と主張するものに対して、「技能実習制度を温存することは、もはや許されない。」、と明快に反論する。
 また、その根拠を次のように示す。


(1)改正法案が成立しても、課題は山積みのままだ。新たに外国人労働者を受け入れる際に行われる技能試験などは全く形が見えない。生活していくうえで必須の日本語習得の支援など、受け入れ態勢づくりもこれからで、現場を抱える地方自治体には不安が広がる。(2)これらの業務を担当させるため、法案は法務省入国管理局を格上げし「出入国在留管理庁」を新設するとしている。だが先の実習生調査への対応は、「管理・摘発」を任務としてきた組織が「支援・保護」の発想を持つ難しさを浮き彫りにした。ノウハウもなく、適切な担い手とは到底言えない。
(3)外国人問題に詳しい識者たちはかねて、政策を総合的・横断的に進めるために出入国管理法にかわる法律を制定し、「多文化共生庁」のような組織を設けるべきだと訴えてきた。将来を考えれば、今回のような弥縫(びほう)策ではなく、そうした抜本的な対応こそが必要だ。


3.最後に。

 今回の結論は、「今回のような弥縫(びほう)策ではなく、そうした抜本的な対応こそが必要だ。」(朝日新聞)、ということに尽きる。
確かに、今必要なのは、「すでに大勢の外国人が日本で生活し、社会を支えている。だが一部の自治体や住民は別として、多くの人はその姿を直視せず、『わがこと』として考えてこなかった。国会審議はその現実もあぶり出した。共に生きる道を考える。それは、この社会に生きる一人ひとりにも課せられた役目である。」(朝日新聞)。
必要なのは、この問題を基本的人権の問題として捉え直すことある。




by asyagi-df-2014 | 2018-12-18 09:53 | 人権・自由権 | Comments(0)

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