「差止め認めず」「賠償勝訴」、と二枚の旗が掲げられた。

 東京新聞(以下、「東京」)は2018年11月30日、表題に関して、「米軍横田基地(東京都福生市など)の周辺住民百四十四人が米軍機などの夜間、早朝の飛行差し止めと騒音被害の損害賠償を求めた『第九次横田基地公害訴訟』の判決で、東京地裁立川支部(見米正裁判長)は三十日、国に過去の被害賠償として九千五百六十七万円の支払いを命じた。一方で、夜間、早朝の飛行差し止めと、騒音被害がなくなるまでの将来分の賠償請求は退けた。」、と報じた。
また、その判決内容について、次のように報じた。


(1)判決は、航空機騒音の指標「うるささ指数(W値)」が七五以上となる地域の住民について「周辺住民への見過ごせない不公平が存在する。国による防音工事は対策として不十分だ」と指摘。W値七五で月四千円、同八〇で月八千円、同八五で月一万二千円の慰謝料支払いを命じた。同七五を下回る地域の住民の賠償請求は認めなかった。賠償額は昨年十月の「第二次新横田基地公害訴訟」の一審判決と同額だった。
(2)ただ、米軍機の飛行差し止めは「国は米軍機の運航を規制、制限できる立場にない」とし、将来生じる騒音被害の賠償は「被害が明確に認定できず請求できない」などと判断した。
(3)一九七五年に小松基地(石川県小松市)を巡る訴訟が起こされて以降、全国六基地の周辺住民が同様の訴訟を繰り返してきた。最高裁は二〇一六年十二月、厚木基地(神奈川県)訴訟の判決で、米軍機の飛行差し止めは国内で審理できないとし、将来分の騒音被害も明確に認定できず賠償請求できないとの判断を示した。今回の判決もこの判断基準を踏襲する形となった。
(4)第九次横田基地公害訴訟は二〇一二年十二月、騒音で人格権などが侵害されているとして周辺住民が提訴。午後七時~午前八時の航空機の飛行差し止めと居住地上空での訓練差し止め、これらが実現するまで一人当たり月二万三千円の賠償を求めた。


 さらに、「東京」は、原告団等の「金さえ払えばいいってことか」「私たちのつらさを、どうして裁判所は分かってくれないのか」、といった怒りの声を次のように伝えた。


(1)米軍横田基地(東京都福生市など)の騒音被害を巡る第九次横田基地公害訴訟で、東京地裁立川支部は三十日、過去の被害に対する賠償は認めたものの、夜間、早朝の飛行差し止めと、騒音被害がなくなるまでの将来分の賠償請求は退けた。原告の住民にはため息と怒りが交錯した。(松村裕子、萩原誠)
(2)「差止(さしと)め認めず」「賠償勝訴」。午前十一時二十分、立川支部前の路上で弁護士が二枚の旗を広げた。集まった原告の住民や、全国で同種裁判を闘う人の間からは「金さえ払えばいいってことか」「私たちのつらさを、どうして裁判所は分かってくれないのか」などと声が上がった。
(3)原告の中里博文さん(64)=立川市=は「まるっきり期待外れというか、何も踏み込まず、新しいことはなくてがっかり。飛行差し止めについても今まで通りという感じで、人の情けのないような判決だ」。やはり原告の設計業菅原和夫さん(74)=昭島市=も「ある程度予想はしていたが、全く進歩のない判決で、憤りを感じる。結果は同じでも、先の見える何かがあればと思ったが、がっかりだ」と嘆いた。同市の無職原島清さん(77)は「窓を開けると何も聞こえない。オスプレイは振動も騒音もひどい」と被害がむしろひどくなっていることに顔をゆがめた。同市の無職花岡靖智さん(76)は「安保法がある限りだめだ。民事裁判ではどうにもできない。沖縄だけでなく、東京でも基地問題があることを知ってほしい」と話した。
(4)「基地周辺住民はいつまで闘い続けなければならないのか」。第九次横田基地公害訴訟の原告団長・福本道夫さん(69)は、米軍機の飛行差し止めなどを認めなかった判決を聞き、唇をかんだ。伊豆大島で生まれ、三歳のときに家族で東京都昭島市に転居して以来、米軍機の騒音に苦しめられてきた。「一九七〇年代までは戦闘機が頻繁に飛び、エンジンを吹かす音で会話も勉強もままならなかった」。基地への飛来が戦闘機から輸送機中心に変わっても、被害は収まらなかった。
(5)都職員だった父・龍蔵さん=故人=は七六年提訴の第一次訴訟以来、原告団長を務めた。八二年に自身も原告に加わり、四年前からは第九次訴訟の原告団長に。父への思いも胸に、この日の判決に臨んだ。現在の住まいは基地のフェンスから直線距離で二キロ余り。「うるささ指数(W値)」が七五以上の区域からは外れている。だが「上空で旋回訓練をすれば騒音の激しさはどこでも同じ。判決は実態を反映していない」との思いを強くする。
(6)横田基地に十月、米空軍の垂直離着陸輸送機CV22オスプレイが正式配備され、周辺住民に新たな懸念材料が加わった。福本さんは「遠くまで届くプロペラの音や振動は異質で強い不快感がある」と指摘した上で、決意を新たにする。「被害が続くのは政府が米国に何も言えず、その結果を私たちが負わされているからだ。一歩ずつ、半歩ずつでも解決に近づけるために闘うしかない」


 「東京」は、この判決の批判に関して、12月2日に回された原告団と弁護団は立川市内での記者会見の模様を次のように伝えた。


(1)判決は、横田基地周辺の住民が一九七六年以降、同様の訴訟を繰り返してきた経緯に触れ、国と米国が「抜本的な被害防止策を講じず、漫然と放置している」と指摘。航空機騒音の指標「うるささ指数(W値)」が七五以上となる地域の住民は「受忍限度を超える違法な権利侵害を受けている」と、過去の被害に対する賠償として、W値七五~八五の地域の住民に月四千円~一万二千円の支払いを国に命じた。賠償額は計九千五百六十七万円。
(2)しかし、焦点となった夜間、早朝の飛行差し止めや将来の被害に対する賠償は認めず、最高裁が二〇一六年の厚木基地訴訟の判決で示した判断を踏襲する形となった。
(3)原告側は新たな司法判断を導き出そうと、十月に横田基地に正式配備された米空軍の垂直離着陸輸送機CV22オスプレイによる被害拡大も主張。しかし判決は、結審の七月時点では正式配備されておらず「事故の危険性は抽象的」とし、被害認定に踏み込まなかった。
(4)福本原告団長は会見で「オスプレイは正式配備前の六月から訓練している」と憤り、控訴審ではCV22の騒音被害の詳細データを提出する考えを示した。また、佐竹俊之弁護団長は、W値七五未満の地域では賠償を認めなかったことに『受忍限度を超えていることを立証するように住民に求めているように受け取れる』と批判した。


 確かに、私たちが肝に銘じなけねばならないのは、「被害が続くのは政府が米国に何も言えず、その結果を私たちが負わされているからだ。一歩ずつ、半歩ずつでも解決に近づけるために闘うしかない」(「東京」)、との声である。
 それにしても、日本の司法の役割が「『事故の危険性は抽象的』とし、被害認定に踏み込まなかった。」(「東京」)ということでしかないのであれば、日本の司法は完全に責任放棄をしている。



by asyagi-df-2014 | 2018-12-09 07:01 | 米軍再編 | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


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