沖縄県が総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会(係争委)」に審査を申し出た意味とは。

 琉球新報は2018年11月30日、「県、係争委へ審査申し出 辺野古埋め立て 撤回停止に不服」、と次のように報じた。


(1)米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡り、玉城デニー知事は29日、県の埋め立て承認撤回の効力を一時停止させた国土交通相の決定を不服として、総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」(係争委)へ審査を申し出る文書を送付した。審査申出書で県は執行停止決定を取り消すよう国交相への勧告を係争委に求めた。係争委は90日以内に判断を示す。県庁で会見した玉城知事は、12月中旬に辺野古に土砂投入する政府の方針に対し「対話でいい結果に導いていけると思っていたが、非常に残念だ」と反発した。
(2)会見に同席した謝花喜一郎副知事は、県土の乱開発防止を目的とした「県土保全条例」を改正して国工事も対象に含めることなどを検討していくことを、28日の集中協議で杉田和博官房副長官に伝えたことを明かした。新基地建設工事への対抗策について謝花氏は「他の都道府県の環境に関する条例なども研究し、既存の知事権限以外についても検討していく必要がある」と強調した。
(3)県は係争委への審査申出書で(1)沖縄防衛局は行政不服審査制度で執行停止を申し立てることはできない(2)国交相は内閣の一員であり、防衛局の申し立てに対して判断できる立場でない―を挙げ、国交相の執行停止決定は審査庁としての立場を著しく乱用した違法なものだと主張している。執行停止決定の取り消しで撤回の効力を復活させ、海上工事を再び止める考え。
(4)会見で玉城知事は「国との対話を継続することで解決を図る考えだが、そのためには違法な執行停止決定は取り消される必要がある」と訴えた。係争委に対し「中立・公正な審査をお願いしたい」と語り、機会があれば自ら委員会で意見を述べたい考えを示した。申出書は79ページで、ドッジファイル1冊分の証拠書類が添付される。30日に国地方係争処理事務局に到達する見通しだ。係争委が県の主張を認めなかった場合、防衛局は工事を続け、県は地方自治法に基づいて高裁に提訴するとみられる。
(5)一方、菅義偉官房長官は29日午後の会見で「(28日の)総理と知事の面会の結果を踏まえ、県において判断したのだろう。今後、委員会での審議が行われるものであり、コメントは差し控える」と述べた。その上で「移設に向けた工事をしっかり進めていきたい」と語り、審査中も工事を続ける考えを改めて示した。


 この沖縄県が行った「審査申出書で県は執行停止決定を取り消すよう国交相への勧告を係争委に求めた」行為について、沖縄タイムス(以下、「タイムス」)の社説で考える。
「タイムス」は、このことに関して、次のように押さえる。


(1)辺野古新基地建設を巡り、県の埋め立て承認の撤回を国土交通相が執行停止したのは違法だとして、県は総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会(係争委)」に審査を申し出る書類を送付した。
(2)係争委は国と地方の争いを調停する機関で、有識者の委員5人で構成。90日以内に調停案を勧告するか、審査結果を通知する。
(3)工事主体の防衛省沖縄防衛局が行政不服審査法(行審法)を使って執行停止を申し立て、国交相が認める決定をした。このため新基地建設関連工事は再開している。


 次に、「タイムス」はこのことの問題点を次のよう指摘する。


(1)記者会見した玉城デニー知事は、審査申し出の理由を大きく二つ挙げた。行政不服審査制度は行政の違法・不当な処分から一般国民(私人)の権利救済をすることが目的である。国の機関である防衛局にはそもそも申し立てる資格がなく違法であること。公有水面埋立法では民間事業者は県から埋め立ての「免許」、国の機関の場合は「承認」を受けなければならないと明確に区別されている。民間と国とでは取り扱いが違い、防衛局が県から受けたのは「承認」である。にもかかわらず、「私人」と言い張る防衛局は、なりすましたというほかないのである。
(2)玉城知事が挙げたもう一つの理由は、国交相は内閣の一員として辺野古新基地を推進する立場にあり、今回の執行停止決定は、審査庁としての地位を著しく濫用(らんよう)し違法であること。同じ国の機関である防衛局の申し立てを同じ国の国交相が審査することは身内による判断ということだ。新基地建設推進の安倍内閣の中で異なる判断が出るはずがないではないか。結果は最初から自明であり、著しく不公正な決定である。国による制度の濫用というほかなく「法治国家」にもとるものだ。
(3)この手法が許されるなら国の機関が地方自治体の処分を覆すことはなんでもできることになるであろう。新基地問題で安倍政権は対等であるべき国と地方の関係をゆがめてきた。国交相の決定も、地方自治を破壊する暴挙であると断じざるを得ない。


 この上で、「タイムス」は、安倍晋三政権に『異』を唱えることになる。


(1)権力を抑制的に行使するために三権分立の仕組みがある。安倍政権では行政権力が肥大化し、解釈を一方的に変更するなどチェック・アンド・バランスが効いていない。
(2)県は軟弱地盤の存在などで工事費用が当初の10倍の2兆5500億円に膨らみ、工期も運用開始まで13年も要すると指摘。新基地建設の目的だった米軍普天間飛行場の危険性除去の破綻は明らかだ。
(3)係争委は2015年に同じ構図で県の申し出を却下している。ただ国交相の判断を「疑問も生じるところ」と言及している。形式にとどまらず、沖縄の歴史も踏まえ、実質的な審理を尽くしてほしい。


 確かに、「タイムス」の「考えてみてほしい。『私人』が軍事基地を建設するために公有水面を埋め立て、米軍に提供することがあり得るだろうか。防衛局はそう主張しているのである。あきれるしかない。」、との指摘に尽きる。



by asyagi-df-2014 | 2018-12-04 08:40 | 書くことから-いろいろ | Comments(0)

壊される前に考えること。そして、新しい地平へ。「交流地帯」からの再出発。


by あしゃぎの人
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